JP2014501103A - 機能性化合物の送達 - Google Patents

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Abstract

修飾された部分を含む機能性成分を、腸溶性マトリックス中にマイクロカプセル化する。機能性成分の修飾部分は、マイクロカプセル化効率を高め、マイクロカプセル化された物質の不快な官能特性を低下させ、同時に所望の放出率をもたらす。このプロセスは、水中で乳濁液を形成するステップと、乳濁液を沈殿剤で滴定し、粒子状沈殿を生成するステップとを含む。

Description

本願は、腸溶性マトリックスでマイクロカプセル化した修飾された形態の機能性成分、および同成分を作製する方法に関する。より特定すれば、該修飾された形態の機能性成分は、有機溶媒を実質的に含まない水性環境中でマイクロカプセル化される。
関連出願の相互参照
本願は、2010年12月13日に出願された米国特許仮出願第61/422,439号明細書の利益を主張するものであり、2009年6月5日に出願された米国特許出願第12/479,444号明細書の一部継続である。これらの両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
食物用途における機能性物質の腸溶送達は、限られてきた。腸溶送達系は一般に、機能性物質もしくは薬剤がある特定の条件に敏感であり、その結果これらがあまり有効でなくなることが知られているとき、または機能性物質がアスピリンでの胃の問題など、使用者に問題を引き起こす場合に利用される。一般に、腸溶送達は、薬務において最も一般的なものとして、被覆錠剤およびゲルカプセルを用いて実現される。しかし、こうした特定の送達法は、食物用途にはあまり適していない。特に、錠剤もカプセルも、大部分の現用食品に組み込まれる大きさになっていない。
腸溶送達の代替法は、マイクロカプセル化である。マイクロカプセル化は、一般に、特殊な設備を用いて、または有機溶媒を含んだ環境中で行われる。こうした方法は、追加の設備投資、および有機溶媒などの追加の物質の使用を必要とし、該物質は、その後のマイクロカプセル化サイクルで使用できることも、できないこともある。その結果、マイクロカプセル化法は、設備および有機溶媒の調達および廃棄の双方で投資を必要とする。
マイクロカプセル化に伴う1つの問題は、この方法の回収率またはマイクロカプセル化効率である。一般に、マイクロカプセル化しようとする物質のある一定の相当な比率(%)は捕捉されない。非捕捉物質は、再使用のために回収し得るかもしくはリサイクルし得る、またはある比率(%)の非捕捉物質は、マイクロカプセル化微粒子の外表面に付着したままである。
米国特許出願第12/479454号明細書 米国特許出願公開第2008/0145462号明細書 米国特許出願第12/479433号明細書
その結果、生成物は、非捕捉物質に伴うしばしば不快な風味プロファイルを有する傾向がある。このことは、非捕捉物質が、不飽和および多不飽和脂質などの被酸化性トリグリセリド、被酸化性の香味および精油、または自然に不快な風味および/もしくは香味を有し得る他の有機化合物を含む場合に特に当てはまる。
本組成物は、腸溶性マトリックス中にマイクロカプセル化した機能性成分を含むが、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献1に記載のようなものである。腸溶性マトリックスは1つまたは複数の食品用高分子を含み、機能性成分は、修飾された形態の機能性成分を含む。
一実施形態では、機能性成分は、腸溶性マトリックス材料の全体に亘って均一に分散されている。別の実施形態では、機能性成分は、少なくとも約30パーセントの修飾された化合物を含む。一形態では、修飾された形態の化合物は、リナロールおよびチモールなどの精油の塩、グリコシド、錯体、またはエステルの少なくとも1つを含む。
一態様では、修飾された形態の活性または機能性成分をマイクロカプセル化する方法が提供される。この方法は、水、腸溶性マトリックス材料および乳化剤を撹拌または混合し、利用している腸溶性マトリックス材料の完全な溶解を維持するpHで、組合せを形成することを含む。一手法では、組合せは有機溶媒を実質的に含まない。修飾された形態の部分を含む機能性成分は、その組合せに添加し、均一化して、微細で安定な乳濁液を創出する。次いで、乳濁液を、制御された混合条件下、粒子状沈殿の形成に有効な量および速度で、酸、および/または使用している腸溶性マトリックス材料に応じてカルシウムなどの他の架橋剤もしくは沈殿剤で処理する。更に、機能性成分を、沈殿の全体に亘り、機能性成分のマイクロカプセル化効率が改善されるように、均一に分散させる。
機能性成分をマイクロカプセル化する方法を例示した図である。 少なくとも30%のエステルを含有していない機能性成分を含んだ1つの実験と、リナロールおよびチモールのエステルを少なくとも30%含有する機能性成分を含んだ第2の実験との間で、マイクロカプセル化効率を比較したチャート図である。 既知の化学式、水溶解度、蒸気圧、分配係数、および各種エステルの油対水比について親和性を比較した比を示す表形式の図である。 95%のシェラックおよび5%のゼインからなる腸溶性マトリックスと共に、エステルを含んでいない機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したグラフである。 95%のシェラックおよび5%のゼインからなる腸溶性マトリックスと共に、エステルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したグラフである。 胃および小腸の条件を模倣した消化モデル内のアルギン酸塩/シェラック腸溶性マトリックス内における、酢酸リナリルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したグラフである。 胃および小腸の条件を模倣した消化モデル内のアルギン酸塩/シェラック腸溶性マトリックス内における、酪酸リナリルを含んでいる機能性成分の各種構成要素の放出率を例示したグラフである。
修飾された形態の機能性成分および不活性担体(複数可)を、腸内で溶解する前の機能性成分の放出を最小限に抑える腸溶性マトリックス中へのマイクロカプセル化の方法を開示している。更に、機能性成分は、不快な味覚または香味プロファイルを有する場合がある。幾つかの場合では、機能性成分を修飾することにより、機能性成分の適切な比を保持し、生体利用率および効力を保証すると同時に、不快な味覚および/または香味をマスクし、または変化させることができる。
一形態では、マイクロカプセル化される機能性成分は、チモールおよびリナロールなどの精油の修飾体を含むことができる。機能性成分に対する修飾として、機能性成分の感知される味覚および/または官能特性(organoleptic properties)を修飾する様々な形態を挙げることができる。例えば、修飾により、機能性成分の香味および/または味覚閾値を変化させることができる。一形態では、修飾により、機能性成分の元の非修飾形態に対して、修飾された形態の機能性成分の揮発度および/または蒸気圧を変化させることができる。特に、修飾体の官能特性は、より高い味覚閾値を含み得る。結果として、幾つかの場合では、腸溶性マトリックス表面上の修飾された形態の機能性成分は、無修飾形態の機能性成分が存在する場合より、不快さが低下した香味プロファイルを生じ得る。更に、修飾として、機能性成分の塩、グリコシド、錯体、および/またはエステル化を挙げることができる。
摂取され、腸管内で放出されると、機能性成分の修飾体は、少なくとも部分的に親形態に戻り、親機能性成分がマイクロカプセル化され、消費された場合と同じ機能的有益性をもたらす。一形態では、修飾された形態の機能性成分は、消化の間に加水分解して、修飾体から機能性成分の元の非修飾体に戻る。更に、機能性成分の修飾体は、以下で更に考察するように追加の有益性をもたらすことができる。
修飾体は、機能性成分組成物全体の様々な割合を構成し得る。例えば、修飾体は、機能性成分組成物の少なくとも10%を占める。別の例では、修飾体は、機能性成分組成物の少なくとも30%を占める。更に別の例では、修飾体は、機能性成分組成物の少なくとも50%を占める。
更に、修飾された形態の官能基がエステルを含む場合、他の有益性が実現される。一般にエステルは、不快さが低下した香味を生じることが知られており、そのため生じた香味が、全く不快な官能香味プロファイルを生じることはなかろう。更に、特に非エステル化機能性親成分に対して、エステルを含む修飾された形態の機能性成分の水溶性が低いおよび/または疎水性が増大するため、下記の方法は、エステル化機能性成分が存在しない状態で認められた場合より、高いペイロードおよび保持率で示すことができるように、マイクロカプセル化効率を向上させることができる。
本明細書に記載の方法により創製される生成物の使用例は、粉末ソフトドリンク(PSD)飲料における送達を目的としている。生成物の他の例示的使用は、例えば、ビスケット、バー、アイスクリーム、スナックおよび即席ミールなどの他の食品を含む。
機能性成分をマイクロカプセル化する方法は、図1に全体が示されている。食物マトリックス内での腸溶送達は、分散部分を、希釈トリグリセリドとの精油ブレンドなどの機能性成分の部分としたマトリックス粒子の形成により実現され、マトリックス部分は、シェラック、ゼイン、アルギン酸カルシウム、変性ホエータンパク質、カゼイン塩およびあらゆる食品用腸溶性高分子などの、食品用腸溶性高分子の部分である。
図1に示すように、水、腸溶性マトリックス材料および乳化剤を、腸溶性マトリックス材料および乳化剤が水中に完全に分散するまで混合または撹拌する(100)。一般に、乳化剤および腸溶性マトリックス材料は、一緒に、またはいずれを最初に添加するにしろ別々に水に添加することができる。pHは、腸溶性材料の完全な可溶化を可能にする十分なレベルに維持する。例えば、シェラック、ゼインまたはそれらの組合せを使用する場合、分散液のpHは、一般に約7.2から9.0の間である。幾つかの実施形態では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムなどの塩基性物質を分散液に添加することにより、pHを約7.2から約12.0、好ましくは8.0から11.3の範囲内などに上昇させて、有機溶媒を使用せずに腸溶性高分子の完全な溶解を保証し、維持することができる。
本明細書で使用する場合、「撹拌」または「撹拌された」とは、10000RPM未満の速度で運転する、羽根付き頂部導入型ミキサー(top entering mixer)またはローター/ステーター混合装置の使用を指す。
本明細書で使用する場合、「有機溶媒を実質的に含まない」とは、イソプロパノールもしくはエタノールまたは他の任意の有機溶媒などの有機溶媒の添加量が、処理条件下で腸溶性材料の溶解性を可能にするのに必要な量より少ないことを指す。一手法では、有機溶媒の添加量は、水、乳化剤および腸溶性材料の組合せに対して約0.1重量%未満である。
一実施形態では、水は非イオン水である。
本発明で使用する腸溶性マトリックス材料は、任意の食品用腸溶性高分子、または2種以上の食品用腸溶性高分子の組合せである。好ましくは、腸溶性マトリックス材料は、シェラック、ゼイン、アルギン酸カルシウムまたはそれらの組合せである。他の食品用腸溶性高分子には、変性ホエータンパク質が挙げられる。一手法では、調製した腸溶性マトリックス材料は、有機溶媒を全く含まない。
本明細書に記載の乳化剤は、任意の食品用乳化剤でもよい。好ましい実施形態では、乳化剤は、ポリソルベート、ポリグリセロールエステル、スクロースステアレート、スクロースエステル、タンパク質、レシチンまたはそれらの組合せである。より特定すれば、乳化剤は、後に創製する乳濁液内に、より小さく最も均一に分散した油滴を創製するので、スクロースエステルが好ましい。
一般に水は、重量で分散液の約50%から約95%、好ましくは約70から約95%、より好ましくは約80から約90%を占める。一般に乳化剤は、重量で分散液の約5%未満、好ましくは約0.01から約1重量%、より好ましくは分散液の約0.01から約0.1重量%を占める。一手法では、腸溶性マトリックス材料は、重量で約1%から約10%、他の手法では約4から約7%、更に他の手法では重量で分散液の約5%から約6%の範囲である。
分散液を形成したとき、少なくとも一部が修飾された形態の機能性成分および不活性担体を添加し(200)、撹拌して(300)、約10μm超の液滴サイズを有する粗大な乳濁液を得る。粗大乳濁液を形成した後、粗大乳濁液を均一化して(300)、微細で安定な乳濁液を創製する。一手法では、微細で安定な乳濁液は、約10μm未満の液滴サイズを有する。微細な乳濁液内では、機能性成分および不活性担体が、全体に亘って微細液滴の形態で均一に分散している。一手法では、機能性成分および不活性担体の組合せは、重量で乳濁液の約2から約7%の範囲の量で添加する。他の手法では、機能性成分および不活性担体の組合せは、重量で乳濁液の約3から約6%の範囲の量で添加する。乳濁液は、約60から約95%の水を含む。
本明細書で使用する場合、「均一化」または「均一化された」とは、ローター/ステーター混合装置の使用などで約10000RPMを超える速度で、または約500psiから約10000psiの圧力で運転するバルブホモジナイザーなどで、高圧のより低い混合速度で混合することを指す。
一手法では、機能性成分は、精油の化学修飾された形態の化合物を含むことができる。例として、機能性成分は、チモールおよびリナロールの化学修飾された形態の化合物を含む。例えば、チモールおよび/またはリナロールのグリコシド、塩、および/または錯体を使用することができる。一形態では、酢酸チミルおよび酢酸リナリルを使用することができる。更に、オクタノエートなどの他の脂肪酸エステルを使用することができる。ブチレート、ラクテート、シンナメートおよびピルベートなどの他の許容できる化学修飾された形態の化合物も、使用することができる。別の例では、機能性成分は、α−ピネン、パラ−シメン、チミルエステルまたは塩およびリナリルエステルまたは塩を含む。下記の実施例で考察するように、1つの例示的ブレンドは、重量で約18%のキャノーラ油、約8%のα−ピネン、約39%のパラ−シメン、約5%の酢酸リナロール、および約27%の酢酸チミルを含む。
該修飾された形態の機能性成分部分は、重量で機能性成分の約1から約99%を占めることができる。幾つかの手法では、該修飾された形態の機能性成分は、重量で機能性成分の少なくとも約10%、他の手法では、重量で約30%を占めることができる。別の実施形態では、該修飾された形態の機能性成分は、重量で機能性成分の約25から約65%を占めることができる。
一実施形態では、不活性担体および機能性成分のブレンドは、重量で約15から約30%のキャノーラ油、約1から約10%のα−ピネン、約5から約25%のパラ−シメン、約5から約20%のリナリルエステル、および約20から約60%のチミルエステルを含むことができる。他の手法では、不活性担体および機能性成分のブレンドは、重量で約20から約25%のキャノーラ油、約2から約7%のα−ピネン、約10から約20%のパラ−シメン、約7から約15%のリナリルエステル、および約35から約50%のチミルエステルを含むことができる。
一般に、かつ一手法では、チモールおよびリナロールなどの機能性成分のエステル体を、その調製に関して化学反応手法であるか生化学反応手法であるかを問わず使用することができる。例えば、テルペンのヒドロキシル基(複数可)と有機または無機オキソ酸(1つまたは複数のオキソ酸基を含有)との間で形成される任意のエステルを、機能性成分として使用することができる。修飾された形態の機能性成分の揮発度および蒸気圧は、成分の知覚に影響し得る。例えば、エステル基のサイズを調整して所望の揮発度をもたらすことができる。一手法では、エステル結合は、少なくとも1つのエチルエステルである。より大きいエステル基も使用することができることに留意されるべきである。
一手法によって、選択されたエステル体は、摂取され、腸管内で腸溶性マトリックスから放出された後、加水分解速度の増大のために、親形態に対して増大した機能性を有し得る。エステルは、天然源から得、またはチモールおよびリナロールなどの機能性成分と、エステルを生じる有機もしくは無機オキソ酸との間の任意の適当な化学反応または生化学反応を用いて合成することができる。適当なオキソ酸として、カルボン酸、アミノ酸、リン酸、硫酸、および硝酸を挙げることができる。ヒドロキシル基は、同種源(例えば、チモール)または混合源(チモールとリナロール)に由来し得る。例示的なモノカルボン酸として、それだけに限らないが、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ステアリン酸、乳酸、桂皮酸、ピルビン酸、安息香酸、およびグルコン酸が挙げられる。例示的なジカルボン酸として、それだけに限らないが、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、グルカル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸が挙げられる。例示的なトリカルボン酸には、それだけに限らないが、クエン酸、およびイソクエン酸が含まれる。テルペンとオキソ酸と反応によって形成され得る他の例示的なエステルとして、コハク酸ジチモール(dithymol succinate)、アジピン酸ジチモール(dithymol adipate)、およびセバシン酸ジチモール(dithymol sebacate)が挙げられる。
別の形態では、修飾された形態の機能性成分は、その調製に関して化学反応手法であるか生化学反応手法であるかを問わず、テルペンエステルと他のエステルの間で形成されるエステルを含むことができる。特に、官能基は、エステル交換を使用して形成することができる。例えば、官能基として、酢酸チモール(thymol acetate)をオクタン酸メチルまたはトリパルミチンと反応させることによって形成されるエステルを挙げることができる。
あるいは、機能性成分は、他の修飾された形態の化合物を含むことができることが予期されている。一形態では、修飾された形態の官能基として、テルペンのヒドロキシル基(複数可)と、1個の糖基(単糖)もしくは幾つかの糖基(オリゴ糖)との化学反応または生化学反応によって形成される任意のグリコシドを挙げることができる。例えば、チモールグリコシドおよび/またはリナロールグリコシドを、修飾された形態の機能性成分とすることができる。糖基は、任意の種類の単糖、二糖、三糖、および/または多糖から構成されるグリコン部分、および任意のヒドロキシ−テルペン(例えば、チモール、リナロール)であるアグリコン部分を有する任意のグリコシドを含むことができる。糖基は、還元糖および/または非還元糖も含むことができる。例示的な糖として、それだけに限らないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、スクロース、マンノース、マルトース、ラクトース、およびセロビオースが挙げられる。
別の形態では、官能基は、ヒドロキシ−テルペンおよび別の化学種を伴って形成される任意のイオン性または非イオン性塩または錯体を含むことができることが予期されている。例えば、チモールおよびリナロールの塩または錯体を、修飾された形態の機能性成分とすることができる。一例は、ナトリウムおよび/またはカリウムの塩化物であり得る。別の形態では、修飾された形態の機能性成分は、固定された定比性を有さないチモールの塩を含むことができる。例えば、チモールの塩は、1つまたは複数の特定の陽イオン(Na、K、Mg++など)を含む、様々な比の陽イオンとチモールを有する部分的な塩または混合塩として固体錯体を調製することができる。固化した錯体は、結晶形態として得ることができることも、できないこともある。塩または錯体は、任意の適当な方法によって形成することができるが、幾つかの場合では、1つまたは複数のヒドロキシ−テルペンと1つまたは複数のアルカリ性試薬との間の化学反応または会合によって形成される。例示的なアルカリ性試薬として、それだけに限らないが、アルカリ性の水酸化物、酸化物、または炭酸塩を挙げることができる。塩または錯体は、任意のアルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくは遷移金属元素、またはそれらの組合せを含むことができる。食物中に用いるのに適した塩または錯体として、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、およびアルミニウムを挙げることができる。他の例示的な塩には、ナトリウムチモレート(sodium thymolate)(例えば、ナトリウムチモキシド(sodium thymoxide))を含めたチモールの一価、二価、または三価の塩、およびカルシウムフェノキシドを含めたフェノールの任意の一価、二価、または三価の塩が含まれる。
更に、機能性成分は、組み合わされた様々な形態の修飾を含むことができる。例えば、修飾された形態の機能性成分組成物の一部は、1つまたは複数の精油の塩、グリコシド、錯体、およびエステル体の1つまたは複数を含むことができる。
幾つかの手法では、機能性成分は、本明細書に記載の任意の精油の混合物を含むことができる。更に、機能性成分は、腸内で放出されるのが望ましい物質を含むように、選択することができる。例えば、機能性成分は、Enanの特許文献2に記載された組成物を含むことができる。例えば、機能性成分は、約25から約35重量%のパラ−シメン、約1から約10重量%のリナロール、約1から約10重量%のα−ピネン、約35から約45重量%のチモール、および約20から約30重量%の大豆油を含む。
幾つかの手法では、本明細書に記載の機能性成分は、抗寄生虫、抗原虫および抗真菌などの機能的性質を保有する化合物を含むことができる。一実施形態では、その有機化合物は、α−ピネンおよびパラ−シメンを更に含む。
別の実施形態では、有機化合物は、脂質、脂肪酸、トリグリセリド、または大豆油もしくはキャノーラ油などの食品用油などの不活性担体とブレンドされる。
一部の機能性成分の揮発性は、非常に低い嗅覚閾値をもたらす結果、現用の飲料/食物に不快な香味/風味が生じる。機能性成分の香味をマスクすることを目指して、本明細書に記載される方法は、機能性成分のエステル体または他の修飾体(例えば、チモールおよびリナロールのエステル体)などの機能性成分の水溶性が遥かに低下する形態を含めること、ならびにその最終成分から非カプセル化物質を除去する方法を含む。例えば、エステルは、一般に、その各親化合物ほど、食物系の風味/香味に対して負の影響を及ぼさない。更に、精油の錯体、グリコシド、および塩は、その各親化合物ほど、食物系の風味/香味に対して負の影響を及ぼさない。
水溶性が低いおよび/または疎水性が増大するために、エステルは、チモールおよびリナロールなどの非エステル化親化合物より、上記したように高いマイクロカプセル化効率を有することができる。その効率は、好ましくは、非エステル化機能性成分を用いた際に実測される効率に対して、約50から約200%、より好ましくは約100から約150%増加する。更に、エステルは、親化合物より高い嗅覚閾値を有するため、エステルの感知必要量は、エステル化されていないチモールおよびリナロールの量より多い。
図1の方法に戻って、次いで、乳濁液は、酸、または架橋剤もしくは沈殿剤による滴定によって沈殿する(400)。沈殿形成中に、乳濁液に撹拌を加えることができる。一実施形態では、乳濁液は、約1から約5%の塩化カルシウムと約1から約5%のクエン酸との溶液で滴定される。別の実施形態では、pH約7などの乳濁液中に存在するポリマーの等電点より低くpHを下げるのに有効な量の酸で、乳濁液を滴定して、相分離を起こし、腸溶性マトリックスの溶液からの析出を、その中に機能性成分をマイクロカプセル化した状態で引き起こし、その結果水溶液と沈殿とのスラリーを創製する。析出したスラリーは、約1から約1000μm、幾つかの場合では、約10から約500.0μm、より好ましくは約75から約250μmの粒径を有する。他の手法では、沈殿形成は、約3から約6の範囲のpHで、または更に約3.8から約4.6の範囲にあるpHの間で行われる。
理論に拘るつもりはないが、乳濁液のpHが等電点より低く下がると、シェラックおよびゼインなどの腸溶性材料の粒子は、類似の粒子または相互に架橋してマトリックスを形成し、機能性成分および不活性担体をマトリックス内にマイクロカプセル化し得ると考えられる。架橋の結果、機能性成分は、マトリックス中全体に均一に分散される。更に、マトリックスは、機能性成分にとってシールとなる。その結果、完成粉末の官能性品質に対する機能性成分の影響は、腸溶性マトリックスの外表面に付着したままの全機能性成分と相関している。
使用される酸には、任意の食品用の酸を含むことができる。一実施形態では、その酸はクエン酸である。
上記で触れたように、腸溶性マトリックス材料の組成は、溶解率、および腸溶性マトリックスが与える保護に影響する。
沈殿を回収するために、スラリーをろ過し(500)、洗浄し(600)、乾燥する(700)。一実施形態では、スラリーをろ過し、次いで生成したスラリーケーキを洗浄し、再ろ過した後、乾燥する。
幾つかの例では、粒子沈殿の外表面上に表面非カプセル化物質が少なくとも僅かに残ることになろう。知覚閾値が低い化合物をマスクしたいと欲すれば、最終的な生成物マトリックスおよび/または溶液中の非カプセル化物質を、一般に知覚できないレベルまで減らす。幾つかの場合では、粒子沈殿の外表面上の機能性成分は、最終生成物に対して約1重量%未満である。
幾つかの場合では、ろ過後のスラリーに表面オイル除去剤を添加することにより、沈殿からの残存表面オイルの除去を補助する(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献3参照)。更に、表面オイル除去剤は、再ろ過ステップの前にも添加することができる。
沈殿をろ過し、洗浄した後、沈殿を乾燥して(700)粉末を形成する。乾燥は、粉末が、約10%未満の水分含量、他の手法では約2から約6%の水分含量、更に他の手法では約3から約5%を有するように、行うことができる。
更に、粉末は、粉砕し、粉末沈殿の粒径を減らした後、更に流動床乾燥機を用いるなどにより、約5%未満の水分含量に乾燥することができる。生成した粒子は、約1から約1000μm、幾つかの場合では、約10から約500μm、他の場合では約75から約250μmの範囲の粒径を有する。
粉末を乾燥する際、温度は、約25℃から約70℃、幾つかの場合では、約35℃から約65℃の間に維持すべきである。他の処理ステップ中には、約4℃から約40℃、他の場合では約4℃から約30℃、更に他の場合では約15℃から約28℃の間に温度を維持することが適当な場合がある。
以下で更に考察し、図2に示すように、チミルおよびリナリルエステルなどの修飾された形態の機能性成分を含めると、最終生成物中の機能性成分のペイロード(payload)を増加させることができる。ペイロードは、最終生成物に関する機能性成分の重量百分率を指す。したがって、ペイロードの増加は、所与の量の腸溶性マトリックス当たりの機能性成分の増加に対応する。幾つかの場合では、機能性成分のペイロードは、約5から約50パーセントの範囲である。ペイロードの増加は、修飾された形態でない機能性成分と比較した、エステルなどの修飾された形態の機能性成分を含む機能性成分の水溶性の低下および/または疎水性の増大に少なくとも部分的に起因し得る。更に、幾つかの場合では、大量の水を、開示した方法において使用することができる。チモールおよびリナロールのエステルなどの修飾された形態の機能性成分は、水溶性の低下および/または疎水性の増大のために、機能性成分の溶出を低減する。処理中の損失を制限できるので、食物系内の機能性化合物の最終比を制御可能にするが、これは、特許文献2(Enan,E.ら)において重要であることが示されている。更に、チモールなどの幾つかの機能性成分は、室温(約20から約25℃)で結晶性固体である。室温(約20から約25℃)で液体である、酢酸チミルなどの修飾された形態の機能性成分を代用すれば、乳濁液を調製する前に、トリグリセリド油、エタノール、または他の液体中にチモールまたは他の固形成分を溶解させるなどによって、結晶性固形成分を液体有機溶媒中にもはや可溶化させる必要がないので、処理の容易化が可能となろう。
本明細書に記載される方法の利点および実施形態を、以下の実施例によって更に例示する。しかし、これらの実施例において列挙される特定の条件、処理スキーム、物質、およびこれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本方法を不当に限定するように対比されるべきでない。全ての百分率は、別段の指定のない限り、重量によるものである。
乳化剤の評価および選択
各種の乳化剤を非イオン水と約60℃で組み合わせて、約2%溶液を生成した。生成した溶液を、非イオン水と重量比50:50の精油ブレンド組成物(α−ピネン約4%、パラ−シメン約30%、リナロール約7%およびチモール約35%、ならびに大豆油約24%)と組合せ、水中油型の乳濁液を創製した。評価した乳化剤は、Glycosperse S−20 KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Polyaldo 10−1−O KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Aldosperse MS−20 KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Polyaldo 10−2−P KFG(Lonza;Fairlawn,NJ)、Ryoto糖エステル(S−1570,Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)、Precept 8120(Central Soya;Fort Wayne,IN)、およびカゼイン酸ナトリウム(Alanate−180,New Zealand Dairy Board;ウエリントン、ニュージーランド)であった。スクロースエステル(S−1570)は、乳濁液内に最小で最も均一分散した油滴を創製したので、良好な乳化剤であると確認された。スクロースエステルで創製した乳濁液は、室温(約20から約25℃)で24時間の保存後に良好な安定性も示した。
約75%シェラック/約25%ゼインマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する、機能性成分のマイクロカプセル化
蒸留脱イオン水(D.I.HO)約2400gをビーカーに添加し、四分岐羽根の付いたStedFast Stirrer SL1200(Yamato Scientific;東京、日本)を用いて、設定速度5から6の間で混合した。ジェットミル粉砕ゼイン(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)の粉末約37.5gをビーカーに添加し、均一分散するまで混合した。次に、約10%NaOH水溶液をpHが約11.3に達するまで添加した。ゼイン−水混合物は、ゼイン粉末が完全に溶解し、溶液が半透明になるまで、撹拌した。次に、水酸化アンモニウム溶液(固体25%)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax、オンタリオ、カナダ)約450gを添加し、約5から約10分間混合した。最後に、スクロースステアレートS−1570(Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)の1.4gを、均一混合が行われるまで約5から約10分などの間混合しながら添加した。
次に、精油ブレンド(キャノーラ油約18.8%、α−ピネン約8.6%、パラ−シメン約39.8%、酢酸リナリル約5.4%および酢酸チミル約27.4%)約80gを添加し、約5から約10分間混合した。PowerGen 700D(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)を用いて、約15000rpmで約4分間、次いで約20000rpmで更に約1分間ブレンドすることにより、混合物を均一化して、安定な乳濁液を創製した。続いて、約3%クエン酸溶液を用いた乳濁液の酸滴定を、速度設定最高のMaster Flexポンプ(Barnant Corp.;Barrington,IL)を用いて、中程度にオーバーヘッド混合をしながらpHが約3.8に達するまで行い、それによりスラリーを創製した。
SiO AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)約10gをスラリーに添加し、約20から約30分間混合し続けた。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過し、ケーキを生成した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.HOを約2000gおよびSiO AB−Dを約2.5g混合して、溶液を創製した。ケーキをこの溶液中に再懸濁し、約3から約5分間混合した。混合物を、#200メッシュの篩を用いてろ過し、第2のケーキを生成した。
別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.HOを約2000gおよびSiO AB−Dを約2.5g混合して、別の溶液を創製した。第2のケーキを再び再懸濁し、約3から約5分間混合した。ろ過物を、チーズクロスを用いて圧搾し、余分な水分を除いた。次いで、ろ過物を大きなトレーのクッキングシート上に均一に広げ、カバーをせずに室温(約20から約25℃)で終夜乾燥した。
乾燥ろ過物粒子を、Magic Bullet MB1001(Sino Link International Trading Co.;浙江、中国)を用いて粉砕した。約75から約250μmの間の粒子を、#60メッシュおよび#200メッシュの篩を用いて分離した。水分含量は、CEM Smart System 5(CEM Corp.;Matthews,NC)を用いて測定した。水分含量を約6%未満に減らすために、ろ過物を、Uni−Glatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で約40℃で、約5分毎に確認しながら乾燥した。その結果、最終生成物は、約6%未満の水分含量を有していた。この分画を#60メッシュの篩を通すことにより、篩い分け、#200メッシュの篩上に集め、その結果、約250μm未満で約75μmを超えるサイズの粒子が生成した。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
約75%シェラック/約25%ゼインマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する、機能性成分のパイロットプラント規模でのマイクロカプセル化
水約12kgおよびスクロースステアレート(S−1570、Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)約7.5gを混合タンクに添加し、約1から約2分間混合した。次いで、水酸化アンモニウム溶液(固体約25%)中の作りおきシェラック溶液(Temuss#594;Ajax、オンタリオ、カナダ)約2.25kgを添加した後、ゼイン粉末(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)約187.5gを添加した。約10%水酸化ナトリウム溶液を、pHが約11.3に達するまで測り入れた(ゼインを可溶化するため)。ゼインおよびシェラックが完全に溶解した後、精油ブレンド(キャノーラ油約13%、α−ピネン約10%、パラ−シメン約25%、酢酸リナリル約12%および酢酸チミル約40%)約400gを添加した。この混合物を約5分間撹拌して、乳濁液を創製した。
乳濁液を、pHが約3.9に達するまで約3%クエン酸溶液で滴定した。SiO AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)約75gを添加し、約20から約30分間混合した。次いで、スラリーを、200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過した。篩上のろ過ケーキを、SiO AB−D約50gと共に水約9.1kg中に懸濁し、およそ5分間混合した後、#200メッシュの篩上で再ろ過した。濯ぎ洗いをもう一度繰り返し、最終的なろ過ケーキをトレー上に広げ、室温(約20から約25℃)で終夜乾燥した。翌日、生成物をWaringブレンダー(Waring Lab Science;Torrington,CT)中で粉砕し、UniGlatt流動床(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で40℃で乾燥し、所望のサイズに篩い分けた(約75から約250μm)。得られた生成物のペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
ホエータンパク質を乳化剤として含有するシェラック/ゼインマトリックス中に、オイル担持量が増加したエステル化構成要素を含有する機能性成分のマイクロカプセル化
蒸留脱イオン水(D.I.HO)約2400gをビーカーに添加し、4分岐羽根の付いたStedFast Stirrer SL1200(Yamato Scientific;東京、日本)を用いて、設定速度5から6の間で混合した。ジェットミル粉砕ゼイン(F4000,Freeman Industries;Tuckahoe,NY)の粉末約32.5gをビーカーに添加し、均一分散するまで混合した。約10%NaOH水溶液をpHが約11.3に達するまで添加し、ゼイン粉末が完全に溶解し、溶液が半透明になるまで、混合した。BiPro WPI(Davisco Foods International;Eden Prairie,MN)粉末約20gを次に添加し、粉末が完全に溶解するまで混合した。次に、水酸化アンモニウムを含有する固形分約25%の作りおきシェラック溶液(Temuss#594;Ajax、オンタリオ、カナダ)約390gを添加し、溶液が均一になるまで約5から約10分間混合した。
精油ブレンド(キャノーラ油約13%、α−ピネン約10%、パラ−シメン約25%、酢酸リナリル約12%および酢酸チミル約40%)約151.4gを添加し、約5から約10分間混合した。PowerGen 700D(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)を用いて、約15000rpmで約4分間、次いで約20000rpmで更に約1分間、混合物を均一化して、安定な乳濁液を創製した。約3%クエン酸溶液を、Master Flexポンプを用いて、pHが約3.8に達するまで乳濁液中に滴定し、それによりスラリーを創製した。
SiO AB−D(PPG Industries;Pittsburg,PA)約10gをスラリーに添加し、約20から約30分間混合した。混合物を、#200メッシュの篩を用いてろ過し、ろ過物ケーキを生成した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.HOを約2000g添加し、StedFast Stirrerを用いて混合した。pHは、約3%クエン酸溶液の添加によって3.8+/−約0.2に調整した。スクロースステアレートS−1570(Mitsubishi−Kagaku Food Corp.;東京、日本)の約1gを添加し、完全に溶解するまで混合した後、SiO AB−Dを約2.5g添加した。ケーキをこの溶液中に再懸濁し、約3から約5分間混合した。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いてろ過し、第2のろ過物ケーキを生成した。別の清浄な4000mlプラスチックビーカー中で、D.I.HOを約2000g混合し、約3.0%クエン酸溶液の添加によって、pHを3.8+/−約0.2に調整した。スクロースステアレート約1gを添加し、完全に溶解するまで混合した後、SiO AB−Dを約2.5g添加した。ケーキをこの溶液中に再
懸濁し、約3から約5分間混合した。混合物を、#200メッシュ(75μm)の篩を用いて再びろ過し、第3のろ過物ケーキを生成した。
得られたろ過物を、チーズクロスを用いて圧搾し、水分含量を減らした。ろ過物を大きなトレーのクッキングシート上に均一に広げ、カバーをせずに室温(約20から約25℃)で終夜乾燥した。
得られた粒子を、Magic Bullet MB1001(Sino Link International Trading Co.;浙江、中国)を用いて粉砕した。サイズ約250μm未満の粒子を、#60メッシュの篩を用いて残渣から分離した。水分含量を約6%未満に減らすために、ろ過物を、Uni−Glatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で約40℃で、およそ5分毎に確認しながら乾燥した。その結果、最終生成物は、約6%未満の水分含量を有していた。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
約48%アルギン酸塩、約40%シェラックおよび乳化剤として約12%ホエータンパク質を含有するマトリックス中に、数種のエステル化構成要素を含有する機能性成分のマイクロカプセル化
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)約2.1gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)約11.2gを水約551gに添加した。撹拌下で、約10%BiPro(Davisco Foods International;Eden Prairie,MN)単離ホエータンパク質の溶液約70g、および水酸化アンモニウム溶液(約25%固体)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax、オンタリオ、カナダ)約56gを添加した。次に、精油ブレンド(キャノーラ油約17.4%、α−ピネン約6.6%、パラ−シメン約26.5%、酢酸リナリル約7.9%および酢酸チミル約41.4%)を添加し、Horiba粒径分析器(Horiba Industries;Irvine,CA)で確認した目標液滴サイズ約4から約7μmを有する均一乳濁液が形成されるまで、混合した。次いで、その溶液を約2.5%CaClおよび約2.5%クエン酸を含有する水溶液浴の中に噴霧し、約25から約300μm間の中程度の一滴を創製した。この球体を25μmの篩上に載せて、浴溶液を除いた後、目標の水分(約5から約6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で約40℃で乾燥した。その粒子を約500μm未満で約75μmを超えるサイズに揃えた。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
アルギン酸塩/シェラックマトリックス中にマイクロカプセル化した非エステル化機能性成分
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)約48gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)約10gを水約840.0gに添加した。次いで、撹拌条件下で、固形分約25%入りの作りおきシェラック溶液(Marcoat 125,Emerson Resources;Norristown,PA)約80gを添加した。次に、精油ブレンド(大豆油約24%、α−ピネン約4%、パラ−シメン約30%、リナロール約7%およびチモール約35%)約48gを添加し、混合し、微細で安定な乳濁液が形成されるまで均一化した。二液ノズルを用いて、その溶液を約2.5%CaClおよび約2.5%クエン酸を含有する水溶液硬化浴の中に噴霧し、約25から約300μmの中程度の小球を創製した。粒子が架橋された後、この粒子を25μmの篩上で篩い分け、目標の水分(約5から約6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で約40℃で乾燥した。その粒子を約212μm未満のサイズに揃えた。
下記の表に見られるように、ペイロードは低く、モデル飲料系で味見をしたところ、粒子は、精油の不快な風味/香味をマスクすることができなかった。得られた生成物の組成およびペイロードは、下記の表に例示してある。
約75%アルギン酸塩/約25%シェラックマトリックス中に数種のエステル化構成要素を含有する精油ブレンドのマイクロカプセル化
アルギン酸ナトリウム(ULV−L3G、Kimica Corp;東京、日本)約5.5gおよびアルギン酸ナトリウム(I−3G−150、Kimica Corp;東京、日本)約11gを水約495gに添加した。次いで撹拌下で、水酸化アンモニウム溶液(約25%固体)中の作りおきシェラック(Temuss#594;Ajax、オンタリオ、カナダ)約22gを添加した。次に、精油ブレンド(キャノーラ油約18.5%、α−ピネン約5.4%、パラ−シメン約32.3%、リナロールの酪酸エステル(酪酸リナリル)約11.2%およびチモールの酢酸エステル(酢酸チミル)約32.3%)を添加し、Horiba粒径分析器(Horiba Industries;Irvine,CA)で確認した目標液滴サイズ約4から約7μmを有する、微細で安定な乳濁液が形成されるまで混合し、均一化した。その溶液を約2.5%CaClおよび約2.5%クエン酸を含有する水溶液硬化浴の中に噴霧し、約25から約300μm間の中程度の小球を創製した。次いで、この粒子を25μmの篩上で篩い分けて、浴溶液を除いた後、目標の水分(約5から約6%)に達するまで、MiniGlatt流動床乾燥機(Glatt Air Techniques;Ramsey,NJ)の中で約40℃で乾燥した。その粒子を約212μm未満のサイズに揃えた。
下記の表に示され、実施例6と比較されるように、エステル化構成要素を含有する機能性成分を用いると、ペイロードが有意に増加した。特に図2に見ることができるように、エステル化構成要素を使用したことの意外な有益性は、非エステル化構成要素のペイロードも、エステル化構成要素の存在下で増加したことである。更に、エステル化構成要素は、実施例6で形成された生成物ほど、風味/香味の負の影響を生じなかった。得られた生成物の組成、ペイロードおよび表面オイルは、下記の表に例示してある。
約75%アルギン酸塩/約25%シェラックマトリックス内における、非エステル化およびエステル化機能性成分のペイロード保持率の比較
オリジナル精油ブレンド(非エステル化構成要素:α−ピネン、パラ−シメン、リナロール、チモールおよびキャノーラ油を含有する)で生成した粒子、および数種のエステル化構成要素を含有する精油ブレンド(α−ピネン、パラ−シメン、酪酸リナリル、酢酸チミルおよびキャノーラ油)で生成した粒子の比較を図2に例示する。粒子は、エステル化対非エステル化機能性成分は別として、同じプロセス条件および組成を用いて生成した。この図では、リナロールの量(組合せ)は、リナロールの測定値、および分子組成に基づく酢酸リナリルの測定値のリナロール当量値を合計することにより、計算される。
図2に示すように、精油ブレンドにエステル化構成要素を使用すると、ペイロード保持率が約130%増加し、ペイロード保持率の増加が、機能性成分のエステル化および非エステル化双方の構成要素に見られたことが明らかである。
エステル化機能性成分の胃内放出に対する効果
この実施例は、インビトロ消化モデルを用いた胃腸模倣試験の間における、エステル化機能性成分に対する非エステル化機能性成分の放出を比較する。
図3は、当該化合物の既知の性質を示す。図3の表に示すように、エステル化合物(酢酸リナリル、酪酸リナリルおよび酢酸チミル)の溶解度の値は、親化合物(リナロールおよびチモール)より有意に低い。それに加え、エステル化合物の分配係数は、親化合物より大きい。こうした係数は、エステル化合物が、疎水性担体および不溶性マトリックス材料に対して、親化合物より大きな親和性を有することを示す。図4および5は、模倣胃液中での滞留時間を表す−0.5から0.0時間の間の放出が、何らかのエステル化機能性成分を含有する粒子では大いに減少することを示している。図4のリナロールおよびチモールの放出を図5の酢酸リナリルおよび酢酸チミルの放出と比較すると、減少率が極めて明白である。モデル胃内での安定性のこの改善は、酸性飲料などの他の低pH系における安定性の増加を示唆し、更に、機能性成分の首尾よいマイクロカプセル化および腸溶放出にとって、エステルが重要であることを例示している。
マイクロカプセル化粒子からの放出およびエステル化構成要素の加水分解の調節
この実施例は、エステル化用の各種酸の選択が、その結果としての親化合物の送達率に影響し得る状況を示す。実施例9は、数種のエステル化化合物を含めた結果として、胃モデル内における粒子からの放出率に対する効果を示した。図4および5で明らかなように、胃内放出率が減少すると共に、小腸での滞留時間を表す0〜24.5時間の放出率も減少した。図6および7は、胃および小腸の条件および滞留時間を模倣した消化モデル内における、2種のリナロールエステル、図6の酢酸リナリルおよび図7の酪酸リナリルの放出率を示す。それに加え、消化モデル中に存在する親化合物の経時的な量も測定した。親化合物リナロールの存在は、酢酸リナリルが加水分解した結果である。図6に見られるように、リナロールの初期放出率は、約5%であって、約20%に増加するが、これは、酢酸リナリルがリナロールへ約33%加水分解したことに相関する。図7では、リナロールの初期放出率は、約2%であって、約4%に増加するが、これは、酪酸リナリルがリナロールへ約5%加水分解したことに相関した。こうした結果から、機能性成分を様々な比率の酢酸リナリル対酪酸リナリルで処方することにより、胃管および小腸を介したリナロールの放出発生量を調節できることを理解することができる。
エステル化および非エステル化機能性成分を含むモデル飲料系の比較
2種のモデル飲料の風味プロファイルを比較した。一方の飲料は、非エステル化機能性成分を含む粒子で調製し、他方の飲料は、あるエステル化機能性成分、即ち酢酸リナリルおよび酢酸チミルを含む粒子で調製した。粒子は、実施例2と同様にして創製した。粉末飲料ミックス一杯分量を、等しく2つ分け取った。第1の部分に、非エステル化機能性成分を含む十分量の粒子を、機能性成分が約70mg投与されるように添加した。第2の部分に、エステル化機能性成分を含む十分量の粒子を、機能性成分が約70mg投与されるように添加した。次いで、各粉末/粒子混合物を冷水約200mlに添加し、十分に混合した。
各モデル飲料の試料を味見したとき、審査団は、あるエステル化機能性成分からなる粒子を含有するモデル飲料が、不快な風味および/または香味プロファイルを有意に減少させ、総合的な感覚的経験を改善させているとの結論を下した。
ジチモールエステルの合成
一場合において、ジチモールエステルを、ヘキサン約400ミリリットル中にチモール約65グラムおよびピリジン約50ミリリットルを溶解させることによって生成した。溶解した組合せを室温(約20から約25℃)で撹拌しながら、塩化セバコイル約50グラムを約30から約45分の時間に亘って1回に一滴添加した。塩化セバコイルを添加した後、混合物を室温(約20から約25℃)で一晩反応させた。翌日、混合物をろ過して固体のピリジン塩化物を除去した。セバシン酸ジチモールおよびヘキサンを含有する澄んだろ過物を、約1Nの水酸化ナトリウム、約1Nの塩酸の溶液、次いで水と接触させることによって更なる精製にかけて、任意の望まれない副生成物、未反応出発原料、および残存ピリジンを除去した。次いで、ヘキサン中の澄んだセバシン酸ジチモールを、無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させて微量の水を除去した。硫酸ナトリウムをろ過によって除去し、ヘキサンを蒸留によって除去して、少なくとも約95パーセント純粋なセバシン酸ジチモール約80グラム(約82%の収率)を得た。最終生成物の素性および純度を、ガス−液体クロマトグラフィーおよび質量分析法によって判定した。
ナトリウムチモレート(ナトリウムチモキシド)の調製
一場合において、ナトリウムチモレートを、水約25ミリリットル中に水酸化ナトリウム約8グラムを溶解させ、その後、無水エタノール約225ミリリットルを添加することにより、第1の溶液を作製することによって生成した。第2の溶液を、無水エタノール約100ミリリットル中にチモール約31gを溶解させることによって調製した。第2の溶液を室温(約20から約25℃)で撹拌しながら、第1の溶液を、第2の溶液に1回に一滴添加した。組み合わせた溶液を一晩撹拌した。翌日、組み合わせた溶液をろ過して、微量の任意の未溶解反応物または副生成物を除去した。次いで、無水エタノール、水、および残存チモールを、約40℃の温度で、真空下で一晩、ろ過した、組み合わせた溶液を置くことによって除去した。次いで、乾燥したナトリウムチモレートをフラスコから取り出して、生成物約32グラム(約93%の収率)を得た。乾燥したナトリウムチモレートは、ナトリウムチモレートをヘキサンと混合し(ナトリウムチモレート1グラム当たりヘキサン約2ミリリットル)、ろ過してヘキサンを除去し、真空下で、更に精製されたナトリウムチモレートを乾燥させることによって、更に精製して微量の残存チモールを除去することができる。
プロセスおよび生成物の特定の実施形態に具体的に言及しながら、本組成物および方法を格別に説明してきたが、多様な変化、改変および適合が、本開示に基づいてなし得るものであり、本開示の趣旨に入ることを意図していることは、理解されよう。

Claims (18)

  1. 機能性成分であって、機能性成分の少なくとも一部は、機能性成分の塩形態、機能性成分の錯体形態、機能性成分のグリコシド形態、およびそれらの混合物からなる群から選択される修飾された形態である機能性成分と、
    不活性担体と、
    機能性成分および不活性担体をマイクロカプセル化し、食品用腸溶性高分子を含んだ腸溶性マトリックスと、
    を含み、
    修飾された形態の機能性成分は、加水分解されて機能性成分の元の非修飾形態になるように構成されていることを特徴とする、
    組成物。
  2. 機能性成分は、リナロールおよびチモールのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 機能性成分の少なくとも約20%は、修飾された形態の機能性成分の形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
  4. 機能性成分の少なくとも約50%は、修飾された形態の機能性成分の形態であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 不活性担体は、脂質を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 脂質は、トリグリセリドであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
  7. トリグリセリドは、大豆油およびキャノーラ油を含む群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
  8. 機能性成分対腸溶性マトリックス材料の比は、約1:19から約1:1に及ぶことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 腸溶性マトリックスは、ゼイン、シェラック、アルギン酸カルシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 水および腸溶性マトリックス材料の組合せを適切なpHで撹拌して、腸溶性マトリックス材料を可溶化するステップと、
    機能性成分を前記組合せに添加するステップであって、機能性成分の少なくとも一部は、機能性成分の塩形態、機能性成分の錯体形態、機能性成分のグリコシド形態、およびそれらの混合物からなる群から選択される修飾された形態の機能性成分の形態であるステップと、
    前記組合せおよび機能性成分を混合して、乳濁液を創製するステップと、
    撹拌しながら、粒子状沈殿の形成に有効な量の架橋剤または沈殿剤で、乳濁液を滴定するステップと、
    を含み、
    修飾された形態の機能性成分は、加水分解されて機能性成分の元の非修飾形態になるように構成されることを特徴とする、
    方法。
  11. 機能性成分は、リナロールおよびチモールのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 機能性成分の少なくとも約20%は、修飾された形態の機能性成分の形態であることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
  13. 機能性成分の少なくとも約50%は、修飾された形態の機能性成分の形態であることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記組合せは、乳化剤を更に含むことを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 粒子状沈殿をろ過し、洗浄し、乾燥して、乾燥粉末を生成するステップ、を更に含むことを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 残存表面オイルの減少に有効な量の表面オイル除去剤を粒子状沈殿上に添加するステップ、を更に含むことを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 機能性成分および前記組合せを撹拌して、粗製乳濁液を創製するステップを更に含むことを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 粗製乳濁液を均一化して、微細で安定な乳濁液を創製するステップを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
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