JP2014231824A - エンジン冷却装置 - Google Patents

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吉田 雅澄
Masazumi Yoshida
雅澄 吉田
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Abstract

【課題】ウオータポンプ等の冷却装置をあまり大型化することなく、エンジンの温度管理を効率的に行うエンジン冷却装置を構成する。
【解決手段】エンジンEの駆動力が動力断続機構12を介して伝えられる第1ポンプP1の作動によりエンジンEの内部で冷却水を第1方向F1に送る第1流路R1を備え、電動型の第2ポンプP2の作動によりエンジンEの内部で冷却水を第1方向とは逆方向となる第2方向に送る第2流路R2を備えている。第2ポンプP2の作動時には第2流路R2の冷却水の一部をエンジンEに供給しつつ、冷却水の残余を第1流路R1に供給するように第2流路R2と第1流路R1とが接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン冷却装置に関し、詳しくは、冷却水によってエンジンの温度管理を行う技術に関する。
上記のように構成されたエンジン冷却装置として特許文献1には、エンジンのカムシャフトとともに回転する第1ウォータポンプにより、エンジンの冷却水をラジエータに供給する構成が示されている。この特許文献1には、ラジエータから第1ウォータポンプに冷却水が戻る経路中にサーモスタットを備え、このサーモスタットと第1ウォータポンプとを結ぶ経路の冷却水をヒータに送り、このヒータからラジエータに送る電動型の第2ウォータポンプを備えた構成が示されている。
また、特許文献2には、エンジンのクランク軸に対してクラッチを介して連結する機械式ウォータポンプにより、エンジンの冷却水をラジエータに供給する構成が示されている。この特許文献2には、エンジンからラジエータに冷却水を送る経路にサーモスタットを備え、ラジエータからエンジンに冷却水を戻す経路に電動ウォータポンプを備えた構成が示されている。
また、特許文献3には、エンジンの駆動力が電磁クラッチ等により結合又は切断される主冷却水ポンプと、電動型の冷却水ポンプとを備えた構成が示されている。主冷却水ポンプは、ラジエータから戻る冷却水をエンジンに送る経路に備えられ、この経路にはサーモスタット(文献では第2の制御ユニット)が介装されている。なお、特許文献3には第2の制御ユニットが電気式混合弁であっても良いことも示されている。
この特許文献3では、エンジンから送り出された冷却水は、暖房回路と冷房回路とに分流して送られる。暖房回路には乗員熱交換器と、前述した冷却水ポンプとが備えられ、この冷却水ポンプは主冷却水ポンプの吸引側に冷却水を送るように構成されている。また、冷却回路に送られる冷却水はサーモスタットを介してラジエータに送られると共に、このサーモスタットから分岐するバイパス回路から主冷却水ポンプの吸引側に供給されるように構成されている。
特開2000‐179339号公報 特開2004‐293430号公報 特表2006‐528297号公報
特許文献1に示される第1ウォータポンプは、エンジンの稼動時に常に作動する構成であるため、冷却水が常に流れることになり、早期暖機を実現できないものである。これに対して特許文献2に記載されるようにクラッチを介して駆動されるポンプを備える構成では、クラッチを遮断する制御により早期の暖機の実現が可能である。
ただし、ラジエータとエンジンとの間で冷却水を循環させる流路には比較的大径のラジエータホースが用いられる。従って、特許文献2に示されるようにラジエータとエンジンとの間の流路に電動ポンプを備える構成では、電動ポンプの吸入部と吐出部との開口径がラジエータホースに対応して大径化する必要がある。このような理由から、ポンプハウジングが大型化し、電動ポンプの大径化を招くものであった。また、電動ポンプの配置を考えると、エンジンに対するラジエータホースとラジエータとの相対的な位置関係を大きく変更できないため、ラジエータとエンジンとの間に電動ポンプを配置するための空間の確保が困難になるものであった。
また、特許文献3に示される構成では、乗員熱交換器で熱を得るために電動型の冷却水ポンプを駆動した場合には、冷却水がバイパス回路に多く流れてしまい、エンジンからの冷却水を乗員熱交換器に供給できないことも考えられ、改善の余地があった。
エンジンは、出力に比例した熱を発生するため、出力に対応した冷却水を必要とする。しかしながら、同じエンジン回転速度であっても、スロットル開度によって吸入空気量は様々に変化するのでエンジン出力も様々に変化することになる。エンジン回転速度に同期する、いわゆるメカニカルウォータポンプでは冷却水の供給がエンジン出力に拘わらず、エンジン回転速度が一定となるため、エンジンの冷却不足又は過剰となってしまう運転領域が多い。一方、電動ポンプは、冷却水の供給量の調節がエンジン回転速度によらず可能であるため、エンジンの温度を高精度で管理するには電動ポンプによってエンジンの冷却を行わせることが望ましい。しかしながら、夏期の高温の環境において登坂路を走行するようにエンジンの出力が大きく、かつ高温となる場合には、これに対応する多量の冷却水の供給を必要とする。多量の冷却水の供給を実現する電動ポンプは、エンジンが高出力化するほど大型化するため、搭載性やコストが現実的でなくなる。この理由から高出力エンジン向けに、小型かつ適正なコストで冷却水の供給調整のできる冷却構成が望まれている。
本発明の目的は、エンジンに流れる冷却水の制御によりエンジン温度を適正に管理できるエンジン冷却装置を合理的に構成する点にある。
本発明の特徴は、電動型の動力断続機構を有し、エンジンの駆動力が前記動力断続機構を介して伝えられる第1ポンプと、前記第1ポンプの作動により前記エンジンの内部で第1方向に沿って前記エンジンを冷却する冷却水の流れを許容する第1流路と、電動型の第2ポンプと、冷却水の熱を取り出す熱交換部と、前記第2ポンプの作動により前記エンジンの内部で前記第1方向と異なる方向となる第2方向に沿って冷却水の流れを許容する第2流路と、冷却水が設定温度より低い場合には前記第1流路内の冷却水の流れを遮断し、冷却水が前記設定温度を超える場合には前記第1流路内の冷却水の流れを許容するサーモスタットと、冷却水の温度に基づき、前記第1ポンプの前記動力断続機構及び前記第2ポンプを制御する電子制御ユニットとを備え、前記第1ポンプは前記第1流路上に設けられ、前記第2ポンプおよび前記熱交換部は前記第2流路上に設けられ、冷却水の残余が前記第1流路に供給されるように前記第2流路と前記第1流路とが接続される点にある。
この構成によると、冷却水が低温状態にある場合には、サーモスタットが遮断状態にあるため、第1流路での冷却水の流れを阻止して暖機が促進される。冷却水の温度が上昇してサーモスタットが冷却水の流れを許容する状態に移行した後には、第1ポンプと第2ポンプとの何れにも冷却水の循環が可能となる。また、第1流路はエンジンを通過した冷却水が循環する構成であるため、単純に循環させるだけでも冷却水の冷却が可能である。従って、サーモスタットが冷却水の流れを許容する状態において、第2ポンプを作動させた場合には、第2流路の冷却水がエンジンと第1流路とに供給され、第1流路で冷却された冷却水をエンジンの内部に供給してエンジンの冷却を行える。
第2流路は、冷却水の冷却を積極的に行うための第1流路と比較して単位時間あたりに流れる冷却水の量が少なく、第1流路に使用されるホース類と比較すると、この第2流路に使用されるホース類の内径が小さい。また、第2流路として、例えば、乗用車の暖房を行うヒータに対してホースにより冷却水を供給するものを想定すると、第2ポンプにホースを引き込むことも可能となり第2配置スペースを容易に確保できる。このような理由から、第2流路の第2ポンプの小型化が可能となり、この第2ポンプの配置の自由度も高まる。
また、第2ポンプを作動した場合には、エンジンの内部には第1ポンプを作動した場合とは異なる方向(逆の方向も含む)に冷却水が送られるが、第1流路には、第1ポンプを作動させた場合と同じ方向に冷却水を流すことが可能である。これにより、第2ポンプを作動させた場合には、第1ポンプP1を作動させた場合と同じ方向に冷却水を流して冷却水の冷却を行える。
更に、エンジンが低出力で稼動する状況では、冷却水の循環量が少なくて済むため、小型の電動型の第2ポンプを用いることが可能となる。第2ポンプは制御により冷却水の流量を調節できるため、例えば、エンジンの温度に応じて冷却水の循環量を精密に調節することによりエンジンを稼動に適した温度に維持して燃費を向上させ、排気ガスに含まれる有害成分の低減も可能となる。
第1ポンプは、動力断続機構を接続する操作によりエンジンの強力な駆動力を用いて作動させることが可能である。これにより、エンジンが高出力で稼動する状況では第1ポンプを作動させることでエンジンの確実な冷却が可能となり、小型の第2ポンプを用いる必要がない。
このように、エンジンからの駆動力が動力断続機構により断続されるポンプと、電動型のポンプとを用いることにより、エンジンに流れる冷却水を制御してエンジン温度を適正に管理でき、搭載性も良く、コストアップの少ないエンジン冷却装置が構成できる。
本発明は、前記エンジンが、シリンダブロック側開口部と、シリンダヘッド側開口部とを備えており、前記第1ポンプの作動時には前記シリンダブロック側開口部から前記エンジンの内部に冷却水が送り込まれ、前記シリンダヘッド側開口部から冷却水が送り出されるように前記第1方向が設定されても良い。
これによると、第1ポンプを作動した場合には、冷却水をシリンダブロック側開口部からエンジンの内部に送り込み、エンジンで加熱された冷却水をシリンダヘッド側開口部からエンジンの外部に送り出し、この冷却水を第1流路で冷却することが可能となる。また、第2ポンプを作動させた場合には、冷却水をシリンダヘッド側開口部からエンジンの内部に送り込み、シリンダブロック側開口部からエンジンの外部に送り出す。つまり、第2ポンプを作動させた場合には、冷却水が、エンジンで最も高温となるシリンダヘッド側を冷却した後に、これより低温となるシリンダブロック側に流れるため、シリンダを過剰に冷却することがなく、過剰な冷却に伴うオイルの粘性の増大を抑制して円滑な作動を実現する。
本発明は、冷却水の温度を検出する温度センサを備え、前記温度センサによって検出される温度が設定値未満である場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプと前記第2ポンプとを停止し、前記温度センサによって検出される温度が設定値を超えた場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプを停止し、前記第2ポンプを作動し、前記温度センサによって検出される温度が設定値を超えた状態であり且つ前記エンジンの出力が所定値より大きい場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプを作動させ、前記第2ポンプを停止しても良い。
これによると、温度センサで検出される温度が設定値未満である場合には電子制御ユニットが第1ポンプと第2ポンプとを停止するように指令することで暖機制御が行われる。この暖機制御では、第1流路と第2流路との何れにも冷却水を循環させず、エンジンの温度の迅速な上昇を実現する。なお、サーモスタットが冷却水の流れを遮断する状態から流れを許容する状態に切り換わる設定温度を、暖機が完了する温度に設定する必要はないが、エンジンの始動時には冷却水の流れを阻止する状態にあるため、エンジンの暖機時間の短縮を確実に行う。
次に、温度センサで検出される温度が設定値を超えた場合には、電子制御ユニットが第1ポンプを停止し第2ポンプのみを作動させるように指令することで冷却水をエンジンの内部に供給して低流量制御による精密な冷却が可能となる。更に、温度センサで検出される温度が設定値を超えた状態でエンジンが高出力運転時であることを判定した場合には、電子制御ユニットが第1ポンプを作動させ、第2ポンプを停止させるように指令することでエンジンの駆動力を用いた強力な冷却が実現しエンジンが適温に維持される。
エンジン冷却装置の構成を示すブロック図である。 低流量制御での冷却水の流れを示すブロック図である。 高流量制御での冷却水の流れを示すブロック図である。 エンジン温管理ルーチンのフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、第1ポンプP1の作動によりエンジンEの冷却水を第1方向F1に循環させる冷却用の第1流路R1と、第2ポンプP2の作動によりエンジンEの冷却水を第2方向F2に循環させる熱交換用の第2流路R2とを備えてエンジン冷却装置が構成されている。
このエンジン冷却装置は、乗用車等の車両のエンジンEに備えられるものである。エンジンEは、シリンダブロックEbの上部にシリンダヘッドEhを連結し、シリンダブロックEbからシリンダヘッドEhに亘る領域にウォータジャケットを形成した構造を有している。このエンジンEでは、シリンダ下部位置の(シリンダブロックEbの)ウォータジャケットに連通するシリンダブロック側開口部1が形成され、シリンダ上部位置の(シリンダヘッドEhの)ウォータジャケットに連通するシリンダヘッド側開口部2が形成されている。
本発明のエンジン冷却装置では、エンジンEの冷却水の温度を検出する温度センサSをシリンダヘッド側開口部2の近傍位置に備え、この温度センサSの検出結果に基づいて第1ポンプP1と第2ポンプP2との作動を制御する電子制御ユニット(ECU)10を備えている。温度センサSは冷却水の水温からエンジンEの温度を計測するものであり、この温度センサSはエンジンEの外壁や、エンジンEの内部に備えられるものであっても良い。
第1ポンプP1は、エンジンEのクランクシャフトあるいはカムシャフトからの駆動力が伝動機構11を介して伝えられる電動型の動力断続機構としての電磁クラッチ12を介して伝えられるように構成されている。第1流路R1には、エンジンEから送り出される冷却水を冷却するラジエータ13と、冷却水の温度により開閉作動するサーモスタット14とを備えている。尚、動力断続機構は、電磁クラッチ12に限るものでなく、例えば、エンジンEの駆動力により常時回転する回転部材と、この回転部材の外周面に接触する位置と離間する位置とに電気的に切換られる中間部材とを有し、この中間部材が回転部材の外周に接触した際にエンジンEの駆動力で中間部材を回転させるように構成されたものでも良い。また、動力断続機構として、ベルト作用する張力のを電気的に調節することにより伝動状態と、動力を遮断するベルトテンション式のものでも良い。
サーモスタット14は、バネの付勢力により冷却水の流れを遮断する弁体と、冷却水の水温の上昇に伴いワックスが膨張することによりバネの付勢力に抗して弁体を開放する弁操作部とを備えた一般的な構成を有している。これにより、冷却水の水温が所定値未満である場合には、サーモスタット14はラジエータ13から第1ポンプP1と第2ポンプP2とに対する冷却水の流れを遮断するように閉じ状態を維持する。そして、水温が所定値を超えた場合に、冷却水の流れを許容するように開放状態に切り換わる。
第1流路R1は、シリンダヘッド側開口部2から冷却水をラジエータ13に送り出す第1送水路3と、ラジエータ13からの冷却水を、サーモスタット14を介してシリンダブロック側開口部1に戻す第1還元水路4とを備えている。
第2ポンプP2は、ブラシレス直流モータや同期モータ等の電動モータ15の駆動により作動するように(電動型に)構成されている。第2流路R2には、冷却水から熱を取り出し、車内の暖房を行うヒータ16(熱交換部の一例)を備えて構成されている。この第2ポンプP2は第1ポンプP1と比較して冷却水を送る能力の小さいものが使用されている。
この第2流路R2は、ヒータ16からの冷却水をシリンダヘッド側開口部2に送る第2送水路5と、エンジンEのシリンダブロック側開口部1からの冷却水を、サーモスタット14を介してヒータ16に戻す第2還元水路6とを備えている。
第1ポンプP1と、第2ポンプP2とは、例えば、ハウジング内において複数のインペラが回転して冷却水を送る遠心型の構成のものが想定されている。このような構成では第1ポンプP1と、第2ポンプP2との何れも複数のインペラ同士の間に間隙が形成され、インペラとハウジングとの間にも間隙がある。従って、停止時には、これらの間隙に冷却水を流せることになる。
このエンジン冷却装置では、第1流路R1の第1送水路3のうちシリンダヘッド側開口部2に接続する領域と、第2流路R2の第2送水路5のうちシリンダヘッド側開口部2に接続する領域とが共通する水路として構成されている。これと同様に、第1流路R1の第1還元水路4のうちシリンダブロック側開口部1に接続する領域と、第2流路の第2還元水路6のうちシリンダブロック側開口部1に接続する領域とが共通する水路として構成され、この共通する水路部分に前述した第1ポンプP1とサーモスタット14とが介装されている。
つまり、第2ポンプP2の作動時には第2流路R2の第2送水路5に流れる冷却水の一部をエンジンEのシリンダヘッド側開口部2に供給しつつ、この冷却水の残余を第1流路R1の第1送水路3に供給するように、第2流路R2の第2送水路5と第1流路R1の第1送水路3とが接続している。この構成は、第1ポンプP1の作動時にはエンジンEのシリンダヘッド側開口部2から排出された冷却水の一部を第1流路R1の第1送水路3に供給すると共に、冷却水の残余を第2流路R2の第2送水路5に供給する。
尚、第2ポンプP2を、第2方向F2においてヒータ16より下流側となる第2送水路5に備えても良い。
〔制御構成〕
電子制御ユニット10は、マイクロプロセッサ等を備えることにより、予め設定されたプログラムに従って制御を行うECUとして構成されている。この電子制御ユニット10は、温度センサSの検出結果を取得し、エンジン回転速度と吸入空気量との情報を取得する入力ポートを備えている。また、この電子制御ユニット10は、第1ポンプP1の電磁クラッチ12と、第2ポンプP2の電動モータ15とに制御信号を出力する出力ポートを備えている。つまり、エンジンEの回転速度と吸入空気量の情報とを取得するために、回転速度センサやスロットル開度センサ等を備えており、これらで取得した情報が電子制御ユニット10に出力される。
この電子制御ユニット10では、温度センサSの検出結果に基づいて、暖機制御と、低流量制御と、高流量制御との何れかの制御を行う。
前述したサーモスタット14は、暖機制御が継続する状況においても冷却水の水温が所定値を超えた場合に開放するように構成されている。
〔制御形態〕
本発明のエンジン冷却装置では、エンジンEを始動した直後には第1ポンプP1と、第2ポンプP2とを停止状態に設定する。また、エンジンEを始動した後には、これらの停止状態を維持することにより暖機制御に移行し、エンジンEの温度上昇に伴い低流量制御と、高流量制御との何れかを実行するように電子制御ユニット10の制御形態が設定されている。この制御形態の概要を図4のフローチャートに示しており、これを以下に説明する。
つまり、電子制御ユニット10は、エンジンEが始動した後には温度センサSの検出信号を取得し、検出値が設定値未満である場合には第1ポンプP1と第2ポンプP2とが停止状態に維持されるように第1ポンプP1及び第2ポンプP2に指令する(#01〜#03ステップ)。
この制御では、第1ポンプP1の電磁クラッチ12を切り(遮断)状態に維持し、第2ポンプP2の電動モータ15に電力を供給しない状態を維持する。これによりエンジンEに対する冷却水の出入りがなく、暖機が促進される。
このように第1ポンプP1と第2ポンプP2とを停止状態に維持する制御が暖機制御である。
この暖機制御が行われることにより、温度センサSで検出される温度が上昇し、設定値を超えた場合には、電子制御ユニット10が、エンジン回転速度と吸入空気量とに関する情報を取得し、エンジンEが低出力状態であることを判定した場合には、第1ポンプP1が停止されたまま、第2ポンプP2が作動するように第1ポンプP1及び第2ポンプP2に指令する(#04〜#06ステップ)。
この制御が低流量制御であり、この低流量制御では図2に示すように、第2ポンプP2の電動モータ15の作動で第2送水路5に送り出された冷却水の一部がエンジンEのシリンダヘッド側開口部2からエンジンEの内部に供給され、冷却水の残余が第1送水路3に供給される。
このように、冷却水はエンジンEと第1送水路3とに分岐して流れるため、エンジンEの内部に流れた冷却水の水温は上昇するが、ラジエータ13に流れた冷却水の水温は低下する。次に、水温が異なる冷却水が第2還元水路6において混じり合う形態で循環するため、冷却水の水温の上昇を抑制して良好にエンジンEの冷却が実現するのである。
特に、低流量制御が行われる際には、温度センサSで検出される水温が上昇するほど、第2ポンプP2の回転速度を高速化する制御が行われる。この制御が行われることにより、エンジンEを稼動に適した温度に維持して燃費を向上させ、排気ガスに含まれる有害成分の低減も可能となる。
また、シリンダヘッド側開口部2からエンジンEの内部に供給された冷却水は、ウォータジャケットを上部から下部に送られ、エンジンEのシリンダブロック側開口部1からエンジンEの外部に送り出され、第1ポンプP1とサーモスタット14とを通過して第2流路R2(第2還元水路6)に戻される。また、第2送水路5から第1送水路3に供給された冷却水は、ラジエータ13で冷却され、更に、第1還元水路4から、サーモスタット14を通過して第2還元水路6に流れることでエンジンEの内部を送られた冷却水と混じり合って第2ポンプP2に達するのである。
更に、エンジンEのシリンダヘッド側開口部2からエンジンEの内部に送られる冷却水が、エンジンEの最も高温となるシリンダヘッドEhの部分を冷却した後に、シリンダブロックEbの方向に流れるため、エンジンEの全体をバランス良く冷却して、シリンダブロックEbの過剰な冷却を防ぐことができる。なお、シリンダブロック側開口部1からエンジンEの内部に冷却水を供給した場合には、シリンダブロックEb部分を過剰に冷却するため、シリンダブロックEbとピストンとの間のオイルの粘性が増大し、潤滑性を悪化させることになるが、シリンダヘッド側開口部2からエンジンEの内部に冷却水を供給することにより、シリンダブロックEbとピストンとの間の潤滑性を高めて円滑な作動を行わせ、燃費性能の向上を可能にする。
次に、温度センサSで検出される温度が設定値を超えた状態で、電子制御ユニット10は、取得したエンジン回転速度と吸入空気量とに関する情報から、エンジンEが高出力状態であることを判定した場合には、第2ポンプP2が停止され、第1ポンプP1が作動されるように、第1ポンプP1及び第2ポンプP2に指令する(#04、#05、#07ステップ)。
この制御が高流量制御であり、この高流量制御では図3に示すように、電磁クラッチ12の入り(接続)制御により第1ポンプP1を作動させることによりエンジンEのシリンダブロック側開口部1からエンジンEの内部に冷却水が供給される。このように供給された冷却水は、エンジンEのウォータジャケットを下部から上部に送られ、エンジンEのシリンダヘッド側開口部2からエンジンEの外部に送り出され、この冷却水の一部は第1送水路3に供給され、冷却水の残余は第2送水路5に供給される。
これにより、第1送水路3に供給された冷却水はラジエータ13で冷却され、第1還元水路4からサーモスタット14を介して第1ポンプP1に戻される。また、第2送水路5に供給された冷却水はヒータ16と、第2ポンプP2とを通過して第2還元水路6に流れ、サーモスタット14を介して第1ポンプP1に戻される。
つまり、この高流量制御は、夏期の高温の環境において登坂路を走行する場合のようにエンジンEに大きい出力が必要で、且つ高温となる状況を想定しており、この高流量制御を実行することにより、冷却水が第2流路R2にも流れることになるが、第2ポンプP2と比較して大容量の第1ポンプP1を作動させることにより、多量の冷却水を第1流路R1のラジエータ13に供給することによりエンジンEのオーバーヒートを抑制するのである。
〔実施形態の作用・効果〕
前述したように、このエンジン冷却装置では暖機制御時には、第1ポンプP1と第2ポンプP2とが停止する構成であるため、冷却水を循環させる構成として特許文献2(特開2004‐293430号公報)や特許文献3(特表2006‐528297号公報)に記載されるバイパス流路を形成しなくて済み、装置の簡素化が可能となる。また、バイパス流路が省略されると、第1送水路3と、第1還元水路4との短縮が可能となり、これらの内部の冷却水を少なくできるため、第2ポンプP2の作動を開始した場合には、サーモスタット14に対して低温の多量の冷却水が流れる不都合がなく、例えば、サーモスタットが閉じ状態と開放状態とを短時間のうちに繰り返すハンチングが抑制される。
特に、本発明では、エンジンEの駆動力で作動する第1ポンプP1を備え、エンジンEが高出力で稼動する場合に、第1ポンプP1を作動させることでエンジンEに充分な量の冷却水を供給して適正に冷却できるように構成している。これにより、第2ポンプP2で多量の冷却水を供給する必要はなく、第2ポンプP2の小型化を実現している。また、この第2ポンプP2はヒータ16に冷却水を送るホースに介装できるため、この第2ポンプP2を容易に配置でき、結果として冷却装置全体の小型化を実現している。
例えば、V6やV8といった多気筒の高出力のエンジンEを搭載した乗用車では、エンジンEを高出力で運転する状況は少なく、低出力での運転が常用となる。この常用時には第2ポンプP2で精密な温度制御ができるので燃費を向上でき、また頻度としては少ないが、エンジン高出力時には第1ポンプP1で確実に冷却し、エンジンEの信頼性を確保できる。
本発明は、冷却水によってエンジンの冷却を行うエンジン冷却装置に利用することができる。
1 シリンダブロック側開口部
2 シリンダヘッド側開口部
10 電子制御ユニット(ECU)
12 動力断続機構(電磁クラッチ)
14 サーモスタット
16 熱交換部・ヒータ
E エンジン
F1 第1方向
F2 第2方向
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
R1 第1流路
R2 第2流路
S 温度センサ

Claims (3)

  1. 電動型の動力断続機構を有し、エンジンの駆動力が前記動力断続機構を介して伝えられる第1ポンプと、
    前記第1ポンプの作動により前記エンジンの内部で第1方向に沿って前記エンジンを冷却する冷却水の流れを許容する第1流路と、
    電動型の第2ポンプと、
    冷却水の熱を取り出す熱交換部と、
    前記第2ポンプの作動により前記エンジンの内部で前記第1方向と異なる方向となる第2方向に沿って冷却水の流れを許容する第2流路と、
    冷却水が設定温度より低い場合には前記第1流路内の冷却水の流れを遮断し、冷却水が前記設定温度を超える場合には前記第1流路内の冷却水の流れを許容するサーモスタットと、
    冷却水の温度に基づき、前記第1ポンプの前記動力断続機構及び前記第2ポンプを制御する電子制御ユニットとを備え、
    前記第1ポンプは前記第1流路上に設けられ、前記第2ポンプおよび前記熱交換部は前記第2流路上に設けられ、冷却水の残余が前記第1流路に供給されるように前記第2流路と前記第1流路とが接続されるエンジン冷却装置。
  2. 前記エンジンが、シリンダブロック側開口部と、シリンダヘッド側開口部とを備えており、前記第1ポンプの作動時には前記シリンダブロック側開口部から前記エンジンの内部に冷却水が送り込まれ、前記シリンダヘッド側開口部から冷却水が送り出されるように前記第1方向が設定されている請求項1記載のエンジン冷却装置。
  3. 冷却水の温度を検出する温度センサを備え、前記温度センサによって検出される温度が設定値未満である場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプと前記第2ポンプとを停止し、
    前記温度センサによって検出される温度が設定値を超えた場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプを停止し、前記第2ポンプを作動し、
    前記温度センサによって検出される温度が設定値を超えた状態であり且つ前記エンジンの出力が所定値より大きい場合には、前記電子制御ユニットが、前記第1ポンプを作動させ、前記第2ポンプを停止する請求項1又は2記載のエンジン冷却装置。
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