以下、本発明を実施するための形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本実施の形態において、電子写真感光体の結着樹脂として好適に用いられるポリアリレート樹脂は、実質的に芳香族ジカルボン酸成分と芳香族二価アルコール成分とから構成される芳香族ポリエステルであり、ポリアリレート樹脂中に存在するカルボン酸ハライド末端の少ないものである。
より具体的には、前記ポリアリレート樹脂が含有する下記一般式(1)で示されるカルボン酸ハライド末端が10ppm以下であることが必要である。このカルボン酸ハライド末端10ppm以下を達成するためには種々の方法があり、反応時に有機溶媒に含まれるポリマー濃度を調整したり、使用する触媒の種類を特定のものにしたり、該触媒の使用順を特定のものにしたり、該触媒の量を特定のものにしたりすることにより達成されるが、重合途中でポリマー濃度を変化させ、且つ、触媒と補助触媒とを併用することが特に有効である。更に、実質的に界面重合反応を15℃以上で行うことが好ましく、分子量の大きなポリアリレート樹脂を得るためには40℃以下で行うことが好ましい。
一般式(1)中、PARはポリアリレート鎖を表し、Xはハロゲン原子を表す。
本実施の形態では、ポリアリレート樹脂におけるカルボン酸ハライド末端の有するハロ
ゲン原子が、塩素原子であることが好ましい。
また、本実施の形態が適用されるポリアリレート樹脂は、下記一般式(2)で示される
繰り返し単位を有し、1種類の芳香族ジカルボン酸ハライドと2種類以上の二価フェノー
ル成分を使用することが好ましい。
ここで、一般式(2)中、R1〜R8は、各々孤立に水素原子、炭素数1以上の任意の
炭化水素基を表し、Xは、単結合、酸素結合、硫黄結合、アルキレン基、アルキリデン基
、フェニルアルキリデン基、環状炭化水素基からなる群から選ばれ、Yは、フェニレン基
、ビフェニレン基、ナフチレン基、脂肪族炭化水素基、環状炭化水素基からなる群から選
ばれる。
さらに、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジクロライドを、二価フェノール
成分として下記構造式(A)及び下記一般式(3)で示される二価フェノールを使用する
ことが好ましい。
ここで、一般式(3)は下記構造式(B)、構造式(C)、構造式(D)で表される群
から選ばれる1種又は複数の混合物である。
<ポリアリレート樹脂>
ポリアリレート樹脂が含有する一般式(1)で表されるカルボン酸ハライド末端の定量方法は、該カルボン酸ハライド基を測定することによって求められる。ポリアリレート樹脂約1gを精秤し、塩化メチレン20mLを加えて溶解した。これに4−(p−ニトロベンジル)ピリジン(和光純薬、試薬特級)の1重量%塩化メチレン溶液2mLを加え発色させ、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−1600)を用い約440nmの波長での吸光度を測定した。別に、フェニルクロロホルメートもしくは該カルボン酸ジハライドの塩化メチレン溶液を用い、吸光係数を求め、サンプル中のカルボン酸ハライド基に由来する微量ハロゲン量を定量した。定量下限は塩素量換算で0.2ppm対固形分であった。
本測定法においては、ポリアリレート樹脂中に存在する遊離ハロゲン原子は観測されない。その為、本測定により得られた値は純粋にポリアリレート樹脂中に存在するカルボン酸ハライド末端のみのものとなる。
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量の測定は、まずポリアリレート樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調整した。次にウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0並びに試料溶液の流下時間tを測定した。そして以下の式に従って、粘度平均分子量Mvを算出した。
a=(0.28×ηsp)+1
b=10×(ηsp/C)
ηsp=(t/t0)−1
C=6.00(g/L)
η=(b/a)
Mv=51400×[η]exp1.205
ポリアリレート樹脂を構成する芳香族二価アルコール成分としては、二価フェノール成分、二価ナフトール成分等が挙げられるが、二価フェノール成分が好ましく、二価フェノール成分としては、構造式(A)で示されるビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン及び一般式(2)にて示されるビス(ヒドロキシフェニル)メタン[構造式(B)にて示されるビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、構造式(C)にて示される(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び、構造式(D)にて示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのうちの一種もしくは複数の混合物]を用いることが好ましい。前述した二価フェノールのすべてまたは一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の二価フェノールに置き換えても良い。
置き換えることができる二価フェノール成分の具体例は、以下の通りである。例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフルオレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、
4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)〕、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジ−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イチサンビスフェノール、イチサンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノール、
2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、1,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン、1,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン等のテルペンジフェノール類等を挙げることができる。これらの二価フェノールは2種類で併用して用いるが、1種類で用いることも3種類以上で併用することも可能である。
また、前述した二価フェノールの一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の二価アルコール類で置き換えてもよい。そのような二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
ポリアリレート樹脂を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、通常、ポリアリレートに用いることができるものであれば、公知のどのようなものであっても構わない。例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸や、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基が1個ないし2個置換したフタル酸誘導体類;1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸誘導体類;4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン等のハロゲン化物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸ハライドとして用いることが好ましく、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でもテレフタル酸ジクロライドを用いることが好ましい。
また、前述した芳香族ジカルボン酸ハライドの一部を、実質的にその特性を損なわない範囲で、他の脂肪族ジカルボン酸ジハライド類で置き換えてもよい。そのようなジカルボン酸ジハライドとしては、ジカルボキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ドデカン二酸等のそれぞれのジハライドを挙げることができる。これらのハライドには塩素、臭素等が挙げられるが、塩素が好ましい。
ポリアリレート樹脂の末端は、フェノールのほか、o,m,p−クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−n−プロピルフェノール、o,m,p−イソプロピルフェノール、o,m,p−n−ブチルフェノール、o,m,p−イソブチルフェノール、o,m,p−sec−ブチルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の一価のアルコール;酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸等の一価のカルボン酸;安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート等の酸クロライド類で封鎖されていてもよい。これらの化合物は、分子量調整剤として機能しており、特に、2,3,6−トリメチルフェノールが分子量調整の機能が高く好ましい。
(ポリアリレート樹脂の製造方法)
次に、本実施の形態が適用されるポリアリレート樹脂の製造方法について説明する。本実施の形態におけるポリアリレート樹脂は、重合触媒の存在下で、芳香族二価アルコールを溶解したアルカリ水溶液と、芳香族ジカルボン酸ハライドの有機溶剤溶液とを反応させることにより行われる。この際、原料の酸ハライド基とフェノール性水酸基とのモル比を1.006以上とし、且つ、重合後期に補助触媒を用いることが、ポリアリレート樹脂中に存在するカルボン酸ハライド末端量の制御に必要である。
酸ハライド基とフェノール性水酸基とのモル比は1.006〜1.025が好ましく、1.020〜1.025がより好ましい。1.006未満となると使用する芳香族二価フェノールが未反応として残存し、所望の分子量が得られないことがあり好ましくない。一方1.025より大きくなると、カルボン酸ハライド末端量が多い樹脂しか得られないことがあるため好ましくない。
芳香族ジカルボン酸ハライドは直接固体のものを、あるいは有機溶剤に溶解させた溶液を混合しても良いが、より好ましい形態としては有機溶剤に溶解した溶液として混合する。
使用する有機溶剤としては、反応温度において原料である芳香族ジカルボン酸ハライド及び、アリレートオリゴマー、ポリアリレート等の反応生成物は溶解するが、実質的に水を溶解しない任意の不活性有機溶剤が用いられる。
代表的な不活性有機溶剤には、ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエンのような塩素化芳香族炭化水素、その他ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素が含まれる。
中でも、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロベンゼンが好適に使用される。これらの不活性溶剤は、単独であるいは他の溶剤との混合物として使用することが出来る。
本実施の形態における芳香族ジカルボン酸ハライドの有機溶剤溶液の添加方法は滴下が好ましく、30分〜90分程度で添加することがより好ましい。30分未満では芳香族ジカルボン酸ハライドの加水分解が促進され、未反応芳香族二価アルコールが多くなり、分子量が上がらない為、好ましくない。一方、90分を越えると得られたポリアリレートの分子量分布が広くなる為、好ましくない。
界面重合時の有機溶剤の量は、通常芳香族カルボン酸ハライドの有機溶剤溶液滴下終了後1時間〜5時間の重合初期では有機溶剤溶液中のポリマー濃度が15重量%以上、その後の重合後期では有機溶剤溶液中のポリマー濃度が10重量%以下となるように、重合途中に適宜反応溶液を有機溶剤にて希釈することが好ましい。
ここで云う、重合初期とは有機溶剤溶液中のポリマー濃度が高濃度の状態において、分子量を増大させる工程の意味であり、また重合後期とは有機溶剤溶液中のポリマー濃度が希薄な状態において、残留カルボン酸ハライド末端の更なる消費や分解を促進させる工程の意味であり具体的には、重合初期とは有機溶剤溶液中のポリマー濃度を15重量%以上の高濃度を保ち、第4級アンモニウム塩類を用いてポリアリレートの分子量を増大させる工程を示し、重合後期とは有機溶剤溶液中のポリマー濃度を10重量%以下の希薄状態に保ち、第3級アミン類を用いて残留カルボン酸ハライド末端の更なる消費や分解を促進させる工程を示す。これが重合初期においてポリマー濃度が15重量%未満となると、ポリマー鎖の伸張反応の反応性が低下し所定の分子量に達しないため好ましくない。一方、重合後期において10重量%より高濃度とした場合、残留カルボン酸ハライド末端の更なる消費や分解が促進されず、ポリアリレートのカルボン酸ハライド末端が所定の量まで減少しないため好ましくない。
また、ポリマー濃度を変化させない場合、例えばポリマー濃度を終始重合初期の高濃度な状態で保つとカルボン酸ハライド末端の消費が鈍り、ポリアリレート樹脂中のカルボン酸ハライド末端量が減少しないため好ましくない。一方、ポリマー濃度を終始重合後期の希薄な状態で保つと反応性が低下し所定の分子量に達しないため好ましくない。
本実施の形態におけるより好ましい形態として、重合初期にてポリマー濃度が15重量%〜20重量%、重合後期では5重量%〜10重量%となるように有機溶剤にて希釈調整する。
また、界面重合時に用いるアルカリ水溶液の量は、有機溶剤に対して、通常、カルボン酸ハライドの有機溶剤溶液滴下終了後数時間の間の重合初期においては体積比で1.1倍〜3.0倍、その後の有機溶剤の量が変化するため重合後期では0.5倍〜1.0倍の範囲となる。さらに、反応時に用いるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。この際、アルカリ水溶液の濃度は、アルカリ成分すなわち水酸化物イオンのモル数を芳香族二価アルコールの水酸基のモル数で除した比率が1.1〜1.4の範囲とすることが必要である。この比率が1.4より大きくなると、水酸化物イオンによる酸ハライドの加水分解が促進されるので好ましくない。一方、この比率が1.1より小さくなると、溶解度の低い芳香族二価アルコール成分の場合、未溶解物が生じるため好ましくない。
さらに、界面重合時に用いる重合触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリヘキシルアミン、トリデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルアニリン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、テトラメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハライド等の第4級アンモニウム塩類、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、テトラメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド、トリ−n−ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、トリフェニルベンジルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムハライド等の第4級ホスホニウム塩類、18−クラウン−6,18−ベンゾクラウン−6、18−ジベンゾクラウン−6、15−クラウン−5等のクラウンエーテル類が挙げられ、カルボン酸ジハライドの有機溶剤溶液滴下終了後数時間の間の重合初期には第4級アンモニウム塩類を用い、その後の重合後期には補助触媒として第3級アミン類を添加することが好ましく、補助触媒は重合後期に有機溶剤溶液にてポリマー濃度を低下させると同時に添加しても良く、ポリマー濃度を低下させた後数時間後に添加しても良い。
本実施の形態においては、触媒である第4級アンモニウム塩類と補助触媒である第3級アミン類を併用することが効果的である。これは第4級アンモニウム塩類は分子量増大に効果的であり、第3級アミン類は、分子量増大及びカルボン酸ハライドの分解に効果がある。特に第3級アミン類はカルボン酸ハライドの分解の効果が大きいため、触媒と補助触媒は添加時期をずらし、且つ触媒である第4級アンモニウム塩類を先に添加することが好ましい。
また、触媒及び補助触媒の添加量は、触媒である第4級アンモニウム塩類は芳香族二価アルコールに対して1.0モル%〜1.5モル%であることが好ましく、より好ましくは、1.3モル%以下、更に好ましくは1.2モル%以下である。補助触媒である第3級アミン類は芳香族二価アルコールに対して0.3モル%〜1.5モル%であることが好ましく、より好ましくは、1.3モル%以下、更に好ましくは1.2モル%以下である。触媒及び補助触媒の量が1.5モル%を超える場合には、加水分解反応が促進されるため好ましくない。一方、触媒が1.0モル%未満の場合には分子量が上昇しないため好ましくなく、補助触媒が0.3モル%未満の場合にはカルボン酸ハライド末端量が低下しないため好ましくない。
ポリアリレートの界面重縮合反応に用いられる温度は15℃以上であることが好ましく、40℃より高温ではカルボン酸ハライドの分解が促進され、結果として分子量が上昇しないため40℃以下であることが好ましい。特に20℃〜30℃がより好ましい。15℃未満となると、芳香族ジカルボン酸ハライドの反応性が低下し、カルボン酸ハライド末端が増加するため好ましくない。
界面重合終了後は、重合液を静置分離や遠心分離機等、従来公知の方法を用いて洗浄することが好ましい。先ず塩類と未反応モノマーを含む水相を分離除去し、有機溶剤相に酸を添加して洗浄することにより反応の停止と中和を行い、再び静置分離や遠心分離機等、従来公知の方法を用いて塩類を含む水相とポリアリレートを溶解した有機溶剤相とに分離する。この時に用いられる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸等が好ましい。さらに、有機溶剤相をアルカリ洗浄することにより有機溶剤相に含まれる未反応モノマーを除去し、再び静置分離や遠心分離機等、従来公知の方法を用いて塩類を含む水相とポリアリレートを溶解した有機溶剤相とに分離する。このとき用いられるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。再び分離したポリアリレートを溶解した有機溶剤相は酸洗することにより中和を行い、その後分離したポリアリレートを溶解した有機溶剤相について水洗を複数回行うことにより、残留する塩類を除去することが好ましい。このとき用いられる水は脱塩水が好ましい。
本実施の形態における洗浄工程は、有機溶剤相と水相との比が体積比で1.0〜1.5となるのが好ましい。これが1.0未満となると水相が過剰となりポリアリレート鎖の加水分解反応が促進されるため好ましくない。一方、1.5を超える場合には洗浄不足となってしまい、未反応モノマーや塩類がポリアリレート樹脂中に残留してしまう。
また、洗浄時間は洗浄性の点で30分以上行うことが好ましく。30分〜60分行うことがより好ましい。
さらに洗浄後の分離は、遠心分離機を用いることが好ましいが、静置分離でもかまわない。静置分離を用いた場合には、分離時間はポリアリレートを溶解した有機溶剤相と水相との分液性に依存するが、洗浄時間と同等以上静置することが、効率よく有機溶剤相を取得するためには好ましい。
上記手法により単離されたポリアリレートの有機溶剤溶液から、ポリアリレートを単離・精製するには種々の方法が選択できる。例えば、有機溶剤を加熱除去することによりフィルム状で得る方法や、ポリアリレートの有機溶剤溶液を水中で懸濁状態を保ちながら有機溶剤を蒸発させてポリアリレート粉粒体を得る方法などがある。
本実施の形態における一般式(1)に示される構造の繰り返し単位からなるポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は好ましくは10,000以上300,000以下、より好ましくは15,000以上100,000以下、さらに好ましくは20,000以上50,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下し実用的ではなく、300,000以上であると、適当な膜厚に塗布することが困難であり好ましくない。
また、本実施の形態におけるポリアリレート樹脂は、他の樹脂と混合して、電子写真感光体に用いることも可能である。ここで混合される他の樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
<電子写真感光体>
上述した本実施の形態が適用されるポリアリレート樹脂は電子写真感光体に用いられ、該感光体の導電性支持体上に設けられる感光層中のバインダー樹脂として用いられる。導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理、化成被膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合しても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に、酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができ、複数の結晶状態が含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一時粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、澱粉、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
バインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、10重量%から500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。下引き層の膜厚は、任意に選ぶことが出来るが、感光体特性及び塗布性から、0.1μmから20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
本実施の形態における感光層の具体的な構成としては、下記(1)〜(3)の様な構成が基本的な形の例として挙げられる。即ち、
(1)導電性支持体上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層をこの順に積層した積層型感光体。
(2)導電支持体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層をこの順に積層した逆二層型感光体。
(3)導電性支持体上に電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた分散型感光体。
積層型感光体の場合、その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては、例えば、セレン及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に、有機顔料、更にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30重量部から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1μmから1μm、好ましくは0.15μmから0.6μmが好適である。
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。特に、感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。尚、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.Heller等によって、それぞれ、I相、II相として示されており(Zeit.Kristallogr.159、(1982)、173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
これらの電荷輸送物質としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物;テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物;ジフェノキノン等のキノン類等の電子吸引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラリゾン誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体及びこれらの誘導体が複数結合されたものが好ましく、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体の複数結合されたものが特に好ましい。
これらの電荷輸送物質は単独で用いても良いし、いくつかを混合して用いても良い。これらの電荷輸送物質がバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層からなっていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。電荷輸送層のバインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が、通常30重量部〜200重量部、好ましくは40重量部〜150重量部の範囲で使用される。また、膜厚は、一般に5μm〜50μm、好ましくは10μm〜45μmが良い。尚、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤等の添加物を含有させても良い。
電子吸引性化合物としては、例えば、クロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアンロラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、3,3’,5,5’−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザマルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。分散型感光層の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、前出の電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があり、例えば好ましくは0.5重量%〜50重量%の範囲で、より好ましくは1重量%〜20重量%の範囲で使用される。
感光層の膜厚は、通常、5μm〜50μm、より好ましくは10μm〜45μmで使用される。また、この場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
これらの感光体を構成する各層は、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等により塗布して形成される。各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布する等の公知の方法が適用である。
本実施の形態が適用される電子写真感光体を使用する複写機、プリンター等の電子写真装置は、少なくとも、帯電、露光、現像、転写の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれを用いても良い。帯電方法(帯電器)としては、例えば、コロナ放電を利用したコロトロンあるいはスコロトロン帯電、導電性ローラーあるいはブラシ、フィルム等による接触帯電等いずれを用いても良い。このうち、コロナ放電を利用した帯電方法では暗部電位を一定に保つためにスコロトロン帯電が用いられることが多い。現像方法としては、磁性あるいは非磁性の一成分現像剤、二成分現像剤等を接触あるいは非接触させて現像する一般的な方法が用いられる。転写方法としては、コロナ放電によるもの、転写ローラーあるいは転写ベルトを用いた方法等いずれでも良い。転写は、紙やOHP用フィルム等に対して直接行っても良いし、一旦中間転写体(ベルト状あるいはドラム状)に転写したのちに、紙やOHP用フィルム上に転写しても良い。
通常、転写の後、現像剤を紙等に定着させる定着プロセスが用いられ、定着手段としては一般的に用いられる熱定着、圧力定着等を用いることが出来る。これらのプロセスの他に、通常用いられるクリーニング、除電等のプロセスを有しても良い。
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
<ポリアリレートのカルボン酸ハライド末端量の定量>
ポリアリレート約1gを精秤し、塩化メチレン20mLを加えて溶解した。これに4−(p−ニトロベンジル)ピリジン(和光純薬、試薬特級)の1重量%塩化メチレン溶液2mLを加え発色させ、分光光度計((株)島津製作所製、UV−1600)を用い440nmの波長での吸光度を測定した。別に、フェニルクロロホルメートもしくは該カルボン酸ジハライドの塩化メチレン溶液を用い、吸光係数を求め、サンプル中のカルボン酸ハライド末端量を定量した。定量下限は塩素量換算で0.2ppm対固形分であった。
本測定法ではポリアリレート樹脂中に存在する遊離ハロゲン原子は観測されない。その為、測定で得られた値は純粋にポリアリレートに存在するカルボン酸ハライド末端のみのものとなる。
<粘度平均分子量>
ポリアリレート樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調整した。次にウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0並びに試料溶液の流下時間tを測定した。そして以下の式に従って、粘度平均分子量Mvを算出した。
a=(0.28×ηsp)+1
b=10×(ηsp/C)
ηsp=(t/t0)−1
C=6.00(g/L)
η=(b/a)
Mv=51400×[η]exp1.205
<ポリアリレート樹脂の製造>
(実施例1)
二段パドル式撹拌装置並びに温度調整装置を備えた邪魔板付き1.5リットル反応容器Aを用いて、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン(以下、TmBPFと略記することがある)45.83g(0.179モル)及び、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(以下、p,p’−BPFと略記することがある)、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン(以下、o,p’−BPFと略記することがある)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン(以下、o,o’−BPFと略記することがある)の混合物[本州化学株式会社製BPF−D;p,p’−BPF:o,p’−BPF:o,o’−BPF=約35:48:17]15.34g(0.0767モル)並びに、25%水酸化ナトリウム水溶液109.7g(全フェノール性水酸基の1.3倍に相当する)を脱塩水835.5gに溶解させた後、相間移動触媒であるベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(以下、BnEt3NClと略記することがある)0.692g(0.003モル)、末端停止剤である2,3,6−トリメチルフェノール(以下、2,3,6−TMPと略記することがある)2.08g(0.0153モル)を順に溶解させた。
また、これとは別の1リットル容器Bを用いて、テレフタル酸ジクロライド(以下、TPCと略記することがある)54.59g(0.2689モル)を506グラムの塩化メチレンに溶解させ、送液ポンプを備えた0.5リットル計量槽に移した。
反応容器Aを20℃に保ち、前記アルカリ水溶液を撹拌しながら、前記塩化メチレン溶液を30分かけて添加し、計量槽が空になったら、塩化メチレン116gを計量槽に添加し、槽内に付着しているTPCを反応容器Aに移した。撹拌下で1時間重合反応を行った後、塩化メチレン964gを添加して反応溶液を希釈し、相間移動補助触媒としてトリエチルアミン(以下、TEAと略記することがある)0.154g(0.00152モル)添加した。
その後、撹拌下で5時間重合反応を行った後、撹拌を停止し、1時間静置分離をして塩化メチレン相を取り出し、塩化メチレン相を0.1規定塩酸水溶液0.85リットルとともに30分間撹拌し触媒を除去して反応を停止した。
反応停止後、30分間静置分離を行うことにより生成ポリアリレート樹脂を含む塩化メチレン層を分離した。
生成ポリアリレート樹脂を含む塩化メチレン相を洗浄するために、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液、0.1規定塩酸水溶液、脱塩水それぞれ0.85リットルを各洗浄工程に用い、以下のように行った。まず水酸化ナトリウム水溶液撹拌下にポリアリレート樹脂を含む塩化メチレン相を投入し30分撹拌した後、1時間静置分離し塩化メチレン相の分離を行った。次にその塩化メチレン相を塩酸水溶液撹拌下に投入し30分間撹拌を行った後、1時間静置分離し塩化メチレン相を分離した。さらに、塩化メチレン相を脱塩水撹拌下に投入し30分間撹拌を行った後、30分間静置分離し塩化メチレン相を分離した。最後に塩化メチレン相をもう一度脱塩水撹拌下(新たに入れ替えたもの)に投入し30分間撹拌を行った後、2時間静置分離を行い、塩化メチレン相を分離した。
洗浄後の塩化メチレン相をバットに広げ、ホットプレートにて加熱(140℃)することにより塩化メチレンを除去し、得られたポリマーを通風乾燥機(120℃)にてよく乾燥(1時間程度)を行った。得られたポリマーの物性を表1に示した。このようにして得られたポリアリレート樹脂をC−1とする。
(実施例2)
TEAの量、添加時期及び、2,3,6−TMPの添加量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。このようにして得られたポリアリレート樹脂をC−2とする。
(実施例3)
2,3,6−TMPの添加量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−3を得た。
(実施例4)
TEAの量、添加時期及び、2,3,6−TMPの添加量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−4を得た。但し、実施例4においては、反応容器Aの代わりに、二段パドル式撹拌装置並びに温度調整装置を備えた邪魔板付き150リットル反応容器Cを、容器Bの代わりに、撹拌装置を備えた50リットル反応容器Dを、計量槽には10リットル計量槽を用い、温水造粒により得た。
(比較例1)
TEAを無添加とし、2,3,6−TMPの添加量、及び重合時間を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−5を得た。
(比較例2)
反応容器Aの温度を10℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−6を得た。
(比較例3)
TEAの添加量、及び重合時間を表1に記載のように変更し、MCによる重合溶液の希釈を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−7を得た。
(比較例4)
TPC、BnEt3NCl、及びTEAの添加量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−8を得た。
(比較例5)
TEAの添加量を表1に記載のように変更した以外は、比較例3と同様にしてポリアリレート樹脂C−9を得た。
(比較例6)
TPC並びにTEAの添加量、及び重合時間を表1に記載のように変更し、実施例1と同様にしてポリアリレート樹脂C−10を得た。
尚、ポリアリレート樹脂C−1〜ポリアリレート樹脂C−10の重合条件等を表1に示す。
*:対芳香族二価アルコール成分モル比率
#:重合開始時(TPC/MC溶液添加終了時)からの経過時間
<電子写真感光体の製造>
A型オキシチタニウムフタロシアニン10重量部を、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕処理を行った。
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名デンカブチラール#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部及びフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部を混合してバインダー用液を作成した。
先に作製した顔料分散液160重量部に、バインダー溶液100重量部、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形成分濃度4.0%の分散液を調整した。このようにして得られた分散液を表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚が0.4μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。次にこのフィルム上に、次に示す正孔輸送性化合物[1]50重量部、
およびポリアリレート樹脂100重量部、酸化防止剤(イルガノックス1076)8重量部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部をテトラヒドロフラン、トルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に溶解させた液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設けた。このときポリアリレート樹脂のテトラヒドロフラン、トルエン混合溶媒に対する溶解性は良好であった。また、この塗布溶液は室温で1時間放置後も固化等の変化は見られなかった。
得られた各感光体については以下の電気特性評価を行った。
電子写真学会測定標準に従って作成された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)を使用し、上記感光体をアルミニウム製ドラムに張り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、780nmの光を2.4μJ/cm2照射した時点の表面電位(VL)を測定した。VL測定に際しては、露光−電位測定に要する時間を139msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%(VL:NN)及び、温度5℃、相対湿度10%(VL:LL)下で行った。この表面電位(VL)の値の絶対値が小さいほど応答性がよいことを示す。また、表面電位(VL)を測定する際に、感光体の表面電位を−700Vに帯電させる際に必要なグリッド電圧(Vg)を測定した。Vg測定に際しては、VL測定と同様、温度25℃、相対湿度50%(Vg:NN)及び、温度5℃、相対湿度10%(Vg:LL)下で行った。このグリッド電圧(Vg)の値の絶対値が小さいほど帯電させやすいことを示す。結果を表2に示す。
表2の結果から、本願発明に係る感光体では、より低いグリッド電圧で−700Vに帯電させることが可能であって、帯電性に優れるものであった。