JP2014231071A - レーザ光による基板切断装置 - Google Patents

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健司 福原
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Abstract

【課題】レーザ光の吸収率が高い厚板材料基板に対して、短時間で容易に孔あけ加工等を行うことができるようにする。【解決手段】この装置は、基板が載置されるワークテーブル2と、レーザ光出力部15と、回転手段と、集光手段と、走査手段と、を備えている。レーザ光出力部15は、基板に対して、吸収率が50%以上の波長を有するレーザ光を出力する。回転手段はレーザ光出力部から出射されたレーザ光を所定の回転半径で回転させる。集光手段は、回転手段からのレーザ光を、基板においてレーザ光の照射側の深さ位置に集光させる。走査手段は、集光されかつ回転するレーザ光を加工ラインに沿って走査するとともに、走査を繰り返し実行して基板を加工する。【選択図】図9

Description

本発明は、基板切断装置、特に、基板にレーザ光を照射して基板を切断するレーザ光による基板切断装置に関する。
レーザ光による基板加工装置としては、例えば特許文献1に示された装置が知られている。この種の加工装置では、波長が532nm程度のグリーンレーザ光が基板等のワークに照射される。グリーンレーザ光は、一般的には基板を透過するが、レーザ光を集光し、その強度があるしきい値を越えると、基板はレーザ光を吸収することになる。このような状態では、レーザ光の集光部にプラズマが発生し、これにより基板は蒸散する。以上のような原理を利用して、基板に孔を形成する等の加工が可能である。
特開2007−118054号公報
ここで、基板に対しては、レーザ光の集光位置を、レーザ光照射側とは逆側の面(下方の面)からレーザ光照射側の面(上方の面)に向かって移動させて加工するのが好ましい。これは、下方から加工していくと、加工粉が下方に落下し、加工粉による加工部への悪影響を避けることができるからである。
しかし、レーザ光の吸収率が高く、比較的厚みの厚い基板に対して孔あけ加工等を行う場合は、下方の面までレーザ光が透過しないために、前述のような従来の加工方法では加工が非常に困難である。
したがって、特に厚みが厚く、レーザ光の吸収率が高い基板に対して孔あけ加工等を行う場合は、従来の加工方法とは違った加工をする必要がある。
本発明の課題は、レーザ光の吸収率が高い厚板材料基板に対して、短時間で容易に孔あけ加工等を行うことができるようにすることにある。
本発明の第1側面に係るレーザ光による基板切断装置は、基板にレーザ光を照射して基板を切断する装置であって、加工すべき基板が載置されるワークテーブルと、レーザ光出力部と、回転手段と、集光手段と、走査手段と、を備えている。レーザ光出力部は、基板に対して、吸収率が50%以上の波長を有するレーザ光を出力する。回転手段はレーザ光出力部から出射されたレーザ光を所定の回転半径で回転させる。集光手段は、回転手段からのレーザ光を、基板においてレーザ光の照射側の深さ位置に集光させる。走査手段は、集光されかつ回転するレーザ光を加工ラインに沿って走査するとともに、走査を繰り返し実行して基板を加工する。
この装置では、レーザ光出力部から出力されたレーザ光は、回転手段によって回転させられ、また基板のレーザ光照射面側の深さ位置(例えばレーザ光照射側の表面)に集光される。そして、集光されたレーザ光は回転しながら加工ラインに沿って走査され、これにより基板が加工される。
ここでは、レーザ光は基板に対して吸収率が50%以上の波長を有しているので、逆に言えば、加工される基板は、所定の波長のレーザ光に対して吸収率が50%以上であるので、レーザ光は照射側と逆側の面まで到達しにくい。特に厚みが厚い基板では、照射側と逆側の面にはレーザ光は到達せず、加工できない。
そこで、この発明では、レーザ光を、基板においてレーザ光照射側の位置に集光させ、さらに回転させながら走査することによって加工を行なっている。集光されたレーザ光を回転させることにより、同じ個所に複数回にわたってレーザ光が照射されることになり、加工効率が高くなって、短い加工時間で加工を行うことができる。
本発明の第2側面に係るレーザ光による基板切断装置は、第1側面の装置において、基板の厚みは1mm以上である。
ここで、前述のように、吸収率の高い基板においては、レーザ光が基板内を透過しにくく、加工が困難である。そして、この傾向は厚みの厚い基板において顕著になる。特に、1mm以上の厚みを有する基板に対して本発明を適用することによって、加工が容易になる。
本発明の第3側面に係るレーザ光による基板切断装置は、第1又は第2側面の装置において、集光手段は、レーザ光の集光位置を基板のレーザ光が照射される側の面から逆側に向かって移動させる。
ここで、レーザ光の集光位置をレーザ光の照射側から逆側に向かって移動させながら加工することにより、加工効率がより高くなり、加工時間をより短縮することができる。
本発明の第4側面に係るレーザ光による基板切断装置は、第1から第3側面のいずれかの装置において、基板は、カーボン、セラミック、シリコンから選択される材料によって形成されている。
本発明の加工をこれらの材料からなる基板に適用することによって、これらの基板を容易に加工することができる。
以上のような本発明では、レーザ光の吸収率が高い厚板材料基板に対して、短時間で容易に孔あけ加工等を行うことができる。
本発明の一実施形態による基板加工装置の外観斜視図。 ワークテーブルの拡大斜視図。 レーザ照射ヘッドの構成を拡大して示す斜視図。 第1中空モータ及び第1ウェッジプリズムの配置を模式的に示した図。 プリズムの頂角と偏角との関係を示す図。 第2中空モータ、第2ウェッジプリズム及び集光レンズの配置を模式的に示した図。 レーザ光の軌跡を示す図。 集光点をz軸方向に制御する作用を説明する模式図。 本発明の一実施形態及び比較例による加工例を示す図。 集光回転方式と同心円方式を説明するための模式図。
[全体構成]
図1に本発明の一実施形態による基板切断装置の全体構成を示す。この基板切断装置は、カーボン、セラミック、シリコン等の基板に加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、孔あけ等の加工を行うための装置である。この装置は、ベッド1と、基板が載置されるワークテーブル2と、基板にレーザ光を照射するためのレーザ光照射ヘッド3と、を備えている。ここで、図1に示すように、ベッド1の上面に沿った平面において、互いに直交する軸をx軸、y軸とし、これらの軸に直交する鉛直方向の軸をz軸と定義する。また、x軸に沿った両方向(+方向及び−方向)をx軸方向、y軸に沿った両方向をy軸方向、z軸に沿った両方向をz軸方向と定義する。
[ワークテーブル2及びその移動機構]
<ワークテーブル2>
ワークテーブル2は、矩形状に形成されており、ワークテーブル2の下方には、ワークテーブル2をx軸方向及びy軸方向に移動させるためのテーブル移動機構5が設けられている。
ワークテーブル2は、図2に拡大して示すように、複数のブロック6を有している。この複数のブロック6は、図中、一点鎖線で示す基板Wをワークテーブル2の表面から持ち上げて支持するための部材であり、基板Wの加工ラインL(破線で示す)を避けるために、ワークテーブル2の任意の位置に取り付けることが可能である。また、ワークテーブル2には複数の吸気口2aが格子状に形成されるとともに、各ブロック6には上下方向に貫通する吸気孔6aが形成されている。そして、ブロック6の吸気孔6aとワークテーブル2の吸気口2aとを接続することによって、ブロック6上に配置される基板Wを吸着固定することが可能である。なお、吸気のための機構は、周知の排気ポンプ等によって構成されており、詳細は省略する。
<テーブル移動機構5>
テーブル移動機構5は、図1に示すように、それぞれ1対の第1及び第2ガイドレール8,9と、第1及び第2移動テーブル10,11と、を有している。1対の第1ガイドレール8はベッド1の上面にy軸方向に延びて設けられている。第1移動テーブル10は、第1ガイドレール8の上部に設けられ、第1ガイドレール8に移動自在に係合する複数のガイド部10aを下面に有している。第2ガイドレール9は第1移動テーブル10の上面にx軸方向に延びて設けられている。第2移動テーブル11は、第2ガイドレール9の上部に設けられ、第2ガイドレール9に移動自在に係合する複数のガイド部11aを下面に有している。第2移動テーブル11の上部には、固定部材12を介してワークテーブル2が取り付けられている。
以上のようなテーブル移動機構5によって、ワークテーブル2は、x軸方向及びy軸方向に移動自在である。なお、第1及び第2移動テーブル10,11は、詳細は省略するが、周知のモータ等の駆動手段によって駆動されるようになっている。
[レーザ光照射ヘッド3]
レーザ光照射ヘッド3は、図1及び図3に示すように、ベッド1の上面に配置された門型フレーム1aに装着されており、レーザ光出力部15と、光学系16と、内部に1対の第1ウェッジプリズム(後述)が組み込まれた第1中空モータ17と、内部に1対の第2ウェッジプリズム(後述)及び集光レンズが組み込まれた第2中空モータ18と、を有している。また、レーザ光照射ヘッド3をx軸方向に移動させるためのx軸方向移動機構21と、第1中空モータ17及び第2中空モータ18をz軸方向に移動させるためのz軸方向移動機構22と、が設けられている。
<レーザ光出力部15>
レーザ光出力部15は従来と同様のレーザ管により構成されている。このレーザ光出力部15によって、波長532nmのグリーンレーザがy軸に沿ってワークテーブル2とは逆側に出射される。
<光学系16>
光学系16は、レーザ光出力部15からのレーザ光を第1中空モータ17に組み込まれた1対の第1ウェッジプリズムに導くものである。この光学系16は、図3に拡大して示すように、第1〜第4ミラー25〜28と、レーザ出力を計測するパワーモニタ29と、ビームエキスパンダ30と、を有している。
第1ミラー25は、レーザ光出力部15の出力側の近傍に配置されており、y軸方向に出射されたレーザ光をx軸方向に反射する。第2ミラー26は、x軸方向において第1ミラー25と並べて配置されており、x軸方向に進行するレーザ光をy軸方向に反射して、ワークテーブル2側に導く。第3ミラー27及び第4ミラー28は、第1中空モータ17の上方にx軸方向に並べて配置されている。第3ミラー27は第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を第4ミラー28側に導く。第4ミラー28は第3ミラー27によって反射されてきたレーザ光を下方の第1中空モータ17に導く。
ビームエキスパンダ30は、第2ミラー26と第3ミラー27との間に配置され、第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を一定の倍率の平行光束に拡げるために設けられている。このビームエキスパンダ30によって、レーザ光をより小さなスポットに集光させることが可能となる。
<第1ウェッジプリズム及び第1中空モータ>
図4に、第1ウェッジプリズム321,322が内部に配置された第1中空モータ17を模式的に示している。第1中空モータ17は、中心にz軸方向に延びる回転軸Rを有し、この回転軸Rを含む中央部が中空になっている。そして、この中空部に1対の第1ウェッジプリズム321,322が固定されている。1対のウェッジプリズム321,322は、同形状、同比重であって、屈折率のみが異なっている。各ウェッジプリズム321,322は、それぞれ回転軸Rに対して傾斜する斜面321a,322aと、回転軸Rに垂直な垂直面321b,322bと、を有している。そして、1対のウェッジプリズム321,322は、互いの垂直面321b,322bが近接して対向するように配置され、2つの垂直面321b,322bが平行で、かつ2つの斜面321a,322aが平行になるように配置されている。
同形状、同比重の2つの第1ウェッジプリズム321,322を以上のように配置することにより、2つの第1ウェッジプリズム321,322の全体の重心は回転軸R上に位置することになる。このため、これらの第1ウェッジプリズム321,322を高速で回転させても、動的アンバランス量を非常に小さくすることができる。
<2つのウェッジプリズムを用いた場合の偏角について>
図5を参照して、プリズムの頂角をδ、屈折率をnとした場合、このプリズムの偏角θは、δが小さい場合、
(n−1)・δ
である。なお、上式は、sinδ=δ(単位はラジアン)で近似できる程度にδが小さい場合の近似式である。本実施形態で用いるプリズムでは、頂角δは大きくても5°程度なので、sinδ=δと近似しても差し支えない。したがって、同形状(同じ頂角)で屈折率がそれぞれn1,n2である2つのウェッジプリズムのそれぞれの偏角θ1,θ2は、
θ1=(n1−1)・δ
θ2=(n2−1)・δ
である。そして2つのウェッジプリズムの斜面が平行になるように組み合わせて配置した場合の偏角θは、
θ=(n1−1)・δ−(n2−1)・δ=(n1−n2)・δ
となる。以上から明らかなように、頂角δが同じで、かつ同じ材質のウェッジプリズムの組合せであれば、n1=n2で、トータルの偏角は「0」になる。
しかし、n1≠n2であれば、トータルの偏角は、「0」にならず、2つのウェッジプリズムの屈折率の差に比例することになる。
そこで、ここでは、2つの第1ウェッジプリズム321,322の屈折率を異ならせて、第1ウェッジプリズム321,322を通過するレーザ光を偏向するようにしている。すなわち、このような第1ウェッジプリズム321,322を用いることによって、回転バランスの良いレーザ光偏向手段を構成することができる。
なお、同比重で屈折率の異なるウェッジプリズムの例としては、例えば以下のような組み合わせが考えられる。
<例1> S-BSM22+S-TIH11(比重:3.24、株式会社オハラ製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.169」である。
<例2> N-SSK2+N-SF57(比重:3.53、ショット日本株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.232」である。
<例3> BACD11+E-FD10(比重:3.07、HOYA株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.170」である。
なお、両ウェッジプリズム321,322の形状(頂角)については、後述する集光レンズの焦点距離fと偏角θによって決まるレーザ光の回転半径r(=f・tanθ又はf・θ)が、所望の値になるように設定される。
<第2ウェッジプリズム、第2中空モータ、集光レンズ>
図6に、1対の第2ウェッジプリズム341,342が内部に配置された第2中空モータ18を模式的に示している。この第2中空モータ18は、中心にz軸方向に延びる回転軸を有している。この回転軸は、第1中空モータ17の回転軸Rと同軸である。この第2中空モータ18は、回転軸Rを含む中心部に中空部を有している。この中空部に、1対の第2ウェッジプリズム341,342が装着されている。また、これらの第2ウェッジプリズム341,342は、一方のウェッジプリズム342に対して他方のウェッジプリズム341が回転軸Rの回りに相対回転自在に取り付けられている。すなわち、1対の第2ウェッジプリズム341,342は偏角が調整可能である。
1対の第2ウェッジプリズム341,342は、同形状、同材質(同比重)であり、したがって屈折率も同じである。また、1対の第2ウェッジプリズム341,342は、それぞれ回転軸に対して傾斜する斜面341a,342aと、回転軸に対して垂直な垂直面341b,342bを有している。そして、この第2ウェッジプリズム341,342においては、偏角が「0」の状態(互いの斜面が平行な状態)から、他方のウェッジプリズム342が回転されて配置されており、2つのウェッジプリズム341,342の斜面341a,342aは平行ではない。このような2つの第2ウェッジプリズム341,342の組合せによって、1対の第2ウェッジプリズム341,342は所定の偏角を有している。この偏角は、第1ウェッジプリズム321,322の偏角よりも大きい。
なお、1対の第2ウェッジプリズム341,342は、一方が他方に対して回転させられているので、これらの回転バランスは第1ウェッジプリズム321,322に比較して良くない。しかし、第2ウェッジプリズム341,342は、レーザ光を走査するための手段であるので、回転速度は低速であり、加工時において動的アンバランスが加工品質に悪影響を与えることはない。
また、この第2中空モータ18の内部で、1対の第2ウェッジプリズム341,342の出力側には、集光レンズ35が固定されている。なお、集光レンズ35は第2中空モータ18とは別に単独で配置するようにしても良い。
<レーザ照射ヘッドの支持及び搬送系>
以上のようなレーザ照射ヘッド3は、前述のように、ベッド1の門型フレーム1aに支持されている。より詳細には、図3に示すように、門型フレーム1aの上面にはx軸方向に延びる1対の第3ガイドレール36が設けられており、この1対の第3ガイドレール36及び図示しない駆動機構がx軸方向移動機構21を構成している。そして、1対の第3ガイドレール36には、支持部材37が移動自在に支持されている。支持部材37は、第3ガイドレール36に支持された横支持部材38と、横支持部材38のワークテーブル2側の一端側から下方に延びる縦支持部材39と、を有している。縦支持部材39の側面には、z軸方向に延びる1対の第4ガイドレール40が設けられており、この1対の第4ガイドレール40及び図示しない駆動機構がz軸方向移動機構22を構成している。第4ガイドレール40には、z軸方向に移動自在に第3移動テーブル41が支持されている。
そして、レーザ光出力部15、第1〜第4ミラー25〜28、パワーモニタ29、及びビームエキスパンダ30が、横支持部材38に支持されている。また、第3移動テーブル41にはモータ支持部材42が固定されており、このモータ支持部材42に、第1中空モータ17及び第2中空モータ18が支持されている。
[動作]
次に、レーザ光による基板の加工動作について説明する。
まず、ワークテーブル2の表面に複数のブロック6を設置する。このとき、複数のブロック6は、図2に示すように、基板Wの加工ラインLを避けるように配置する。以上のようにして設置された複数のブロック6上に、加工すべき基板Wを載置する。
次に、x軸方向移動機構21によってレーザ照射ヘッド3をx軸方向に移動し、またテーブル移動機構5によってワークテーブル2をy軸方向に移動し、レーザ照射ヘッド3によるレーザ光の集光点が加工ラインLのスタート位置にくるように位置させる。
以上のようにしてレーザ照射ヘッド3及び基板Wを加工位置に移動させた後、レーザ光を基板に照射して加工を行う。ここでは、レーザ光出力部15から出射されたレーザ光は、第1ミラー25によって反射されて第2ミラー26に導かれる。なお、第1ミラー25に入射したレーザ光はパワーモニタ29によってレーザ出力が計測される。第2ミラー26に入射したレーザ光はy軸方向に反射され、ビームエキスパンダ30によって光束が拡げられて第3ミラー27に導かれる。そして、第3ミラー27で反射され、さらに第4ミラー28で反射されたレーザ光は、第1中空モータ17の中心部に設けられた1対の第1ウェッジプリズム321,322に入力される。
1対の第1及び第2ウェッジプリズム321,322に入力されたレーザ光は、2つの第1ウェッジプリズム321,322の屈折率が異なることにより、偏向されて出力される。また、第1ウェッジプリズム321,322は,例えば15000rpm以上で高速回転させられるので、第1ウェッジプリズム321,322を透過したレーザ光は、小さい回転半径(例えば直径0.4mm〜0.8mm)で高速回転している。
第1ウェッジプリズム321,322から出射されたレーザ光は、第2ウェッジプリズム341,342に入力される。この第2ウェッジプリズム341,342は、一方が他方に対して回転させられており、第1ウェッジプリズム321,322に比較して大きな偏角を有している。このため、第2ウェッジプリズム341,342を回転させることにより、高速回転するレーザ光が、比較的大きな回転半径(例えば外側直径5.0mm)で回転走査される。なお、第2ウェッジプリズム341,342の回転数は低く、例えば400〜800rpm程度である。
以上のようなレーザ光の基板上での軌跡を図7に示している。ここで、1対の第1ウェッジプリズム321,322における加工誤差や取付誤差等によって、第1ウェッジプリズム321,322によって偏向、回転されたレーザ光により描かれる円の径に誤差が生じる。この誤差によって、最終的に加工される孔の径に誤差が生じる。この場合は、第2ウェッジプリズム341,342の一方を他方に対して回転させて、偏角を調整し、第2ウェッジプリズム341,342を通過したレーザ光による走査軌跡を調整すればよい。これにより、高い精度で所望の径の孔を加工することができる。
ここで、1mm以上の板厚のカーボンやセラミックあるいはシリコンの基板に対して波長が532μmのレーザ光を照射して加工する場合、基板に対するレーザ光の吸収率が50%以上になる。したがって、レーザ光を基板の表面から照射した場合、レーザ光は裏面まで到達せず、孔あけを行うことができない。したがって、基板に孔あけ加工を行う場合、集光点を加工ラインに沿って一度だけ走査しても孔を形成すること、すなわち加工ラインの内側の部分を抜き落とすことは、一般的に困難である。
そこで、まず、集光点(加工部位)が基板の表面(レーザ光照射側)に形成されるように、集光レンズ35を含む第2中空モータ18のz軸方向の位置をz軸移動装置22によって制御する(図8(a)参照)。この状態で集光点を加工ラインに沿って何周かさせた後、第2中空モータ18のz軸方向の位置を制御することにより、図8(b)に示すように、集光点を下降させる。そして、同様に集光点を加工ラインに沿って何周かさせた後、さらに集光点を下降させる。以上の動作を繰り返し実行することにより、加工ラインの内側部分を抜き落として孔を形成することができる。
あるいは、集光点を加工ラインに沿って何周かさせる毎に下降させる代わりに、適切な速さで連続的にz軸方向に下降させ、螺旋状に加工することでも同様に孔あけ加工を行うことができる。
[実験例]
図9にレーザ光を集光回転方式及び同心円方式で基板に照射し、加工した場合の実験例を示している。同図(a)は集光回転方式による加工であり、集光回転方式とは、図10(a)に示すように、本発明のレーザ光照射方式である。また、同図(b)は同心円方式による加工である。同心円方式とは、図10(b)に示すように、レーザ光を回転させることなく、加工ライン(図10では円軌跡)に沿ってレーザ光を走査させて加工する方式である。なお、集光回転方式は、図10(a)で示す幅が200μm以上の場合に可能である。
図9の加工例では、レーザ光の波長は532μmであり、基板はカーボンであって、厚みは1mmである。また、レーザ光の出力及び1周の走査時間は、(a)及び(b)で同じ条件である。
図9(a)及び(b)を比較して明らかなように、集光回転方式の方が少ない走査回数で加工深さを深くすることができる。すなわち、孔あけ加工をより短い時間で行うことができる。この原因の1つは、集光回転方式の場合、加工部位の外周縁の部分においてレーザ光が繰り返し重ねて照射されることになり、この部分がより深く加工されるからであると考えられる。
以上のように、本実施形態では、比較的厚みが厚く(1mm以上)、レーザ光の吸収率が50%以上の基板に対して、より短時間で加工を行うことができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)レーザ光を回転させるための機構や、集光させるための構成、さらには走査のための構成については、前記実施形態限定されない。
例えば、走査ための構成として、第2中空モータ及び1対の第2プリズムに代えて、2つのガルバノミラーを設けて、任意の形状に走査できるようにしてもよい。具体的には、基板表面に沿った平面内においてx軸方向にレーザ光を走査するためのx方向ガルバノミラーと、基板表面に沿った平面内においてy軸方向にレーザ光を走査するためのy方向ガルバノミラーと、を設けるとともに、fθレンズを配置することにより、レーザ光を、基板表面において任意の形状に走査することができる。
(b)前記実施形態では、集光点をz軸方向に移動させる機構として、集光レンズ35を含む第2中空モータ18をz軸移動装置22によって移動させるようにしたが、集光レンズ35を含む第2中空モータ18を固定しておき、ワークテーブル2をz軸方向に移動させるようにしても良い。
(c)光学系の具体的な構成は前記実施形態に限定されない。レーザ光出力部15のレーザ光を、光軸の調整が容易で、かつ効果的に第1中空モータ17の第1ウェッジプリズム321,322に入力できればよい。
(d)第1ウェッジプリズム321,322の具体例は一例であって、これらに限定されるものではない。また、加工例の各数値も一例にすぎない。
(e)基板の材料としては、カーボン以外に、セラミック又はシリコン等の他の材料の基板についても、本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
2 ワークテーブル
15 レーザ出力部
16 光学系
17 第1中空モータ
18 第2中空モータ
321,322 第1ウェッジプリズム
341,342 第2ウェッジプリズム
35 集光レンズ
W 基板

Claims (4)

  1. 基板にレーザ光を照射して基板を切断するレーザ光による基板切断装置であって、
    加工すべき基板が載置されるワークテーブルと、
    前記基板に対して、吸収率が50%以上の波長を有するレーザ光を出力するレーザ光出力部と、
    レーザ光出力部から出射されたレーザ光を所定の回転半径で回転させる回転手段と、
    前記回転手段からのレーザ光を、前記基板においてレーザ光の照射側の深さ位置に集光させる集光手段と、
    集光されかつ回転するレーザ光を加工ラインに沿って走査するとともに、前記走査を繰り返し実行して前記基板を加工する走査手段と、
    を備えたレーザ光による基板切断装置。
  2. 前記基板の厚みは1mm以上である、請求項1に記載のレーザ光による基板切断装置。
  3. 前記集光手段は、レーザ光の集光位置を基板のレーザ光が照射される側から逆側に向かって移動させる、請求項1又は2に記載のレーザ光による基板切断装置。
  4. 前記基板は、カーボン、セラミック、シリコンから選択される材料によって形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ光による基板切断装置。
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