JP2014227537A - 硬化性組成物、これを用いたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法及びエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料 - Google Patents

硬化性組成物、これを用いたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法及びエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】硬化性に優れ、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を併せて有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を形成することができる硬化性組成物を提供する。【解決手段】本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)、(B)を含むことを特徴とする。成分(A):周期表4族金属アルコキシド1モルに対して、多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物xモル(0.10≰x≰0.86)を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液成分(B):脂環式エポキシ化合物【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性に優れ、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を併せて有する有機−無機複合材料を形成することができる硬化性組成物、これを用いた有機−無機複合材料の製造方法及び有機−無機複合材料に関する。本発明の硬化性組成物は、透明性、高屈折率、耐紫外線性等の光学的特性が要求されるLED素子封止材や光学レンズ材料として有用である。
近年、LED素子封止材や光学レンズには、透明性と高い屈折率が求められており、有機ポリマーマトリックス内に無機相をナノ又は分子オーダーで分散させた有機−無機複合材料、特に、エポキシ樹脂とジルコニア又はチタニアからなるエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が注目されている。
前記エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は、例えば、エポキシ化合物の硬化中に金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を行うin situ 重合法により製造することが検討されている。しかしながら、無機成分として非常に高い反応性を有するジルコニウムアルコキシドやチタンアルコキシド等を用いる場合には、エポキシ化合物の硬化反応速度に比べて、ジルコニウムアルコキシド等のゾル−ゲル反応速度が圧倒的に速いため、エポキシ化合物を硬化して得られるエポキシ樹脂中で金属酸化物が凝集して大きな凝集体を形成し、透明性が低下することが問題であった。すなわち、エポキシ樹脂中に金属酸化物が均一に高分散されてなる、透明性を有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を得ることは困難であった。
上記課題を解決する方法として、特許文献1には、エポキシ化合物とアミン系硬化剤を予め部分的に反応させた溶液中に、チタンアルコキシド等の金属アルコキシド及び水を滴下し、エポキシ化合物の硬化反応と同時に金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を行わせることにより、エポキシ樹脂中に金属酸化物の微粒子を含むエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を製造する方法が提案されている。しかし、この方法では、エポキシ化合物を予め部分的に反応させる必要があり、工程が煩雑である。また、アミン系硬化剤を用いるため、硬化物が着色しやすいという問題もあった。
特開平8−100107号公報
本発明者等は、ジルコニウムアルコキシド等の周期表4族金属アルコキシドに、多価カルボン酸無水物等の、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を制御する作用を有する化合物を反応させることにより、反応性が制御された変性周期表4族金属アルコキシドが得られること、ビスフェノールAジグリシジルエステルの硬化反応中に前記変性周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を行うin situ 重合を行うと、透明性に優れ、高屈折率を有する複合材料が得られることを見出した。しかし、前記複合材料は硬化性及び耐紫外線性の点では未だ不十分であった。
従って、本発明の目的は、硬化性に優れ、高ゲル分率、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を併せて有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を形成することができる硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、高ゲル分率、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を併せて有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、高ゲル分率、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を併せて有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記事項を見出した。
1.周期表4族金属アルコキシドに特定量の多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以後、「ゾル−ゲル反応制御剤」と称する場合がある)を反応させると、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応速度を適度に抑制することができ、予めエポキシ化合物を部分的に反応させる工程を設けなくても、エポキシ化合物の硬化反応(自己重合反応)と周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を同程度の速度で、且つ高度に進行させることができ、in situ 重合により透明性、高ゲル分率、高屈折率、及び耐紫外線性を有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られること
2.周期表4族金属アルコキシドは脂環式エポキシ化合物の自己重合反応を促進する触媒としての作用を有するため、周期表4族金属アルコキシドに特定量のゾル−ゲル反応制御剤を反応させて得られる反応混合液と脂環式エポキシ化合物を含有する硬化性組成物は、アミン系硬化剤等を使用せずとも前記触媒作用により硬化性に優れた硬化物を得ることができ、アミン系硬化剤の使用による硬化物の着色を防止することができること
3.ゾル−ゲル反応制御剤の使用量が過剰であると、ゾル−ゲル反応の進行が過剰に抑制され、所期の屈折率を有する硬化物が得られ難くなる。その上、周期表4族金属アルコキシドによる触媒作用が得られ難くなり、脂環式エポキシ化合物の自己重合反応が十分に進行しなくなること
4.ゾル−ゲル反応制御剤の使用量が過剰であると、ゾル−ゲル反応の進行に伴いエンドキャップ剤として作用する化合物(例えば、多価カルボン酸無水物を使用した場合は多価カルボン酸のハーフエステル)が多量に生成し、エポキシ化合物の自己重合反応を阻害するため、硬化反応が十分に進行しなくなること
5.エポキシ化合物として脂環式エポキシ化合物を使用すると、耐紫外線性に優れたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られるが、前記脂環式エポキシ化合物はその他のエポキシ化合物(例えば、分子内に脂環とグリシジル基を有するエポキシ化合物)に比べてエンドキャップ剤との反応性が高く、自己重合反応の阻害を受けやすいこと(図1参照 本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、下記成分(A)、(B)を含む硬化性組成物を提供する。
成分(A):周期表4族金属アルコキシド1モルに対して、多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物xモル(0.10≦x≦0.86)を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液
成分(B):脂環式エポキシ化合物
本発明は、また、成分(A)における周期表4族金属がジルコニウム又はチタンである前記の硬化性組成物を提供する。
本発明は、また、成分(B)における脂環式エポキシ化合物が、下記式(1)
Figure 2014227537
(式中、Lは単結合又は連結基を示す)
で表される化合物である前記の硬化性組成物を提供する。
本発明は、また、発光ダイオード素子(本明細書では「LED素子」と称する場合がある)の封止材として使用する前記の硬化性組成物を提供する。
本発明は、また、光学レンズ材料として使用する前記の硬化性組成物を提供する。
本発明は、また、前記の硬化性組成物を硬化させて、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物とで構成されたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を得ることを特徴とするエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法を提供する。
本発明は、また、前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法により得られる、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物とで構成されたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供する。
本発明は、また、ゲル分率が80%以上である前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供する。
本発明は、また、波長550nmにおける光線透過率が80%以上である前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供する。
本発明は、また、波長589.3nmにおける屈折率が1.540以上である前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供する。
本発明は、また、紫外線(波長:365nm)を48時間照射した際の光線透過率(400nmにおける)の低下が30%以下である前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を提供する。
本発明は、また、前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により封止されたLED素子を構成部材とする電子デバイスを提供する。
本発明は、また、前記のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により形成された光学レンズを提供する。
本発明は、また、前記の光学レンズを構成部材とする光学機器を提供する。
本発明の硬化性組成物はゾル−ゲル反応制御剤を特定量使用するため、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応の反応速度が適度に抑制されて脂環式エポキシ化合物の硬化反応と同程度の反応速度で進行し、in situ 重合により均質で透明性に優れ、且つ屈折率の高いエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる。
また、ゾル−ゲル反応制御剤を特定量使用するため、周期表4族金属酸化物が脂環式エポキシ化合物の自己重合反応を促進する触媒としての作用を発揮することができ、アミン系硬化剤等を使用する必要がなく、アミン系硬化剤の使用による硬化物の着色を防止することができる。
更に、ゾル−ゲル反応制御剤を使用すると、ゾル−ゲル反応の進行に伴いエンドキャップ剤として作用する化合物が副生し、それにより脂環式エポキシ化合物の自己重合反応が阻害されるが、上記の通り使用量を特定の範囲に制限することで自己重合反応の阻害を極めて低く抑制することができる。
更にまた、エポキシ化合物として脂環式エポキシ化合物を使用するため、耐紫外線性に優れたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる。
本発明の硬化性組成物は上記特性を併せて有するため、in situ 重合により脂環式エポキシ化合物の硬化反応(自己重合反応)と周期表4族金属酸化物のゾル−ゲル反応を同程度の速度で、高度に進行させることができ、硬化性に優れ(=高ゲル分率)、透明性、高屈折率、及び耐紫外線性を兼ね備えたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を得ることができる。そのため、LED素子封止材や光学レンズ材料として好適に使用することができる。
また、前記硬化性組成物を使用する本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法によれば、金属アルコキシドのゾル−ゲル反応と脂環式エポキシ化合物の硬化反応を同時に行うin situ 重合法により、簡易に且つ工業的に効率よく、均質で透明性に優れ、ゲル分率及び屈折率が高く、耐紫外線性に優れたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を製造することができる。
更にまた、前記エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料で形成された光学レンズは、均質で透明性及び耐紫外線性に優れ、屈折率が高く、前記エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料で封止されたLED素子を構成部材とする電子デバイスは、高輝度で熱や光により変色し難く、LEDの発光効率を向上することができる。
エポキシ化合物として(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル又はビス(グリシドキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンを使用した場合において、HHPAの添加量と得られる硬化物のゲル分率の関係を示した図である。 HHPA、Zr(OC374、及び調製例3で得られた反応混合液(3)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.64:1.0(仕込み基準)]のFT−IR測定の結果を示した図[(a):HHPA、(b):Zr(OC374、(c):反応混合液(3)]である。 硬化性組成物(8)について、硬化前、及び硬化後のFT−IR測定の結果を示した図[(a):before curing、(b):after curing 80℃、3h、(c):after curing 80℃,100℃,130℃,150℃, and 180℃ for 2h each curing steps]である。 実施例1、2、比較例2〜4で得られた硬化物(1)、(2)、(4)〜(6)のFT−IR測定結果を示した図である。 実施例1、2、比較例1〜4で得られた硬化物から、ゲル分率とHHPA/Zr(OC374(mol比)の関係を示した図である。 実施例1、比較例1〜4で得られた硬化物から、屈折率とHHPA/Zr(OC374(mol比)の関係を示した図である。 実施例1で得られた硬化物(1)[エポキシ化合物として(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシルを使用]と、ビスフェノールAジグリシジルエステル(Mw=370)/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(9)[HHPA:Zr(OC374=2.0:1.0]の紫外線照射前(0 h)と48時間紫外線照射後(48 h)の光線透過率を示す図である。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)、(B)を含む。
成分(A):周期表4族金属アルコキシド1モルに対して、多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物xモル(0.10≦x≦0.86)を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液
成分(B):脂環式エポキシ化合物
[成分(A)]
本発明の成分(A)は、周期表4族金属アルコキシド1モルに対して、ゾル−ゲル反応制御剤(=多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物)xモル(0.10≦x≦0.86)を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液である。
前記周期表4族金属アルコキシドは、下記式(2)で表される。
M(OR14 (2)
前記式(2)中、Mは周期表4族金属原子を示し、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等を挙げることができる。これらの中でも、チタン、ジルコニウムが好ましく、特に、長期耐久性を有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる点で、ジルコニウムが好ましい。
前記式(2)中、R1はアルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、メチル、エチル、プロピル、ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。4個のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記式(2)で表される周期表4族金属アルコキシドとしては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、ジルコニウムテトラn−オクトキシド等のジルコニウムテトラC1-10アルコキシド;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラt−ブトキシド、チタンテトラオクトキシド等のチタンテトラC1-10アルコキシド等を挙げることができる。本発明においては、特に、ジルコニウムテトラC1-4アルコキシド、チタンテトラC1-4アルコキシドが好ましい。
前記多価カルボン酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物(無水コハク酸)、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、プロパントリカルボン酸無水物、マロン酸無水物、メチルマロン酸無水物、エチルマロン酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物,ピメリン酸無水物、スベリン酸無水物、アゼライン酸無水物、セバシン酸無水物等の脂肪族多価カルボン酸無水物;1,2−シクロペンタンジカルボン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(ヘキサヒドロ無水フタル酸)、シクロヘキセンジカルボン酸無水物(テトラヒドロ無水フタル酸)、メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式多価カルボン酸無水物;フタル酸無水物(無水フタル酸)、無水トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの多価カルボン酸無水物は、多価カルボン酸の分子内脱水縮合反応により得られる。
また、多価カルボン酸無水物として、下記式(3)
Figure 2014227537
(式中、Ra、Rb、Rcは、同一又は異なって、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子、カルボキシル基又は置換オキシカルボニル基を示す。Rd、Reは分子内で互いに結合して−CO−O−CO−基(酸無水物基)を形成していてもよい。nは0以上の整数を示す)
で表される化合物を用いることもできる。前記Rd、Reが分子内で互いに結合して−CO−O−CO−基(酸無水物基)を形成する場合、式(3)で表される化合物は環状酸無水物となる。
a、Rb、Rcにおける炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレン、ヘンイコサメチレン、ドコサメチレン、トリアコンタメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状の2価の脂肪族炭化水素基(特に、アルキレン基又はアルケニレン基);1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に、炭素数3〜12のシクロアルキレン基);1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基等の2価の芳香族炭化水素基(特に、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基);これらが2以上結合した2価の炭化水素基等を挙げることができる。
a、Rb、Rcにおける炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、なかでも柔軟性の高い硬化物が得られる点で、炭素数4〜25の2価の炭化水素基(特に、アルキレン基等の2価の脂肪族炭化水素基)が好ましく、とりわけ、炭素数6〜20の2価の炭化水素基(特に、アルキレン基等の2価の脂肪族炭化水素基)が好ましい。Ra、Rb、Rcは、互いに異なっていてもよいが、すべてが同一の基であることが容易に製造できる点で好ましい。
d、Reは、同一又は異なって、水素原子、カルボキシル基又は置換オキシカルボニル基を示す。これらのなかでも、カルボキシル基又は置換オキシカルボニル基が好ましい。前記置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のC1-6アルコキシカルボニル基;アリルオキシカルボニル基等のC2-6アルケニルオキシカルボニル基;シクロヘキシルオキシカルボニル基等のC3-12シクロアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のC7-15アラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
nは0以上の整数であれば特に限定されないが、下限は好ましくは1、特に好ましくは2である。また、上限は例えば20、好ましくは10、特に好ましくは5、最も好ましくは3である。
前記式(3)で表される化合物は、例えば、多価カルボン酸の分子間脱水縮合等により得られる。代表的な例として、ポリドデカン二酸ポリ無水物、ポリイコサン二酸ポリ無水物等が挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、プロパントリカルボン酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族多価カルボン酸;1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記配位性化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、フェニレンジアミン、エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸、エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸2ナトリウム塩等のキレート剤を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のゾル−ゲル反応制御剤としては、なかでも、より透明性に優れた硬化物を得ることができる点で、多価カルボン酸無水物(特に、脂環式多価カルボン酸無水物)が好ましい。
本発明の成分(A)は上記周期表4族金属アルコキシドと上記ゾル−ゲル反応制御剤を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液である。
周期表4族金属アルコキシドとゾル−ゲル反応制御剤との反応は、溶媒の非存在下又は不活性溶媒中で行われる。前記不活性溶媒としては、下記式
1OH (5)
(式中、R1は式(2)中のR1に同じ)
で表されるアルコール溶液を使用することが、前記式(2)で表される周期表4族金属アルコキシド[M(OR14]と実質的に反応性を有しない点で好ましい。
反応温度は、反応成分の種類によっても異なるが、一般には、−10℃〜120℃、好ましくは0℃〜80℃、特に好ましくは10℃〜60℃である。反応時間は、例えば0.5〜2時間程度である。通常、室温で反応が進行して(発熱して)、錯体が形成される。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されないが、なかでも、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
周期表4族金属アルコキシド1モルに対するゾル−ゲル反応制御剤の使用量(2種以上使用する場合はその総量)(xモル)としては、0.10≦x≦0.86、好ましくは0.20≦x≦0.80、特に好ましくは0.30≦x≦0.80、最も好ましくは0.30≦x≦0.70である。ゾル−ゲル反応制御剤の使用量(xモル)が上記範囲を外れると、エポキシ化合物の硬化反応と周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応とを同程度の速度で進行させることが困難となる。また、ゾル−ゲル反応制御剤の使用量(xモル)が上記範囲を下回ると、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応が速く進行しすぎるため、周期表4族金属酸化物が凝集して大きな凝集体を形成して、得られる硬化物の透明性が低下する。一方、ゾル−ゲル反応制御剤の使用量が上記範囲を上回ると、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応が過剰に抑制され、所期の屈折率を有する硬化物が得難くなる。その上、ゾル−ゲル反応の進行に伴い生成する、エンドキャップ剤として作用する化合物(例えば、多価カルボン酸無水物の場合は、多価カルボン酸のハーフエステル)により、エポキシ化合物の自己重合反応が阻害されるため、硬化反応が十分に進行しなくなる。
例えば、周期表4族金属アルコキシドとゾル−ゲル反応制御剤としての多価カルボン酸無水物を反応させると、多価カルボン酸無水物の酸無水物基は、周期表4族金属と結合して金属カルボキシレートを形成するとともに、周期表4族金属アルコキシドのアルコキシ基と結合し、カルボン酸エステル基(アルコキシカルボニル基)を形成し、周期表4族金属アルコキシドのアルコキシ基の一部が置換された部分変性周期表4族金属アルコキシド[下記式(4)で表される化合物]が生成する。従って、ゾル−ゲル反応制御剤として多価カルボン酸無水物を使用した場合、成分(A)には下記式(4)で表される部分変性周期表4族金属アルコキシドが含まれる。
Figure 2014227537
上記式(4)中、M、R1は前記に同じ。R2は2価の炭化水素基を示し、xは反応混合液中に含まれる全化合物における平均値であり、周期表4族金属アルコキシド1モルに対して使用するゾル−ゲル反応制御剤の使用量(x)に対応して、0.10≦x≦0.86である。
xは反応混合液中に含まれる全化合物における平均値であり、0.10≦x≦0.86(好ましくは0.20≦x≦0.80、特に好ましくは0.30≦x≦0.80、最も好ましくは0.30≦x≦0.70)である。xの値が上記範囲を上回ると、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応が過剰に抑制され、所期の屈折率を有する硬化物が得難くなる傾向がある。その上、ゾル−ゲル反応の進行に伴い副生する、エンドキャップ剤として作用する化合物(多価カルボン酸のハーフエステル)により、エポキシ化合物の自己重合反応が阻害されるため、硬化反応が十分に進行しなくなる傾向がある。一方、xの値が上記範囲を下回ると、周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応が速く進行しすぎるため、周期表4族金属酸化物が凝集して大きな凝集体を形成して、得られる硬化物の透明性が低下する傾向がある。
2における2価の炭化水素基としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレン、ヘンイコサメチレン、ドコサメチレン、トリアコンタメチレン基等の炭素数1〜30(好ましくは炭素数4〜25)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン、プロペニレン基等の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25)の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基;1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基等の3〜12員のシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基等の3〜12員のシクロアルケニレン基;1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基等の炭素数6〜12のアリーレン(arylene)基;これらが2以上結合した基等を挙げることができる。尚、R2における炭化水素基は、1以上の酸無水物基[−C(=O)−O−C(=O)−]を含んでいてもよい。
2における炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸エステル基(RCOO−:Rは炭素数1〜30のアルキル又はアルケニル基)、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン原子、C1-15アルコキシ基等を挙げることができる。
ゾル−ゲル反応制御剤としてカルボン酸を使用した場合や、周期表4族金属に対して配位する配位性化合物を使用した場合には、上記式(4)で表される部分変性周期表4族金属アルコキシドに対応する化合物が生成する。従って、ゾル−ゲル反応制御剤としてカルボン酸や周期表4族金属に対して配位する配位性化合物を使用した場合、成分(A)には前記対応する化合物が含まれる。
本発明の硬化性組成物中の成分(A)の含有量としては、用途に応じて適宜調整することができ、硬化性組成物中の周期表4族金属含有量[周期表4族金属酸化物(MO2:Mは式(2)中のMに同じ)換算]が、例えば、2〜50重量%程度、好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%となる量である。成分(A)の含有量が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の屈折率が低下する傾向がある。一方、成分(A)の含有量が上記範囲を上回ると、得られる硬化物が脆くなる傾向がある。
[成分(B)]
本発明の成分(B)は脂環式エポキシ化合物である。本発明の脂環式エポキシ化合物は、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(=脂環式エポキシ基)を有する化合物であり、分子内に前記脂環式エポキシ基を1個のみ有する単官能脂環式エポキシ化合物であってもよく、分子内に前記脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物であってもよい。脂環式エポキシ化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、下記式(1)
Figure 2014227537
(式中、Lは単結合又は連結基を示す)
で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、Lは単結合又は連結基を示す。連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。2価の炭化水素基としては、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、C1-6アルキレン基)又はアルキリデン基;1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に、2価のC3-8シクロアルキレン基、又はシクロアルキリデン基);これらが複数個結合した基等が例示される。
上記式(1)で表される化合物に含まれる代表的な化合物としては下記式(1-1)〜(1-6)で表される化合物を挙げることができる。尚、下記式中、tは1〜30の整数である。
Figure 2014227537
脂環式エポキシ化合物には、上記式(1)で表される化合物の他に、下記式(1-7)で表される、分子内に脂環と2以上のエポキシ基を有し且つ2個以上のエポキシ基のうち1個が脂環式エポキシ基である化合物も含まれる。
Figure 2014227537
脂環式エポキシ化合物には、更に、下記式(1-8)〜(1-11)で表される、3個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物や、脂環式エポキシ基を1個有し、他にエポキシ基を有しない脂環式エポキシ化合物も含まれる。尚、下記式中、a、b、c、d、e、fは、0〜30の整数である。
Figure 2014227537
本発明の硬化性組成物には硬化性化合物として上記成分(B)以外にも他の硬化性化合物を含有していてもよいが、本発明の硬化性組成物に含まれる全硬化性化合物における成分(B)の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。全硬化性化合物における成分(B)の割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物(エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料)の光学的特性が低下する傾向がある。
前記他の硬化性化合物としては、脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物[例えば、WO2011/142468に記載の分子内に芳香環とエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に脂環(脂肪族炭素環)とエポキシ基を有するエポキシ化合物(但し、芳香環を有しない)、及び分子内に芳香環及び脂環を有しないエポキシ化合物]等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の硬化性組成物中の成分(B)の含有量は、用途に応じて適宜調整することができ、例えば50〜98重量%程度、好ましくは55〜95重量%、特に好ましくは60〜90重量%である。成分(B)の含有量が上記範囲を上回ると、得られる硬化物の屈折率が低下する傾向がある。一方、成分(B)の含有量が上記範囲を下回ると、得られる硬化物が脆くなる傾向がある。
[その他の成分]
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記成分(A)、(B)の他に他の成分を含有していてもよい。本発明においては、なかでも、硬化性化合物(特に、脂環式エポキシ化合物)の硬化反応を促進させるため、硬化促進剤を含有することが好ましい。
前記硬化促進剤は、エポキシ化合物の硬化反応を促進する作用を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン又はその塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩(例えば、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド等)、オクチル酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩、ホウ素化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、なかでも、硬化物(エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料)の着色を防止することができる点で、第四級ホスホニウム塩が好ましい。
硬化促進剤の配合量は、硬化性化合物(成分(B)と必要に応じて使用する他の硬化性化合物)100重量部に対して、例えば0.1〜3.0重量部程度、好ましくは0.3〜3.0重量部、特に好ましくは0.5〜3.0量部である。硬化促進剤の配合量が上記範囲を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤の配合量が上記範囲を上回ると、硬化物の色相が悪化する場合がある。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、更に添加剤を添加してもよい。前記添加剤としては、例えば、オルガノシロキサン化合物、金属酸化物粒子、ゴム粒子、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、シランカップリング剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料等を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの配合量(2種以上使用する場合はその総量)は硬化性組成物全体に対して、例えば5重量%以下程度である。
また、本発明の硬化性組成物は溶剤を含んでいてもよいが、溶剤の含有量が多すぎると硬化物(エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料)に気泡が生じる場合があるので、好ましくは硬化性組成物全量の10重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。また、アミン系硬化剤等の窒素含有エポキシ樹脂硬化剤の含有量は1重量%以下(特に好ましくはゼロ)であることが、硬化物の着色を抑制する観点から好ましい。
本発明の硬化性組成物は全ての成分を混合した状態でも安定に存在し、長期間保存が可能である。そのため成分(A)と成分(B)と必要に応じて使用するその他の成分はそれぞれ別個に保存し、使用直前に混合して硬化反応に付してもよく、予め全ての成分を混合した一液型組成物として構成してもよく、更に、例えば、下記(1)〜(3)のように、二液型組成物として構成してもよい。
(1)成分(A)を含む第I剤と、成分(B)及びその他の成分を含む第II剤との組合せ
(2)成分(A)及び成分(B)を含む第I剤と、その他の成分を含む第II剤との組合せ
(3)成分(A)及びその他の成分を含む第I剤と、成分(B)を含む第II剤との組合せ
[エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法]
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は上記硬化性組成物を硬化させることにより得られる。例えば、上記硬化性組成物に水を添加して混合し、必要に応じて、減圧下で加熱(例えば、50〜100℃で0.5〜2時間程度)して副生成物を除去した後、常圧下で加熱硬化することにより、エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を製造することができる。尚、硬化性組成物中に水が含まれている場合には、あらためて水を添加する必要はない。
前記加熱硬化における加熱温度としては、例えば60〜250℃(好ましくは80〜220℃)である。加熱時間としては、例えば1〜12時間程度である。
加熱硬化は、加熱温度を前記加熱温度範囲内の特定の温度において一定に保った状態で行ってもよく、加熱温度を前記加熱温度範囲内で徐々に(連続的に又は段階的に)上昇させて行ってもよい。本発明においては、なかでも徐々に温度を上昇させて加熱硬化することが、硬化速度を徐々に上昇させることができ、それによりネットワークをゆっくり形成することができるため、より内部応力歪みの低い硬化物を形成することができ、硬化物にひび割れ等が発生することを抑制することができる点で好ましい。
周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応を進行させるために用いる水の使用量は、成分(A)(周期表4族金属アルコキシド換算)1モルに対して、例えば1〜10モル、好ましくは1.5〜5モル、特に好ましくは1.5〜3モルである。水の使用量が上記範囲を下回ると、ゾル−ゲル反応が円滑に進行し難くなる傾向がある。一方、水の使用量が上記範囲を上回ると、周期表4族金属アルコキシドの重合が進まないことにより得られる金属酸化物の重合度が低くなったり、金属酸化物同士の架橋が進まないことにより、三次元架橋した金属ネットワークの形成が困難となる傾向がある他、脂環式エポキシ化合物との親和性が低下することにより均質な硬化物が得られ難くなったり、後工程での乾燥に時間や手間がかかる場合がある。
ゾル−ゲル反応制御剤として多価カルボン酸無水物を使用した場合、本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法では、下記1〜3の反応が同時進行するものと考えられる。多価カルボン酸無水物としてシス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を使用した場合の例を挙げて示す。
1.脂環式エポキシ化合物(成分(B))の自己重合反応
Figure 2014227537
(式中、sは脂環式エポキシ化合物由来のモノマー単位の重合度を示す)
2.周期表4族金属アルコキシド(M(OR14)のゾル−ゲル反応
Figure 2014227537
3.多価カルボン酸のハーフエステルと脂環式エポキシ化合物の反応
Figure 2014227537
(式中、R1は前記に同じ)
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法では、部分変性周期表4族金属アルコキシドを含有する成分(A)と成分(B)を含み、成分(B)の硬化速度と同程度にまで周期表4族金属アルコキシドのゾル−ゲル反応速度を抑制することができ、且つ、成分(B)の自己重合反応を促進する触媒作用を発揮することができる硬化性組成物を使用する。そのため、金属酸化物が凝集して大きな凝集体を形成するのを抑制しつつ脂環式エポキシ化合物(成分(B))の自己重合反応が促進され、in situ 重合により均質で透明性に優れ、屈折率が高く、硬化性に優れた(ゲル分率が高い)エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる(上記反応1)。
また、周期表4族金属アルコキシドは、水の存在下で、徐々にゾル−ゲル反応が進行して、三次元架橋した金属ネットワーク(無機ポリマー)を形成する(上記反応2)。
更に、前記ゾル−ゲル反応の進行に伴い、脱離した多価カルボン酸のハーフエステルは成分(B)の自己重合反応を停止させるエンドキャップ剤としての作用を有する(上記反応3)が、本発明では必要最小限のゾル−ゲル反応制御剤を使用するため、エンドキャップ剤の生成を最小に抑制することができ、極めて高いゲル分率を有するエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる。
[エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料]
上記エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法によって得られる本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物とで構成された複合材料であり、無機微粒子が凝集することなく均質である(均一相構造を有する)。また、アミン系硬化剤等の窒素含有エポキシ樹脂硬化剤を用いることなく硬化反応が行われるので、着色度が極めて小さい。
尚、本明細書において、「周期表4族金属酸化物」、「周期表4族金属酸化物からなる無機微粒子」は、周期表4族金属と酸素原子のみからなる化合物、該化合物からなる微粒子だけでなく、水酸基、アルコキシル基(前記OR1基等)を一部の結合に有する金属−金属間が酸素原子を介して連続して結合または架橋した重合物、該重合物からなる微粒子を含む。
本発明によれば、例えば、エポキシ樹脂中に周期表4族金属酸化物からなる無機微粒子が均一に高分散されたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が得られる。この無機微粒子は、別に調製された微粒子からなる独立した微粒子をエポキシ樹脂の硬化前に分散させた粒子とは異なり、in situ 重合により得られるものであるため、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物からなる無機微粒子とが分子レベルで相溶していると考えられ、無機成分と有機成分の界面がそれほど明確ではない上、粒子間が無機成分の鎖により結ばれている場合もあり、無機成分と有機成分が良くなじんでいるという特徴がある。このことは、本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料が透明性に優れ、波長550nmにおける光線透過率が、例えば80%以上、好ましくは85〜95%であることからも明らかである。
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料に含まれる無機微粒子の平均粒子径は、例えば1〜50nm、好ましくは1〜20nm、特に好ましくは1〜5nmである。無機微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、50個の粒子について粒子径(長径と短径の平均値)を測定し、これを平均して求めることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は、更に、硬化性、耐紫外線性に優れ、屈折率が極めて高い。
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は硬化性に優れ、そのゲル分率は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。尚、ゲル分率の上限は100%である。ゲル分率が上記範囲を下回ると、エポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の光学的特性及び機械的特性が低下する傾向がある。
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は、紫外線(波長:365nm)を48時間照射した際の光線透過率(波長400nmにおける)の低下[=光線透過率(紫外線照射前)−光線透過率(紫外線48時間照射後)]が、例えば30%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下である。
本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の屈折率(波長:589.3nm)は、例えば1.540以上、好ましくは1.545〜1.680である。
本発明の硬化性組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料は、耐熱性、高硬度等の機械的特性を有し、且つ均質で透明性、耐紫外線性に優れ、屈折率が高い等の光学的特性を有する。そのため、本発明の硬化性組成物は電気・電子材料、成形材料、塗料、接着材料、封止材、レンズ材料、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光ディスク基板等のコーティング剤等として有用であり、特に、高い屈折率が要求されるLED素子封止材、光学レンズ材料等の分野で有用である。
そして、本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により形成された光学レンズは、耐熱性、高硬度等の機械的特性を有し、且つ均質で透明性、耐紫外線性に優れ、屈折率が高い。そのため、前記光学レンズを構成部材とする光学機器(例えば、カメラ、光学顕微鏡等)は優れた光学的性能を有する。更に、本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により封止された(=本発明のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料で形成された封止部を有する)LED素子を構成部材とする電子デバイスは、高輝度で熱や光により変色し難く、LEDの発光効率を向上することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
調製例1(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド[Zr(OC374](STREM CHEMICALS社製、分子量327.56、23〜28%フリーアルコール)1.00g[ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド自体の重量]、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(ACROS ORGANICS社製、分子量154.16)(本明細書では「HHPA」と称する場合がある)0.14gを窒素雰囲気下で混合し、室温で1時間撹拌することによりHHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(1)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.33:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例2(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を1.14g、HHPAの使用量を0.42gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(2)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.79:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例3(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を2.25g、HHPAの使用量を2.80gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(3)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.64:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例4(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を1.92g、HHPAの使用量を2.10gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(4)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.32:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例5(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を1.60g、HHPAの使用量を1.40gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(5)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.87:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例6(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を1.27g、HHPAの使用量を0.70gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(6)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.17:1.0(仕込み基準)]を得た。
調製例7(成分(A)の調製)
ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドの使用量を0.95g、HHPAの使用量を0.03gとした以外は調製例1と同様にして、HHPA部分変性ジルコニウムアルコキシドを含む反応混合液(7)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.06:1.0(仕込み基準)]を得た。
実施例1
(硬化性組成物の調製)
硬化性化合物としての(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシルを脱泡処理し、ここへ硬化促進剤(商品名「U−CAT 5003」、4級ホスホニウムブロミド、サンアプロ(株)製)を前記硬化性化合物100重量部に対して3重量部(4級ホスホニウムブロミドとして)加え、撹拌して溶解した。
そこへ、調製例1で得られた反応混合液(1)と前記反応混合液(1)の調製に使用したジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドに対して2倍molとなる量の蒸留水を加え、自転・公転型回転ミキサーで5分間均一になるまで撹拌して硬化性組成物(1)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.33:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:64重量%]を得た。
(硬化物の調製)
得られた硬化性組成物(1)をアルミカップに流し込み、揮発性物質を除去するため減圧下で80℃1時間加熱した。更に、常圧下で80℃、100℃、130℃、150℃、及び180℃でそれぞれ2時間ずつ加熱(合計10時間)し、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(1)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.33:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(1)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は99.0%であった。
実施例2
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例2で得られた反応混合液(2)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(2)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.79:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:56重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(2)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.79:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(2)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は91.0%であった。
比較例1
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例3で得られた反応混合液(3)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(3)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.64:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:28重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(3)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.64:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(3)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は10.0%であった。
比較例2
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例4で得られた反応混合液(4)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(4)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.32:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:33重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(4)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.32:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(4)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は26.6%であった。
比較例3
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例5で得られた反応混合液(5)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(5)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.87:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:40重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(5)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.87:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(5)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は28.0%であった。
比較例4
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例6で得られた反応混合液(6)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(6)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.17:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:50重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(6)[HHPA:Zr(OC374(mol)=1.17:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(6)においてジルコニアの析出はなく、無色透明であった。また、ゲル分率は30.0%であった。
比較例5
調製例1で得られた反応混合液(1)に代えて、調製例7で得られた反応混合液(7)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性組成物(7)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.06:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%、成分(B)含有量:67重量%]を得、エポキシ樹脂/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(7)[HHPA:Zr(OC374(mol)=0.06:1.0(仕込み基準)、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。得られた硬化物(7)においてジルコニアの析出が確認された。また、ゲル分率は99%であった。
比較例6
(硬化性組成物の調製)
硬化性化合物としての(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル2.00gを脱泡処理し、そこに重量比15重量%になるようにジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドを加え、その後、自転公転型ミキサーで1分間均一になるまで撹拌して硬化性組成物(8)[成分(B)含有量:68重量%、ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%]を得た。
(硬化物の調製)
硬化性組成物(1)に代えて硬化性組成物(8)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、エポキシ樹脂/ジルコニウムアルコキシド系硬化物(8)(ジルコニア含有量(ZrO2換算)15重量%)を得た。得られた硬化物(8)においてジルコニアの析出が確認された。また、ゲル分率は99%であった。
評価実験
(1)FT−IR測定
反応混合液及び硬化物の構造解析には、フーリエ変換赤外吸光装置(商品名「Fr-IRSPECTRUM100」、PERKINELMER社製)を用い、KBr法によりFT−IR測定を行った。
液体試料である反応混合液は2枚のKBr板に少量の試料を挟み測定した。また、固体試料である硬化物は、試料をメノウ乳鉢で粉末にしたものをKBr板に少量混入し測定した。測定範囲は400cm-1〜5000cm-1、分解能4.0cm-1、積算回数4回とした。
(a)HHPA、(b)ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド、(c)反応混合液(3)[HHPA:Zr(OC374(mol)=2.64:1.0]のFT−IR測定の結果を図2に示した。図2より、反応混合液(3)のスペクトルでは、HHPAのスペクトルで観察された880cm-1、1050cm-1、1783cm-1及び1853cm-1付近の酸無水物基に起因するピークが消失した。また、530cm-1、575cm-1、620cm-1付近のピークも反応に伴って減少していることから、酸無水物基の特性吸収であると考えられる。そのため、反応の進行に伴い減少したものと考えられる。更に、ジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドのスペクトルで観察された1140cm-1付近のZr−OR結合に起因するピークの減少が観察された。また、1456cm-1及び1560cm-1付近にジルコニウムに配位したHHPAのカルボキシラートイオンに起因するピーク、1716cm-1付近にエステル結合に起因するピークが観察された。このことから、添加したHHPAは開環し、ジルコニウムに配位していると考えられる。また、カルボキシラートイオンに起因する2つのピークトップの間隔からHHPAの配位様式はキレート配位であると考えられる。また、キレート配位は、通常のアルコキシド基よりも強く金属原子に配位するため、安定化されていると考えられる。
硬化性組成物(8)について、硬化前(a)、及び硬化後[(b):80℃で3時間加熱硬化後、(c):80℃、100℃、130℃、150℃、180℃の各温度でそれぞれ2時間ずつ加熱硬化後]のFT−IR測定の結果を図3に示した図3より、849cm-1付近の脂環式エポキシ基に起因するピークの消失が確認された事から、エポキシ基はほぼ完全に反応していると考えられる。更に、硬化に伴い1086cm-1付近のエポキシ樹脂同士の自己重合(R−O−R結合)に起因するピークの高さが増加する様子が観察された。また、3450cm-1付近、1500〜1700cm-1付近及び400〜600cm-1付近のZr−O−Zr結合に起因するピークが硬化に伴い増加する様子が観察された。これは、空気中の水分とジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドが反応し、ゾルゲル反応が進行したことに起因すると考えられる。以上の結果より、周期表4族金属アルコキシドは自己重合触媒であることが示された。
実施例1、2、比較例2〜4で得られた硬化物(1)、(2)、(4)〜(6)のFT−IR測定結果を図4に示した。図4より、849cm-1付近の脂環式エポキシ基に起因するピークの消失が全系で確認された。また、1086cm-1付近のR−O−R結合に起因する自己重合のピークがHHPA添加量を減少させるに伴い増加が観察された。これは、自己重合を停止させるハーフエステル体とエポキシの反応がHHPA添加量を減少させる事で抑制され、エポキシ基同士の自己重合がより進行したことに起因すると考えられる。更に、3540cm-1、1676cm-1及び400cm-1〜600cm-1付近のZr−O−Zr結合に起因するピークがHHPA添加量を減少させるに伴い増加が観察された。これは、HHPA添加量を減少させることによりキレート配位したジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシドが減少し、ゾルゲル反応がより進行したことに起因すると考えられる。
(2)ゲル分率の測定方法
実施例1、2、比較例1〜4で得られた硬化物をテトラヒドロフラン(THF)溶媒中で室温下12時間撹拌し、次いで60℃で12時間撹拌した。その後、各硬化物を80℃で1日間減圧乾燥させた。また、抽出溶媒のTHFは2時間毎に交換した。抽出前後における硬化物の重量変化から、次式を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(抽出後の硬化物の重量/抽出前の硬化物の重量)×100
結果を図5に示した。図5より、HHPAの添加量を徐々に減少させるとゲル分率が上昇するという結果が得られた。これより、ゾル−ゲル反応制御剤(多価カルボン酸無水物等)の添加量を減少させることでゲル化を進行させることができることが示された。
(3)屈折率測定
実施例1、比較例1〜4で得られた硬化物の屈折率を、屈折率測定装置(商品名「NAR-2T」、アタゴ(株)製)を用いて測定した。
試験片は硬化物を8mm×15mm×1mmの長方体状片に切り出し、耐水研磨紙2000番で研磨後、アルミナ粉末(平均粒径:0.3μm)で研磨したものを用いた。また、測定の際の中間液としてイオウジヨードメタン(nD=1.7800)、光源としてNa線単色光(589.3nm)を用いた。
結果を図6に示した。図6より、HHPAの使用量を減少させるに従い屈折率が上昇し、加成性に基づく値に近づく結果が得られた。これは、HHPAの使用量を減少させることによりジルコニアネットワーク及びエポキシネットワークがより高度に形成されたからであると考えられる。これより、ゾル−ゲル反応制御剤(多価カルボン酸無水物等)の添加量を減少させることで屈折率を加成性に基づく値に近づけることができることが示された。
(4)透明性評価試験
実施例1で得られた硬化物(1)の透明性を下記方法で評価した。
紫外・可視吸収スペクトルから250〜800nmにおける光線透過率を測定して透明性を評価した。尚、紫外・可視吸収スペクトル測定は下記方法で行った。
紫外・可視吸収スペクトル測定
紫外・可視吸収スペクトル測定は紫外可視分光光度計(商品名「LAMBDA650」、PERKIN ELMER社製)を用い、下記条件で測定した。
<測定条件>
測定範囲:800〜250nm
スリット幅:2.0nm
走査速度:266.75nm/min
測定回数:1回
試験片サイズ:25mm×25mm×1mm
結果を図7(A)に示した。図7より、紫外線照射前の硬化物(1)は波長550nmにおいて93%の光線透過率を有し、透明性に優れることがわかった。また、48時間紫外線照射後であっても、波長550nmにおいて87%の光線透過率を有し、優れた透明性が維持されることがわかった。
(5)耐紫外線性評価試験
実施例1で得られた硬化物(1)の耐紫外線性を下記方法で評価した。また、エポキシ樹脂の芳香環の有無による耐紫外線性の変化を検討するため、ビスフェノールAジグリシジルエステル(Mw=370)/HHPA/ジルコニアハイブリッド系硬化物(9)[HHPA:Zr(OC374=2.0:1.0]の耐紫外線性も同様の方法で評価した。
高圧水銀ランプ(東芝ライテック(株)製)を使用して硬化物に紫外線を照射(主波長:365nm、UVランプからの照射距離:150mm、照射時間:48時間)し、紫外線照射前後における紫外・可視吸収スペクトルから250〜800nmにおける光線透過率の変化を測定し、耐紫外線性を評価した。尚、紫外・可視吸収スペクトル測定は上記方法で行った。
結果を図7に示した。図7より、硬化物(1)に48時間紫外線照射を施すことによる波長400nmにおける光線透過率の低下は13%で、紫外線照射による変色劣化が小さいことがわかった。一方、硬化物(9)に48時間紫外線照射を施すことによる波長400nmにおける光線透過率の低下は37%であり、変色劣化が進行している様子が観察された。これは、硬化物(9)に含まれるビスフェノールAジグリシジルエステルの芳香環が光エネルギーを吸収して分子鎖中にフリーラジカルを生成させ、他の分子からの水素引き抜き反応を起こしながら、L.Reichらによって提出された自動酸化機構を誘発し、発色団が形成されたためと考えられる。

Claims (14)

  1. 下記成分(A)、(B)を含む硬化性組成物。
    成分(A):周期表4族金属アルコキシド1モルに対して、多価カルボン酸無水物、カルボン酸、及び前記周期表4族金属に対して配位する配位性化合物から選択される少なくとも1種の化合物xモル(0.10≦x≦0.86)を混合し、少なくともその一部を反応させて得られる反応混合液
    成分(B):脂環式エポキシ化合物
  2. 成分(A)における周期表4族金属がジルコニウム又はチタンである請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 成分(B)における脂環式エポキシ化合物が、下記式(1)
    Figure 2014227537
    (式中、Lは単結合又は連結基を示す)
    で表される化合物である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
  4. 発光ダイオード素子の封止材として使用する請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
  5. 光学レンズ材料として使用する請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
  6. 請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性組成物を硬化させて、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物とで構成されたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料を得ることを特徴とするエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法。
  7. 請求項6に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料の製造方法により得られる、エポキシ樹脂と周期表4族金属酸化物とで構成されたエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料。
  8. ゲル分率が80%以上である請求項7に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料。
  9. 波長550nmにおける光線透過率が80%以上である請求項7又は8に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料。
  10. 波長589.3nmにおける屈折率が1.540以上である請求項7〜9の何れか1項に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料。
  11. 紫外線(波長:365nm)を48時間照射した際の光線透過率(400nmにおける)の低下が30%以下である請求項7〜10の何れか1項に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料。
  12. 請求項7〜11の何れか1項に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により封止された発光ダイオード素子を構成部材とする電子デバイス。
  13. 請求項7〜11の何れか1項に記載のエポキシ樹脂−無機ポリマー複合材料により形成された光学レンズ。
  14. 請求項13に記載の光学レンズを構成部材とする光学機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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