JP2014223569A - 水溶液からの元素除去方法および除去元素保管方法 - Google Patents

水溶液からの元素除去方法および除去元素保管方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液からカドミニウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、亜鉛、マグネシウム、マンガン、鉄、ラジウム、アルミニウム、イットリウム、セシウム、ネオジム、ランタン、クロム、ヒ素、バナジウム、ウラン、ゲルマニウム、フッ素、臭素、ホウ素などの特定元素を回収する。特に、放射性物質により汚染された放射性汚染水から放射性ストロンチウム、放射性セシウムなどを回収する。【解決手段】99℃以下の水溶液中でアパタイトを形成させ、形成されるアパタイトに回収対象の特定元素を含有させることによって特定元素を水溶液中から回収する。【選択図】図1

Description

本発明は、水溶液からの特定元素の除去方法に係わり、アパタイトに取り込まれる元素の除去方法に係わる。特にアパタイトに取り込まれることが知られている「カドミニウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、亜鉛、マグネシウム、マンガン、鉄、ラジウム、アルミニウム、イットリウム、セシウム、ネオジム、ランタン、クロム、ヒ素、バナジウム、ウラン、ゲルマニウム、フッ素、臭素、ホウ素」の群から得らばれる少なくとも一つの除去方法に係わる。また、特定元素が含まれているアパタイトの特定元素含有率を増大させる手法にも係わる。
本発明は、放射性物質により汚染された放射性汚染水から放射性ストロンチウムなどを除去する場合にも好適な方法であり、除去された放射性元素を保管する放射性元素保管方法にも係わる。
水溶液から元素を除去する場合には、(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること、(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること、(3)水溶液から元素あるいは元素を含む処理材を簡便に除去できること、(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること、(5)処理材の再利用ができること、(6)対象元素を含有させた処理材の保管が容易であること、(7)処理コストが安価であること、などが望まれる要件である。
水溶液から元素を除去する方法に関しては様々な方法があるが、除去対象元素を吸着材によって吸着させる方法や、除去対象元素を難溶性の化合物とし、水溶液から除去する方法が一般的に行われている。
活性炭、ゼオライト、ナノカーボンやアパタイトは典型的な吸着材であり、広範囲の元素あるいは元素を含む化合物を吸着することができる。
しかしながら、吸着材は一定程度まで元素あるいは元素を含む化合物を吸着するが、先に記載したように吸着平衡の問題があり、目的によっては「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」を満たさない。特に放射性汚染水から特定元素あるいは特定元素を含む化合物を完全に除去することは困難である。
活性炭、ゼオライト、ナノカーボンやアパタイトなどの典型的な吸着材を用いる場合は、吸着によって水溶液から元素あるいは元素を含む化合物を除去するため、除去できる量は吸着材の表面に吸着できる量に限定される。そのため、「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」は満たさない。
活性炭、ゼオライト、ナノカーボンやアパタイトなどの典型的な吸着材を用いる場合は、水溶液中の元素あるいは元素を含む化合物は吸着材に吸着されている。水溶液のpHを変動させて吸着平衡をずらし、吸着材から特定元素あるいは特定元素を含む化合物を脱着できる場合もあるが、一般的には「(3)水溶液から元素あるいは元素を含む処理材を簡便に除去できること」を満たすことは困難である。
活性炭、ゼオライト、ナノカーボンやアパタイトなどの典型的な吸着材を用いる場合は、吸着平衡で当該吸着材に吸着される元素あるいは元素を含む化合物の量が決定されるため、元素濃度が小さい水溶液を処理した後に元素濃度が大きい水溶液を処理するなどの場合を除いて「(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること」を満たすことはできない。
処理目的によっては「(5)処理材の再利用ができること」も重要要素である。一般的に吸着材は処理後の再利用を想定していない。においなどを除去する場合は活性炭を加熱し、においの成分を揮発させ活性炭を再利用することが可能であるが、コスト的に意味がない場合が多い。放射性汚染水中の放射性汚染物質を除去するような特殊な場合には処理後の処理材自体が放射性汚染物質となるため、処理材を処理し、再利用することが好ましい。
一般的に対象元素を含有させた処理材は破棄される。また、保管する場合においても問題が発生することは少ない。したがって「(6)対象元素を含有させた処理材の保管が容易であること」は一般的には重要度の低い要求事項である。しかしながら、放射性汚染物質の場合には処理材を厳密に長期保管する必要があり、飛散等を防止する必要がある。また、保管のコスト的も勘案する必要がある。
「(7)処理コストが安価であること」はあらゆる場合に重要な要素である。特に膨大な水溶液から元素あるいは元素を含む化合物を除去する場合には処理材のコストが膨大になるため、単位あたりの元素あるいは元素を含む化合物を除去するために必要なコストが安価となる必要がある。
除去対象元素を難溶性の化合物とし、水溶液から除去する方法は吸着材を用いる手法と比較して、「(1)溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」「(3)水溶液から元素あるいは元素を含む処理材を簡便に除去できること」「(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること」「(5)処理材の再利用ができること」「(6)対象元素を含有させた処理材の保管が容易であること」「(7)処理コストが安価であること」で優位である可能性が高い。
一方、除去対象元素を難溶性の化合物として除去する手法の成否は水溶液からどれだけの除去対象元素を難溶性の化合物に取り込めるかによって有用性が大きくことなる。
これまでに、水溶液中からの元素あるいは元素を含む化合物を除去する方法、特に放射性汚染水から放射性元素を除去する手法に関しては様々な発明がなされている。また、関連発明もなされている。
特開昭55−144599号公報では放射性物質含有廃液の処理法として「水溶性カルシウム化合物を単独で、又はリン酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオンを付与し得る化合物とともに添加し、水素イオン濃度がpH5〜10になるように調整した後、生成した沈殿物を分離除去することを特徴とする放射性物質含有廃液の処理方法」が開示されている。
当該発明においては水溶液中で沈殿されるリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムを除去することが開示されているが、本発明の必須要件であるアパタイトの形成に関しては記載されていない。また、アパタイトを形成させる好ましい方法や、継続的なアパタイト形成が好ましいことも開示されていない。
当該発明においては少なくとも「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」、「(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること」が満足されない。
特開昭61−77800号公報では放射性電解研磨廃液の処理法およびそれを用いる吸着処理材が開示されている。電解研磨にはリン酸分を含有する電解研磨処理液中を用いるため、その処理方法に関するもので、リン酸に対し反応性を有する消石灰(水酸化カルシウム)などの固体アルカリ土類金属化合物および粘度鉱物あるいはケイ酸質骨剤を含有する吸着処理材を開示している。
しかしながら、本発明の必須要件であるアパタイトの形成に関しては記載されておらず、アパタイトではないリン酸カルシウムであるCa(H2PO4) 2・H2Oが好ましいことが開示されている。また、アパタイトを形成させる好ましい方法や、継続的なアパタイト形成が好ましいことも開示されていない。
当該発明においては少なくとも「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」、「(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること」「(5)処理材の再利用ができること」「(6)対象元素を含有させた処理材の保管が容易であること」を満足させることができない。
特開平10−57937号公報では、土壌中のカドミウム、鉛等の重金属類を固定化し、土壌からのこれらの重金属類の溶出を防止する手法として、重金属類で汚染された土壌に対してカルシウム化合物とリン酸塩水溶液を散布する汚染土壌の処理方法開示されている。
しかしながら、当該発明は水溶液のから特定元素を除去する方法ではない。当然、アパタイトを形成させる好ましい方法や、継続的なアパタイト形成が好ましいことも開示されていない。
特開2002−267796号公報では活性炭、ゼオライトなどの吸着担体基材にカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンの少なくとも一つのイオンを吸着させ、この担体基材に炭酸ガスなどを反応させ炭酸カルシウムなどを形成させ放射性物質含有廃液を処理する方法が開示されている。
当該発明において、アパタイトは形成されない。また、当該特許では少なくとも「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」に問題が残る。
当該発明においては少なくとも「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」「(4)対象元素の処理材中の含有率を増大できること」を満足させることができない。
特開2007−70217号公報では畜糞系焼却灰からリン酸含有水溶液を調整し、アパタイトとして回収する方法が開示されている。
当該発明は水溶液からリン酸を回収する方法に係わる発明であり、アパタイト中に取り込まれる元素を除去するものではない。当然、アパタイトを形成させる好ましい方法や、継続的なアパタイト形成が好ましいことも開示されていない。
特開2009−72657号公報では土壌、土壌スラリー中の重金属類の処理に関して、カルシウムイオン源とともに、硫酸類及びリン酸類を添加し、重金属類を不溶化させる方法を開示している。
本発明は土壌中に硫酸カルシウムおよびリン酸カルシウムを形成させるものであり、水溶液のから特定元素を除去する方法ではない。当然、アパタイトを形成させる好ましい方法や、継続的なアパタイト形成が好ましいことも開示されていない。
特開2012−229998号公報ではオキシンを担持させた活性炭で放射性汚染水から放射性汚染物質を除去する方法が開示されている。当該発明はアパタイトを形成させる発明ではなく、吸着処理であるため、少なくとも「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」「(5)処理材の再利用ができること」「(6)対象元素を含有させた処理材の保管が容易であること」を満足させることができない。
特開2012−236190号公報はシアン化鉄に関する発明である。
特開2012−242092号公報は銅塩系不溶性フェロシアン化物に関する発明である。
特開2012−247407号公報は放射性汚染水に中性リン酸を加え、中性リン酸と放射性物質を反応させることによって放射性物質を除去する方法が開示されている。中性リン酸と放射性物質を反応させた後に、水酸化カルシウムを加えて炭酸化し炭酸カルシウムを形成させることが開示されているがアパタイト形成ではない。
特開2013−2865号公報は紺青と鉄と、高分子化合物を含有する吸着剤組成物が開示されており、磁性材料により回収ができることを開示している。
特開2013−27809号公報には放射性汚染水から放射性汚染物を除去する方法としてリン酸化合物と、水溶性金属塩と、ダイヤモンド微粒子及び/又はカーボンナノチューブを添加する方法が開示されているが、アパタイトは形成させる方法ではない。
特開2013−29390号公報では放射性汚染水に、(a)リン酸化合物と、(b)カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する水溶性金属塩とを添加して放射性元素を除去する発明が開示されているが、アパタイトは形成されない。
特開2013−33019号公報では放射性汚染水にナノカーボン分散物とプルシアンブルーを添加する方法を開示している。
Sheng-Heng Tan et al., Hydrothermal removal of Sr2+in aqueous solution via for
mation of Sr-substituted hydroxyapatite, “Journal of Hazardous Materials,” 179(2010) 559-563は放射性ストロンチウムをアパタイトとして除去する方法を開示している。この方法はリン酸水素ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムを添加しオートクレーブで160℃14時間加熱処理すると99.5%以上のストロンチウムを除去することができると記載されている。
しかしながら当該論文の処理温度は本発明の必須要件である99℃以下の水溶液ではなく、処理温度が99℃以下であるという条件を大幅に超える160℃であり、処理時間も14時間である。また、開示されている99.5%では除去率が低く、「(1)水溶液に対象元素が残留しないように対象元素を除去できること」を満足しているか否かは開示されていない。また、放射性汚染水をオートクレーブで処理する方法は非現実的であり、少なくとも「(2)水溶液から多量の元素あるいは元素を含む化合物を除去できること」「(7)処理コストが安価であること」を満足させることはできない。
特開昭55−144599号公報 特開昭61−77800号公報 特開平10−57937号公報 特開2002−267796号公報 特開2007−70217号公報 特開2009−72657号公報 特開2012−229998号公報 特開2012−236190号公報 特開2012−242092号公報 特開2012−247407号公報 特開2013−2865号公報 特開2013−27809号公報 特開2013−29390号公報 特開2013−33019号公報 Sheng-Heng Tan et al., Hydrothermal removal of Sr2+ in aqueous solution via formation of Sr-substituted hydroxyapatite, "Journal of Hazardous Materials," 179 (2010) 559-563
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、「カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象元素を含むアパタイトを形成させ、当該アパタイトを水溶液から除去することによって水溶液から除去対象元素を除去する元素除去方法」が除去対象元素を含む水溶液から除去対象元素を高度に除去する手法であり、「本発明の元素除去方法によって形成されたアパタイトに取り込まれる除去対象元素の少なくとも一つの元素を含有しているアパタイトをpHが4未満の酸性水溶液で溶解させて除去対象元素を酸性水溶液に溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液に溶解されたアパタイトの一部をアパタイトとして再析出させることによって、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素のアパタイト中の含有率を増大させる元素除去方法」が除去対象元素の濃度を増大させる方法であること、除去対象元素が放射性物質である場合には「除去された少なくとも一つの放射性物質を含むアパタイトを焼結して保管する放射性元素保管方法」が放射性元素の保管方法であることを見いだし、本発明を完成したものである。
本発明は、「カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象元素を含むアパタイトを形成させ、当該アパタイトを水溶液から除去することによって水溶液から除去対象元素を除去する元素除去方法」が除去対象元素を含む水溶液から除去対象元素を高度に除去する手法であり、「本発明の元素除去方法によって形成されたアパタイトに取り込まれる除去対象元素の少なくとも一つの元素を含有しているアパタイトをpHが4未満の酸性水溶液で溶解させて除去対象元素を酸性水溶液に溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液に溶解されたアパタイトの一部をアパタイトとして再析出させることによって、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素のアパタイト中の含有率を増大させる元素除去方法」が除去対象元素の含有率を増大させる方法であり、「除去された少なくとも一つの放射性物質を含むアパタイトを焼結して保管する放射性元素保管方法」が放射性元素の好ましい保管方法であることを見いだし、初めて具現化したものである。
本発明の水溶液からの元素の除去方法の特徴は、「カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象元素を含むアパタイトを形成させ、当該アパタイトを水溶液から除去することによって水溶液から除去対象元素を除去する元素除去方法」である。
本発明における「水溶液中の特定元素をアパタイト中に含ませる」機序は必ずしも明らかにされておらず、本発明は作用機序に限定されるものではない。
しかしながら、「カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象元素を含むアパタイトを形成させ、当該アパタイトを水溶液から除去することによって水溶液から除去対象元素を除去する元素除去方法」によって「アパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素」が水溶液から高度に除去できることから推察すると、水溶液中でアパタイトが形成される際にアパタイト構造中に「アパタイトに取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素」が取り込まれてアパタイトが形成されると考えられる。
アパタイトはA10(BO4)6C2を基本構造として有する化合物でAはCa2+, Cd2+, Sr2+, Ba2+, Pb2+, Zn2+, Mg2+, Mn2+, Fe2+, Ra2+, H+, H3O+, Na+, K+, Al3+, Y3+, Ce3+, Nd3+, La3+, C4+, 空隙、BO4はPO4 3-, CO3 2-, CrO4 3-, AsO4 3-, VO4 3-, UO4 3-, SO4 2-, SiO4 4-, GeO4 4-, 空隙、Cは OH-, OD-, F-, Br-, BO2-, CO3 2-, O2-, 空隙などである。
したがってアパタイト形成中にこれらの元素、化合物あるいはそのイオンが存在するとこれらの元素、化合物、あるいはそのイオンはアパタイト結晶構造中に取り込まれアパタイト結晶が形成されると考えられる。なお、本発明においてはカルシウムおよびリン酸を基本した基本構造がCa10(PO4)6(OH)2であるリン酸カルシウム系アパタイトを水溶液中で形成させるためにカルシウムおよびリン酸は除去対象元素には含めない。また、水溶液から元素を除去する手法に関する発明であるため、H+およびOH-も除去対象に含めない。さらにフッ素も除去対象に含めない。
なお、A10(BO4)6C2はアパタイトの構造式であり、Ca10(PO4)6(OH)2はリン酸カルシウム系アパタイトの基本構造式であるが、本発明は当該基本構造式に限定されるものではない。例えばリン酸カルシウム系アパタイトの場合、Ca欠損アパタイトCa10-x(HPO4)x(PO4)6-x(OH)2-xや炭酸アパタイト、置換アパタイトなど知られており、これら全てが本発明で定義するアパタイトである。アパタイトは固体であるため、水溶液から容易に除去できる。
本発明の元素除去方法が吸着材と比較して高度に対象元素を除去できる機序は完全に解明されておらず、また、本発明は作用機序に限定されるものではない。しかしながら、本発明によって除去対象元素を高度に除去できる理由は吸着ではなく、除去対象元素がアパタイト構造中に取り込まれることであると考えられる。すなわち、吸着材によって対象元素を除去する場合、対象元素の除去量は吸着材の表面積によって影響される。そのため、一般的には活性炭やゼオライトなど比表面積が大きいものが吸着材として実用化されている。
一方、本発明の元素除去方法では水溶液中でアパタイトを形成させ、形成されるアパタイト構造中に対象とする元素が取り込まれて除去対象元素が除去されるため、吸着による除去と比較して多量の元素を除去することが可能となる。
なお、アパタイトも吸着作用を示すことが知られており、アパタイトを水中に投入することによってもアパタイトの吸着作用あるいは表面での元素置換反応によって水溶液中の除去対象元素を一定量除去することができる。しかしながら、本発明においては水溶液中でアパタイトを形成させることが必須要件である。水溶液中にアパタイトを投入する手法は本発明とは本質的に異なり、本発明の範囲の外の技術である。
高度放射性汚染水から放射性元素を除去する場合は、放射性元素を高度に除去する必要がある。すなわち、水溶液中に放射性物質が残留しないように、水溶液から放射性物質を完全に除去する必要がある。このような場合には除去対象元素をアパタイト表面に存在させるのは好ましくない。これはアパタイトの溶解度は中性およびアルカリ性領域において極めて小さいものの、水溶液中ではやはり平衡状態にあり微量のアパタイトが水溶液中に溶解されているためである。アパタイトは水溶液と平衡であるので、アパタイトの表面に吸着された除去対象元素も水溶液中で平衡となる。そのため、吸着によって除去対象元素を水溶液から完全に除去することは原理的に不可能である。
一方、本発明においては除去対象元素が存在する水溶液中にアパタイトを添加するのではなく、除去対象元素が存在する水溶液中でアパタイトを形成させ、形成させるアパタイトの結晶構造の中に除去対象元素を取り込むことによって水溶液中から除去対象元素を高度に除去する。
除去対象元素をアパタイト結晶構造中に取り込むことによって、除去対象元素はアパタイト表面ではなく、水溶液との平衡に関係しないアパタイト内部に存在するようになる。
除去対象元素がアパタイト構造に含まれていても除去対象元素はアパタイト表面にも存在する。そのため、アパタイトが水溶液と溶解平衡になると除去対象元素も水溶液中に溶解されるが、その量はアパタイト表面に除去対象元素を吸着させた場合と比較して圧倒的に小さい。
また、水溶液中でのアパタイト形成量を多くすると、まず、除去対象元素を含むアパタイトが形成され、その表面にさらに除去対象元素を含まないアパタイトが形成される。その結果、除去対象元素を含むアパタイトは除去対象元素を含まないアパタイトに被覆され、除去対象元素はアパタイトの内部のみに存在するようになる。
そのため、除去対象元素は水溶液とは接触されなくなり、アパタイトと水との溶解平衡に基づく除去対象元素の水溶液への溶出は起こらず、除去対象元素は水溶液から完全に除去される。
本発明においては除去対象元素を含むアパタイトを水中で形成させ、除去対象元素をアパタイトに取り込ませる。すなわち、アパタイトが形成される反応の間に除去対象元素がアパタイト構造の中に含有される。アパタイトが形成されている間だけ除去対象元素はアパタイトに取り込まれるため、除去対象元素を含む水溶液中でアパタイトを継続的に形成させることが好ましい。アパタイトを継続的に形成させる時間としては5分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、5時間以上がさらに好ましい。
特に放射性汚染水から放射性元素あるいは放射性元素を含む化合物を除去する場合には、汚染水中の放射性元素をより高度に、より完全に除去する必要がある。このような場合には除去対象元素を含む水溶液中でアパタイトを継続的に形成させる期間が1日以上、より好ましくは3日以上、さらに好ましくは7日以上であることが好ましい。
除去対象元素を含むアパタイトを水中で形成させる期間に関しては実質的なものであり、一時的にアパタイト形成を停止したとしても、本発明においては実質的に継続されたとして形成期間を定める。
除去対象元素を含むアパタイトを水溶液中で形成させ、一定量の除去対象元素を水溶液中から除去した後に、さらに水溶液中でアパタイトを形成させ、当初形成された除去対象元素を含むアパタイトを除去対象元素で被覆して、アパタイトの溶解平衡に基づく除去対象元素の水溶液への溶解や、さらなる除去対象元素の除去を行うことも好ましい。
発明でいうアパタイトは先に記載したようにA10(BO4)6C2を基本構造として有する化合物でAはCa2+, Cd2+, Sr2+, Ba2+, Pb2+, Zn2+, Mg2+, Mn2+, Fe2+, Ra2+, H+, H3O+, Na+, K+, Al3+, Y3+, Ce3+, Nd3+, La3+, C4+, 空隙、BO4はPO4 3-, CO3 2-, CrO4 3-, AsO4 3-, VO4 3-, UO4 3-, SO4 2-, SiO4 4-, GeO4 4-, 空隙、Cは OH-, OD-, F-, Br-, BO2-, CO3 2-, O2-, 空隙などである。
また、本発明において主に用いるリン酸カルシウム系アパタイトの基本構造はCa10(PO4)6(OH)2である。
なお、A10(BO4)6C2およびCa10(PO4)6(OH)2はアパタイトおよびリン酸カルシウム系アパタイトの基本構造式であり、上述したようにCa欠損アパタイトや置換アパタイトもアパタイトである。
本発明で定義するアパタイトのうち、炭酸基を含むアパタイトを炭酸アパタイトと呼ぶ。一般的にはリン酸カルシウム系アパタイトのリン酸基あるいは水酸基の一部あるいは全部が炭酸基に置換しているアパタイトであり、リン酸基が炭酸基に置換されているアパタイトをBタイプ炭酸アパタイト、水酸基が炭酸基に置換されているアパタイトをAタイプ炭酸アパタイトという。なお、炭酸基によるリン酸基の置換に伴い、アパタイトの電荷バランスを取るためにNaやKなどが結晶構造に含有される場合が多い。本発明では炭酸アパタイトの一部が他の元素あるいは空隙で置換された炭酸アパタイトも炭酸アパタイトと定義され、炭酸アパタイトはアパタイトの一種である。
本発明において「除去対象元素を含む水溶液中でアパタイトを形成させる」ことは必須条件である。アパタイト形成の有無は一般的な分析機器で判断される。例えば粉末X線回折装置や赤外分光光度計による解析が例示される。粉末X線回折装置によってアパタイト形成の有無を判断する場合にはアパタイトに起因する回折ピークの有無でアパタイト形成の有無を判断する。例えば、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の主ピークの一つは2q=31.8度に検出される。そのため、元素除去処理後の固体の粉末X線回折像において2q=31.8度近傍にピークが検出された場合はアパタイトが形成されたことを示す分析結果であると定める。なお、粉末X線回折のピーク位置は元素置換によってシフトするため、ピークシフトに留意して判断する。
なお、本発明において水溶液中で形成されるアパタイトは微量であったり、低結晶性であったりする場合がある。
粉末X線回折装置では分析対象の粉末における全体の平均的結晶構造を分析するため、アパタイト形成量が少量である場合には粉末X線回折装置による分析が困難である場合が多い。そのような場合においては処理時間を長くしたり、温度を上げて処理したりして測定を行う。処理時間を長くしたり温度を上げたりして処理を行い、アパタイト形成が認められた場合には当該処理によってアパタイト形成が認められたと本発明では定める。また、反応する薬品の濃度を多くして生成物を増やしてアパタイト形成の有無を判断する。本発明においては反応する薬品の濃度を多くすることによってアパタイトが形成された場合は、反応する薬品の濃度が低い場合においてもアパタイトが形成されていると定める。
また、室温などの低い温度でアパタイトを形成させると低結晶性のアパタイトが形成される場合がある。このような場合には低結晶性アパタイトの検出を目的として、元素除去処理後の固体を加熱し、低結晶性アパタイトの結晶性を上げる。例えば、600℃に加熱すると、アパタイトの結晶性が向上される。加熱された元素除去処理後の化合物の粉末X線回折像においてアパタイトに起因する回折ピークが検出された場合も処理中にアパタイトが形成されたことを示す分析結果であると定める。
本発明でいうリン酸水素カルシウムとはCaHPO4を基本組成とするリン酸カルシウム化合物であり、無水物と二水和物が知られている。
リン酸水素カルシウムの製造方法は特に規定されず公知の手法が一般的に用いられる。
本発明でいうリン酸三カルシウムとはCa3(PO4)2を代表的組成とするリン酸カルシウム化合物の一つであり、本発明の場合、カルシウムの一部がナトリウムなど他の金属イオンで置換されたものを含む。
リン酸三カルシウムには高温安定相のα型リン酸三カルシウムと低温安定相のβ型リン酸三カルシウムが知られている。
β型リン酸三カルシウムは低温で調製できるため、α型リン酸三カルシウムなどに比較してコスト的には有利であるが、溶解度がα型リン酸三カルシウムなどに比較して限定的であり、水溶液中でアパタイトを形成させるには時間がかかる。したがって、本発明においてはβ型リン酸三カルシウムよりα型リン酸三カルシウムが好ましい。
リン酸三カルシウム粉末、リン酸三カルシウム顆粒やリン酸三カルシウムブロックなどの製造方法は特に規定されず公知の手法が一般的に用いられる。例えば炭酸水素カルシウム粉末とリン酸水素カルシウム粉末をカルシウムとリンのモル比が3:2となるように混合、圧粉し、α型リン酸三カルシウムの場合はα-β相転移温度である1,180℃より高温の例えば1,200℃で焼成し、β型リン酸三カルシウムの場合はα-β相転移温度である1,180℃より低温の例えば1,000℃で焼成するとブロック体が製造できる。
本発明でいう炭酸カルシウムとはCaCO3を基本組成とするカルシウム化合物の一つである。カルサイト、バテライト、アラゴナイトなどの多形が知られているが、本研究においては多形の種類に限定されない。またCaの一部がMgなどの他の元素に置換された化合物も本研究では炭酸カルシウムと定義する。
炭酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム顆粒や炭酸カルシウムブロックなどの製造方法は特に規定されず公知の手法が一般的に用いられる。例えば、水酸化カルシウム粉末を炭酸化すると炭酸カルシウム粉末が製造される。また、水酸化カルシウム圧粉体を二酸化炭素に暴露すると炭酸カルシウムブロックが製造される。
水酸化カルシウム粉末を炭酸化して調製した炭酸カルシウムは一般的に市販の炭酸カルシウムより活性が高く。本発明においては好ましい。
本発明でいう水酸化カルシウムとはCa(OH)2を基本組成とするカルシウム化合物の一つである。水酸化カルシウムの製造方法は特に規定されず公知の手法が一般的に用いられる。例えば酸化カルシウム(CaO)を水に添加して製造する。
本発明でいうリン酸化合物とはリン酸を組成式中に含有する化合物あるいはリン酸と定義する。リン酸にはオルソリン酸、メタリン酸等が知られているが、アパタイト形成の観点からオルソリン酸が好ましい。
リン酸を含有する化合物とはリン酸を含有する化合物であり、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムなどが例示される。
本明細書で定義していない化合物に関しては一般的な定義を用いる。
本発明でいう水溶液とは水を含む溶液である。水溶液であることはアパタイトが水溶液中で形成されるため必須要件である。しかしながらが、水溶液中に油が含まれていたり、アルコールや炭化水素など他の溶媒が含まれていたりしても、反応系に水が含まれている場合には水溶液と定義する。これは、油や水以外の溶媒の存在は好ましくはないものの、水があればアパタイト形成は可能であり本発明の目的が達成されるためである。
同様に懸濁液であっても水が存在すれば、水の部分でアパタイトが形成される。したがって、懸濁液であっても水溶液と本質的に同じ元素除去方法が可能であるため懸濁液も水が存在する場合には本発明でいう水溶液と定義する。
本発明における必須要件は「除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、アパタイトを形成させ、形成されるアパタイトに除去対象元素を含有させること」であり、そのためには「除去対象元素を含む水溶液」がアパタイトに対して過飽和となる必要がある。
アパタイトの溶解度は水溶液のpHだけでなく、温度、共存イオン、アパタイトの種類などで変動する。したがって、本質的には除去対象元素が含まれている水溶液でアパタイトが形成されるか否かが本発明の範囲であるか本発明の外であるかの境界である。
一方で、pHはアパタイト形成に影響を及ぼす最大要因の一つである。これは概念的にはアパタイトの溶解度積がアパタイト飽和溶液におけるカルシウムイオン活量、リン酸イオン活量、水酸イオン活量の積である[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2で計算される値であることに起因する。すなわち、アパタイトの飽和溶液においては[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2で表されるカルシウムイオン活量、リン酸イオン活量、水酸イオン活量の積が一定の値となり、この値がアパタイトの溶解度積となる。水溶液中の[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2がアパタイトの溶解度積を超えると当該溶液はアパタイトに対して過飽和となり、アパタイトが形成される。逆に水溶液中の[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2がアパタイトの溶解度積より小さい場合には水溶液はアパタイトに対して不飽和であり、アパタイトは水溶液に溶解される。ここで水酸イオン活量濃度はpHに大きく依存する。なお、この説明は概念を説明したものであり、過飽和や共存イオンの影響などの詳細は一切無視したものである。
そのため、特に除去対象元素が含まれている水溶液にリン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウムとリン酸化合物、水酸化カルシウムとリン酸化合物の群から選ばれる少なくとも一つを添加し、当該水溶液中にアパタイトを形成させるには当該水溶液のpHを4以上とすることが必須である。
当該溶液のpHを4以上とすることによって当該溶液はアパタイトに対して過飽和となりアパタイトが形成される。アパタイト構造中に除去対象元素が含有されるため、除去対象元素は水溶液中からアパタイトの中に除去される。pH4以上では水溶液がアパタイトに対して過飽和となるが、アパタイトの形成速度を向上させる、すなわち水溶液中の除去対象元素を早く除去するためには水溶液のpHが高いことが好ましい。そのため、水溶液中のpHは6以上とすることが好ましく、8以上とすることがより好ましく、9以上とすることがさらに好ましい。
なお、pHは処理期間中の実質的なpHであり、一時的にpHが4未満に下がったとしても実質的には継続してpH が4以上であったと定める。
なお、アパタイトは温度が高いと溶解度が高くなる。その結果、対象元素はアパタイトに含有されにくくなる。また、水の沸点である100℃を超える処理は実用的ではない。これらの理由から本発明における除去対象元素を含む水溶液の温度、すなわちアパタイトを形成させる温度は99℃以下であることが必須要件であり、99℃を超えてアパタイトを形成させる場合は本発明の外である。処理温度が99℃以下であることは必須である、が90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。一方、処理速度、すなわちアパタイト形成速度の観点からは0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。処理温度、すなわちアパタイト形成を常温で反応させることは経済的な観点から好ましい。
本発明の必須要件は「除去対象元素を含む99℃以下の水溶液において、アパタイトを形成させ、形成されるアパタイトに除去対象元素を含有させること」であり、先に記載したように溶液内のカルシウムイオン活量、リン酸イオン活量、水酸基イオン活量などから計算される水溶液の[Ca2+]10[PO4 3-]6[OH-]2の値がアパタイトの溶解度積以上であることが当該水溶液においてアパタイトが形成される必須要件である。そのため、水溶液中のカルシウムイオン活量およびリン酸イオン活量が一定以上であることが要求される。なお活量は濃度に活量係数を乗じたものであるが、簡単のために以降は活量ではなく、濃度で記載する。
水溶液中のカルシウムイオン濃度あるいは水溶液中に供給されるカルシウムイオン濃度はアパタイトを形成するために十分な濃度である必要がある。リン酸カルシウム系アパタイトを形成させて元素を除去する本発明の場合において、除去対象元素の全量の除去を目的とする場合で、かつ、除去対象元素が陽イオンの場合は、水溶液中の除去対象元素のモル数の5倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは5倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることが好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の50倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは50倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることがより好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の500倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは500倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることがさらに好ましい。
一方、除去対象元素が陰イオンであり、リン酸カルシウム系アパタイトのリン酸基の位置に除去対象元素を取り込んで水溶液から除去対象元素を除去する場合は、水溶液中の除去対象元素のモル数の5倍以上のモル数のリン酸成分が水溶液中に存在していること、あるいは5倍以上のモル数のリン酸成分を水溶液に供給できることが好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の50倍以上のモル数のリン酸成分が水溶液中に存在していること、あるいは50倍以上のモル数のリン酸成分を水溶液に供給できることがより好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の500倍以上のモル数のリン酸成分が水溶液中に存在していること、あるいは500倍以上のモル数のリン酸成分を水溶液に供給できることがさらに好ましい。
除去対象元素が陰イオンであり、リン酸カルシウム系アパタイトの水酸基の位置に除去対象元素を取り込んで水溶液から除去対象元素を除去する場合は、形成されるアパタイトのモル数の2倍の水酸基がアパタイトに形成されることに鑑み、アパタイトを形成するために必要なカルシウム量で必要量が規定される。この場合、水溶液中の除去対象元素のモル数の5倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは5倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることが好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の50倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは50倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることがより好ましく、水溶液中の除去対象元素のモル数の500倍以上のモル数のカルシウムが水溶液中に存在していること、あるいは500倍以上のモル数のカルシウムを水溶液に供給できることがさらに好ましい。
25℃における水に対する溶解度が0.1以上であるリン酸を含まないカルシウム化合物とリン酸化合物との反応によってアパタイトを形成させる場合にはカルシウム化合物に対するリン酸化合物のモル比(Ca/Pモル比)が5以下とすることが好ましい。カルシウム化合物に対するリン酸化合物のモル比は2以下とすることがより好ましく、1以下とすることがさらに好ましい。
次に本発明の元素除去法を例示してさらに詳細に説明する。
まず、リン酸水素カルシウムを用いる系で水溶液中でアパタイトが形成される反応を概念的に説明する。
リン酸水素カルシウムは溶解度が小さいリン酸カルシウム化合物であり、pH が1.5以上4未満の水溶液中では安定相である。一方、リン酸水素カルシウムはpHが4以上の水溶液の場合には溶解-析出反応でアパタイトになる。例えば水酸化ナトリウムでpHを上げると式(1)および式(2)で示される溶解反応が起こり、pHが4以上の水溶液で安定なアパタイトになる。なお、本説明も概念的なものであり、リン酸イオンはpHによって存在イオンがPO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -などに変化する。しかし、簡単のために本明細書ではPO4 3-と記載する。
式(1)はリン酸水素カルシウムの溶解反応であり、pHが1.5以上4未満の場合にはこれで平衡となる。すなわち単純にリン酸水素カルシウムの一部が水に溶解された平衡状態であり、他の反応は起こらない。
10CaHPO4→ 10Ca2+ + 10H+ + 10PO4 3- (1)
しかしながら、リン酸水素カルシウムが安定であるpHは1.5以上4未満であり、pHが4以上に上がった場合にはpHが4以上の領域で安定なアパタイトが形成される。
例えば、水溶液のpHを上げる目的で外部から水酸化ナトリウムが添加されたとすれば、水酸化ナトリウムは水溶液中で式(2)のように解離する。
8NaOH → 8Na+ + 8OH- (2)
式(1)と式(2)をまとめると式(3)となる。
10CaHPO4+ 8NaOH
→ 10Ca2+ + 10H+ + 10PO4 3-+ 8Na+ + 8OH-
→ Ca10(PO4)6(OH)2 + 4Na2HPO4+ 6H2O (3)
すなわち、水溶液のpHが4以上の場合には当該水溶液がアパタイトに対して過飽和となるため(3)に例示される析出反応が進行する。すなわちリン酸水素カルシウムの溶解析出反応によって、アパタイトが形成される。
次に、除去対象元素をストロンチウムとし、ストロンチウムを含む水溶液にリン酸水素カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上として当該水溶液中にアパタイトを形成させ、形成されるアパタイトにストロンチウムを含有させることによって水溶液中からストロンチウムを除去する場合に関して概念的に説明する。
上述したようにアパタイトはストロンチウムを構造内に取り込むことが知られており、水溶液中にストロンチウムイオンが存在する場合は式(3)のアパタイト形成過程においてストロンチウムが取り込まれたアパタイトが形成される。
アパタイト形成によるストロンチウムの除去における化学反応を概念的に説明する。なお、この反応式も概念を説明するための反応式であり、ストロンチウムの取り込み量等はこの反応式に限定されるものではない。
式(4)は式(1)と基本的には同じであり、リン酸水素カルシウムの溶解反応である。
9CaHPO4→ 9Ca2+ + 9H+ + 9PO4 3- (4)
式(5)は水酸化ストロンチウムの溶解反応であり、除去対象元素の一例であるストロンチウムが水溶液中に溶解している状態である。
Sr(OH)2→ Sr2+ + 2OH- (5)
例えば、外部から水溶液のpHを上げる目的で、水溶液に水酸化ナトリウムが添加されたとすれば水酸化ナトリウムは水溶液中で式(6)のように解離する。
6NaOH → 6Na+ + 6OH- (6)
式(4)、(5)および式(6)をまとめると、式(7)になる。すなわち、ストロンチウムがアパタイト構造に取り込まれる。
9CaHPO4+ Sr(OH)2 + 8NaOH
→ 9Ca2+ + 9H+ + 9PO4 3- + Sr2+ + 2OH- + 6Na+ + 6OH-
→ Ca9Sr(PO4)6(OH)2 + 3Na2HPO4+ 6H2O (7)
このようにストロンチウムはアパタイト中、詳しくはアパタイト結晶構造中に取り込まれるため、除去対象元素であるストロンチウムを含む水溶液中でアパタイトを形成させると除去対象元素であるストロンチウムは固体であるアパタイトに含まれて水溶液から高度に除去される。
すなわち、アパタイトを吸着材として使用し、アパタイトの表面のみでストロンチウムを吸着させる場合、あるいはアパタイトの表面のみでストロンチウムをアパタイトのカルシウムと置換させて水溶液中からストロンチウムを除去する場合に比べて除去量が多い、あるいは除去効率が高い。
また、溶液とアパタイトは平衡状態にあるが、ほとんどのストロンチウムがアパタイト構造内部に除去されているため、表面のストロンチウムしか水溶液と平衡にならない。そのため、水溶液中から高度に、すなわち水溶液中にストロンチウムを残さないように除去することが可能となる。
さらに、除去対象のストロンチウム量に対してリン酸水素カルシウム量が一定以上の場合には、水溶液中のストロンチウムがアパタイトに除去させてからもアパタイト形成が続き、ストロンチウムを含むアパタイトの表面にストロンチウムを含まないアパタイトが形成される。すなわち、ストロンチウムを含むアパタイトはストロンチウムを含まないアパタイトで被覆される。
ストロンチウムを含むアパタイトの表面を被覆するアパタイトはストロンチウムを含まないため、水溶液はストロンチウムを含むアパタイトではなく、ストロンチウムを含まないリン酸カルシウム系アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)と平衡になる。その結果、除去対象元素が含まれる水溶液中に除去元素であるストロンチウムが残存することはなく、水溶液中のストロンチウムは完全に除去される。
ストロンチウムがアパタイトに含まれるためにはストロンチウムは形成されているアパタイトの近傍に存在する必要がある。そのため水溶液中に元素が残存しないようにするためには少なくとも水溶液中のストロンチウムが形成されているアパタイト近傍に拡散される時間が必要である。そのため、アパタイト形成が5分以上継続されることが好ましい。また、放射性汚染水から放射性汚染物質を除去するなど、高度に元素を除去する場合には1日以上アパタイト形成が継続されることが好ましい。
リン酸水素カルシウムの溶解析出反応によって水溶液中でアパタイトを形成させる場合、水溶液のpHを上げる目的で添加されるアルカリ性の塩などの添加を一度に行わず、徐々に行うことが有効である。また、リン酸水素カルシウムを過剰に水溶液中に添加し、アルカリ性の塩によってアパタイトを形成させ、その後に再度アルカリ性の塩を添加して溶解析出反応によってアパタイトを形成させることも有効である。さらに比表面積の小さいリン酸水素カルシウムを用いることも有効である。
例えば、水溶液のpHを徐々に上げると、一度にpHを上げる場合と比較してアパタイト形成反応がゆっくり進行し、そのために除去対象元素が高濃度でアパタイト構造中に取り込まれる。
水溶液中にリン酸三カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させることを特徴とする元素の除去原理もリン酸水素カルシウムの場合と同様である。すなわちリン酸三カルシウムも水溶液中で溶解され、式(8)のようにカルシウムイオンおよびリン酸イオンが水溶液中に提供される。
3Ca3(PO4)2→ 9Ca2+ + 6PO4 3- (8)
式(5)は上述したように水酸化ストロンチウムの溶解反応であり、除去対象元素の一例であるストロンチウムが水溶液中に溶解している状態である。
Sr(OH)2→ Sr2+ + 2OH- (5)
式(8)および(5)をまとめると式(9)になる。すなわち、ストロンチウムがアパタイト構造に取り込まれる。
3Ca3(PO4)2+ Sr(OH)2 → 9Ca2+ + 6PO4 3-+ Sr2+ + 2OH-
→ Ca9Sr(PO4)6(OH)2 (9)
炭酸カルシウムを用いてアパタイトを形成する場合にはリン酸化合物を徐々に加えることによってアパタイトが形成される時間を長くする。すなわち、リン酸化合物を一度に加えると反応速度が速くなるが、リン酸化合物を徐々に加えるとリン酸イオン濃度は比較的低く、アパタイト形成速度が遅くなる。
炭酸カルシウムを用いてアパタイトを形成させる方法はリン酸化合物としてリン酸水素二ナトリウムなどの中性リン酸塩を選択すると水溶液への影響が限定的であり、かつ安価な処理方法となる。
まず、炭酸カルシウムは安価なカルシウム化合物であり、中性の水溶液に添加しても水溶液のpHに及ぼす影響が極めて限定的である。逆に酸性の水溶液の場合は酸性成分と反応して溶液を中和する。中性の水への溶解度は小さく、溶解されて供給されるカルシウムイオンも炭酸イオンも一般的には大きな問題を惹起しない。また、炭酸カルシウムによって完全にアパタイトが形成される量よりもリン酸化合物を少なく添加すると処理後の水溶液中にリン酸成分が残存することもない。さらに炭酸アパタイトは溶解度が小さいため、アパタイトが形成される速度が遅い。そのため、水溶液中で長時間アパタイトが経時的に形成される。
次に25℃における水の溶解度が0.1以下である炭酸カルシウムを用いて除去対象元素をアパタイト中に除去する方法について説明する。
炭酸カルシウムはカルシウム成分を含有するが、リン酸成分を含有していない成分であるため、溶解しても基本的にはカルシウムイオンのみしか水溶液に提供されない。そのため、別途リン酸イオンを水溶液に提供し、水溶液中でアパタイトを形成させる必要がある。
水溶液中にリン酸イオンを提供するためにはリン酸化合物を水溶液に添加すればよい。
このように水溶液中にカルシウムイオンとリン酸イオンが共存する条件で当該水溶液中のpHが4以上とすれば、水溶液中でアパタイトが形成される。形成されるアパタイトに除去対象元素が含有されることによって、除去対象元素は固体のアパタイトに含有されて水溶液中から除去される。
除去対象元素をストロンチウムとし、ストロンチウムを含む水溶液に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上として当該水溶液中にアパタイトを形成させ、形成されるアパタイトにストロンチウムを含有させることによってストロンチウムを当該水溶液から除去する場合に関して説明する。
式(10)は水酸化カルシウムの溶解反応であり、他にイオンが存在しない場合にはこれで平衡となる。
8CaCO3 → 8Ca2+ + 8CO3 2- (10)
例えばストロンチウムが除去対象元素であり、水溶液中にストロンチウムが水酸化ストロンチウムとして溶解している場合の反応式は上述の式(5)である。
Sr(OH)2 → Sr2+ + 2OH- (5)
リン酸化合物であるリン酸水素二ナトリウムを水溶液中に添加すると、リン酸水素二ナトリウムは式(11)のようにリン酸イオンを水溶液中に提供する。
5Na2HPO4→ 10Na+ + 5H+ + 5PO4 3- (11)
式(10)、(5)および式(11)をまとめると式(12)になる。
8Ca(OH)2 + Sr(OH)2+ 5Na2HPO4
→ 8Ca2+ + 8CO3 2-+ Sr2+ + 2OH- + 10Na+ + 5H+ + 5PO4 3-
→ Ca8SrNa(PO4)5(CO3)(OH)2+ 5NaHCO3 + Na2CO3 (12)
次に25℃における水に対する溶解度が0.1以上である水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムを用いて除去対象元素をアパタイト中に除去する方法について説明する。なお、酸化カルシウムは水に入れられると反応して水酸化カルシウムとなる。したがって、正確には酸化カルシウムの水に対する溶解度が0.1以上というのは適切でないが、本明細書では0.1g以上が溶解するという意味で、酸化カルシウムに関しても水に対する溶解度が0.1以上のカルシウム化合物と定義する。
水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムも炭酸カルシウムと同様に、いずれもカルシウム成分を含有するが、リン酸成分を含有していない成分であるため、溶解しても基本的にはカルシウムイオンのみしか水溶液に提供されない。そのため、別途リン酸イオンを水溶液に提供し、水溶液中でアパタイトを形成させる必要がある。
水溶液中にリン酸イオンを提供するためにはリン酸化合物を水溶液に添加すればよい。したがって、例えば、水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸化合物を添加すれば、水溶液中にカルシウムイオンとリン酸イオンが提供される。
このように水溶液中にカルシウムイオンとリン酸イオンが共存する条件で当該水溶液中のpHが4以上とすれば、水溶液中でアパタイトが形成される。形成されるアパタイトに除去対象元素が含有されることによって、除去対象元素は固体のアパタイトに含有されて水溶液中から除去される。
除去対象元素をストロンチウムとし、ストロンチウムを含む水溶液に水酸化カルシウムとリン酸を添加し、当該水溶液のpHを4以上として当該水溶液中にアパタイトを形成させ、形成されるアパタイトにストロンチウムを含有させることによってストロンチウムを当該水溶液から除去する場合に関して説明する。
式(13)は水酸化カルシウムの溶解反応であり、他にイオンが存在しない場合にはこれで平衡となる。
9Ca(OH)2 → 9Ca2+ + 18OH- (13)
例えばストロンチウムが除去対象元素であり、水溶液中にストロンチウムが水酸化ストロンチウムとして溶解している場合の反応式は上述の式(5)である。
Sr(OH)2→ Sr2+ + 2OH- (5)
本発明ではリン酸化合物として定義されるリン酸を水溶液中に添加すると、リン酸は式(14)のようにリン酸イオンを水溶液中に提供する。
6H3PO4 → 18H+ + 6PO4 3- (14)
式(13)、(5)および式(14)をまとめると式(15)になる。
9Ca(OH)2 + Sr(OH)2+ 6H3PO4 → 9Ca2+ + 18OH- + Sr2+ + 2OH- + 18H+ + 6PO4 3-
→ Ca9Sr(PO4)6(OH)2+ 18H2O (15)
なお、この例では水溶液のpHが4以上となるため水酸化ナトリウムなどでpH調製をする必要はないが、水溶液のpHが4以上であることは水溶液中でアパタイトを形成させるために必須であり、また水溶液のpHが高いとアパタイト形成の反応速度、すなわち、除去対象元素の除去速度が速くなる。
このようにストロンチウムはアパタイト結晶構造中に取り込まれるため除去対象元素であるストロンチウムを含む水溶液中でアパタイトを形成させると、除去対象元素であるストロンチウムは水溶液から高度に除去される。
次に、「アパタイト中に取り込まれる除去対象元素の少なくとも一つの元素を含む水溶液中のpHを4未満として当該水溶液中にカルシウムイオンとリン酸イオンを存在させた後に、当該水溶液のpH を4以上として、当該水溶液中でアパタイトを形成させる元素除去方法」について説明する。
水溶液のpHが4未満の場合、当該水溶液はアパタイトに対して不飽和であり、アパタイトは溶解してカルシウムイオンとリン酸イオンとなる。したがって、例えば除去対象元素のストロンチウムと併せると、水溶液中にはカルシウムイオン、リン酸イオン、ストロンチウムイオンが共存する。当該水溶液に水酸化ナトリウムなどを添加し、pHを上げて4以上とすれば当該水溶液はアパタイトに対して過飽和となり、水溶液中のカルシウムイオンおよびリン酸イオンからアパタイトが形成される。水溶液中にストロンチウムイオンが存在しているため、ストロンチウムイオンはアパタイト構造に取り込まれて水溶液から固体のアパタイトとして除去される。この反応は式(16)で表される。
9Ca2++ Sr2+ + 6PO4 3- + 2OH- → Ca9Sr(PO4)6(OH)2 (16)
なお、この反応は除去対象元素の少なくとも一つを含むアパタイトに含まれる除去対象元素の含有率を増大させる場合にも有用である。
本発明において除去対象元素は水溶液中で形成されるアパタイトに含まれて除去されるが、水溶液から除去対象元素を完全に除去する場合などにおいては、除去対象の元素が含まれるアパタイトが形成されてから、さらに当該アパタイトを被覆するようアパタイトを形成させる。そのため、アパタイト中の除去対象元素の含有率が小さい場合がある。
また、除去対象元素の除去速度を早くするために、必要量以上のアパタイトを水溶液中で形成させる場合もある。この場合もアパタイト中の除去対象元素の含有率が小さくなる。
このような場合は「本発明の元素除去方法によって形成されたアパタイト中に取り込まれる除去対象元素の少なくとも一つの元素を含有しているアパタイトを酸性水溶液で溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHをあげることによって、酸性水溶液に溶解されたカルシウムとリン酸の一部からアパタイトを再形成させることによって、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素の含有率を増大させる元素除去方法」が有効である。
除去対象の元素が含まれているアパタイトは酸性水溶液に溶解される。この際の水溶液pHはアパタイトが溶解される少なくとも4未満である必要があるが、除去対象の元素が含まれているアパタイトを溶解できる酸性水溶液を用いる。
除去対象元素が含まれているアパタイトを効率的に溶解するためには、pHは3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
除去対象元素が含まれているアパタイトを酸性水溶液に溶解することによって、カルシウムイオン、リン酸イオン、除去対象の元素を含むイオンが溶解された酸性水溶液が調製される。
次に当該酸性水溶液のpH を上げて当該水溶液からアパタイトを形成させる。この際に徐々に当該水溶液のpHを上げて、溶解させたアパタイトの全部ではなく、一部のアパタイトだけを析出させると除去対象元素は形成されたアパタイトの構造中に含まれる。
形成されるアパタイトは溶解させたアパタイトと比較して量が少ないため、アパタイトに含まれて除去される除去対象元素の含有率は高くなる。
この除去対象元素の濃度増大方法の概念を除去元素がストロンチウムの場合で概念的に説明する。
例えばストロンチウムは上記の式(7)に示すようにアパタイト構造中に含有されて水溶液中から除去される。
9CaHPO4+ Sr(OH)2 + 8NaOH
→ 9Ca2+ + 9H+ + 9PO4 3- + Sr2+ + 2OH- + 6Na+ + 6OH-
→ Ca9Sr(PO4)6(OH)2+ 3Na2HPO4 + 6H2O (7)
しかしながら、除去対象元素のSrがアパタイト構造中に取り込まれて水溶液中にストロンチウムが存在しなくなってもアパタイト形成反応が進行する場合がある。この場合は上記式(3)の反応が進行する。
10CaHPO4+ 8NaOH
→ 10Ca2+ + 10H+ + 10PO4 3-+ 8Na+ + 8OH-
→ Ca10(PO4)6(OH)2+ 4Na2HPO4 + 6H2O (3)
式(7)および式(3)の反応によって同モル数のアパタイトが形成される場合、2モルのアパタイト中に1モルのストロンチウムが除去される。
形成されたCa9Sr(PO4)6(OH)2とCa10(PO4)6(OH)2を酸性水溶液に溶解すると式(15)に示されるようにカルシウムイオン、リン酸イオン、ストロンチウムイオンが酸性水溶液中に供給される。
Ca9Sr(PO4)6(OH)2+ Ca10(PO4)6(OH)2
→ 19Ca2+ + Sr2+ + 12PO4 3-+ 4OH- (15)
この酸性水溶液のpHを一部のアパタイトが析出するように上げる。ここでは溶解した半分のアパタイトが析出するようにpHを上げた場合を考える。その場合、ストロンチウムはアパタイト構造に含まれやすいため、式(16)に示すようにアパタイトに含有されて除去される。
19Ca2++ Sr2+ + 12PO4 3- + 4OH-
→ Ca9Sr(PO4)6(OH)2+ 10Ca2+ + 6PO4 3- + 2OH- (16)
その結果、1モルのアパタイト中に1モルのストロンチウムが除去され、アパタイト中のストロンチウム含有率は2倍となることがわかる。
固体であるアパタイトを水溶液から除去すると水溶液には除去対象元素が含まれておらず、カルシウムイオンとリン酸イオンが含有されている水溶液が残る。この水溶液からリン酸水素カルシウムなどを調製したり、さらに除去対象元素の除去に利用したり、pHをさらにあげてアパタイトを析出させて他の目的で利用することも可能である。
本発明において水溶液中に存在する除去対象元素は水溶液中で形成されるアパタイトに含まれることによって除去される。アパタイトは固体であり水溶液からの分離は公知の方法で容易に行うことができる。一般的にはアパタイトは粉末で得られるため、例えばデカンテーション、濾過、遠心分離などで水溶液から除去される。
本発明において用いられるリン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムの形態や大きさは特に制限されない。しかしながら、水溶液中においてアパタイトが形成される反応は溶解析出型の反応であり、溶解速度はこれらのカルシウム化合物の表面積によって大きな影響を受ける。
したがって、除去の目的によって好適な平均粒径は異なる。
比較的濃度の高い除去対象元素を当初の濃度よりは低いものの比較的高い濃度まで除去する場合において、除去速度を優先する場合には細かい粒子が好ましい。平均粒径としては10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、2 mm以下であることがさらに好ましい。
一方で、比較的濃度の低い除去対象元素を完全にあるいは極めて低い濃度まで除去する場合においては水溶液中でアパタイトが継続的に形成されることが重要となる。したがって、そのような場合には比表面積の小さい、すなわち平均粒子径の大きい粒子あるいは顆粒が好ましい。粒子の場合、平均粒径としては1 mmであることが好ましく、5 mm以上であることがより好ましく、10 mm以上であることがさらに好ましい。
また、粒子の平均粒径が同じであっても反応性が異なる場合がある。特に炭酸カルシウムは水酸化カルシウムを二酸化炭素と反応させて調製した沈降性炭酸カルシウムであると反応性が高いため好ましい。
本発明の元素除去方法は放射性汚染水から放射性元素を除去する際に特に有効である。本発明の元素除去方法が放射性汚染水からの放射性元素を除去する際に有効である一つの理由は、放射性汚染水から放射性元素を除去する際に用いた処理材が放射性汚染物となるためである。例えば、ゼオライトによって放射性ストロンチウムを除去した場合、放射性汚染水を処理したゼオライトには放射性ストロンチウムが吸着されており、放射性汚染物となる。
ゼオライトから放射性ストロンチウムを完全に除去できない限り、放射性汚染水の処理に用いたゼオライトの処理あるいは保管が問題となる。
本発明においては水溶液中でアパタイトを形成させ、アパタイトの構造中に例えばストロンチウムが導入されて、水溶液中からストロンチウムを含むアパタイトを除去する。除去したストロンチウム含有アパタイトを酸性水溶液に溶解することによって得られる酸性水溶液中のストロンチウムの濃度は当初の水溶液中のストロンチウム濃度から飛躍的に濃縮されている。
濃度が高くなった放射性ストロンチウム水溶液からは公知の方法でストロンチウムを除去することも可能である。また、本発明で提示している方法によって、放射性ストロンチウムを含む酸性水溶液中のpHを上げて一部のリン酸イオンおよびカルシウムイオンからアパタイトを再形成させ、ストロンチウム含有アパタイトとして水溶液から除去することも可能である。
このように再処理が容易であることはゼオライトや活性炭が水に溶解されないのに対して、除去対象元素の除去によって形成されるアパタイトが酸性水溶液に溶解されるためである。
また、放射性元素はガラス固化によって保管される場合が多い。アパタイトは焼結性に富む材料であり、放射性元素を含むアパタイトを焼結して保管することも可能である。
アパタイトの焼結は特に限定されることなく公知の焼結方法が用いられる。例えば圧粉体を1000℃で焼成するとアパタイト焼結体が得られることが知られている。
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
一般的な条件
一般的な条件は下記の通りである。なお、この条件と異なる場合には個別の実施例あるいは個別の比較例に記載した。
まず、実施例20−23以外は50mLのポリプロピレン製遠心管に除去対象である元素が溶解された水溶液40mLを入れた。この水溶液を除去対象元素含有水溶液と呼ぶ。
次に、実施例20−23以外は除去対象元素含有水溶液にリン酸水素カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、α型リン酸三カルシウム、水酸化アパタイト、あるいは活性炭を添加した。水溶液の温度は実験室の室温である23−27℃であった。
次に、一部の実施例あるいは比較例においては水溶液のpH制御あるいは水溶液へのリン酸成分の供給を目的として、除去対象水溶液に水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸水素二ナトリウムあるいはリン酸二水素ナトリウムを添加した。水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸水素二ナトリウムあるいはリン酸二水素ナトリウムは除去対象元素含有水溶液中の濃度が表1に記載した濃度になるように除去対象含有水溶液に添加した。
除去対象水溶液に添加したリン酸水素カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、α型リン酸三カルシウム、水酸化アパタイト、活性炭、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムを処理材と呼ぶ。
処理材であるン酸水素カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、α型リン酸三カルシウム、水酸化アパタイトあるいは活性炭の添加量は、実施例12、13、16、17、18、19は0.04gであり、それ以外は0.4gである。
表1に実施例および比較例における除去対象水溶液中の除去対象元素の種類と濃度、および処理材の種類と濃度をまとめた。
表1の処理材欄において同一の実施例あるいは比較例の記載において罫線が引いて上下を区分している場合には、まず罫線の上の処理材を除去対象元素含有水溶液に加え、次に罫線の下の処理材を加えたことを示す。実施例20−23は表1に含めず、個別に記載した。

除去対象元素含有水溶液に処理材を添加して調製される懸濁液を除去対象元素含有懸濁液と呼ぶ。
次に、実施例20−25以外の場合は、除去対象元素含有水溶液に処理材を添加した後に、除去対象元素含有懸濁液を室温で振盪器によって振盪させた。振盪期間は1日間、3日間、7日間の中から選択した。振盪器としてはTAITEC製SR-10型を用い、振盪条件は毎分120回とした。
除去対象元素含有懸濁液を室温で一定期間振盪させた後に遠心分離機によって除去対象元素含有懸濁液を溶液部と粉末部に分離した、遠心分離機としてはKUBOTA製2420型を用い、4000rpmで5分間遠心した。
遠心分離機によって分離された除去対象元素含有懸濁液の水溶液部は、さらに0.22mmのフィルターで濾過した。濾過後の濾液を除去対象元素含有懸濁液分離濾液と呼ぶ。
遠心分離機によって分離された除去対象元素含有懸濁液の粉末部は再度蒸留水に懸濁させ遠心機によって蒸留水と粉末部を分離させることによって洗浄を行い、粉末部は60℃の真空オーブンで24時間乾燥した。この粉末部を除去対象元素含有懸濁液分離粉末部と呼ぶ。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液に関しては、pH測定および除去対象元素の濃度測定を行った。除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHはpHメーターで測定した。除去対象元素含有懸濁液分離濾液の除去対象元素の濃度は必要に応じて処理および希釈を行い、Perkin Elmer製Optima 7300 DV型誘導結合プラズマ発光分光光度計で測定した。
除去対象元素含有懸濁液分離粉末部は乾燥後、BRUKER製D8 ADVANCE型粉末X線回折装置で組成分析した。
なお、実施例および比較例で例示される除去対象元素であるストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、クロム、鉄はアパタイト中に取り込まれる元素である。
5マイクロモル濃度あるいは5ミリモル濃度のストロンチウム水溶液は塩化ストロンチウム(ナカライテスク社)を蒸留水に溶解させて、5ミリモル濃度の亜鉛水溶液は硝酸亜鉛(ナカライテスク社)を蒸留水に調製させて、5ミリモル濃度のマグネシウム水溶液は塩化マグネシウム(ナカライテスク社)を蒸留水に溶解させて、5ミリモル濃度のバリウム水溶液は塩化マグネシウム(ナカライテスク社)を蒸留水に溶解させて、5ミリモル濃度のクロム水溶液は十クロム酸(ナカライテスク社)を蒸留水に溶解させて、5ミリモル濃度の三価の鉄水溶液は塩化第二鉄(ナカライテスク社)を蒸留水に溶解させて調製した。なお、三価の鉄水溶液を以降は鉄水溶液と記載する。また、それ以外の水溶液も同様に調製した。
リン酸水素カルシウム二水和物は市販のリン酸水素カルシウム(ナカライテスク社)をそのまま、あるいは遊星式ボールミルでエタノールを分散溶媒として1時間粉砕、乾燥してから使用した。粉砕前の平均粒径はおおよそ1mm、粉砕後の平均粒径はおおよそ1mmであった。粉砕して調製したリン酸水素カルシウム二水和物を粉砕リン酸水素カルシウム二水和物と呼ぶ。炭酸カルシウム(ナカライテスク社)、水酸化カルシウム試薬(ナカライテスク社)、α型リン酸三カルシウム試薬(太平化学社)、リン酸水素二ナトリウム試薬(ナカライテスク社)リン酸二水素ナトリウム(ナカライテスク社)、水酸化ナトリウム試薬(ナカライテスク社)、塩化ナトリウム試薬(ナカライテスク社)は市販品をそのまま使用した。
(実施例1)
除去対象元素であるストロンチウムの濃度は5マイクロモル濃度とした。除去対象元素含有水溶液に0.4gのリン酸水素カルシウム二水和物を添加してから当該水溶液の水酸化ナトリウム濃度が100ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加し除去対象元素含有懸濁液を調製した。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。また、表3から除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった。特に7日処理するとストロンチウムが水溶液から完全に除去できることがわかった。
また、図1に処理期間が1時間および3日間の場合の粉末X線回折パターンを示す。処理期間が1時間の場合、リン酸水素カルシウムに由来するピークとアパタイトに由来するピークが認められる。このことから、除去対象元素含有懸濁液中においてアパタイト形成が少なくとも1時間以上継続的に形成されていることがわかった。
以上のことから除去対象元素であるストロンチウム含む水溶液中にリン酸水素カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、除去対象元素含有水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に除去対象元素であるストロンチウムが取り込まれて、除去対象元素であるストロンチウムが除去対象元素含有水溶液中から除去されることがわかった。

7日間処理後に得られた除去対象元素含有懸濁液分離粉末部を乾燥、圧粉し、電気炉中1000℃で3時間焼成すると粉末は焼結された。
(実施例2)
除去対象元素含有水溶液中の水酸化ナトリウム濃度を100ミリモル濃度ではなく10ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンではリン酸水素カルシウム二水和物に由来するピークがほとんどであったが、2q=31.8度付近にブロードなピークが認められた(図1)また、反応する薬品である水酸化ナトリウムの濃度を大きくした実施例1の粉末X線回折パターンではアパタイトが認められていることから、本発明の定義に従い、除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。
また、表3から除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった。特に7日処理するとストロンチウムが水溶液から完全に除去できることがわかった。
以上のことから除去対象元素であるストロンチウムを含む水溶液中にリン酸水素カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、除去対象元素含有水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に除去対象元素であるストロンチウムが取り込まれて、除去対象元素であるストロンチウムが除去対象元素含有水溶液中から除去されることがわかった。
また、水酸化ナトリウム濃度が高い、すなわちpHが高い実施例1と比較すると3日処理後のアパタイト形成量が少なく、また、水溶液中の除去対象元素であるストロンチウム濃度が高かった。
このことから、水溶液のpHが高いとアパタイト形成が早くなり、その結果、除去対象元素であるストロンチウムが早くアパタイトに取り込まれ、ストロンチウムが除去対象元素含有水溶液中から早く除去できることがわかった。
(実施例3)
除去対象元素含有水溶液中に粉砕していないリン酸水素カルシウム二水和物ではなく、粉砕したリン酸水素カルシウム二水和物を添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことから除去対象元素であるストロンチウムを含む水溶液中にリン酸水素カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に除去対象元素であるストロンチウムが取り込まれて、除去対象元素であるストロンチウムが除去対象元素含有水溶液中から除去されることがわかった。
また、実施例1と比較して比表面積が大きいリン酸二水素カルシウムを用いた本実施例の場合、1日後のアパタイト形成量が実施例1より多く、ほぼアパタイトに変換されていた。比表面積が大きいリン酸水素カルシウム二水和物は比表面積が小さいリン酸水素カルシウム二水和物に比較しては早くアパタイト形成が進行する関係で、低濃度の除去対象元素を完全に除去使用とする場合においては、逆に除去対象元素含有元素の除去率が小さくなることがわかった。
(実施例4)
除去対象元素含有水溶液中の水酸化ナトリウム濃度を100ミリモル濃度ではなく10ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加した以外は実施例3と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことから除去対象元素であるストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、除去対象元素含有水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に除去対象元素であるストロンチウムが取り込まれて、除去対象元素であるストロンチウムが除去対象元素含有懸濁液から除去されることがわかった。
また、実施例3との比較からpHを向上させる水酸化ナトリウム濃度が小さいと除去対象元素の除去率が小さいことがわかった。
(実施例5)
除去対象元素含有水溶液中の水酸化ナトリウム濃度を100ミリモル濃度ではなく1ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加した以外は実施例3と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
7日後の除去対象元素含有懸濁液に添加した水酸化ナトリウムと同じモル数の水酸化ナトリウムを添加した。7日後の除去対象元素含有懸濁分離液濾液のストロンチウム濃度は550ナノモル濃度であったが、8日後、すなわち、二回目に水酸化ナトリウムを添加してから1日目のストロンチウム濃度は0ナノモル濃度となった。
また、実施例3、4との比較からpHを向上させる水酸化ナトリウム濃度が小さいと除去対象元素の除去率が小さいことがわかった。
また、除去対象元素含有懸濁液中でアパタイト形成が終了した後、あるいはアパタイト形成がほぼ終了した後に、除去対象元素含有懸濁液中で新たにアパタイトを形成させる工程を追加すると除去対象元素含有懸濁液からの除去対象元素の除去が極めて高度に行えることがわかった。
(実施例6)
除去対象元素含有水溶液のストロンチウム濃度を5マイクロモル濃度ではなく、5ミリモル濃度とした以外は実施例4と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
7日後の除去対象元素含有懸濁液に添加した水酸化ナトリウムと同じモル数の水酸化ナトリウムを添加した。7日後の除去対象元素含有懸濁分離液濾液のストロンチウム濃度は21000ナノモル濃度であったが、8日後、すなわち、二回目に水酸化ナトリウムを添加してから1日目のストロンチウム濃度は470ナノモル濃度となった。
実施例3、4との比較からpHを向上させる水酸化ナトリウム濃度が小さいと除去対象元素の除去率が小さいことがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例7)
除去対象元素含有水溶液に0.4gのリン酸水素カルシウム二水和物を添加してから当該水溶液の水酸化ナトリウム濃度が100ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加するのではなく、除去対象元素含有水溶液に0.4gのα型リン酸三カルシウムを添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
また、図2
に処理期間が1時間、1日間、7
日間の場合の粉末X線回折パターンを示す。処理期間が1時間の場合、α型リン酸三カルシウムに由来するピークとアパタイトに由来するピークが認められる。このことから、除去対象元素含有懸濁液中においてアパタイト形成が少なくとも1日間以上継続的に形成されていることがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にα型リン酸三カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
7日間処理後に得られた除去対象元素含有懸濁液分離粉末部を乾燥、圧粉し、電気炉中1000℃で3時間焼成すると粉末は焼結された。
(実施例8)
除去対象元素含有水溶液のストロンチウム濃度を5マイクロモル濃度ではなく、5ミリモル濃度とした以外は実施例7と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にα型リン酸三カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例9)
除去対象元素含有水溶液に0.4gのリン酸水素カルシウム二水和物を添加してから当該水溶液の水酸化ナトリウム濃度が100ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加するのではなく、除去対象元素含有水溶液に0.4gの炭酸カルシウムを添加してから、当該水溶液の濃度が63ミリモル濃度となるようにリン酸水素二ナトリウムを添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例10)
除去対象元素含有水溶液に添加するリン酸水素二ナトリウムを当該水溶液の濃度が63ミリモル濃度となるように添加するのではなく、当該水溶液の濃度が6.3ミリモル濃度となるように添加した以外は実施例9と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にα型リン酸三カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例9との比較によって添加するリン酸化合物であるリン酸水素二ナトリウム濃度が小さいと除去対象元素の除去率も小さくなることがわかった。
(実施例11)
除去対象元素含有水溶液のストロンチウム濃度を5マイクロモル濃度ではなく、5ミリモル濃度とした以外は実施例9と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にα型リン酸三カルシウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例12)
除去対象元素含有水溶液に0.4gのリン酸水素カルシウム二水和物を添加してから当該水溶液の水酸化ナトリウム濃度が100ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加するのではなく、除去対象元素含有水溶液に0.04gの水酸化カルシウムを添加してから、リン酸水素二ナトリウムを当該水溶液中の濃度が25ミリモル濃度となるように添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は0.54である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例13)
除去対象元素含有水溶液添加するリン酸水素二ナトリウムの量を当該水溶液中の濃度が25ミリモル濃度となるように添加するのではなく、2.5ミリモル濃度となるように添加した以外は実施例12と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は5.4である。
遠心分離を行っても懸濁液から粉末部の分離が困難であった。除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例14)
除去対象元素含有水溶液添加する水酸化カルシウム量を0.04gではなく、0.4gとした以外は実施例12と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は5.4である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12、13との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例15)
除去対象元素含有水溶液添加する水酸化カルシウム量を0.04gではなく、0.4gとした以外は実施例13と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は5.4である。
遠心分離を行っても懸濁液から粉末部の分離が困難であった。除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12〜14との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例16)
除去対象元素含有水溶液にリン酸水素二ナトリウムを25ミリモル濃度となるように添加するのではなく、リン酸二水素ナトリウムを11mg添加した以外は実施例12と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は6である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸二水素ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12〜15との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例17)
除去対象元素含有水溶液にリン酸二水素ナトリウムを11mg添加した添加するのではなく、リン酸二水素ナトリウムを32mg添加した以外は実施例16と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は2である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸二水素ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12〜15との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例18)
除去対象元素含有水溶液にリン酸二水素ナトリウムを11mg添加した添加するのではなく、リン酸二水素ナトリウムを193mg添加した以外は実施例16と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は0.675である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸二水素ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12〜17との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例19)
除去対象元素含有水溶液にリン酸二水素ナトリウムを11mg添加した添加するのではなく、リン酸二水素ナトリウムを290mg添加した以外は実施例16と同じ条件で検討を行った。本実施例におけるカルシウムとリン酸のモル比(Ca/Pモル比)は0.135である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムとリン酸二水素ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、実施例12〜18との比較から添加するリン酸水素二ナトリウムの濃度あるいはリン酸に対するカルシウムのモル比が除去対象元素の除去率に大きな影響を及ぼすことがわかった。
(実施例20)
除去対象元素であるストロンチウムの初期濃度は10マイクロモル濃度とした。ビーカーに20mLの10マイクロモル濃度のストロンチウムを入れ、0.4gの塩化カルシウム二水和物を添加した。チューブポンプを用いて、毎分0.2mLの条件で0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mL中にリン酸二水素ナトリウムが580mg溶解している水溶液を100分かけて添加した。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液の当初のpHは6.4であり、処理後のpHは12.2であったことから処理中のpHは継続的に4以上であった。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初100000ナノモル濃度であったが、チューブポンプで0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mL中にリン酸二水素ナトリウムが193mg溶解している水溶液を導入すると120ナノモル濃度となった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に塩化カルシウム二水和物、リン酸二水素ナトリウムと水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
(実施例21)
除去対象元素であるストロンチウムの初期濃度は10マイクロモル濃度とした。ビーカーに20mLの10マイクロモル濃度のストロンチウムを入れ、0.4gの塩化カルシウム二水和物を添加した。このビーカーに0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mL中にリン酸二水素ナトリウムが580mg溶解している水溶液を瞬時に添加した。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液の当初のpHは6.4であり、処理後のpHは12.2であったことから処理中のpHは継続的に4以上であった。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初100000ナノモル濃度であったが、0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mL中にリン酸二水素ナトリウムが193mg溶解している水溶液を導入すると2400ナノモル濃度となった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に塩化カルシウム二水和物、リン酸二水素ナトリウムと水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にストロンチウムが取り込まれて、水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。また実施例20との比較からアパタイトを水溶液中で持続的に形成させる方が除去対象元素の除去が高度にできることがわかった。
(実施例22)
実施例6の7日後の除去対象元素含有懸濁液分離粉末部を0.6gを1モル濃度塩酸で溶解させると10mLを添加すると溶解した。pHは2.1であった。この水溶液を蒸留水で20mLに薄めた。pHは2.1であった。当該溶液のストロンチウム濃度は7470000ナノモル濃度であった。次にチューブポンプを用いて0.2モル濃度水酸化ナトリウムを毎分0.2mLの条件で添加すると途中で溶液が白濁し析出物が形成された。100分経過時の溶液のpHは7.2であった。濾過すると固形物の重量は0.24gであった。
形成された析出物を粉末X線回折で分析するとアパタイトであった。水溶液中のストロンチウム濃度は600000ナノモル濃度であった。当初のアパタイト1gには249000ナノモルのストロンチウムが含有されていたが、再析出したアパタイト1gには522500ナノモルのストロンチウムが含有されており、ストロンチウムの含有率が高くなっていることがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液のpHを4未満として当該水溶液にカルシウムイオンおよびリン酸イオンを共存させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液中に溶解されたカルシウムイオンとリン酸イオンからからアパタイトが形成され、当該除去対象元素含有懸濁液水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、除去対象元素であるストロンチウムを含有しているアパタイトをpHが4未満の酸性水溶液で溶解させて、除去対象元素を酸性水溶液に溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液に溶解されたアパタイトの一部をアパタイトとして再析出させると、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素のアパタイト中の含有率が増大されることがわかった。
(実施例23)
チューブポンプを用いて0.2モル濃度水酸化ナトリウムを徐々に添加するのではなく、0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mLを一挙に加えた以外は実施例22と同様の条件で検討を行った。
0.2モル濃度の水酸化ナトリウム20mLを加えると溶液が白濁し析出物が形成された。100分経過時の溶液のpHは7.2であった。濾過すると固形物の重量は0.24gであった。
形成された析出物を粉末X線回折で分析するとアパタイトであった。水溶液中のストロンチウム濃度は920000ナノモル濃度であった。当初のアパタイト1gには249000ナノモルのストロンチウムが含有されていたが、再析出したアパタイト1gには469000ナノモルのストロンチウムが含有されており、ストロンチウムの含有率が高くなっていることがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液のpHを4未満として当該水溶液にカルシウムイオンおよびリン酸イオンを共存させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液中に溶解されたカルシウムイオンとリン酸イオンからからアパタイトが形成され、当該除去対象元素含有懸濁液水溶液中からストロンチウムが除去されることがわかった。
また、除去対象元素であるストロンチウムを含有しているアパタイトをpHが4未満の酸性水溶液で溶解させて、除去対象元素を酸性水溶液に溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液に溶解されたアパタイトの一部をアパタイトとして再析出させると、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素のアパタイト中の含有率が増大されることがわかった。
さらに、比較例22と比較することによって、アパタイトを継続的に形成させる方が水溶液中からストロンチウムを高度に除去し、かつ、除去対処元素のアパタイト中の含有率をより大きく増大できることがわかった。
(実施例24)
除去対象元素をストロンチウムではなく5ミリモル濃度の亜鉛とした以外は実施例6と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことから亜鉛を含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から亜鉛が除去されることがわかった。
(実施例25)
除去対象元素をストロンチウムではなく5ミリモル濃度の亜鉛とし0.4gの炭酸カルシウムと63ミリモル濃度になるようにリン酸水素二ナトリウムを加えるのではなく、0.4gの炭酸カルシウムと25ミリモル濃度になるようにリン酸水素二ナトリウムを加えた以外は実施例11と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことから亜鉛を含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から亜鉛が除去されることがわかった。
(実施例26)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のマグネシウムとした以外は実施例24と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからマグネシウムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から亜鉛が除去されることがわかった。
(実施例27)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のマグネシウムとした以外は実施例25と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからマグネシウムを含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液からマグネシウムが除去されることがわかった。
(実施例28)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のバリウムとした以外は実施例24と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからバリウムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にバリウムが取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から亜鉛が除去されることがわかった。
(実施例29)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のバリウムとした以外は実施例25と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからバリウムを含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液からバリウムが除去されることがわかった。
(実施例30)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のクロムとした以外は実施例24と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからクロムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中にクロムが取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液からクロムが除去されることがわかった。
(実施例31)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度のクロムとした以外は実施例25と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことからクロムを含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に亜鉛が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液からクロムが除去されることがわかった。
(実施例32)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度の鉄とした以外は実施例24と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことから鉄を含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物と水酸化ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に鉄が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から亜鉛が除去されることがわかった。
(実施例33)
除去対象元素を亜鉛ではなく5ミリモル濃度の鉄とした以外は実施例25と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されたことがわかった(表2)。さらに、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表4)。
以上のことから鉄を含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムとリン酸水素二ナトリウムを添加し、当該水溶液のpHを4以上とし、水溶液中でアパタイトを形成させるとアパタイト中に鉄が取り込まれて、除去対象元素含有懸濁液から鉄が除去されることがわかった。
(比較例1)
α型リン酸三カルシウムではなく水酸アパタイトを添加して除去対象元素含有懸濁液を調製した以外は実施例7と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。除去対象元素含有水溶液に添加したのが水酸アパタイトであるため、処理前後の除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンはアパタイトの存在を示していたが、添加したアパタイトにさらにアパタイトが形成される化合物は添加されておらず、粉末X線回折パターンの詳細解析から除去対象元素含有懸濁液中で新たなアパタイトは形成されなかったことがわかった。したがって、本条件は本発明の外の条件である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
これは水酸アパタイト表面にストロンチウムが吸着されたことが原因であると考えられた。しかしながら、水酸アパタイトを添加した本比較例では除去対象元素含有懸濁液分離濾液のストロンチウム濃度濃度が検出限界以下となることはなく、除去対象元素を除去対象元素含有水溶液から完全に除去することは不可能であることがわかった。
(比較例2)
α型リン酸三カルシウムではなく水酸アパタイトを添加して除去対象元素含有懸濁液を調製した以外は実施例8と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。除去対象元素含有水溶液に添加したのが水酸アパタイトであるため、処理前後の除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンはアパタイトの存在を示していたが、添加したアパタイトにさらにアパタイトが形成される化合物は添加されておらず、粉末X線回折パターンの詳細解析から除去対象元素含有懸濁液中で新たなアパタイトは形成されなかったことがわかった。したがって、本条件は本発明の外の条件である。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は当初の水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった(表3)。
これは水酸アパタイト表面にストロンチウムが吸着されたことが原因であると考えられた。しかしながら、水酸アパタイトを添加した本比較例では除去対象元素含有懸濁液分離濾液のストロンチウム濃度濃度が検出限界以下となることはなく、除去対象元素を除去対象元素含有水溶液から完全に除去することは不可能であることがわかった。
(比較例3)
除去対象元素含有水溶液に処理材の一部として水溶液中の水酸化ナトリウム濃度が1ミリモル濃度となるように水酸化ナトリウムを添加するのではなく、除去対象元素含有懸濁液中の塩酸濃度が10ミリモル濃度となるように塩酸を添加した以外は実施例1と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4未満であった(表2)。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されないことがわかった。また、表3から除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度と同じであることがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中にリン酸水素カルシウムを添加しても、当該水溶液のpHが4未満であれば除去対象元素含有懸濁液中でアパタイトは形成されず、除去対象元素含有懸濁液からストロンチウムが除去されないことがわかった。
(比較例4)
リン酸水素二ナトリウムを添加しない以外は実施例9および実施例10と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されないことがわかった。また、表3から除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがとわかった。しかしながら、除去対象元素の除去率はアパタイトを形成させた実施例9および実施例10と比較して小さいことがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に炭酸カルシウムを添加し、また当該除去対象元素含有懸濁液のpHが4以上でも除去対象元素含有懸濁液中にリン酸イオンが存在しないと除去対象元素含有懸濁液中でアパタイトは形成されず、除去対象元素含有懸濁液からのストロンチウムの除去率は限定的であることがわかった。
(比較例5)
リン酸水素二ナトリウムを添加しない以外は実施例14および実施例15と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されないことがわかった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった。しかしながら、除去対象元素の除去率はアパタイトを形成させた実施例14および実施例15と比較して小さいことがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に水酸化カルシウムを添加し、また当該除去対象元素含有懸濁液のpHが4以上でも除去対象元素含有懸濁液中にリン酸イオンが存在しないと除去対象元素含有懸濁液中でアパタイトは形成されず、除去対象元素含有懸濁液からのストロンチウムの除去率は限定的であることがわかった。
(比較例6)
α型リン酸三カルシウムではなく活性炭を添加して除去対象元素含有懸濁液を調製した以外は実施例15と同じ条件で検討を行った。
除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHは継続的に4以上であった(表2)。除去対象元素含有懸濁液分離粉末部の粉末X線回折パターンから除去対象元素含有水溶液中でアパタイトが形成されないことがわかった(表2)。また、除去対象元素含有懸濁液分離濾液中の除去対象元素濃度は除去対象元素含有水溶液中の除去対象元素濃度より小さいことがわかった。しかしながら、除去対象元素の除去率はアパタイトを形成させた実施例と比較して小さいことがわかった。
以上のことからストロンチウムを含む除去対象元素含有水溶液中に活性炭を添加し、また当該除去対象元素含有懸濁液のpHが4以上でも除去対象元素含有懸濁液中でアパタイトが形成されない場合は、除去対象元素含有懸濁液からのストロンチウムの除去率は限定的であることがわかった。
実施例および比較例における除去対象元素含有懸濁液分離濾液のpHおよび除去対象元素含有懸濁液分離粉末部におけるアパタイト形成の有無を表2にまとめる。

除去対象元素がストロンチウムである実施例および比較例の処理前および処理後の除去対象元素の濃度、および除去率を表3にまとめる。

除去対象元素がストロンチウム以外の元素である実施例の処理前および7日間処理後の除去対象元素濃度、および除去率を表4にまとめる。

リン酸水素カルシウム二水和物を用いてアパタイトを形成し、水溶液中から除去対象元素を除去する手法に係る粉末X線回折パターン。 α型リン酸三カルシウムを用いてアパタイトを形成し、水溶液中から除去対象元素を除去する手法に係る粉末X線回折パターン。 炭酸カルシウムを用いてアパタイトを形成し、水溶液中から除去対象元素を除去する手法に係る粉末X線回折パターン。

Claims (9)

  1. カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象元素を含むアパタイトを形成させ、当該アパタイトを水溶液から除去することによって水溶液から除去対象元素を除去する元素除去方法。
  2. アパタイト中に取り込まれるカルシウム、リンおよびフッ素以外の少なくとも一つの除去対象元素を含む水溶液中で5分以上アパタイトを継続的に形成させることを特徴とする請求項1記載の元素除去方法。
  3. カルシウム、リンおよびフッ素以外でアパタイト中に取り込まれる少なくとも一つの除去対象元素を含む99℃以下の水溶液中において、除去対象源を含むアパタイト形成させ、当該アパタイト形成反応が終了した後に、当該懸濁液中で新たにアパタイトを形成させる工程を少なくとも1回以上行うことを特徴とする請求項1〜2の元素除去方法。
  4. アパタイト中に取り込まれる除去対象元素がカドミニウム、ストロンチウム、バリウム、鉛、亜鉛、マグネシウム、マンガン、鉄、ラジウム、アルミニウム、イットリウム、セシウム、ネオジム、ランタン、クロム、ヒ素、バナジウム、ウラン、ゲルマニウム、臭素、ホウ素の群から得らばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3記載の元素除去方法。
  5. 水溶液中でアパタイトを形成させる手法が、1)リン酸カルシウム化合物を用いてアパタイトを形成させる方法、2)25℃における水に対する溶解度が0.1未満であるリン酸を含まないカルシウム化合物とリン酸化合物との反応を用いてアパタイトを形成させる方法、3)25℃における水に対する溶解度が0.1以上であるリン酸を含まないカルシウム化合物とリン酸化合物との反応を用いる方法であって、カルシウム化合物とリン酸化合物の水溶液中におけるモル比が5以下となるように調整してアパタイトを形成させる方法、4)水溶液中のpHを4未満として当該水溶液にカルシウムイオンおよびリン酸イオンを共存させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液中に溶解されたカルシウムイオンとリン酸イオンからからアパタイトを形成させる手法、のいずれかの方法であることを特徴とする請求項1〜4記載の元素除去方法。
  6. 除去対象元素を含む水溶液でアパタイトを形成させる手法に用いるカルシウム化合物が、リン酸カルシウム化合物であるリン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、25℃における水に対する溶解度が0.1未満であるリン酸を含まないカルシウム化合物である炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、25℃における水に対する溶解度が0.1以上であるリン酸を含まないカルシウム化合物である酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウムの群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜5記載の元素除去方法。
  7. 請求項1〜6記載の元素除去方法によって形成されたアパタイトに取り込まれる除去対象元素の少なくとも一つの元素を含有しているアパタイトをpHが4未満の酸性水溶液で溶解させて除去対象元素を酸性水溶液に溶解させた後に、当該酸性水溶液のpHを4以上に上げることによって、pHが4未満の酸性水溶液に溶解されたアパタイトの一部をアパタイトとして再析出させることによって、アパタイト中に除去される少なくとも一つの除去対象元素のアパタイト中の含有率を増大させる元素除去方法。
  8. 少なくとも一つの除去対象元素が放射性元素であることを特徴とする請求項1〜7記載の元素除去方法
  9. 請求項8記載方法で除去された少なくとも一つの除去対象放射性元素を含むアパタイトを焼結して保管する放射性元素保管方法。
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