上記のように、過電圧の入力に対する保護方法として、複数のものが提案されているが、いずれも、過電圧保護機能を付与するために、電源回路の製造コストが大きく上昇されてしまう。電源回路を過電圧の入力に耐えるワイドレンジ設計とする場合には、電源回路を構成する素子として過電圧の入力に耐えるだけの特性を有するものを選定する必要があり、部品のコストの増加および大型化を招く。部品の大型化は、それらを実装する基板の大型化にもつながり、これも電源回路の製造コストを上昇させる。特許文献1に開示される過電圧検知機能付き漏電ブレーカは、過電圧検出・遮断回路等、多くの素子、部品よりなり、製造コストが高くなってしまう。特許文献2に記載のフォトトランジスタを使用して一次側電圧を監視する構成の場合、一次側と二次側を絶縁してフォトトランジスタを設けることにコストを要するうえ、一次側の過電圧を検出してフォトトランジスタを制御する回路を構築するのに多くの部品を要する。また、特許文献3に記載の商用トランスの出力に基づいて二次側の電圧を監視する方式の場合、過電圧検出の原理上、現在主流として使用されているスイッチング式変圧器ではなく商用トランスを使用することが必要であるため、変圧器に要するコストが大きくなる。また、商用トランスは大型であるため、基板のコストも大きくなってしまう。このように、上記のいずれの方法を用いても、過電圧保護を実現するために、大きなコストを要してしまう。
本発明が解決しようとする課題は、簡素な構成を有し、低コストで製造可能な、過電圧の入力に対する保護機能を有する電源回路を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる第一の電源回路は、負荷を有する制御対象機器を制御する制御部と、入力された電源を電圧変換して前記制御部および前記制御対象機器に駆動用電源として出力する電源部と、を備えてなり、前記電源部は、入力電圧が高くなると出力容量が大きくなり、前記出力容量を超える消費電力を有する負荷が出力部に接続されると出力電圧が低下する特性を有し、前記制御部は、前記電源部への電源入力が開始されると、前記出力電圧に比例する判定電圧に基づいて前記電源部に過電圧が入力されているかどうかを判定する過電圧判定過程を実行し、前記過電圧判定過程において、前記制御部は、前記制御対象機器の負荷を含んでなる判定用負荷を前記電源部の出力部に接続し、その後、判定時間内に前記判定電圧が基準電圧を下回る場合には、前記電源部に適正な入力電圧が入力されていると判定して、前記判定用負荷を前記電源部の出力部から除去して前記電源部への電源入力を継続させ、前記判定時間内に前記判定電圧が前記基準電圧を下回らない場合には、前記電源部に過電圧が入力されていると判定して、外部への通知または前記電源部への電源入力の遮断を行うことを要旨とする。
ここで、前記判定用負荷は、前記電源部への入力電圧が過電圧とみなされる閾値未満である場合に、前記電源部の出力部に前記判定用負荷が接続されてから前記判定時間が経過した時の前記判定電圧が前記基準電圧よりも低くなるような消費電力を有することが好ましい。
また、前記電源回路はさらに、スイッチ部と、前記スイッチ部を介して前記制御部からの信号入力を受けて、前記電源部の出力部に前記制御対象機器の負荷と並列に接続され、前記制御対象機器の負荷とともに前記判定用負荷を構成する補助負荷と、を有するとよい。
そして、前記電源回路はさらに、前記電源部の出力電圧を分圧し、前記判定電圧として出力する分圧部を有することが好適である。
また、前記閾値が100Vと200Vの間に位置することが好ましい。
そして、前記制御部は、前記過電圧判定過程において前記電源部に過電圧が入力されていると判定すると、外部への通知を行い、所定時間その通知を継続した後に、前記電源部への電源入力が継続されていれば、前記電源部への電源入力を遮断することが好ましい。
上記課題を解決するために、本発明にかかる第二の電源回路は、負荷を有する制御対象機器を制御する制御部と、入力された電源を電圧変換して前記制御部および前記制御対象機器に駆動用電源として出力する電源部と、前記電源部と前記制御部との間に設けられ、少なくとも前記制御対象機器の負荷を含む判定用負荷部と備え、前記電源部は、入力電圧が高くなると出力容量が大きくなり、前記出力容量を超える負荷が出力部に接続されると出力電圧が低下する特性を有し、前記制御部は、前記電源部に接続された前記判定用負荷部を介して前記出力部から前記制御部へ出力された出力電圧と、基準電圧とに基づいて、閾値電圧に対して過電圧である第一の入力電圧および前記閾値電圧に対して適正な第二の入力電圧のいずれが前記電源部に入力されているかを判定する入力電圧判定部を有することを要旨とする。
ここで、前記制御部は、前記入力電圧判定部で前記第一の入力電圧が前記電源部に入力されていると判定された場合に、前回判定用負荷部を前記電源部に接続し、接続後の出力電圧と前記基準電圧とに基づいて、前記電源部への過電圧の入力を遮断する過電圧ブレーカが前記電源回路に備えられているか否かを判定する過電圧ブレーカ有無判定部を有することが好ましい。
さらに、前記制御部は、前記過電圧ブレーカ有無判定部で前記過電圧ブレーカが備えられていないと判定された場合に、前記判定用負荷部を前記電源部に接続し、接続後の出力電圧と前記基準電圧とに基づいて、前記電源部への過電圧の入力が継続されているか停止されているかを判定し、継続されていると判定すると、記憶手段に前記電源回路の動作を禁止する情報を記憶する過電圧継続判定部を有することが好ましい。
上記発明にかかる第一の電源回路においては、電源部に入力される電源の入力電圧が大きいほど、出力容量が大きくなり、判定用負荷を出力部に接続した際に見られる出力電圧の低下の程度が小さくなる。つまり、出力電圧に比例する判定電圧が、判定時間内に低下する程度が小さくなる。このように、電源部への入力される電圧値の大小が、判定電圧の低下に反映され、入力電圧が高いほど、判定時間内での判定電圧の低下が小さくなる。よって、判定用負荷を電源部の出力部に接続した後、判定時間が経過したときに、計測される判定電圧が基準電圧を下回っていれば、適正な入力電圧が電源部に入力されていると判定することができる。一方、判定時間が経過したときに、計測される判定電圧がその基準電圧を下回っていない場合は、過電圧が、電源部に入力されていると判定することができる。
このように、上記発明にかかる電源回路は、電源部と制御部を有する電源回路に、判定電圧を入力する機構と、判定用負荷の接続を制御する機構とを付加するだけで、過電圧状態を検知し、過電圧状態から電源回路の構成部品を保護することができる。よって、簡素な構成を備え、低コストで製造される、過電圧の入力に対する保護機能を有した電源回路とすることができる。
加えて、電源部への電源入力経路に過電圧検知機能付き漏電ブレーカが設けられている場合にも、上記電源回路の判定電圧の低下を指標とする過電圧検知機能、および過電圧検知機能付き漏電ブレーカの過電圧検知機能は、相互の機能の発揮を妨げるものではない。よって、上記電源回路の構成は、電源部への電源入力経路に過電圧検知機能付き漏電ブレーカが設けられている場合にも、設けられていない場合にも、共通に適用することができる。従って、同一の製造者が、過電圧検知機能付き漏電ブレーカを備えた電源回路と備えていない電源回路の両方を製造する場合に、過電圧検知機能付き漏電ブレーカ以外の構成を共通にして、電源回路を製造することができる。この意味においても、電源回路の製造コストの低減が図られる。
ここで、判定用負荷が、電源部への入力電圧が過電圧とみなされる閾値未満である場合に、電源部の出力部に判定用負荷が接続されてから判定時間が経過した時の判定電圧が基準電圧よりも低くなるような消費電力を有する場合には、閾値以上の電圧が入力されていれば、判定用負荷を電源部の出力部に接続した後、判定時間が経過したときに、判定電圧が基準電圧を下回ることがない。一方、閾値未満の電圧が入力されていれば、判定時間が経過したときに、判定電圧が基準電圧を下回る。よって、判定用負荷の消費電力を適切に設定することで、所望の閾値を境として、過電圧と適正電圧を高確度に判別することができる。
また、電源回路がさらに、スイッチ部と、スイッチ部を介して制御部からの信号入力を受けて、電源部の出力部に制御対象機器の負荷と並列に接続され、制御対象機器の負荷とともに判定用負荷を構成する補助負荷とを有する構成とすれば、制御対象機器の負荷のみでは消費電力が小さすぎ、それだけでは想定される過電圧状態を検出できるだけの十分な消費電力の判定用負荷を構成できない場合にも、制御対象機器の負荷と補助負荷を合わせた判定用負荷が十分な消費電力を有するようにすることで、上記電源回路の過電圧保護機能を利用することができる。
そして、電源回路がさらに、電源部の出力電圧を分圧し、判定電圧として出力する分圧部を有する場合には、判定電圧の生成を、分圧抵抗のように安価で汎用的な素子よりなる分圧部によって行うことができるので、効果的に電源回路の製造コストを抑制することができる。
また、閾値が100Vと200Vの間に位置する場合には、100Vは適正な電圧であると判定され、200Vは過電圧であると判定される。よって、100Vの商用電源を入力しての使用が想定されている電源回路を、200Vの商用電源の入力から保護することができる。これにより、電気電子機器の施工時に起こりやすい、100Vの商用電源と200Vの商用電源の間の取り違いによる電源回路の故障を、効果的に防止することができる。
そして、制御部が、過電圧判定過程において電源部に過電圧が入力されていると判定すると、外部への通知を行い、所定時間その通知を継続した後に、電源部への電源入力が継続されていれば、電源部への電源入力を遮断するものである場合には、使用者や施工者が過電圧を誤って入力してしまった際に、警報音等による通知によってその者に過電圧を入力していることを気づかせ、電源プラグを引き抜く等して過電圧の入力を停止させるように誘導することができる。この誘導に従って所定時間内に過電圧の入力が停止されれば、ヒューズ等、強制的な電源の遮断に使用される部品を交換する必要を伴わずに、電源回路に適正な電圧を入力して再び使用することができる。一方、所定時間が経過しても過電圧の入力が停止されない場合には、電源部への電源入力を強制的に遮断することで、電源回路を構成する部品を、長時間の過電圧印加から保護することができる。
上記発明にかかる第二の電源回路は、入力電圧判定部を有し、この入力電圧判定部において、判定用負荷部を接続された状態で電源部から出力される電圧と、所定の基準電圧との大小関係を判定する。出力電圧が基準電圧を下回っていない場合は、過電圧である第一の入力電圧が電源部に入力されていると判定することができる。一方、出力電圧がその基準電圧を下回っていれば、適正な入力電圧である第二の入力電圧が電源部に入力されていると判定することができる。これにより、過電圧状態から電源回路の構成部品を保護することができる。この入力電圧判定部は、マイコン(マイクロコンピュータ)等よりなる制御部の機能の一部として容易に実現されるので、このような過電圧保護機能を備える電源回路が、簡素な構成で、かつ低コストで製造される。
ここで、制御部が、入力電圧判定部で第一の入力電圧が電源部に入力されていると判定された場合に、判定用負荷部を電源部に接続し、接続後の出力電圧と基準電圧とに基づいて、電源部への過電圧の入力を遮断する過電圧ブレーカが電源回路に備えられているか否かを判定する過電圧ブレーカ有無判定部を有する構成は、同一の製造者が、過電圧ブレーカ以外の構成を共通にして、過電圧ブレーカを備えた電源回路と備えていない電源回路の両方を製造する場合に、特に好適に適用される。つまり、過電圧ブレーカが備えられる場合には、その過電圧ブレーカの機能によって、過電圧ブレーカが備えられない場合には、制御部の機能によって、過電圧の入力から電源回路の保護を図ればよい。
さらに、制御部が、過電圧ブレーカ有無判定部で過電圧ブレーカが備えられていないと判定された場合に、判定用負荷部を電源部に接続し、接続後の出力電圧と基準電圧とに基づいて、電源部への過電圧の入力が継続されているか停止されているかを判定し、継続されていると判定すると、記憶手段に電源回路の動作を禁止する情報を記憶する過電圧継続判定部を有する構成によれば、所定時間にわたって継続された過電圧入力によって損傷を受けた電源回路に再度電源が入力され、損傷を受けたままの状態で電源回路が動作されることが防止される。また、記憶手段に記憶された情報は、電源回路の保守点検の際にも、過電圧入力の履歴として利用することができる。
以下、本発明の一実施形態にかかる電源回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。
電源回路1は、負荷1(Ld1)〜負荷Z(LdZ)をそれぞれ備える制御対象機器に駆動電源を供給するとともに、それらの運転を制御する電気回路である。負荷を備える制御対象機器としては、モータ、ヒータ等が挙げられる。電源回路1は、電源部11と、制御部12と、分圧部13と、補助負荷挿入部14とを有してなる。
電源部11は、入力部11cから商用電源等の交流電源の入力を受け、所定の定格電圧を有する直流を出力部11dに出力する。出力部11dの低電圧側ラインはグラウンド電位に接続されている。電源部11は、交流を整流平滑化して直流化する入力部回路11aと、入力部回路11aから入力された直流を所定の電圧の直流に変換して出力する電源IC11bとを備えてなる。入力部回路11aは、整流平滑化に使用されるダイオードD1と電解コンデンサC2に加え、サージ吸収用のバリスタVar1とノイズ・フィルタとしてのコンデンサC1を備えてなる。
電源部11の入力部11cには、入力される可能性のある電圧値を含んで、ある範囲に及ぶ電圧を入力可能である。例えば、100Vまたは200Vの商用電源の入力が想定される場合、100V以下〜200V以上の範囲の電圧を入力部11cに入力可能であるとよい。電源部11は、電源IC11bの特性に起因して、以下の特性を有する。つまり、電源部11は、入力電圧に応じた出力容量を有し、入力可能な電圧範囲の中で、入力電圧が高いほど、出力容量が大きくなる。そして、出力部11dに接続される負荷の消費電力が電源部11の出力容量の範囲内であれば、定格出力電圧を出力部11dから出力するが、出力容量を超える消費電力の負荷が出力部11dに接続されると、定格出力電圧を出力することができず、出力部11dから出力される電圧が定格出力電圧から低下してしまう。
制御部12は、マイクロコンピュータ(マイコン)等によって具現され、負荷Ld1〜LdZを有する制御対象機器の運転を制御する。負荷Ld1〜LdZは駆動回路部Dr1〜DrZを介して電源部11の出力部11dに接続されており、駆動回路部Dr1〜DrZが制御部12からの信号入力を受けてオン/オフ制御されることで(配線不図示)、電源部11の出力部11dへの各負荷Ld1〜LdZの接続/非接続が選択される。また、制御部12は、入力電圧判定部12dと、過電圧ブレーカ有無判定部12eと、過電圧継続判定部12fとを有する。制御部12がマイコンである場合に、これらの判定部は、マイコンの機能の一部として実現される。
分圧部13は、電源部11の出力部11dに、負荷Ld1〜LdZと並列に接続され、電源部11の出力部11dに出力される電圧を所定の分圧比で分圧して、制御部12の判定電圧入力部12aに電源部11の出力電圧と比例する判定電圧として入力する。分圧部13は、直列接続された2つの抵抗R1、R2からなる分圧抵抗によって具現される。分圧部13の分圧比は、直列接続された2つの抵抗R1、R2の抵抗値の比によって決まり、電源部11の定格出力電圧を、制御部12の入力ポートとして具現される判定電圧入力部12aに入力可能な電圧にまで低下させられるような分圧比を設定すればよい。なお、電源部11と制御部12の具体的な仕様によって、電源部11の出力電圧がそのまま制御部12の判定電圧入力部12aに入力できる場合には、分圧部13は、必ずしも必要ではない。
補助負荷挿入部14は、負荷抵抗よりなる補助負荷R3と、トランジスタTr1を有する。補助負荷R3の一端は電源部11の出力部11dの高電圧側ラインに接続され、他端はトランジスタTr1のコレクタ端子に接続されている。トランジスタTr1のエミッタ端子は、電源部11の出力部11dの低電圧側ライン、つまりアース電位に接続されている。そして、トランジスタTr1のベース端子は、入力抵抗R4を介して、制御部12の出力ポートである補助負荷駆動部12bに接続されている。補助負荷駆動部12bから電圧信号が出力されておらず、トランジスタTr1がオフ状態にある間は、補助負荷R3が、電源部11の出力部11dから分離された状態となっているが、補助負荷駆動部12bから電圧信号が出力されると、トランジスタTr1がオン状態とされ、補助負荷R3が、電源部11の出力部11dに、負荷Ld1〜LdZと並列に接続される。なお、抵抗R5は、トランジスタTr1の動作を安定させるためのいわゆるエミッタ抵抗である。また、補助負荷R3の接続/非接続を制御するために、トランジスタTr1を必ずしも使用する必要はなく、他種のスイッチ手段を用いて補助負荷挿入部14を構成することもできる。
制御部12は、制御対象機器の負荷Ld1〜LdZを制御する機能に加えて、電源部11の入力部11cに過電圧が入力されているかどうかを判定するための過電圧判定過程を実行する機能を有する。判定の詳細については後述するが、制御対象機器の全ての負荷Ld1〜LdZと、補助負荷R3とを合わせたものを判定用負荷R’として、この過電圧判定過程において利用する。
電源回路1は、さらに表示音声装置21、記憶手段22、ヒューズ溶断装置23、ヒューズF1を有する。表示音声装置21は、過電圧判定過程において過電圧状態であると判定された際に警報音声によってその事実を外部に通知する。記憶手段22は、EEPROM等によって具現され、過電圧状態が発生したことを記憶しておく役割を果たす。ヒューズF1は、電源部11の入力部11cの上流側に設けられ、制御部12のヒューズ溶断装置駆動部12cからの信号出力を受けてヒューズ溶断装置23が、ヒューズF1を溶断し、電源部11への電源入力を遮断することができる。ヒューズ溶断装置23は例えば、スイッチング素子を利用して、ヒューズF1の入力部11c側を他方の電源入力ラインに短絡させ、ヒューズF1に大電流を流す構成によって実現される。
さらに、電源部11の入力部11cよりも上流には、過電圧が入力されると、電源入力を遮断する過電圧検知機能付き漏電ブレーカ(以下単に、過電圧ブレーカと称する場合がある)を備えられてもよい。ただし、この場合は、過電圧が入力された場合に、本電源回路1が有する過電圧保護機能ではなく、この過電圧ブレーカの過電圧保護機能によって、過電圧入力に対する検知および保護が行われる。
次に、図2〜図5を参照しながら、過電圧判定過程の内容について説明する。ここでは、電源回路1が100Vを定格の入力電圧として設計されている場合が想定され、過電圧判定過程は、過電圧である200V(第一の入力電圧)が入力されているか、適正電圧である100V(第二の入力電圧)が入力されているかを判定する。
まず、図2の判定電圧の時間変化および図5の制御フロー図を参照しながら、電源電圧が100Vの場合について説明する。電源プラグ24を商用電源に接続すると、電源IC11bの起動が開始され、出力部11dからの出力される出力電圧が徐々に上昇する。これに伴い、分圧部13から出力される判定電圧が徐々に上昇する。制御部12に供給される駆動電圧も徐々に上昇し、時間0において制御部12の起動に必要な電圧に達し、制御部12が起動される。
時間0にて制御部12が起動され(図5のステップS0)、さらに電源部11の出力部11dからの出力電圧が定格出力電圧に達した直後の時間T1から、制御部12の入力電圧判定部12dは、入力電圧が100Vであるか200Vであるかを判定するための入力電圧判定を実行する。時間T1において、制御部12が判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続する(ステップS1)。つまり、制御部12が、全制御対象機器の負荷Ld1〜LdZと補助負荷R3を同時に電源部11の出力部11dに接続する。この際、全制御対象機器の負荷Ld1〜LdZの接続は、それらを制御する駆動回路部Dr1〜DrZを同時にオン状態とすることによって行われ、補助負荷R3の接続は、補助負荷駆動部12bから電圧信号を出力し、トランジスタTr1をオン状態とすることによって行われる。
判定用負荷R’が電源部11の出力部11dに接続されることで、100Vの入力電圧に対応した電源部11の出力容量を超える消費電力を有する負荷が、出力部11dに接続された状態となる。すると、出力部11dに出力される電圧が低下し始める。これに伴い、判定電圧も低下し始める。
時間T2において、制御部12は、判定電圧入力部12aに入力されている判定電圧が、あらかじめ定められた基準電圧を下回っているかどうかの判定を行う(ステップS2)。ここで、判定電圧が時間T1から低下を続け、時間T2において、判定電圧は、既に図2中に破線で示した基準電圧を下回っている(ステップS2のYes)。これにより、制御部12は、電源部11に適正電圧である100Vが入力されていると判定する(ステップS3)。
この判定結果に基づき、時間T2’で、制御部12は、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dから除去する(ステップS4)。つまり、駆動回路部Dr1〜DrZおよびトランジスタTr1をオフ状態とすることで、負荷Ld1〜LdZおよび補助負荷R3を非接続状態とする。これにより、電源部11の出力部11dに接続された負荷の消費電力が減少し、電源部11の有する出力容量を下回るようになり、出力部11dから定格電圧が出力されるようになる。なお、時間T2から時間T2’までの経過時間は、制御部12が判定電圧と基準電圧の大小関係を判定し、判定用負荷を除去するのに必要な時間である。電源IC11bにはしばしば過負荷検知機能が搭載されており、一定時間以上過負荷状態が継続すると、電源のリセットが実行される。この場合、入力電圧判定の終了前に電源部11がリセットされることがないように、時間0から時間T2’までの経過時間は、電源IC11bの過負荷検知時間よりも短いものとすることが好ましい。
過電圧判定過程は、以上にて終了され(ステップS5)、電源部11の出力部11dから定格電圧が出力された状態が維持される。つまり、使用者が制御対象機器の使用を開始できる状態に電気回路1が待機される。
次に、図3の判定電圧の時間変化および図5の制御フロー図を参照しながら、電源電圧が200Vで、かつ、200Vの電源が入力されると電源入力を遮断する過電圧ブレーカが電源部11の入力部11cの上流に設けられている場合について説明する。
100Vが入力された場合と同様に、電源供給が開始されて時間0にて制御部12が起動され(ステップS0)、さらにT1において、制御部12が判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続する(ステップS1)。
このとき、200Vの入力に対応した電源部11の出力容量は、100Vの入力に対応した出力容量よりも大きく、判定用負荷R’が出力部11dに接続されても、負荷が出力容量を上回ることがない。つまり、出力部11dに出力される電圧が定格出力電圧から低下せず、判定電圧も高い値を維持する。
時間T2において、制御部12は、判定電圧入力部12aに入力されている判定電圧が基準電圧を下回っているかどうかの判定を行う(ステップS2)。この場合、判定電圧が時間T1から低下しておらず、基準電圧を下回っていない(ステップS2のNo)。これにより、制御部12は、電源部11に過電圧である200Vが入力されていると判定する(ステップS6)。
そして、時間T2’で、制御部12は、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dから一旦除去する(ステップS7)。これとともに、制御部12は、表示音声装置21を制御して、過電圧状態が発生していることを外部に通知するための警報を発する(ステップS8)。警報は、この後も停止されるまで継続される。
この後、過電圧ブレーカが作動し、電源部11への電源入力が遮断され、電源部11からの電圧出力が停止する。判定電圧もゼロとなっている。もし、制御部12が電池を備えている等の理由により、電源部11からの出力が停止していても、制御部12が運転され続けているならば、その後の時間T3から、制御部12は、過電圧ブレーカ有無判定部12eにおいて、過電圧ブレーカ有無判定を行う。これは、時間T1〜T2’において実行される入力電圧判定と同様に実行される。つまり、再び制御部12は判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続し(ステップS9)、判定電圧が基準電圧を下回っているかの判定を行う(ステップS10)。ここで、先の入力電圧判定過程においては、時間T1にて判定用抵抗R’を接続後、時間T2まで待ってから入力電圧が基準電圧を下回るかどうかの判定を行ったが、この過電圧ブレーカ有無判定においては、時間T3において判定用抵抗R’を接続した後、入力電圧の判定まで、特に所定の遅延時間を設ける必要はない。なお、時間0から時間T3までの経過時間は、過電圧ブレーカが作動するのに要する時間(たとえば100ミリ秒)よりも長く設定されていることが好ましい。
この時、既に判定電圧入力部12aへの判定電圧の入力が停止されているため、判定電圧が基準電圧を下回っていると判断される(ステップS10のYes)。あるいは、電源部11からの出力が停止したことで制御部12の運転が停止されているならば、過電圧ブレーカ有無判定自体を行うことができず、判定不能となる(ステップS10で判定不能)。これらの判定結果に基づいて、制御部12は、過電圧ブレーカが搭載されていると判断する(ステップS11)。
そして、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dから除去する(ステップS12)。以上で、過電圧ブレーカ有無判定を含む過電圧判定過程が終了される(ステップS13)。時間T2’(ステップS8)から継続されている警報音声の出力も、停止される。電源回路1は200Vの入力が過電圧ブレーカで遮断された状態に維持される。
次に、図4の判定電圧の時間変化および図5の制御フロー図を参照しながら、電源電圧が200Vで、過電圧ブレーカが電源部11の入力部11cの上流に設けられていない場合について説明する。
上記と同様に、時間0にて制御部12が起動されて(ステップS0)、時間T1から入力電圧判定が行われ、200Vが入力されていると判定される(ステップS1→S2→S6→S7)。また、警報音声が発せられ(ステップS8)、その後も継続される。
この後、時間T3から、制御部12の過電圧ブレーカ有無判定部12eにおいて、上記と同様の過電圧ブレーカ有無判定が実行される(ステップS9→S10)。このとき、200Vの電源入力が継続されているため、判定電圧は低下せずに、基準電圧以上の値を維持している。よって、判定電圧は基準電圧を下回っていないと判定され(ステップS10のNo)、過電圧ブレーカが搭載されていないと判断される(ステップS14)。そして、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dから除去する(ステップS15)。
その後、時間T4から、制御部12の過電圧継続判定部12fにおいて、過電圧継続判定を行う。これは、過電圧状態が継続されているかを判断する過程であり、時間T1〜T2’において実行される入力電圧判定、および時間T3から実行される過電圧ブレーカ有無判定と同様の手順を含んでなる。つまり、制御部12は、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続し(ステップS16)、判定電圧が基準電圧を下回っているかの判定を行う(ステップS17)。過電圧継続判定においても、過電圧ブレーカ有無判定と同様に、時間T4において判定用抵抗R’を接続した後、入力電圧の判定まで、特に遅延時間を設ける必要はない。なお、時間0から時間T4までの経過時間は、入力部回路11aが200Vの電圧の印加によって、不可逆的な損傷を受けてしまう時間よりも短いことが好ましい。また、入力電圧判定過程で200V電源が入力されていると判定して警報音を鳴らし始めてから、使用者、施工者等がそれに反応して電源プラグを引き抜くことができる程度には、時間T2’から時間T4までの経過時間が長い方がよい。
もし、時間T2’(ステップS8)から発せられている警報音に気付いた使用者や施工者が、この時までに電源プラグ24を引き抜く等して、電源部11への電源入力を停止していれば、この時には、電源部11からの出力が停止され、判定電圧入力部12aへの判定電圧の入力も停止されている。よって、もし制御部12が電池等を備えることで、運転を継続していれば、判定電圧が基準電圧を下回っていると判断される(ステップS17のYes)。あるいは、電源部11からの出力を停止したことで制御部12の運転が停止されているならば、過電圧継続判定自体を行うことができず、判定不能となる(ステップS17で判定不能)。これらの場合には、電源供給が既に停止され、過電圧状態が解消していると判断し(ステップS18)、過電圧ブレーカ有無判定および過電圧継続判定を含む過電圧判定過程を終了する。
一方、時間T4においても、200Vの電源入力が継続されている場合には、判定電圧は依然基準電圧よりも高い状態を維持しており、判定電圧が基準電圧を下回っていないと判定される(ステップS17のNo)。この結果により、200Vの電源供給が継続されていると判断される(ステップS19)。
そして、記憶手段22に、機器動作を禁止する情報を書き込む(ステップS20)。これにより、電源回路1は動作禁止状態となり、次回電源投入時にこの情報を読み出した制御部12が、電源回路1を起動しない。また、この情報は、電源回路1の保守点検にも、200Vの電源入力を行った履歴を示す情報として利用される。
さらに、制御部12は、ヒューズ溶断装置駆動部12cから信号を出力し、ヒューズ溶断装置23を作動させ、ヒューズF1を溶断する。つまり、200Vの電源入力が強制的に遮断される(ステップS21)。これにより、電源回路1、とりわけ過電圧印加の影響を大きく受ける入力部回路11aが、過電圧の印加による不可逆的な破損から保護される。
以上のように、入力電圧判定と過電圧ブレーカ有無判定、過電圧継続判定の3種の判定からなる過電圧判定を実行することで、過電圧入力に対する判定と保護を効果的に行うことができる。過電圧の入力が検出された際に、まず警報音声で使用者や施工者に、電源入力の停止を促すことで、過電圧状態からの保護を図る。そして、それでも電源入力が停止されない場合には、強制的に電源入力を停止することで、電源回路1を過電圧状態から保護する。電源部11の入力部回路11aを構成するコンデンサC1、C2およびバリスタVar1は、入力電圧を直接印加されるため、過電圧が入力されると大きな影響を受ける。これらの部材が不可逆的な損傷を受ける前の時間T4に電源入力を遮断することで、電源回路1の破損を回避し、適正電圧を入力して電源回路1を再利用することができる。なお、コンデンサC1、C2およびバリスタVar1は時間T4までの短時間(典型的には数秒)であっても200Vの電源入力を受けるので、少なくとも時間T4までは200Vの電源入力に耐えられる特性を有する素子を選定することが必要である。一方、電源IC11bよりも下流側には、電源ICによって定格電圧以下とされた電圧しか出力されないので、過電圧の入力に対する耐性を考慮しなくてもよい。
ここで、200Vの入力電圧が過電圧と判定され、100Vの入力電圧が適正電圧であると判定されたのは、判定用負荷R’の消費電力および基準電圧の値の関係によるものである。つまり、過電圧が入力されている場合には、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続して、時間T1から時間T2までの時間(判定時間)が経過するまでの間に、判定電圧が基準電圧を下回らない。一方、適正電圧が入力されている場合には、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続して、同じ判定時間が経過するまでの間に、判定電圧が基準電圧を下回る。よって、適正電圧と判定する入力電圧と、過電圧と判定する入力電圧との間の閾値は、判定用負荷R’の消費電力と基準電圧の値に依存する。
このように、判定用負荷R’の消費電力は、適正電圧が入力されている電源部11の出力部11dに接続されてから所定の判定時間の間に、十分に電源部11の出力電圧を低下させるだけの大きさを有しているとよい。電源回路1に駆動される制御対象機器の負荷Ld1〜Ldzを全て合成することで、これに十分な消費電力を確保できるならば、判定用負荷R’を制御対象機器の負荷Ld1〜LdZのみで構成すればよく、補助負荷R3を使用する必要はない。しかし、制御対象機器の負荷Ld1~LdZを全て合わせても十分な消費電力とならない場合は、図1に示したとおり、制御対象機器の負荷Ld1〜LdZと補助負荷R3を合わせて判定用負荷R’を構成すればよい。また、制御対象機器の負荷Ld1〜LdZを全て使用しなくても十分な消費電力を有する判定用負荷R’を構成できる場合は、負荷Ld1~LdZの一部を適宜選択して判定用負荷R’を構成すればよい。この場合は、判定用負荷R’を電源部11の出力部11dに接続するに際し、判定用負荷R’を構成する負荷に対応する駆動回路部のみをオン状態とすればよい。
上記実施形態においては、過電圧とみなされる電圧と適正電圧とみなされる電圧の閾値は100Vと200Vの間に存在したが、電源回路1が使用される地域で想定される入力電圧および電源回路を構成する部品の仕様等により、この閾値は任意に設定すればよく、その閾値に基づいて、過電圧である第一の入力電圧と適正電圧である第二の入力電圧のいずれが入力されているかを判定できるように、判定用負荷R’の消費電力と基準電圧を選択すればよい。また、上記実施形態においては、200Vの過電圧を入力した際に、判定電圧が全く低下しなかったが、判定時間内に基準電圧を下回らない程度であれば、出力電圧が低下してもよい。
上記実施形態にかかる過電圧保護過程には、種々の変形形態が考えられる。上記の実施形態においては、電源入力の強制的な遮断を、入力電圧判定において過電圧状態を検出した直後に行わずに、所定時間警報を発していても電源入力が停止されない場合にはじめて行っている。これにより、ヒューズF1の溶断を伴う電源入力の遮断を極力避け、ヒューズF1の部分までも含めた電源回路1の再利用を極力可能としている。ただし、ヒューズF1の交換を避ける必要がない場合には、200Vの電源入力が検出されたステップS6の時点、あるいは200V電源が入力され、しかも過電圧ブレーカが備えられていないことが判明したステップS14の時点で、即座にヒューズ溶断装置23を作動させ、電源入力を遮断する構成としてもよい。この場合には、入力部回路11aの構成部品の劣化を、さらに高水準で防止することができる。
上記過電圧判定過程は、過電圧検知ブレーカが電源回路1に搭載される場合にも、搭載されない場合にも、共通して利用することができる。従来は、過電圧検知ブレーカの有無によって、2種の電源回路を開発、製造していたが、これらを統合して1種類にできることで、製造や管理、開発などに要するコストを低減できる等の利点を有する。電源回路1で過電圧ブレーカ有無判定を実施することで、制御部12が過電圧検知ブレーカの有無を知ることができ、過電圧検知ブレーカが搭載されている場合のみ、続く過電圧継続判定を行う必要があると判断する。ここで、過電圧ブレーカ有無判定を実施せず、入力電圧判定を行った後に直接、過電圧継続判定を行う構成としても、過電圧判定ブレーカが搭載されている場合にはその機能によって、過電圧判定ブレーカが搭載されていない場合には、過電圧継続判定の最後に実行される電源入力の強制遮断によって、最終的に過電圧の入力から電源回路1が保護されるので、過電圧保護機能の観点からは支障がない。よって、過電圧ブレーカ有無判定は、必須に備えられなければならないものではない。しかし、過電圧ブレーカ有無判定を備えることで、過電圧ブレーカの機能によって過電圧の入力が遮断されたのか、過電圧ブレーカを有さず、本電源回路1が有する判定電圧に基づく過電圧保護機能によって過電圧の入力が遮断されたのかを区別することができるので、例えばその情報を記憶手段22に記録しておけば、保守点検時等に利用することができる。なお、過電圧ブレーカ有無判定を開始する時間T3は、上述のように、過電圧ブレーカが作動するのに要する時間よりも遅くなるように定められているが、これが入力電圧の判定が行われる時間T2よりも早くなってしまう場合には、入力電圧判定と独立した過電圧ブレーカ有無判定は行われず、入力電圧判定が過電圧ブレーカ判定を兼ねることになる。
また、上記実施形態においては、入力電圧判定を行う際に、判定用負荷R’を接続し、時間T1から時間T2までの判定時間が経過してから、判定電圧と基準電圧の大小関係の判定を行った。そのかわりに、時間T1で判定用負荷R’を接続してから判定電圧を継続的にモニターし、基準電圧を下回った時点で即座に100Vが入力されていると判断して入力電圧判定を終了してもよい。また、上記実施形態では、入力電圧判定と過電圧ブレーカ有無判定との間、過電圧ブレーカ有無判定と過電圧継続判定との間は、それぞれ判定用負荷R’を非接続状態としているが、常時接続したままの状態にして全ての判定を行ってもよい。
以上のような電源回路1においては、従来から制御対象機器の駆動、制御に用いられていた電源部11と制御部12を有する電源回路に、分圧部13と、補助負荷挿入部14を付加するのみの簡素な構成で、電源部11に過電圧が入力されたことを検知し、電源回路の構成部品を過電圧の印加から保護することができる過電圧保護機能を実現することができる。分圧部13および補助負荷挿入部14は、安価な抵抗とトランジスタのみから構成されるので、過電圧保護機能を備えた電源回路1を、非常に低いコストで製造することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。