JP2014218636A - 熱可塑性樹脂用帯電防止剤およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、これらのトラブルを防ぐために、熱可塑性樹脂中に帯電防止剤(各種界面活性剤)を練り込み、静電気によるトラブルを防ぐことが行われてきた。この場合、いわゆる練り込み型帯電防止剤では、帯電防止剤が逐次表面に移行(配向)し、表面に導電膜を形成することにより、帯電防止効果を発揮するものと推測される。
近年、高規則性ポリプロピレン樹脂が得られる触媒の開発やプロセスの開発により、以前に比べて剛性や透明性にさらに優れるポリプロピレンが効率よく得られるようになってきた。しかし、その反面、樹脂の結晶性が上がったことにより、練り込み型帯電防止剤や防曇剤の性能が発現されにくくなることが問題となってきている。この問題を解決するため、これらの添加剤の高濃度化や、成形品作成後の熱セット時間を長くするなどして内部界面活性剤の表面への移行速度を速める工夫が行われている。しかしながら、高濃度化や熱セット時間の延長による性能向上の試みは界面活性剤の表面への過剰なブリード現象を引き起こすことが多く、食品包装用フィルムなどでは表面上の界面活性剤と食品の接触による健康上の問題が懸念される。
これらの問題解決のために、たとえば、特許文献1では、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを主成分とする帯電防止剤が提案されている。しかし、この帯電防止剤ではポリプロピレンに対する十分な相溶性を得ることが困難である。また、マスターバッチを作製する等の高濃度に練り込む必要があるときの生産性の低下や、成形品に直接練り込む場合には分散不良による性能のばらつきが起こる可能性は否定できない。また、帯電防止効果の即効性や成形品の表面における平滑性にも問題がある。
特許文献3では、ポリプロピレンフィルムの加熱処理後の平滑性を向上させるために脂肪酸アミド系の滑剤を一定の条件で添加することが提案されている。しかしながら、この場合には他の添加剤が使用されていないため滑り性のみが向上し、帯電防止性や防曇性に劣る。
すなわち、本発明にかかる熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、帯電防止性成分および平滑性成分を含む帯電防止剤であって、前記帯電防止性成分が、グリセリン脂肪酸エステルである成分(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステルである成分(B)とを必須成分とし、(ポリ)オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである成分(C)および/または脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含み、前記成分(D)の配合割合が前記帯電防止性成分の0〜10重量%であり、前記帯電防止性成分の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.5〜1.8の範囲にあり、前記平滑性成分が、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスを含み、前記帯電防止性成分および平滑性成分の配合割合(帯電防止性成分/平滑性成分)が99/1〜50/50の範囲にある。
(1)前記帯電防止性成分のアミン価が10mgKOH/g以下である。
(2)前記成分(A)が炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する。
(3)前記成分(B)が平均重合度3〜10のポリグリセリンのエステル誘導体であって、炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する。
(4)前記成分(C)にあるオキシエチレン基の繰り返し単位数が1〜30であり、前記成分(C)が炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する。
(5)前記成分(D)が下記一般式(4)で示される化合物である。
(6)前記平滑性成分が融点30〜100℃の炭素数18以上の飽和炭化水素から構成されるパラフィンワックスである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂および上記熱可塑性樹脂用帯電防止剤を含む。
(7)前記熱可塑性樹脂用帯電防止剤の含有率が前記熱可塑性樹脂に対して0.1〜30重量%である。
(8)前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンである。
(9)ポリプロピレンフィルムである。また、ポリプロピレンフィルムの表面の動摩擦係数が0.15以下であると好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、帯電防止性および防曇性を有し、優れた透明性および平滑性を長時間維持できる。特に、熱可塑性樹脂組成物がポリプロピレンフィルムであると実用性が高い。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は帯電防止性成分および平滑性成分を含む組成物である。それぞれの成分の内容について説明する。
帯電防止性成分は、本発明の熱可塑性帯電防止剤において主に帯電防止性、防曇性に対しての効果を持つ成分である。帯電防止性成分は、成分(A)および成分(B)を必須成分とし、成分(C)および/または成分(D)を含む。
成分(D)の配合割合が帯電防止性成分の0〜10重量%である。また、帯電防止性成分では、その水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.5〜1.8の範囲にある。帯電防止性成分を構成する成分(A)〜成分(D)を以下に説明する。
成分(A)はグリセリン脂肪酸エステルであり、本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合した際に、帯電防止性を即効的に発現させる成分である。
成分(A)は、そのエステル化度の相違によって、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリントリ脂肪酸エステルに分類され、いずれであってもよい。また、グリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルの混合物であるグリセリンセスキ脂肪酸エステルを使用しても良い。一般には、成分(A)がグリセリンモノ脂肪酸エステルであると帯電防止即効性に効果があるが、エステル化度が増加するにつれて帯電防止即効性は低下する。しかし、エステル化度が増加すると、熱可塑性樹脂に対する相溶性が良好となる。
成分(A)が炭素数8〜22の脂肪酸残基を有すると、熱可塑性樹脂との相溶性が良く、透明性が高く、帯電防止性に優れるために好ましい。本発明において脂肪酸残基とは、脂肪酸(RCOOH;たとえば、Rは炭化水素基)から水酸基を除いた有機基であるアシル基(RCO−)を意味する。
このような脂肪酸残基としては、下記一般式(1)で示される脂肪酸残基(A)を挙げることができる。
(式中、R1は、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は7〜21である。)
R1がアルキル基であると、固体粉末状の形態を取ることができ取り扱いが容易であるため好ましい。
成分(A)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、グリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させたり、グリセリンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりして製造することができる。
成分(B)はポリグリセリン脂肪酸エステルであり、本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合した際に、そのブリード過多に対して抑制効果を示す成分である。
成分(B)はポリグリセリンのエステル誘導体である。成分(B)を構成するポリグリセリンとしては、たとえば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。成分(B)は脂肪酸エステルであれば特に限定はなく、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸のエステル等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
成分(B)を構成するポリグリセリンの平均重合度や、成分(B)のエステル化度等について特に限定はない。
成分(B)においてエステル化度(ポリグリセリン1モルと反応する脂肪酸のモル数)をyとし、ポリグリセリンの平均重合度をxとしたとき、y≦x+2の関係が成り立つ。yは、好ましくはy<xであり、その場合、熱可塑性樹脂用帯電防止剤の親水性が良好で、即効性に優れる。また、4≦x≦6の場合、1≦y≦3であると、即効性と過剰なブリードに対する抑制効果のバランスがとれるため特に好ましい。y≧xであると帯電防止剤の疎水性が高くなりすぎ、即効性が損なわれることがある。
このような脂肪酸残基としては、下記一般式(2)で示される脂肪酸残基(B)を挙げることができる。
(式中、R2は、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は7〜21である。)
R2としては、取り扱いが容易で安定性の良いアルキル基が好ましい。
成分(B)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させたり、ポリグリセリンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりして製造することができる。
成分(C)は(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルであり、本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合した際に、防曇性を向上させる成分である。
成分(C)は(ポリ)オキシアルキレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルである。成分(C)にあるオキシエチレン基の繰り返し単位数pについては、成分(C)にあるオキシエチレン基の繰り返し単位数pについて特に限定はないが、好ましくは1〜30、さらに好ましくは3〜25、特に好ましくは10〜22である。オキシエチレン基の繰り返し単位数pが1未満であると、疎水性が強く防曇性向上効果が阻害されることがある。一方、オキシエチレン基の繰り返し単位数pが30を超えると親水性が過剰となり熱可塑性樹脂との相溶性が阻害されることがある。
成分(C)は、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル等のいずれであってもよく、ソルビタンに対する脂肪酸の反応モル数が1.5や2.5のように中間的なエステル化度のものも使用できる。また、1種または2種以上から構成されていてもよい。
このような脂肪酸残基としては、下記一般式(3)で示される脂肪酸残基(C)を挙げることができる。
(式中、R3は、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基であり、その炭素数は7〜21である。)
R3としては、一般的な入手が容易であり安定性が良好な、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
成分(C)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、1)ソルビタンと脂肪酸とをエステル化反応させ、得られたエステル化物に酸化エチレンを反応させたり、2)ソルビタンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させ、得られたエステル化物に酸化エチレンを反応させたり、3)ソルビタンに酸化エチレンを反応させ、得られた付加物に脂肪酸をエステル化反応させたり、4)ソルビタンエステルに酸化エチレンを反応させ、得られた付加物に脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりして製造することができる。これらのうちでも1)の製造方法が好ましい。
成分(D)は脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物であり、本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合した際に、防曇性および帯電防止性を付与する成分である。
成分(D)は脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物であり、下記一般式(4)で示される化合物であると防曇性および帯電防止性に優れる。
R4としては、アルキル基やアルケニル基が好ましく、一般的に入手が容易であり安定性がよい。
R4の炭素数は、好ましくは8〜22であり、より好ましくは8〜18、さらに好ましくは12〜18、特に好ましくは16〜18である。R4の炭素数が8未満であると、熱可塑性樹脂に対する相溶性が悪化してブリード過多の原因となることがある。一方、R4の炭素数が22を超えると、防曇性および帯電防止性が低下することがある。
成分(D)の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、脂肪族アミンに酸化エチレンを付加反応させて製造することができる。
成分(D)の配合割合は、通常、帯電防止性成分の0〜10重量%であり、好ましくは1〜8重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。成分(D)の配合割合が10重量%を超えると、熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合した際にブリード過多となり透明性を阻害する。
成分(D)は、帯電防止性成分が成分(C)を含有しない場合には、帯電防止性成分の必須成分となり、その場合は、防曇性を維持するために好ましい。帯電防止性成分が、成分(C)および成分(D)の両方を含有しない場合は、防曇性が阻害される。
成分(B)の配合割合については、特に限定はないが、好ましくは帯電防止性成分の1〜50重量%であり、さらに好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。成分(B)の配合割合が1重量%未満であると、帯電防止剤がブリード過多となり成形品の外観が不良となることがある。一方、成分(B)の配合割合が50重量%を超えると、帯電防止即効性が阻害されることがある。
帯電防止性成分の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)は、1.5〜1.8の範囲にあり、好ましくは1.55〜1.79、さらに好ましくは1.6〜1.78、特に好ましくは1.65〜1.77である。OHv/Svが1.5未満であると、帯電防止性成分を含む熱可塑性樹脂用帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合して得られる組成物において、親水性不足となって、即効的な帯電防止性および防曇性が低下する。一方、OHv/Svが1.8を超えると、逆に親水性過多となって、熱可塑性樹脂用帯電防止剤のブリードが多く発生し、経時的な透明性が低下する。ここでいう水酸基価およびケン化価は、後述の実施例に記載した方法によって求めたものである。
帯電防止性成分は、成分(A)および成分(B)を必須成分とし、成分(C)および/または成分(D)を含むものであり、これら以外の成分を含有していてもよく、または、含有しなくてもよい。
平滑性成分は、本発明の熱可塑性帯電防止剤において主に平滑性を付与する成分である。平滑性成分は、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスを含む。
これらの平滑性成分の中ではパラフィンワックスが、平滑性と防曇性が共に良好となるため好ましい。また、パラフィンワックスのうちでも、平滑性が優れることから、融点30〜100℃のパラフィンワックスがさらに好ましく、平滑性および常温での取り扱い性を考慮すると融点40〜60℃のパラフィンワックスが特に好ましい。パラフィンワックスは、通常、飽和炭化水素から構成され、その炭素数は、平滑性が優れることから、好ましくは18以上、常温での取り扱い性を考慮すると、さらに好ましくは20以上である。
平滑性成分は、上記で説明したワックスを含むものであり、それ以外の成分を含有していてもよく、または、含有しなくてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、前記帯電防止性成分および平滑性成分を含む組成物である。各成分の配合割合(帯電防止性成分/平滑性成分)は、通常99/1〜50/50、好ましくは95/5〜55/45、さらに好ましくは90/10〜60/40、特に好ましくは80/20〜70/30の範囲内である。その配合割合が99/1より大きいと平滑性が不十分になる。一方、その配合割合が50/50より小さいと帯電防止性が不十分となる。
本発明の効果が発現する原理について詳細は不明であるが、帯電防止性成分の熱可塑性樹脂および平滑性成分に対する相溶性と、帯電防止性成分の親水性とのバランスについて、水酸基価およびケン化価の影響を考慮すると以下のように考察できる。
それとは逆に、帯電防止性成分のケン化価(Sv)は、熱可塑性樹脂および平滑性成分に対する帯電防止性成分の相溶性を反映することになる。したがって、ケン化価が高いほど、脂肪酸エステルのエステル化度が高く、熱可塑性樹脂および平滑性成分に対する帯電防止性成分の相溶性に優れることになる。一方、ケン化価が低いものは、上記相溶性に劣ることになる。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤は、本発明の効果に大きな影響を及ぼさない限りにおいて、上記で説明した各成分には該当しないものであって、高級アルコール、高級アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸アミド等の帯電防止剤や、着色防止のための酸化防止剤等を含有しても良いが、含有していなくても良い。
本発明の熱可塑性樹脂用帯電防止剤において、対象とする熱可塑性樹脂としては、たとえば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を挙げることができるが、なかでもポリプロピレンに対して最も効果的である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上記で説明した熱可塑性樹脂用帯電防止剤とを含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる帯電防止剤の含有率について、特に限定はないが、熱可塑性樹脂に対して、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.3〜20重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。帯電防止剤の含有率が0.1重量%未満であると、帯電防止性および防曇性が低下し、透明性および平滑性を長時間維持できなくなることがある。一方、帯電防止剤の含有率が30重量%を超えると、熱可塑性樹脂中での分散性が悪くなるため実質的に加工することが困難となることがある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形材料の中間原料であるマスターバッチでもよいし、成形に用いられる成形材料でもよいし、フィルム、シート、成形品といった成形加工品でもよい。
以下、熱可塑性樹脂組成物が、マスターバッチの場合、成形材料の場合、成形加工品の場合等にそれぞれ分けて、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を説明する。
マスターバッチは成形品の製造工程における中間原料であり、着色剤や樹脂性能改質剤等の添加剤を高濃度に含有した樹脂組成物である。樹脂ペレットにマスターバッチを混合すると、添加剤を含まない樹脂ペレットに添加剤を単独で混合するよりも、ハンドリング性良く混合することができる。また、マスターバッチを使用することにより、低濃度の添加剤であっても分散性良く樹脂中に均一に混合することが可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物がマスターバッチの場合、このマスターバッチを原料として成形材料を製造する上で、分散の均一性やハンドリング性を向上させる目的から、本発明の帯電防止剤の含有率は、熱可塑性樹脂に対して5〜30重量%であり、好ましくは10〜20重量%である。帯電防止剤の含有率が5重量%未満では、成形材料や成形加工品を作製する際に均一な濃度での混合性を確保できないうえ、成形材料を製造する場合にマスターバッチが大量に必要となり、コスト高となる。一方、本発明の帯電防止剤の配合割合が30重量%を超えると、相溶性不足によりマスターバッチの製造が困難になる。
マスターバッチの製造方法としては、たとえば、通常のプラスチック成形機、すなわちバンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ベント付スクリュー押出成形機、ニーダー等を使用して、熱可塑性樹脂と本発明の帯電防止剤とを溶融混練、冷却後、ペレタイズしマスターバッチを作製する方法等を挙げることができる。
成形材料は、マスターバッチと同様に、本発明の効果を損わない限りにおいて、他の添加剤等を含有してもよい。
成形材料の製造方法としては、帯電防止剤と熱可塑性樹脂とを単に溶融混練する方法や、前記マスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練する方法等を挙げることができる。成形材料の製造方法では、マスターバッチ製造と同様の通常のプラスチック成形機を用いることができる。
前記マスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練して成形材料を製造する場合、マスターバッチに含まれる樹脂と溶融混練で用いる熱可塑性樹脂とが必ずしも同じ種類の樹脂である必要はないが、両者の分散均一性を向上するため、マスターバッチに含まれる樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶性を有していることが好ましく、マスターバッチの嵩比重と熱可塑性樹脂の嵩比重とが概略一致しているとさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が成形加工品の場合、成形加工品としては、たとえば、インフレーションフィルムや2軸延伸フィルム等のフィルム、シート、射出成形品、ブロー成形品など様々な形状の成形加工品を挙げることができるが、ポリプロピレンフィルムにおいて最も本発明の効果が発揮される。また、フィルム加工の後工程における金属部との摩擦やフィルム同士の摩擦低減を考慮すると、ポリプロピレンフィルムの動摩擦係数を好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下とすることが好ましい。
成形加工品の製造方法としては、前記成形材料を加熱溶融した状態で、射出成形、ブロー成形、押出成形、熱成形(2軸延伸加工等)する方法を挙げることができ、成形材料を成形する同様の方法であってもよい。
実施例における帯電防止剤や熱可塑性樹脂組成物の物性評価は、下記の方法にて実施した。なお、酸価は水酸基価の計算のために測定した。
帯電防止剤の酸価を医薬部外品原料規格酸価測定法第3法によって測定する。
(水酸基価)
帯電防止剤の水酸基価(OHv)を医薬部外品原料規格水酸基価測定法によって測定する。
帯電防止剤のケン化価(Sv)を医薬部外品原料規格ケン化価測定法によって測定する。
(アミン価)
帯電防止剤のアミン価(Amv)を医薬部外品原料規格アミン価測定法第2法によって測定する。
なお、上記測定法は本願出願時に規定された測定法とする。
熱可塑性樹脂組成物の成形によって作製されたフィルムについて、40℃にて1日保管後の表面固有抵抗率を東亜電波工業製極超絶縁計を使用して測定する。なお、測定条件は温湿度20℃×45%、R.H.である。
容量100mlのガラス製ビーカーに30℃の水を60ml入れ、ビーカーの口を40℃にて1日保管後の熱可塑性樹脂組成物の成形によって作製されたフィルムで密閉し塞いだ。次いで、5℃の恒温槽に入れ、1時間後のフィルム内面への水滴の付着状態を目視で観察し、下記に示す評価基準(1〜10級)に基づいて評価する。
10級:全く水滴がなく、全面濡れた状態。
9級:曇りは全くないが、極わずかはじかれた水滴が存在している状態。
8級:7級および9級の中間の評価
7級:曇りはないが、所々にはじかれた水滴が存在している状態。
6級:5級および7級の中間の評価
5級:曇りはないが、はじかれた水が大きな水滴となって点在している状態。
4級:3級および5級の中間の評価
3級:全面に大きな水滴が付着し、曇って中身がほとんど見えない状態。
2級:1級および3級の中間の評価
1級:全体的に白く曇って中身が全く見えない状態。
熱可塑性樹脂組成物の成形によって作製されたフィルムを、40℃で10日保管後に、色差・濁度測定器(日本電色工業製)を使用してフィルムのHaze値およびΔHaze(フィルム表面をエタノールで軽く洗い流す前後のHaze値の差)を測定する。
熱可塑性樹脂組成物の成形によって作製されたフィルムについて、40℃にて1日保管後の動摩擦係数(μd)を摩擦測定機TR−2(東洋精機製)を使用してJIS K7125−ISO 8295(プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験法)に従って測定する。なお、測定条件は温湿度20℃×45%、R.H.である。
表1に示す配合量で成分(A)〜成分(D)をそれぞれ溶融混合して、帯電防止性成分(AS−1〜AS−6)を調製した。
製造例1で調製した帯電防止性成分であるAS−1を80重量部準備した。また、平滑性成分であるカルナバワックスを20重量部準備した。これらを均一に混合して熱可塑性樹脂用帯電防止剤を調製した。
次いで、ポリプロピレン(ホモポリマー、MFR=2.5g/10min)を準備し、上記熱可塑性樹脂用帯電防止剤がポリプロピレンに対して10重量%となるように混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練して、ストランドを得た。得られたストランドをペレタイザーでカットして、熱可塑性樹脂組成物であるマスターバッチを調製した。
Tダイより押出された押出物を一軸延伸して厚さ20μmのフィルムに成形した。得られたフィルムについて、帯電防止性、防曇性、平滑性および透明性を評価し、その結果を表2に示す。
実施例2〜13および比較例1〜5では、帯電防止性成分および平滑性成分の種類や配合割合を、それぞれ、表2〜3に示すように変更する以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂用帯電防止剤をそれぞれ調製し、マスターバッチを作製し、フィルムを成形した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、帯電防止性、防曇性、平滑性および透明性をそれぞれ評価し、その結果を表2〜3に示す。
表2〜3に示す平滑性成分の種類や融点は以下のとおり。
カルナバワックス:カルナバ2号、融点84℃
パラフィンワックス:融点47℃
マイクロクリスタリンワックス:融点67℃
ポリエチレンワックス:低分子量ホモポリエチレン、融点約100℃
それに対して、比較例1では、帯電防止性成分のみで構成されているため、平滑性を示す動摩擦係数が0.17であり、本発明と比較すると劣る結果となった。一方、比較例2では、帯電防止性成分の比率が50%より低いため十分な帯電防止性と防曇性が得られない結果となった。比較例3では、本発明の平滑性成分には該当しないオレイルアミドを併用したため、平滑性が得られたものの、帯電防止性や防曇性が阻害された。比較例4および5では、帯電防止性成分のOHv/Svの値が範囲外であるため、比較例4ではΔHaze値が1.0を超える値となる透明性の阻害および平滑性の不良が観察され、比較例5では帯電防止性および防曇性が不良となった。
Claims (12)
- 帯電防止性成分および平滑性成分を含む帯電防止剤であって、
前記帯電防止性成分が、グリセリン脂肪酸エステルである成分(A)と、ポリグリセリン脂肪酸エステルである成分(B)とを必須成分とし、(ポリ)オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである成分(C)および/または脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含み、前記成分(D)の配合割合が前記帯電防止性成分の0〜10重量%であり、前記帯電防止性成分の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.5〜1.8の範囲にあり、
前記平滑性成分が、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスを含み、
前記帯電防止性成分および平滑性成分の配合割合(帯電防止性成分/平滑性成分)が99/1〜50/50の範囲にある、
熱可塑性樹脂用帯電防止剤。 - 前記帯電防止性成分のアミン価が10mgKOH/g以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
- 前記成分(A)が炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
- 前記成分(B)が平均重合度3〜10のポリグリセリンのエステル誘導体であって、炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
- 前記成分(C)にあるオキシエチレン基の繰り返し単位数が1〜30であり、前記成分(C)が炭素数8〜22の脂肪酸残基を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
- 前記平滑性成分が融点30〜100℃の炭素数18以上の飽和炭化水素から構成されるパラフィンワックスである、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
- 熱可塑性樹脂および請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂用帯電防止剤を含む、熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂用帯電防止剤の含有率が前記熱可塑性樹脂に対して0.1〜30重量%である、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンである、請求項8または9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリプロピレンフィルムである、請求項8〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレンフィルムの表面の動摩擦係数が0.15以下である、請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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