JP2014214337A - ゴム補強用金属線およびその製造方法 - Google Patents

ゴム補強用金属線およびその製造方法 Download PDF

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義明 岡林
Yoshiaki Okabayashi
義明 岡林
松岡 映史
Eiji Matsuoka
映史 松岡
仁志 若原
Hitoshi Wakahara
仁志 若原
均 三輪
Hitoshi Miwa
均 三輪
隆夫 西原
Takao Nishihara
隆夫 西原
勝司 三輪
Katsushi Miwa
勝司 三輪
相川 耕一
Koichi Aikawa
耕一 相川
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Sumitomo Electric Tochigi Co Ltd
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Abstract

【課題】 めっき後の熱処理が不要で低コストでゴム補強用金属線を製造できる製造方法を提供する。【解決手段】 芯線を用意し、芯線に銅めっきを施してCuからなる下地層を芯線の外周に形成し、CuとZnとを含むめっき液に芯線を浸漬して、下地層の外周にCuとZnとを含む被覆層を形成し、熱処理を施さずに芯線に伸線加工または撚り加工を施す、ゴム補強用金属線の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ゴム補強用金属線およびその製造方法に関する。
自動車用タイヤなどに用いられるゴム補強用金属線が知られている。このゴム補強用金属線は、初期伸線工程、めっき工程、熱処理工程、最終伸線工程を経て製造されることが一般的である。めっき工程は、銅めっき層と亜鉛めっき層とを順次芯線の外周上に形成し、ついで、熱処理を行って銅および亜鉛を互いの層に一定程度拡散させている(例えば特許文献1参照)。
特開2010−31333号公報 特開2011−174100号公報
ところで、熱処理工程では芯線を比較的高温に加熱する必要がある。このため、熱処理工程には多量の熱エネルギーが必要とされており、製造コストが嵩む要因となっていた。
また一般的に製造現場では、上述した一連の工程を連続する製造ライン上で行っている。このため、芯線には一定の張力を作用させて芯線を連続的に送っている。
ここで、熱処理工程においては芯線の温度が高く、芯線の強度が低下している。このため、製造ライン中のうち熱処理の炉内で芯線が断線しやすかった。炉内で再び芯線を製造ラインに復旧させる作業は、高温環境化の狭い空間内での作業を強いられるため、大変な労力を必要とされる。
そこで本発明は、安価でめっき後の熱処理が不要なゴム補強用金属線およびその製造方法を提供する。
本発明に係るゴム補強用金属線の製造方法は、
芯線を用意し、
前記芯線に銅めっきを施してCuからなる下地層を前記芯線の外周に形成し、
特許文献2記載のCuとZnとを含むめっき液に前記芯線を浸漬して、前記下地層の外周にCuとZnとを含む被覆層を形成し、
熱処理を施さずに芯線に伸線加工または撚り加工を施す。
本発明に係るゴム補強用金属線は、
芯線と
前記芯線の外周に設けられ、Cuからなる下地層と、
前記下地層の外周に設けられ、CuとZnとを含む被覆層と、を有し、
前記下地層と前記被覆層との境界において、Cuの濃度が不連続とされている。
上記本発明に係るゴム補強用金属線およびその製造方法において、
前記下地層の厚みと前記被覆層の厚みの比が1:0.5〜1:20とされていてもよい。
また、前記被覆層のCuとZnの比率が、Cu:Znが60:40〜70:30となるように形成されていてもよい。
さらに上記本発明に係るゴム補強用金属線において、前記下地層と前記被覆層を含めた線径が0.1〜0.7mmであり、前記下地層と前記被覆層全体の厚みが0.1〜0.7μmであってもよい。
本発明によれば、めっき後の熱処理工程が行われず、製造が容易で安価に提供できるゴム補強用金属線およびその製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態に係るゴム補強用金属線およびその製造方法を、説明する。
本実施形態におけるゴム補強用金属線は、自動車用タイヤやホース等のゴム製品を補強するために使用される。例えば、複数本のゴム補強用金属線を撚り合わせて形成したスチールコードにゴムを被覆し、自動車用タイヤを形成することができる。
ゴム補強用金属線は、鋼線等からなる芯線と、この芯線の外周に設けられた下地層と、下地層の外周に設けられた被覆層とから構成されている。芯線には、その直径が0.1mm〜0.7mmの金属線を好適に使用することができる。
被覆層は、CuとZnとから形成されている。被覆層は、芯線を外部から保護し、ゴム製品のゴムとの密着性を向上させるために設けられる。被覆層には、CuとZnのほかにCoなどが添加されていても良い。
被覆層のCuとZnの含有比率は、60:40〜70:30がより好適である。Cuの含有比率がこの範囲であれば、初期接着性および長期密着性ともより良好である。ゴムとの初期密着性および長期密着性については後に詳述する。
下地層は、ゴム補強用金属線の伸線加工性を高めるために設けられている。下地層は、不可避的に混入される不純物を除き、実質的にCuのみからなる。したがって、ゴム補強用金属線の断面において、Cu濃度約100%の下地層と被覆層との境界においてCu濃度が不連続とされている。
この下地層の厚みと被覆層の厚みの比は、1:0.5〜1:20であることが好ましい。より好ましくは下地層の厚みと被覆層の厚みの比は、1:1〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:5である。下地層の厚みが上記範囲よりも小さいと、下地層が薄すぎて伸線加工性が低下してしまう虞がある。また、下地層の厚みを上記範囲よりも大きくしても伸線加工性が変化せず、徒にコストが嵩んでしまう。
例えば最終的に実際のゴム補強用金属線の線径がφ0.1〜0.7mmの場合、下地層と被覆層との合計の厚みは0.1〜0.7μmであり、この下地層と被覆層とからなる層において、上記の下地層と被覆層厚みの比が維持されている。
ところで、Cuは延性が高く鋼との密着性が高いので、クラックを生じさせることなく芯線に伸線加工を施すことができる。このため、芯線に近い領域にCuを多く含ませておくとよい。
また、Cuはゴム中に浸透しやすいのでゴムとの初期の密着性が高いが、長期的にはCuがゴムに浸透してゴムの架橋構造を破壊し、ゴムを脆化させてしまう。この結果、Cuはゴムとの長期的な密着性を低下させてしまう。このため、ゴムに近い領域にはCuのゴムへの浸透を適度に抑制するためにCuに加えてZnを含ませておくことがよい。
そこで本実施形態においては、芯線と接触する下地層としてCuのみの層を設け、さらに下地層の外側をCuとZnからなる被覆層で覆う構造とした。これにより、伸線加工性が高く、かつゴムとの初期密着性および長期密着性の高いゴム補強用金属線を提供することができる。
なお、下地層と被覆層の境界にはCu濃度が不連続とされているが、これによっても下地層と被覆層との密着性には問題が生じない。
<製造方法>
次に、上述したゴム補強用金属線の製造方法を説明する。
まず、スチールロッドを所定の直径となるまで金型などを用いて初期伸線加工を施し、芯線を得る。芯線は、直径が0.5mm〜1.5mm程度となるまで初期伸線加工を施すことが好ましい。
次に、得られた芯線の外周にCuめっきを施して下地層を形成する。Cuを含むめっき液中に芯線を連続的に供給することにより、実質的にCuのみからなる下地層を形成する。用いるめっき液やめっき方法は公知のものを用いることができる。
下地層は、厚みが0.3μm以上1.0μm以下となるように形成することが好ましい。下地層の厚みが0.3μm未満であると、下地層が薄すぎて、所望の伸線加工性が得られない。また、下地層の厚みが1.0μmより大きくても、伸線加工性はそれ以上向上せず、コストが嵩んでしまう。なお、ここでいう下地層の厚みとは、めっき処理後で後述する最終伸線加工前の下地層の厚みである。
続いて、下地層を備えた芯線をCuとZnとを含むめっき液に浸漬し、下地層の外周に被覆層を形成する。用いるめっき液やめっき方法は上記特許文献2に記載のものを用いることができる。
被覆層は、厚みが0.3μm以上10μm以下となるように形成することが好ましい。被覆層の厚みが0.3μm未満であると、下地層からのCuのゴムへの浸透を抑制できず、ゴムとの長期密着性が低下する虞がある。また、被覆層の厚みが10μmより大きくても、ゴムとの長期密着性の低下を抑制する効果が向上せず、コストが嵩んでしまう。なお、ここでいう被覆層の厚みとは、めっき処理後で後述する最終伸線加工前の被覆層の厚みである。
次に、下地層および被覆層を形成した後に、熱処理を施すことなく、所望の太さとなるように下地層および被覆層を備えた芯線に最終伸線加工を施す。このように熱処理が施されないので、下地層と被覆層との境界においてCuが被覆層側に拡散せず、また、Znも下地層側に拡散しない。このため、下地層と被覆層との境界においてCu濃度が不連続となっている。
このように、本実施形態に係るゴム補強用金属線の製造方法によれば、下地層および被覆層を形成した後に熱処理を施さない。このため、大きな熱エネルギーが必要となる熱処理が実施されないので、熱処理を施してゴム補強用金属線を製造していた特許文献1記載の製造方法よりも、安価にゴム補強用金属線を提供できる。
また、Cuのみからなる下地層が伸線加工性を高め、CuとZnからなる被覆層がゴムとの密着性を高めている。したがって、伸線加工性および密着性の高いゴム補強用金属線を提供できる。
さらに、Cu濃度が不連続であっても下地層と被覆層との密着性が低下しないので、伸線加工性およびゴムとの密着性を犠牲にすることなくゴム補強用金属線の製造コストを大きく低下させることができる。
なお、上述の実施形態では、下地層および被覆層を形成した後に最終伸線加工を施す例を挙げたが、最終伸線加工の替わりに撚り線加工を施しても良い。撚り線加工により撚り線コードを形成し、タイヤなどのゴム補強用のスチールコードとして用いることができる。また、最終伸線加工された芯線に、さらに撚り工程を施しても良い。
<実施例>
以上のようなゴム補強用金属線について、最終伸線加工前の線径が0.90mmの実施例1,2及び比較例1〜3を作成して、伸線加工性及びゴムとの密着性を評価した。
伸線加工性は、伸線テストにより評価した。伸線テストにおいては、0.23mmまで伸線できたゴム補強用金属線は○と評価し、破断して0.23mmまで伸線できなかったゴム補強用金属線は×と評価した。
密着性は、以下のように評価した。最終伸線加工により0.23mmまで伸線したゴム補強用金属線を4本用意し、4本のゴム補強用金属線を撚り合わせてスチールコードを作成した。更に、このスチールコードをゴムで挟み込み、温度約150℃、圧力50kg/cmで20分間の加硫処理を施し、更に温度80℃湿度95%の高温高湿状態で5日間保管した。その後、ゴムをスチールコードから剥離して、スチールコードの外周面に付着しているゴムの状態から密着性を10段階評価した。本実施形態においては、評点が7以上のスチールコードを密着性に優れたスチールコードと評価した(表1において○)。
実施例1は、最終伸線加工前の厚みで下地層を0.5μm、被覆層を1.0μmとなるように下地層および被覆層を形成し、その後熱処理を施さずに最終伸線加工および撚り線加工を施して形成したスチールコードである。
実施例2は、最終伸線加工前の厚みで下地層を0.14μm、被覆層を1.36μmとなるように下地層および被覆層を形成し、その後熱処理を施さずに最終伸線加工および撚り線加工を施して形成したスチールコードである。
比較例1は、芯線にCuのみの層を厚み1.5μm形成し、最終伸線加工および撚り線加工を施して形成したスチールコードである。比較例1においては、熱処理は不要であるため、熱処理は施していない。
比較例2は、芯線にCuとZnとを含むめっき液に浸漬し、CuとZnとを含む層を厚み1.5μm形成し、最終伸線加工および撚り線加工を施して形成したスチールコードである。比較例2も、熱処理は不要であるため、熱処理は施していない。
比較例3は、Cuのみを含む下地層を0.5μm、下地層の上にCuとZnとを含む被覆層を1.0μm形成し、その後に熱処理を施して、CuおよびZnを拡散させたものに、最終伸線加工および撚り線加工を施して形成したスチールコードである。この比較例3においては、下地層と被覆層との境界においてCu濃度は連続的に変化している。
比較例4については下地層としてCu層を0.5μmめっきにより形成し、その上に被覆層としてZn層を1.0μmめっきにより形成し、その後熱処理を施したものである。このようにCu層とZn層とをそれぞれめっきにより形成し、その後熱処理を施す製造方法は、最も一般的なスチールコードの製造方法である。
比較例5は、下地層としてCu層を0.5μmめっきにより形成し、その上に被覆層としてZn層を1.0μmめっきにより形成し、その後熱処理を行わなかったものである。
表1にまとめたように、実施例1,2は伸線加工性およびゴムとの密着性のいずれの項目においても良好な特性を示した。また、最終伸線加工中に被覆層が下地層から剥離するような現象は確認されなかった。
これに対して比較例1は、ゴムとの密着性が悪かった。Cuのみからなる層が直接ゴムと接触しているため、Cuがゴム中に浸透した結果、ゴムとの密着性が低下したものと考えられる。
比較例2は、伸線加工性が悪かった。これは、Cuよりも延性に劣るZnを含む層が直接芯線と接触しているため、伸線加工性が低下したものと考えられる。
比較例3は、実施例1,2と同程度の良好な伸線加工性およびゴムとの密着性を示した。しかし、熱処理が施されているため、製造コストが嵩む。
比較例4は、実施例1,2と同程度の良好な伸線加工性及びゴム密着性を発揮した。もっとも、熱処理を施した分だけ製造コストが嵩み、また、熱処理炉内での断線の虞がある。
比較例5は伸線加工性は問題なかった。しかし比較例5は被覆層をZnのみで形成し、さらに熱処理を施さなかったため、被覆層にはCuが含まれていない。このため、ゴムとの密着性が悪くなっている。
以上の結果より、Cuのみからなる下地層とCuとZnとを含む被覆層をめっき処理により形成した後、熱処理を施さずに最終伸線加工を施す、本発明に係る製造方法によれば、伸線加工性およびゴムとの密着性を犠牲にすることなく、ゴム補強用金属線を低コストで提供できることが確認された。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. 芯線を用意し、
    前記芯線に銅めっきを施してCuからなる下地層を前記芯線の外周に形成し、
    CuとZnとを含むめっき液に前記芯線を浸漬して、前記下地層の外周にCuとZnとを含む被覆層を形成し、
    熱処理を施さずに芯線に伸線加工または撚り加工を施す、ゴム補強用金属線の製造方法。
  2. 前記下地層の厚みと前記被覆層の厚みの比が1:0.5〜1:20となるように前記下地層および前記被覆層とを形成する、請求項1に記載のゴム補強用金属線の製造方法。
  3. 前記被覆層のCuとZnの比率が、Cu:Znが60:40〜70:30となるように前記被覆層を形成する、請求項1または2に記載のゴム補強用金属線の製造方法。
  4. 芯線と
    前記芯線の外周に設けられ、Cuからなる下地層と、
    前記下地層の外周に設けられ、CuとZnとを含む被覆層と、を有し、
    前記下地層と前記被覆層との境界において、Cuの濃度が不連続とされている、ゴム補強用金属線。
  5. 前記下地層の厚みと前記被覆層の厚みの比が1:0.5〜1:20である、請求項4に記載のゴム補強用金属線。
  6. 前記被覆層のCuとZnの比率が、Cu:Znが60:40〜70:30である、請求項4または5に記載のゴム補強用金属線。
  7. 前記下地層と前記被覆層を含めた前記ゴム補強用金属線の線径が0.1〜0.7mmであり、前記下地層と前記被覆層との合計の厚みが0.1〜0.7μmである請求項4から6のいずれか一項に記載のゴム補強用金属線

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