JP2014212757A - 食品の減圧乾燥方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】食品を減圧乾燥する際に、細胞外液及びトリメチルアミンや尿素等の臭み成分を蒸発させて、食品の鮮度低下及び臭気の発生を抑えることができるようにする装置と方法を提供する。【解決手段】食品の減圧乾燥を次の工程で行う。(1)被乾燥食品を濃度4〜30重量%の食塩水に1〜60分浸漬する。(2)被乾燥食品をマイクロ波発振機4−1〜4−12、導波管15及び真空ポンプ5が設置されている減圧容器1の内部に密閉する。(3)真空ポンプ5により、減圧容器1の内圧を100〜5000Paに減圧するとともに、マイクロ波発振機4−1〜4−12が発振する、発振出力10〜6000W、パルス幅1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9のパルス状マイクロ波を、導波管15により減圧容器1の被乾燥食品に照射する。(4)パルス状マイクロ波の照射を停止する。(5)減圧容器1の密閉を解除し、被乾燥食品を取り出す。【選択図】図1

Description

本発明は、魚、貝、エビ、カニ、畜肉及びこれらの加工品等の食品を減圧乾燥する方法及び装置に関する。
従来、食品は種々の方法で減圧乾燥されている。例えば、特許文献1(特許第4474506号公報)には、減圧状態のチャンバー内で、食品等にマイクロ波を照射して行う減圧乾燥方法であって、a)前記チャンバー内の減圧は、前記対象物の変質温度に対応する飽和蒸気圧以下とし、b)前記チャンバーの外部から該チャンバー内に気体を供給し、c)前記マイクロ波をオンオフ処理して、前記対象物の温度を前記対象物の変質温度未満に保持した状態で乾燥を行い、更にd)前記チャンバーの外部から前記チャンバー内への気体の供給は、前記チャンバー内を減圧状態に保ち、前記対象物の周囲に気流を発生させながら行うことが記載されている。
また、特許文献2(特許第2609921号公報)には、食品を該食品が膨化するに充分な速度で該食品中の水分が氷結する程度の急速減圧状態下におき、該食品の中心温度が0〜7℃になった時点で振動処理を開始し、該食品中の水分が氷結した後、加熱乾燥し、次いで常圧に戻すことを特徴とする食品の減圧乾燥方法が記載されている。
さらに、特許文献3(特許第5039972号公報)には、食品を、マイクロ波減圧乾燥を用いて常温で全体の質量の3〜5%の水分を予備乾燥し、次いで、凍結し保存する凍結保存法が記載されている。
魚、貝、エビ、カニ、畜肉及びこれらの加工品などの食品には、細胞内液(「結合水」ともいう。)と細胞外液(「間質液」、「自由水」ともいう。)が含まれている。このうち、血液やリンパ液等の細胞外液にはトリメチルアミンや尿素等の臭み成分が含まれており、この臭み成分が、食品の鮮度を落とし臭いの元となるとともに、冷凍時における肉質の劣化や冷凍保存後に解凍し調理したときにおける食感や風味の劣化を引き起こす原因となっている。
そのため、消費地から遠い生産地(漁港や畜産加工所等)の魚介類や肉は、輸送コストや冷蔵コストがかかるにもかかわらず、消費地に到着したときには鮮度が落ち、高値で取引されず、古くなって廃棄される比率も高いため、売り上げが上がりにくい。
このような悪循環が足かせとなって、消費地から遠い生産地には労働者が定着せず、さびれていく一方となっている。
また、従来のマイクロ波減圧乾燥方法や通常の冷凍保存方法では、細胞外液の除去が不十分であったり、細胞外液が先に凍結することによって肉質が劣化したりするために、減圧乾燥後でも鮮度が落ちやすく臭いが出やすい、減圧乾燥後に冷凍保存しても解凍し調理したときにおける食感や風味が悪くなってしまうという問題があるため、やはり高値では取引されないという問題点があった。
なお、氷点下30℃以下の超低温で急速に冷凍し、細胞外液と細胞内液を一気に凍結させて鮮度や肉質を落とさないようにする方法も開発されているが、そのような方法の実施には、一基数億円以上の高価な冷凍設備を建設する必要があるため、小規模な事業所(漁港や畜産加工所等)への導入は困難であった。
特許第4474506号公報 特許第2609921号公報 特許第5039972号公報
本発明の課題は、食品を減圧乾燥する際に、細胞外液及びトリメチルアミンや尿素等の臭み成分を選択的に蒸発させて、食品の鮮度低下及び臭気の発生を抑えることができる方法を得ること、並びに細胞外液及びトリメチルアミンや尿素等の臭み成分を選択的に蒸発させるための装置を得ることである。
さらに、そのような方法及び装置を低コストで実施及び提供できるようにすることも本発明の課題である。
請求項1に係る発明の食品を減圧乾燥する方法は、以下の工程からなることを特徴とする。
(1)被乾燥食品を濃度4〜30重量%の食塩水に1〜60分浸漬する。
(2)被乾燥食品をマイクロ波発振機、導波管及び減圧装置が設置されている減圧容器の内部に収容し、減圧容器を密閉する。
(3)減圧装置により、減圧容器の内圧を100〜5000Paに減圧するとともに、マイクロ波発振機が発振する、発振出力10〜6000W、パルス幅1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9のパルス状マイクロ波を、導波管により減圧容器の内部に伝播し、被乾燥食品に照射する。
(4)パルス状マイクロ波の照射を停止する。
(5)減圧容器の密閉を解除し、被乾燥食品を取り出す。
請求項2に係る発明の食品を減圧乾燥する方法は、請求項1に記載の食品を減圧乾燥する方法において、パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の少なくともひとつについて、時系列に変化させて被乾燥食品に照射することを特徴とする。
請求項3に係る発明の食品減圧乾燥装置は、密閉可能な減圧容器と、被乾燥食品を保持し減圧容器の内部に収容される保持体と、パルス状マイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、減圧容器の内部にパルス状マイクロ波を伝播する導波管と、減圧容器の内部を密閉した状態で減圧する減圧装置と、マイクロ波発振機が発振するパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を、それぞれ10〜6000W、1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9の範囲で制御するマイクロ波制御装置を備えることを特徴とする。
請求項4に係る発明の食品減圧乾燥装置は、請求項3に記載の食品減圧乾燥装置において、マイクロ波制御装置が、パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の少なくともひとつについて、時系列の変化を制御することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、被乾燥食品を濃度4〜30重量%の食塩水に1〜60分浸漬することで、被乾燥食品の細胞外液に重量比で0.3〜5%程度の塩分を与えて、細胞外液の誘電率を上げることができる。
なお、細胞内液については細胞膜の選択浸透機能により、細胞内には塩分が侵入しにくいため、被乾燥食品を食塩水に浸漬しても、その誘電率はほとんど上がらない。
そして、細胞外液の誘電率を上げた被乾燥食品を減圧容器の内部に入れ、減圧容器の内圧を100〜5000Paに減圧するとともに、発振出力10〜6000W、パルス幅1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9のパルス状マイクロ波を被乾燥食品に照射すると、被乾燥食品の細胞外液がまんべんなく加熱され、かつ、細胞内液はそれほど加熱されないため、細胞外液及び細胞外液に含まれる臭み成分を選択的に蒸発させることができる。
このような効果が得られる理由は、マイクロ波が高い誘電率の物質に作用しやすいこと、マイクロ波が連続して照射された場合、照射開始時に作用した物質への作用が継続しやすいという性質があるからである。
すなわち、細胞外液の誘電率を上げ、細胞内液の誘電率はほとんど上がっていない状態でパルス状マイクロ波を照射すると、誘電率の高い細胞外液が加熱されやすく、また、パルス状であることからマイクロ波の作用する箇所が固定的とならず、作用を受ける細胞外液が刻々変化するため、上記の効果が得られるのである。
なお、臭み成分であるトリメチルアミンや尿素は、細胞外液より沸点が低く蒸発しやすいので、細胞外液より早く又は細胞外液とともに蒸発する。
そして、細胞外液及び細胞外液に含まれる臭み成分を選択的に蒸発させれば、食品の鮮度低下及び臭気の発生が抑えられ、食品の賞味期間が延びる上に風味も向上するため、値崩れを防ぐことができる。
また、冷凍時における肉質の劣化や冷凍保存後に解凍し調理したときにおける食感や風味の劣化を抑えることができるので、冷凍保存した食品の取引価格を上げることができる。
ひいては、魚介類や肉類の食品取引における悪循環を断つことができ、消費地から離れた生産地における売り上げを増やすことができるので、労働者の定着も期待できる。
さらに、これまで臭みが強くて、食事に供しにくかった魚や肉(ナルトビエイ等)も、廃棄することなく市場に流通させることができるので、労働生産力が上がるだけでなく、捕獲されない魚介類による環境破壊(海の砂漠化)防止、養殖貝や養殖海苔等の食害防止、及び特定の魚介類や鳥獣の乱獲防止にもつながる。
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加え、発振出力、パルス幅及びデューティー比の少なくともひとつについて、時系列に変化させてパルス状マイクロ波を被乾燥食品に照射することにより、きめ細かく加熱処理を行うことができるので、細胞外液及び細胞外液に含まれる臭み成分の選択的な蒸発を効率的に行うことができ、かつ、肉質の劣化を最小限に抑えることができる。例えば、最初は高い出力、大きなパルス幅又はデューティー比で細胞外液を加熱した後、加熱がある程度進んだ後には、低い出力、小さなパルス幅又はデューティー比で細胞外液を加熱すれば、比較的低い電力量で細胞外液及び臭み成分の蒸発が進み、しかも細胞自体の加熱や細胞内液の蒸発は抑えられるため、食品を構成する組織を破壊せずに処理することができるという効果を奏する。
請求項3に係る発明によれば、請求項1に係る発明の方法を容易に実施することができ、被乾燥食品に含まれる細胞外液及び臭み成分を選択的に蒸発させるための制御を行うことができる。
請求項4に係る発明によれば、請求項2に係る発明の方法を容易に実施することができ、被乾燥食品に含まれる細胞外液及び臭み成分を選択的に蒸発させるための制御を予めプログラムしておくことができる。
実施例1の食品減圧乾燥装置の概念図。 実施例1の食品減圧乾燥装置の斜視図。 実施例1のプログラム手段に記憶されているパルス状マイクロ波の出力変化の一例を示すグラフ。 実施例2の食品減圧乾燥装置の概念図。 実施例2の食品減圧乾燥装置を含む作業場の配置図。
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
実施例1の食品減圧乾燥装置の概念図を図1に、斜視図を図2に示す。
実施例1の食品減圧乾燥装置は、円筒状の金属製減圧容器1と、減圧容器1の内部に収納でき、棚板部又は底部に減圧乾燥する魚介類や肉類を載置できるトレイ2と、減圧容器1の中心軸を通る水平面より上方に左右対称に配置され、それぞれがパルス状マイクロ波を発振する6つのマグネトロン4−1〜4−6と、同水平面より下方に左右対称に配置され、それぞれがパルス状マイクロ波を発振する6つのマグネトロン4−7〜4−12と、各マグネトロン4−1〜4−12にそれぞれ対応して設けられパルス状マイクロ波を減圧容器1の内部に伝播する導波管15と、各マグネトロン4−1〜4−12にそれぞれ対応して設けられマグネトロン4−7〜4−12が発振するパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を、それぞれ10〜500W、1〜100ミリ秒、0.1〜0.9の範囲で制御するマイクロ波制御装置と、密閉された減圧容器1内の気体を排出する真空ポンプ5と、減圧容器1と真空ポンプ5を連通する排出管6と、排出管6に設置されている真空バルブ7と、密閉された減圧容器1内に窒素ガスを供給する窒素ボンベ8と、減圧容器1に設置されているリークバルブ9と窒素ボンベ8に設置されている開閉コック10を介して両者を連通するガス供給管11と、ガス供給管11に設置されている流量計12と、減圧容器1の内圧を計測する圧力センサー13と、減圧容器1の内部で減圧乾燥される魚介類や肉類の表面温度を計測する温度センサー14を備えている。
実施例1の減圧容器1は、外径約85cm、内径約80cm、長さ約160cmで一方が閉塞され他方が開口しているステンレス製の円筒体と、開口の周囲に設けられたフランジに装着して開口を閉塞するためのステンレス製の開閉蓋3からなり、開口を閉塞して減圧容器1を密閉した状態においては、内圧が10Pa(1万分の1気圧)程度まで下がっても潰れない強度と外気が侵入しない気密性を有している。さらに、減圧容器1の内面の下部にはトレイ2を支持するために2本のL字状のレール16−1、16−2が左右対称に設置されている。
また、マグネトロン4−1〜4−12が設置される箇所に対応させて、減圧容器1の壁部の12箇所には直径約10cmの円形状の穴があけてあり、マグネトロン4−1〜4−12が発振するマイクロ波が導波管15を介して減圧容器1の内部に伝播されるようになっている。12箇所にあけてある12個の穴の中心は、減圧容器1の中心軸を通る水平面に対して、その中心軸において約26.6度の角度で交差する2つの平面が通る位置となっている。
実施例1のトレイ2は、上部が開放された平たい直方体状の複数の箱であり、重箱のように複数段積み重ねられるようになっている。
そして、各箱の中に減圧乾燥する魚介類や肉類を入れて箱を積み重ねた後、2本のL字状のレール16−1、16−2の間に渡して押し込めば、減圧容器1の内部に全体を収容することができる。
実施例1の減圧容器1に配置されるマグネトロン4−1〜4−12は、いずれも家庭用の電子レンジに用いられる最大出力が500〜1000W程度で、パルス状マイクロ波を発振できるものである。このため、低コストで入手でき、廃棄処分された電子レンジのマグネトロンを利用すれば、さらに低コストで入手できる。
実施例1の導波管15は、方形の断面を持つ金属製の管で構成される中空導波管であり、各マグネトロン4−1〜4−12から減圧容器1の壁部にあけてある12箇所の穴を通して、それぞれ発振されたパルス状マイクロ波を減圧容器1の中心軸方向に向けて伝播するものである。
実施例1のマイクロ波制御装置は、対応するマグネトロン4−1〜4−12が発振するパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を、それぞれ10〜500W、1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9の範囲で制御することができるように、出力、パルス幅及びデューティー比を設定するダイヤル、アップダウンスイッチ及び設定値や設定項目を表示する表示器を有している。
また、減圧乾燥する魚介類及び肉類の種類や量に適する発振出力、パルス幅及びデューティー比の時系列の変化を記憶するプログラム手段を備え、プログラム手段に記憶されたデータに従ってパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を自動的に時系列で変化させる機能も有している。
図3は、プログラム手段に記憶されているパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の時系列の変化の一例を示すグラフであり、発振出力、パルス幅及びデューティー比は次のように変化している。
(1)最初の300秒(5分)は、発振出力300W、パルス幅100ミリ秒、デューティー比2/3(0.67)
(2)発振開始後300〜600秒(5〜10分)は、発振出力300W、パルス幅100ミリ秒、デューティー比1/2(0.5)
(3)発振開始後600〜900秒(10〜15分)は、発振出力200W、パルス幅100ミリ秒、デューティー比1/2(0.5)
(4)発振開始後900〜1800秒(15〜30分)は、発振出力100W、パルス幅100ミリ秒、デューティー比1/2(0.5)
(5)発振開始後1800〜3000秒(30〜50分)は、発振出力100W、パルス幅50ミリ秒、デューティー比1/4(0.25)
(6)発振開始後3000〜3600秒(50〜60分)は、発振出力50W、パルス幅50ミリ秒、デューティー比1/4(0.25)
なお、この例のように、発振出力を定格出力の6割以下(上記の例では、マグネトロン最大出力が500Wの場合6割、1000Wの場合3割)に抑えれば、マグネトロンの寿命を延ばすことができ、交換のインターバルを長くすることができる。
実施例1の食品減圧乾燥装置を用いて魚肉を減圧乾燥させ出荷するまでの工程は次のとおりである。
(1)魚肉を濃度10重量%の食塩水に10分程度浸漬する。
(2)食塩水への浸漬が終わった魚肉を、複数のトレイ2に分け入れ、トレイ2を積み重ねた後、2本のL字状のレール16−1、16−2の間に渡して押し込み、減圧容器1の内部に全体を収容する。
(3)減圧容器1の開閉蓋3を閉め、フランジに固定して減圧容器1を密閉する。
(4)真空ポンプ5により、減圧容器1の内圧を約1000Pa(0.01気圧)に減圧するとともに、魚肉の表面温度が0〜10℃となるように、発振出力20〜500W、パルス幅50〜200ミリ秒、デューティー比0.2〜0.8のパルス状マイクロ波を魚肉に照射する。
なお、魚肉に照射するパルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の時系列の変化の一例が、図3に示したグラフである。
(5)パルス状マイクロ波の照射を停止する。
(6)リークバルブ9を開けて減圧容器1に空気や窒素ガスを導入し、減圧容器1の内圧を大気圧に戻す。
(7)減圧容器1の密閉を解除し、減圧乾燥された魚肉を取り出す。
(8)減圧乾燥された魚肉を真空パックして出荷する。
実施例2の食品減圧乾燥装置の概念図を図4に示す。
実施例2は、凝縮器17と冷却機22が追加されている点を除き、図1に示した実施例1の食品減圧乾燥装置と基本的な構成は同じである。
そして、凝縮器17は凝縮液排出バルブ18を備え、排出管6及び冷却機22の冷媒送出管20と冷媒吸入管21が接続されるとともに、接続管19によって真空ポンプ5と接続されている。
実施例2の食品減圧乾燥装置を含む作業場の平面図を図5に示す。
図5に示した作業場は、漁港の近くに建つ網小屋を利用しているため、1区画3.6m×3.6m程度に収まるコンパクトな配置としてある。
このような網小屋は、全国の漁港近くに多く建っているので、網小屋を利用して実施例1又は2の食品減圧乾燥装置を含む作業場に改装すれば、500〜1000万円程度のコストに抑えることが可能である。
図5の平面図について説明すると、作業場への出入口23の左手に各マグネトロン4−1〜4−12に対応する12個のマイクロ波制御装置を並べて格納してあるコントロールボックス24、作業場の左奥に2つの真空ポンプ5及び2本の窒素ガスボンベ8、作業場のほぼ中央部に開閉蓋3及びマグネトロン4−1〜4−12等を装備した密閉容器1、密閉容器1の奥に凝縮器17と冷却機22、作業場の右奥に冷凍機25、冷凍機25の前方に作業台26を配置している。
作業場には、冷凍機25が併設されているので、食品を減圧乾燥後に冷凍機25で凍結させ、凍結後にそのまま又は真空パックして冷凍車等により出荷することができる。
そうすると、食品を減圧乾燥させるだけでなく、冷凍してすぐに出荷することができるので、食品の鮮度をほとんど落とすことなく、遠距離の消費地に送り届けることができる。
なお、冷凍機25の能力は、家庭用の冷蔵庫程度の能力(冷却温度が−20℃程度)で充分である。
また、真空包装を行う場合には、出入口23の右手に真空包装機を設置することも可能であるが、減圧乾燥後又は減圧乾燥後に冷凍された食品を出荷するための作業用スペースを拡大したい場合には、隣の網小屋に作業台26や真空包装機を配置しておき、減圧乾燥後又は減圧乾燥後に冷凍された食品を、隣の網小屋との間に扉27を設けて運び込んだり、隣の網小屋との間にベルトコンベアのような搬送手段を設けて送り出したりしても良い。
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1及び2は、減圧容器1の中心軸を通る水平面より上方に左右対称に配置されている6つのマグネトロン4−1から4−6と、同水平面より下方に左右対称に配置されている6つのマグネトロン4−7〜4−12を備えているが、減圧容器1の長さに合わせて、マグネトロンの数は4、8、16等どのように設定しても良い。
また、マグネトロンを左右対称に配置する必要はなく、互い違いに配置しても良い。
(2)実施例1及び2の減圧容器1の壁部の12箇所にあけてある穴の中心は、減圧容器1の中心軸を通る水平面に対して、その中心軸において26.6度の角度で交差する2つの平面が各穴の中心を通る位置となっている。この角度は比較的平らな魚介類等を減圧容器1の中心軸付近に水平に載置した場合の最適値であるが、20〜30度の間であれば格別の支障はない。
また、減圧乾燥する魚介類等の大きさや入れ方が変わると最適値も変化するので、その角度は15〜75度の間で適宜選択すれば良く、減圧容器1の長手方向の位置に応じて変化させても良い。
(3)実施例1及び2の開閉蓋3はステンレス製であるが、減圧容器1を密閉した状態で内部を目視できるように、開閉蓋3の一部に気密性を保つことのできる窓部を設けても良い。窓部は直径5cm以下であれば、マイクロ波が通過することはないが、大きな窓を設ける場合には、穴を有する遮蔽板又は金属製の網を併設すれば良い。
(4)実施例1及び2のトレイ2は、上部が開放された平たい直方体状で、重箱のように複数段積み重ねられるようになっているが、減圧乾燥する魚介類や肉類を保持できるものであれば、どのような形態のものであっても良い。例えば、減圧容器1の内部に収容された直方体状の箱に複数段のスライド可能な棚板又はパレットを設け、それらの棚板又はパレットの上に魚介類等を載置した後、棚板又はパレットを挿入しても良いし、減圧容器1の上部にスライド可能なフックを複数設け、それらのフックに魚介類等を吊した後、フックを押し込んでも良い。
(5)実施例1及び2のマグネトロン4−1〜4−12は、家庭用の電子レンジに用いられる最大出力が500〜1000W程度で、パルス状マイクロ波を発振できるものであるが、このようなマグネトロンに限らず、最大出力が1500〜6000Wの工業用大型マグネトロンであっても良く、クライストロン、進行波管(TWT)、ジャイロトロン、ガンダイオードを用いてパルス状マイクロ波を発振できるマイクロ波発振器であっても良い。
また、安全のため、マグネトロン4−1〜4−12の周囲を覆うカバーを減圧容器1の外壁に着脱又は開閉可能に取り付けた方が良く、マグネトロンを交換しやすくするためにワンタッチで着脱又は開閉できるようにしておくとさらに良い。
なお、電子レンジ用のマグネトロンを用いた場合、耐久時間が2000〜4000時間程度であるため、新品のマグネトロンを使用しても、1日8時間稼働させた場合、1年程度で2000時間を超えることになるので、12基搭載してある場合、ほぼ毎月1基程度の交換が必要となる。
(6)各マグネトロン4−1〜4−12の近傍には、冷却用のファンや熱電素子を配置すると良い。また、カバーを設ける場合には、カバーの側面にファンを設けるとともに、冷却効果を高めるために、少なくともカバーの一部に排気用又は吸気用の穴を設けておくと良い。
(7)実施例1及び2の導波管15は、方形の断面を持つ金属製の管で構成される中空導波管であるが、断面は方形以外の多角形、円形又は楕円形であっても良い。
(8)実施例1及び2のマイクロ波制御装置は、各マグネトロン4−1〜4−12にそれぞれ対応して設けられているが、マグネトロン4−1〜4−12全部を一括して制御するようにしても良い。
また、同マイクロ波制御装置は、パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を設定するためのダイヤル、アップダウンスイッチ及び設定値や設定項目を表示する表示器を有しているが、ダイヤルに代えてテンキー、アップダウンスイッチに代えて項目選択スイッチを採用しても良い。さらに、表示装置と組み合わせたタッチパネルによって設定値入力や項目選択入力できるようにすると、より操作しやすくなる。
(9)実施例1及び2においては、排出管6に設置されている真空バルブ7と、密閉された減圧容器1内に窒素ガスを供給する窒素ボンベ8と、減圧容器1に設置されているリークバルブ9と窒素ボンベ8に設置されている開閉コック10を介して両者を連通するガス供給管11と、ガス供給管11に設置されている流量計12と、減圧容器1の内圧を計測する圧力センサー13と、減圧容器1の内部で減圧乾燥される魚介類や肉類の表面温度を計測する温度センサー14を備えているが、これらの装置は食品の減圧乾燥にとって必須のものではない。
(10)実施例1及び2の食品減圧乾燥装置を用いて魚肉を減圧乾燥する工程においては、魚肉を濃度10重量%の食塩水に10分浸漬したが、食塩水の塩分濃度や浸漬時間は、減圧乾燥するものの大きさや種類によって異なり、塩分濃度については4〜30重量%、浸漬時間については1〜60分の範囲で選択する。魚介類の場合には、塩分濃度6〜20重量%、浸漬時間については5〜20分となることが多く、切り身の場合には塩分濃度8〜12重量%、浸漬時間については8〜12分となることが多い。
(11)実施例1及び2の食品減圧乾燥装置を用いて魚肉を減圧乾燥する工程において、減圧容器1の内圧を約1000Pa(0.01気圧)に減圧したが、減圧の程度は減圧乾燥するものの大きさや種類によって異なるので、100〜5000Pa(0.001〜0.05気圧)の範囲で選択する。
また、減圧容器1の内圧を100Pa(0.001気圧)程度まで減圧した後、リークバルブ9を開けて窒素ガスを導入し、減圧容器1の内圧を500〜5000Pa(0.005〜0.05気圧)まで戻しても良い。そうすることで、減圧乾燥時における食品の酸化を防ぐことができる。
(12)実施例1及び2の食品減圧乾燥装置を用いて魚肉を減圧乾燥する工程において、マグネトロン4−1〜4−12が発振するパルス状マイクロ波は、発振出力20〜500W、パルス幅50〜200ミリ秒、デューティー比0.2〜0.8であったが、パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の設定は、マイクロ波発振器の最大出力並びに減圧乾燥するものの量、大きさ及び種類によって異なるので、それらの条件に合わせて、発振出力については10〜6000W、パルス幅については1〜100ミリ秒、デューティー比については0.1〜0.9から適宜選択する。
(13)実施例1の食品減圧乾燥装置を用いて魚肉を減圧乾燥する工程においては、減圧乾燥された魚肉を真空パックしたが、この方法による減圧乾燥を行うことで、食品の賞味期限を延ばすことができるので、真空パックの工程は必須ではない。
1 金属製減圧容器 2 トレイ 3 開閉蓋
4−1〜4−12 マグネトロン 5 真空ポンプ 6 排出管
7 真空バルブ 8 窒素ボンベ 9 リークバルブ
10 開閉コック 11 ガス供給管 12 流量計 13 圧力センサー
14 温度センサー 15 導波管 16−1、16−2 L字状のレール
17 凝縮器 18 凝縮液排出バルブ 19 接続管
20 冷媒送出管 21 冷媒吸入管 22 冷却機 23 出入口
24 コントロールボックス 25 冷凍機 26 作業台 27 扉

Claims (4)

  1. 以下の工程からなることを特徴とする、食品を減圧乾燥する方法。
    (1)被乾燥食品を濃度4〜30重量%の食塩水に1〜60分浸漬する。
    (2)前記被乾燥食品をマイクロ波発振機、導波管及び減圧装置が設置されている減圧容器の内部に収容し、前記減圧容器を密閉する。
    (3)前記減圧装置により、前記減圧容器の内圧を100〜5000Paに減圧するとともに、前記マイクロ波発振機が発振する、発振出力10〜6000W、パルス幅1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9のパルス状マイクロ波を、前記導波管により前記減圧容器の内部に伝播し、前記被乾燥食品に照射する。
    (4)前記パルス状マイクロ波の照射を停止する。
    (5)前記減圧容器の密閉を解除し、前記被乾燥食品を取り出す。
  2. 前記パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の少なくともひとつについて、時系列に変化させて前記被乾燥食品に照射することを特徴とする
    請求項1記載の食品を減圧乾燥する方法。
  3. 密閉可能な減圧容器と、
    被乾燥食品を保持し前記減圧容器の内部に収容される保持体と、
    パルス状マイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、
    該減圧容器の内部に前記パルス状マイクロ波を伝播する導波管と、
    前記減圧容器の内部を密閉した状態で減圧する減圧装置と、
    前記マイクロ波発振機が発振する前記パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比を、それぞれ10〜6000W、1〜100ミリ秒、デューティー比0.1〜0.9の範囲で制御するマイクロ波制御装置を備えることを特徴とする
    食品減圧乾燥装置。
  4. 前記マイクロ波制御装置が、前記パルス状マイクロ波の発振出力、パルス幅及びデューティー比の少なくともひとつについて、時系列の変化を制御するプログラム手段を備えることを特徴とする
    請求項3記載の食品減圧乾燥装置。
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