以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る回転機Xは、例えば図示しない航空機の電動のエンジンスタータと発電機を兼ねたスタータジェネレータとして適用可能なものである。
回転機Xは、図4乃至図6(図4は回転機Xの全体斜視図であり、図5は図4のf方向矢視図、図6は図4のg方向矢視図、図7は図4のh方向矢視図である)に示すように、ステータ1と、ステータ1と同軸上に配置され且つステータ1との間に磁気ギャップを形成するロータ2と、ロータ2をステータ1に対して回転可能に支持するロータ支持部3とを備えたものである。本実施形態に係る回転機Xは、ロータ2をステータ1よりも回転軸の径方向内側に配置したインナー可動型の回転機Xである。
本実施形態では、ロータ支持部として、ロータ2の回転軸そのものとして機能するシャフト3を適用している。すなわち、シャフト3及びロータ2は一体回転可能に構成されている。
ステータ1は、ステータコア11(本発明のステータ鉄心に相当)と、ステータコア11からロータ2側に向かって突出し且つ周方向Aに等ピッチで配列された複数のステータティース12(本発明のステータ極に相当)と、各ステータティース12に巻回されたステータ巻線13と、ステータコア11に連続する位置に設けた単一のメイン永久磁石14と、ステータコア11のうちメイン永久磁石14と対向する位置に巻回して設けた単一のメイン界磁巻線15とを有するものである。
ステータコア11は、シャフト3の軸方向に直交する断面形状がリング状をなす磁性体である。本実施形態では、周方向Aに6分割した単位ステータコア11aを適宜の手段で一体的に接合したステータコア11を適用しているが、周方向Aに分割していないステータコアであっても勿論構わない。ステータコア11の一部には、メイン永久磁石14を配置する空洞部11sを形成している。この空洞部11sは、図5に示すように、ステータコア11を厚み方向に所定領域分だけ窪ませたものであってもよいし、ステータコア11を厚み方向(シャフト3の径方向)に貫通するもの(図示省略)であってもよい。また、本実施形態では、シャフト3の軸方向に直交する断面形状が略円筒形状をなすステータコア11を適用しているが、四角筒形状などの多角筒形状(角部は部分円筒状であってもよい)のステータコアであってもよい。
ステータティース12は、ステータコア11の内向き面からロータ2側(シャフト3の径方向内側)に向かって突出するものである。本実施形態の回転機Xは、ステータコア11の内向き面において等角ピッチとなる箇所から突出する計6n(nはゼロを除く正の整数であり、本実施形態であればnは1である)本のステータティース12を有し、各ステータティース12にステータ巻線13を巻回している。
そして、本実施形態の回転機Xは、ステータコア11の空洞部11sにメイン永久磁石14を配置している。本実施形態では、ステータコア11の外向き面と、メイン永久磁石14の外向き面が大きな段差なく略面一となるように設定している。このメイン永久磁石14は、ステータコア11の周方向Aに磁性を持たせたものである。図5乃至図7では、同図におけるステータコア11の周方向A左側の面をN極、ステータコア11の周方向A右側の面をS極に着磁したメイン永久磁石14をステータコア11の一部に配置した構成を例示している。本実施形態のメイン永久磁石14は、S極及びN極をそれぞれステータコア11の端面(空洞部11sの開口縁)と隙間無く密着させた状態で配置されている。
メイン界磁巻線15は、ステータコア11のうちメイン永久磁石14と対向する位置に巻回したものである。本実施形態に係る回転機Xでは、このメイン界磁巻線15に対して、図8に示すように、直流電流を流すように設定し、メイン界磁巻線15に直流電流を流すことで、メイン永久磁石14の磁束と反対方向の磁束が生じるように設定している。このメイン界磁巻線15には、ロータ2の回転位置に関係なく直流を流すため、基本的にはスイッチSのONとOFFのタイミングを切り替える制御(微少時間でON・OFFを繰り返し、単位時間あたりにおけるONの時間を調整する制御も含む)になり、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御を採用することができる。
本実施形態におけるステータ1は、ステータコア11のうちロータ2に対向する面(本実施形態では内向き面)において周方向Aに等角ピッチで6n(nはゼロを除く正の整数であり、本実施形態であればnは1)本のステータティース12を有するものである。何れのステータティース12も、ステータコア11のうちメイン永久磁石14を配置した箇所及びメイン界磁巻線15を巻回した箇所と一致しないように設定している。本実施形態では、リング状のステータコア11に連続するようにメイン永久磁石14を配置し、このメイン永久磁石14に対向する位置にメイン界磁巻線15を配置しており、ステータコア11のうち、メイン永久磁石14を配置した箇所とメイン界磁巻線15を巻回した箇所の間、すなわちステータコア11を周方向に略2等分した各領域(ステータコア11を周方向Aに略半分にした領域であり、以下では「半周領域」と称する場合がある)に、ステータティース12の総数(6n)の半分(つまり6nを2で割った本数)のステータティース12を周方向Aに等角ピッチで設けている。nが1である本実施形態では、ステータ1の各半周領域に3本のステータティース12をそれぞれ設けている。
また、本実施形態の回転機Xでは、回転軸3の軸心を通る直線上で対向するステータティース12にそれぞれ巻回して設けたステータ巻線13同士を同相に設定し、周方向Aに並ぶ各ステータ巻線13をU、V、Wの三相に分けている。図4以降の各図において符号「13」に続く括弧内のローマ字表記U、V、Wは、各ステータ巻線13の相を示している。
そして、本実施形態の回転機Xでは、図9に示すように、同相のステータ巻線13同士を直列で接続し、三相各相のステータ巻線13同士を中性点Nで一括して接続する結線(いわゆるY結線またはスター結線と称される結線)を採用し、各相のステータ巻線13に120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁(通電)可能に構成している。これらステータ巻線13には、ロータ2の位置(回転角度)に応じて交流電流を流す必要がある。本実施形態では、回転センサによってロータの位置(シャフト3の回転角度)を検出し、図10に示すように、ロータ2の位置(シャフト3の回転角度)を示す回転信号に基づいて励磁用インバータIから各相のステータ巻線13に交流電流を励磁するように構成している。なお、インダクタンスの変化などによってロータ2の位置を検出可能(センサレス)に構成してもよい。
そして、図11に示すように、2段に配置したスイッチSを各相のステータ巻線13に接続し、これらスイッチSをON・OFFに切り替えるタイミングに応じて各相のステータ巻線13に交流電流が流れるタイミングを制御することができる。図11では、整流回路部を省略している。本実施形態では、図10に示すように、共通の励磁用インバータIからメイン界磁巻線15に流す界磁電流(直流)と、ステータ巻線13に流す励磁電流(交流)を供給するように構成している。この励磁用インバータIには、外部電源又はコンバータが接続されている。
ロータ2は、図4乃至図7に示すように、リング状のロータコア21(本発明のロータ鉄心に相当)と、ロータコア21からステータ1側(シャフト3の径方向外側)に向かって突出するロータティース22(本発明のロータ極に相当)とを有する磁性体である。本実施形態のロータ2は、ロータコア21及びロータティース22を一体に形成している。なお、本実施形態では、周方向Aに複数に分割(例えば4分割など)した単位ロータコアを適宜の手段で一体的に接合したロータコア21を適用しているが、周方向Aに分割していないロータコアであってもよい。また、ロータコア21の中心部に形成したシャフト挿通孔に挿通したシャフト3はロータ2と一体回転可能である。
図4等に示す本実施形態の回転機Xは、円筒状をなすロータコア21のうち、ステータ1に対向する面(本実施形態では外向き面(外周面))から2m(mはゼロ及び3の倍数を除く正の整数であり、本実施形態であればmは2)本のロータティース22を放射状に突出させたものである。ここで、本実施形態の回転機Xでは、リング状をなすステータコア11の内向き面に等角ピッチで設けたステータティース12と、リング状をなすロータコア21の外向き面に等角ピッチで設けたロータティース22との数を相互に異ならせている。本実施形態では、上述したように、ステータティース12の本数を6に設定し、ロータティース22の本数を4に設定している。
そして、本実施形態の回転機Xは、ステータ1とロータ2の間、より具体的にはステータティース12とロータティース22の間に、回転軸の周方向Aに周回する磁気ギャップを形成している。本実施形態では、各ステータティース12の内向き面(突出端面)をシャフト3の軸中心を中心とする同一円弧上に一致する部分円弧面に設定するとともに、各ロータティース22の外向き面(突出端面)を各ステータティース12の内向き面と同心円であって各ステータティース12の内向き面よりも径を僅かに小さく設定した円弧上に一致する部分円弧面に設定している。
次に、このような構成を有する本実施形態に係る回転機Xの動作及び作用について説明する。
本実施形態の回転機Xにおいて、ステータコア11に設けたメイン界磁巻線15に直流電流が流れていない場合(界磁巻線無励磁状態)、メイン永久磁石14の磁束(以下では「メイン磁石磁束」と称する場合がある)は、図12(同図は、界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束の流れを図5に対応させて模式的に示したものである)ににおいて相対的に太い実線の矢印でその流れを示すように、例えばメイン永久磁石14のうちN極に着磁された面(N極着磁面)を始点として捉えると、このメイン永久磁石14のN極着磁面、ステータコア11を流れて、メイン永久磁石14のS極着磁面に至る。すなわち、磁束の経路(磁路)は、常に全体の磁気抵抗が最も小さくなる磁路が必然的に選ばれるため、界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束は、ロータ2とステータ1の磁気ギャップを避けて流れることになる。したがって、界磁巻線無励磁状態ではメイン永久磁石14の磁束はステータコア11を経由して戻る短絡磁束になる。この界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束を以下では「無励磁状態メイン磁石磁束」と称す。このように、界磁巻線無励磁状態では、メイン磁石磁束はステータ1内におさまり、磁気ギャップに漏れず、ロータ2に流れない。したがって、誘起電圧が発生せず、安全な状態であるといえる。なお、メイン永久磁石14の磁束量は常に一定である。
一方、本実施形態の回転機Xにおいて、ステータ巻線13に電流を流さずに、メイン界磁巻線15にのみ所定方向の直流電流を流した場合(界磁巻線励磁状態)、具体的には、図13(同図は、界磁巻線励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束及びメイン界磁巻線15の磁束の流れを図5に対応させて模式的に示したものである)に示すように、メイン磁石磁束の向きと反対になる方向の直流電流をメイン界磁巻線15に流した場合、メイン磁石磁束(同図において相対的に太い実線の矢印で示す方向に流れる磁束)は、ステータコア11内においてメイン界磁巻線15の磁束(同図において点線の矢印で示す方向に流れる磁束)とぶつかり、メイン界磁巻線15の磁束が抵抗となってメイン界磁巻線15の磁束よりも抵抗の小さいロータ2とステータ1の磁気ギャップを通過し、ロータティース22、ロータコア21、他のロータティース22、このロータティース22とステータティース12の磁気ギャップ、ステータティース12、ステータコア11を流れてメイン永久磁石14に戻る磁束となる。そして、メイン界磁巻線15に流す直流電流を大きくすればするほど、メイン界磁巻線15の磁束量を増量させることができ、ステータコア11のうちメイン界磁巻線15を配置した領域及びその近傍領域が磁気飽和に近い状態になり、これらの領域にメイン磁石磁束は流れ難くなり、その分だけ磁気ギャップを通過してロータ2に流れるメイン磁石磁束の量が多くなる。つまり、メイン界磁巻線15に流す直流電流を大きくすれば、メイン界磁巻線15の磁束及びステータ1内で短絡していたメイン磁石磁束が何れもステータ1内を周回するように流れることができなくなり、界磁磁束として磁気ギャップに流れる。この磁気ギャップに流れる界磁磁束の大きさは、界磁電流(メイン界磁巻線15に流す直流電流)の大きさに比例する。
そして、本実施形態の回転機Xは、所定値以上の電流(大電流)をメイン界磁巻線15に流した場合(界磁巻線励磁状態)に、ステータコア11のうちメイン界磁巻線15を配置した領域及びその近傍領域が磁気飽和になり、これらの領域にメイン磁石磁束は流れず、全部または略全部のメイン磁石磁束が磁気ギャップに漏れて、ロータ2に流れるメイン磁石磁束の量が多くなる。
また、界磁巻線励磁状態においてメイン界磁巻線15の磁束は、図13に示すように、ステータコア11内においてメイン永久磁石14の磁束とぶつかり、ステータコア11のうちメイン界磁巻線15を配置した箇所からメイン永久磁石14を配置した部分に到達することなく、ステータ1内においてメイン永久磁石14の磁束とぶつかる箇所よりもメイン界磁巻線15を配置した箇所に近い位置に存在するステータティース12を通り、そのステータティース12と対向し得るロータティース22との磁気ギャップを通過し、ロータ極22、ロータコア21、他のロータティース22、このロータティース22と対向し得るステータティース12との磁気ギャップ、ステータティース12、ステータコア11をこの順で流れてメイン界磁巻線15の配置箇所に到達する。したがって、メイン界磁巻線15に流す電流量の増大に伴って、ロータ2を通過する総磁束量(メイン磁石磁束とメイン界磁巻線15の磁束の総和)も増大する。
ここで、界磁巻線励磁状態において各ステータティース12を流れる磁束に着目すると、図13に示すように、メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束がぶつかる箇所に近い位置にあるステータティース12には、メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束の両方が通過する。本実施形態では、ステータコア11を周方向Aに2分割したそれぞれの領域(半周領域)に等ピッチで3本のステータティース12を設け、各半周領域において1本のステータティース12の配置箇所が、半周領域の中間部分と一致するように設定している。ステータコア11の各半周領域における中間部分は、メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束がぶつかる箇所でもある。したがって、界磁巻線励磁状態では、ステータコア11の各半周領域における中間部分からロータ2に向かって突出するステータティース12に、メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束が通過する。本実施形態では、メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束が通過するステータティース12、つまり、ステータコア11の各半周領域における中間部分からロータ2に向かって突出し、相互に対向する一対のステータティース12に巻回したステータ巻線13をV相に設定している。
また、ステータコア11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン永久磁石14の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12には、界磁巻線励磁状態においてメイン界磁巻線15の磁束はほとんど流れず、主にメイン永久磁石14の磁束が通過する。一方、ステータコア11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン界磁巻線15の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12には、界磁巻線励磁状態においてメイン永久磁石14の磁束はほとんど流れず、主にメイン界磁巻線15の磁束が通過する。そして、一方の半周領域においてその中間部分よりもメイン永久磁石14の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12と、このステータティース12にロータを介して対向するステータティース12(他方の半周領域においてその中間部分よりもメイン界磁巻線15の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12)にそれぞれ巻回したステータ巻線をW相に設定するとともに、一方の半周領域においてその中間部分よりもメイン界磁巻線15の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12と、このステータティース12にロータ2を介して対向するステータティース12(他方の半周領域においてその中間部分よりもメイン永久磁石14の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12)にそれぞれ巻回したステータ巻線13をU相に設定している。
このように、本実施形態に係る回転機Xは、メイン界磁巻線15に所定方向の電流を流していない状態(界磁巻線無励磁状態)ではロータ2に流れない状態または流れ難い状態にあって短絡しているメイン永久磁石14の磁束を、メイン界磁巻線15に所定方向の電流を流すこと(界磁巻線無励磁状態)でメイン界磁巻線15の磁束に誘導されて磁気ギャップを通過してロータ2に流れる磁束に変化させることができ、メイン界磁巻線15に流す電流量の大きさにより、磁気ギャップを通過する磁束量(界磁磁束量)を調整する「界磁調整」を行うことができる。ここで、界磁調整時に磁気ギャップを通過する磁束量は、メイン界磁巻線15に流す電流の大きさに比例する。メイン界磁巻線15に流す電流の大きさは、例えばメイン界磁巻線15に直列接続しているスイッチSの単位時間あたりにおけるON/OFFの時間を長さによって調整することができる。この界磁調整時には、ステータ1の各ステータ巻線13に電流を流していない。
そして、本実施形態に係る回転機Xは、界磁巻線励磁状態にして界磁調整することで誘起電圧が生じ、対向するステータティース12にそれぞれ巻回したステータ巻線13同士を同相に設定し、U、V、Wの三相に分けたステータ巻線13に、界磁調整が済んだ後に引き続いて図14に示すように、各相のステータ巻線13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁することによって、メイン永久磁石14の磁束及びメイン界磁巻線15の磁束が、ステータ巻線13に鎖交する界磁磁束として作用し、ロータ2を回転させるトルクが生じるように構成している。図14では、同図右下に示す適宜のタイミングTの時点(適宜の電気角)における磁束の流れを相対的に太い矢印で示し、ロータ2の回転方向を相対的に細い実線の矢印tで示している。同図のタイミングTでは、W相のステータ巻線13に流れる電流I(A)及びW相のステータ巻線13の鎖交磁束数φを基準値とすると、U相のステータ巻線13及びV相のステータ巻線13に流れる電流I(A)及び鎖交磁束数φはそれぞれ基準値の二分の一(I/2(A),φ/2)になる。
ここで、図15に、界磁調整に引き続いて本実施形態に係る回転機Xのロータ2を回転させてモータ(または発電機)として駆動している場合(ロータ回転駆動時)のメイン界磁巻線15及び各相のステータ巻線13に流す電流の流れを模式的に示す。同図に示すように、ロータ2が回転力を得ている状態では、メイン界磁巻線15に界磁電流(同図において実線の矢印で示す直流)を流した状態において、各相のステータ巻線13にそれぞれ励磁電流(交流)を流すと、U相のステータ巻線13(U)及びW相のステータ巻線13(W)を流れた電流(同図において二点鎖線の矢印、点線の矢印で示す)は中性点Nを経由してV相のステータ巻線13(V)を流れる電流(同図において一点鎖線の矢印で示す)に集約され、直流電源へ回生される。この場合、スイッチSと並列に接続されている環流ダイオードDを経由して直流電源へ回生されている。このような制御は、例えばPWM制御やPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御で実現できる。
このように、本実施形態に係る回転機Xにおいて、メイン磁石磁束及びメイン界磁巻線15の磁束が磁気ギャップを通過してロータ2に流れる界磁巻線励磁状態(界磁調整した状態)で、さらに各ステータ巻線13にも各相のステータ巻線13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁する(通電)ことによって、ロータ2を回転させるトルクが生じ、ロータ2を回転させることができ、要求される回転数(出力)やトルクに応じてメイン界磁巻線15に流す電流量(界磁電力)を調節することで、ロータ2を流れる総磁束量(メイン永久磁石14の磁束とメイン界磁巻線15の磁束の総和である磁束量)を増減することができる。
このような回転機Xを航空機のスタータジェネレータとして適用した場合、始動時を含む低速域では、ステータ1のコイル(ステータ巻線13)に通電するとともに、メイン界磁巻線15に所定方向の直流電流を流して界磁巻線無励磁状態から界磁巻線励磁状態に切り替えることで励磁されたロータ2が回転駆動する。
本実施形態に係る回転機Xは、大トルクが要求される低速域において、メイン界磁巻線15に流す電流量を上げる(界磁電力を大きくする)ことによって、その界磁電力に応じた大きいメイン界磁巻線15の磁束と、このメイン界磁巻線15の磁束に誘導されるメイン永久磁石14の磁束をロータ2に通過させることができ、ロータ2を流れてステータ巻線13に鎖交する界磁の磁束量を増大させる(界磁磁束密度を高める)ことができる。したがって、例えばステータ巻線13に流す電流を大きくすることに依らずとも、メイン界磁巻線15に所定方向の電流を流す界磁制御を行うことで大トルクを得ることができ、界磁制御を行わない場合に比べて誘起電圧を高くすることができる。
また、本実施形態の回転機Xは、中速域において、界磁巻線励磁状態で運転しつつ、低速域時よりも界磁電力を少なくすることで誘起電圧を一定に保ち、トルクを必要としない領域に到達した時点で界磁電力をさらに少なくすることでロータ2を通過してステータ巻線13に鎖交する磁束量(界磁磁束量)を低速域よりも減少させて、ロータ2における磁束密度を抑えることができる。そして、本実施形態の回転機Xでは、ロータ2の磁束密度を抑えることによって、鉄損を低減することができる。
また、本実施形態に係る回転機Xは、高速域では、界磁電力をゼロに近付けることで、リラクタンストルクのみで回転させることができる。すなわち、界磁電力をゼロに近付けることによって、メイン界磁巻線15の磁束量がゼロに近付き、ロータ2を通過してステータ巻線13に鎖交する磁束量が中速域よりも減少し、ロータ2における磁束密度をさらに抑えることができる。また、界磁電力をゼロに近付けることで低速域や中速域と比較してメイン界磁巻線15の銅損も減少するとともに、高速域では磁束密度の低減に伴って鉄損を低減できることから、本実施形態に係る回転機Xでは、高速回転領域で誘起電圧が低い(磁束密度が低い)ため、鉄損を低減することができる。
このような構成をなす本実施形態の回転機Xは、界磁巻線無励磁状態においてメイン永久磁石14の磁束がロータ2を通過しない又は殆ど通過しないように構成しているため、ロータ2を経由してステータ巻線13に鎖交する磁束をゼロまたは略ゼロにすることができ、コギングトルクをゼロまたは略ゼロにすることが可能である。また、この界磁巻線無励磁状態では誘起電圧が発生せず、安全な状態を確保することができ、制御機器(電源、インバータIなど)が停止したときには自ずと誘起電圧が発生しない状態を確保することができ、制御機器の破損防止に役立つ。また、本実施形態の回転機Xでは、メイン界磁巻線15に一方向の電流を流した場合に、メイン界磁巻線15の磁束と共にメイン永久磁石14の磁束が、磁気ギャップ及びロータ2内を通過してステータ巻線13に鎖交する状態となり、誘起電圧を発生させてロータ2を回転させることができ、要求される回転数(出力)やトルクに応じてメイン界磁巻線15に流す電流量を調節することで、ロータ2を経由してステータ巻線13に鎖交する磁束量を増減することができる。この際、メイン永久磁石14の界磁を弱める弱め界磁は不要であるため、メイン永久磁石14の減磁現象を防止することができる。そして、本実施形態に係る回転機Xは、弱め界磁制御実行時に生じ得る界磁銅損の発生を防止・抑制することができ、弱め界磁制御と強め界磁制御を選択して行う態様と比較して、メイン界磁巻線15に流す電流方向は一定方向のみであるため、メイン界磁巻線15に流す電流方向を切り替える処理が不要であり、高速域において、弱め界磁制御であれば必要な「トルクに寄与しないステータ電力」が不要となり、ステータ銅損を低減させることができる。
このように、本実施形態の回転機Xであれば、メイン界磁巻線15の起磁力がゼロの場合にはロータ2を通過しないメイン永久磁石14の磁束を、メイン界磁巻線15に電流を流すことでメイン界磁巻線15の磁束に重畳させて、ロータ2を通過してステータ巻線13に鎖交する磁束(界磁磁束)に変えることが可能であり、界磁調整をした状態で各ステータ巻線13に励磁電流を流すことによって得られるトルクによりロータ2を回転させ、ロータ2が回転力を得ている状態でメイン界磁巻線15に流す電流量を調整することで、メイン永久磁石14の大幅な増量を回避しつつ、低速・高トルクの状態から高速・低トルクの状態に亘る広範な運転領域に対応する何れの回転領域でも高い効率を実現できる。
しかも、本実施形態に係る回転機Xは、ステータティース12の数を6n(nはゼロを除く正の整数)に設定するとともに、ロータティース22の数を2m(mはゼロ及び3の倍数を除く正の整数)に設定し、各ステータティース12に巻回したステータ巻線13をU、V、Wの三相に分けて、各相のステータ巻線13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁するように構成して、上述した作用効果を奏する三相同期回転機として機能する。したがって、例えば単相同期回転機をシャフトの軸方向に複数配置し、且つ各単相同期回転機の位相をシャフトの周方向にずらすことで全体として三相同期回転機として機能させる構成と比較して、小型化及び部品点数の削減を図ることが可能な三相同期回転機Xを実現できる。
また、本実施形態の回転機Xは、ロータ2にメイン永久磁石14を付帯させる構成ではないため、ロータ2の高速回転中にメイン永久磁石14が飛散する事態を回避することができる。さらにまた、本実施形態の回転機Xは、ロータ2にメイン永久磁石14を付帯させた構成であればメイン永久磁石14の飛散を防止するために設ける飛散防止部材が不要であり、この点において、部品点数の削減と、飛散防止部材の存在による磁気ギャップの拡大化防止を実現することができる。
特に、本実施形態の回転機Xは、ロータ2を磁性体材料のみから形成することが可能である点においても有利である。
加えて、本実施形態の回転機Xは、ステータ1に付帯させたメイン界磁巻線15に電流を流さない状態でメイン永久磁石14の磁束はステータ1内に留まるため、回転機Xの組立工程のうち、ステータ1の内部空間にロータ2及びシャフト3を組み付けたユニットを挿入する工程では、メイン界磁巻線15に電流を流さないことによって、メイン永久磁石14がロータ2に不意に吸引される事態を防止することができ、スムーズ且つ適切に挿入作業を行うことができる。
さらに、本実施形態の回転機Xでは、ステータ極12とロータ極22の数を異ならせているため、正弦波励磁が利用可能であり、汎用のインバータを利用することができる。また、本実施形態の回転機Xでは、正弦波励磁が利用可能であることから、ステータ極12とロータ極22の数が同数の場合に使用するパルス電源で駆動することができ、実用性及び汎用性に富む。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、図16乃至図19(図16は本変形例(第2実施形態)に係る回転機Xの全体斜視図であり、図17は図16のf方向矢視図、図18は図16のg方向矢視図、図19は図16のh方向矢視図である)に示すように、メイン永久磁石14と同一方向に磁性を持たせた磁束可変部材16をステータコア11と連続するように配置したステータ1を備えた回転機Xにすることができる。磁束可変部材16は、1つだけであってもよいし、複数であってもよい。図16乃至図19に示す回転機Xは、周方向に複数に分割した単位ステータコア11aの組み合わせによってステータコア11を構成し、磁束可変部材16を単位ステータコア11aに連続する位置に配置している。なお、図16乃至図19では、上述の実施形態に対応する部分や箇所には同じ符号を付している。
以下では、この変形例に係る回転機Xを第2実施形態に係る回転機Xとし、上述の回転機Xを第1実施形態に係る回転機Xとして説明する。
第2実施形態に係る回転機Xにおいて、図16等に示すように、複数の磁束可変部材16を備えた回転機Xを構成する場合には、各磁束可変部材16を、ステータ1のうち周方向に隣り合うステータティース12同士の間であって且つステータコア11に連続する位置に配置している。各磁束可変部材16は、メイン永久磁石14と同様に、ロータ2の回転軸の軸方向に沿って延伸(延在)するものである。そして、メイン界磁巻線15に電流を流していない状態(界磁巻線無励磁状態)において、各磁束可変部材16の磁束が、図20(同図は、界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束の流れを図17に対応させて模式的に示したものである)において相対的に太い実線の矢印でその流れを示すように、メイン永久磁石14の磁束とともにステータコア11内を同一方向に周回する短絡磁束となるように設定する。すなわち、磁束可変部材16の磁束は、メイン永久磁石14の磁束に支障を来すことのなく、メイン永久磁石14の磁束の流れと同じ流れとなる。ここで、磁束可変部材16は、磁性体を用いて構成することができ、本実施形態では、ヨークを用いて構成構成している。
なお、図16等に示す回転機Xは、ロータ2として、周方向Aに2本のロータティース22を等角ピッチで設けたものを採用している。これら2本のロータティース22が、6本のステータティース12のうち少なくとも4本のステータティース12に磁気ギャップを介して対面し得るように、各ロータティース22の周方向Aの寸法を設定している。
そして、このような回転機Xにおいて、メイン界磁巻線15に所定値以上の電流(大電流)を流した場合(界磁巻線励磁状態)に、ステータコア11のうちメイン界磁巻線15を配置した領域及びその近傍領域が磁気飽和になる。その結果、メイン磁石磁束及び磁束可変部材16の磁束は、図21(同図は、界磁巻線励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束の流れ(相対的に太い実線の矢印)及びメイン界磁巻線15の磁束の流れ(点線の矢印)を図17に対応させて模式的に示したものである)に示すように、ステータコア11のうちメイン界磁巻線15を配置した領域及びその近傍領域を流れず、全部または略全部のメイン磁石磁束及び磁束可変部材16の磁束が磁気ギャップに漏れて、ロータ2に流れるメイン磁石磁束及びサブ磁束磁束の量が多くなる。
また、界磁巻線励磁状態においてメイン界磁巻線15の磁束は、ステータコア11内においてメイン磁石磁束とぶつかり、ステータコア11のうちメイン永久磁石14を配置した部分に到達することなく、ステータ1内においてメイン磁石磁束とぶつかる箇所よりもメイン界磁巻線15を配置した箇所に近い位置に存在するステータティース12を通り、そのステータティース12と対向し得るロータ2の部分(ロータティース22又はロータコア21)との磁気ギャップを通過し、ロータ2内を流れて、ステータティース12から通過してきた部分とは異なるロータ2の部分(他のロータティース22又はロータコア21の他の部分)から、このロータ2の部分(他のロータティース22又はロータコア21の他の部分)と対向し得るステータティース12との磁気ギャップ、ステータティース12、ステータコア11をこの順で流れてメイン界磁巻線15の配置箇所に到達する。したがって、メイン界磁巻線15に流す電流量の増大に伴って、ロータ2を通過する総磁束量(メイン磁石磁束と磁束可変部材16の磁束とメイン界磁巻線15の磁束の総和)も増大する。
ここで、界磁巻線励磁状態において各ステータティース12を流れる磁束に着目すると、図21に示すように、ステータコア11の各半周領域における中間部分からロータ2に向かって突出するステータティース12に、メイン磁石磁束と磁束可変部材16の磁束、及びメイン界磁巻線15の磁束が通過し、ステータコア11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン永久磁石14の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12には、メイン界磁巻線15の磁束はほとんど流れず、主にメイン磁石磁束及び磁束可変部材16の磁束が通過し、ステータコア11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン界磁巻線15の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12には、メイン磁石磁束及び磁束可変部材16の磁束はほとんど流れず、主にメイン界磁巻線15の磁束が通過する。
このように、第2実施形態に係る回転機Xは、メイン界磁巻線15に所定方向の電流を流していない状態(界磁巻線無励磁状態)ではロータ2に流れない状態または流れ難い状態にあって短絡しているメイン永久磁石14の磁束及び磁束可変部材16の磁束を、メイン界磁巻線15に所定方向の電流を流すこと(界磁巻線無励磁状態)でメイン界磁巻線15の磁束に誘導されて磁気ギャップを通過してロータ2に流れる磁束に変化させることができ、メイン界磁巻線15に流す電流量の大きさにより、磁気ギャップを通過する界磁磁束量を調整することができる。ここで、界磁調整時に磁気ギャップを通過する磁束量は、メイン界磁巻線15に流す電流の大きさに比例する。メイン界磁巻線15に流す電流の大きさは、例えばメイン界磁巻線15に直列接続しているスイッチSの単位時間あたりにおけるON/OFFの時間を長さによって調整することができる。この界磁調整時には、ステータ1の各ステータ巻線13に電流を流していない。
この第2実施形態に係る回転機Xは、界磁巻線励磁状態にして界磁調整することで誘起電圧が生じ、その状態でU、V、Wの三相に分けた各相のステータ巻線13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁することによって、図22に示すように、メイン永久磁石14の磁束、磁束可変部材16の磁束及びメイン界磁巻線15の磁束が、ステータ巻線13に鎖交する界磁磁束として作用し、ロータ2を回転させるトルクが生じるように構成している。図22では、同図右下に示す適宜のタイミングTの時点(適宜の電気角)における磁束の流れを相対的に太い矢印で示し、ロータ2の回転方向を相対的に細い実線の矢印tで示している。同図のタイミングTでは、W相のステータ巻線13に流れる電流I(A)及びW相のステータ巻線13の鎖交磁束数φを基準値とすると、U相のステータ巻線13及びV相のステータ巻線13に流れる電流I(A)及び鎖交磁束数φはそれぞれ基準値の二分の一(I/2(A),φ/2)になる。
このように、第2実施形態に係る回転機Xであっても、第1実施形態に係る回転機Xに準じた構成により、メイン磁石磁束、磁束可変部材16の磁束及びメイン界磁巻線15の磁束が磁気ギャップに漏れてロータ2に流れるように界磁調整した状態(界磁巻線励磁状態)で、さらに各ステータ巻線13にも各相のステータ巻線13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁する(通電)ことによって、ロータ2を回転させるトルクが生じ、ロータ2を回転させることができ、要求される回転数(出力)やトルクに応じてメイン界磁巻線15に流す電流量(界磁電力)を調節することで、ロータ2を流れる総磁束量(メイン磁石磁束と磁束可変部材16の磁束とメイン界磁巻線15の磁束の総和である磁束量)を増減することができるという作用効果を得ることができる。また、第2実施形態に係る回転機Xは、第1実施形態に係る回転機Xが奏する種々の作用効果と同様の作用効果を奏する。
特に、第2実施形態に係る回転機Xでは、メイン永久磁石14と同一方向に磁性を持たせ且つメイン永久磁石14の磁束の流れに支障を来さない磁束可変部材16をステータコア11と連続するように配置したステータ1を適用することによって、第1実施形態の回転機Xと比較して、ロータ2の回転軸方向に沿った寸法の大型化及びロータ2の回転軸を中心とする径寸法の大型化を招来することなく、磁束可変部材16を配置していないステータ1を適用した回転機と比較して、界磁巻線励磁状態、界磁巻線無励磁状態、励磁巻線励磁状態、及び励磁巻線無励磁状態、これら何れの状態においても回転機内で流れる磁束量を増大させることができ、高効率化に資する。また、このような磁束可変部材16を配置したステータ1を適用した回転機Xでは、磁石体積の少ない回転機と比較して、メイン界磁巻線15に流す電流量当たりの出力比を大きくすることができ、メイン界磁巻線15に対して過度の電流を流すことによるモータ効率の低下という不具合を回避することができる。
また、第1実施形態に係る回転機Xの他の変形例として、図23乃至図27に示すように、ステータ1及びロータ2の組を複数組備え、各組相互の位相を周方向Aに一致させた状態で連結部材4を介して各組のステータ1同士を連結した回転機Xを挙げることができる。以下に、この変形例に係る回転機Xを(第3実施形態に係る回転機X)について説明する。
第3実施形態に係る回転機Xは、図23乃至図27(図23は本変形例に係る回転機Xの全体斜視図であり、図24は図23のf方向矢視図(図26、図27のP−P線方向から見た図)、図25は後述する第2組を構成するステータS1及びロータS2を図26、図27のQ−Q線方向から見た図、図26は図23のg方向矢視図、図27は図23のh方向矢視図である)に示すように、上述の第1実施形態に係るステータ1及びロータ2の構成に準じたステータ及びロータの組(図示では2組)を連結部材4によってロータ2の回転軸方向(シャフト3の長手方向)に連結したものである。以下では、回転機Xのうち、図23における紙面手前左側の組を第1組、同図における紙面奥方右側の組を第2組とし、第2組のステータS1及びロータS2を構成する部分にはそれぞれ頭文字に「S」を付して説明する。
各組のステータ1,S1は相互に同じ構成であるが、周方向Aに磁性を持たせた各メイン永久磁石14,S14の磁束の向きを軸方向正面(同図f方向)から見て相互に反対方向となるように設定している(図24、図25参照)。図23等に示す回転機Xでは、第1組のステータ1に設けたメイン永久磁石14の磁束が、図30(同図は、界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束の流れを図24に対応させて模式的に示したものである)において相対的に太い実線の矢印でその流れを示すように、メイン界磁巻線15の無励磁状態に軸方向正面(図23のf方向であって、図26、図27のP−P線方向)から見て時計回りにステータ1内を周回する短絡磁束となるように設定する一方で、第2組のステータS1に設けたメイン永久磁石S14の磁束が、図31(同図は、界磁巻線無励磁状態におけるメイン永久磁石14の磁束の流れを図25に対応させて模式的に示したものである)において相対的に太い実線の矢印でその流れを示すように、メイン界磁巻線S15の無励磁状態に図26、図27のQ−Q線方向から見て反時計回りにステータS1内を周回する短絡磁束となるように設定している。
そして、各組のメイン界磁巻線15,S15を無励磁状態から励磁状態に切り替えた場合に、各組のメイン永久磁石14,S14の磁束及びメイン界磁巻線15,S15の磁束が各組の磁性ギャップ及びロータ2,S2内を通過することによって誘起電圧が生じるように構成している。第3実施形態に係る回転機Xでは、各組のメイン界磁巻線15,S15に対して、図28に示すように、直流電流を流すように設定し、各メイン界磁巻線15,S15に直流電流を流すことで、各組におけるメイン永久磁石14,S14の磁束と反対方向の磁束が生じるように設定している。
第3実施形態の回転機Xでは、図29に示すように、同相のステータ巻線13,S13同士を直列で接続し、三相各相のステータ巻線13,S13同士を中性点Nで一括して接続する結線(いわゆるY結線またはスター結線と称される結線)を採用し、各相のステータ巻線13,S13に120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁(通電)可能に構成している。
また、第3実施形態の回転機Xは、各組のステータ2,S2同士を連結する連結部材4として永久磁石(以下、連結用永久磁石41,42と称す)を適用している。本実施形態では、外周面がステータコア11の外周面と一致する部分円弧状の連結用永久磁石41,42を2つ用いており、各連結用永久磁石41,42を、各組におけるステータコア11,S11のうちメイン永久磁石14,S14とメイン界磁巻線15,S15とによって仕切られる領域である半周領域にそれぞれ配置し、各組のステータコア11,S11同士が対向する方向に磁性を持たせた各連結用永久磁石41,42の磁束の流れが相互に逆向きとなるように設定している。具体的には、図26に示すように、各組のステータコア11に接触する面をS極又はN極に着磁した各連結用永久磁石41,42のうち、一方の連結用永久磁石41は、第1組のステータコア11に接触する面をS極に、第2組のステータコアS11に接触する面をN極に着磁したものであり、他方の連結用永久磁石42は、第1組のステータコア11に接触する面をN極に、第2組のステータコアS11に接触する面をS極に着磁したものである。なお、各連結用永久磁石41,42は、メイン永久磁石14,S14及びメイン界磁巻線15,S15に接触しないように配置されている。
また、各組のロータ2,S2を共通のシャフト3,S3にそれぞれ個別に一体回転可能に組み付けたものであってよいが、図23等に示す回転機Xでは、各組のロータ2,S2を相互に連続する共通のパーツとして構成し、これら共通のパーツをシャフト3,S3に一体回転可能に組み付けている。
このような第3実施形態に係る回転機Xでは、各組のメイン界磁巻線15,S15に電流を流していない状態において、各組のメイン永久磁石14,S14の磁束は、図30乃至図33において相対的に太い矢印でその流れを示すように、各組のステータコア11,S11内を周回する短絡磁束や、各メイン永久磁石14,S14が属するそれぞれの組のステータコア11,S11から一対の連結用永久磁石41,42のうち何れか一方の連結用永久磁石を通過し、他の組のステータコアを流れて、他方の連結用永久磁石を通過して各メイン永久磁石14,S14が属するステータコア11,S11に戻る短絡磁束となる。なお、図30及び図31では、連結用永久磁石41,42の磁界(連結用永久磁石41,42の磁束)の向きを各ステータコア11,S11内に模式的にしている。連結用永久磁石41,42の磁束は、図32に示すように、一対の連結用永久磁石41,42のうち何れか一方の連結用永久磁石(図示例では連結用永久磁石41)のうちN極に着磁された面(N極着磁面)を始点として捉えると、このN極着磁面から、このN極着磁面に接触している一方の組に属するステータ(図示例では第1組のステータ1)内を流れて、他方の連結用永久磁石(図示例では連結用永久磁石42)のS極着磁面に至り、その連結用永久磁石42のS極着磁面からN極着磁面を通過し、このN極着磁面に接触している他方の組に属するステータ(図示例では第2組のステータS1)内を流れて一方の連結用永久磁石(図示例では連結用永久磁石41)のS極着地面に戻る短絡磁束となる。
なお、第3実施形態の回転機Xは、図24及び図25等に示すように、各組のロータ2,S2として、周方向Aに2本のロータティース22,S22を等角ピッチで設けたものを採用している。これら各組における2本のロータティース22,S22が、各組における6本のステータティース12,S12のうち少なくとも4本のステータティース12,S12に磁気ギャップを介して対面し得るように、各ロータティース22,S22の周方向Aの寸法を設定している。
そして、このような回転機Xにおいて、各組のメイン界磁巻線15,S15に所定値以上の電流(大電流)を流した場合(界磁巻線励磁状態)に、各組のステータコア11,S11のうちメイン界磁巻線15,S15を配置した領域及びその近傍領域が磁気飽和になる。その結果、メイン磁石磁束は、図34乃至図37(これら各図は、界磁巻線励磁状態におけるメイン永久磁石14,S14の磁束の流れ(相対的に太い実線の矢印)及びメイン界磁巻線15,S15の磁束の流れ(点線の矢印)を図24乃至図27にそれぞれ対応させて模式的に示したものである)に示すように、ステータコア11,S11のうちメイン界磁巻線15,S15を配置した領域及びその近傍領域にメイン磁石磁束は流れず、全部または略全部のメイン磁石磁束が各組の磁気ギャップに漏れて、各組のロータ2,S2に流れるメイン磁石磁束の量が多くなる。
また、界磁巻線励磁状態において各組のメイン界磁巻線15,S15の磁束は、図34乃至図37に示すように、各組のステータ1,S1内においてメイン磁石磁束とぶつかり、各組のステータ1,S1のうちメイン永久磁石14,S14を配置した部分に到達することなく、各組のステータ1,S1内においてメイン磁石磁束とぶつかる箇所よりもメイン界磁巻線15,S15を配置した箇所に近い位置に存在するステータティース12,S12を通り、そのステータティース12,S12と対向し得るロータ2,S2の部分(ロータティース22,S22又はロータコア21,S21)との磁気ギャップを通過し、ロータ2,S2内を流れて、ステータティース12,S12から通過してきた部分とは異なるロータ2,S2の部分(他のロータティース22,S22又はロータコア21,S21の他の部分)から、このロータ2,S2の部分(他のロータティース22,S22又はロータコア21,S21の他の部分)と対向し得るステータティース12,S12との磁気ギャップ、ステータティース12,S12、ステータコア11,S11をこの順で流れて各組のステータ1,S1におけるメイン界磁巻線15,S15の配置箇所に到達する。したがって、各組のメイン界磁巻線15,S15に流す電流量の増大に伴って、各組のギャップに漏れてロータ2,S2を通過する総磁束量(メイン磁石磁束とメイン界磁巻線15,S15の磁束の総和)も増大する。
ここで、界磁巻線励磁状態において各組の各ステータティース12,S12を流れる磁束に着目すると、上述の第1実施形態に係る回転機Xと同様に、各組のステータコア11,S11の各半周領域における中間部分からロータ2,S2に向かって突出するステータティース12,S12に、メイン磁石磁束及びメイン界磁巻線15,S15の磁束が通過し、各組のステータコア11,S11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン永久磁石14,S14の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12,S12には、メイン界磁巻線15,S15の磁束はほとんど流れず、主にメイン磁石磁束が通過し、各組のステータコア11,S11の各半周領域においてその中間部分よりもメイン界磁巻線15,S15の配置箇所に近い箇所に設けたステータティース12,S12には、メイン磁石磁束はほとんど流れず、主にメイン界磁巻線15,S15の磁束が通過する(図34、図35参照)。
また、第3実施形態に係る回転機では、界磁巻線励磁状態において、連結用永久磁石41,42の磁束が、メイン磁石磁束及びメイン界磁磁束に誘導されて磁気ギャップに漏れて、各組のロータ2,S2に流れる。
この第3実施形態に係る回転機Xは、界磁巻線励磁状態にして界磁調整することで誘起電圧が生じ、この状態で、各組においてU、V、Wの三相に分けた各相のステータ巻線13,S13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁することによって、図38及び図39に示すように、各組におけるメイン永久磁石14,S14の磁束及びメイン界磁巻線15,S15の磁束が、ステータ巻線13,S13に鎖交する界磁磁束として作用し、各組のロータ2,S2を同一方向へ回転させるトルクが生じるように構成している。図38及び図39は、それぞれロータ回転駆動時における磁束の流れを、図24(図26のP−P線方向から見た状態)及び図25(図26のQ−Q線方向から見た状態)に対応させて示したものであり、各図の右下に示す適宜のタイミングTの時点(適宜の電気角)における磁束の流れを相対的に太い矢印で示し、ロータ2,S2の回転方向を相対的に細い実線の矢印tで示している。また、ロータ回転駆動時には、連結用永久磁石41,42の磁束も、界磁調整時と同様にメイン永久磁石14,S14の磁束及びメイン界磁巻線15,S15の磁束に誘導されて、磁気ギャップに漏れてロータ2,S2を通過する。このタイミングTでは、各組におけるU相のステータ巻線13,S13に流れる電流I(A)及びU相のステータ巻線13,S13の鎖交磁束数φを基準値とすると、各組におけるV相のステータ巻線13,S13及びW相のステータ巻線13,S13に流れる電流I(A)及び鎖交磁束数φはそれぞれ基準値の二分の一(I/2(A),φ/2)になる。
このように、第3実施形態に係る回転機Xであっても、第1実施形態に係る回転機Xに準じた構成により、界磁巻線励磁状態(界磁調整した状態)で、各相のステータ巻線13,S13単位で120度ずつ位相のずれた三相交流電流を励磁する(通電)ことによって、ロータ2,S2を回転させるトルクが生じ、ロータ2,S2を回転させることができ、要求される回転数(出力)やトルクに応じてメイン界磁巻線15,S15に流す電流量(界磁電力)を調節することで、ロータ2,S2を流れる総磁束量(メイン磁石磁束とメイン界磁巻線15,S15の磁束の総和である磁束量)を増減することができるなど、第1実施形態に係る回転機Xが奏する種々の作用効果と同様の作用効果を奏する。
特に、第3実施形態に係る回転機Xでは、ステータ1,S1とロータ2,S2の組を回転軸方向に連結部材4を介して複数連結しているため、第1実施形態に係る回転機Xと比較して、メイン界磁巻線15,S15単位に流す電流量が同じであってもより高い出力を得ることができる。しかも、連結用永久磁石41,42を用いて連結部材4を構成しているため、第1実施形態の回転機Xと比較して、ロータ2,S2の回転軸を中心とする径寸法の大型化を招来することなく回転機X全体に占める永久磁石の体積(永久磁石量)を増大させることができ、出力を発生させる際の磁気装荷と電気装荷のバランスが良好になり、高効率化に資する。また、このような磁石体積を増大させた回転機Xでは、磁石体積の少ない回転機と比較して、メイン界磁巻線15,S15に流す電流量当たりの出力比を大きくすることができ、メイン界磁巻線15,S15に対して過度の電流を流すことによるモータ効率の低下という不具合を回避することができる。
なお、第3実施形態の回転機Xにおける各組のステータ1,S1として、第2実施形態の回転機Xにおけるステータ1、つまり磁束可変部材を備えたステータを適用すれば、磁束量をさらに増大させることができ、より一層の省電力化及び高出力化を実現することが可能である。
また、第3実施形態の回転機Xにおける連結部材として、永久磁石以外の部材(磁性材料から形成された部材であるか否かを問わず)を適用してもよい。連結部材として非磁性材料からなる部材を適用した場合、各組のメイン永久磁石14,S14の磁束は、連結部材を通過することなく各組のステータ1,S1内に留まる。したがって、各組のメイン永久磁石14,S14の磁束が、メイン界磁巻線15,S15の無励磁状態において軸方向正面(図23に示すf方向)から見て同じ方向に各組のステータ1,S1内を周回する磁束となるように設定してもよい。
また、3組以上のステータとロータの組を連結部材を介して連結した回転機を構成することも可能である。
本発明の三相構造の回転機では、ステータ極(ステータティース)の数を6以外の6の倍数(例えば12、24等)に設定したステータや、ロータ極(ロータティース)の数を2、4以外の2の倍数であって3の倍数ではない数(例えば8、10、14、16等)に設定したロータを適用することができる。ステータ極やロータ極の数に応じて回転軸の周方向に隣り合うステータ極同士のピッチやロータ極同士のピッチは適宜変更することができる。
また、ステータ鉄心やロータ鉄心は、磁性を有する板状部材を積層して形成した積層体であってもよいし、全体として1つのブロックである塊状体であってもよい。
ステータ鉄心の外縁形状(径方向外向き面の形状)や内縁形状(径方向内向き面の形状)は、上述の実施形態で示した形状に限らず、四角形や、四角形以外の多角形状であってもよく、径方向外向き面の形状と径方向内向き面の形状が相互に異なるものであっても構わない。
また、回転軸の径方向においてロータをステータの内周側に配置したインナー可動型回転機に限らず、回転軸の径方向においてロータをステータの外周側に配置したアウター可動型回転機を構成することも可能である。
本発明における「ロータ支持部」として、インナー可動型の場合であれば、回転軸(シャフト)そのものや、シャフトを設けない構成においてロータのうち回転軸の軸方向両端部又は一方の端部を回転可能に保持する回転支持体を採用することができる。また、アウター可動型の場合であれば、ロータよりも回転軸の径方向外側に配置されるフレームを「ロータ支持部」として採用することができる。
また、本発明の回転機を、航空機のスタータジェネレータ(航空機)以外の用途、例示すれば、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等の車両用駆動モータ、或いはハイブリッド車や電気自動車などに搭載されるモータの負荷試験を行う試験装置の負荷装置や、VSCF(Variable Speed Constant Frequencyの略で可変速・定周波定電圧電源装置)、風力発電機、大型発電機、或いは建設機械向け旋回用電動機等、速度や出力変動が激しい各種負荷装置、発電機や電動機として用いることができる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。