以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1から図7は本発明の第1の実施の形態に係る回転電機を説明する図である。
図1に示すように、回転電機1は、通電により磁束を発生させるW相、V相、U相の三相の電機子コイル11を有するステータ10と、ステータ10で発生した磁束の通過により回転軸2を中心に回転するロータ20と、整流回路50(図3参照)とを備えている。
(ステータ)
ステータ10は、図示しないモータケースに固定されている。ステータ10は、高透磁率の磁性材料からなる環状のステータコア12を備えている。ステータコア12には、径方向の内方側に突出したステータティース13が周方向に沿って複数形成されている。
周方向に隣り合うステータティース13の間には、溝状の空間であるスロット14が形成されている。径方向とは、ロータ20の回転軸2が延伸する方向と直交する方向を示す。径方向の内方側とは、径方向においてロータ20の回転軸2に近い側を示す。径方向の外方側とは、径方向においてロータ20の回転軸2から遠い側を示す。周方向とは、ロータ20の回転軸2を中心とする円周方向を示す。なお、径方向は、回転軸2を中心として放射方向に示される。
ステータコア12の各スロット14には、ステータコア12の周方向に沿ってW相、V相、U相の三相の電機子コイル11がそれぞれ配置されている。W相、V相、U相の各電機子コイル11は、集中巻によりステータティース13に巻き回されている。
このように、ステータ10は、電機子コイル11が集中巻された複数のステータティース13を有している。ステータ10は、電機子コイル11に三相交流が供給されることで、周方向に回転する回転磁界を発生させる。ステータ10で発生した磁束(以下、この磁束を「主磁束」という)は、ロータ20に鎖交するようになっている。これにより、ステータ10は、ロータ20を回転させることができる。
ステータ10は、上述の通り、電機子コイル11がステータティース13に集中巻されている。このため、電機子コイル11に三相交流を供給した場合、ステータ10には、ロータ20の回転と同期して回転する回転磁界の他に、ロータ20の回転と非同期の高調波回転磁界が発生する。この高調波回転磁界には、静止座標系における第2次空間高調波(同期回転座標系における第3次時間高調波)が含まれる。したがって、ステータ10で発生する磁束には、高調波成分が重畳されていることとなる。
(ロータ)
ロータ20は、外周面がステータコア12の内周面と対向するように、ステータコア12の径方向の内方側に配置されている。
ロータ20は、ロータコア21と、複数の永久磁石対22と、ロータ磁極部23と、誘導コイル24と、磁路部25とを含んで構成されている。ロータ20は、後述するように、一対の永久磁石22A,22BをV字型に配置した永久磁石対22を複数有する逆突極構造である。
逆突極構造では、一対の永久磁石22A,22Bの間を通るd軸方向のインダクタンス(d軸インダクタンスLd)が、周方向に隣り合う永久磁石対22の間を通り、d軸と電気的・磁気的に直交するq軸方向のインダクタンス(q軸インダクタンスLq)よりも小さい特性を有する。したがって、逆突極構造では、永久磁石対22が発生するマグネットトルクに加えて、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差に応じたリラクタンストルクを発生することができる。これにより、回転電機1におけるトルク密度を向上させることができる。
ロータコア21は、高透磁率の磁性材料からなり、ロータ20の回転軸2に対して一体回転可能に固定されている。回転軸2は、ロータコア21の内周面に固定され、ロータコア21の径方向と直交する方向に延伸している。以下においては、回転軸2が延伸する方向を軸方向という。
ロータコア21の径方向の外方側には、ロータコア21を軸方向に貫通する一対の貫通孔21A,21Bが形成されている。一対の貫通孔21A,21Bは、ステータ10側に向かって広がるV字型に配置されている。V字型に配置された一対の貫通孔21A,21Bは、ロータコア21の周方向に沿って所定の間隔で複数個所に設けられている。
一対の貫通孔21A,21Bの径方向の内方側には、永久磁石対22が嵌め込み、又は圧入若しくは接着によって嵌め合わされるようになっている。また、一対の貫通孔21A,21Bの径方向の外方側には、永久磁石対22に隣接して誘導コイル24が配置される空間が設けられている。
永久磁石対22は、永久磁石22Aと永久磁石22Bとがステータ10側に向かって広がるV字型に配置されたものからなる。永久磁石対22は、一対の永久磁石22A,22Bを1組として、ロータコア21の周方向に所定間隔で複数組、配置されている。
永久磁石22A,22Bは、柱状の例えばネオジウム磁石(Nd−Fe−B磁石)で構成されている。永久磁石22A,22Bは、V字型に配置された一対の貫通孔21A,21Bに嵌め合わされている。
永久磁石22Aと永久磁石22Bとは、同一の極性面が互いに対向するように配置されている。これにより、永久磁石22Aと永久磁石22Bとの間には、対向する極性面と同一の極性を有するロータ磁極部23が形成される。このように、ロータ磁極部23は、V字型に配置された永久磁石対22の極性によってN極又はS極の磁極として形成される。
一対の永久磁石22A,22Bは、周方向に隣り合う永久磁石対22同士で極性面の向きが逆向きとなるよう配置されている。これにより、ロータ磁極部23は、周方向に隣り合うロータ磁極部23同士で極性が逆となる。
本実施の形態では、N極の極性面が対向するように配置された永久磁石対22を「N極の永久磁石対22」といい、S極の極性面が対向するように配置された永久磁石対22を「S極の永久磁石対22」という。
誘導コイル24は、永久磁石対22よりもステータ10側で、永久磁石対22に隣接して配置されている。具体的には、誘導コイル24は、一対の貫通孔21A,21Bの径方向の外方側に設けられた空間を利用して、ロータ磁極部23を囲むように巻かれている。
誘導コイル24は、ステータ10側で発生した磁束に重畳された高調波成分に基づいて誘導電流を発生するようになっている。具体的には、三相交流が電機子コイル11に供給されてステータ10に回転磁界が発生すると、ステータ10側で発生した高調波成分の磁束が誘導コイル24に鎖交する。これにより、誘導コイル24は、誘導電流を誘起させる。
図2は、ステータ10側で発生した第2次空間高調波の磁束密度及び磁束線を示したものである。図2においては、磁束線の間隔が狭い部分ほど磁束密度が高いことを示している。
図2に示すように、ステータ10側で発生した第2次空間高調波の磁束の多くは、ロータコア21の径方向の外方側に鎖交している。したがって、本実施の形態では、誘導コイル24がロータコア21の径方向の外方側でロータ磁極部23を囲むように巻かれているので、より多くの第2次空間高調波の磁束を誘導コイル24に鎖交させることができる。
誘導コイル24は、該誘導コイル24と径方向に配置されている可変界磁コイル30と通電方向が同一となるよう、ロータ磁極部23に巻かれている。このため、誘導コイル24に誘導電流が流れた際に誘導コイル24に発生する磁束の向きと、可変界磁コイル30に発生する誘導磁束の向きとが一致する。これにより、可変界磁コイル30に発生する誘導磁束に対して、誘導コイル24に発生する磁束が打ち消すように作用することが防止される。なお、可変界磁コイル30については後述する。
図1に示すように、ロータコア21の径方向の内方側には、ロータコア21を軸方向に貫通する一対の貫通孔21C,21Dが形成されている。一対の貫通孔21C,21Dは、ロータコア21の周方向に沿って所定の間隔で複数個所に設けられている。一対の貫通孔21C,21Dには、可変界磁コイル30が配置されるようになっている。
磁路部25は、永久磁石対22よりも、径方向の内方側すなわち回転軸2側に配置されている。具体的には、磁路部25は、一対の貫通孔21Cと貫通孔21Dとの間で、ロータコア21の径方向の内方側から外方側に向けて突出するようにロータコア21に一体形成されている。
磁路部25は、永久磁石対22の磁束の一部を、周方向に隣り合う永久磁石対22の間で短絡させるよう導くものである。磁路部25には、N極の永久磁石対22で発生した磁束の一部が短絡磁束として鎖交するようになっている。磁路部25に鎖交した短絡磁束は、S極の永久磁石対22に導かれる。これにより、永久磁石対22で発生した磁束の一部は、周方向に隣り合う永久磁石対22の間で短絡する。
磁路部25は、一対の永久磁石22A,22Bの間の各d軸上で径方向に延伸するようにそれぞれ配置されている。磁路部25には、可変界磁コイル30が集中巻されている。可変界磁コイル30は、磁路部25に隣接する一対の貫通孔21C,21Dを利用して、磁路部25を囲むように巻かれている。
可変界磁コイル30は、誘導コイル24で発生した誘導電流の大きさに応じて、永久磁石対22から空隙40を介して磁路部25に鎖交する短絡磁束の磁束量を調整可能なコイルである。なお、空隙40については後述する。
可変界磁コイル30は、隣接する永久磁石対22の間で磁束が短絡する向きの誘導磁束を発生させる通電方向となるよう、磁路部25に集中巻されている。なお、隣接する永久磁石対22とは、周方向に隣り合うロータ磁極部23をそれぞれ形成する永久磁石対22のことである。
「隣接する永久磁石対22の間で磁束が短絡する向き」とは、N極の永久磁石対22の径方向の内方側に配置された磁路部25にあっては、径方向の外方側から内方側に向かう向きであり、S極の永久磁石対22の径方向の内方側に配置された磁路部25にあっては、径方向の内方側から外方側に向かう向きである。
これにより、可変界磁コイル30は、整流回路50で整流された直流電流が供給されると、隣接する永久磁石対22の間で磁束が短絡する向きに誘導磁束を発生させるようになっている。
可変界磁コイル30が発生させる誘導磁束の磁束量は、可変界磁コイル30に供給される直流電流の大きさに応じて調整される。この誘導磁束の磁束量が調整されることによって、隣接する永久磁石対22の間における短絡磁束の磁束量が調整される。
誘導磁束の磁束量は、可変界磁コイル30に供給される直流電流が大きいほど、可変界磁コイル30の巻き数が多いほど大きくなる。可変界磁コイル30の巻き数は、予め実験的に求められた巻き数に設定される。
可変界磁コイル30に供給される直流電流は、誘導コイル24に発生する誘導電流の大きさに応じて調整される。このように、短絡磁束の磁束量は、誘導コイル24に発生する誘導電流の大きさに応じて調整されるようになっている。また、誘導コイル24に発生する誘導電流は、ロータ20の回転速度が上昇するにつれて大きくなる。したがって、短絡磁束の磁束量は、ロータ20の回転速度が上昇するにつれて大きくなる。
ロータ磁極部23と磁路部25との間には、高磁気抵抗の領域として所定の大きさの空隙40が形成されている。空隙40は、可変界磁コイル30に直流電流が供給されていないときには、永久磁石対22の磁束がロータ磁極部23と磁路部25との間で流れることがない、又は流れても微量となるような大きさである。また、空隙40は、可変界磁コイル30に直流電流が供給されているときには、永久磁石対22の磁束がロータ磁極部23と磁路部25との間で流れるような大きさに設定されている。
空隙40は、ロータコア21を軸方向に貫通するように形成されている。空隙40は、ロータ磁極部23及び永久磁石対22の径方向の内方側の面と、磁路部25及び可変界磁コイル30の径方向の外方側の面とで画成された空間である。
空隙40は、一対の永久磁石22A,22Bの間で永久磁石対22の径方向の内周面よりも径方向の外方側に突出する部分が、径方向の内方側から外方側に向かうにしたがい周方向の幅が小さくなるテーパ形状に形成されている。本実施の形態では、テーパ形状として台形形状を採用している。
このように、空隙40が径方向の外方側に突出していることで、可変界磁コイル30を配置する空間を大きくとることができる。これにより、可変界磁コイル30の巻数を多くすることができ、より多くの誘導磁束を発生させることができる。なお、可変界磁コイル30を配置する空間を十分に確保できる場合には、空隙40に上述したようなテーパ形状の部分を形成しなくともよい。
テーパ形状としては、台形形状に限らず、例えば三角形状、半円形状及び弾頭形状等、径方向の内方側から外方側に向かうにしたがい周方向の幅が小さくなる形状であれば種々の形状を採用することができる。
本実施の形態では、永久磁石対22と可変界磁コイル30との間の隙間を含めて空隙40としたが、当該隙間を廃してロータ磁極部23と磁路部25とで画成される空間を空隙40としてもよい。
また、ロータ磁極部23と磁路部25との間に、ロータ磁極部23と磁路部25とを接続するブリッジ部を形成してもよい。この場合、ロータコア21の強度を高めることができる。ただし、ロータ低回転時に永久磁石対22の磁束がブリッジ部を介して磁路部25側に漏れないようにするために、ブリッジ部の周方向の幅は狭い方が好ましい。
(整流回路)
回転電機1は、誘導コイル24によって誘起された交流の誘導電流を直流に整流して可変界磁コイル30に供給する整流回路50を備えている。
図3に示すように、整流回路50は、2つのダイオードD1,D2を整流素子として備え、これらダイオードD1,D2と2つの誘導コイル24、及び2つの可変界磁コイル30とを結線した閉回路として構成されている。
ダイオードD1,D2は、例えば図示しないダイオードケースに収納された状態でロータ20に設けられている。ダイオードD1,D2は、ロータ20の内部に実装するようにしてもよい。
整流回路50において、2つの誘導コイル24で発生した交流の誘導電流は、ダイオードD1,D2により整流され、整流後の直流電流は、直列接続されている2つの可変界磁コイル30に界磁電流として供給される。2つの可変界磁コイル30は、直流電流が供給されることにより誘導磁束を発生させる。
(回転電機の作用)
次に、図4、図5、図6及び図7を参照して、本実施の形態に係る回転電機1の作用について説明する。
本実施の形態に係る回転電機1は、以上説明したように、ロータ20に永久磁石対22を備え、その永久磁石対22の磁束を利用してトルクを出力する永久磁石型同期モータである。
従来の永久磁石型同期モータでは、永久磁石の磁束が一定のため、ロータの回転速度が上昇するにつれて永久磁石の磁束によってステータの電機子コイルに生じる逆起電力が増加する。そして、ロータの回転速度がある回転速度に達すると、電機子コイルに生じた逆起電力が永久磁石型同期モータの電源電圧と等しくなる。これにより、永久磁石型同期モータにはそれ以上電流を流すことができなくなる。この結果、ロータの回転速度を上昇させることができなくなってしまう。
従来、こうした問題を解決するために、ステータの電機子コイルに永久磁石による磁束を打ち消す電流を流すことにより電機子コイルに生じる逆起電力を等価的に低減させる弱め界磁制御が行われていた。
しかしながら、この弱め界磁制御は、永久磁石の磁束を打ち消す方向の磁束を発生させるべく電流を流すことから、トルクに寄与しない磁束を発生させることになるため、出力に対して無駄なエネルギを消費しており、効率の低下を招いていた。
また、弱め界磁制御では、高調波磁束が生じるため、その高調波磁束に起因して永久磁石型同期モータの鉄損や電磁振動が増加するおそれがある。さらに、弱め界磁制御では、永久磁石の磁束に対して逆向きの磁束を発生させて永久磁石の磁束を抑え込むため、永久磁石の不可逆減磁が生じるおそれがある。このため、比較的保磁力の高い永久磁石を用いる必要があり、コストが増加してしまう。
永久磁石としてネオジウム磁石を用いた場合には、弱め界磁制御による外部磁場の変動により永久磁石に渦電流が生じ、永久磁石が発熱する。この発熱によって永久磁石の不可逆減磁が生じるおそれがある。したがって、耐熱性の高いレアアース等の材料を永久磁石に添加する必要がある。しかし、この場合には、添加されたレアアース等の材料が永久磁石にとって不純物となるため、永久磁石本来の性能を発揮させることができないおそれがある。
そこで、本実施の形態に係る回転電機1では、弱め界磁制御を行わずに、上述した磁路部25及び可変界磁コイル30の作用によって、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束量を調整可能な構成とした。これにより、本実施の形態に係る回転電機1は、上述したような弱め界磁制御による問題を解決することができる。
(ロータ低回転時)
本実施の形態に係る回転電機1においてロータ20の回転速度が低いときは、ステータ10に高調波成分の磁束が発生していないか、あるいは発生していても微量である。このため、可変界磁コイル30は、誘導磁束を発生してないか、あるいは発生していても微量である。
したがって、空隙40においては磁気抵抗が高い状態である。このため、N極の永久磁石対22の磁束が空隙40を介して磁路部25に鎖交しないか、あるいは僅かに鎖交するだけである。よって、N極の永久磁石対22の磁束は、S極の永久磁石対22に短絡することがないか、あるいは僅かに短絡するだけである。この結果、ロータ20の回転速度が低いときは、図4及び図5に示すように、永久磁石対22の磁束の全て又は大部分(図4中、白抜きの矢印で示す)がステータ10に鎖交する。
このように、ロータ20の回転速度が低いときは、後述するロータ20の回転速度が高いときと比べて永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量を増加させることができる。
(ロータ高回転時)
本実施の形態に係る回転電機1においてロータ20の回転速度が高いときは、ステータ10に高調波成分の磁束が発生する。その高調波成分の磁束の磁束量は、ロータ20の回転速度が上昇するにつれて増加する。
この高調波成分の磁束が誘導コイル24に鎖交することにより、ロータ20の誘導コイル24に誘導電流が誘起され、誘起された誘導電流が整流回路50(図3参照)によって整流されて直流電流として可変界磁コイル30に供給される。
直流電流が供給された可変界磁コイル30は、隣接する永久磁石対22の間で磁束が短絡するように誘導磁束を発生させる。これに伴い、空隙40における磁気抵抗が低下する。
上述したように空隙40における磁気抵抗が低下すると、図6及び図7に示すように、N極の永久磁石対22の磁束の一部が短絡磁束(図6中、黒塗りの矢印で示す)として空隙40を介して磁路部25に鎖交する。磁路部25に鎖交した短絡磁束は、磁路部25及びロータコア21を介してS極の永久磁石対22に短絡する。これにより、永久磁石対22の磁束の全磁束量のうち短絡磁束の磁束量を除いた磁束量の磁束(図6中、白抜きの矢印で示す)がステータ10に鎖交する。すなわち、ロータ20の回転速度が高いときは、ロータ20の回転速度が低いときと比べて、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量が抑えられる。
したがって、ロータ20の回転速度が高い場合であっても弱め界磁制御を不要とすることができる。このため、弱め界磁制御により生ずる高調波磁束に起因した鉄損や電磁振動を防止することができる。
また、弱め界磁制御を不要としたので、保磁力の高い永久磁石を用いる必要がなく、耐熱性の高いレアアース等の材料を永久磁石に添加する必要もない。これにより、回転電機1のコストを低減させることができる。
このように、本実施の形態に係る回転電機1では、弱め界磁制御を行わずに永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束量を調整可能とした。具体的には、ロータ20の回転速度が高いときには効率の低下を防止することができる。また、ロータ20の回転速度が低いときには出力の向上を図ることができる。
以上のように、本実施の形態の回転電機1によれば、ステータ10側で発生した磁束に重畳された高調波成分を誘導コイル24に鎖交させることにより誘導電流を発生させ、その誘導電流を整流回路50で整流して可変界磁コイル30に供給する。これにより、周方向に隣り合う永久磁石対22の間で短絡する短絡磁束の磁束量を調整することができる。
また、ステータ10側で発生した磁束に重畳される高調波成分は、ステータ10に集中巻された電機子コイル11に三相交流を供給することによって得られる。このため、可変界磁コイル30に供給される直流電流を発生させるために、例えばDC/DCコンバータ等の特別な装置を必要としない。
これによって、本実施の形態の回転電機1は、例えばDC/DCコンバータ等の特別な装置を利用することなく簡易な構成で、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量を調整することができる。この結果、本実施の形態の回転電機1は、低コストな構成で永久磁石対22の磁束を可変させることができる。
[第2の実施の形態]
図8から図13は本発明の第2の実施の形態に係る回転電機を説明する図である。
本実施の形態の回転電機201は、第1の実施の形態の回転電機1とは、ロータの構成が一部異なるが、他の構成は同一である。以下においては、第1の実施の形態の同一の構成については同一の符号を用いる。
図8に示すように、本実施の形態の回転電機201は、ステータ10と、ロータ220と、整流回路50(図3参照)とを備えている。
本実施の形態のロータ220において、ロータ磁極部23の径方向の外方側であって一対の貫通孔21Aと貫通孔21Bとの間には、ロータコア21を軸方向に貫通する貫通孔21Eが形成されている。
貫通孔21Eは、ロータコア21の周方向に長尺な形状に形成されており、ロータコア21の周方向に沿って所定の間隔で複数個所に設けられている。貫通孔21Eの周方向の中間位置には、後述する補助磁石222が嵌め込み、又は圧入若しくは接着によって嵌め合わされるようになっている。
また、貫通孔21Eの周方向の両端側には、補助磁石222に周方向で隣接するようにしてフラックスバリア250が形成されている。フラックスバリア250は、貫通孔21Eの内周面と補助磁石222の周方向の側面とで画成された空間からなる。
本実施の形態のロータ220は、磁束を発生させる永久磁石として、永久磁石対22に加えて補助磁石222を備えている。補助磁石222は、柱状の例えばネオジウム磁石(Nd−Fe−B磁石)で構成されている。補助磁石222は、上述した貫通孔21Eに嵌め合わされている。これにより、補助磁石222は、ロータ磁極部23の径方向の外方側に配置される。
補助磁石222は、永久磁石対22によってロータ磁極部23に形成される極性と逆極性の極性面が径方向の内方側を向くよう配置されている。例えば、N極の永久磁石対22に対しては、補助磁石222は、S極の極性面が径方向の内方側に向くように配置されている。
これにより、永久磁石対22の磁束の向きと補助磁石222の磁束の向きとが一致する。したがって、補助磁石222が永久磁石対22の磁束の流れを妨げることがない。また、永久磁石対22の磁束に加えて補助磁石222の磁束をステータ10に鎖交させることができる。
また、本実施の形態のロータ220において、ロータ磁極部23と磁路部25との間のd軸上には、ロータ磁極部23と磁路部25とを接続するブリッジ部260が形成されている。これにより、ロータコア21の強度が高められる。ただし、ロータ低回転時に永久磁石対22の磁束がブリッジ部260を介して磁路部25側に漏れないように、ブリッジ部260の周方向の幅が狭い幅に設定されている。ロータコア21の強度が確保できる場合には、ブリッジ部260は設けなくともよい。
図9は、ステータ10側で発生した第2次空間高調波の磁束密度及び磁束線を示したものである。図9においては、磁束線の間隔が狭い部分ほど磁束密度が高いことを示している。
図9に示すように、本実施の形態においても、ステータ10側で発生した第2次空間高調波の磁束の多くは、ロータ220のロータコア21の径方向の外方側に鎖交している。したがって、本実施の形態でも、誘導コイル24がロータコア21の径方向の外方側でロータ磁極部23を囲むように巻かれているので、より多くの第2次空間高調波の磁束を誘導コイル24に鎖交させることができる。
(回転電機の作用)
次に、図10、図11、図12及び図13を参照して、本実施の形態に係る回転電機201の作用について説明する。
(ロータ低回転時)
本実施の形態に係る回転電機201においてロータ220の回転速度が低いときは、ステータ10に高調波成分の磁束が発生していないか、あるいは発生していても微量である。このため、可変界磁コイル30は、誘導磁束を発生してないか、あるいは発生していても微量である。
したがって、空隙40においては磁気抵抗が高い状態である。このため、N極の永久磁石対22の磁束が空隙40を介して磁路部25に鎖交しないか、あるいは僅かに鎖交するだけである。よって、N極の永久磁石対22の磁束は、S極の永久磁石対22に短絡することがないか、あるいは僅かに短絡するだけである。この結果、ロータ220の回転速度が低いときは、図10及び図11に示すように、永久磁石対22の磁束の全て又は大部分(図10中、白抜きの矢印で示す)と補助磁石222の磁束とがステータ10に鎖交する。
このように、ロータ220の回転速度が低いときは、後述するロータ220の回転速度が高いときと比べて永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量を増加させることができる。
(ロータ高回転時)
本実施の形態に係る回転電機201においてロータ220の回転速度が高いときは、ステータ10に高調波成分の磁束が発生する。その高調波成分の磁束の磁束量は、ロータ220の回転速度が上昇するにつれて増加する。
この高調波成分の磁束が誘導コイル24に鎖交することにより、ロータ220の誘導コイル24に誘導電流が誘起され、誘起された誘導電流が整流回路50(図3参照)によって整流されて直流電流として可変界磁コイル30に供給される。
直流電流が供給された可変界磁コイル30は、隣接する永久磁石対22の間で磁束が短絡するように誘導磁束を発生させる。これに伴い、空隙40における磁気抵抗が低下する。
上述したように空隙40における磁気抵抗が低下すると、図12及び図13に示すように、N極の永久磁石対22の磁束の一部が短絡磁束(図12中、黒塗りの矢印で示す)として空隙40を介して磁路部25に鎖交する。磁路部25に鎖交した短絡磁束は、磁路部25及びロータコア21を介してS極の永久磁石対22に短絡する。これにより、永久磁石対22の磁束の全磁束量のうち短絡磁束の磁束量を除いた磁束量に補助磁石222の磁束量を加えた磁束(図12中、白抜きの矢印で示す)がステータ10に鎖交する。すなわち、ロータ220の回転速度が高いときは、ロータ220の回転速度が低いときと比べて、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量が抑えられる。
したがって、本実施の形態の回転電機201においても、弱め界磁制御を不要とすることができ、弱め界磁制御により生ずる高調波磁束に起因した鉄損や電磁振動を防止することができる。
また、弱め界磁制御を不要としたので、保磁力の高い永久磁石を用いる必要がなく、耐熱性の高いレアアース等の材料を永久磁石に添加する必要もない。これにより、回転電機201のコストを低減させることができる。
このように、本実施の形態に係る回転電機201においても、弱め界磁制御を行わずに永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束量を調整可能とした。具体的には、ロータ220の回転速度が高いときには効率の低下を防止することができる。また、ロータ220の回転速度が低いときには出力の向上を図ることができる。
(補助磁石及びフラックスバリアの作用)
図14は、補助磁石222及びフラックスバリア250を有していない回転電機301を示したものである。この回転電機301は、本実施の形態の回転電機201とは、補助磁石222及びフラックスバリア250を有していない点で異なるが、他の構成は回転電機201と同一である。回転電機201と同一の構成については、本実施の形態と同一の符号を用いる。
図14に示すように、電機子コイル11が集中巻されたステータ10では、隣り合うステータティース13の磁極が反対磁極となる場合がある。この場合、隣り合うステータティース13間で、図14中、矢印Aで示すように、ステータ10で発生した主磁束の一部がロータ磁極部23を介して短絡する。
隣り合うステータティース13間で短絡する磁束量は、ロータ低回転時とロータ高回転時とで異なる。ロータ低回転時は、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束量が多いため、これら永久磁石対22の磁束が、隣り合うステータティース13間で短絡する主磁束を打ち消すように作用する。これにより、ロータ低回転時は、隣り合うステータティース13間で短絡する磁束量が抑えられている。
ロータ高回転時は、上述したように、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束量が減少するため、ロータ低回転時と比べて、隣り合うステータティース13間で短絡する磁束量が増加する。
ここで、電機子コイル11には、永久磁石対22の磁束と、上述のように隣り合うステータティース13間で短絡する主磁束とが鎖交する。電機子コイル11に生じる誘導起電力は、電機子コイル11に鎖交する磁束量の総数を「Φ」としたとき、該Φを時間微分したものである。すなわち、電機子コイル11に生じる誘導起電力Vは、「V=−dΦ/dt」となる。
このため、永久磁石対22の磁束量を減らしているにも関わらず、隣り合うステータティース13間で短絡する磁束量が増加してしまうと、電機子コイル11に鎖交する磁束量の総数を減らすことができなくなる。
この結果、ロータ高回転時は、電機子コイル11に生じる誘導起電力を低下させるために永久磁石対22の磁束量を減らしているにも関わらず、電機子コイル11に生じる誘導起電力が低下しないといったことが生ずる。
本実施の形態に係る回転電機201では、ロータ高回転時に、隣り合うステータティース13間で主磁束が短絡しないように、ロータ磁極部23の径方向の外方側に上述した補助磁石222及びフラックスバリア250を設けた。
補助磁石222及びフラックスバリア250は、ロータ高回転時に高磁気抵抗の領域として機能することにより、隣り合うステータティース13間で主磁束が短絡することを抑制する。
以上のように、本実施の形態の回転電機201によれば、ステータ10側で発生した磁束に重畳された高調波成分を誘導コイル24に鎖交させることにより誘導電流を発生させ、その誘導電流を整流回路50で整流して可変界磁コイル30に供給する。これにより、周方向に隣り合う永久磁石対22の間で短絡する短絡磁束の磁束量を調整することができる。
また、ステータ10側で発生した磁束に重畳される高調波成分は、ステータ10に集中巻された電機子コイル11に三相交流を供給することによって得られる。このため、可変界磁コイル30に供給される直流電流を発生させるために、例えばDC/DCコンバータ等の特別な装置を必要としない。
これによって、本実施の形態の回転電機201は、例えばDC/DCコンバータ等の特別な装置を利用することなく簡易な構成で、永久磁石対22からステータ10に鎖交する磁束の磁束量を調整することができる。この結果、本実施の形態の回転電機201は、低コストな構成で永久磁石対22の磁束を可変させることができる。
また、本実施の形態の回転電機201は、ロータ磁極部23の径方向の外方側に補助磁石222及びフラックスバリア250を設けたので、ロータ高回転時に、隣り合うステータティース13間で主磁束が短絡することを抑制することができる。これにより、ロータ高回転時に電機子コイル11に鎖交する磁束量の総数を減らすことができる。したがって、ロータ高回転時において、電機子コイル11に生じる誘導起電力を低下させることができる。
上述の第1及び第2の実施の形態の回転電機は、例えば車載用の電動機、風力発電用の発電機や工作機械用の電動機として好適に採用することができる。
上述の第1及び第2の実施の形態では、回転電機をラジアルギャップ型の回転電機に適用したが、アキシャルギャップ型の回転電機に適用してもよい。
上述の第1及び第2の実施の形態の回転電機は、ステータ10のスロット14の数とロータ20のロータ磁極部23の数との比、すなわちステータ10とロータ20のスロットコンビネーションが「3:2」であれば、スロット14の数とロータ磁極部23の数の組合せがどのような組合せであってもよい。
本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。