図1から図15を参照して、実施の形態における内燃機関について説明する。本実施の形態においては、車両に取り付けられている火花点火式の内燃機関を例示して説明する。本実施の形態における内燃機関は、機械圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を備える。
図1は、実施の形態における内燃機関の概略図である。内燃機関は、機関本体90を備える。機関本体90は、クランクケース1を含む支持構造物を含む。支持構造物は、クランクシャフトを支持するように形成されている。機関本体90は、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3を含む。シリンダブロック2の内部に形成された穴部には、ピストン4が配置されている。燃焼室5の頂面の中央部には、点火栓6が配置されている。本発明においては、任意のピストン4の位置において、ピストン4の冠面、シリンダブロック2の穴部およびシリンダヘッド3に囲まれる空間を燃焼室と称する。
シリンダヘッド3には、吸気ポート8および排気ポート10が形成されている。吸気ポート8の端部には吸気弁7が配置されている。吸気弁7は、吸気カム49が回転することにより開閉する。排気ポート10の端部には、排気弁9が配置されている。吸気ポート8は、吸気枝管11を介してサージタンク12に連結されている。吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置されている。なお、燃料噴射弁13は吸気枝管11に取付ける代りに、各燃焼室5に直接的に燃料を噴射するように配置されていても構わない。
サージタンク12は、吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結されている。吸気ダクト14の内部にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17が配置されている。また、吸気ダクト14の内部には、例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18が配置されている。一方、排気ポート10は、排気マニホールド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結されている。排気マニホールド19には空燃比センサ21が配置されている。
本実施の形態における内燃機関は、ピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aを備える。可変圧縮比機構Aは、クランクケース1に対するシリンダブロック2のシリンダ軸線方向における相対位置を変化させるように形成されている。クランクケース1とシリンダブロック2との間には、付勢部材としてのリフトスプリング65が配置されている。リフトスプリング65は、クランクケース1から離れる向きにシリンダブロック2を付勢するように形成されている。なお、付勢部材としては、この形態に限られず、クランクケース1から離れる向きにシリンダブロック2を付勢する任意の部材を採用することができる。
クランクケース1とシリンダブロック2には、クランクケース1に対するシリンダブロック2の相対位置を検出するための相対位置センサ22が取付けられている。相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
本実施の形態における内燃機関の制御装置は、電子制御ユニット30を含む。本実施の形態における電子制御ユニット30は、デジタルコンピュータを含む。デジタルコンピュータは、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を含む。
吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22およびスロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。負荷センサ41の出力により要求負荷を検出することができる。更に、入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続されている。クランク角センサ42の出力により、クランク角度および機関回転数を検出することができる。
一方、出力ポート36は、対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16、および可変圧縮比機構Aに接続される。これらの装置は、電子制御ユニット30により制御されている。
図2に、本実施の形態における可変圧縮比機構の分解斜視図を示す。図3に本実施の形態における可変圧縮比機構の第1の概略断面図を示す。図2および図3を参照して、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されている。各突出部50には断面形状が円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁には互いに間隔を隔てて、突出部50同士の間に嵌合される複数個の突出部52が形成されている。これらの突出部52にも断面形状が円形のカム挿入孔53が形成されている。
本実施の形態における可変圧縮比機構は、一対のカムシャフト54,55を含む。カムシャフト54,55は、クランクケース1とシリンダブロック2との間に介在する。各カムシャフト54,55上には、一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される円形カム58が配置されている。これらの円形カム58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各円形カム58の両側には、図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心して配置された偏心軸57が延びている。この偏心軸57には、別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示されるように、円形カム56は、各円形カム58の両側に配置されている。これらの円形カム56は対応する各カム挿入孔51に回転可能に挿入されている。シリンダブロック2は、偏心軸57を含むカムシャフト54,55を介して、クランクケース1に支持されている。
図4に、本実施の形態における可変圧縮比機構の第2の概略断面図を示す。図5に、本実施の形態における可変圧縮比機構の第3の概略断面図を示す。図3から図5は、通常運転において機械圧縮比を変更するときの可変圧縮比機構の機能を説明する断面図である。図3に示す状態から各カムシャフト54,55上に配置された円形カム58を矢印68に示すように、互いに反対方向に回転させると偏心軸57が互いに近づく方向に移動する。偏心軸57は、それぞれのカムシャフト54,55の回転軸線の周りに回転する。シリンダブロック2は、矢印99に示すようにクランクケース1から離れる向きに移動する。このときに円形カム56は、カム挿入孔51内において円形カム58とは反対方向に回転し、図4に示されるように偏心軸57が低い位置から中間高さ位置となる。次いで更に円形カム58を矢印68で示される方向に回転させると、シリンダブロック2は、矢印99に示すように更にクランクケース1から離れる向きに移動する。この結果、図5に示されるように偏心軸57は最も高い位置となる。
図3から図5には、それぞれの状態における円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。図3から図5を比較するとわかるように、クランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まる。円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほど、シリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたリンク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2との間の相対位置が変化する。
シリンダブロック2がクランクケース1から離れると、ピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大する。シリンダブロック2がクランクケース1に近づくと、ピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は減少する。従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
本実施の形態における可変圧縮比機構は、燃焼室5の容積を変更するための偏心軸57を回転させる駆動装置を含む。図2に示されるように、駆動装置は、回転機としてのモータ59、クラッチ70、ウォーム61,62およびウォームホイール63,64等を含む。回転軸60には、カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるように、螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられている。ウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。なお、駆動装置の回転機としては、モータ59に限られず、クラッチ70の入力軸を回転させることができる任意の装置を採用することができる。
本実施の形態では、モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。可変圧縮比機構は、電子制御ユニット30に制御されており、カムシャフト54,55を回転させるモータ59は、対応する駆動回路38を介して出力ポート36に接続されている。
このように、本実施の形態における可変圧縮比機構は、クランクケース1に対してシリンダブロック2が相対的に移動することにより、ピストンが上死点に到達したときの燃焼室5の容積が可変に形成されている。本実施の形態においては、下死点から上死点までのピストンの行程容積とピストンが上死点に到達したときの燃焼室の容積のみから定まる圧縮比を機械圧縮比と称する。機械圧縮比は、吸気弁の閉弁時期等に依存せずに、(機械圧縮比)=(ピストンが上死点に到達したときの燃焼室の容積+ピストンの行程容積)/(ピストンが上死点に到達したときの燃焼室の容積)にて示すことができる。
図3に示す状態では、燃焼室5の容積が小さくなっており、機械圧縮比が高い状態である。吸入空気量が常時一定の場合には実際の圧縮比が高くなる。これに対して、図5に示す状態では、燃焼室5の容積が大きくなっており、機械圧縮比が低い状態である。吸入空気量が常時一定の場合には実際の圧縮比が低くなる。
本実施の形態における内燃機関は、運転期間中に機械圧縮比を変更することにより、実際の圧縮比を変更することができる。内燃機関の運転状態に応じて、可変圧縮比機構により機械圧縮比を変更することができる。たとえば、要求負荷が大きくなるほど、吸入空気量が多くなりノッキング等の異常燃焼が生じやすくなる。このために、予め定められた運転領域において、要求負荷が大きくなるほど機械圧縮比を低下させる制御を行うことができる。
図3から図5を参照して、偏心軸57は、カムシャフト54,55の回転軸、すなわち円形カム58の回転軸を中心に回転する。機械圧縮比を低下させる場合には、偏心軸57を矢印68に示す向きに回転させる。機械圧縮比を上昇させる場合には、偏心軸57を矢印69に示す向きに回転させる。
本実施の形態においては、クランクケース1に対してシリンダブロック2を離す向きに相対移動させるときの偏心軸57の回転方向を、一方の回転方向と称する。また、クランクケース1に対してシリンダブロック2を近づける向きに相対移動させるときの偏心軸57の回転方向を他方の回転方向と称する。本実施の形態においては、矢印68が一方の回転方向であり、矢印69が他方の回転方向である。
図2を参照して、本実施の形態における可変圧縮比機構は、モータ59の回転力(トルク)をカムシャフト54,55に伝達する駆動力伝達経路に配置されているクラッチ70を含む。本実施の形態におけるクラッチ70は、入力側がモータ59の回転力を伝達する回転軸66に接続され、出力側がウォーム61,62を支持する回転軸60に接続されている。
本実施の形態におけるクラッチ70は、いわゆる逆入力遮断クラッチである。本実施の形態における逆入力遮断クラッチは、入力軸からの回転力を出力軸に伝達し、出力軸からの回転力を遮断するように形成されている。すなわち、クラッチ70は、モータ59から伝達される回転軸66の回転力はウォーム61,62に伝達し、ウォーム61,62から伝達される回転軸60の回転力は遮断して、モータ59に伝達しない構造を有する。
図6に、本実施の形態におけるクラッチ70の第1の概略断面図を示す。図7に、本実施の形態におけるクラッチ70の第2の概略断面図を示す。図7は、図6におけるX線に沿って切断したときの概略断面図である。
図6および図7を参照して、本実施の形態のクラッチ70は、外輪77を含む。外輪77は、ねじ85によりハウジング78に固定されている。外輪77は、クラッチ70が駆動している期間中にも移動せずに固定されている。クラッチ70は、出力軸74を有する。出力軸74は、ウォーム61,62が固定されている回転軸60に接続されている。出力軸74は、回転中心軸88を回転中心にして回転する。出力軸74は、穴部75を有する。穴部75は、出力軸74が回転する周方向に沿って複数個が形成されている。本実施の形態における出力軸74は、断面形状が多角形に形成されている。図6に示す例では、出力軸74は、断面形状が正八角形に形成されている。
クラッチ70は、入力軸71を含む。入力軸71は、回転中心軸88を回転中心にして回転する。入力軸71は、モータ59の回転力を伝達する回転軸66に接続されている。入力軸71は、挿入部72と保持部73とを有する。挿入部72および保持部73は、一体的に回転する。
複数の挿入部72は、出力軸74の複数の穴部75に対応する位置に形成されている。挿入部72は、出力軸74の穴部75に挿入されている。穴部75の内径は挿入部72の外径よりも大きくなるように形成されている。挿入部72と穴部75との間には隙間が形成されている。複数の保持部73は、外輪77と出力軸74との間に配置されている。また、保持部73はローラ80a,80bに対向し、偏心軸57が一方の回転方向に回転する向きに入力軸71が回転したときにローラ80aを押圧し、偏心軸57が他方の回転方向に回転する向きに入力軸71が回転したときにローラ80bを押圧するように形成されている。
出力軸74と外輪77との間の空間には、ローラ80a,80bが配置されている。本実施の形態におけるローラ80a,80bは円柱状に形成されている。ローラ80aとローラ80bとの間には、スプリング81が配置されている。スプリング81は、ローラ80a,80bを互いに離す向きに付勢する。
出力軸74と外輪77とにより、ローラ80a,80bを係止させるための係止部86a,86bが形成される。係止部86a,86bは、ローラ80a,80bが付勢されている向きに沿って、出力軸74の端面と外輪77の内面との間隔が徐々に狭くなっている部分である。また、係止部86a,86bは、ローラ80a,80bが通過しないように狭く形成されている。
図2を参照して、本実施の形態におけるクラッチ70は、モータ59とウォーム62との間に配置されているが、この形態に限られず、モータ59の回転力をカムシャフト54,55に伝達する駆動力伝達経路に配置することができる。例えば、クラッチ70は、ウォームホイール63,64と、カムシャフト54,55との間に配置されていても構わない。この場合には、それぞれのカムシャフト54,55に対してクラッチを配置することができる。
次に、本実施の形態おけるクラッチ70の動作について説明する。本実施の形態におけるクラッチ70は、モータ59の回転力が入力軸71に入力されると、この回転力を出力軸74に伝達する。一方で、クラッチ70は、カムシャフト54,55の側からの回転力が出力軸74に伝達されると、ロックされてこの回転力を遮断する。特に、クラッチ70は、偏心軸57が一方の回転方向に回転する向きにてウォーム61,62から回転力が伝達されると、この回転力を遮断する。
図1を参照して、本実施の形態においては、リフトスプリング65によって、シリンダブロック2がクランクケース1から離れる向きに付勢されている。内燃機関の運転期間中には、重力の影響や燃焼サイクルの吸気行程において燃焼室5が負圧になる影響により、クランクケース1に対してシリンダブロック2が近づく向きに力が作用する。しかしながら、リフトスプリング65が配置されることにより、クランクケース1に対してシリンダブロック2が離れる向きに常に付勢され、シリンダブロック2に振動等が生じることを抑制できる。更に、燃焼室5において燃料の燃焼が行なわれごとに、筒内圧によりクランクケース1に対してシリンダブロック2が離れる方向に力が作用する。
シリンダブロック2がクランクケース1から離れる向きの回転力は、カムシャフト54,55、ウォームホイール63,64およびウォーム61,62を介してクラッチ70に伝達される。図6を参照して、矢印100は、クランクケース1に対してシリンダブロック2が上昇する方向に対応する方向である。すなわち、機械圧縮比が小さくなり、ピストン4が上死点に到達したときの燃焼室5が大きくなる回転方向を示している。シリンダブロック2にはクランクケース1に対して離れる方向に常に力が加わり、出力軸74には矢印100に示す向きに力が加わっている。
ローラ80aは、スプリング81に押圧されて係止部86aに接触している。このために、ローラ80aに楔の効果が生じて、外輪77に対する出力軸74の回転が阻止され、出力軸74がロックされる。このように、クラッチ70は、クランクケース1に対してシリンダブロック2が離れる方向に対応する出力側からの回転力を遮断することができる。また、同様に、矢印100と反対向きの回転力が出力軸74に加わった場合には、ローラ80bが係止部86bに接触して出力軸74がロックされる。この様に、クラッチ70は、モータ59を駆動しない場合に、ローラ80a,80bが係止部86a,86bに係止して出力軸74をロックする。
図8は、機械圧縮比を低下させるときの動作を説明するクラッチ70の第1の概略断面図である。機械圧縮比を低下させる場合には、クランクケース1に対してシリンダブロック2を離す向きに移動させる。モータ59を駆動することにより、入力軸71の挿入部72は、矢印101に示す向きに回転する。挿入部72が穴部75の内面に接触する前に、保持部73がローラ80aに接触する。
図9は、機械圧縮比を低下させるときの動作を説明するクラッチ70の第2の概略断面図である。入力軸71を更に回転させることにより、保持部73がローラ80aを押圧する。ローラ80aは、係止部86aから離れる。すなわち、ローラ80aのくさび効果が消失する。このため、出力軸74は、ロック状態が解除され、外輪77に対して矢印101に示す方向に回転可能になる。入力軸71の挿入部72が、矢印101に示す向きに回転することにより、挿入部72が出力軸74の穴部75を押圧し、出力軸74を回転させることができる。このときに、出力軸74は、ローラ80bが係止部86bから離れる向きに回転するためにローラ80bによるロック状態も解除される。
図10は、機械圧縮比を上昇させるときの動作を説明するクラッチ70の概略断面図である。機械圧縮比を上昇させる場合には、クランクケース1に対してシリンダブロック2を近づける向きに移動させる。モータ59を駆動することにより、入力軸71の挿入部72および保持部73を、矢印102に示す向きに回転させる。
入力軸71の挿入部72および保持部73を矢印102に示す向きに回転させることにより、保持部73がローラ80bを押圧する。ローラ80bが係止部86bから脱離してローラ80bのくさび効果が消失する。次に、入力軸71の挿入部72が出力軸74の穴部75を押圧することにより、入力軸71の回転力を出力軸74に伝達することができる。出力軸74は、矢印102に示す向きに回転する。このときに、出力軸74は、ローラ80aが係止部86aから離れる向きに回転するために、ローラ80aによるロック状態も解除される。このように、入力軸71の回転力を出力軸74に伝達することができる。
ところで、機関本体90の運転期間中には、燃焼室5にて燃焼が生じることによる筒内圧がシリンダヘッド3に作用する。このために、機関本体90の運転期間中には、リフトスプリング65の付勢力に加えて筒内圧がシリンダブロックに加わる。
図8および図9を参照して、機械圧縮比を低下させる場合には、入力軸71が矢印101に示す向きに回転する。矢印100に示す出力軸74に加わる回転力は、筒内圧に依存する。筒内圧が高くなると、出力軸74に加わる回転力も大きくなり、逆入力トルクをロックしている係止部86aにおけるくさび効果も強くなる。ところが、筒内圧は振動するために、筒内圧が減少する期間中に保持部73にてローラ80aを押圧すると、比較的に小さな力にてローラ80aを係止部86aから離脱させることができる。
図10を参照して、機械圧縮比を上昇させる場合には、入力軸71が矢印102に示す向きに回転する。係止部86aにおいては、ローラ80aが係止部86aから離脱する方向に入力軸71が回転する。保持部73は、逆入力トルクを遮断していない側の係止部86bのローラ80bを押圧するために、容易にローラ80bを係止部86bから離脱させることができる。
ところで、本実施の形態の内燃機関は、機関本体90を停止している期間中に可変圧縮比機構を駆動する制御を行う。ここで、機関本体90の停止とは、燃焼室5における燃料の燃焼が停止しているのみではなく、機関本体90から出力されるトルクが零の状態を示す。すなわち、機関回転数が零である状態を示している。このような機関本体90が停止している状態においても、例えば、可変圧縮比機構の異常の有無を確認するために機械圧縮比を変更する場合がある。
図1を参照して、機関本体90を停止している期間中では、燃焼室5における燃料の燃焼を停止している。このため、筒内圧によりシリンダブロック2に加えられる荷重は零になる。ところが、クランクケース1とシリンダブロック2との間に配置されているリフトスプリング65により、シリンダブロック2にはクランクケース1から離れる向きに荷重が加わっている。
図2を参照して、シリンダブロック2に作用する荷重は、カムシャフト54,55、ウォームホイール63,64、ウォーム61,62および回転軸60を介して、クラッチ70の出力軸74に入力される。このときの出力軸74に入力されるトルクの回転方向は、クランクケース1に対してシリンダブロック2が離れる方向に対応する。
図6を参照して、機関本体90の停止期間中においても、クラッチ70には、出力軸74に対して矢印100に示す回転方向のトルクが加えられている。ローラ80aは、係止部86aに係止して、出力軸74の回転力が入力軸71に伝達されることが遮断されている状態である。すなわち、出力軸74は、ロック状態である。
機関本体90の停止期間中に、機械圧縮比が上昇させる場合には、機関本体90の運転期間中と同様の制御によりロック状態を解除することができる。すなわち、図10に示すように、モータ59により入力軸71を矢印102に示す向きに回転させることにより、ローラ80aによるロック状態を解除して、機械圧縮比を上昇させることができる。
一方で、機械圧縮比を低下させる場合には、図8および図9に示すように、モータ59により入力軸71を矢印101に示す向きに回転させることにより、保持部73にてローラ80aを押圧し、係止部86aからローラ80aを離脱させる。
ところが、機関本体90の停止期間中には、燃焼室5における燃焼がないために、出力軸74に加わる矢印100に示す回転力は、ほぼ一定の状態になる。また、クラッチ70のロック状態を解除するために筒内圧の脈動を利用することができない。このために、機械圧縮比を低下させる場合には、ロック状態を解除するために必要な入力軸71に加えるトルクは、運転期間中よりも停止期間中の方が大きくなる。すなわち、運転期間中よりも停止期間中の方が、ローラ80aを係止部86aから離脱させるために保持部73を回転させるトルクが大きくなる。
本実施の形態の内燃機関においては、機関本体90の停止期間中に、機械圧縮比を低下させる要求が生じた場合には、可変圧縮比機構の駆動装置により、クラッチ70のロック状態を解除できるか否かを判別する。機械圧縮比を低下する前の状態において、クラッチ70の回転力の伝達の遮断を解除するために必要な入力軸71の第1のトルクが、モータ59により供給可能な第2のトルクよりも小さいか否かを判別する。すなわち、モータ59の最大トルクによってローラ80aを押圧して、係止部86aから離脱させることが可能か否かを判別する。
そして、クラッチ70のロック状態の解除のための第1のトルクが、モータ59により供給可能な第2のトルクよりも小さい場合または第1のトルクと第2のトルクとが同じ場合には、機械圧縮比を低下させる。一方で、クラッチ70のロック状態の解除のための第1のトルクが、モータ59により供給可能な第2のトルクよりも大きい場合には、機械圧縮比の低下を禁止する。機械圧縮比の低下を禁止した場合には、機関本体90の始動後に、機械圧縮比を低下させる制御を行う。
次に、機関本体90の停止期間中にクラッチ70の出力軸74に加わるトルクと、クラッチ70のロック状態を解除するために必要な入力軸71のトルクとの推定方法について説明する。
図11は、可変圧縮比機構のリンク機構における偏心軸角度に対するシリンダブロック2に加わる荷重のグラフである。縦軸は、リフトスプリング65によりシリンダブロック2に印加される荷重を示している。図3から図5を参照して、本実施の形態においては、円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bとを結ぶ線と、シリンダブロック2の移動方向とのなす角度を偏心軸角度θと称する。機械圧縮比が最も高い図3に示す状態では、偏心軸角度が0°である。本実施の形態においては、機械圧縮比が低下するほど、偏心軸角度θが増大する。そして、図5に示すように、機械圧縮比が最小の状態では、偏心軸角度θがほぼ180°である。
図11を参照して、本実施の形態においては、機械圧縮比が低くなるほど、クランクケース1に対してシリンダブロック2が遠ざかるためにリフトスプリング65は長くなる。すなわち、機械圧縮比が低くなるほど、リフトスプリング65の縮み量は減少し、シリンダブロック2に加えられる荷重は減少する。このために、偏心軸角度θが大きくなるほど、シリンダブロック2に加えられる荷重は小さくなっている。偏心軸角度が180°になった場合においてもリフトスプリング65は縮んでいる状態であり、最小荷重がシリンダブロック2に加わっている。
このように、リフトスプリング65からシリンダブロック2に印加される荷重は、クランクケース1に対するシリンダブロック2の相対位置により定まる。本実施の形態においては、相対位置センサ22により相対位置を検出することにより、リフトスプリング65による荷重を算出することができる。また、相対位置から偏心軸角度θを算出することができる。または、任意の装置により偏心軸角度を検出し、リフトスプリングによる荷重を算出しても構わない。
図12に、偏心軸角度に対する角度係数のグラフを示す。縦軸の角度係数は、リンク機構によりシリンダブロック2に加わる荷重がウォームホイール63,64に伝達されるときの力の伝達率を示している。図3から図5に示すように、本実施の形態の可変圧縮比機構は、円形カム56,58の中心a,cと偏心軸57の中心bとが相対移動するリンク機構を有する。シリンダブロック2に加わる荷重は、このリンク機構を介してウォームホイール63,64に伝達される。このときに、リンク機構の状態、すなわち、偏心軸角度に依存して、ウォームホイール63,64に伝達される回転力が変化する。シリンダブロックに加わる荷重が同一であっても、角度係数が大きくなるほどウォームホイール63,64に伝達されるトルクは大きくなる。図11に示すシリンダブロック2に加わる荷重に対して図12に示す角度係数を乗じることにより、ウォームホイール63,64に加えられるトルクを算出することができる。
次に、ウォームホイール63,64とウォーム61,62とのギヤ比に基づいて、クラッチ70の出力軸74に加わるトルクを算出することができる。なお、この出力軸74に入力されるトルクにより、クラッチ70のロック状態が達成されている。
図13は、クラッチ70の出力軸74に加わるトルクに対するロック解除トルクを示すグラフである。図13は、機械圧縮比を低下させるときのグラフを示しており、縦軸は、機械圧縮比を低下させる時にクラッチ70のロック状態を解除するために必要なトルクである。すなわち、クラッチ70の入力軸71に印加されるべきトルクを示している。出力軸74に加わるトルクが大きくなるほど、ロック状態を解除するためのトルクも大きくなっている。機関本体90の運転期間中では、筒内圧の脈動を利用することができるために、クラッチ70のロック状態を解除するためのトルクは、出力軸74に加わるトルクとほぼ等しくなる。ところが、機関本体90の停止期間中には、ロック状態を解除するためのトルクは、出力軸74に加わるトルクよりも大きくなっている。
図11および図12の関係により算出されるクラッチ70の出力軸74に加わるトルクに、図13に示す関係に基づいてクラッチ70のロック状態を解除するために入力軸71に必要なトルクを算出することができる。
図14は、機械圧縮比を低下する時に、偏心軸角度に対するロック状態を解除するために必要なトルクを示すグラフである。本実施の形態の駆動装置のモータ59は、クラッチ70の入力軸71に加えることが可能なトルクがロック状態を解除するためのトルクの最大値よりも小さくなるように形成されている。図14には、駆動装置のモータ59により入力軸71に加えることが可能なトルクの上限が示されている。
偏心軸角度θL以下の範囲および偏心軸角度θH以上の範囲においては、ロック状態を解除するためのトルクよりも大きなトルクをモータ59により供給することができて、ロック状態を解除することができる。ところが、偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さな範囲においては、クラッチ70のロック状態を解除するために必要なトルクは、モータ59により入力軸71に供給可能なトルクよりも大きくなっている。すなわち、偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さな範囲では、機械圧縮比を低下させるためにロック状態を解除することは不可能になっている。
そこで、本実施の形態の内燃機関においては、現在の偏心軸角度θを検出し、現在の偏心軸角度θが偏心軸角度θL以下の場合または偏心軸角度θH以上の場合には、クラッチ70のロック状態を解除するために必要な入力軸71のトルクが、モータ59により入力軸71に供給可能なトルクよりも小さいと判別する。モータ59によりクラッチ70に供給できるトルクが大きく、クラッチ70のロック状態を解除できると判別する。このために、機械圧縮比を低下させる制御を行う。
一方で、現在の偏心軸角度θが偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい場合には、クラッチ70のロック状態を解除するために必要な入力軸71のトルクが、モータ59により入力軸71に供給可能なトルクよりも大きいと判別する。偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい領域は、ロック状態の解除が不可能な領域であり、機械圧縮比の低下を禁止する制御を行う。
このように、モータ59により入力軸71に供給可能なトルクに応じて、機械圧縮比を低下させる範囲を定めることにより、全ての偏心軸角度において機械圧縮比を低下可能に形成する必要がなく、モータ59の最大トルクを小さくすることができる。すなわち、モータ59の容量を小さくすることができる。たとえば、図14に示すクラッチのロック状態を解除するために必要なトルクの最大値よりも、モータにより入力軸に供給されるトルクの最大値を大きくすると、全ての偏心軸角度θにおいて機械圧縮比を低下することができる。しかしながら、この場合には、機械圧縮比を低下させる為のモータが過大になる。本実施の形態における運転制御は、機械圧縮比の低下が可能か否かを判別するために、機械圧縮比の低下が不可能な場合にモータを駆動することを回避できる。このために駆動装置のモータが出力するトルクの上限を低くすることができる。図14を参照して、クラッチのロック状態を解除するために必要なトルクの最大値よりも、モータにより入力軸に供給するトルクの最大値を小さくすることができる。この様に、モータの容量を小さくすることができて小型化を図ることができる。
本実施の形態では、機械圧縮比を低下させる前の偏心軸の位置を推定し、偏心軸の位置が予め定められた範囲内である場合に、機械圧縮比の低下が可能であると判別する。偏心軸の位置を用いて判別することにより、クラッチのロック状態を解除するために必要なトルクがモータにより入力軸に供給されるトルクよりも小さいか否かを容易に判別することができる。
本実施の形態においては、偏心軸の位置を特定するために、偏心軸角度を用いているが、この形態に限られず、偏心軸の位置に関する任意の変数を採用することができる。例えば、偏心軸の位置は、クランクケース1に対するシリンダブロック2の相対位置に依存する。このために、偏心軸角度の代わりに、クランクケース1に対するシリンダブロック2の相対位置を採用しても構わない。
ところで、機関本体90の停止期間中に機械圧縮比を低下させて一旦停止した後に、更に、機械圧縮比を低下させる場合がある。すなわち、1回目の機械圧縮比の低下の後に、2回目の機械圧縮比の低下を行う場合がある。この制御では、1回目の機械圧縮比の低下を実施する場合に、モータ59による機械圧縮比の低下が可能であっても、2回目の機械圧縮比の低下が不可能な場合がある。すなわち、停止期間中に機関圧縮比の低下ができなくなる虞がある。たとえば、図14において、1回目の機械圧縮比の低下により、ロック状態の解除が可能である領域からロック状態の解除が不可能な領域に移行する場合がある。
本実施の形態における運転制御では、1回目の機械圧縮比の低下を実施する前の状態に加えて、1回目の機械圧縮比の低下を実施した後の状態についても、2回目の機械圧縮比の低下が可能か否かを判別する。すなわち、1回目の機械圧縮比を低下した後の状態において、クラッチ70の回転力の伝達の遮断を解除するために必要な入力軸71の第3のトルクが、モータ59により入力軸71に供給可能な第2のトルクよりも小さいか否かを判別する。そして、第3のトルクが第2のトルクよりも小さい場合または等しい場合には機械圧縮比を低下させ、第3のトルクが第2のトルクよりも大きい場合には機械圧縮比の低下を禁止する制御を行う。この制御を行うことにより、機械圧縮比を低下させた後の状態から更に機械圧縮比を低下させる要求が生じた場合にも機械圧縮比を低下させることができる。
また、停止期間中に機械圧縮比を上昇させる場合についても同様に、機械圧縮比を上昇させることにより、機械圧縮比を低下させるためにロック状態を解除することが不可能な領域に移行する場合がある。本実施の形態においては、機械圧縮比を上昇させる場合にも、機械圧縮比を上昇した後の状態から機械圧縮比の低下が実施できるか否かを判別している。機械圧縮比を上昇した後の状態から機械圧縮比の低下が不可能な場合には、機械圧縮比の上昇を禁止する制御を行っている。そして、機関本体90の始動後に機械圧縮比を上昇させる制御を行っている。
図15に、本実施の形態における運転制御のフローチャートを示す。図15に示す運転制御は、たとえば、予め定められた時間間隔ごとに繰り返して行うことができる。
ステップ120においては、機関本体90が停止している状態か否かを判別する。例えば、機関回転数が零であるか否かを判別する。ステップ120において、機関本体90が運転期間中である場合には、この制御を終了する。ステップ120において、機関本体90が停止期間中である場合にはステップ121に移行する。
ステップ121においては、機械圧縮比の変更要求を検出したか否かを判別する。機械圧縮比の変更要求を検出していない場合には、この制御を終了する。機械圧縮比の変更要求を検出した場合には、ステップ122に移行する。
ステップ122においては、現在の機械圧縮比の状態における偏心軸角度θiと、機械圧縮比を変更した後の状態における偏心軸角度θjとを算出する。偏心軸角度θi,θjは、現在の機械圧縮比または目標の機械圧縮比に基づいて算出することができる。
次に、ステップ123においては、機械圧縮比を低下させるか否かを判別する。ステップ123において、機械圧縮比を低下させる場合には、ステップ124に移行する。なお、機械圧縮比を上昇させる場合については後述する。
ステップ124においては、機械圧縮比を低下する前の偏心軸角度、すなわち、現在の偏心軸角度θiが、偏心軸角度の下限判定値よりも大きく上限判定値よりも小さい範囲内か否かを判別する。すなわち、モータ59によりロック状態の解除が不可能な領域であるか否かを判別する。これらの判定値は予め定めておくことができる。本実施の形態においては、現在の偏心軸角度θiが図14に示す偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい範囲内か否かを判別する。ステップ124において、現在の偏心軸角度θiが偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい範囲内である場合には、機械圧縮比の低下を禁止し、ステップ125に移行する。
ステップ125においては、機関本体90を始動したときに機械圧縮比を低下させるフラグを1に設定する。このフラグは、機関本体90を始動した直後に読み込まれ、フラグが1である場合には、機械圧縮比を低下させる制御を行う。
ステップ124において、偏心軸角度θiが偏心軸角度θL以下または偏心軸角度θH以上である場合には、ステップ126に移行する。すなわち、モータ59によりクラッチ70のロック状態を解除できる場合には、ステップ126に移行する。
ステップ126においては、機械圧縮比を低下させた後の状態において、偏心軸角度θjが偏心軸角度の下限判定値よりも大きく上限判定値よりも小さい範囲内か否かを判別する。本実施の形態においては、図14に示す偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい範囲内か否かを判別する。すなわち、1回目の機械圧縮比の低下を実施した後の偏心軸角度θjの状態において、更に2回目の機械圧縮比の低下を実施することが可能か否かを判別する。
ステップ126において、偏心軸角度θjが偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい範囲内である場合には、ステップ125に移行する。この場合には、機械圧縮比の低下を禁止する制御を行う。ステップ126において、偏心軸角度θjが偏心軸角度θL以下である場合または偏心軸角度θH以上の場合には、ステップ127に移行する。ステップ127においては、目標の機械圧縮比まで低下させる制御を行う。
一方で、ステップ123において、機械圧縮比を上昇させる場合には、ステップ126に移行する。この後の制御は機械圧縮比を低下させる場合と同様であり、ステップ126においては、機械圧縮比を上昇した後の状態において、機械圧縮比を低下させることが可能か否かを判別する。機械圧縮比を上昇させた後の偏心軸角度θjが、偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい範囲内か否かを判別する。
ステップ126において、機械圧縮比を上昇した後の偏心軸角度θjが偏心軸角度θLよりも大きく偏心軸角度θHよりも小さい場合には、ステップ125に移行する。この場合においても機械圧縮比の上昇を禁止する制御を行う。ステップ125においては、機関本体90を始動した直後に機械圧縮比を上昇させるフラグを1に設定する。ステップ126において、偏心軸角度θjが偏心軸角度θL以下である場合または偏心軸角度θH以上である場合には、ステップ127に移行する。ステップ127においては、機械圧縮比を上昇させる制御を行う。
このように、本実施の形態においては、小型のモータ59を用いて機関本体90が停止している期間中に機械圧縮比の変更制御を行うことができる。
本実施の形態においては、機械圧縮比を変更する前に機械圧縮比の低下が可能か否かを判別し、更に、機械圧縮比を変更した後の状態から機械圧縮比を低下できるか否かを判別しているが、この形態に限られず、機械圧縮比を変更した後の状態は判別しなくても構わない。たとえば、1回目の機械圧縮比の変更では機械圧縮比を低下し、2回目の機械圧縮比の変更では機械圧縮比を上昇させることが予め定められている場合には、1回目の機械圧縮比の変更後の状態から機械圧縮比を低下できるか否かを判別しなくても構わない。
本実施の形態における逆入力遮断クラッチは、機械圧縮比が上昇する回転方向および機械圧縮比が低下する回転方向の両方向の入力軸からの回転力を出力軸に伝達し、出力軸からの両方向の回転力を遮断するように形成されているが、この形態に限られず、入力軸からの両方向の回転力を出力側に伝達し、機械圧縮比が低下する方向の出力軸からの回転力を遮断するように形成されていれば構わない。
本実施の形態においては、車両に取り付けられている内燃機関を例示して説明を行なったが、この形態に限られず、任意の装置や設備等に配置されている内燃機関に本発明を適用することができる。
上述のそれぞれの制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。
上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される変更が含まれている。