JP2014205332A - 防汚性部材、熱交換器、空気調和機、並びにコーティング組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、上記のような方法では、形成されたコーティング膜が剥離又は劣化し易いため、長期間の防汚性能を維持することができないという問題がある。ここで、本明細書における「防汚性能」とは、汚れが付着し難い性能及び/又は付着した汚れが除去され易い性能のことを意味する。
また、本発明は、上記の防汚性能に加えて、熱交換効率の低下及び露飛びが起こり難いコーティング膜を有する熱交換器及び空気調和機を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の特性を有するコーティング膜を与えるコーティング組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記のコーティング組成物の製造方法であって、前記シリカ粒子及び前記凝集剤を前記溶媒に加えて混合した後、前記フッ素樹脂粒子及び前記有機樹脂をさらに加えて混合することを特徴とするコーティング組成物の製造方法である。
以下、本発明の防汚性部材の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の防汚性部材の断面図である。図1において、本実施の形態の防汚性部材は、基材1と、基材1上に形成されたコーティング膜2とを有する。
コーティング膜2は、凝集体3及びフッ素樹脂粒子5が分散し且つ表面に露出して存在する、有機樹脂ベースの被膜(以下、「有機樹脂被膜6」という)である。また、凝集体3は、シリカ粒子4及びフッ素樹脂粒子5を含む。
さらに、長期間の使用により、何らかの要因で汚れがコーティング膜2に固着しても、溶媒を用いることで汚れを容易に除去することができる。例えば、有機樹脂被膜6が親水性である場合は水を、有機樹脂被膜6が疎水性である場合はアルコールをそれぞれ用いることで、有機樹脂被膜6が膨潤し、固着した汚れが除去され易くなる。そのため、このコーティング膜2を形成することにより、拭き取り等の作業が不要になる。
また、シリカ粒子4の平均粒径としては、特に限定されないが、5nm以上100nm以下であることが好ましい。この範囲の平均粒径を有するシリカ粒子4であれば、コーティング膜2により反射する光の散乱が小さくなるため、コーティング膜2の透明性が向上し、基材1の色調又は風合いを損なわないようにすることができる。ここで、本明細書における「平均粒径」とは、レーザー光散乱式又は動的光散乱式の粒度分布計で測定した時の平均粒径の値を意味する。
凝集剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。凝集剤の例としては、塩化物及び高分子凝集剤等が挙げられる。
塩化物の例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等の化合物が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子凝集剤としては、特に限定されず、ノニオン型、アニオン型、カチオン型又は両性型のものを用いることができる。
また、コーティング膜2に含有される全フッ素樹脂粒子5の60質量%以上は、凝集体3中に存在していることが好ましい。凝集体3中に存在するフッ素樹脂粒子5の量が60質量%未満であると、凝集体3の平均粒径が小さくなり、所望の凹凸構造を表面に有するコーティング膜2が得られ難くなることがある。ここで、コーティング膜2に含有される全フッ素樹脂粒子5に対する凝集体3に存在するフッ素樹脂粒子5の質量割合は、コーティング膜2の電子顕微鏡写真(例えば、走査型電子顕微鏡)を基にして算出することがでる。具体的には、走査型電子顕微鏡により撮影した画像(25μm×25μm)から全フッ素樹脂粒子5に対するフッ素樹脂粒子の割合を画像処理にて算出すればよい。
コーティング膜2を形成するために用いられるコーティング組成物は、シリカ粒子4、フッ素樹脂粒子5、有機樹脂、凝集剤及び溶媒を含む。また、このコーティング組成物において、凝集剤によってシリカ粒子4とフッ素樹脂粒子5の少なくとも一部との凝集体3が形成されている。
コーティング組成物に用いられる溶媒としては、特に限定されず、有機樹脂6の種類に応じて適切なものを用いればよい。例えば、有機樹脂6が水溶性である場合、溶媒として水を用いることができる。また、有機樹脂6が非水溶性である場合、溶媒としてアルコール等の有機溶媒を用いることができる。
ここで、シリカ粒子4は、それ自体を単独で用いてもよいが、作業性の観点から、各種溶媒に分散させた状態のもの、例えば、コロイダルシリカ等を用いることが好ましい。また、フッ素樹脂粒子5も同様に、それ自体を単独で用いてもよいが、各種溶媒に分散させた状態のものを用いてもよい。さらに、凝集剤についても、特に限定されず、粉末、分散液、ペースト、エマルジョン、又は溶液のものを用いることができる。
塗布方法としては、特に限定されず、浸漬、噴霧、はけ塗り等の周知の方法を用いることができる。また、乾燥は、室温下で行っても、加熱下で行ってもよい。室温下で乾燥を行う場合、気流を吹き付けることによって乾燥を促進させることができる。また、加熱下で乾燥を行う場合、温風を吹き付けてもよいし、加熱炉中で乾燥させてもよい。
本発明の熱交換器は、実施の形態1の防汚性部材を備えている。
以下、本発明の熱交換器の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図2は、本実施の形態の熱交換器の斜視図である。図2において、本実施の形態の熱交換器は、冷媒が通るパイプ11と、パイプ11に取り付けられた多数枚のフィン12とから構成されている。そして、パイプ11及びフィン12の少なくともいずれかの表面に、コーティング膜2が形成されている(図示していない)。このコーティング膜2は、防汚性能に優れているため、汚れによる見た目の悪化、並びに汚れを起因とするカビ及び細菌の繁殖等の衛生上の問題や熱交換器の性能低下を防止することができる。さらに、このコーティング膜2は、凝集体3を構成するシリカ粒子4に起因する親水性部分が存在するため、水滴によるフィン12の間のブリッジを防止し、露飛び及び熱交換器の性能低下を防止することもできる。よって、本発明の熱交換器は、特に、室内用の空気調和機において使用するのに最適である。
本発明の空気調和機は、実施の形態1の防汚性部材を備えている。
以下、本発明の空気調和機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
図3は、本実施の形態の空気調和機の断面図である。図3において、空気調和機は、ファン21と、熱交換器22と、ベーン23と、フラップ24とを具備する。そして、ファン21、熱交換器22、ベーン23、フラップ24の少なくともいずれかの表面にコーティング膜2が形成されている(図示していない)。このコーティング膜2は、防汚性能に優れているため、汚れによる見た目の悪化、並びに汚れを起因とするカビ及び細菌の繁殖等の衛生上の問題や熱交換器の性能低下を防止することができる。さらに、このコーティング膜2は、凝集体3を構成するシリカ粒子4に起因する親水性部分が存在するため、水滴が付着した場合であっても露飛びを防ぐことができる。
以下の実施例及び比較例では、基材として、幅:24mm、長さ:100mm、厚さ:0.1mmのステンレス基材を用いた。
平均粒径10nmのシリカ粒子を含むコロイダルシリカ(日産化学株式会社製)及び塩化ナトリウムを脱イオン水に加えて撹拌混合した後、平均粒径250nmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製)及びポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製)をさらに加えて撹拌混合することにより、コーティング組成物を調製した。ここで、このコーティング組成物の組成は、シリカ粒子の含有量が2質量%、塩化ナトリウムの含有量が0.01質量%、フッ素樹脂粒子の含有量が1質量%、ポリビニルアルコールの含有量が10質量%、溶媒(脱イオン水等)の含有量が残部となるように設定した。
次に、このコーティング組成物をステンレス基材に塗布した後、60℃の温風を吹き付けて乾燥させることにより、コーティング膜を形成した。
コーティング組成物におけるシリカ粒子の含有量が5質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
(実施例3)
コーティング組成物におけるシリカ粒子の含有量が1質量%、フッ素樹脂粒子の含有量が0.5質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
フッ素樹脂粒子として平均粒径550nmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
(実施例5)
コーティング組成物における塩化ナトリウムの含有量が0.002質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
コーティング組成物における塩化ナトリウムの含有量が0.03質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
(実施例7)
コーティング組成物におけるポリビニルアルコールの含有量が2質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
コーティング組成物におけるポリビニルアルコールの含有量が50質量%となるように設定したこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
塩化ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
(比較例2)
フッ素樹脂粒子を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
(比較例3)
ポリビニルアルコールを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、このコーティング組成物を用いてステンレス基材上にコーティング膜を形成した。
ここで、コーティング膜に含有される凝集体の平均粒径a及び凝集体間の平均間隔は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ株式会社製S−3000N)を用いて測定し、その平均を求めた。また、有機樹脂被膜の表面に露出した凝集体の平均高さbは、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製サーフコーダSE4000)を用いて測定し、その平均を求めた。
上記の各評価結果を表1に示す。
各種汚れに対する初期の付着性については、汚れ物質として、カーボン粉塵(カーボンブラック)、関東ローム粉塵及びナイロンパイル(50μm)を用いた。
上記の各評価結果を表2に示す。
これに対して比較例1及び2のコーティング膜は、カーボン粉塵、関東ローム粉塵及びナイロンパイルのいずれかの付着が多く、汚れ除去効果も低かった。また、比較例3のコーティング膜は、カーボン粉塵、関東ローム粉塵及びナイロンパイルの付着が少なかったものの、汚れ除去効果が低かった。
一方、比較例1のコーティング膜は、凝集体が存在しないため、適切な凹凸構造を有しておらず、防汚性能が低下したものと考えられる。また、比較例2のコーティング膜は、フッ素樹脂粒子が存在していないため、関東ローム粉塵(親水性汚れ)に対する防汚性能が十分でなかったものと考えられる。また、比較例3のコーティング膜は、有機樹脂をベースとしていないため、汚れ除去効果が低かったものと考えられる。
Claims (12)
- 基材と、前記基材上に形成されたコーティング膜とを有する防汚性部材であって、
前記コーティング膜が、シリカ粒子及びフッ素樹脂粒子を含む凝集体とフッ素樹脂粒子とが分散し且つ表面に露出して存在する有機樹脂被膜であることを特徴とする防汚性部材。 - 前記コーティング膜に含有される全フッ素樹脂粒子の60質量%以上が前記凝集体中に存在していることを特徴とする請求項1に記載の防汚性部材。
- 前記シリカ粒子の凝集体は、1μm以上10μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚性部材。
- 前記シリカ粒子は、5nm以上100nm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚性部材。
- 前記凝集体の平均粒径をa(μm)、前記有機樹脂被膜の表面に露出した前記凝集体の平均高さをb(μm)とした場合に、b/aが0.3以上1.2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の防汚性部材。
- 前記凝集体は、0.1μm以上1.5μm以下の平均間隔を置いて前記コーティング膜中に分散していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の防汚性部材。
- 前記フッ素樹脂粒子は、80nm以上550nm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の防汚性部材。
- 前記有機樹脂被膜の厚さは、0.2μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚性部材。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の防汚性部材を備えた熱交換器であって、
冷媒が通るパイプと、前記パイプに取り付けられた多数枚のフィンとを具備し、前記パイプ及び前記フィンの少なくともいずれかの表面に前記コーティング膜が形成されていることを特徴とする熱交換器。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の防汚性部材を備えた空気調和機であって、
ファンと、熱交換器と、ベーンと、フラップとを具備し、前記ファン、前記熱交換器、前記ベーン及び前記フラップの少なくともいずれかの表面に前記コーティング膜が形成されていることを特徴とする空気調和機。 - シリカ粒子、フッ素樹脂粒子、有機樹脂、凝集剤及び溶媒を含むコーティング組成物であって、前記凝集剤によって前記シリカ粒子と前記フッ素樹脂粒子の少なくとも一部との凝集体が形成されていることを特徴とするコーティング組成物。
- 請求項11に記載のコーティング組成物の製造方法であって、
前記シリカ粒子及び前記凝集剤を前記溶媒に加えて混合した後、前記フッ素樹脂粒子及び前記有機樹脂をさらに加えて混合することを特徴とするコーティング組成物の製造方法。
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