JP2012116037A - 防汚性部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無機微粒子からなる親水性被膜中に扁平状のフッ素樹脂粒子を含む防汚性被膜を有する防汚性部材であって、前記扁平状のフッ素樹脂粒子は、最短径に対する最長径の比が3以上であることを特徴とする防汚性部材とする。また、前記扁平状のフッ素樹脂粒子と前記無機微粒子との間には、前記フッ素樹脂粒子と前記無機微粒子とを含む混合層が形成されていてもよい。
【選択図】図1
Description
すなわち、本発明は、無機微粒子からなる親水性被膜中に扁平状のフッ素樹脂粒子を含む防汚性被膜を有する防汚性部材であって、前記扁平状のフッ素樹脂粒子は、最短径に対する最長径の比が3以上であることを特徴とする防汚性部材である。
また、本発明は、フッ素樹脂を溶解した油相と水相とからなる水中油型エマルションに無機微粒子を分散してなるコーティング組成物を基材に塗布し、乾燥させて防汚性被膜を形成することを特徴とする防汚性部材の製造方法である。
本実施の形態の防汚性部材は、無機微粒子からなる親水性被膜中に扁平状のフッ素樹脂粒子を含む防汚性被膜を有する防汚性部材である。
以下、図面を参照して本実施の形態の防汚性部材について説明する。
図1は、本実施の形態の防汚性部材の断面図である。図1において、防汚性部材は、基材1と、基材1上に形成された防汚性被膜2とから構成される。防汚性被膜2は、無機微粒子3からなる親水性被膜中に扁平状のフッ素樹脂粒子4を含む。
また、防汚性被膜2の形成を容易にするために、シリカやアルミナなどの金属酸化物のゾル、ナトリウムシリケートやリチウムシリケートなどの各種シリケート、金属アルキレート、リン酸アルミやρ−アルミナなどの一般的なバインダーを無機微粒子3と共に用いてもよい。なお、バインダーが無機微粒子3を含有していれば、そのバインダーを単独で用いることも可能である。
扁平状のフッ素樹脂粒子4において、最短径に対する最長径の比(最長径/最短径)は3以上、好ましくは3以上8以下である。ここで、本明細書における扁平状のフッ素樹脂粒子4の「最長径」及び「最短径」とは、防汚性被膜2又は防汚性被膜2から分離したフッ素樹脂粒子4をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定し、その画像に基づいて測定されるフッ素樹脂粒子4の径の最大値及び最小値をそれぞれ意味する。最短径に対する最長径の比が3未満であると、防汚性被膜2の表面の凹凸が大きくなるため、凹凸に汚れが捕捉され易くなり、所望の防汚性能が得られなかったり、光沢を有する基材1に防汚性被膜2を形成した場合に基材1の光沢を低下させたりする。一方、最短径に対する最長径の比が8を超えると、フッ素樹脂粒子4が防汚性被膜2の表面に露出し難くなったり、表面に凹凸が形成され易くなったりすることがある。
コーティング組成物に使用可能な水性媒体としては、特に限定されず、一般に水である。また、水と相溶する極性溶剤や、水及び水と相溶する極性溶剤の混合物を用いてもよい。
水としては、特に限定されないが、水に含まれるミネラル分の量が多い場合には、無機微粒子3の平均粒径が小さかったり、濃度が高かったりすると、無機微粒子3の凝集が生じることがある。そのため、脱イオン水を用いることが好ましい。しかし、無機微粒子3の凝集が生じない場合には、水道水などの使用も可能である。
なお、コーティング組成物における無機微粒子3とフッ素樹脂粒子4との質量比は、防汚性被膜2における無機微粒子3とフッ素樹脂粒子4との質量比と同じである。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、各種のアニオン系又はノニオン系の界面活性剤が挙げられる。この界面活性剤の中でも、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックポリマーやポリカルボン酸型アニオン系界面活性剤などの起泡性の低い界面活性剤は使用し易いので好ましい。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、各種のアルコール系、グリコール系、エステル系、エーテル系などのものが挙げられる。
シラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシランやメチルトリクロロシランなどのハロゲン含有物、ジメチルジメトキシシランやメチルトリメトキシシランなどのアルキル基含有物、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物、メチルメトキシシロキサンなどのオリゴマーが挙げられる。
上記の任意成分の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されず、選択した成分にあわせて適宜調整すればよい。
まず、無機微粒子3の分散液を調製する。この分散液は、無機微粒子3が水性媒体中に分散されたものであればよく、市販のもの(例えば、コロイダルシリカや酸化チタンゾルなど)を用いてもよい。次に、この分散液にフッ素樹脂粒子4やその他の成分を配合して混合攪拌すればよい。
また、ムラが少ない防汚性被膜2を得るため、気流などを用いて余分なコーティング組成物を基材1から除去してもよい。また、浸漬の場合にはコーティング組成物から基材1をゆっくり引き上げたり、浸漬やかけ塗りの場合には基材1を回転させるなどして余分なコーティング組成物を振り切ったりすることで、防汚性被膜2のムラを少なくすることができる。さらに、より確実に防汚性被膜2のムラを少なくしたり、防汚性被膜2を厚くしたい場合には、上記の操作を繰り返してもよい。
本実施の形態の防汚性部材は、実施の形態1の防汚性部材と基本的な構成は同じであるが、扁平状のフッ素樹脂粒子と無機微粒子との間に、フッ素樹脂粒子と無機微粒子とを含む混合層が形成されている点で異なる。
以下、図面を参照して、本実施の形態の防汚性部材を説明する。なお、実施の形態1の防汚性部材と同じ構成は説明を省略する。
このような構成を有する防汚性被膜2は、扁平状のフッ素樹脂粒子4と無機微粒子3との間の接着性が混合層5によって高められ、フッ素樹脂粒子4と無機微粒子3との間の剥離が起こり難くなっているため、強度(耐摩耗性)がより一層高くなる。
防汚性被膜2を加熱処理することにより、無機微粒子3と接していたフッ素樹脂粒子4が溶解して無機微粒子3を包み込み、混合層5が形成される。また、この加熱処理によって、防汚性被膜2の表面に凸状に露出していたフッ素樹脂粒子4が溶解して平坦化し、防汚性被膜2の平滑性もより一層高まる。
加熱処理は、空気中で行うこともできるが、空気中での加熱によって無機微粒子3から構成される親水性被膜が疎水化し、親油性汚れが付着し易くなることがある。そのため、親水性被膜の疎水化を防止する観点から、グリセリンやエチレングリコールなどの高沸点溶剤中で加熱処理を行うことが好ましい。
このコーティング組成物に用いられるフッ素樹脂は、防汚性被膜2においてフッ素樹脂粒子4となる成分であり、上記したフッ素樹脂を用いることができる。このフッ素樹脂を溶解して油相を与える溶剤としては、水相と混和しない溶剤であれば特に限定されず、フッ素樹脂の種類にあわせて適宜選択すればよい。溶剤の例としては、キシレン、トルエン、各種フッ素系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、水中油型エマルションにおける油相と水相との割合は、水中油型となれば特に限定されない。また、水中油型エマルションに用いられる乳化剤も特に限定されず、上記したような界面活性剤を用いればよい。
まず、無機微粒子3の分散液を調製する。この分散液は、無機微粒子3が水性媒体中に分散されたものであればよく、市販のもの(例えば、コロイダルシリカや酸化チタンゾルなど)を用いてもよい。他方、フッ素樹脂エマルションを調製する。このフッ素樹脂エマルジョンは、市販のものを用いることができる。次に、無機微粒子3の分散液、フッ素樹脂エマルション、及び必要であれば水を混合して攪拌すればよい。
(実施例1)
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、平均粒径0.25μmのPTFE粒子(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製31JR)、及びN−メチルピロリドンを脱イオン水に配合して混合した後、湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製ナノマイザー)を用い、250MPa、5パスの条件で攪拌処理した。この混合物において、固形分であるシリカ微粒子及びPTFE粒子の含有量をそれぞれ10質量%及び5質量%とし、N−メチルピロリドンの含有量を5質量%とした。次に、この混合物を、脱イオン水で10倍に希釈し、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物中の固形分濃度は1.5質量%であった。
次に、このコーティング組成物にABS基材を浸漬させた後、ABS基材を引き上げ、100℃で2分間乾燥させることによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.2μmであった。
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、リチウムシリケート、平均粒径0.25μmのPTFE粒子(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製31JR)、及びN−メチルピロリドンを脱イオン水に配合して混合した後、湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製ナノマイザー)を用い、250MPa、5パスの条件で攪拌処理した。この混合物において、固形分であるシリカ微粒子、リチウムシリケート及びPTFE粒子の含有量をそれぞれ8質量%、2質量及び5質量%とし、N−メチルピロリドンの含有量を5質量%とした。次に、この混合物を、脱イオン水で10倍に希釈し、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物中の固形分濃度は1.5質量%であった。
次に、このコーティング組成物にABS基材を浸漬させた後、ABS基材を引き上げ、100℃で2分間乾燥させることによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.35μmであった。
湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製ナノマイザー)を用いた攪拌処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.21μmであった。
(比較例2)
湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製ナノマイザー)を用いた攪拌処理を行わなかったこと以外は実施例2と同様にしてコーティング組成物を調製し、防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.34μmであった。
次に、親水性汚れ及び親油性汚れに対する防汚性被膜の防汚性能を評価した。親水性汚れは、関東ロームをエアーで防汚性被膜に一定量吹き付け、関東ロームの付着による着色を目視観察にて五段階評価した。また、親油性汚れは、カーボンブラックをエアーで防汚性被膜に一定量吹き付け、カーボンブラックの付着による着色を目視観察にて五段階評価した。これらの評価結果を表1に示す。なお、これらの評価結果において、着色がほとんどないものを1とし、着色が著しいものを5と表記する。
次に、防汚性被膜の光沢度を評価した。防汚性被膜の光沢度は、光沢度計(株式会社堀場製作所製IG−320)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
なお、参考のために、上記の実施例及び比較例で基材として用いたABS基材自体についても、親水性汚れ及び親油性汚れに対する防汚性能、並びに光沢度を評価した。
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、フルオロエチレン/ビニルエステル系エマルション(フッ素樹脂エマルション、DIC株式会社製フルオネートFEM−600)を脱イオン水に配合して混合することによってコーティング組成物を得た。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量を2質量%、フッ素樹脂の含有量を0.3質量%とした。また、このコーティング組成物において、油相の粒径は0.15μm、油相中のフッ素樹脂の濃度は50質量%であった。
次に、このコーティング組成物にステンレス基材を浸漬させた後、ステンレス基材を引き上げ、60℃で5分間乾燥させることによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.6μmであった。
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、フルオロエチレン/ビニルエーテル系エマルション(フッ素樹脂エマルション、旭硝子株式会社製ルミフロンFE−4400)を脱イオン水に配合して混合することによってコーティング組成物を得た。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量を2質量%、フッ素樹脂の含有量を0.3質量%とした。また、このコーティング組成物において、油相の粒径は0.16μm、油相中のフッ素樹脂の濃度は40質量%であった。
次に、このコーティング組成物にステンレス基材を浸漬させた後、ステンレス基材を引き上げ、60℃で5分間乾燥させることによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.3μmであった。
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、及び平均粒径0.25μmのPTFE粒子を含有するPTFEディスパージョンを脱イオン水に配合して混合することによってコーティング組成物を得た。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量を2質量%、PEFE粒子の含有量を0.5質量%とした。
次に、このコーティング組成物にステンレス基材を浸漬させた後、ステンレス基材を引き上げ、60℃で5分間乾燥させることによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.3μmであった。
次に、親水性汚れ及び親油性汚れに対する防汚性被膜の防汚性能、防汚性被膜の耐摩耗性、並びに防汚性被膜の光沢度を上記と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
なお、参考のために、上記の実施例及び比較例で基材として用いたステンレス基材についても、親水性汚れ及び親油性汚れに対する防汚性能、並びに光沢度を評価した。
平均粒径5nmのシリカ微粒子を含有するコロイダルシリカ、平均粒径0.25μmのPTFE粒子(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製31JR)、及びエタノールを脱イオン水に配合して混合し、コーティング組成物を得た。このコーティング組成物において、固形分であるシリカ微粒子及びPTFEの含有量をそれぞれ1質量%及び0.5質量%とし、エタノール及び脱イオン水の含有量をそれぞれ15質量%及び83.5質量%とした。
次に、このコーティング組成物にステンレス基材を浸漬させた後、ステンレス基材を引き上げ、室温(25℃)にて30秒風乾させた後、200℃のオーブンで2分間加熱し、防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.15μmであった。
実施例5と同様のコーティング組成物にステンレス基材を浸漬させた後、ステンレス基材を引き上げ、室温(25℃)にて30秒間風乾させた。次に、このステンレス基板を、230℃に加熱したグリセリンに浸漬して2分間加熱した後、ステンレス基材を引き上げ、水洗することによって防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.16μmであった。
200℃のオーブンでの加熱処理を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして防汚性被膜を形成した。この防汚性被膜の厚さは0.21μmであった。
次に、親水性汚れ及び親油性汚れに対する防汚性被膜の防汚性能、防汚性被膜の耐摩耗性、並びに防汚性被膜の光沢度を上記と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
Claims (5)
- 無機微粒子からなる親水性被膜中に扁平状のフッ素樹脂粒子を含む防汚性被膜を有する防汚性部材であって、
前記扁平状のフッ素樹脂粒子は、最短径に対する最長径の比が3以上であることを特徴とする防汚性部材。 - 前記扁平状のフッ素樹脂粒子と前記無機微粒子との間に、前記フッ素樹脂粒子と前記無機微粒子とを含む混合層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防汚性部材。
- 前記無機微粒子はシリカ微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚性部材。
- フッ素樹脂を溶解した油相と水相とからなる水中油型エマルションに無機微粒子を分散してなるコーティング組成物を基材に塗布し、乾燥させて防汚性被膜を形成することを特徴とする防汚性部材の製造方法。
- 前記無機微粒子はシリカ微粒子であることを特徴とする請求項4に記載の防汚性部材の製造方法。
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