JP2014202283A - 無段変速機 - Google Patents

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晃 日比野
Akira Hibino
晃 日比野
小川 裕之
Hiroyuki Ogawa
裕之 小川
有希 荒津
Yuki Aratsu
有希 荒津
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Abstract

【課題】潤滑油による撹拌損失増大を抑えつつ接触部での潤滑油の油量を確保すること。
【解決手段】シャフト60と、第1及び第2の回転部材10,20と、サンローラ30と、キャリア40と、複数の遊星ボール50と、各遊星ボール50を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、第1及び第2の回転部材10,20と遊星ボール50との間の接触部P1,P2に潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置と、を備える。そして、その潤滑油供給装置は、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aよりも径方向内側で且つサンローラ30の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う遊星ボール50の間に配置され、潤滑油の供給先に向けた噴射口91a,91bを有するノズル部材91を備えること。
【選択図】図1

Description

本発明は、共通の回転中心軸を有する複数の動力伝達要素と、その回転中心軸に対して放射状に複数配置した転動部材と、を備え、各動力伝達要素の内の2つに挟持された各転動部材を傾転させることによって入出力間の変速比を無段階に変化させるトラクションドライブ型の無段変速機に関する。
従来、この種の無段変速機としては、回転中心となる変速機軸と、この変速機軸を中心にして放射状に複数配置された転動部材と、各転動部材を挟み込み、変速機軸の中心軸を回転中心軸にした相対回転が可能な複数の動力伝達要素と、を備えたボールプラネタリ式のものが知られている。このボールプラネタリ式の無段変速機においては、対向させて配置した第1動力伝達要素と第2動力伝達要素の夫々の内周面側で各転動部材を挟持すると共に、その各転動部材を第3動力伝達要素の外周面上に配置している。下記の特許文献1には、その様なボールプラネタリ式の無段変速機が開示されている。この特許文献1の無段変速機においては、各転動部材の支持軸の両端を各々保持する2枚のプレートが設けられており、その各プレートの内の一方を回転させることによって各転動部材を傾転させる。また、この種の無段変速機においては、動力伝達要素と転動部材との間の接触部に潤滑油(トラクション油)を供給し、その間にトラクション力を発生させることで、その間でのトルク伝達を行う。例えば、下記の特許文献2の無段変速機は、変速機軸内に軸心油路と径方向油路とを備え、これらの油路を介して潤滑油を変速機内に供給することで、動力伝達要素と転動部材との接触部に潤滑油を送っている。
特表2012−501418号公報 特表2008−516165号公報
ところで、特許文献2に示す様な潤滑油の供給形態は、動力伝達要素と転動部材との接触部における潤滑油の油量不足を招く可能性がある。例えば、この供給形態は、第3動力伝達要素と転動部材との接触部に比べて、これよりも径方向の外側に位置する第1及び第2の動力伝達要素と転動部材との接触部への潤滑油の供給量が少なくなることがある。これが為、高負荷運転状態が続いた場合には、第1及び第2の動力伝達要素と転動部材との接触部における潤滑油の油量が足りなくなる可能性がある。ここで、この様な事態を解消するべく、変速機内の潤滑油の油量を増加させることが考えられるが、この場合には、その潤滑油による撹拌損失が増大し、トルクの伝達効率が低下してしまう虞がある。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、潤滑油による撹拌損失の増大を抑えつつ接触部における潤滑油の油量の確保が可能な無段変速機を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、本発明は、回転中心となる変速機軸と、前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で周方向に相対回転が可能な第1から第4の動力伝達要素と、第2回転中心軸を有し、前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記第3動力伝達要素の外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面で挟持され且つ前記第4動力伝達要素で傾転自在に保持された転動部材と、前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、前記第1及び第2の動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面に向けて潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置と、を備え、前記潤滑油供給装置は、前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面よりも径方向内側で且つ前記第3動力伝達要素の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う前記転動部材の間に配置され、潤滑油の供給先に向けた噴射口を有するノズル部材を備えることを特徴としている。
ここで、前記第4動力伝達要素は、前記各転動部材を傾転方向に各々案内する第1円盤部と、前記変速装置の構成部材の1つであり、前記第1回転中心軸を中心とする回転で前記各転動部材を傾転させる第2円盤部と、を備え、前記ノズルは、前記第1円盤部に固定し、該第1円盤部の内部の油路を介して潤滑油が供給されることが望ましい。
また、前記第2円盤部は、該第2円盤部の回転を前記ノズルによって妨げられない凹み又は貫通孔を有することが望ましい。
また、前記ノズルは、前記変速機軸の軸線方向に延在させた円柱状の外形を有する第1ノズル部材と、同心の当該第1ノズル部材が挿入された円柱状の内部空間を有する第2ノズル部材と、該第2ノズル部材を自らの軸線を中心に前記第1ノズル部材に対して相対回転させるノズル駆動部と、を備え、前記第1ノズル部材は、前記第1円盤部に固定され、該第1円盤部の内部の油路から潤滑油が供給される内部空間と、前記内部空間と外周面側とを連通させた少なくとも1つの前記噴射口と、を有し、前記第2ノズル部材は、前記円柱状の内部空間と外壁面側とを連通させ、第1供給先としての前記第1動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第1動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面への潤滑油の供給が可能な第1噴射口と、前記円柱状の内部空間と外壁面側とを連通させ、第2供給先としての前記第2動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第2動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面への潤滑油の供給が可能な第2噴射口と、を有し、前記ノズル駆動部は、前記第2ノズル部材を前記第1ノズル部材に対して相対回転させることで、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口との連通状態及び前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口との連通状態を変化させ、増速側の変速比のときに、前記第2噴射口よりも前記第1噴射口からの潤滑油の供給量を増加させる一方、減速側の変速比のときに、前記第1噴射口よりも前記第2噴射口からの潤滑油の供給量を増加させることが望ましい。
また、前記ノズル駆動部は、最も増速側の変速比のときに、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口とを連通させると共に、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口とを連通させない一方で、最も減速側の変速比のときに、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口とを連通させると共に、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口とを連通させないことが望ましい。
また、前記変速機軸と前記第1から第4の動力伝達要素と前記転動部材と前記ノズルを収納する筐体を設け、前記第4動力伝達要素は、前記各転動部材を傾転方向に各々案内する第1円盤部と、前記変速装置の構成部材の1つであり、前記第1回転中心軸を中心とする回転で前記各転動部材を傾転させる第2円盤部と、を備え、前記潤滑油供給装置は、前記筐体を貫通するまで前記ノズルを延在させ、該延在させた端部から当該ノズルに潤滑油が供給されるよう構成し、前記第2円盤部は、その回転を前記ノズルが邪魔しない位置に配置することが望ましい。
また、前記ノズルは、前記各転動部材の夫々の傾転中心を繋ぐ円周よりも径方向外側に配置することが望ましい。
本発明に係る無段変速機においては、接触部又はその近傍における第1及び第2の動力伝達要素の内周面若しくは転動部材の表面に向けて潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置を備えているので、潤滑油による撹拌損失の増大を抑えつつ、その接触部への安定した潤滑油の供給を行うことができる。従って、この無段変速機は、トルク伝達効率の低下を抑えつつ、その接触部における潤滑油の油量を確保することができる。故に、この無段変速機は、トルク伝達効率の低下を抑えたトラクション力の発生が可能になる。そして、この無段変速機は、潤滑油の油量の確保に伴い過大な発熱を抑えることができるので、耐久性の低下も抑えることができる。更に、この無段変速機においては、その潤滑油供給装置のノズル部材を転動部材の間にできた隙間に配置するので、接触部への安定した潤滑油供給を体格の大型化を抑えつつ実現することができる。
図1は、本発明に係る無段変速機の実施例における構成の一例を示す断面図である。 図2は、本発明に係る無段変速機における無段変速機構の構成の一例を示す断面図である。 図3は、キャリアの一方の固定円盤部とノズルについて説明する図である。 図4は、キャリアにおける他方の固定円盤部と回転円盤部とノズルについて説明する図である。 図5は、無段変速機を図2のA−A線又はB−B線で切った断面図である。 図6は、本発明に係る無段変速機の変形例1における構成の一例を示す断面図である。 図7は、変形例1における回転円盤部とノズルについて説明する図である。 図8は、本発明に係る無段変速機の変形例2における構成の一例を示す断面図である。 図9は、変形例2のノズルについて説明する図である。 図10は、変形例2における回転円盤部とノズルについて説明する図である。 図11は、変形例2のノズルを図9の矢印Xの方向にみた図である。 図12は、変形例2のノズルを図9の矢印Xの方向にみた図であって、増速時のノズルの動きを示したものである。 図13は、変形例2のノズルを図9の矢印Xの方向にみた図であって、減速時のノズルの動きを示したものである。 図14は、本発明に係る無段変速機の変形例3における構成の一例を示す断面図である。 図15は、変形例3のノズルについて説明する図である。 図16は、本発明に係る無段変速機の変形例4における構成の一例を示す断面図である。 図17は、変形例4における回転円盤部と貯留部について説明する図である。
以下に、本発明に係る無段変速機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施例]
本発明に係る無段変速機の実施例を図1から図5に基づいて説明する。
最初に、本実施例のトラクションドライブ型の無段変速機の一例について図1を用いて説明する。この無段変速機は、トラクション遊星機構に相当するボールプラネタリ式の無段変速機構を備えたものである。図1及び図2の符号1は、本実施例におけるボールプラネタリ式の無段変速機の一例を示す。
本実施例の無段変速機構は、共通の第1回転中心軸R1を有する4つの動力伝達要素と、第1回転中心軸R1を中心にして放射状に配置された複数の転動部材と、4つの動力伝達要素の回転中心に配置した変速機軸と、を備える。転動部材は、第1回転中心軸R1とは異なる第2回転中心軸R2を有するものであり、自身の第2回転中心軸R2と第1回転中心軸R1とを含む傾転平面上での傾転動作が可能である。以下においては、特に言及しない限り、その第1回転中心軸R1に沿う方向を軸線方向と云い、その第1回転中心軸R1周りの方向を周方向と云う。また、その第1回転中心軸R1に直交する方向を径方向と云い、その中でも、内方に向けた側を径方向内側、外方に向けた側を径方向外側と云う。
この無段変速機構は、4つの動力伝達要素の内の3つ(第1から第3の動力伝達要素)で各転動部材を挟持すると共に、残りの動力伝達要素(第4動力伝達要素)で各転動部材を自転自在で且つ傾転自在に保持する。各転動部材は、第1回転中心軸R1を中心にして放射状に配置される。そして、各転動部材は、軸線方向において対向させて配置された第1及び第2の動力伝達要素に挟持され、且つ、第3動力伝達要素の外周面上に配置される。
この無段変速機構は、第1から第4の動力伝達要素の間で各転動部材を介したトルクの伝達を行うことができる。例えば、この無段変速機構は、第1から第3の動力伝達要素と各転動部材との間にトラクション力(接線力)を発生させることで、その第1から第3の動力伝達要素の間での各転動部材を介したトルク(動力)の伝達を行うことができる。そのトラクション力は、第1及び第2の動力伝達要素の内の少なくとも一方を各転動部材に押し付けることによって発生させる。更に、この無段変速機構では、第4動力伝達要素の回転を許容することで、第4動力伝達要素と各転動部材との間におけるトルクの伝達も可能である。
また、この無段変速機構においては、夫々の転動部材の第2回転中心軸R2を傾転平面上で第1回転中心軸R1に対して傾倒させ、各転動部材を傾転させることによって、入出力間の回転速度(回転数)の比、つまり変速比γを変える。
この無段変速機構は、第1から第4の動力伝達要素の全てが変速機軸に対して相対回転可能な回転要素として用いられるものもあれば、第1から第4の動力伝達要素の内の何れか1つを変速機軸に対して相対回転できぬ固定要素として用いるものもある。前者の構成の場合には、第1から第4の動力伝達要素の内の何れか1つがトルクの入力部となり、これとは別の1つがトルクの出力部となる。一方、後者の構成の場合には、固定要素以外の3つの動力伝達要素の間で各転動部材を介したトルクの伝達が行われるので、その3つの動力伝達要素の内の何れか1つがトルクの入力部となり、これとは別の1つがトルクの出力部となる。これが為、この無段変速機構においては、入力部となる動力伝達要素と出力部となる動力伝達要素との間の回転速度(回転数)の比が変速比γとなる。例えば、この無段変速機1は、車両の動力伝達経路上に配設される。その際には、その入力部が機関(内燃機関等のエンジン)や回転機(電動機等)などの動力源側に連結され、その出力部が駆動輪側に連結される。この無段変速機1と駆動輪側との間には、別の変速機(例えば有段の手動変速機又は自動変速機等)を介在させる場合もある。この無段変速機1においては、入力部としての動力伝達要素にトルクが入力された場合の各動力伝達要素の回転動作を正駆動と云い、出力部としての動力伝達要素に正駆動時とは逆方向のトルクが入力された場合の各動力伝達要素の回転動作を逆駆動と云う。例えば、この無段変速機1は、先の車両の例示に従えば、加速等の様に動力源側からトルクが入力部たる動力伝達要素に入力されて当該動力伝達要素を回転させているときが正駆動となり、減速等の様に駆動輪側から出力部たる回転中の動力伝達要素に正駆動時とは逆方向のトルクが入力されているときが逆駆動となる。
ここで、この無段変速機構においては、第1及び第2の動力伝達要素がトラクション遊星機構で云うところのリングギヤ等の機能を為すものとなる。また、第3動力伝達要素と第4動力伝達要素は、各々トラクション遊星機構におけるサンローラとキャリアとして機能する。また、転動部材は、トラクション遊星機構におけるボール型ピニオンとして機能する。従って、この無段変速機構は、第1及び第2の動力伝達要素としての第1及び第2の回転部材10,20と、第3動力伝達要素としてのサンローラ30と、第4動力伝達要素としてのキャリア40と、転動部材としての遊星ボール50と、変速機軸としてのシャフト60と、を備える。そのシャフト60は、無段変速機1の筐体CAや図示しない車体等の様な不動部に固定したものであり、その不動部に対して相対回転させぬよう構成した円柱状又は円筒状の固定軸とする。この無段変速機1においては、傾転平面上で第1回転中心軸R1と第2回転中心軸R2とが平行になっている状態(図1及び図2の状態)を基準位置としている。以下に、この無段変速機1における無段変速機構について図2を用いて詳述する。
第1及び第2の回転部材10,20は、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させた円盤部材(ディスク)や円環部材(リング)であり、軸線方向で対向させて各遊星ボール50を挟み込むように配設する。この例示においては、双方とも円環部材とする。
この無段変速機1においては、第1及び第2の回転部材10,20と各遊星ボール50とが互いに点接触(厳密には楕円形状の面接触)している接触部P1,P2を有する。各遊星ボール50は、後で詳述するが転動面としての外周曲面を有しており、その外周曲面において第1及び第2の回転部材10,20に挟持される。つまり、各遊星ボール50は、その外周曲面に接触部P1,P2を有する。一方、第1及び第2の回転部材10,20は、各遊星ボール50を径方向外側から挟持するものであり、その内周面10a,20aに接触部P1,P2を各々有する。その内周面10a,20aにおいては、各遊星ボール50に対して実際に接触している接触部P1,P2と、第1及び第2の回転部材10,20の回転に伴い接触部P1,P2となる部分(以下、「接触予備部」と云う。)と、が周方向に連なっている。即ち、その接触予備部は、第1及び第2の回転部材10,20が回転することで、遊星ボール50に接触したり遊星ボール50から離れたりを繰り返す部分である。第1及び第2の回転部材10,20の接触部P1,P2や接触予備部における形状は、例えば、遊星ボール50の外周曲面の曲率と同等の曲率の凹円弧面、その外周曲面の曲率とは異なる曲率の凹円弧面、凸円弧面又は平面等を成している。そして、この第1及び第2の回転部材10,20の接触部P1,P2や接触予備部における形状は、第1及び第2の回転部材10,20から遊星ボール50に向けて軸線方向の力(押圧力)が加わった際に、その遊星ボール50に対して径方向内側で且つ斜め方向の力(法線力)が加わるように形成されている。
ここでは、上記基準位置の状態で第2回転中心軸R2から夫々の接触部P1,P2や接触予備部までの最短距離が同じ長さになるように、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aと各遊星ボール50の外周曲面を形成する。更に、ここでは、第1及び第2の回転部材10,20と各遊星ボール50との夫々の接触角θが同じ角度になるように、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aと各遊星ボール50の外周曲面を形成する。その接触角θとは、基準平面に対する接触部P1,P2又は接触予備部と遊星ボール50の中心(自転中心及び傾転中心であって、球体であれば重心に相当)とを結ぶ線の成す角度のことである。基準平面とは、夫々の遊星ボール50の中心を有する径方向に広がる平面のことである。
この例示においては、第1回転部材10を正駆動時におけるトルクの入力部として用い、第2回転部材20を正駆動時におけるトルクの出力部として用いる。この無段変速機1においては、上記の基準平面に対して入力部となる第1回転部材10が配置された側をトルクの入力側と云い、その基準平面に対して出力部となる第2回転部材20が配置された側をトルクの出力側と云う。そして、軸線方向は、その出力側から入力側に向く方向をトルクの入力側方向と云い、入力側から出力側に向く方向をトルクの出力側方向と云う。その第1回転部材10には当該第1回転部材10と同心の入力軸(第1回転軸)11が連結され、第2回転部材20には当該第2回転部材20と同心の出力軸(第2回転軸)21が連結される。
入力軸11と出力軸21は、トルクの入力側と出力側の内の何れか一方に纏めて延在させる。この例示の入力軸11と出力軸21は、第1回転部材10等の配設されているトルクの入力側に纏めて延在させている。入力軸11は、外縁部分に第1回転部材10が連結される円盤部11aと、この円盤部11aの径方向内側部分からトルクの入力側方向に向けて延設された筒状部11bと、を備える。円盤部11aは、第1回転部材10やキャリア40よりもトルクの入力側方向に配置し、その第1回転部材10と共にキャリア40の後述する第1円盤部41を覆う。一方、出力軸21は、第1及び第2の回転部材10,20を径方向外側から覆う第1筒状部21aと、この第1筒状部21aにおけるトルクの入力側方向の端部を外縁とする円盤部21bと、この円盤部21bの径方向内側部分からトルクの入力側方向に向けて延設された第2筒状部21cと、を備える。第1筒状部21aは、トルクの出力側方向の端部に固定された環状部材22を介して第2回転部材20に連結する。円盤部21bは、入力軸11の円盤部11aよりもトルクの入力側方向に配置する。第2筒状部21cは、入力軸11の筒状部11bを径方向外側から覆う。
入力軸11は、動力源側に接続された回転軸12に連結する。その回転軸12は、シャフト60と同心に配置し、このシャフト60の端部に軸受B1を介して接続したものである。従って、入力軸11は、シャフト60に対して回転軸12と一体になって周方向に相対回転することができる。また、この入力軸11と出力軸21との間には、軸受B2とスラスト軸受TBを介在させている。これが為、出力軸21は、入力軸11に対して周方向に相対回転することができると共に、シャフト60に対しても周方向に相対回転することができる。
尚、本実施例の無段変速機1は、この様に入力軸11と出力軸21とをトルクの入力側に纏めて延在させたものとして例示しているが、その入力軸11と出力軸21を夫々にトルクの入力側と出力側とに分けて延在させてもよい。
その入力軸11と第1回転部材10との間には、軸力を発生させる軸力発生部71が設けられている。その軸力とは、第1回転部材10を各遊星ボール50に押し付ける為の軸線方向の押圧力である。ここでは、その軸力発生部71としてトルクカムを利用する。従って、この軸力発生部71は、円盤部11aの外縁部分における係合部又は係合部材と第1回転部材10側の係合部又は係合部材とが係合することで、入力軸11と第1回転部材10との間で軸力を発生させると共に回転トルクを伝達させ、これらを一体にして回転させる。一方、この無段変速機1には、出力軸21と第2回転部材20との間にも軸力発生部72が配設されている。その軸力発生部72は、第2回転部材20を各遊星ボール50に押し付ける為の軸線方向の押圧力(軸力)を発生させるものであり、軸力発生部71と同様のトルクカムを用いる。この軸力発生部72は、環状部材22を介して出力軸21に接続されている。
この無段変速機1は、その軸力によって、第1回転部材10と各遊星ボール50との間、第2回転部材20と各遊星ボール50との間及びサンローラ30と各遊星ボール50との間において、運転中にトラクション力を発生させることができる。
尚、この無段変速機1においては、第1回転部材10をトルク出力部とし、且つ、第2回転部材20をトルク入力部とすることも可能であり、その場合、入力軸11として設けているものを出力軸として利用し、出力軸21として設けているものを入力軸として利用する。また、サンローラ30やキャリア40をトルク入力部やトルク出力部として用いる場合には、そのサンローラ30やキャリア40に対して別途構成した入力軸や出力軸を連結する。
サンローラ30は、シャフト60と同心に配置され、このシャフト60に対する周方向への相対回転を行う。このサンローラ30の外周面には、複数個の遊星ボール50が放射状に略等間隔で配置される。従って、このサンローラ30においては、その外周面が遊星ボール50の自転の際の転動面となる。このサンローラ30は、自らの回転動作によって夫々の遊星ボール50を転動(自転)させることもできれば、夫々の遊星ボール50の転動動作(自転動作)に伴って回転することもできる。
本実施例のサンローラ30は、夫々の遊星ボール50との接触部を軸線方向において2箇所(第1接触部P3、第2接触部P4)に分散させたものである。その理由は、サンローラ30と遊星ボール50との間の接触力の分散により面圧を低減させることでスピン損失を低減させ、動力伝達効率の低下を抑えると共に耐久性を向上させることができるからである。第1接触部P3は、上記の基準平面を中心とする軸線方向の一方に設ける。一方、第2接触部P4は、その基準平面を中心とする軸線方向の他方に設ける。そして、その第1及び第2の接触部P3,P4は、各遊星ボール50の中心(自転中心及び傾転中心であって、球体であれば重心に相当)からの距離が同一で、且つ、第1回転中心軸R1からの最短距離も同一となる位置に設ける。その第1及び第2の接触部P3,P4においては、サンローラ30と各遊星ボール50とが互いに点接触(厳密には面接触)している。尚、以下においては、第1及び第2の接触部P3,P4を単に接触部P3,P4と云うこともある。
このサンローラ30は、シャフト60に対する周方向の相対回転が可能な2つの回転体(第1回転体31、第2回転体32)に分割し、第1回転体31に第1接触部P3を設けると共に、第2回転体32に第2接触部P4を設ける。何故ならば、その第1及び第2の回転体31,32を互いに周方向に相対回転させることで、サンローラ30と遊星ボール50との間の損失エネルギが小さくなり、動力伝達効率の低下を抑えることができるからである。
このサンローラ30においては、第1回転体31が上記の基準平面を中心とする軸線方向の一方に配置され、第2回転体32がその基準平面を中心とする軸線方向の他方に配置される。第1及び第2の回転体31,32は、シャフト60に対する周方向の相対回転が行えるように、夫々にアンギュラ軸受ABとラジアル軸受RBとを介してシャフト60に取り付ける。
第1接触部P3においては、第1回転体31から遊星ボール50に対して、第2回転体32側の軸線方向で且つ径方向外側に向けた斜め方向の押圧力を作用させる。一方、第2接触部P4においては、第2回転体32から遊星ボール50に対して、第1回転体31側の軸線方向で且つ径方向外側に向けた斜め方向の押圧力を作用させる。これが為、このサンローラ30は、第2回転体32に近づくにつれて外径が均等に小さくなる円錐部を第1回転体31が有し、且つ、第1回転体31に近づくにつれて外径が均等に小さくなる円錐部を第2回転体32が有している。第1接触部P3と第2接触部P4は、夫々の円錐部の外周面上に設ける。また、第1回転体31や第2回転体32は、その円錐部を弧状錐体部に置き換えてもよい。その弧状錐体部は、他方の回転体に近づくにつれて外径が放物線状に小さくなる形状のものである。第1接触部P3と第2接触部P4は、夫々の弧状錐体部の外周面上に設ける。その円錐部や弧状錐体部は、第1回転体31や第2回転体32の外周面の全て又は一部に形成する。
遊星ボール50は、支持軸51を中心にしてサンローラ30の外周面上を転がる転動部材である。この遊星ボール50は、完全な球状体であることが好ましいが、少なくとも転動方向にて球形を成すもの、例えばラグビーボールの様な断面が楕円形状のものであってもよい。支持軸51は、遊星ボール50の中心を通って貫通させたものであり、遊星ボール50を回転自在に支持する。例えば、遊星ボール50は、支持軸51の外周面との間に配設したニードル軸受等の軸受によって、第2回転中心軸R2を中心とした支持軸51に対する相対回転(つまり自転)が行える。その支持軸51の両端は、遊星ボール50から突出させておく。
その支持軸51の基準となる位置は、前述した図1に示す基準位置であり、第2回転中心軸R2が第1回転中心軸R1と平行になる位置である。この支持軸51は、傾転平面内において、基準位置とそこから傾斜させた位置との間を遊星ボール50と共に揺動(傾転)させることができる。その傾転は、その傾転平面内で遊星ボール50の中心を支点にして行われる。
キャリア40は、夫々の遊星ボール50の傾転動作を妨げないように支持軸51の夫々の突出部を支持する。このキャリア40は、例えば、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させ且つ軸線方向にて互いに対向させて配置した第1から第3の円盤部41,42,43を有するものである。このキャリア40においては、第1円盤部41と第2円盤部42とを軸線方向にて間隔を空けて配置し、その内の一方に近づけて第3円盤部43を配置する。そして、このキャリア40においては、その第1から第3の円盤部41,42,43の内の2つの円盤部の間にサンローラ30や遊星ボール50を配置する。この例示では、第3円盤部43を第1円盤部41と第2円盤部42との間で且つ当該第2円盤部42に近接させて配置し、その第1円盤部41と第3円盤部43との間にサンローラ30や遊星ボール50を配置している。尚、このキャリア40では、第3円盤部43を必ずしも設ける必要はない。
このキャリア40においては、第1及び第2の円盤部41,42の内の一方をシャフト60に対する周方向への相対回転が行えるように構成し、その内の他方をシャフト60に対する周方向への相対回転が行えないように構成する。また、第3円盤部43は、シャフト60に対する周方向への相対回転が行えないように構成する。この例示では、第1及び第3の円盤部41,43をシャフト60に対する相対回転が不能なものとし、第2円盤部42をシャフト60に対する相対回転が可能なものとする。第1円盤部41は、その内径側をシャフト60の外径側に例えば螺子部材等で固定する。第2円盤部42は、軸受(図示略)を介して内径側をシャフト60の外径側に取り付ける。第3円盤部43は、例えば後述する支持軸を兼ねた複数本のノズル91で第1円盤部41に連結する。その第1円盤部41と第3円盤部43は、各ノズル91によって籠状を成しており、そのノズル91の間の隙間から遊星ボール50の一部分を突出させている。尚、第1及び第2の回転部材10,20は、その遊星ボール50の突出部分に接触している。以下、第1円盤部41を第1固定円盤部41と云い、第2円盤部42を回転円盤部42と云い、第3円盤部43を第2固定円盤部43と云う。
この無段変速機1においては、密閉された筐体CAの中に、第1回転部材10、第2回転部材20、サンローラ30、キャリア40、遊星ボール50、シャフト60、軸力発生部71,72、入力軸11及び出力軸21が収納されている。シャフト60と入力軸11の筒状部11bと出力軸21の第2筒状部21cは、その筐体CAから当該筐体CAの密閉状態を保ったまま軸線方向に突出させている。
ここで、この無段変速機1においては、夫々の遊星ボール50の傾転角が基準位置、即ち0度のときに、第1回転部材10と第2回転部材20とが同一回転速度(同一回転数)で回転する。つまり、このときには、第2回転部材20に対する第1回転部材10の回転比(回転速度又は回転数の比)が1となり、変速比γが1になっている。一方、夫々の遊星ボール50を基準位置から傾転させた際には、支持軸51の中心軸(第2回転中心軸R2)から第1回転部材10との接触部P1までの最短距離が変化すると共に、支持軸51の中心軸から第2回転部材20との接触部P2までの最短距離が変化する。これが為、第1回転部材10又は第2回転部材20の内の何れか一方が基準位置のときよりも高速で回転し、他方が低速で回転するようになる。例えば第2回転部材20は、遊星ボール50を一方へと傾転させたときに第1回転部材10よりも低回転になり(減速)、他方へと傾転させたときに第1回転部材10よりも高回転になる(増速)。従って、この無段変速機1においては、その傾転角を変えることによって、第2回転部材20に対する第1回転部材10の回転比(変速比γ)を無段階に変化させることができる。尚、ここでの増速時(γ<1)には、図2における上側の遊星ボール50を紙面反時計回り方向に傾転させ且つ下側の遊星ボール50を紙面時計回り方向に傾転させる。また、減速時(γ>1)には、図2における上側の遊星ボール50を紙面時計回り方向に傾転させ且つ下側の遊星ボール50を紙面反時計回り方向に傾転させる。
この無段変速機1には、その変速比γを変える変速装置が設けられている。変速比γは遊星ボール50の傾転角の変化に伴い変わるので、その変速装置としては、夫々の遊星ボール50を傾転させる傾転装置を用いる。ここでは、キャリア40に傾転装置(変速装置)としての機能を持たせる。
先ず、第1及び第2の固定円盤部41,43には、径方向ガイド部44,45が遊星ボール50毎に設けられている。その径方向ガイド部44,45とは、遊星ボール50から突出させた支持軸51の端部に傾転力が加わった際に、その端部を径方向へと案内するガイド部のことである。径方向ガイド部44は、例えば長手方向を径方向とするガイド溝やガイド孔である(図3)。一方、径方向ガイド部45は、長手方向を径方向とするガイド孔であり(図4)、支持軸51を貫通させる。つまり、第1及び第2の固定円盤部41,43においては、軸線方向からみると、各径方向ガイド部44,45が第1回転中心軸R1を中心とする放射状を成している。その夫々の径方向ガイド部44,45は、軸線方向において互いに対向させた位置に形成されており、変速比γの大きさに拘わらず第2回転中心軸R2が略傾転平面上に位置するよう支持軸51を保持する。「略」としたのは、支持軸51の円滑な傾転動作の為に、支持軸51と径方向ガイド部44,45の幅方向との間に僅かな隙間を設けているからである。尚、図3は、遊星ボール50側から第1固定円盤部41を軸線方向にみた図である。図4は、遊星ボール50側から回転円盤部42と第2固定円盤部43を軸線方向にみた図である。
回転円盤部42は、上述した様に、シャフト60に対する周方向の相対回転が可能である。その相対回転には、図示しない電動機等のアクチュエータ(駆動部)を用いる。この駆動部の駆動力は、ウォームギヤ等の様な歯車又は遊星歯車機構等の様な歯車群を介して回転円盤部42に伝えられる。
この回転円盤部42には、傾転力付与部46が遊星ボール50毎に設けられている。その傾転力付与部46は、回転円盤部42の回転に伴って、遊星ボール50から突出させた支持軸51の一方の端部に傾転力を作用させるものである。例えば、この傾転力付与部46は、長手方向が径方向に対して所定の傾斜角で傾斜している直線状の溝や孔である(図4)。軸線方向からみると、この傾転力付与部46は、その一部分が径方向ガイド部45の一部分と重なっている。その一部分同士が重なっている交差部分は、回転円盤部42の回転と共に径方向に移動する。支持軸51の一方の端部は、その交差部分において支持されている。従って、回転円盤部42を回転させた際には、この支持軸51の一方の端部に対して傾転力付与部46の側壁面から傾転力が作用し、その端部が径方向ガイド部44,45によって径方向へと案内される。この無段変速機1においては、この案内動作が遊星ボール50の傾転動作となる。
具体的に、このキャリア40においては、第1固定円盤部41と回転円盤部42とを相対回転させることで、その相対回転に応じた傾転力が支持軸51の一方の端部に作用する。例えば、回転円盤部42を図4の紙面時計回り方向に回転させたときは、傾転力付与部46における径方向外側の側壁に沿って当該側壁が支持軸51の一方の端部を押動する。このときには、その押し動かす力が傾転力となり、支持軸51の一方の端部が径方向ガイド部44,45によって径方向内側へと移動するので、変速比γが増速側へと変速する。一方、回転円盤部42を図4の紙面反時計回り方向に回転させたときは、傾転力付与部46における径方向内側の側壁に沿って当該側壁が支持軸51の一方の端部を押動する。このときには、その押し動かす力が傾転力となり、支持軸51の一方の端部が径方向ガイド部44,45によって径方向外側へと移動するので、変速比γが減速側へと変速する。尚、遊星ボール50は、第1回転部材10と第2回転部材20とサンローラ30とで挟持されているので、球体であれば、その傾転力が付与された際に重心位置を傾転中心にして傾転する。
この無段変速機1においては、各部(冷却対象や潤滑対象)の冷却やトラクション力の発生に潤滑油(所謂トラクション油)を用いる。例えば、その潤滑油は、図1に示すオイルポンプ81からシャフト60の軸心油路61に供給され続けている。図1に示す太線の矢印は、潤滑油の供給経路を表している。シャフト60には径方向油路62,63が形成されており、軸心油路61の潤滑油は、その径方向油路62,63から無段変速機1の各部に供給される。径方向油路62は、径方向に延在している油路であり、軸心油路61の潤滑油を径方向内側から径方向外側に向けて無段変速機1の内部(つまり筐体CAの中)に供給するものである。従って、この径方向油路62における潤滑油の排出孔は、筐体CAの中に潤滑油を供給する為の潤滑油供給孔として作用する。例えば、シャフト60には、上記の基準平面上に(つまりサンローラ30の径方向内側に)少なくとも1本の径方向油路62が形成されている。この例示では、2本形成している。その径方向油路62は、軸心油路61の潤滑油を第1回転体31と第2回転体32との間に形成される環状の隙間Sに供給するものである。尚、その隙間Sは、供給された潤滑油を貯留しておけるよう軸線方向に厚みを設けることが好ましい。
その隙間Sの潤滑油は、サンローラ30の回転に伴う遠心力やオイルポンプ81の圧送による圧力によって、第1回転体31と第2回転体32との間の環状の隙間(以下、「環状油路」と云う。)33から径方向外側へと排出される。尚、その環状油路33は、隙間Sよりも軸線方向が薄くなっている。
その環状油路33から排出された潤滑油は、遊星ボール50に当たって、サンローラ30と遊星ボール50との間(特に第1及び第2の接触部P3,P4)に供給される。つまり、この潤滑油は、サンローラ30と遊星ボール50の冷却及び潤滑並びに第1及び第2の接触部P3,P4におけるトラクション力の発生に寄与する。
一方、この無段変速機1においては、第1及び第2の回転部材10,20と遊星ボール50との間にも接触部P1,P2が存在しているので、この間にも潤滑油を供給する必要がある。ここで、環状油路33から排出されて遊星ボール50の表面に付着した潤滑油は、遊星ボール50の傾転角(つまり遊星ボール50の自転方向)によって、遊星ボール50の自転と共に接触部P1,P2に送られることがある。即ち、接触部P1,P2への潤滑油の供給量は、遊星ボール50の傾転角に依存するものとなる。従って、環状油路33によって接触部P1,P2に供給された潤滑油は、その接触部P1,P2において常に必要な量になっているとは限らない。例えば、図2の上側の遊星ボール50が紙面反時計回り方向に傾転した場合には、環状油路33から排出されて遊星ボール50に付着した潤滑油が接触部P1よりも接触部P2の方に送られやすくなる。しかしながら、この場合には、傾転角が大きくなるほど接触部P2の発熱量よりも接触部P1の発熱量の方が高くなるので、接触部P2よりも接触部P1の方に多くの潤滑油を供給する必要がある。また、図2の上側の遊星ボール50が紙面時計回り方向に傾転した場合には、環状油路33から排出されて遊星ボール50に付着した潤滑油が接触部P2よりも接触部P1の方に送られやすくなる。しかしながら、この場合には、傾転角が大きくなるほど接触部P1の発熱量よりも接触部P2の発熱量の方が高くなるので、接触部P1よりも接触部P2の方に多くの潤滑油を供給する必要がある。
そこで、この無段変速機1においては、接触部P1,P2への安定した潤滑油の供給を図るべく、接触部P1,P2又はその近傍における第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20a若しくは遊星ボール50の表面に向けて潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置を設ける。つまり、この潤滑油供給装置は、第1供給先としての接触部P1又はその近傍における第1回転部材10の内周面10a若しくは遊星ボール50の表面(以下、「接触部P1側」と云う。)への潤滑油の供給が可能であり、且つ、第2供給先としての接触部P2又はその近傍における第2回転部材20の内周面20a若しくは遊星ボール50の表面(以下、「接触部P2側」と云う。)への潤滑油の供給が可能である。
接触部P1,P2の近傍における第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aに潤滑油を噴射する場合には、その接触部P1,P2の近くの内周面10a,20aの中でも、付着した潤滑油が一番近くの接触部P1,P2に最初に送られる場所を潤滑油の供給先にすることが望ましい。また、接触部P1,P2の近傍における遊星ボール50の表面に潤滑油を噴射する場合には、その接触部P1,P2の近くの遊星ボール50の表面の中でも、付着した潤滑油が一番近くの接触部P1,P2に最初に送られる場所を潤滑油の供給先にすることが望ましい。
この潤滑油供給装置は、その潤滑油の第1及び第2の供給先に向けた噴射口を有するノズルを備えている。この潤滑油供給装置では、接触部P1用と接触部P2用とで1本ずつノズルを設けてもよく、第1供給先と第2供給先とに潤滑油を送る1つの噴射口が形成された1本のノズルを設けてもよい。この例示では、図1に示す様に、接触部P1側における第1供給先用の噴射口91aと接触部P2側における第2供給先用の噴射口91bとを有する1本のノズル91を設けている。
そのノズル91は、軸線方向に延在させた中空のノズル部材からなり、その内部空間91cと外周面側とを夫々に噴射口91a,91bで連通させている。このノズル91は、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aよりも径方向内側で且つサンローラ30の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う遊星ボール50の間に配置する。このノズル91は、遊星ボール50毎に1本ずつ設ける。この例示では、ノズル91が第1回転中心軸R1を中心にして略等間隔で放射状に配置されることになる(図3,4)。
具体的に、各ノズル91は、第1及び第2の供給先に潤滑油を付着させることができるのであれば、各遊星ボール50の夫々の傾転中心を繋ぐ円周Cよりも径方向内側に配置可能である。しかしながら、この配置の場合には、ノズル91が環状油路33から排出された潤滑油の供給経路上で邪魔になり、その潤滑油の供給を阻害する可能性がある。これが為、この配置を採用するときは、ノズル91が環状油路33から排出された潤滑油の供給経路上で邪魔をしないことを条件にすることが望ましい。この例示では、環状油路33から排出された潤滑油の供給の妨げにならないように、各ノズル91を円周Cよりも径方向外側に配置する(図5)。尚、図5は、図2のA−A線又はB−B線で切った無段変速機1の断面の概略図である。
ここで、このノズル91は、潤滑油の供給を担う機能だけのものとして配置してもよいが、この様な専用品とするならば、その配置場所を確保する為に無段変速機1の体格の大型化を招く可能性がある。これが為、この無段変速機1においては、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを連結させる支持軸の機能もノズル91に持たせることで、無段変速機1の体格の大型化を抑える。従って、各ノズル91は、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とに固定されるものである一方、その第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを固定するものでもある。
その固定の際、各ノズル91は、貫通や接触させるなどして回転円盤部42の回転を阻害しないように配置する。ここでは、各ノズル91の端部を第2固定円盤部43から回転円盤部42に向けて突出させないように、各ノズル91の長さと配置を決める。これに対して、各ノズル91の端部を第2固定円盤部43から回転円盤部42に向けて突出させる場合、その回転円盤部42には、自らの回転を各ノズル91によって妨げられない凹み又は貫通孔を設けてもよい。更に、各ノズル91への潤滑油の供給は、後述する様に、第2固定円盤部43側(つまり回転円盤部42の存在する側)の端部ではなく、第1固定円盤部41側の端部から行うようにする。従って、この無段変速機1においては、回転円盤部42の回転幅がノズル部材等の潤滑油供給装置の構成部品によって制限されないので、変速比γの幅の狭まりを抑制することができる。
この潤滑油供給装置には、そのノズル91に潤滑油を供給する潤滑油供給路と潤滑油供給源とが設けられている。
本実施例においては、ノズル91の夫々の端部が第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とに各々固定されている。これが為、ノズル91には、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の内の少なくとも一方の内部に形成した潤滑油供給路としての油路から潤滑油を供給すればよい。但し、上述した回転円盤部42の回転の妨げにならないように、各ノズル91には、回転円盤部42の存在していない側から潤滑油を供給することが望ましい。故に、この例示では、第1固定円盤部41の油路47からノズル91の端部に潤滑油を供給する。その油路47は、例えばノズル91毎に径方向に延在させたものとする(図3)。この油路47には、軸心油路61を介して潤滑油を供給する。従って、ここでは、その油路47と、軸心油路61と、この軸心油路61を油路47に連通させるシャフト60の油路(図示略)と、が潤滑油供給装置の潤滑油供給路を成している。そして、ここでは、オイルポンプ81が潤滑油供給装置の潤滑油供給源になる。
以上示した様に、この無段変速機1においては、接触部P1,P2又はその近傍における第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20a若しくは遊星ボール50の表面に向けて潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置を備えているので、潤滑油による撹拌損失の増大を抑えつつ、その接触部P1,P2への安定した潤滑油の供給を行うことができる。従って、この無段変速機1は、トルク伝達効率の低下を抑えつつ、第1及び第2の回転部材10,20と遊星ボール50との間の接触部P1,P2、更に、サンローラ30と遊星ボール50との間の接触部P3,P4における潤滑油の油量を確保することができる。故に、この無段変速機1は、トルク伝達効率の低下を抑えたトラクション力の発生が可能になる。そして、この無段変速機1は、潤滑油の油量の確保に伴い過大な発熱を抑えることができるので、耐久性の低下も抑えることができる。
また、この無段変速機1においては、その潤滑油供給装置のノズル91を遊星ボール50の間にできた隙間に配置するので、接触部P1,P2への安定した潤滑油供給を体格の大型化を抑えつつ実現することができる。特に、この無段変速機1では、そのノズル91を第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを連結させる支持軸としても利用しているので、より顕著に体格の大型化を抑えた潤滑油の安定供給が可能になる。そして、この無段変速機1は、体格の大型化を抑えることができるので、遊星ボール50の数量を変えることなく潤滑油の安定供給が可能になり、トルク伝達効率低下等の機能低下を抑えることができる。更に、この無段変速機1においては、その潤滑油供給装置が回転円盤部42の回転の邪魔にならないので、変速比γの幅を狭めることなく、接触部P1,P2への安定した潤滑油供給を実現することができる。
ここで、この無段変速機1においては、トルクの入力側に第1固定円盤部41を配置し、トルクの出力側に回転円盤部42と第2固定円盤部43を配置しているが、これらの配置を前述した基準平面に対して入れ替えてもよい。この場合でも、油路47は、トルクの出力側の第1固定円盤部41とトルクの入力側の第2固定円盤部43の内の少なくとも一方に設ける。
また、この無段変速機1のキャリア40は、シャフト60に対する固定要素として用いるが、このシャフト60に対する相対回転が可能な回転要素として用いてもよい。尚、回転要素として用いる場合でも、回転円盤部42については、上述した変速の為の回転を行うことができる。
[変形例1]
前述した実施例の無段変速機1では、ノズル91に潤滑油を供給する為に、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の内の少なくとも一方に油路47を形成する必要がある。本変形例は、例えば、第1固定円盤部41や第2固定円盤部43の肉厚を薄くする等の要求に応じたが為に油路47が形成できない場合、油路47への潤滑油供給路が確保できない場合などに対応可能な構成である。
図6の符号2は、本変形例の無段変速機を示す。この無段変速機2は、実施例の無段変速機1において、潤滑油供給装置を以下の如く変更したものである。
本変形例の潤滑油供給装置は、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aよりも径方向内側で且つサンローラ30の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う遊星ボール50の間に、実施例のノズル91に替えてノズル191を遊星ボール50毎に1本ずつ備える。
そのノズル191は、実施例のノズル91と同じ様に、軸線方向に延在させた中空のノズル部材であり、接触部P1側の第1供給先用の噴射口191aと接触部P2側の第2供給先用の噴射口191bと内部空間191cとを有する。その噴射口191a,191bは、実施例の噴射口91a,91bと同じものである。また、このノズル191は、筐体CAを貫通するまでノズル91を軸線方向に延在させ、その貫通させた端部から潤滑油が供給されるものである。従って、このノズル191においては、筐体CAを貫通するまで内部空間191cも延在させている。
本変形例の潤滑油供給装置においては、ノズル191に潤滑油を供給する潤滑油供給路としての油送管192が設けられている。その油送管192には、オイルポンプ81から潤滑油が圧送される。ここで、この例示では軸心油路61に潤滑油を送るオイルポンプ81を潤滑油供給源として利用しているが、潤滑油供給装置は、油送管192に潤滑油を送る専用のオイルポンプを備えていてもよい。
ノズル191は、ノズル91と同じ様に、潤滑油の供給を担う専用品として配置してもよく、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを連結させる支持軸の機能を併せ持っていてもよい。このノズル191は、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とに固定すると共に、筐体CAにも固定する。
ここで、このノズル191は、筐体CAを貫通するまで延在しているので、回転円盤部42も貫通させる必要がある。これが為、その回転円盤部42には、各ノズル191を貫通させる貫通孔や切欠き等の貫通部42aを傾転力付与部46の間に1つずつ設けている(図7)。図7は、回転円盤部42を外側(遊星ボール50の配置とは逆側)から軸線方向にみた図である。この図7の例示では、切欠き形状になっている。その貫通部42aは、変速時の回転円盤部42の回転を妨げないよう周方向に幅を持たせる。
この様に構成したとしても、この無段変速機2は、実施例の無段変速機1と同じ様に、接触部P1,P2又はその近傍における第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20a若しくは遊星ボール50の表面に向けて潤滑油の供給を行うことができるので、潤滑油による撹拌損失の増大を抑えつつ、その接触部P1,P2への安定した潤滑油の供給が可能になる。従って、この無段変速機2は、実施例の無段変速機1と同じ様に、トルク伝達効率の低下を抑えたトラクション力の発生が可能になり、且つ、潤滑油の油量の確保に伴い過大な発熱を抑えることができるので、耐久性の低下も抑えることができる。また、この無段変速機2は、実施例の無段変速機1と同じ様に、ノズル191を遊星ボール50の間に配置し、このノズル191が更に第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の支持軸としての機能も有しているので、体格の大型化を抑えた潤滑油の安定供給が可能になる。そして、この無段変速機2は、実施例の無段変速機1と同じ様に、体格の大型化の抑制によって、遊星ボール50の数量を変えることなく潤滑油の安定供給が可能になり、トルク伝達効率低下等の機能低下を抑えることができる。
ところで、この無段変速機2は、実施例の無段変速機1と比較して、ノズル191の存在によって回転円盤部42の回転量が制限される。これが為、この無段変速機2では、変速比γの幅を狭めなければならない可能性がある。そこで、この無段変速機2においては、トルクの出力側に第1固定円盤部41を配置し、且つ、トルクの入力側に回転円盤部42と第2固定円盤部43を配置することで、ノズル191が回転円盤部42を貫通しないように構成すればよい。つまり、この無段変速機2においては、第1固定円盤部41の配置と回転円盤部42及び第2固定円盤部43の配置とを前述した基準平面に対して入れ替えることで、ノズル191の存在に伴う回転円盤部42の回転量の制限を無くすことができるので、変速比γの幅を狭めることなく、接触部P1,P2への安定した潤滑油供給を実現することができる。尚、この場合には、回転円盤部42に必ずしも貫通部42aを設ける必要はない。
ここで、この無段変速機2においては、潤滑油供給路としての油送管192を廃止し、軸心油路61及び第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の内の少なくとも一方の内部に形成した油路(実施例で示した第1固定円盤部41の油路47)からなる潤滑油供給路に置き換えてもよい。
尚、この無段変速機2のキャリア40は、シャフト60に対する固定要素として用いる。但し、回転円盤部42については、変速の為の回転を行うことができる。
[変形例2]
前述した実施例と変形例1の無段変速機1,2は、ノズル91,191から接触部P1側の第1供給先と接触部P2側の第2供給先とに向けて潤滑油を噴射することで、その接触部P1,P2に潤滑油を供給している。
ここで、この無段変速機1,2においては、変速比γが1の状態で夫々の接触部P1,P2の発熱量が略同じになる。変速比γが1のときには、接触部P1から第2回転中心軸R2までの最短距離と接触部P2から第2回転中心軸R2までの最短距離とが同じ距離になっているからである。この無段変速機1,2においては、「γ=1」の状態から増速側に変速して行くにつれて、接触部P1における発熱量が「γ=1」のときよりも高くなる一方、接触部P2における発熱量が「γ=1」のときよりも低くなる。そして、変速比γが最大増速比γminになったときは、接触部P1における発熱量が最も高くなり、接触部P2における発熱量が最も低くなる。これに対して、この無段変速機1,2においては、「γ=1」の状態から減速側に変速して行くにつれて、接触部P2における発熱量が「γ=1」のときよりも高くなる一方、接触部P1における発熱量が「γ=1」のときよりも低くなる。そして、変速比γが最大減速比γmaxになったときは、接触部P2における発熱量が最も高くなり、接触部P1における発熱量が最も低くなる。
しかしながら、実施例や変形例1のノズル91,191は、接触部P1側と接触部P2側とに略同量の潤滑油を供給する。これが為、変速比γが増速側のときには、接触部P2と比べて接触部P1の冷却性が低いので、最大増速比γminに近づくほど接触部P1において損失エネルギが高くなっていく。また、変速比γが減速側のときには、接触部P1と比べて接触部P2の冷却性が低いので、最大減速比γmaxに近づくほど接触部P2において損失エネルギが高くなっていく。そこで、この無段変速機1,2においては、最も損失エネルギの高い最大増速比γminのときの接触部P1と最大減速比γmaxのときの接触部P2とで所望の冷却性が確保されるように、各接触部P1,P2への潤滑油の供給量が決められている。従って、最大増速比γminのときの接触部P1と最大減速比γmaxのときの接触部P2を除き、各接触部P1,P2には、潤滑油が過剰に供給されてしまうことになる。
本変形例は、その様な無駄な潤滑油の供給を抑えるべく構成したものである。具体的に、本変形例の無段変速機3は、前述した実施例の無段変速機1において、ノズル91を図8及び図9に示すノズル291に置き換えたものである。
そのノズル291は、軸線方向に延在させた円柱状の外形を有する第1ノズル部材292と、同心の第1ノズル部材292が挿入される円柱状の内部空間293cを有する第2ノズル部材293と、を備える。このノズル291においては、第1ノズル部材292が自らの軸線を中心にして自転できないように取り付けられる一方、第2ノズル部材293が自らの軸線を中心にした第1ノズル部材292に対する相対回転が行えるように取り付けられる。
第1ノズル部材292は、第2ノズル部材293に対して第1固定円盤部41側に突出させており、その突出部分が第1固定円盤部41に固定される。また、この第1ノズル部材292は、内部空間292cが形成されており、この内部空間292cに供給された潤滑油が外部に排出される。その内部空間292cには、ノズル91と同じ様に、第1固定円盤部41の油路47から潤滑油が供給される。また、この第1ノズル部材292は、その内部空間292cと外周面側とを連通させた少なくとも1つの噴射口を有する。この図8の例示では、前述した基準平面上に噴射口292aが1つ形成されている。
第2ノズル部材293は、第1ノズル部材292の円柱と略同等の直径からなる円柱状の内部空間293cを有する。その夫々の直径は、第1ノズル部材292に対する第2ノズル部材293の相対回転を阻害しない範囲内で決める。また、この第2ノズル部材293は、その内部空間293cと外壁面側とを連通させた第1噴射口293aと、その内部空間293cと外壁面側とを連通させた第2噴射口293bと、を有する。この第2ノズル部材293は、第2固定円盤部43を貫通させ、更に回転円盤部242の位置にまで延在させる。その回転円盤部242は、実施例等における回転円盤部42に対して、後述する外歯歯車242aを設けたものである。
ノズル291は、第2ノズル部材293を第1ノズル部材292に対して相対回転させることで、第1ノズル部材292の噴射口292aと第1噴射口293aとの連通状態及び第1ノズル部材292の噴射口292aと第2噴射口293bとの連通状態を変化させるものである。
このノズル291は、増速側の変速比γのときに、第2噴射口293bよりも第1噴射口293aからの潤滑油の供給量を増加させる。その際には、例えば、変速比γが最大増速比γminに近づくにつれて、第1噴射口293aからの潤滑油の供給量を徐々に増加させ、且つ、第2噴射口293bからの潤滑油の供給量を徐々に減少させてもよい。この増速側の変速比γのときには、第1噴射口293aからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも増加させ、且つ、第2噴射口293bからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも減少させる。
一方、このノズル291は、減速側の変速比γのときに、第1噴射口293aよりも第2噴射口293bからの潤滑油の供給量を増加させる。その際には、例えば、変速比γが最大減速比γmaxに近づくにつれて、第1噴射口293aからの潤滑油の供給量を徐々に減少させ、且つ、第2噴射口293bからの潤滑油の供給量を徐々に増加させてもよい。この減速側の変速比γのときには、第1噴射口293aからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも減少させ、且つ、第2噴射口293bからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも増加させる。
このノズル291では、その変速比γと潤滑油の供給量との対応関係を満たすべく、第1ノズル部材292の噴射口292aと第2ノズル部材293の第1及び第2の噴射口293a,293bの夫々の貫通孔の形状と大きさと位置とを決めると共に、後述する外歯歯車242a,293dの歯数を決める。
例えば、その形状等と外歯歯車242a,293dの歯数は、増速側の変速比γのときに、噴射口292aと第1噴射口293aとの重なり合う面積の方が噴射口292aと第2噴射口293bとの重なり合う面積よりも大きくなるようにする。また、この形状等と外歯歯車242a,293dの歯数は、変速比γが最大増速比γminに近づくにつれて、噴射口292aと第1噴射口293aとの重なり合う面積が徐々に大きくなる一方、噴射口292aと第2噴射口293bとの重なり合う面積が徐々に小さくなるようにする。これとは逆に、この形状等と外歯歯車242a,293dの歯数は、減速側の変速比γのときに、噴射口292aと第2噴射口293bとの重なり合う面積の方が噴射口292aと第1噴射口293aとの重なり合う面積よりも大きくなるようにする。また、この形状等と外歯歯車242a,293dの歯数は、変速比γが最大減速比γmaxに近づくにつれて、噴射口292aと第2噴射口293bとの重なり合う面積が徐々に大きくなる一方、噴射口292aと第1噴射口293aとの重なり合う面積が徐々に小さくなるようにする。
このノズル291には、その相対回転を行う際の駆動力を発生させ、その駆動力を第2ノズル部材293に伝えるノズル駆動部294も設けられている。ノズル駆動部294は、第2ノズル部材293における回転円盤部242の側の端部に設けた内部空間293cと同心の外歯歯車293dと、この外歯歯車293dと噛み合い状態にあるシャフト60と同心の外歯歯車242aと、を備える(図10)。図10は、遊星ボール50側から回転円盤部242をみた「γ=1」のときの図である。このノズル駆動部294は、その外歯歯車242aを回転させることで、外歯歯車293dを介して第2ノズル部材293を自転させるものである。この例示では、その外歯歯車242aを回転円盤部242に設け、その回転円盤部242の変速時における回転を駆動力に利用する。従って、外歯歯車242aは、回転円盤部242において傾転力付与部46の存在する部分を除いて設ける。
この例示のノズル291は、最大増速比γminのときに、噴射口292aと第1噴射口293aとを連通させると共に、噴射口292aと第2噴射口293bとを連通させず、冷却性の点で接触部P2よりも不利な接触部P1に対して集中的に潤滑油が供給されるようにする。また、この例示のノズル291は、最大減速比γmaxのときに、噴射口292aと第2噴射口293bとを連通させると共に、噴射口292aと第1噴射口293aとを連通させず、冷却性の点で接触部P1よりも不利な接触部P2に対して集中的に潤滑油が供給されるようにする。
この無段変速機3においては、回転円盤部242を図10の紙面時計回り方向に回転させることで、変速比γが増速側に変化し、回転円盤部242を図10の紙面反時計回り方向に回転させることで、変速比γが減速側に変化する。ここでは、「γ=1」の状態から回転円盤部242を角度「+θ1」だけ時計回り方向に回転させた際に、変速比γが最大増速比γminとなり、「γ=1」の状態から回転円盤部242を角度「−θ1」だけ反時計回り方向に回転させた際に、変速比γが最大減速比γmaxとなる、
ここで、第2ノズル部材293は、回転円盤部242を図10の紙面時計回り方向に回転させた際に、その紙面の反時計回り方向へと第1ノズル部材292に対して相対回転し、回転円盤部242を図10の紙面反時計回り方向に回転させた際に、その紙面の時計回り方向へと第1ノズル部材292に対して相対回転する。これが為、最大増速比γminのときに使う第1噴射口293aは、図11に示す様に、第1ノズル部材292の噴射口292aよりも紙面時計回り方向に配置する。一方、最大減速比γmaxのときに使う第2噴射口293bは、図11に示す様に、第1ノズル部材292の噴射口292aよりも紙面反時計回り方向に配置する。この例示では、「γ=1」の状態から回転円盤部242を角度「+θ1」だけ時計回り方向へと回転させた際に、第2ノズル部材293が第1ノズル部材292に対して角度「−θ2」だけ反時計回り方向に相対回転し、第1噴射口293aが噴射口292aに連通するようになる(図12)。これに対して、この例示では、「γ=1」の状態から回転円盤部242を角度「−θ1」だけ反時計回り方向へと回転させた際に、第2ノズル部材293が第1ノズル部材292に対して角度「+θ2」だけ時計回り方向に相対回転し、第2噴射口293bが噴射口292aに連通するようになる(図12)。換言するならば、ここでは、その様な連通状態を作り出す為に、前述した噴射口292aと第1及び第2の噴射口293a,293bの形状等及び外歯歯車242a,293dの歯数と共に、回転円盤部242の回転角度に応じた第2ノズル部材293の相対回転角度も決める。
以上示した様に、本変形例の無段変速機3に依れば、変速比γの変化と共に熱による損失エネルギが高くなる各接触部P1,P2の内の何れか一方に対して、その変化した変速比γに合わせて潤滑油の供給量を増やすことができ、更に、その内の他方に対して、その変化した変速比γに合わせて潤滑油の供給量を減らすことができる。従って、この無段変速機3は、各接触部P1,P2の内、変速比γの変化と共に発熱量が高くなる一方の冷却性を向上させることができる。更に、この無段変速機3は、変速比γの変化と共に発熱量が低くなる他方への過剰な潤滑油の供給を抑えることができる。また、この無段変速機3は、ノズル291をキャリア40の支持軸と併用させ、更に、第2ノズル部材293に設けた外歯歯車293dと回転円盤部242に設けた外歯歯車242aとでノズル駆動部294を構成する。故に、この無段変速機3は、接触部P1,P2における冷却性の向上と過剰な潤滑油供給の抑制とについて、体格の大型化を抑え、且つ、低コストで実現させることができる。
ここで、この具体例のノズル291は、最大増速比γminのときに接触部P1側の第1供給先に潤滑油を供給し、且つ、最大減速比γmaxのときに接触部P2側の第2供給先に潤滑油を供給するものである。しかしながら、例えば、「γ=1」のときにも潤滑油の供給を必要とする場合には、このときに第1ノズル部材292の噴射口292aと連通する2つの噴射口(図示略)を第2ノズル部材293に設ければよい。その一方の噴射口は、「γ=1」のときに第1供給先へと潤滑油を供給する為のものであり、他方の噴射口は、「γ=1」のときに第2供給先へと潤滑油を供給する為のものである。
[変形例3]
本変形例は、前述した変形例2の無段変速機3において、第1ノズル部材292の噴射口を接触部P1側の第1供給先用と接触部P2側の第2供給先用とに分けて設けたものである。つまり、本変形例の無段変速機4は、図14に示す様に、変形例2の無段変速機3において、ノズル291をノズル391に置き換えたものである。
本変形例のノズル391は、ノズル291と同じ様に、第1ノズル部材392と第2ノズル部材393とを備える。その第1ノズル部材392は、第1ノズル部材292に対して2つの噴射口(第1及び第2の噴射口392a,392b)を有するところが異なり、他は第1ノズル部材292と同等に形成されている。この第1ノズル部材392は、第1ノズル部材292と同じ様に、自らの軸線を中心にした自転が行えないよう第1固定円盤部41に固定され、その第1固定円盤部41の油路47から内部空間392cに潤滑油が供給される。また、第2ノズル部材393は、第2ノズル部材293に対して2つの噴射口(第1及び第2の噴射口393a,393b)の配置が異なり、他は第2ノズル部材293と同等に形成されている。この第2ノズル部材393は、第2ノズル部材293と同じ様に、第1ノズル部材392が挿入される円柱状の内部空間393cを有しており、自らの軸線を中心にした第1ノズル部材392に対する相対回転を行うことができる。
本変形例のノズル391は、その相対回転を実現させるべく、ノズル291と同等のノズル駆動部394を設けている。そのノズル駆動部394は、第2ノズル部材293における回転円盤部242の側の端部に設けた内部空間393cと同心の外歯歯車393dと、この外歯歯車393dと噛み合い状態にある回転円盤部242の外歯歯車242aと、を備える。
このノズル391は、第2ノズル部材393を第1ノズル部材392に対して相対回転させることで、第1ノズル部材392と第2ノズル部材393における夫々の第1噴射口392a,393aの連通状態及び夫々の第2噴射口392b,393bの連通状態を変化させるものである。
このノズル391は、増速側の変速比γのときに、第2噴射口393bよりも第1噴射口393aからの潤滑油の供給量を増加させる。その際には、例えば、変速比γが最大増速比γminに近づくにつれて、第1噴射口393aからの潤滑油の供給量を徐々に増加させ、且つ、第2噴射口393bからの潤滑油の供給量を徐々に減少させてもよい。この増速側の変速比γのときには、第1噴射口393aからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも増加させ、且つ、第2噴射口393bからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも減少させる。
一方、このノズル391は、減速側の変速比γのときに、第1噴射口393aよりも第2噴射口393bからの潤滑油の供給量を増加させる。その際には、例えば、変速比γが最大減速比γmaxに近づくにつれて、第1噴射口393aからの潤滑油の供給量を徐々に減少させ、且つ、第2噴射口393bからの潤滑油の供給量を徐々に増加させてもよい。この減速側の変速比γのときには、第1噴射口393aからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも減少させ、且つ、第2噴射口393bからの潤滑油の供給量を「γ=1」のときよりも増加させる。
このノズル291では、その変速比γと潤滑油の供給量との対応関係を満たすべく、第1ノズル部材292の噴射口292aと第2ノズル部材293の第1及び第2の噴射口293a,293bの夫々の貫通孔の形状と大きさと位置とを決めると共に、後述する外歯歯車242a,293dの歯数と回転円盤部242の回転角度に応じた第2ノズル部材393の相対回転角度を決める。
この例示のノズル391は、最大増速比γminのときに、夫々の第1噴射口392a,393a同士を連通させると共に、夫々の第2噴射口392b,393b同士を連通させず、冷却性の点で接触部P2よりも不利な接触部P1に対して集中的に潤滑油が供給されるようにする。また、この例示のノズル391は、最大減速比γmaxのときに、夫々の第2噴射口392b,393b同士を連通させると共に、夫々の第1噴射口392a,393a同士を連通させず、冷却性の点で接触部P1よりも不利な接触部P2に対して集中的に潤滑油が供給されるようにする。
この無段変速機4においては、回転円盤部242を図10の紙面時計回り方向に回転させることで、第2ノズル部材393が第1ノズル部材392に対して図15の紙面反時計回り方向へと相対回転するので、変速比γが増速側に変化し、最大増速比γminになったときに、第2ノズル部材393の第1噴射口392aが第1ノズル部材392の第1噴射口393aに連通する。その際には、第2噴射口392b,393b同士が連通状態にない。また、この無段変速機4においては、回転円盤部242を図10の紙面反時計回り方向に回転させることで、第2ノズル部材393が第1ノズル部材392に対して図15の紙面時計回り方向へと相対回転するので、変速比γが減速側に変化し、最大減速比γmaxになったときに、第2ノズル部材393の第2噴射口392bが第1ノズル部材392の第2噴射口393bに連通する。その際には、第1噴射口392a,393a同士が連通状態にない。
以上示した様に、本変形例の無段変速機4に依れば、変速比γの変化と共に熱による損失エネルギが高くなる各接触部P1,P2の内の何れか一方に対して、その変化した変速比γに合わせて潤滑油の供給量を増やすことができ、更に、その内の他方に対して、その変化した変速比γに合わせて潤滑油の供給量を減らすことができる。従って、この無段変速機4は、変形例2の無段変速機3と同様の効果を得ることができる。
[変形例4]
前述した実施例と変形例1〜3の無段変速機1,2,3,4は、ノズル91,191,291,391から接触部P1側の第1供給先と接触部P2側の第2供給先に向けて潤滑油を噴射することで、その接触部P1,P2に潤滑油を供給している。本変形例は、これに替えて潤滑油の貯留部を設け、そこから流れ出た潤滑油を接触部P1,P2に供給するものである。
図16の符号5は、本変形例の無段変速機を示す。この無段変速機5は、実施例又は変形例1の無段変速機1,2において、潤滑油供給装置を以下の如く変更したものである。また、この無段変速機3のキャリア40は、シャフト60に対する固定要素として用いる。但し、回転円盤部42については、変速の為の回転を行うことができる。
本変形例の潤滑油供給装置は、平坦路上の車両に搭載されている状態で重力方向に直交する平面であり、且つ、少なくとも第1回転中心軸R1を含む平面よりも上方に配置された遊星ボール50に対して潤滑油を供給するものである。従って、この潤滑油供給装置は、その条件に該当する複数の遊星ボール50毎の貯留部491を備える(図17)。
貯留部491は、第1回転部材10と第2回転部材20との間で遊星ボール50を径方向外側から覆うように配置する。また、この貯留部491は、径方向外側の部分が第1及び第2の回転部材10,20の外形よりも径方向外側へと食み出さないように配置することが望ましい。この貯留部491は、平坦路上の車両に搭載されている状態で上方又は斜め上方に向いた開口を有している。その開口は、そこから流れ出た潤滑油が遊星ボール50の表面に到達し、その表面を介して接触部P1,P2に流れ着く位置に設ける。
この潤滑油供給装置は、その貯留部491に対して潤滑油を供給する。本変形例では、その潤滑油の供給に実施例又は変形例1のノズル91,191に類する形状と配置の油送管492を利用する(図17)。その油送管492は、貯留部491毎に1つずつ用意するが、複数の貯留部491に潤滑油を送るものであってもよい。この油送管492は、軸線方向に延在させた中空の部材であり、その内部の空間と貯留部491の内部の空間とを連通させる少なくとも1本の油路(図示略)を有する。
この油送管492は、第1及び第2の回転部材10,20の内周面10a,20aよりも径方向内側で且つサンローラ30の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う遊星ボール50の間に配置する。そして、この油送管492は、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とに固定する。この油送管492は、ノズル91,191と同じ様に、潤滑油の供給を担う専用品として配置してもよく、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを連結させる支持軸の機能を併せ持っていてもよい。この例示では、支持軸の機能も持たせる。これが為、この無段変速機5においては、油送管492の配置されていない遊星ボール50の間に、第1固定円盤部41と第2固定円盤部43とを連結させる支持軸48が設けられている(図17)。
ここで、油送管492がノズル91に類するものである場合、この油送管492は、回転円盤部42の回転を邪魔しないように、端部を第2固定円盤部43から回転円盤部42に向けて突出させない。一方、油送管492がノズル191に類するものである場合、この油送管492は、筐体CAを貫通するまで延在させる。これが為、回転円盤部42は、トルクの出力側に配置されており、この油送管492が貫通するならば貫通部42aを設け、トルクの入力側に配置されているならば、必ずしも貫通部42aを設ける必要はない。尚、図17の例示では支持軸48の存在する場所にまで貫通部42aを設けているが、回転円盤部42は、その場所に必ずしも貫通部42aを設ける必要はない。
この潤滑油供給装置は、油送管492がノズル91に類するものである場合、オイルポンプ81が潤滑油供給源となり、軸心油路61及び第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の内の少なくとも一方の内部に形成した油路(実施例で示した第1固定円盤部41の油路47)が潤滑油供給路となる。その油路47は、オイルポンプ81から圧送されてきた潤滑油を油送管492に送るものである。一方、この潤滑油供給装置は、油送管492がノズル191に類するものである場合、オイルポンプ81又は別のオイルポンプが潤滑油供給源となる。この場合には、その潤滑油供給源と油送管492とを繋ぐ油送管(変形例1で示した油送管192)が潤滑油供給路となる。
この無段変速機5においては、潤滑油が車両の揺れ等で貯留部491の開口から零れると又はオイルポンプ81の圧送によって貯留部491の開口から溢れ出ると、この潤滑油が供給対象の遊星ボール50の表面に付着し、その表面を介して接触部P1,P2に流れ着く。これが為、この無段変速機3は、潤滑油による撹拌損失の増大を抑えつつ、その接触部P1,P2への安定した潤滑油の供給が可能になる。
ここで、貯留部491の用意されていない遊星ボール50には、貯留部491の用意されている上方の遊星ボール50の表面を伝わって滴下した潤滑油が供給される。また、この遊星ボール50には、第1及び第2の回転部材10,20の掻き上げた潤滑油が付着する。従って、この無段変速機5は、全ての接触部P1,P2への安定した潤滑油の供給が可能になる。但し、この貯留部491の無い遊星ボール50への潤滑油の供給量が不足する場合には、この遊星ボール50に対して、例えば、実施例又は変形例1の部材91,191を有する潤滑油供給装置を設ければよい。
この様に、この無段変速機5は、トルク伝達効率の低下を抑えつつ、第1及び第2の回転部材10,20と遊星ボール50との間の接触部P1,P2、更に、サンローラ30と遊星ボール50との間の接触部P3,P4における潤滑油の油量を確保することができる。従って、この無段変速機5は、トルク伝達効率の低下を抑えたトラクション力の発生が可能になり、且つ、潤滑油の油量の確保に伴い過大な発熱を抑えることができるので、耐久性の低下も抑えることができる。
また、この無段変速機5においては、第1回転部材10と第2回転部材20との間で、径方向外側の部分が第1及び第2の回転部材10,20の外形よりも径方向外側へと食み出さないように貯留部491を配置している。そして、この無段変速機5では、実施例や変形例1の無段変速機1,2のノズル91,191と同じ様に、油送管492を遊星ボール50の間に配置し、この油送管492が更に第1固定円盤部41と第2固定円盤部43の支持軸としての機能も有している。これが為、この無段変速機5は、体格の大型化を抑えた潤滑油の安定供給が可能になる。また、この無段変速機5は、実施例や変形例1の無段変速機1,2と同じ様に、体格の大型化の抑制によって、遊星ボール50の数量を変えることなく潤滑油の安定供給が可能になり、トルク伝達効率低下等の機能低下を抑えることができる。
尚、この無段変速機5においては、貯留部491を有する遊星ボール50に対して、ノズル91又はノズル191を有する潤滑油供給装置を併せて配置してもよい。この場合には、油送管492に噴射口91a,91b又は噴射口191a,191bを設け、油送管492とノズル91,191の一体化を図ることが望ましい。これと同じ様に、この無段変速機5においては、貯留部491を有する遊星ボール50に対して、変形例2のノズル291又は変形例3のノズル391を有する潤滑油供給装置を併せて配置してもよい。この場合には、例えば、第1ノズル部材292,392の内部空間292c,392cを油送管492の油路として利用すればよい。
1,2,3,4,5 無段変速機
10 第1回転部材(第1動力伝達要素)
10a 内周面
11 入力軸
20 第2回転部材(第2動力伝達要素)
20a 内周面
21 出力軸
30 サンローラ(第3動力伝達要素)
40 キャリア(第4動力伝達要素)
41 第1円盤部(第1固定円盤部)
42,242 第2円盤部(回転円盤部)
42a 貫通部
43 第3円盤部(第2固定円盤部)
47 油路
50 遊星ボール(転動部材)
60 シャフト(変速機軸)
61 軸心油路
81 オイルポンプ
91,191,291,391 ノズル
91a,91b,191a,191b,292a 噴射口
91c,191c,292c,392c 内部空間
192 油送管
293a,392a,393a 第1噴射口
293b,392b,393b 第2噴射口
242a,293d,393d 外歯歯車
294,394 ノズル駆動部
491 貯留部
492 油送管
CA 筐体
P1,P2,P3,P4 接触部
R1 第1回転中心軸
R2 第2回転中心軸

Claims (7)

  1. 回転中心となる変速機軸と、
    前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で周方向に相対回転が可能な第1から第4の動力伝達要素と、
    第2回転中心軸を有し、前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記第3動力伝達要素の外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面で挟持され且つ前記第4動力伝達要素で傾転自在に保持された転動部材と、
    前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、
    前記第1及び第2の動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面に向けて潤滑油の供給を行う潤滑油供給装置と、
    を備え、
    前記潤滑油供給装置は、前記第1及び第2の動力伝達要素の内周面よりも径方向内側で且つ前記第3動力伝達要素の外周面よりも径方向外側で且つ隣り合う前記転動部材の間に配置され、潤滑油の供給先に向けた噴射口を有するノズル部材を備えることを特徴とした無段変速機。
  2. 前記第4動力伝達要素は、前記各転動部材を傾転方向に各々案内する第1円盤部と、前記変速装置の構成部材の1つであり、前記第1回転中心軸を中心とする回転で前記各転動部材を傾転させる第2円盤部と、を備え、
    前記ノズルは、前記第1円盤部に固定し、該第1円盤部の内部の油路を介して潤滑油が供給されることを特徴とした請求項1記載の無段変速機。
  3. 前記第2円盤部は、該第2円盤部の回転を前記ノズルによって妨げられない凹み又は貫通孔を有することを特徴とした請求項2記載の無段変速機。
  4. 前記ノズルは、前記変速機軸の軸線方向に延在させた円柱状の外形を有する第1ノズル部材と、同心の当該第1ノズル部材が挿入された円柱状の内部空間を有する第2ノズル部材と、該第2ノズル部材を自らの軸線を中心に前記第1ノズル部材に対して相対回転させるノズル駆動部と、を備え、
    前記第1ノズル部材は、前記第1円盤部に固定され、該第1円盤部の内部の油路から潤滑油が供給される内部空間と、前記内部空間と外周面側とを連通させた少なくとも1つの前記噴射口と、を有し、
    前記第2ノズル部材は、前記円柱状の内部空間と外壁面側とを連通させ、第1供給先としての前記第1動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第1動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面への潤滑油の供給が可能な第1噴射口と、前記円柱状の内部空間と外壁面側とを連通させ、第2供給先としての前記第2動力伝達要素と前記転動部材との間の接触部又は当該接触部の近傍における前記第2動力伝達要素の内周面若しくは前記転動部材の表面への潤滑油の供給が可能な第2噴射口と、を有し、
    前記ノズル駆動部は、前記第2ノズル部材を前記第1ノズル部材に対して相対回転させることで、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口との連通状態及び前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口との連通状態を変化させ、増速側の変速比のときに、前記第2噴射口よりも前記第1噴射口からの潤滑油の供給量を増加させる一方、減速側の変速比のときに、前記第1噴射口よりも前記第2噴射口からの潤滑油の供給量を増加させることを特徴とした請求項2又は3に記載の無段変速機。
  5. 前記ノズル駆動部は、最も増速側の変速比のときに、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口とを連通させると共に、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口とを連通させない一方で、最も減速側の変速比のときに、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第2噴射口とを連通させると共に、前記第1ノズル部材の噴射口と前記第1噴射口とを連通させないことを特徴とした請求項4記載の無段変速機。
  6. 前記変速機軸と前記第1から第4の動力伝達要素と前記転動部材と前記ノズルを収納する筐体を設け、
    前記第4動力伝達要素は、前記各転動部材を傾転方向に各々案内する第1円盤部と、前記変速装置の構成部材の1つであり、前記第1回転中心軸を中心とする回転で前記各転動部材を傾転させる第2円盤部と、を備え、
    前記潤滑油供給装置は、前記筐体を貫通するまで前記ノズルを延在させ、該延在させた端部から当該ノズルに潤滑油が供給されるよう構成し、
    前記第2円盤部は、その回転を前記ノズルが邪魔しない位置に配置することを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載の無段変速機。
  7. 前記ノズルは、前記各転動部材の夫々の傾転中心を繋ぐ円周よりも径方向外側に配置することを特徴とした請求項1から6の内の何れか1つに記載の無段変速機。
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