JP2014201819A - 蒸着マスク及び蒸着マスクの製造方法 - Google Patents

蒸着マスク及び蒸着マスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造が容易で、且つマスクの大型化に容易に対応する。
【解決手段】蒸着して基板上に複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクであって、一面1aに磁性体粉末を含む磁性層2を備える樹脂製のベースフィルム1に、前記複数の薄膜パターンに対応して貫通する複数の開口パターン4を形成したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着して基板上に複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクに関し、特に製造が容易で、且つマスクの大型化に容易に対応し得る蒸着マスク及び蒸着マスクの製造方法に係るものである。
従来の蒸着マスクは、金属板に形成された貫通する複数の開口パターンと、該複数の開口パターンの各々の周りのマスク本体部と、該マスク本体部の周囲に位置するマスク本体部の厚さより大なる厚さを有する周縁部とを備えたものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−237072号公報
しかし、このような従来の蒸着マスクにおいては、金属板をエッチング処理して該金属板に貫通する複数の開口パターンを形成しているので、高精細な開口パターンを精度よく形成することができなかった。特に、一辺の長さが数10cm以上の大面積の例えば有機EL表示パネル用の蒸着マスクの場合、エッチングむらの発生によりマスク全面の開口パターンを均一に形成することができなかった。したがって、300dpiを超えるような高精細な薄膜パターンに対応する蒸着マスクを製造することが極めて困難であった。
そこで、出願人は、基板に蒸着される複数の薄膜パターンに対応して該薄膜パターンと形状寸法の同じ複数の開口パターンを形成した樹脂製のフィルムと、少なくとも一つの開口パターンを内包する複数の貫通孔を形成した薄板状の磁性金属部材とを密接させた構造の複合型の蒸着マスクを提案している。
上記複合型の蒸着マスクは、厚みが10μm〜30μm程度の薄い樹脂製フィルムに開口パターンをレーザ加工して形成するものであり、高精細な開口パターンを精度よく形成することができるという特長を有している。
しかし、上記複合型の蒸着マスクの場合、一面に樹脂液を塗布してフィルムを形成したシート状の磁性金属部材をエッチングして上記複数の貫通孔を形成したり、又は樹脂製フィルム上に複数の貫通孔を有する磁性金属部材をめっき形成したりした後、各貫通孔内のフィルムにレーザ光を照射して上記開口パターンを形成するものであったので、一辺の長さが1m以上の基板に対応した蒸着マスクを製造しようとすると、大型のめっき浴槽や、一辺の長さが1m以上の磁性金属部材用の圧延シートが必要であり、上記のような極めて大型の蒸着マスクの製造は必ずしも容易ではなかった。
また、上記複合型の蒸着マスクの場合、フォトリソグラフィー工程、シードメタル層の無電解めっき又は成膜工程、磁性金属部材のめっき成膜工程等、製造工程が多くて複雑であることもマスクの製造の容易性を阻害する一因となっていた。
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、製造が容易で、且つマスクの大型化に容易に対応し得る蒸着マスク及び蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明による蒸着マスクは、蒸着して基板上に複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクであって、一面に磁性体粉末を含む磁性層を備える樹脂製のベースフィルムに、前記複数の薄膜パターンに対応して貫通する複数の開口パターンを形成したものである。
また、第2の発明による蒸着マスクの製造方法は、基板上に蒸着して複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクの製造方法であって、樹脂製のベースフィルムの一面に磁性体粉末を含む磁性層を形成する第1ステップと、前記ベースフィルムにレーザ光を照射して前記複数の薄膜パターンに対応した位置に貫通する複数の開口パターンを形成する第2ステップと、を行うものである。
本発明によれば、めっき又はエッチングにより複数の貫通孔を有する磁性金属部材を形成する上記複合型蒸着マスクに比べて、ベースフィルムの一面に磁性体粉末を含む磁性層を設けた積層フィルムを準備するだけでよいので、製造が容易であると共に製造工程が簡単であるため、量産性に優れ、蒸着マスクの製造コストを低減することができる。
また、上記複合型蒸着マスクの磁性金属部材用の圧延シートに比べて、幅広の樹脂製フィルムは容易に得ることができるため、一辺の長さが1m以上の大面積の蒸着マスクも容易に形成することができる。したがって、マスクの大型化にも容易に対応することができる。
本発明による蒸着マスクの第1の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。 上記第1の実施形態の蒸着マスクの製造方法を示すフローチャートである。 上記第1の実施形態の蒸着マスクの製造方法において、積層フィルムの製造工程を説明する断面図である。 上記第1の実施形態の蒸着マスクの製造方法において、開口パターンのレーザ加工を示す説明図である。 上記開口パターンの側壁のテーパ角度について示す説明図である。 開口パターンの形成後の位置ずれを説明する図であり、(a)は正規の位置に対する形成直後の状態を示し、(b)は(a)の状態からの位置ずれを示す。 図6の位置ずれを考慮した開口パターンの形成を説明する図であり、(a)は位置ずれを見込んだ形成直後の状態を示し、(b)は(a)の状態からずれて正規の位置に位置づけられた状態を示す。 上記第1の実施形態の変形例であり、最終工程を示す説明図である。 本発明による蒸着マスクの第2の実施形態を示す断面図である。 上記第2の実施形態の蒸着マスクの製造方法において、金属プレート付き積層フィルムの製造工程を説明する断面図である。 上記第2の実施形態の蒸着マスクの製造方法において、金属フレーム接合工程を説明する断面図である。 本発明による蒸着マスクの第3の実施形態を示す図であり、(a)は積層フィルムの平面図、(b)は(a)のP−P線断面矢視図である。 上記第3の実施形態において、開口パターンの形成について説明する図であり、(a)はベースフィルムの一面側からレーザ加工する場合を示し、(b)はベースフィルムの他面側からレーザ加工する場合を示している。 上記第3の実施形態の変形例を示す図であり、積層フィルムの平面図である。 上記変形例において、開口パターンの形成について説明する図であり、(a)はベースフィルムの他面側からレーザ加工する場合を示し、(b)はベースフィルムの一面側からレーザ加工する場合を示している。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による蒸着マスクの第1の実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。この蒸着マスクは、蒸着して基板上に複数の薄膜パターンを形成するためのもので、ベースフィルム1と、磁性層2と、保護層3と、複数の開口パターン4とを備えて構成されている。
上記ベースフィルム1は、一辺の長さが例えば1m以上、厚みが例えば8μm〜25μmで熱膨張係数が4×10−6/℃〜20×10−6/℃程度の例えばポリイミド等の樹脂製のフィルムである。望ましくは、ベースフィルム1は、蒸着して薄膜パターンを形成しようとする基板としての例えばガラス基板と同等の大きさの熱膨張係数を有するものがよい。
上記ベースフィルム1の一面1aには、磁性層2が設けられている。この磁性層2は、蒸着時に、基板の裏面に配置された磁石(例えば電磁石)の磁力によって吸着され、マスクを基板の表面に密着させるためのものであり、例えばFe,Ni,Fe−Ni合金,Fe−Co合金又はFe−Ni−Co合金等の、粒径が例えば3μm以下、望ましくは1μm以下の軟磁性体の粉末を、バインダーを使用してベースフィルム1上に、例えば1μm〜20μm程度の厚み(これに限定されない)に塗布したもので、公知の塗布技術を使用して形成することができる。この場合、磁性層2の表面は、基板との密着性をよくするために、カレンダー処理(平滑化処理)して鏡面に仕上げるとよい。
上記磁性層2上には、保護層3が設けられている。この保護層3は、磁性層2の特に鉄(Fe)が基板としての、例えば有機EL基板に密着して有機EL層を汚染するのを防止するためのもので、例えば1μm〜10μm程度の厚みに塗布される。保護層3は、上記ベースフィルム1と同じ材料か同等の熱膨張係数を有する材料で形成するのがよい。これにより、熱膨張係数が同等の材料で磁性層2を挟んだ構造となるため、マスクがカールするのを抑制することができる。なお、保護層3は、磁性層2の表面の凹凸を均して平滑化する機能も有している。したがって、磁性層2上に保護層3を設ける場合には、磁性層2のカレンダー処理は、必ずしも必要でない。
上記ベースフィルム1の面内には、ベースフィルム1、磁性層2及び保護層3を貫通して複数の開口パターン4が形成されている。この開口パターン4は、蒸着源で蒸発した蒸着材料の分子を選択的に通過させて基板上に付着させ、薄膜パターンを形成するためのものであり、ベースフィルム1の薄膜パターンに対応した位置に、ベースフィルム1の他面1b側からレーザ光を照射して薄膜パターンと同じ形状寸法に形成されている。なお、開口パターン4は、図1(b)に示すように、開口面積がベースフィルム1の上記他面1b側から上記一面1a側に向かって暫時狭くなるように形成され、保護層3側の開口端の面積が薄膜パターンの面積と同じになるようにするとよい。そして、保護層3側の面を基板との密着面とするとよい。これにより、ベースフィルム1の他面1b側における開口パターン4の開口端縁部4aが蒸着の影となるのを防止することができる。この場合、開口パターン4の側壁4bのテーパ角度を蒸着材料の分子のマスク面に対する最大入射角度(マスク面の法線と成す角度)に合わせて、例えば20°〜50°に形成すれば、ベースフィルム1の他面1b側における開口パターン4の開口端縁部4aが蒸着の影となるのをより効果的に防止することができる。
次に、このように構成された第1の実施形態の蒸着マスクの製造方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ステップS1においては、粒径が3μm以下、望ましくは1μ以下の軟磁性体の粉末を溶剤、バインダー、分散剤等の添加剤等の接着・粘着性のある物質と混合し、混練・分散させた磁性分散塗布材を準備する。ここで、上記軟磁性体粉末は、特に限定されるものではないが、例えばFe,Ni,Fe−Ni合金,Fe−Co合金又はFe−Ni−Co合金等が挙げられる。また、上記分散剤の成分は、特に限定されるものではないが、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩やレシチン等が挙げられる。さらに、バインダーについても特に限定されるものではないが、例えばシロキサンポリマーが挙げられる。そして、溶剤も特に限定されるものではないが、例えばプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)等である。
次に、ステップS2においては、ベースフィルム1に上記磁性分散塗布材を塗布する塗布工程を実施する。詳細には、ロール状に巻き上げられた幅が1m以上で、厚みが8μm〜25μmの、例えばポリイミド等の図3(a)に示すベースフィルム1の一方端を巻き上げながら、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート等の公知の塗布技術により上記磁性分散塗布材を塗布した後、乾燥炉で80℃〜300℃の温風により乾燥させて、同図(b)に示すようにベースフィルム1の一面1aに厚みが1μm〜20μm程度の磁性層2を形成する。このとき、段階的に昇温して乾燥させてもよい。また、基板と磁性層2との密着性をよくするために、磁性分散塗布材が塗布されたベースフィルム1のロール(ジャンボロール)に加圧加熱処理を行って、表面を滑らかにする加工(鏡面加工)を行うカレンダー工程を入れてもよい。なお、磁性層2上に後述の保護層3を形成する場合には、保護層3により磁性層2の表面の凹凸が均されるため、上記カレンダー工程は省略してもよい。
ステップS3においては、磁性層2上への保護層形成工程が実施される。詳細には、ベースフィルム1を巻き上げながら上記塗布工程を実施して磁性層2を形成した後、さらに磁性層2上にベースフィルム1と同じ樹脂材料か、又はベースフィルム1と熱膨張係数が同等の樹脂材料である樹脂液(例えば、ポリイミドワニス)を塗布し、これを乾燥炉・焼成炉にて段階的な昇温乾燥を行った後、300℃〜350℃の窒素(N)雰囲気下で焼成して、図3(c)に示すように厚みが1μm〜10μm程度の保護層3を形成する。
又は、ベースフィルム1を送り出しながら、磁性層2上に接着剤を塗布した後、該磁性層2上にベースフィルム1と熱膨張係数が同等の樹脂製フィルムを上記接着剤を介してラミネートし、保護層3を形成してもよい。或いは、磁性体粉末と接着剤とを混練したペースト樹脂をベースフィルム1の一面1aに塗布した後、その上にベースフィルム1と熱膨張係数が同等の樹脂製フィルムをラミネートして磁性層2と保護層3とを同時に形成してもよい。これらの場合、使用する接着剤としては、50℃〜150℃で硬化するものがよい。
ステップS4においては、基板に合わせて裁断する裁断工程が実施される。詳細には、図3(d)に示すように、ベースフィルム1上に磁性層2及び保護層3を形成したロールフィルムを保護層3側が下になるようにして送り出し、ガラスプレート6を介して該ガラスプレート6の裏面に配置された磁石(例えば電磁石7)により磁性層2を吸着してロールフィルムを固定する。そして、例えばカッター又はレーザ照射により、ロールフィルムを基板の面積に合わせて裁断し、積層フィルム8を形成する。このとき、同図に示すように、ガラスプレート6上に例えばエタノール等の液体9を塗布し、液体9の表面張力によりロールフィルムをガラスプレート6上に密着させるとよい。
ステップS5においては、レーザ光Lを上記積層フィルム8に照射してベースフィルム1、磁性層2及び保護層3を貫通する開口パターン4を形成するレーザ加工工程が実施される。詳細には、図4に示すように、電磁石7により吸着されてガラスプレート6上に密着固定された積層フィルム8をXYステージ10上に載置する。
開口パターン4の形成は、次のようにして行われる。先ず、図4に示すように、XYステージ10を予め定められた所定ピッチでXY方向にステップ移動しながら、図示省略のレーザ照射装置により積層フィルム8のベースフィルム1上に、例えば波長が355nmのレーザ光Lを集光し積層フィルム8をレーザアブレーションして加工する。このとき、集光するレーザ光Lの焦点における断面形状は、開口パターン4と同じ形状大きさとなるように整形されている。したがって、レーザ光Lの焦点位置が保護層3の下面の位置に合致するように焦点高さ位置を適切に制御すれば、開口パターン4の保護層3側の開口端の形状を設計通りに仕上げることができる。それ故、図5に示すように保護層3側の面を基板(被蒸着基板)11との密着面12とすれば、設計通りの大きさの薄膜パターンを蒸着形成することができる。なお、レーザ光Lの波長は、355nmに限られず、樹脂フィルムをアブレーション加工することが可能であれば266nm,254nm又はそれ以下であってもよい。
また、レーザ光Lの焦点の高さ位置をベースフィルム1側から保護層3側に徐々に下げながら、複数ショットで開口パターン4を形成すれば、開口面積がベースフィルム1側から保護層3側に向かって暫時狭くなるように、側壁4bにテーパを付けて開口パターン4を形成することができる。このとき、開口パターン4の側壁4bのテーパ角度を、図5に示すように、蒸着材料の分子のマスク面に対する最大入射角度(マスク面の法線と成す角度θ)に合わせて、例えば20°〜50°に形成すれば、ベースフィルム1の他面1b側における開口パターン4の開口端縁部4aが蒸着の影となるのをより効果的に防止することができる。
なお、同じレーザ加工工程においては、複数の開口パターン4のうち、いずれか一つの開口パターン4の座標位置に対して予め定められた座標位置に基板とのアライメントをとるための図示省略のアライメントマークが形成される。
ここで、開口パターン4のレーザ加工について、より詳細に説明する。熱膨張係数の異なる複数の材料を積層した積層フィルム8の、図6(a)に示すように縦横中心線の交点で示す正規の位置(設計位置)を狙ってレーザ光Lを照射し、複数の開口パターン4を形成すると、複数の積層材料の熱膨張係数の違いに基づいて発生しているフィルムの内部応力が解放されることにより、開口パターン4の位置が、同図(b)に示すように正規の位置から、例えばX方向に−Δx、Y方向に−Δyだけ累積的にずれることがある。なお、開口パターン4の位置ずれは、積層フィルム8の中心位置を中心にして四方に略対称に生じるが、図6は、その一部を代表して示している。後述の図7も同様である。
上記開口パターン4の位置ずれの問題に対して、本発明においては、予め実験により、開口パターン4形成後の位置ずれ量及び位置ずれ方向を計測して記憶しておき、実際に開口パターン4を形成する際には、上記位置ずれ量及び位置ずれ方向を予測して、該位置ずれが開口パターン4の形成後に結果的に補正されるように、図7(a)に縦横中心線の交点で示す正規の位置から、例えばX方向に+Δx、Y方向に+Δyだけずれた位置を狙ってレーザ光Lを照射し、開口パターン4を形成する。これにより、全ての開口パターン4が形成されてフィルムの内部応力が解放されると、開口パターン4は、X方向に−Δx、Y方向に−Δyだけずれて、同図(b)に示すように正規の位置に位置付けられることになる。
なお、レーザ加工中は、積層フィルム8はガラスプレート6に密着して固定されているため、形成された開口パターン4の位置ずれは生じないが、積層フィルム8をガラスプレート6から剥離した段階で開口パターン4の位置ずれが生じる。したがって、予め位置ずれを予測した開口パターン4の形成は可能である。
このように、本発明による蒸着マスクの第1の実施形態は、基材が樹脂製フィルムであるのでフレキシビリティがあり、有機ELのフレキシブルディスプレイの成膜に好適である。
以上の説明においては、XYステージ10をステップ移動しながらレーザ加工工程を実施する場合について述べたが、レーザ照射装置を移動してもよく、両方を移動してもよい。
レーザ加工工程終了後には、電磁石7に吸着保持された状態の積層フィルム8をシャワー洗浄、又は微弱な押圧力によるブラシ洗浄する。そして、スリットブローした後、真空乾燥炉で150℃、2時間の乾燥を行うと、図1に示すような蒸着マスクが得られる。
さらに、図8に示すように、保護膜3側に配置した電磁石7により磁性層2を吸着して積層フィルム8を上記電磁石7に保持した状態で、ベースフィルム1側から蒸着又はスパッタしてベースフィルム1の表面及び開口パターン4の側壁4bを、例えばニッケルやアルミニウム等の金属膜13でコーティングしてもよい。これにより、蒸着して基板11上に薄膜パターンを形成する際の蒸着源からの輻射熱により、ベースフィルム1や磁性層2等の樹脂層から発生するアウトガスで薄膜パターンが汚染されるのを防止することができる。
蒸着して薄膜パターンを形成する際には、前述したように、保護膜3側の面が基板11との密着面12となるため、蒸着マスクは、ベースフィルム1側に配置した第2の電磁石に磁性層2を吸着させて、上記電磁石7から第2の電磁石に移し替えられる。そして、上記第2の電磁石に保持された蒸着マスクを第3の電磁石上に配置された基板11に対してアライメントした後、基板11に密着面12を密着させた状態で磁性層2の吸着を第2の電磁石から第3の電磁石に切換え、蒸着マスクを基板11上に移す。これにより、蒸着マスクは、第3の電磁石により吸着されて基板11に密着保持されることになる。なお、上記電磁石7、第2及び第3の電磁石の全部又は一部は、永久磁石に置き換えてもよい。
図9は本発明による蒸着マスクの第2の実施形態を示す断面図である。以下、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
本発明による第2の実施形態は、複数の開口パターン4を形成した積層フィルム8を枠状の例えばインバー、又はインバー合金(特に、これに限定されない)等からなる金属フレーム14で支持した構造を有するものである。この場合、積層フィルム8と金属フレーム14とを有機接着剤を使用して接着してもよいが、蒸着時の熱によるアウトガスの発生により薄膜パターンが汚染されるおそれがある。特に、薄膜パターンとしての有機EL層を形成する際には、上記アウトガスは有機EL層の特性劣化を招くため、極力排除しなければならない。
そこで、上記第2の実施形態においては、保護層3側に複数の開口パターン4を内包する大きさの開口を有する枠状の例えばインバー、又はインバー合金(特に、これに限定されない)等の金属プレート15を設け、該金属プレート15と金属フレーム14とを溶接する。
第2の実施形態の蒸着マスクは、次のようにして製造される。
先ず、図10(a)に示すように、第1の実施形態と同様にしてベースフィルム1の一面1aに磁性層2を形成した後、同図(b)に示すように、該磁性層2上に保護層3となる樹脂液16を塗布する。さらに、同図(c)に示すように、該樹脂液16が乾燥する前に、磁性層2上に金属プレート15を配置する。そして、同図(d)に示すように、上記樹脂液16を乾燥して保護層3を形成するのと同時に、保護層3によって金属プレート15を磁性層2上に密着固定する。次に、同図(e)に示すように、上記第1の実施形態と同様にして、積層フィルム8を金属プレート15の外周縁に沿って裁断し、金属プレート付き積層フィルム17を形成する。なお、枠状の金属プレート15ではなく、金属片を枠状に配置してもよい。
そして、図11(a)に示すように、金属フレーム14上に金属プレート付き積層フィルム17を架張し、同図(b)に示すように、金属プレート15にレーザ光Lを照射して金属プレート15と金属フレーム14とを溶接する。
続いて、第1の実施形態と同様にして、金属プレート付き積層フィルム17を電磁石7により吸着してガラスプレート6に密着固定した状態でXYステージ10上に載置し、XYステージ10をXY方向にステップ移動しながら、例えば波長が355nmのレーザ光Lを金属プレート付き積層フィルム17上に集光して複数の開口パターン4を形成する。
そして、開口パターン4の形成が終了すると、金属プレート付き積層フィルム17は、ガラスプレート6から剥がされ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤によりシャワー洗浄、又は超音波を付与可能なディップ槽にて洗浄され、レーザ加工によるアブレーション残渣が除去される。さらに、その後、真空乾燥炉で150℃、2時間だけ乾燥することにより、図9に示す蒸着マスクが得られる。
なお、開口パターン4の形成は、金属プレート付き積層フィルム17に金属フレーム14を接合する前の段階で行ってもよい。また、図10(c)において、上記金属プレート15に替えて金属フレーム14を配置し、金属フレーム14を直接、積層フィルム8に密着固定してもよい。さらに、開口パターン4形成後に、ベースフィルム1の一面1a及び開口パターン4の側壁4bに金属膜13をコーティングしてもよい。さらにまた、積層フィルム8の裁断は、金属プレート15を金属フレーム14に溶接した後に行ってもよい。
このように、上記蒸着マスクの製造方法によれば、任意の開口寸法及び開口ピッチで開口パターン4を形成することができるため、1種類の積層フィルム8を準備するだけで、開口パターン4の開口寸法及び開口ピッチの異なる複数種の蒸着マスクを製造することができる。したがって、磁性金属部材と樹脂製フィルムとを密接させた構造の複合型蒸着マスクに比べて製造が容易であると共に、製造工程が簡単であるため、量産性に優れ、蒸着マスクの製造コストを低減することができる。
また、上記複合型蒸着マスクの磁性金属部材用の圧延シートに比べて、幅広の樹脂製フィルムを容易に得ることができるため、一辺の長さが1m以上の大面積の蒸着マスクも容易に形成することができる。したがって、マスクの大型化にも容易に対応することができる。
なお、上記実施形態においては、ベースフィルム1に磁性分散塗布材を塗布して磁性層2を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば樹脂に磁性体粉末を練り込める等して作製したフィルムを上記ベースフィルム1に貼り合せてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、磁性層2上に保護層3を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、保護層3は無くてもよい。但し、有機EL表示装置の有機EL層のように、蒸着マスクの磁性層2が直接接触することによる薄膜パターン(有機EL層)の汚染が問題となる場合には、磁性層2上に保護層3を設けるのがよい。
図12は本発明による蒸着マスクの第3の実施形態を示す図であり、(a)は積層フィルムの平面図、(b)は(a)のP−P線断面矢視図である。ここでは、第1及び第2の実施形態と異なる点について説明する。
この第3の実施形態おいて、上記第1及び第2の実施形態と異なる点は、上記ステップS2で形成される磁性層2が、磁性体粒子を含有するインク(例えば、ポリイミドインク)をベースフィルム1の一面1aにスクリーン印刷し、又はインクジェットにより塗布した後、180℃〜400℃、望ましくは180℃〜200℃の温度で硬化させて形成されるものであり、複数の開口18を有するパターン状に形成される点である。
この場合、ベースフィルム1と磁性層2とはいずれも基材を例えば同じポリイミド樹脂で形成することができるため、磁性層2が剥離し難い。したがって、第3の実施形態においては、保護層3は無くてもよい。それ故、保護層3の厚み分だけ積層フィルム8の厚みを薄くすることができ、側壁にテーパを付けた開口パターン4を有するマスクであっても、開口パターン4の蒸着源側の縁部が蒸着の影となるのをより抑制することができる。
なお、図12においては、開口18が複数の開口パターン4を内包する大きさのスリット形状である場合について示しているが、一つの開口パターン4を内包する大きさであってもよい。これらの場合、ベースフィルム1が可視光を透過する透明樹脂であるときには、開口パターン4は、図13(a)に示すようにベースフィルム1の一面1a側から、例えばベースフィルム1を透かして基準基板19に設けられたレーザ光Lの照射目標である基準パターン20の位置を確認し、該基準パターン20を狙ってレーザ光Lを照射してレーザ加工するとよい。又は、同図(b)に示すように、開口パターン4はベースフィルム1の他面1b側から上記と同様にしてレーザ加工してもよい。この場合、スリット状の開口18の短軸方向の幅を開口パターン4の同方向の幅と同等に形成すれば、開口パターン4の配列ピッチが狭くなっても、隣接する開口18間の磁性層2の部分2aに十分に大きな体積を確保することができる。したがって、磁性層2の上記部分2aに電磁石7の大きな吸引力を作用させて、蒸着マスクと基板11との強い密着力を得ることができる。
又は、図14に示すように、開口18は、開口パターン4の形成位置に対応して該開口パターン4と同等以下の大きさで形成されたものであってもよい。この場合、上記開口18は、開口パターン4を形成するためのレーザ光Lの照射目標としての機能を有する。したがって、ベースフィルム1が可視光を透過する透明樹脂である場合には、図15(a)に示すように、ベースフィルム1を透かして上記開口18の位置を確認した後、ベースフィルム1の他面1b側から開口18を狙ってレーザ光Lを照射し、開口パターン4を形成するとよい。なお、同図(b)に示すように、ベースフィルム1の一面1a側から開口18を狙ってレーザ光Lを照射して開口パターン4を形成してもよいが、上述したように、隣接する開口18間の磁性層2の部分2aに大きな体積を確保して電磁石7による蒸着マスクと基板11との強い密着力を得るためには、ベースフィルム1の他面1b側からレーザ光Lを照射して開口パターン4を形成するのがよい。
なお、上記第3の実施形態においても、当然ながら、磁性層2上に保護層3を設けてもよい。しかし、保護層3がない場合には、ベースフィルム1のみをレーザ加工すればよく、異種材料を組み合わせた積層フィルム8をレーザ加工するときに比べて加工条件の設定が容易であると共に、加工深さが浅くなるため開口パターン4をより精度よく形成することができる。
1…ベースフィルム
1a…ベースフィルの一面
1b…ベースフィルムの他面
2…磁性層
3…保護層
4…開口パターン
10…基板
11…密着面
13…金属膜
16…樹脂液
18…開口

Claims (16)

  1. 蒸着して基板上に複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクであって、
    一面に磁性体粉末を含む磁性層を備える樹脂製のベースフィルムに、前記複数の薄膜パターンに対応して貫通する複数の開口パターンを形成したことを特徴とする蒸着マスク。
  2. 前記磁性層上に樹脂製の保護層をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の蒸着マスク。
  3. 前記保護層は、前記ベースフィルムと熱膨張係数が同等の材料により形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の蒸着マスク。
  4. 前記開口パターンは、開口面積が前記ベースフィルムの他面側から前記一面側に向かって暫時狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸着マスク。
  5. 前記磁性層側の最表面を前記基板との密着面としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸着マスク。
  6. 前記ベースフィルムの前記他面に金属膜をコーティングして備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸着マスク。
  7. 基板上に蒸着して複数の薄膜パターンを形成するための蒸着マスクの製造方法であって、
    樹脂製のベースフィルムの一面に磁性体粉末を含む磁性層を形成する第1ステップと、
    前記ベースフィルムにレーザ光を照射して前記複数の薄膜パターンに対応した位置に貫通する複数の開口パターンを形成する第2ステップと、
    を含むことを特徴とする蒸着マスクの製造方法。
  8. 前記磁性層は、複数の開口を有するパターン状に形成されたものであることを特徴とする請求項7記載の蒸着マスクの製造方法。
  9. 前記磁性層は、磁性体粒子を含有するインクを前記ベースフィルムの一面にスクリーン印刷して形成されることを特徴とする請求項8記載の蒸着マスクの製造方法。
  10. 前記磁性層は、磁性体粒子を含有するインクを前記ベースフィルムの一面にインクジェットにより塗布して形成されることを特徴とする請求項8記載の蒸着マスクの製造方法。
  11. 前記第1ステップにおいては、前記磁性層を形成した後、該磁性層の表面を平滑化処理することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。
  12. 前記第1ステップと前記第2ステップとの間に、前記磁性層上に樹脂液を塗布して保護層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。
  13. 前記保護層は、前記ベースフィルムと熱膨張係数が同等の材料により形成されたものであることを特徴とする請求項12記載の蒸着マスクの製造方法。
  14. 前記第1ステップにおいては、磁性体粉末と接着剤を混練したペースト樹脂を前記ベースフィルムの一面に塗布して前記磁性層を形成した後、前記ベースフィルムと線膨張係数が同等の材料からなるフィルムをラミネートすることを特徴とする請求項7記載の蒸着マスクの製造方法。
  15. 前記開口パターンは、開口面積が前記ベースフィルムの他面側から前記一面側に向かって暫時狭くなるように形成されることを特徴とする請求項7〜14のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。
  16. 前記第2ステップの後に、前記ベースフィルムの前記他面に金属膜をコーティングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項7〜15のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。

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