JP2014201462A - 超速硬性クリンカー粉砕物、それを用いたセメント組成物、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CaO35〜50質量%、Al2O335〜50質量%及びSiO27〜18質量%の化学組成で非晶質度が70%以上の超速硬性クリンカーを粉砕してなる、ブレーン比表面積4000〜9000cm2/g、30μm超の粒子の含有率が5質量%以下である超速硬性クリンカー粉砕物であり、さらに、1.0μm未満の粒子の含有率が5%以下である前記超速硬性クリンカー粉砕物であり、前記超速硬性クリンカー粉砕物100質量部に対して、石膏を25〜200質量部含有してなるセメント組成物であり、前記セメント組成物を配合してなる結合材、である。
【選択図】なし
Description
しかしながら、カルシウムアルミネートと石膏類からなる急硬性成分を加えたセメント組成物は、温度依存性が大きく、低温では充分な急硬性が得られないものであった。また、カルシウムアルミネートと石膏類の混合割合や急硬材の添加量によっては、低温で過膨張する傾向もあり、その信頼性に欠けるものであった。また、モルタルやコンクリートの打ち込み面をコテで仕上げても、硬化に伴い表面に凹凸が生じ、美観の観点から好ましくない場合があった。
また、可使時間を長く確保することを目的として、アルミノケイ酸カルシウムガラスを基材とした材料も提案されている(特許文献5参照)。しかし、硫酸アルカリ含有量の高いセメントでは所定の物性を充分確保することができない場合があった。
本発明で使用する、「部」や「%」は、特に規定のない限り質量基準である。
また、本発明のセメント組成物とは、セメント組成物、モルタル組成物、及びコンクリート組成物を総称するものである。
対象物質を1000℃で2時間焼きなました後、毎分5℃の冷却速度で徐冷して結晶化させる。そして、結晶化させたものを粉末X線回折法により測定し、結晶鉱物のメインピークの面積Sを求める。次いで、焼きなます前の物質の結晶のメインピーク面積S0を求め、以下の式により非晶質度Xを求める。
X(%)=100×(1−S0/S)
ここで、還元雰囲気とは、窒素雰囲気中で炉内に一酸化炭素が発生し、かつ、酸欠状態のことである。開放系では、その濃度を正確に測定することは難しいが、電炉内にある溶融物の上方で計測した場合には、一酸化炭素の濃度は、1体積%以上の計測値が得られる。また、同様に酸素濃度を計測すると、少なくとも10体積%以下、通常は6体積%以下である。大気中の酸素濃度は21体積%であることから、電炉内は酸欠状態となっている。
また、超速硬性クリンカー粉砕物の粒子径は、可使時間の確保や強度発現性の点で重要である。1.0μm未満の粒子の含有率は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。また、30μm超の粒子の含有率は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。 前記範囲外では、長さ変化率、流動性、可使時間の確保、初期強度発現、表面平滑性のすべての物性を両立することが難しくなる場合がある。これは、径の小さい粒子の反応性が高すぎたり、径の大きい粒子の反応性が遅れたりすることに起因すると考えられる。
また、分級方法も特に限定されるものではないが、コアンダ効果を利用した気流分級機でクリンカーの粒度を制御することが望ましい。コアンダ効果を利用する気流分級装置とは、エジェクター等で加速された粉砕品を、空気をキャリアガスとしてノズルから分級室内に噴射すると、粒子の受ける慣性力の違いによって、径の小さい粒子ほど近くのコアンダブロックに沿って流れ、径の大きい粒子ほど遠くへ飛ばされる性質を利用したものであり、粒子径別に複数の分級物を捕集できるように、分級エッジを具備した分級エッジブロックが複数個設けられた気流分級装置である。市販品を例示すれば、株式会社マツボー社製、商品名「エルボジェット」、セイシン企業社製、商品名「クラッシール」等である。
本発明の超速硬性クリンカー粉砕物において、1.0μm未満の粒子の含有率や30μm超の粒子の含有率を確認するためには、市販の粒度分布測定装置を用いることができる。例として、HORIBA製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920などが挙げられる。
石膏の粒度は、ブレーン比表面積で4000cm2/g以上が好ましく、5000〜7000cm2/gがより好ましい。4000cm2/g未満では初期強度発現性が低下する場合がある。
具体的には、ナフタレンスルホン酸系減水剤、メラミンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤等が挙げられるが、特には限定されるものではない。これらの中では、ナフタレンスルホン酸系減水剤やリグニンスルホン酸系減水剤が好ましく、さらにこれらを併用することが、強度発現性と流動性保持の両立の観点からより好ましい。
窒素ガス発砲物質としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、及びヒドラジン誘導体からなる群から選ばれた1種又は2種以上が使用可能である。例えば、アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル等が挙げられる。
ニトロソ化合物としては、N,N‘−ジニトロペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、4,4‘−オキシビスやヒドラジンカルボンアミドが挙げられる。
本発明では、これらの1種又は2種以上が使用可能である。これらの窒素ガス発砲物質は、塩基性のセメントが水と練混ぜた際に、そのアルカリ性雰囲気で窒素ガスを発生するもので、一酸化炭素、二酸化炭素、及びアンモニア等のガスを副生してもよい。
また、ガス発泡物質が炭素質物質ならば、結合材100部に対して、1〜15部の範囲で使用でき、3〜10部の範囲がより好ましい。それぞれ、好ましい範囲の下限値未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、好ましい範囲の上限値を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。
本発明で云う結合材とは、例えば、セメント、超速硬性クリンカー粉砕物、石膏、凝結調整剤、及び必要に応じて含有する減水剤からなる。
セメント中に硫酸アルカリが多量に含まれると、セメント組成物の流動性、可使時間、長期強度、耐久性等に影響を及ぼす場合がある。JIS R 5210では、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱等の各種ポルトランドセメントに対して、三酸化硫黄、アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が規定されている。しかし、混合セメントや海外のセメントに関しては、含有量が規定されていない場合があり、過剰に硫酸アルカリを含有している場合もある。
粗骨材の使用量は、結合材100部に対して、200部以下が好ましく、160部以下がより好ましく、130部以下が最も好ましい。200部を超えると強度が低下する場合がある。
クリンカー原料として、CaO原料には生石灰、Al2O3原料にはボーキサイト、SiO2原料にはケイ石を使用し、使用材料に示す組成のクリンカーを、酸素濃度3体積%、窒素濃度95体積%、一酸化炭素濃度2体積%の還元雰囲気で合成した。得られたクリンカーをボールミルで粉砕し、使用材料に示すクリンカー粉砕物を合成した。
これらクリンカー粉砕物を使用し、セメント80部、クリンカー10部、及び無水石膏10部からなる結合材を調製し、結合材100部に対して、アルカリ炭酸塩0.5部、有機酸0.1部、減水剤0.5部、ガス発泡物質0.05部、及び細骨材150部を配合して、20℃の条件でモルタル組成物を調製した。この際、練り水は結合材の合計100部に対して37部を使用した。モルタルの流動性、可使時間、初期膨張率、長さ変化率、及び圧縮強度を測定した。
なお、セメントは、製造元の異なる4種類の製品を使用して比較した。
また、可使時間の短い配合については、アルカリ炭酸塩を1.0部、有機酸0.2部まで増量した配合も検討した。結果を表1に併記する。
クリンカー粉砕物A:非晶質度95%、CaOが50%、Al2O3が35%、SiO213%、その他2%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物B:非晶質度95%、CaOが47%、Al2O3が38%、SiO2が13%、その他2%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物C:非晶質度95%、CaOが43%、Al2O3が41%、SiO2が13%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物D:非晶質度95%、CaOが38%、Al2O3が46%、SiO2が13%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物E:非晶質度95%、CaOが35%、Al2O3が50%、SiO2が13%、その他2%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物F:非晶質度95%、CaOが45%、Al2O3が42%、SiO2が10%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物G:非晶質度95%、CaOが46%、Al2O3が44%、SiO2が7%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物H:非晶質度95%、CaOが42%、Al2O3が40%、SiO2が16%、その他2%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物I:非晶質度95%、CaOが40%、Al2O3が40%、SiO2が18%、その他2%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物J:非晶質度70%、CaOが43%、Al2O3が41%、SiO2が13%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が5000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物K:非晶質度50%、CaOが43%、Al2O3が41%、SiO2が13%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が4000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満1.0%、30μm超1.0%。
クリンカー粉砕物L:非晶質度95%、CaOが45%、Al2O3が47%、SiO2が4%、その他4%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満5.8%、30μm超5.5%。
クリンカー粉砕物M:非晶質度95%、CaOが43%、Al2O3が41%、SiO2が13%、その他3%。加熱温度1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒。ブレーン比表面積5000cm2/g。粒子径1.0μm未満5.9%、30μm超5.1%。
セメントa:普通ポルトランドセメント、日本市販品、ブレーン比表面積3100cm2/g、比重3.14、Na2Oが0.3%、K2Oが0.4%、SO3が2.0%。
セメントb:普通ポルトランドセメント、海外市販品、ブレーン比表面積3800cm2/g、比重3.15、Na2Oが0.3%、K2Oが0.7%、SO3が3.3%。
セメントc:普通ポルトランドセメント、海外市販品、ブレーン比表面積4100cm2/g、比重3.13、Na2Oが0.4%、K2Oが0.5%、SO3が3.8%。
セメントd:普通ポルトランドセメント、海外市販品、ブレーン比表面積5200cm2/g、比重3.16、Na2Oが0.3%、K2Oが1.0%、SO3が4.3%。
石膏:無水石膏、pH3.0、ブレーン比表面積5000cm2/g。
アルカリ炭酸塩;試薬1級の炭酸カリウム。
有機酸:試薬1級のクエン酸。
減水剤:市販(花王社製)のナフタレン系。
ガス発泡物質:窒素ガス発泡物質、アゾジカルボンアミド、市販品(三協化成社製)。
水:水道水。
細骨材:珪砂、5mm下。
非晶質度:対象物質を1000℃で2時間焼きなました後、5℃/分の冷却速度で徐冷して結晶化させる。次いで、結晶化させたものを粉末X線回折法により測定し、結晶鉱物のメインピークの面積S0を求める。次いで、焼きなます前の物質の結晶のメインピーク面積Sから、X(%)=100×(1−S/S0)の式により非晶質度Xを求めた。
ブレーン比表面積:JIS R5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。
クリンカー粉砕物の1.0μm未満、30μm超粒子の含有率:HORIBA製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いた。粉砕して分級したクリンカーをエタノールに超音波分散させ、相対屈折率130a0001の条件で粒度分布を測定して、質量%に換算した。
流動性:JSCE−F 541−2010「充てんモルタルの流動性試験方法」に準じて、J14漏斗流下値を測定して評価した。8〜10秒の範囲を合格とする。
可使時間:可使時間は練り上がり温度から1℃上昇した時点とした。10分以上を合格とした。
初期膨張率:土木学会「膨張コンクリート設計施工指針(案)」付録2.付属書「膨張材を用いた充填モルタルの施工要領(案)」に従い測定した。ただし、表中の+は膨張側を示す。
長さ変化率:JIS A 6202−1997「コンクリート用膨張材」(B法)に準じて測定した。+200〜+1000(×10−6)を合格とした。+200(×10−6)未満では収縮補償効果が充分でなく、逆に+1000(×10−6)を超えると過膨張である。
圧縮強度:モルタルを型枠に詰めて、4cm×4cm×16cmの成形体を作製し、材齢3時間の圧縮強度を、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。3時間強度は5N/mm2以上、28日強度は60N/mm2以上を合格とした。
表面平滑性:モルタルを20cm×20cm×4cmの型枠に充填し、モルタル表面を平滑に仕上げた。硬化後にモルタル表面を観察し、平滑な状態が維持されているものを◎、やや凹凸が生じたが概ね平滑なものを○、凹凸が目立つものを△とした。
一方、範囲外のクリンカー粉砕物L、Mは、特定のセメントに対して、充分な可使時間を確保できなかったり、長期強度の発現性が乏しいことが分かる。
また、遅延剤の添加率を上げると、可使時間は多少長くなるが、長期の強度増進が得られにくくなることが分かる。
Claims (9)
- CaO35〜50質量%、Al2O335〜50質量%及びSiO27〜18質量%の化学組成で非晶質度が70%以上の超速硬性クリンカーを粉砕してなる、ブレーン比表面積4000〜9000cm2/g、30μm超の粒子の含有率が5質量%以下である超速硬性クリンカー粉砕物。
- さらに、1.0μm未満の粒子の含有率が5質量%以下である請求項1に記載の超速硬性クリンカー粉砕物。
- 請求項1又は2に記載の超速硬性クリンカー粉砕物100質量部に対して、石膏を25〜200質量部含有するセメント組成物。
- 請求項3に記載のセメント組成物を配合してなる結合材。
- 凝結調整剤、ガス発泡物質、及び減水剤からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる請求項4に記載の結合材。
- 超速硬性クリンカーが、CaO原料と、Al2O3原料と、SiO2原料とを配合し、1600℃以上で熱処理した後、急冷したものである請求項1又は2に記載の超速硬性クリンカー粉砕物の製造方法。
- CaO原料が生石灰、Al2O3原料がボーキサイト、SiO2原料がケイ石である請求項6に記載の超速硬性クリンカー粉砕物の製造方法。
- 熱処理を、窒素雰囲気中一酸化炭素の濃度が1体積%以上、酸素濃度が10体積%以下の還元雰囲気で行なう請求項6又は7に記載の超速硬性クリンカー粉砕物の製造方法。
- 急冷の冷却速度が5000K/秒以上である請求項6〜8のいずれか一項に記載の超速硬性クリンカー粉砕物の製造方法。
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