JP2014199715A - リチウムイオン電池用負極とその製造方法及びリチウムイオン電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】合金系活物質を含有する薄膜状負極活物質層を備えるリチウムイオン電池用負極において、負極集電体と負極リードとを溶融部により導通性良く接合するとともに、合金層の寸法および形状を調整する。
【解決手段】負極板が負極集電体と合金系負極活物質を含み、負極板に接続される負極リードを含み、負極板の端面と負極リードの端面との間を接合する溶融部を有するリチウムイオン電池用負極であって、溶融部は、少なくとも一部に、負極板と負極リードが対峙する面に平行な平坦部を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン電池用負極とその製造方法及びリチウムイオン電池に関する。さらに詳しくは、合金系活物質を含有するリチウムイオン電池用負極における接合部の改良と、負極集電体と負極リードとの接合方法の改良に関する。
リチウムイオン電池は、高容量及び高エネルギー密度を有し、小型化及び軽量化が容易なことから、電子機器等の電源として広く利用されている。電子機器には、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant、PDA)、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯ゲーム機等がある。代表的なリチウムイオン電池は、リチウムコバルト複合酸化物を含有する正極と、黒鉛を含有する負極と、ポリオレフィン製セパレータと、を備える。
正極及び負極は、それぞれ、集電体と活物質層とリードとからなる。活物質層は集電体表面に形成される。リードは、活物質層が形成されていない集電体露出部に溶接される。リードの溶接には、抵抗溶接や超音波溶接が利用されている。集電体露出部は、集電体表面に間隔を空けて活物質層を形成するか、又は集電体表面に活物質層を形成した後、活物質層の一部を除去することにより形成される。
最近では電子機器の多機能化が進み、その電力消費量が増大している。その一方で、一度の充電で連続して使用できる時間の延長が望まれている。このため、リチウムイオン電池のさらなる高容量化が必要になり、黒鉛よりも高容量である合金系活物質の開発が盛んに行われている。代表的な合金系活物質には、珪素、珪素酸化物等の珪素系活物質がある。
合金系活物質を含有する負極は、一般的には、負極集電体と、負極集電体表面に気相法により形成される合金系活物質の薄膜(以下において「薄膜状負極活物質層」とすることがある)と、を備える。
薄膜状負極活物質層が形成された負極集電体に、負極リードを接合する方法が種々提案されている。
特許文献1は、負極板と負極リードとの積層体にレーザを照射することにより、積層体を厚さ方向に貫通する連通孔を形成した負極を開示している。積層体にレーザを照射すると、連通孔の内部表面に存在する負極集電体と負極リードとが溶融して接触することにより、負極集電体と負極リードとが接続される。
しかしながら、負極集電体と負極リードとの接続部分には、合金系活物質の粒子が含まれている。合金系活物質の粒子は、レーザ照射により、薄膜状負極活物質層から流出したものである。合金系活物質は融点が高いので、レーザを照射しただけでは、溶融しにくい。したがって、接続部分の接合強度は低い。また、合金系活物質は電気抵抗が大きいので、接続部分に合金系活物質の粒子が存在することにより、接続部分の導通性が低下しやすい。
特許文献2は、合金系活物質を含有する薄膜状負極活物質層の表面に、銅、銅合金又は銅のクラッド材からなる負極リードを抵抗溶接により接合した負極を開示している。抵抗溶接では、負極集電体又は負極リードが局所的に溶融することがあるが、薄膜状負極活物
質層には電流がほとんど流れないので、薄膜状負極活物質層は溶融しない。このため、負極集電体と負極リードとは十分に接合しない。
ところで、合金系二次電池に用いられる負極として、結着剤を用いた活物質層を形成する代わりに、銅箔等からなる集電体の表面に真空蒸着等により珪素系活物を被着させた珪素系負極が知られている。このような珪素系負極においては、集電体にリードを接続することが煩雑であるという問題があった。詳しくは、従来の負極のような集電体が露出したリード接続部を形成するためには、例えば、真空蒸着等の際にリード接続部の形成領域をマスクすることにより、その領域に珪素系活物質が蒸着されないようにする必要があった。このような、マスク作業は、工程上非常に煩雑になる。
このような問題に対し、本発明者らは、珪素系活物質等からなる活物質層が両側表面に設けられた集電体と、ニッケル、ニッケル合金、銅及び銅合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するリードとを、アーク溶接により接続する方法を提案した(特許文献3参照)。詳しくは、集電体の表面に形成された活物質層にリードの一部分を重ね、重ね合わせた部分をアーク溶接することにより、集電体とリードとの間に珪素系合金層が形成され、集電体とリードとが導通性良く接続される。このような珪素系合金層は、活物質層が集電体及びリードのそれぞれ一部と共に溶融し、再凝固することにより形成される。
図7(a)は、アーク溶接による珪素系負極板の接続状態を模式的に示す断面図であり、図7(b)は、アーク溶接による珪素系負極板の接続状態を模式的に示す上面図である。珪素系負極板1と負極リード13とをアーク溶接することにより、珪素系負極板1の負極集電体10と負極リード13とが溶融部18を介して接続されている。このように集電体の表面に形成された珪素系活物質層にリードの一部分を重ね、重ね合わせた部分をアーク溶接することにより、集電体の露出部を形成することなく溶接ができるために工業的に有利になる。
特開2007−214086号公報 特開2007−115421号公報 国際公開第2010/041399号
特許文献3に開示された技術によれば、珪素系負極にリードを溶接することが容易になる。しかしながら、本発明者らは、次のような新たな課題を見出した。
珪素系負極においては、アーク溶接により集電体とリードとの間に、集電体の厚みとリードの厚みの和と同等以上の厚みを有する溶融部が形成される。この方法では、溶融部の寸法が必要以上に大きくなり、捲回型電極群を作製した場合に、捲回型電極群の寸法及び形状が規格外になることおよび捲回型電極群における正極又は負極とセパレータとの間隔が広がることによる電極反応の不均一性、溶融部が周辺の電極群を変形させることおよびセパレータを損傷させることによる内部短絡の発生等の不都合が起り易くなる。
本発明の目的は、合金系負極活物質を利用するリチウムイオン二次電池において、負極集電体と負極リードとが接合された溶融部による電極群の変形や短絡が抑制できる負極とその製造方法、および当該負極を含み高容量および高出力を有するリチウムイオン二次電池を提供することである。
本発明のリチウムイオン電池用負極は、集電体及び集電体の表面に形成される薄膜状負極活物質を備え、薄膜状負極活物質層が合金系活物質を含有する負極板と、負極板に接続される負極リードと、負極板の端面と負極リードの端面との間に介在しこれらを溶接する溶融部を有するリチウムイオン電池用負極であって、溶融部は、少なくとも一部に、負極板と負極リードが対峙する面に平行な平坦部を有するリチウムイオン電池用負極に係わる。
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程を備え、第1工程は、集電体及び集電体の表面に形成される薄膜状負極活物質層を備え、薄膜状負極活物質層が合金系活物質を含有する負極板と、負極板に接続される負極リードとを準備する工程であり、第2工程は、第1板と第2板とから構成される一組の溶接治具の第1板と第2板との間に、薄膜状負極活物質層の表面と負極リードの表面とが重なり、且つ、負極板の端面と負極リードの端面とからなる平坦な溶接端面を含む溶接領域が露出するように、負極板と負極リードとを挟持する工程であり、第3工程は、溶接領域に向けてアーク放電することにより、溶接領域を溶融させてアーク溶接する工程であり、第4工程は、アーク溶接された溶融部を負極板と負極リードが対峙する面に平行な平坦面に圧縮する工程である。
溶融部を圧縮して変形させることにより、負極板とリード接合部の厚み方向において負極表面またはリード表面よりも突出する溶融部を規制する形状を有している。
また、本発明のリチウムイオン電池は、正極集電体、正極集電体の表面に形成される正極活物質層及び正極集電体に接続される正極リードを備える正極と、リチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極と、正極とリチウムイオン電池用負極との間に介在するように配置されるセパレータと、リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備えている。
本発明のリチウムイオン電池用負極は、負極板と負極リードとを接合する溶融部の厚み方向の突出部を平坦化させた溶融部を備えることにより、電極群の溶融部周辺を変形させることなく、または負極と正極とを短絡させることなく確実に安定に捲回することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の負極を含むことにより、高容量および高出力を有し、サイクル特性等の電池性能に優れている。
(a)本発明の実施形態である負極の要部の構成を簡略化して示す断面図(b)本発明の実施形態である負極の要部の構成を簡略化して示す正面図 (a)本発明の負極の製造方法で第3工程を説明する断面図(b)本発明の負極の製造方法で第4工程を説明する断面図 本発明の別の実施形態であるリチウムイオン電池の構成を模式的に示す縦断面図 電子ビーム式蒸着装置の構成を模式的に示す側面図 (a)負極リードの負極集電体に対する引張強度を測定するための試料の一作製方法を模式的に示す斜視図(b)負極リードの負極集電体に対する引張強度を測定するための試料の一作製方法を模式的に示す斜視図 負極リードの負極集電体に対する引張強度の測定方法を模式的に示す斜視図 (a)従来の負極の要部の構成を簡略化して示す断面図(b)従来の負極の要部の構成を簡略化して示す正面図
本発明者らは、上記課題を解決するための研究過程において、特許文献2のように、合金系活物質を含有する薄膜状負極活物質層を介して負極集電体と負極リードとを接合する構成に着目した。そして、負極集電体と薄膜状負極活物質層とを備える負極板と、特定の材質を有する負極リードとを、アーク溶接により接合する新規な方法を見出した。この方法によれば、負極集電体と負極リードとが溶融するだけでなく、薄膜状負極活物質層に含有される合金系活物質が溶融して合金層が形成されることにより、負極集電体と負極リードとを、導通性良くかつ強固に接合できることを見出した。
このアーク溶接により接合する方法では、薄膜状負極活物質層の表面と負極リードの表面とが重なり、且つ、負極板の端面と負極リードの端面とからなる平坦な溶接端面が露出するように、負極板と負極リードとを溶接治具により挟持する。そして、溶接端面に対してアーク放電を行うことにより、負極集電体と負極リードとの間に合金層の溶融部が形成される。
しかしながら、このアーク溶接により接合する方法では、溶融部の寸法が必要以上に大きくなり、捲回型電極群を作製した場合に、捲回型電極群の寸法及び形状が規格外になること、捲回型電極群における正極又は負極とセパレータとの間隔が広がることによる電極反応の不均一性、溶融部が周辺の電極群を変形させること、溶融部がセパレータを損傷させることによる内部短絡の発生等の不都合が起り易くなる。また、複数の溶融部を形成した場合に、合金層の形状及び/又は寸法が不揃いになり、このような不都合がさらに顕著になるおそれがある。
このような不都合が起る理由は、十分明らかではないが、次のように推測される。負極集電体と負極リードとの間に合金層を形成するためには、その界面に存在するシリコンが溶解する温度(1414℃)まで加熱する必要がある。しかし銅とシリコンの境界で銅−シリサイド合金層が形成されると融点が低下するため、溶融領域が一気に加速して広がる。この結果、必要以上の溶融部が形成されると推測される。
本発明者らは、溶融部の寸法が適性サイズに成形するためにさらに研究を重ねた。その結果、適性荷重の平面プレス手段によってリードと負極板の接合強度を低下させることなく溶融部がリード表面または負極表面から突出した部分のみ圧縮変形できることを見出した。
以下、図1を用いて本発明の実施形態について詳しく説明する。
負極集電体10には、リチウムイオン電池の分野で常用される無孔の導電性基板を使用できる。無孔の導電性基板の形態には、箔、シート、フィルム等がある。導電性基板の材質には、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等がある。導電性基板の厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
薄膜状負極活物質層11は、合金系活物質を含有する。薄膜状負極活物質層11は、合金系活物質とともに、その特性を損なわない範囲で、合金系活物質以外の公知の負極活物質、添加物等を含んでいてもよい。好ましい形態の薄膜状負極活物質層11は、合金系活物質を含有しかつ膜厚が3〜50μmである非晶質又は低結晶性の薄膜である。
合金系活物質は、負極電位下で、充電時にリチウムと合金化することによりリチウムを
吸蔵し、かつ放電時にリチウムを放出する。合金系活物質としては特に制限されず、公知のものを使用できるが、珪素系活物質及び錫系活物質が好ましく、珪素系活物質がさらに好ましい。
珪素系活物質には、珪素、珪素化合物、これらの部分置換体、これらの固溶体等がある。珪素化合物には、珪素酸化物、珪素炭化物、珪素窒化物、珪素合金等があり、これらの中でも、珪素酸化物が好ましい。
珪素酸化物には、式:SiO(0.05<a<1.95)で表される酸化珪素等がある。珪素炭化物には、式:SiC(0<b<1)で表される炭化珪素等がある。珪素窒化物には、式:SiN(0<c<4/3)で表される窒化珪素等がある。
珪素合金は、珪素と異種元素Aとの合金である。異種元素Aとしては、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn及びTiよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を使用できる。部分置換体は、珪素又は珪素化合物に含まれる珪素の一部を異種元素Bで置換した化合物である。異種元素Bとしては、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N及びSnよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を使用できる。
錫系活物質には、錫、錫酸化物、錫窒化物、錫合金、錫化合物、これらの固溶体等があり、錫酸化物が好ましい。錫酸化物には、SnO(0<d<2)、SnO等の酸化錫がある。錫合金には、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金等がある。錫化合物には、SnSiO、NiSn、MgSn等がある。
合金系活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
薄膜状負極活物質層11は、気相法により、負極集電体10の表面に薄膜状に形成される。気相法には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法、プラズマ化学気相成長法、溶射法等がある。これらの中でも、真空蒸着法が好ましい。
例えば、電子ビーム式真空蒸着装置において、シリコンターゲットの鉛直方向上方に負極集電体10を配置する。シリコンターゲットに電子ビームを照射してシリコン蒸気を発生させ、このシリコン蒸気を負極集電体10の表面に析出させる。これにより、珪素からなる薄膜状負極活物質層11が負極集電体10の表面に形成される。このとき、電子ビーム式真空蒸着装置内に酸素又は窒素を供給すると、珪素酸化物又は珪素窒化物を含有する薄膜状負極活物質層11が形成される。
本実施形態では、薄膜状負極活物質層11は、薄膜状のベタ膜として形成されるが、それに限定されず、気相法により、格子等のパターン形状や複数の柱状体の集合体として形成してもよい。複数の柱状体は、それぞれが合金系活物質を含有し、負極集電体表面から外方に延びかつ互いに離隔するように形成される。
この場合、負極集電体の表面に複数の凸部を規則的に又は不規則に形成し、1つの凸部の表面に1つの柱状体を形成するのが好ましい。凸部の鉛直方向上方からの正投影図における形状には、菱形、円形、楕円形、多角形(三角形、八角形等)などがある。凸部を規則的に形成する場合、凸部の負極集電体表面での配置には、碁盤目状配置、格子状配置、千鳥格子状配置、最密充填配置等がある。また、凸部は、負極集電体の厚さ方向の一方の表面又は両方の表面に形成される。また、柱状体の高さは好ましくは3μm〜30μmで
ある。
負極リード13は、ニッケル、ニッケル合金、銅及び銅合金よりなる群から選ばれる少なくとも1つの金属又は合金を含有する。ニッケル合金には、ニッケル−珪素合金、ニッケル−錫合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−鉄合金、ニッケル−マンガン合金等がある。銅合金には、銅−ニッケル合金 、銅−鉄合金、銅−銀合金、銅−りん合金、銅−アルミニウム合金、銅−珪素合金、銅−錫合金、銅−ジルコニア合金、銅−ベリリウム合金等がある。
これらの中でも、負極集電体10と負極リード13との接合強度を高める観点から、ニッケル、銅、銅−ニッケル合金が好ましく、銅がさらに好ましい。また、銅とニッケルとのクラッド材を用いてもよい。負極リード13は、前述した金属又は合金を一般的なリードの形態に成形することにより製造される。
溶融部17は負極集電体10と負極リード13との間に介在し、負極集電体10と負極リード13とを導通させるとともに、負極集電体10と負極リード13を接合する。溶融部17は、負極板1と負極リード13に平行な平坦部を有する。溶融部17の平坦部は負極リード13側または負極板1側のどちらか一方、または両側に存在すればよい。溶融部17の平坦部は負極板1と負極リード13が対峙する平面に対して概して平行であればよい。溶融部17の平坦部の法線と、負極板1と負極リード13が対峙する平面の法線とがなす角度が20°以下であれば、溶融部によってセパレータを損傷させることがないので良い。平坦部の一部が緩やかな曲面であってもよい。溶融部17は負極板1の厚みと負極リード13の厚みの合計厚みTと、溶融部17の厚みtの比率t/Tが1.0以上、1.3以下である。
図1(b)に示すとおり、溶融部17は負極板1と負極リード13と同一平面で負極リード13と反対側に、負極リード13の端部から突出している。突出部は負極板1と平行であるため、後述する電極群の構成時に短絡や電極群を変形させることはないが、負極板1の端部から突出量が1mm以下であることが望ましい。
本実施形態では、負極集電体10と負極リード13とが隣接する部分に、負極板1の幅全域に溶融部17が形成されている。しかしながら、それに限定されることなく、たとえば、溶融部17を負極集電体10と負極リード13とが隣接する一部に設けてもよい。また、負極集電体10と負極リード13とが隣接する部分の間欠的に溶融部17を形成してもよい。
溶融部17は、後記する方法でアーク溶接を行うことにより形成されるものと推測される。後記する方法でアーク溶接を行うと、溶接を施す部位において、負極リード13、負極集電体10および薄膜状負極活物質層11のそれぞれ少なくとも一部が溶融する。その溶融部分のほぼ全域において、負極リード13、負極集電体10および薄膜状負極活物質層11に含まれる元素が均一に分散する合金化が起こるものと推測される。
溶融部17に後述するアーク溶接を行うときに、負極リード13と負極板1の厚み合計Tよりも薄く溶融部17を形成するには、アーク強度を弱めて溶融領域を制限し、溶融量を少なくする必要がある。しかしこのように溶融領域を制限すると薄膜状負極活物質層11が残存して負極リード13との間に障壁を形成し、うまく合金層が形成されずに接合不良となる。このため、接続強度が高い安定な溶融部17を形成するためには、十分な強度のアーク溶接を行い、負極集電体10と負極リード13とが確実に溶融して接合させる必要がある。溶融部17は後記する平面プレス手段により圧縮成型することで、溶融部17の厚み範囲に成型される。
溶融部17は後記する平面プレス手段により圧縮変形されるとき、負極リード13の表面より突出する領域と負極板1の表面より突出する領域が平坦面となる。溶融部17は銅を主体とする合金層であるため、圧縮時にクラックを生じることなく圧縮変形することが可能である。圧縮時の変形相当量は負極リード13とは反対側に突出する。溶融部17と負極リード13または負極集電体10との接合領域は変形しないため、接合強度は変化しない。
溶融部17は、上記のようにして形成されると推測されるので、負極集電体10および負極リード13に結合し、負極集電体10と負極リード13とを強固に接合できる。また、溶融部17には、少なくとも、負極集電体10と薄膜状負極活物質層11と負極リード13に含まれる金属元素の少なくとも1つが均一に分散している。したがって、溶融部17は良好な導電性を有し、負極集電体10と負極リード13とを導通させることができる。これにより、負極板1は、負極集電体10と負極リード13との高強度での接合性および良好な集電性能を併せ持つことができる。
溶融部17は、連続的に設けてもよくまたは1箇所または間欠的に設けてもよい。但し、負極集電体10と負極リード13との接合強度を考慮すると、連続的に設けるのが好ましい。本実施形態では、負極板1の幅方向において、溶融部17が連続的に設けられている。これは、負極板1の幅方向と、負極リード13の長手方向とが一致するように、負極リード13を負極板1に接合する場合である。また、負極板1の長手方向と負極リード13の短手方向とが一致するように、負極リード13を負極板1に接合する場合は、負極板1の長手方向において、1箇所または連続的に溶融部17を設けてもよい。
溶融部17は、たとえば、薄膜状負極活物質層11中の合金系負極活物質に含有される半金属元素と負極集電体10または負極リード13に含有される金属元素との合金を含んでいる。合金系負極活物質に含有される半金属元素としては、たとえば、珪素、錫などが挙げられる。負極集電体10および負極リード13に含有される主な金属元素としては、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらの中でも、合金系負極活物質に含有される半金属元素を均一に分散させることなどを考慮すると、銅が好ましい。
負極板1と負極リード13との接合強度は、次のような測定法により引張強度として測定できる。図5(a)および図5(b)は、負極リード13の負極集電体10に対する引張強度を測定するための試料の作製方法を示す斜視図である。図6は、負極リード13の負極集電体10に対する引張強度の測定方法を示す斜視図である。
図5(a)に示すように、まず、負極リード13の長さが、負極板1の幅と同じになるように、負極リード13を切断する。次に、負極板1の長さが、負極リード13が接合されている端部から引っ張り強度測定治具に設置しやすいように適切な長さに負極板1を切断する。接合幅dは、負極板1の幅方向の一端に形成された溶融部17から、他端に形成された溶融部17までの長さである。引き続き、図5(b)に示すように、負極リード13を負極板1から剥がすように、矢符66の方向に折り返し、引張強度測定用の試料65を準備する。
このようにして得られた試料65を用い、図6に示す測定方法により、引張強度を測定する。万能試験機70の下部固定治具71に、負極板1の溶融部17が形成されていない側の端部を挟んで固定し、上部固定治具72に負極リード13の溶融部17が形成されていない側の端部(折り返し側の端部)を挟んで固定する。
室温25℃にて、上部固定治具72を5mm/分の速度で矢符73の方向に移動させて
負極リード13を引っ張り、負極板1と負極リード13との接合部分(溶融部17)が破断するときの引張強度(N)を測定する。得られた引張強度の測定値と接合幅dの測定値とから、接合幅1mm当たりの引張強度(N/mm)を求められる。本実施形態の負極板1と負極リード13との溶接強度は0.5N/mmから50N/mmとなるように溶接条件を設定することが望ましい。
図2は、本実施形態であるリチウムイオン電池用負極の製造方法を説明する縦断面図である。本実施形態のリチウムイオン電池用負極の製造方法(以下「本実施形態の製造方法」とする)は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を備える。以下に、各工程について詳しく説明する。
第1工程では、負極板1及び負極リード13を準備する。
負極板1は、負極集電体10と、負極集電体10の厚さ方向の両面に形成された薄膜状負極活物質層11と、を備える。本実施形態では、薄膜状負極活物質層11は、負極集電体10の厚さ方向の両面に形成されているが、片面に形成されていてもよい。
第2工程では、第1板20と第2板21とからなる一組の溶接治具14を用い、第1板20と第2板21との間に、負極板1と負極リード13とを挟持する。溶接治具14は、銅等の金属材料を所定の形状に成形することにより、作製される。溶接治具14による負極板1及び負極リード13の挟持は、薄膜状負極活物質層11の表面と負極リード13の表面とが重なり、且つ、負極板端面1aと負極リード端面13aとからなる平坦な溶接端面16を含む溶接領域が露出するように、実施される。
ここで、薄膜状負極活物質層11の表面とは、薄膜状負極活物質層11の厚さ方向の一方の表面である。負極リード13の表面とは、負極リード13の厚さ方向の一方の表面である。薄膜状負極活物質層11の表面の全面と、負極リード13の表面の全面とが重なっている必要はなく、それぞれの表面の少なくとも一部が重なって、接触していればよい。
本実施形態では、負極板端面1aは、負極板1の長手方向の一方の端面であり、負極リード端面13aは、負極リード13の幅方向の一方の端面であるが、それに限定されない。負極板端面1aは、負極板1の長手方向の一端面又は負極板1の幅方向の一端面のいずれでもよい。負極リード端面13aは、負極リード13の長手方向の一端面又は負極リード13の幅方向の一端面のいずれでもよい。
負極板端面1a及び負極リード端面13aについて、長手方向又は幅方向のいずれにするかは、電極群の形態(捲回型、扁平型、積層型等)、リチウムイオン電池の形態(角型、円筒型、扁平型、ラミネートフィルムパック型、コイン型等)及び設計(寸法、容量、用途等)等の条件に応じて適宜選択される。
また、溶接治具14により負極板1と負極リード13とを挟持する際にしては、負極板端面1aと負極リード端面13aとが連続した同一平面になり、平坦な溶接端面16が形成されるように、負極板1及び負極リード13が配置される。溶接端面16を含む溶接領域とは、後述する条件で溶接端面16に対して垂直な方向19からアーク放電を行った場合に、負極板1及び負極リード13におけるアーク放電のエネルギーが及ぶ領域である。
本実施形態の溶接治具14は、第1板20と第2板21との間に負極板1と負極リード13とを挟持した状態で、第1板20の第1凹部20xと第2板21の第2凹部21xとにより形成される窪みを有している。
第3工程では、溶接端面16を含む溶接領域に向けてアーク放電することにより、溶接領域を溶融させ、負極集電体10と負極リード13とをアーク溶接する。
具体的には、負極板端面1aと負極リード端面13aとからなる平坦な溶接端面16に対して、垂直な方向に、図示しないアーク溶接用電極を配置する。そして、アーク溶接用電極の溶接トーチから矢符19の方向にエネルギーを照射する。溶接トーチから照射されるエネルギーは、溶接端面16に照射される。これにより、溶接端面16を含む溶接領域が均一に溶融して、その後固化して溶融部18が形成される。
アーク溶接用電極を所定の間隔で負極板1の幅方向に移動させ、アーク溶接を行う。アーク放電による熱エネルギーは、溶接治具14の第1凹部20xと第2凹部21xに形成される窪みによって溶接治具14に逃げず、負極板1と負極リード13の溶融に無駄なく用いられる。凝固した溶融部18の断面形状は図2(b)に示すとおり丸みを有する。これは、負極板1と負極リード13が溶融時に表面張力により球状化して、その状態で凝固するためと推定される。
負極板1と負極リード13との強固な接合強度を確保するためには、十分な強度のアーク溶接を行い、負極集電体10と負極リード13とが確実に溶融して接合させる必要がある。この時、溶融部18の厚みt1は、負極板1と負極リード13の合計厚みTと比較して厚くなる傾向がある。負極板1と負極リード13の確実な接合のためには、それぞれが十分な量の溶融部18が必要であり、溶融部18の厚みt1と、負極板1と負極リード13の合計厚みTとの比率t1/Tが1.3以上、3以下であることが望ましい。またこのときアーク放電を連続的に行っても、幅方向に溶融した金属が部分的に凝集して球状になり、球状に固化した溶融部18が間欠的に形成される場合がある。
アーク溶接用電極を負極板1の幅方向に移動させながら、間欠的にアーク溶接を行ってもよい。これにより、負極板1の幅方向に間欠的に溶融部18が形成される。アーク溶接を実施すると、負極集電体10と負極リード13との任意の箇所に、溶融部18を容易に形成できる。
アーク溶接法の中でも、プラズマ溶接法及びTIG(Tungsten Inert Gas)溶接法が好ましい。溶融部18内での元素の均一分散性等を考慮すると、プラズマ溶接法が特に好ましい。溶融部18内で元素が均一に分散するほど、溶融部18による負極集電体10と負極リード13との接合性及び導通性が向上するものと推測される。プラズマ溶接及びTIG溶接は、それぞれ、市販されているプラズマ溶接機及びTIG溶接機を用いて実施される。
プラズマ溶接は、例えば、溶接電流値、溶接速度(溶接トーチの移動速度)、溶接時間、プラズマガス及びシールドガスの種類とその流量等の条件を適宜選択して実施できる。これらの条件を選択することにより、生成する溶融部18による負極集電体10と負極リード13との接合性及び導通性を制御できる。
溶接電流値は、例えば、1A〜100Aである。溶接トーチの掃引速度は、例えば、1mm/秒〜100mm/秒である。プラズマガスには、アルゴンガス等を使用できる。プラズマガス流量は、例えば、10ml/分〜10リットル/分である。シールドガスには、アルゴン、水素等を使用できる。シールドガス流量は、例えば、10ml/分〜10リットル/分である。
なお、アーク溶接の溶接条件によっては、溶融部18の内部に、薄膜状負極活物質層11の一部が溶融せずにそのまま残存することがある。しかし、アーク溶接で溶融部18を
形成する限り、溶融部18内部に残存する薄膜状負極活物質層11が、溶融部18による負極集電体10と負極リード13との接合性及び導通性を実用範囲よりも低下させることはない。
一方、アーク溶接に代えて抵抗溶接を実施した場合には、薄膜状負極活物質層11が合金系活物質を含有することにより、薄膜状負極活物質層11に電流が流れない。したがって、負極集電体10と薄膜状負極活物質層11との界面において、負極集電体10の一部が局所的に溶融することがある。また、薄膜状負極活物質層11と負極リード13との接触箇所において、負極リード13の一部が局所的に溶融することがある。しかしながら、負極集電体10から薄膜状負極活物質層11を介して負極リード13に至る領域が溶融することはない。超音波溶接を実施しても、抵抗溶接を実施した場合と同様である。
すなわち、抵抗溶接及び超音波抵抗では、負極集電体10及び/又は負極リード13が局所的に溶融するのみであり、薄膜状負極活物質層11は溶融しない。したがって、負極集電体10と負極リード13とを接合することはできない。外観上は接合しているように見えても、電池の組立て時等にほぼ確実に断線が生じる。
第4工程では、溶融部18を加圧変形させて、負極板1または負極リード13に平行な平坦部を有し、厚みを薄く加工する。加圧変形は平面プレス手段を用いる。図2(b)は平面プレス手段の断面模式図である。上部と下部の平面加圧治具23の間に溶融部18を負極板1と負極リード13が平面加圧治具23に平行になるように配置する。平面加圧治具23に荷重をかけると、溶融部18が加圧変形されて図1のような平坦部を有する溶融部17を形成できる。このとき、溶融部18の厚み方向の最頂部に荷重が集中し、最頂部周囲に負極板1と負極リード13に平行な平坦部が形成される。溶融部17の厚みtと、負極板1と負極リード13の合計厚みTとの比率t/Tが1以上、1.3以下であることが望ましい。
加圧変形によって、負極リード13と負極板1との接合強度は低下しない。これは、負極リード13と負極板1と溶融部18の境界領域は、溶融部18の最頂部から離れており、最頂部が荷重を受けて負極リード13と反対方向に変形するときに境界領域が影響を受けることはないためと推定される。平面加圧治具に荷重がかかるときに、負極板1と負極リード13は固定しても固定しなくても良い。このとき、平面加圧治具に対して負極板1と負極リード13は平行からずれることで、変形後の溶融部17の平坦部は負極板1と平行でない場合が生じてもよい。これは、後述する電極群の構成時に、溶融部17に対抗するセパレータが受ける加重が、平坦部が多少平行からずれていても平坦部で受ける加重が平均化されて圧力としては低減することでセパレータの損傷を抑制できるためである。平坦部は一部が曲面であってもよい。
加圧変形によって溶融部18の最頂部が、負極リード13が配置される方向と反対方向に突出するように変形する。図1(b)の溶融部17は負極リード13の端部から反対方向に突出している様子を示している。また上述の通り、第3工程において放電アークを連続的に出射しても溶融部が不連続に球状に凝集して周囲よりも厚みを増した溶融部18を形成した場合、図1(b)のように、変形後の溶融部17の突出量が変化する事例を示している。突出部は負極板1と平行であるため、後述する電極群の構成時に短絡や電極群を変形させることはないが、負極板1の端部から突出量が1mm以下であることが望ましい。 溶融部18の厚みは負極板1と負極リード13の厚み合計値より厚いため、平面プレス手段で印加する加重は溶融部18のみに作用する。平面プレスの荷重を圧力に換算するには、溶融部18と平面加圧治具23との接触面積の計測が必要であるが、加圧変形によって接触面積が変化するためこれを計測することは困難である。そこで、荷重条件として、溶接部の接合幅1mmあたりの荷重で定義する。溶融部18の適切な加圧変形に必要な
荷重条件は3N/mm〜1000N/mmである。3N/mmより小さいと加圧変形量が不足し必要な厚みに成形することが出来ない。また1000N/mmより大きいと、溶融部以外にも荷重が印加されて負極活物質層が損傷したり、溶融部18と負極リード13または負極板1との間に亀裂を生じることがある。
本実施形態の製造方法では、薄膜状負極活物質層11が珪素系活物質を含有する場合、第1工程と第2工程との間に、薄膜状負極活物質層11にリチウムを吸蔵させる工程(以下「リチウム吸蔵工程」とする)を設けるのが好ましい。これにより、第3工程で得られる溶融部18内部における合金の均一分散性がより一層向上する。
また、リチウム吸蔵工程を設けると、リチウム吸蔵工程を設けない場合に比べて、溶融部18の形状の均一性を損なうことなく、接合強度を確保することが出来る。これにより、幅方向全域で溶融部18の負極集電体10及び負極リード13との接触面積が大きくなる。その結果、溶融部18による負極集電体10と負極リード13との接合性及び導通性がより一層向上する。
薄膜状負極活物質層11へのリチウムの吸蔵は、例えば、真空蒸着法、電気化学的な方法、薄膜状負極活物質層11表面へのリチウム箔の貼着等により実施される。例えば、真空蒸着法によれば、真空蒸着装置のターゲットに金属リチウムを装着し、真空蒸着を行うと、薄膜状負極活物質層11にリチウムが吸蔵される。リチウムの吸蔵量は特に制限されないが、薄膜状負極活物質層11の不可逆容量分のリチウムを吸蔵させるのが好ましい。
図3は、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池25の構成を模式的に示す縦断面図である。リチウムイオン電池25は、本発明の第1実施形態の製造方法により得られた負極28を含む以外は、従来のリチウムイオン電池と同様の構成を有している。
本実施形態のリチウムイオン電池25は、負極28を含むことにより、高容量及び高出力を有し、出力特性、サイクル特性等の電池性能に優れている。また、負極28において負極板1(負極集電体10)と負極リード13とが強固にかつ導通性良く接合されている。溶融部17が負極板1と平行な平坦部を有し、溶融部17の厚みtが負極板1と負極リード13の厚み合計Tとの比率t/Tが1.3以下となるように圧縮されていることで、セパレータを損傷して短絡を防止し、周回部の異常な変形を抑制することが出来る。これにより、負極28の集電性能、電池の出力特性等が長期にわたって高水準で維持される。したがって、本実施形態のリチウムイオン電池25は耐用寿命が長い。
リチウムイオン電池25は、捲回型電極群26と、捲回型電極群26の長手方向の両端にそれぞれ装着される上部絶縁板30及び下部絶縁板31と、捲回型電極群26等を収容する電池ケース32と、封口板34により支持される正極端子33と、電池ケース32を封口する封口板34と、図示しない非水電解質とを含む。
捲回型電極群26の長手方向の両端部に上部絶縁板30及び下部絶縁板31を装着し、これを電池ケース32に収容する。このとき、正極27の正極リード36及び負極28の負極リード13が、それぞれ所定の箇所に接続される。電池ケース32内に非水電解質を注液する。次に、電池ケース32の開口部分に、正極端子33を支持する封口板34を装着し、電池ケース32の開口端部を封口板34に向けてかしめ付ける。これにより、電池ケース32が封口され、リチウムイオン電池25が得られる。
捲回型電極群26は、帯状の正極27と、帯状の負極28と、帯状のセパレータ29と、備える。捲回型電極群26は、例えば、正極27と負極28との間にセパレータ29を介在させた積層物を、その長手方向の一端部を捲回軸にして捲回することにより得られる
。本実施形態では、捲回型電極群26を使用するが、それに限定されず、正極27と負極28との間にセパレータ29を介在させて積層した積層型電極群を使用してもよい。
正極27は、正極板35と、正極リード36と、を備える。正極板35は、正極集電体と、正極活物質層と、を備える。
正極集電体には、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料からなる、多孔性又は無孔の導電性基板を使用できる。
多孔性導電性基板には、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布等がある。無孔の導電性基板には、箔、フィルム等がある。導電性基板の厚さは特に制限されないが、通常は1〜500μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
正極活物質層は、本実施形態では正極集電体の厚さ方向の両方の表面に設けられているが、それに限定されず、正極集電体の厚さ方向の片方の表面に設けられてもよい。正極活物質層は、正極活物質を含み、さらに導電剤、結着剤等を含んでもよい。
正極活物質としては、リチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リン酸リチウム等が好ましい。
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物又は金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。遷移金属元素には、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr等があり、Mn、Co、Ni等が好ましい。異種元素には、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、B等があり、Mg、Al等が好ましい。遷移金属元素及び異種元素は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
リチウム含有複合酸化物には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−m、LiCo1−m、LiNi1−m、LiMn、LiMn2−m(前記各式中、AはSc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を示す。0<l≦1.2、m=0〜0.9、n=2.0〜2.3である。)等がある。
オリビン型リン酸リチウムには、LiXPO、LiXPOF(前記各式中、XはCo、Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を示す。)等がある。
前記に例示した正極活物質において、リチウムのモル比は正極活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。正極活物質は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
導電剤には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維、アルミニウム等の金属粉末類、フッ化カーボン等がある。導電剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
結着剤には、樹脂材料を使用できる。樹脂材料には、ポリフッ化ビニリデン、ポリテト
ラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロース、2種類以上のモノマー化合物を含有する共重合体等がある。
モノマー化合物には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、ヘキサジエン等がある。
結着剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
正極活物質層は、例えば、正極合剤スラリーを正極集電体表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、圧延することにより形成できる。正極合剤スラリーは、正極活物質及び導電剤、結着剤等を有機溶媒に溶解又は分散させることにより調製できる。有機溶媒には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等を使用できる。
正極リード36は、抵抗溶接、超音波溶接等により、一端が正極集電体の集電体露出部に接続され、他端が正極端子33に接続される。正極リード36の材質は、アルミニウム、アルミニウム合金等である。アルミニウム合金には、アルミニウム−珪素合金、アルミニウム−鉄合金、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛合金等がある。
負極28は、負極板1と負極リード13と複数の溶融部17とを備える。負極28は、本発明の実施形態の製造方法により作製された負極である。
セパレータ29は、正極27と負極28との間に介在するように配置される。セパレータ29には、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持つシートを使用できる。セパレータ29には、微多孔膜、織布、不織布等の多孔質シートを使用するのが好ましい。セパレータ29の材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
セパレータ29の厚さは、通常10〜300μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmである。また、セパレータ29の空孔率は好ましくは30〜70%、さらに好ましくは35〜60%である。空孔率とは、セパレータ29の体積に対する、セパレータ29が有する細孔の総容積の百分率である。
セパレータ29には、リチウムイオン伝導性を有する液状非水電解質が含浸される。液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、添加剤を含んでもよい。
溶質には、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl、ホウ酸塩類、イミド塩類等がある。溶質は、好ましくは0.5〜2モル/Lの濃度で非水溶媒に溶解される。
非水溶媒には、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル等がある。環状炭酸エステルには、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等がある。鎖状炭酸エステルには、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカ
ーボネート等がある。環状カルボン酸エステルには、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等がある。非水溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤には、フッ化エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート等の充放電効率を向上させる添加剤、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等の電池を不活性化する添加剤等がある。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上部絶縁板30、下部絶縁板31及び封口板34は、電気絶縁性材料、好ましくは樹脂材料又はゴム材料を所定の形状に成形することにより、作製される。電池ケース32は長手方向の一方の端部に開口を有する、有底円筒状部材である。電池ケース32及び正極端子33は、鉄、ステンレス鋼等の金属材料を所定の形状に成形することにより、作製される。
本実施形態では、リチウムイオン電池25は、捲回型電極群26を含む円筒形電池であるが、それに限定されず、種々の形態を採ることができる。その具体例としては、角形電池、扁平電池、コイン電池、ラミネートフィルムパック電池等が挙げられる。また、捲回型電極群26に代えて、積層型電極群、扁平状電極群等を用いてもよい。
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)になるように硫酸コバルトを加えて金属イオン濃度2mol/リットルの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)で示される組成を有する三元系の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。
得られた複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱して熱処理を行い、Ni0.85Co0.15で示される組成を有する複合酸化物を得た。ここでNi及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等量になるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱して熱処理を行うことにより、LiNi0.85Co0.15で示される組成を有するリチウムニッケル含有複合金属酸化物を得た。こうして、二次粒子の体積平均粒径が10μmの正極活物質を得た。
(2)正極の作製
上記で得られた正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを充分に混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、圧延して、片面あたり厚さ50μmの正極活物質層を形成し、56mm×205mmの正極板を作製した。この正極板の両面の正極活物質層の一部(56mm×5mm)を切除し、正極集電体露出部を形成し、アルミニウム製正極リードを超音波溶接により溶接し、正極を作製した。
(3)負極板の作製
図4は、電子ビーム式真空蒸着装置40の構成を模式的に示す側面図である。図4では、電子ビーム式真空蒸着装置40の内部の部材を実線で示している。真空チャンバー41
は耐圧性容器であり、その内部に、搬送手段42、ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51及び図示しない電子ビーム発生装置を収容する。
搬送手段42は、巻き出しローラ43、キャン44、巻き取りローラ45及び案内ローラ46、47を含む。巻き出しローラ43には、帯状の負極集電体10が捲き付けられる。帯状の負極集電体10は、案内ローラ46、キャン44及び案内ローラ47を経由して搬送され、負極板1として巻き取りローラ45に巻き取られる。
帯状の負極集電体10がキャン44の表面を搬送される際に、帯状の負極集電体10の表面に珪素の蒸気が供給される。珪素の蒸気はキャン44内部の図示しない冷却手段により冷却されて帯状の負極集電体10の表面に析出し、ベタ膜である薄膜状負極活物質層11が形成される。珪素の蒸気は、シリコンターゲット50a、50bに、電子ビーム発生装置から電子ビームを照射することにより生成する。
ガス供給手段48は、原料ガスを真空チャンバー41内に供給する。原料ガスが酸素である場合、珪素の蒸気と酸素との混合物が帯状の負極集電体10の表面に供給され、珪素酸化物を含有する薄膜状負極活物質層11が形成される。ガス供給手段48が原料ガスを供給しない場合は、珪素を含有する薄膜状負極活物質層11が形成される。プラズマ化手段49は、原料ガスをプラズマ化する。負極集電体10表面の薄膜状負極活物質層11の形成状況に応じて、遮蔽板51の水平方向の位置が調整される。
電子ビーム式真空蒸着装置40を用いて、下記の条件で、帯状負極集電体の両方の表面に、厚さ5μmの薄膜状負極活物質層(シリコン薄膜)を形成し、負極板を作製した。
真空チャンバー内の圧力:8.0×10−5Torr
帯状負極集電体:粗面化処理した電解銅箔(古河電工(株)製)
帯状負極集電体の巻き取りローラによる巻き取り速度:2cm/分
原料ガス:供給せず
シリコンターゲット:純度99.9999%のシリコン単結晶(信越化学工業(株)製)
電子ビームの加速電圧:−8kV
電子ビームのエミッション:300mA
得られた負極板を58mm×210mmに裁断した。この負極板を、タンタル製ボードと薄膜状負極活物質層とが対向するように、抵抗加熱蒸着装置((株)アルバック製)内に固定した。タンタル製ボードには、リチウム金属を装填した。抵抗加熱蒸着装置内にアルゴン雰囲気を導入し、タンタル製ボートに50Aの電流を通電し、薄膜状負極活物質層にリチウムを蒸着した。蒸着時間は10分であった。これにより、初回充放電時に蓄えられる不可逆容量分のリチウムを薄膜状負極活物質層に補填した。
(4)負極リードの接合
上記で得られた負極板に、銅箔(タフピッチ銅、日立電線(株)製)を裁断して作製された、幅5mm、長さ70mm、厚さ0.1mmの負極リードを、次のようにしてプラズマ溶接により接合し、負極を作製した。
まず、負極板の長手方向の一端面と、負極リードの幅方向の一端面とが、連続した1つの平面になり、平坦な溶接端面が形成されるように、負極板と負極リードとを重ね合せた。溶接端面に垂直な方向を鉛直方向に一致させ、溶接端面が鉛直方向上方を臨むように配置した。これらを、図1に示す一組の溶接治具で挟持し、さらに単軸ロボット((株)アイエイアイ製)で固定した。
溶接治具は、第1板及び第2板からなり、第1板及び第2板の寸法は100mm×40mm×10mmであり、いずれも銅製であった。また、第1板に形成された第1凹部及び第2板に形成された第2凹部である切欠きの断面形状はテーパ形状であり、切かきの断面寸法は、第1板又は第2板の端面に沿う方向の長さが0.5mmであり、第1板又は第2板の合わせ面に沿う方向の長さが0.5mmであった。
次に、プラズマ溶接機(商品名:PW−50NR、小池酸素工業(株)製)を、溶接端面の鉛直方向上方に配置した。このプラズマ溶接機のトーチから、溶接端面に対して垂直にエネルギーを照射した。トーチを負極板の幅方向に等間隔で移動させた。トーチを停止させた箇所において、溶接端面に下記の条件でエネルギーを照射し、合金層を形成し、負極を作製した。
電極棒:直径1.0mm
電極ノズル:直径1.6mm
トーチ距離:2.0mm
トーチ掃引速度:30mm/s
プラズマガス:アルゴン
プラズマガス流量:100(sccm)
シールドガス:水素、アルゴン
シールドガス流量(水素):500(sccm)
シールドガス流量(アルゴン):1(slm)
溶接電流:8.0A
プラズマ溶接後に、自然放冷し、溶接端面を走査型電子顕微鏡(商品名:3Dリアルサーフェースビュー、(株)キーエンス製)で観察した。その結果、負極集電体と負極リードとの間に連続した溶融部が形成されていることが確認された。溶融部は幅方向に不定間隔で球状の凝集部が存在した。また、負極板の厚さ方向における溶融部の断面において、最大厚さは0.4mmであり、プラズマ溶接前の負極板と負極リードとの合計厚さ0.2mmに比べて、厚さの比率は2.0であった。
走査型電子顕微鏡(3Dリアルサーフェースビュー)にエネルギー分散型X線分析装置(商品名:Genesis XM2、EDAX社製)を装着し、溶融部の断面の銅及び珪素の元素マップを調べた。その結果、溶融部断面のほぼ全領域に、銅及び珪素が存在していた。また、エネルギー分散型X線分析装置(Genesis XM2)により、溶融部の所定の部分で銅と珪素との元素モル比率を測定した結果、銅が90モル%、珪素が10モル%であった。これらの結果から、銅中に珪素が拡散し、合金を形成していることが判った。
溶融部の断面を、微小部X線回折装置(商品名:RINT2500、理学電機(株)製)により定性分析した。その結果、溶融部から、銅のピーク及びCuSiのピークが同定された。したがって、溶融部には、CuSi合金が含まれていること判った。
さらに、溶融部の断面について、オージェ電子分光装置(商品名:MODEL670、ULVAC PHI社製)によりリチウムの元素マップを調べた。溶融部の断面の周縁部には、溶融部の断面に比べて寸法が非常に小さい薄膜状負極活物質層の断面及びシリコン層の断面が存在した。薄膜状負極活物質層は、溶融せずに残存した部分である。シリコン層は、1度溶融して、合金化せずに再凝固した部分である。これらの断面にはリチウムが存在したが、銅及び銅合金の断面にはリチウムは存在しなかった。
以上の分析結果から、合金層には、銅と、CuSiを含む銅−シリコン合金とが存在
し、合金層断面の周縁部にはシリコンとリチウムが存在することがわかった。
次に溶融部を対抗する平面加圧治具の間に設置して、加圧変形させた。平面プレス機として精密プレス(日本オートマチックマシン(株)社製、SSP1000)を用いた。平面加圧治具は、150mm×150mm×20mmの大きさで材質がステンレスである1組を準備した。プレス荷重条件を1000Nに設定して溶融部を加圧変形させた。溶融部の幅は30mmであり、溶融幅あたりの加重は33.3N/mmである。
負極板の厚さ方向における溶融部の断面において、最大厚さは0.23mmであり、プラズマ溶接前の負極板と負極リードとの合計厚さ0.2mmに比べて、厚さの比率は1.15であった。断面形状の観察結果、溶融部の加圧変形によって生成した平坦部は、負極リードと負極板とが相対する平面とほぼ平行であった。溶融部が負極リードと同一平面で反対側へ突出した寸法は、負極リードの端部から最大0.2mmであった。
(5)電池の作製
上記で得られた正極と負極との間にポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、厚さ20μm、旭化成(株)製)を介在させて積層し、得られた積層物を捲回し、捲回型電極群を作製した。正極リードの他端をステンレス鋼製正極端子に溶接し、負極リードの他端を有底円筒形の鉄製電池ケースの底部内面に接続した。捲回型電極群の長手方向の一端部及び他端部に、それぞれ、ポリエチレン製の上部絶縁板及び下部絶縁板を装着し、電池ケース内に収容した。
次に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1の割合で含む混合溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を電池ケースに注液した。さらに、電池ケースの開口に、ポリエチレン製のガスケットを介して封口板を装着し、電池ケースの開口端部を内側にかしめて電池ケースを封口し、円筒型リチウムイオン電池を作製した。
(比較例1)
平面プレス機による加圧変形をさせずに負極を作製する以外は実施例1と同様にして、円筒リチウムイオン電池を作製した。
プラズマ溶接後に、自然放冷し、溶接端面を走査型電子顕微鏡(商品名:3Dリアルサーフェースビュー)で観察した。その結果、プラズマ溶接の負極板の厚さ方向における溶融部の断面において、最大厚さは0.4mmであり、プラズマ溶接前の負極板と負極リードとの合計厚さ0.2mmに比べて、厚さの比率は2.0であった。最大溶融部の断面形状は、全体がほぼ半円に近い形状であり、負極板の表面から比較的大きく突出していた。
(比較例2)
負極リードの負極集電体への接合方法をプラズマ溶接から抵抗溶接に変更して負極を作製する以外は、実施例1と同様にして円筒型リチウムイオン電池を作製した。なお、負極の作製は次のようにして実施した。
[負極の作製]
まず、実施例1と同様にして得られた負極板と銅製の負極リード(幅4mm、長さ70mm、厚さ100μm)とを、負極板の長手方向の端面と負極リードの幅方向の端面とが1つの連続した平面になるように隣接配置した。これらの負極板及び負極リードを、先端径2mmの電極棒で挟持し、抵抗溶接機(ミヤチテクノス(株)製)を用いて、電流値を1.3kAに設定してスポット溶接を行い、負極を作製した。
[負極集電体と負極リードとの接合強度]
実施例1及び比較例1〜2で得られた負極について、次のようにして負極集電体と負極リードとの接合強度を、負極リードの負極集電体に対する引張強度として測定した。図5は、負極リード13の負極集電体10に対する引張強度を測定するための試料の作製方法を示す斜視図である。図6は、負極リード13の負極集電体10に対する引張強度の測定方法を示す斜視図である。
図5(a)に示すように、まず、負極リード13の長さが、負極板1の幅と同じになるように、負極リード13を切断した。次に、負極板1の長さが、負極リード13が接合されている端部から30mmになるように、負極板1を切断した。このとき、接合幅dを測定した。接合幅dは、負極板1の幅方向の溶融部17の長さである。
図5(a)のように複数の溶融部17が所定の間隔を空けて形成されている場合、接合幅dは、負極板1の幅方向の一端に形成された溶融部17から、他端に形成された溶融部17までの長さである。この場合、一端及び他端に形成された溶融部17の長さを、接合幅dに含めている。実施例1及び比較例1〜2で得られた負極それぞれの接合幅dを30mmに切断した。引き続き、図5(b)に示すように、負極リード13を負極板1から剥がすように、矢符66の方向に折り返し、引張強度測定用の試料65を作製した。
得られた試料65を用い、図6に示す測定方法により、引張強度を測定した。万能試験機((株)島津製作所製)70の下部固定治具71に、負極板1の溶融部17が形成されていない側の端部を挟んで固定し、上部固定治具72に負極リード13の溶融部17が形成されていない側の端部(折り返し側の端部)を挟んで固定した。
室温25℃にて、上部固定治具72を5mm/分の速度で矢符73の方向に移動させて負極リード13を引っ張った。そして、負極板1と負極リード13との接合部分(溶融部17)が破断したときの引張強度(N)を測定した。得られた引張強度の測定値と接合幅dの測定値とから、接合幅1mm当たりの引張強度(N/mm)を求めた。結果を表1に示す。
[負極集電体と負極リードとの導通性]
実施例1及び比較例1〜2で得られた負極について、次のようにして負極集電体と負極リードとの接合抵抗を測定した。負極リード近傍の薄膜状負極活物質層を、サンドペーパーを用いて剥離した。次に、露出した負極集電体と負極リードとの接合抵抗を、ミリオームメーター(商品名:ミリオームハイテスタ3540、日置電機(株)製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
[電極群構成時の電極変形]
実施例1および比較例1〜2で得られた円筒型リチウムイオン電池20セルのCT断面観察を行い、溶融部の突出による電極変形の有無を計測した。CT断面観察には、X線CT観察装置(島津製作所社製 SMX-225CT-f)を用いた。負極板と負極リードの厚み方向に対して、溶融部の突出が大きい電池では、溶融部の対向面に周回する電極が内側または外側に溶融部を避けるように変形している形状が確認された。
表1における実施例1の結果から、溶融部による負極集電体と負極リードとの接合により、負極集電体と負極リードとの間で、良好な接合性及び導通性が得られることがわかる。比較例1においても、負極集電体と負極リードとの間で、良好な接合性及び導通性が得られる。しかしながら、比較例1の溶融部は、実施例1の合金層よりも形状が大きくなり、捲回型電極群を作製する際に、溶融部に隣接周回する電極を変形させた。
このように、比較例1の溶融部を用いて電池を作製する際には、内部短絡等の不良が発生するのを抑制するための溶融部の周囲の空間を電池内に設ける必要が生じる。これは、電池内の余分な空間を可能な限り排除する高密度設計及び高容量設計を実施する上で、不利である。
一方、抵抗溶接を実施した比較例2では、導通性を有する接合が出来なかったことが明らかである。このことから、抵抗溶接では、負極リードを負極集電体に接合できないことが判った。
(試験例2)
[サイクル特性]
実施例1及び比較例1〜2のリチウムイオン電池を、それぞれ20℃の恒温槽に収容し、以下のような定電流定電圧方式で、電池を充電した。
各電池を、電池電圧が4.2Vになるまで1Cレート(1Cとは1時間で全電池容量を使い切ることができる電流値)の定電流で充電した。電池電圧が4.2Vに達した後は、電流値が0.05Cになるまで、各電池を4.2Vの定電圧で充電した。次に、20分間休止した後、充電後の電池を、1Cレートのハイレートの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで放電した。このような充放電を100サイクル繰り返した。
1サイクル目の全放電容量に対する、100サイクル目の全放電容量の割合を、百分率値で求めた。得られた値を、容量維持率として表2に示す。
実施例1および比較例1の電池は、容量維持率が高く、良好なサイクル特性を有することが判った。特に、実施例1の電池は、さらに高い容量維持率を示した。比較例1の電池は、溶接部が電極群の一部を変形させたことにより正極と負極の距離がその領域で変化し
たことで電極反応が不均一となり容量維持率がやや低下したと推測される。一方、比較例2の電池は、通電することができず、抵抗が無限大となった。電池組立時にリードが負極活物質から剥がれて、通電不能となったと推測される。
本発明の負極の製造方法により得られる負極は、リチウムイオン電池の負極として好適に使用できる。また、本発明のリチウムイオン電池は、従来のリチウムイオン電池と同様の用途に使用でき、特に、携帯用電子機器の電源として有用である。携帯用電子機器には、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器、ビデオカメラ等がある。また、本発明のリチウムイオン電池は、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の主電源及び補助電源、電動工具、掃除機、ロボット等の駆動用電源、プラグインHEVの動力源等としての利用も期待される。
1 負極板
1a 負極板端面
10 負極集電体
11 薄膜状負極活物質層
13 負極リード
13a 負極リード端面
14 溶接治具
17、18 溶融部
20 第1板
20x 第1凹部
21 第2板
21x 第2凹部
23 平面加圧治具
25 リチウムイオン電池
40 電子ビーム式真空蒸着装置

Claims (9)

  1. 集電体及び前記集電体の表面に形成される薄膜状負極活物質層を備え、前記薄膜状負極活物質層が合金系活物質を含有する負極板と、
    前記負極板に接続される負極リードと、
    前記負極板の端面と前記負極リードの端面との間に介在しこれらを溶接する溶融部を有するリチウムイオン電池用負極であって、
    前記溶融部は、少なくとも一部に、前記負極板と前記負極リードが対峙する面に平行な平坦部を有するリチウムイオン電池用負極。
  2. 前記平坦部が、前記負極板と前記負極リードが対峙する面と平行な二つの面に設けられている請求項1記載のリチウムイオン電池用負極。
  3. 前記溶融部の一方の平坦部と他方の平坦部との距離(t)と、負極板の厚みと負極リードの厚みとの合計厚み(T)との比t/Tが、1.0以上、1.3以下である請求項2記載のリチウムイオン電池用負極。
  4. 前記溶融部の溶接強度が0.5N/mm以上、50N/mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用負極。
  5. 前記溶融部の平坦部が圧縮形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用負極。
  6. 正極集電体、前記正極集電体の表面に形成される正極活物質及び前記正極集電体に接続される正極リードを備える正極と、
    請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用負極と、
    前記正極と前記リチウムイオン電池用負極との間に介在するように配置されるセパレータと、
    リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備えるリチウムイオン電池。
  7. リチウムイオン電池用負極の製造方法であって、
    集電体及び前記集電体の表面に形成される薄膜状負極活物質層を備え、前記薄膜状負極活物質層が合金系活物質を含有する負極板と、前記負極板に接続される負極リードとを準備する第1工程と、
    第1板と第2板とから構成される一組の溶接治具の前記第1板と前記第2板との間に、前記薄膜状負極活物質層の表面と前記負極リードの表面とが重なり、且つ、前記負極板の端面と前記負極リードの端面とからなる溶接端面を含む溶接領域が露出するように、前記負極板と前記負極リードとを挟持する第2工程と、
    前記溶接領域に向けてアーク放電することにより、前記溶接領域を溶融させてアーク溶接する第3工程と、
    前記アーク溶接された溶融部を前記負極板と前記負極リードが対峙する面に平行な平坦面に圧縮する第4工程と、を備えるリチウムイオン電池用負極の製造方法。
  8. 第4工程における荷重条件が、3N/mm以上、1000N/mm以下である請求項7記載のリチウムイオン電池用負極の製造方法。
  9. 請求項7に記載のリチウムイオン電池用負極の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用負極と、
    正極集電体、前記正極集電体の表面に形成される正極活物質及び前記正極集電体に接続される正極リードを備える正極と、
    前記正極と前記リチウムイオン電池用負極との間に介在するように配置されるセパレータと、
    リチウムイオン伝導性非水電解質と、を備えるリチウムイオン電池。
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