JP2014198483A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】補強層に外傷を受けた際におけるコードの損傷領域を最小限に抑制することができ、これにより耐外傷性を向上したタイヤを提供する。【解決手段】クラウン部に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートが巻き付けられてなる補強層4を備えるタイヤ10である。補強層が、長尺状のシートを複数回巻き付けられて形成され、長尺状のシートの巻付け方向が、タイヤ赤道線CLに対し0度より大きく90度より小さい角度をなし、かつ、長尺状のシート同士が、補強層内で交錯する箇所を有する。【選択図】図1

Description

本発明はタイヤに関し、詳しくは、クラウン部に配置する補強部材の改良に係るタイヤに関する。
従来より、タイヤの耐外傷性を向上させるための技術として、接地面を形成するクラウン部の最外層に、コードとゴムとの複合体がスパイラル状に配置されてなる補助的な補強部材を配置することが知られている。かかる補強部材の配置形態としては、例えば、有機繊維コードをゴムで被覆したものを、タイヤ赤道線に対し一定の角度を持って1層で巻きつける形態や、有機繊維コードやスチールコードにより形成された波状のスパイラル状シートを、隙間や重複なく配設した形態などが考えられる。
タイヤトレッド部の耐外傷性の向上に係る技術としては、例えば、特許文献1に、交差ベルト層と、交差ベルト層とカーカス層との間に設けられた下層ベルト層とを有し、タイヤセンターを中心としたタイヤ幅方向の所定の範囲において、下層ベルト層に隣接する交差ベルト層のうちの内径側ベルト層のコード角度と、下層ベルト層のコードのタイヤ周方向に対するコード角度との差を0〜10度の範囲とし、下層ベルト層におけるコードの破断強力を交差ベルト層のコードの破断強力の90%以上とした空気入りタイヤが開示されている。
特開2011−251603号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、従来の補強部材においては、コードが互いに並行に配列されて形成されているために、鋭利な対象物による外傷を受けた際に、スパイラル状に連続しているコードが、広範囲にわたって損傷を受ける場合があり、耐久性を低下させる原因となっていた。また、従来の補強部材は、外傷性の向上のみを意図したものであるために、タイヤの強度に対する寄与が少ないものであった。
そこで、本発明の目的は、上記問題を解消して、補強層に外傷を受けた際におけるコードの損傷領域を最小限に抑制することで、耐外傷性を向上したタイヤを提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートをクラウン部に巻き付けて補強層を形成するにあたり、その巻付け方向を所定の角度範囲内とするとともに、シート同士が補強層内で交錯する箇所を有するものとすることで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、クラウン部に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートが巻き付けられてなる補強層を備えるタイヤにおいて、
前記補強層が、前記長尺状のシートを複数回巻き付けられて形成され、
前記長尺状のシートの巻付け方向が、タイヤ赤道線に対し0度より大きく90度より小さい角度をなし、かつ、
前記長尺状のシート同士が、前記補強層内で交錯する箇所を有することを特徴とするものである。
本発明のタイヤにおいては、前記長尺状のシートの巻付け方向のタイヤ赤道線に対しなす角度の絶対値を、ランダムまたは一定とすることができ、好適には一定とする。また、本発明のタイヤにおいて、前記長尺状のシートの幅は、好適には50mm以下であり、前記長尺状のシートの巻付け方向は、好適には、タイヤ赤道線に対し10度以上45度以下の角度をなす。さらに、本発明のタイヤにおいては、前記長尺状のシートが、前記補強層の配設されている全領域において2層以上となるよう巻き付けられていることが好ましい。さらにまた、本発明のタイヤにおいて前記補強層は、トレッドゴムと隣り合う位置に配設されているものとすることができる。
本発明によれば、補強層に外傷を受けた際におけるコードの損傷領域を最小限に抑制することができ、これにより、耐外傷性を向上したタイヤを実現することが可能となった。
本発明のタイヤの一例を示す幅方向断面図である。 (a)〜(c)は、本発明に係る補強層の構成例の、クラウン部タイヤ半径方向外側から見た際の模式図である。 補強層を構成するシート中の補強コードに損傷が生じた際に、損傷により張力を失うコード領域の範囲を示す説明図である。 比較例に係る補強層を、クラウン部タイヤ半径方向外側から見た際の模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のタイヤの一例を示す幅方向断面図を示す。図示する本発明の一例のタイヤ10は、一対のビード部11と、そのタイヤ半径方向外側に連なる一対のサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12間に跨って延在するトレッド部13とからなる。図示するタイヤは、一対のビード部11にそれぞれ埋設されたビードコア1間にトロイド状に延在する少なくとも1枚、図示例では1枚のカーカスプライからなるカーカス2を骨格とし、カーカス2のクラウン部タイヤ半径方向外側には、少なくとも1枚、通常は2枚以上、図示例では2枚のベルト3a,3bよりなるベルト層3が配置されている。
本発明のタイヤ10においては、クラウン部の、ベルト3のタイヤ半径方向外側に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートが巻き付けられてなる補強層4が配置されている。図2(a)〜(c)に、本発明に係る補強層の構成例の、クラウン部タイヤ半径方向外側から見た際の模式図を示す。図示するように、本発明に係る補強層4は、長尺状のシート4aを複数回巻き付けられて形成されており、その巻付け方向が、タイヤ赤道線CLに対し0度より大きく90度より小さい角度θをなすものであって、長尺状のシート4a同士が、補強層4内で交錯する箇所を有している点に特徴がある。なお、図中のWは補強層の配設幅を示す。
前述したように、従来の補強部材では、コードが互いに並行に配列されて形成されているために、コードが外傷を受けて損傷した際に、損傷によりコードの長手方向において張力が低下してしまう領域が大きくなっていた。これに対し、本発明においては、細幅のコード−ゴム複合体からなる長尺状シート4aをスパイラル状に巻き付けて補強層4を形成するにあたり、シート4aを、シート4a同士が補強層4内で交錯するよう、複数回巻き付けるものとしたことで、シート4a同士が互いに拘束し合うことになる。よって、図3に示すように、補強層4を構成するシート4a中の補強コードに損傷Dが生じた際にも、損傷により張力を失うコード領域Xの範囲を最小限に抑制することができ、複数回の外傷に対する耐久性を、飛躍的に向上することが可能となった。また、本発明に係る補強層4は、シート4a同士が互いに拘束し合う構造を有することで、タイヤの強度の向上に対しても寄与することができるものである。さらに、補強層4の下層にスチールコードを用いたベルトが存在する場合には、補強層4の配設による耐外傷性の向上により、路面からベルトへの水分の浸入によるスチールコードの錆の発生を防止して、スチールコードの錆に起因する故障の発生を抑制する効果も向上することができる。
本発明において、シート4aを巻き付ける角度としては、巻付け方向が、タイヤ赤道線に対し0度より大きく90度より小さい角度をなすことが必要であり、好適には、10度以上45度以下をなすものとする。巻付け方向が、タイヤ赤道線に対し0度ないし90度であると、シート4a同士を交錯させつつ複数回巻付けることができない。巻付け方向を10度以上45度以下の範囲とすることで、拘束部位間に存在するシート4aの長さ、すなわち、損傷が生じた際に張力の低下が生ずる領域の長さが短くなり、かつ、互いに交錯することにより拘束する部位の数が多くなるので、耐久性の向上により効果的である。
図2(a)は、シート4aを、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し0度より大きく90度より小さい角度θをなす範囲で、ランダムに巻き付けて補強層4を構成した場合を示す。また、図2(b)は、シート4aを、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し10度以上45度以下の角度θをなす範囲で、ランダムに巻き付けて補強層4を構成した場合を示す。さらに、図2(c)は、シート4aを、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し0度より大きく90度より小さい角度θをなす範囲で、角度θの絶対値が一定となるよう巻き付けて補強層4を構成した場合を示す。図示するように、本発明においては、シート4aの巻付け方向のタイヤ赤道線に対しなす角度の絶対値が、ランダムであっても一定であってもよいが、均一性(ユニフォミティ)の観点からは、一定であることが好ましい。
本発明において用いる長尺状のシート4aは、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなるものであり、シート長手方向に平行に配列された補強コードのゴム引き層からなるものであっても、シート長手方向に対し角度をもって配列された補強コードのゴム引き層からなるものであってもよく、また、補強コードが平織りされてなるキャンバス生地がゴム被覆されたものであってもよい。シート4aがシート長手方向に平行に配列された補強コードのゴム引き層からなるものである場合、シート4aを構成する補強コードの本数は1本以上、好適には1〜5本とする。補強コードの本数が多すぎると、シート4aが幅広になりすぎて、損傷により張力を失うコード領域Xの範囲が少なくなり、耐損傷性を抑制できなくなるので好ましくない。
かかる長尺状のシート4aの幅は、好適には50mm以下、より好適には20mm以下、さらに好適には5mm以下であって、1mm以上とすることが好ましい。シート4aの幅が太すぎると、損傷により張力を失うコード領域Xの範囲が少なくなって、耐損傷性を抑制できなくなる。また、補強層4を形成するシート4aは、1枚を巻き付けるものであっても、2枚以上、例えば、2〜3枚を巻き付けるものであってもよいが、本発明において好適には、1枚の連続体よりなるシート4aを巻き付けることにより補強層4を形成するものとする。この理由は、補強層4内で交錯する箇所を最大化して、耐外傷性に対する効果を得るためである。
本発明のタイヤは、上記条件に従いシート4aを複数回巻き付けることにより形成される補強層4を有するものであればよいので、シート4aの巻付け回数や、交錯箇所数等については特に制限はない。好適には、本発明においては、シート4aが、補強層4の配設されている全領域において2層以上、特には3層以上となるよう巻き付けられているものとする。これにより、複数回の外傷に対する耐久性を、より効果的に向上することが可能となる。
本発明において、補強層4を構成する補強コードとしては、通常タイヤの補強用途に使用される有機繊維や無機繊維等からなるもののうちから適宜選択して使用することができ、特に制限されるものではない。具体的には例えば、有機繊維としては、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン)や芳香族ポリアミド繊維(アラミド)、ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゼンオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維、炭素繊維などが挙げられる。また、無機繊維としては、スチールフィラメント等の金属繊維やガラス繊維などが挙げられる。本発明において好適には、補強コードとして、有機繊維コードを用いる。有機繊維コードとしては、いかなるものを用いてもよく、原糸が1種の有機繊維のみからなるコードを単独で使用するほか、原糸が1種の有機繊維のみからなるコードを2種以上使用してもよく、また、2種以上の有機繊維フィラメントを撚り合わせたハイブリッドコードを用いてもよく、さらに、原糸が2種以上の有機繊維からなるコードを用いてもよい。
本発明において、補強層4は、耐外傷性の向上目的で配置されるものであるので、好適には、カーカス2およびベルト層3のタイヤ半径方向外側の、トレッドゴムと隣り合う位置に配設する。また、補強層4の配置領域としては、タイヤを規定リムに組み、規定の許容下限内圧を充填し、その内圧で許容される最大荷重を負荷した際に接地したタイヤ接地面の最大幅よりも、周上全てにおいて広く配設されていることが好ましい。ここで、「規定リム」とは所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または「Approved Rim」、「Recommended Rim」)のことであり、規定内圧とは同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことである。また、規定荷重とは、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。所定の産業規格については、タイヤが生産もしくは使用される地域においてそれぞれ定められており、例えば、アメリカ合衆国ではThe Tire and Rim Association Inc.のYear Book(デザインガイドを含む)により、欧州では、The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manualにより、日本では日本自動車タイヤ協会のJATMA YEAR BOOKにより、それぞれ規定されている。
本発明においては、上記長尺状のシート4aよりなる補強層4を備える点のみが重要であり、それ以外の点については特に制限されず、常法に従い適宜構成することが可能である。本発明は耐外傷性の向上に係る技術であることから、小型タイヤないし大型タイヤ、および、ラジアルタイヤないしバイアスタイヤのいかなる種類のタイヤにおいても、適用することが可能である。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す条件に従い、タイヤサイズ205/55R16にて、クラウン部に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートを複数回巻き付けることにより形成された補強層を備えるタイヤを作製した。シートとしては、シート長手方向に平行に配列された補強コードのゴム引き層からなるものを用い、補強コードの打込み数は6本/5mmとした。また、カーカスプライは1枚とし、ベルト層は、1種のトリートからなる2層のベルトをタイヤ周方向に対する角度30°で交錯配置した構造とした。補強層は、この交錯ベルト層のタイヤ半径方向外側に、トレッドゴムと隣り合う位置に配設した。
<耐外傷性>
各供試タイヤのトレッド部における、シートの巻付け層数が最低積層数である箇所に対し、カッター刃を侵入させて、内部のコードに損傷を与えた。その後、各供試タイヤをリムサイズ6.5J×16のリムに組み、適正内圧を充填し、適正荷重を負荷して、速度80km/hにてロングランドラム試験を行い、故障発生するまでの時間を測定した。結果は、比較例1の時間を100とする指数で示した。数値が大なるほど故障発生するまでの時間が長く、耐外傷性が良好である。
<高速耐久性>
各供試タイヤをリムサイズ6.5J×16のリムに組み、適正内圧を充填し、適正荷重を負荷して、ドラム試験機で、速度120km/hからスタートし、20分毎に速度を10km/hずつステップアップさせながら走行させて、故障発生時の速度を測定することにより、高速耐久性を評価した。結果は、比較例1の故障発生速度を100とする指数で示した。数値が大なるほど高速耐久性が高く、良好である。
Figure 2014198483
*1)図2(a)は、シートが、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し0度より大きく90度より小さい角度θをなす範囲で、ランダムに巻き付けられている場合である。図2(b)は、シートが、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し10度以上45度以下の角度θをなす範囲で、ランダムに巻き付けられている場合である。図2(c)は、シート4aが、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し±15度の角度となるよう巻き付けられている場合である。図4は、シート4aが、巻付け方向がタイヤ赤道線CLに対し1度である一定の角度となるよう巻き付けられている場合である。
*2)適正使用下接地幅とは、タイヤをJATMA記載の規定リムに組み、規定の許容下限内圧を充填し、その内圧で許容される最大荷重を負荷した際に接地したタイヤ接地面の最大幅をいう。
Figure 2014198483
上記表中に示すように、クラウン部に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートを、所定の巻付け条件で巻き付けて形成された補強層を備える各実施例のタイヤにおいては、かかる条件を満足しない各比較例のタイヤと比較して、耐外傷性および高速耐久性の双方について良好な性能が得られていることが確認された。
1 ビードコア
2 カーカス
3 ベルト層
3a,3b ベルト
4 補強層
4a 長尺状のシート
10 タイヤ
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部

Claims (7)

  1. クラウン部に、補強コードとコーティングゴムとの複合体からなる長尺状のシートが巻き付けられてなる補強層を備えるタイヤにおいて、
    前記補強層が、前記長尺状のシートを複数回巻き付けられて形成され、
    前記長尺状のシートの巻付け方向が、タイヤ赤道線に対し0度より大きく90度より小さい角度をなし、かつ、
    前記長尺状のシート同士が、前記補強層内で交錯する箇所を有することを特徴とするタイヤ。
  2. 前記長尺状のシートの巻付け方向のタイヤ赤道線に対しなす角度の絶対値が、ランダムまたは一定である請求項1記載のタイヤ。
  3. 前記長尺状のシートの巻付け方向のタイヤ赤道線に対しなす角度の絶対値が一定である請求項2記載のタイヤ。
  4. 前記長尺状のシートの幅が、50mm以下である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のタイヤ。
  5. 前記長尺状のシートの巻付け方向が、タイヤ赤道線に対し10度以上45度以下の角度をなす請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ。
  6. 前記長尺状のシートが、前記補強層の配設されている全領域において2層以上となるよう巻き付けられている請求項1〜5のうちいずれか一項記載のタイヤ。
  7. 前記補強層が、トレッドゴムと隣り合う位置に配設されている請求項1〜6のうちいずれか一項記載のタイヤ。
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