JP5293135B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、高速耐久性と転がり抵抗とを向上するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
従来、高速走行用のラジアルタイヤは、ベルト層の外周に有機繊維コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けたベルト補強層を設けることで、タイヤの高速回転に伴う遠心力によって起こるベルト層端部のせり上がりを抑制し、ゴムとのセパレーションを防止している。このようにして高速耐久性を向上することができるが、ベルト補強層を設けることによってトレッド剛性が上がるため、乗り心地性が悪化してしまうという問題があった。
この問題の対策として、特許文献1は、上記ベルト補強層の両端部領域の補強コードを高弾性フィラメントと低弾性フィラメントとを撚り合わせた破断伸度が6〜10%の複合コードとし、ベルト補強層の中央領域の補強コードを単一種類の繊維をより合わせた破断伸度が20〜35%のコードとする提案をしている。こうすることで、ベルト層端部のせり上がりを抑制しながら、トレッド中央領域の剛性を低下させて乗心地性を向上させるようにしている。
しかし、トレッド中央領域の剛性が低下することで、高速走行時に中央領域のトレッドゴムが非接地部で大きく膨径し、これが繰り返し行われるためエネルギー損失が大きくなり、発熱による転がり抵抗の増加によって、燃費が悪くなるという問題がある。
特許第2648652号公報
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、高速耐久性および転がり抵抗を向上するようにした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、タイヤ幅方向の左右両側に設けられた一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周に複数のベルト層を層間でコードが互いに交差するように配置すると共に、該ベルト層の外周に有機繊維コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けたベルト補強層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト補強層を前記ベルト層の少なくとも中央領域を覆う低弾性ベルト補強層と前記ベルト層の両端部領域をそれぞれ覆う高弾性ベルト補強層とで構成し、前記低弾性ベルト補強層の幅を前記ベルト層のうち最大幅のベルト層の幅の40%〜110%にすると共に、前記低弾性ベルト補強層の補強コードを単一種類の繊維の撚りコードから構成する一方で、前記高弾性ベルト補強層の補強コードを荷重0N〜切断時の弾性率が10000MPa以上の高弾性繊維と荷重0N〜切断時の弾性率が10000MPa未満の低弾性繊維とを撚り合わせた複合コードから構成し、且つ、前記低弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度aを12〜16%、前記高弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度bを6〜10%にし、前記低弾性ベルト補強層を構成する補強コードの荷重99N〜149N負荷時の弾性率を5000MPa以下、前記高弾性ベルト補強層を構成する補強コードの荷重99N〜149N負荷時の弾性率を6000MPa以上にしたことを特徴とする。
また、上述する構成において、以下(1)に記載するように構成することが好ましい
(1)前記高弾性ベルト補強層のそれぞれの幅が前記ベルト層のうち最大幅のベルト層の幅の10%〜30%であるようにする。
本発明によれば、ベルト層の外周に配置したベルト補強層をベルト層の少なくとも中央領域を覆う低弾性ベルト補強層とベルト層の両端部領域をそれぞれ覆う高弾性ベルト補強層とで構成すると共に、低弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度aを12〜16%、高弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度bを6〜10%にしたので、高速走行時のベルトのせり上がりを抑えて高速耐久性を向上することができ、更に、高速走行時における中央領域のトレッドの過大な膨径を抑制するので、エネルギー損失を抑えて転がり抵抗を向上することができる。
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤの断面図である。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。カーカス層4は両端部が左右一対のビード部3間に、それぞれビードコア5の周りにタイヤ内側から外側へ折り返されるように装架されている。トレッド部において、カーカス層4の外側にはスチールコードからなる複数のベルト層6が層間でコードが互いに交差するように配置されている。更に、ベルト層6の外周に有機繊維コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けたベルト補強層7が設けられている。
ベルト補強層7は低弾性ベルト補強層7aと高弾性ベルト補強層7bとから構成されている。低弾性ベルト補強層7aはベルト層6の中央領域Aとベルト層6の両端部領域Bとを覆うようにベルト層6全体に渡って設けられている。高弾性ベルト補強層7bはベルト層6の両端部領域Bをそれぞれ覆うように設けられている。図1では、両端部領域Bでは、高弾性ベルト補強層7bは低弾性ベルト補強層7aの外周側に重なるように設けられている。
これらベルト補強層7は、低弾性ベルト補強層7aを形成する補強コードの破断伸度aを12〜16%にすると共に、高弾性ベルト補強層7bを形成する補強コードの破断伸度bを6〜10%にしている。ここで破断伸度とは、タイヤから取り出した補強コードをJIS L 1017の測定条件に準拠して測定したものをいう。
このように、ベルト層の両端部領域Bに位置するベルト補強層7を高弾性ベルト補強層7bにすることで、両端部領域Bの剛性が大きくなるので、高速走行時のベルトエッジのせり上がりを防止でき、高速耐久性を向上することができる。一方、中央領域Aに位置する低弾性ベルト補強層7aの破断伸度aを上述の範囲に規定することで、高速走行時において、更に高速耐久性を向上させると共に、中央領域Aの過大な膨径を抑制するため、トレッドゴムの動きを抑制してエネルギー損失を防ぐことができ、転がり抵抗を向上することができる。
低弾性ベルト補強層7aの破断伸度aが12%よりも小さいと、ベルト補強層7全体が高弾性になるので、荷重が負荷されても変形しにくくなるので負荷が局所に集中し易くなり荷重耐久性が悪化する。破断伸度aが16%よりも大きいと、高速走行時の中央領域Aの膨径を抑制できなくなってエネルギー損失が大きくなり、転がり抵抗が悪化する。また、高弾性ベルト補強層7bの破断伸度bが6%よりも小さいと、両端部領域Bの剛性が高くなり過ぎるので、未加硫タイヤの加硫成形においてブラダーによるリフトが困難になる。破断伸度bが10%よりも大きいとベルト補強層7全体が低弾性になり両端部領域Bの剛性が低下するため、ベルトエッジのせり上がりを抑えることができず、高速耐久性を向上することができない。
補強コードの破断伸度の調整は、コードの撚り数を変えることによって行うことができる。即ち、コードの撚り数を多くすると伸度が増加し、それと共に弾性が低下する。逆に、コードの撚り数を少なくすると伸度が減少し、それと共に弾性が高くなる。
本発明において、上述した低弾性ベルト補強層7aは、これを形成する補強コードの弾性率が5000MPa以下のものからなり、また高弾性ベルト補強層7bは、これを形成する補強コードの弾性率が6000MPa以上のものからなる。ここで補強コードの弾性率とは、タイヤから取り出した補強コードの荷重99N〜149N負荷時の弾性率をいい、荷重‐歪曲線において、荷重99Nと149Nとの各点を結んだ直線の傾きから得られるものをいう。
に、低弾性ベルト補強層7aは弾性率が10000MPa未満の単一の繊維の撚りコードから形成し、高弾性ベルト補強層7bは弾性率が10000MPa以上の高弾性繊維と弾性率が10000MPa未満の低弾性繊維とを撚り合わせた複合コードから形成する。ここで弾性率とは、補強コードを構成する繊維の荷重0N〜切断時の弾性率をいい、荷重‐歪曲線において、荷重0Nと切断時との各点を結んだ直線の傾きから得られるものをいう。低弾性ベルト補強層7aのコードを単一の繊維の撚りコードとすることで、複雑な撚糸工程を経ず、より汎用的で安価な材料で目的の低弾性率の効果が得られる。高弾性ベルト補強層7bの補強コードを、高弾性繊維と低弾性繊維とを撚り合わせた複合コードとすることで、タイヤ成形時のリフトによるタイヤの破損を抑えるようにしながら、タイヤ成形後は高弾性率の効果を発揮させることができる。更に、高弾性繊維は一般にゴムとの接着性が劣るので、接着性に優れた低弾性繊維を共に用いた複合コードの方が接着性がよい場合があり、特に、低弾性繊維としてナイロン66を用いると、優れた接着性が得られるので、セパレーションを抑制できる。
ここで、5000MPa以下の低弾性繊維に使用される繊維としては、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド繊維などを例示することができる。また、6000MPa以上の高弾性繊維に使用される繊維としては、ポリケトン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、レーヨン繊維などを例示することができる。
低弾性ベルト補強層7aは少なくとも中央領域Aを覆うように設けられる。従って、図1のように、ベルト層6全体を覆うように設けて、両端部領域Bにおいて高弾性ベルト補強層7bと重なるようになってもよい。また、図2、3のように中央領域Aのみを覆うように設けると共に、両端において両端部領域Bに設けた高弾性ベルト補強層7bと接するようにしてもよい。
低弾性ベルト補強層7aの幅は、ベルト層6のうち最大幅のベルト層(一般に内側に位置するベルト層)の幅の40%〜110%にする。低弾性ベルト補強層7aの幅が最大幅のベルト層の幅の40%よりも小さいと、高速走行時の中央領域Aの膨径を抑制できなくなって優れた高速耐久性が維持できない。また、低弾性ベルト補強層7aの幅が最大幅のベルト層の110%よりも大きいと、タイヤ重量が重くなり転がり抵抗が悪化する。
高弾性ベルト補強層7bは、ベルト層6のタイヤ幅方向の両端部領域Bにそれぞれ設ける。高弾性ベルト補強層7bの幅としては、ベルト層6のうち最大幅のベルト層の幅の10%〜30%にするとよい。幅が最大幅のベルト層の幅の10%よりも小さいと、ベルトエッジを充分に覆うことができないので高速走行時のベルトエッジのせり上がりを抑えることができず、高速耐久性を向上することができない。逆に、幅が最大幅のベルト層の幅の30%よりも大きいと、ベルト補強層7bが高剛性になるので荷重が負荷されても変形しにくくなり、負荷が局所的に集中して荷重耐久性が悪化する。
タイヤサイズを225/45R17で共通にし、表1のように仕様を異ならせた従来例実施例1〜2及び参考例1の4種類の空気入りラジアルタイヤをそれぞれ製作した。
従来例のタイヤは、最大幅のベルト層の幅に対して、高弾性ベルト補強層の幅が20%、低弾性ベルト補強層の幅が110%である。ベルト補強層はそれぞれ図1のように両端で高弾性ベルト補強層と低弾性ベルト補強層とが重なるように配置する。高弾性ベルト補強層の補強コードはアラミド/ナイロン66複合糸からなり、切断伸度は9.5%、弾性率は11500MPaである。低弾性ベルト補強層の補強コードはナイロン66単体糸からなり、切断伸度は25.0%、弾性率は2000MPaである。
実施例1のタイヤは、最大幅のベルト層の幅に対して、高弾性ベルト補強層の幅が20%、低弾性ベルト補強層の幅が110%である。ベルト補強層はそれぞれ図1のように配置する。高弾性ベルト補強層の補強コードはアラミド/ナイロン66複合糸からなり、切断伸度は9.5%、弾性率は11500MPaである。低弾性ベルト補強層の補強コードはナイロン66単体糸からなり、切断伸度は15.0%、弾性率は3500MPaである。
実施例2のタイヤは、最大幅のベルト層の幅に対して、高弾性ベルト補強層の幅が20%、低弾性ベルト補強層の幅が60%である。ベルト補強層はそれぞれ図2のように端部同士が接するように配置する。高弾性ベルト補強層の補強コードはPOK(ポリオレフィンケトン)/ナイロン66複合糸からなり、切断伸度は8.6%、弾性率は7000MPaである。低弾性ベルト補強層の補強コードはナイロン66単体糸からなり、切断伸度は15.0%、弾性率は3500MPaである。
参考のタイヤは、最大幅のベルト層の幅に対して、高弾性ベルト補強層の幅が40%、低弾性ベルト補強層の幅が20%である。ベルト補強層はそれぞれ図3のように端部同士が接するように配置する。高弾性ベルト補強層の補強コードはアラミド/ナイロン66複合糸からなり、切断伸度は9.5%、弾性率は11500MPaである。低弾性ベルト補強層の補強コードはナイロン66単体糸からなり、切断伸度は15.0%、弾性率は3500MPaである。
なお、いずれのベルト補強層も、コードを未加硫ゴム中に埋設し、5mm幅の帯状部材としたものをタイヤ赤道面に対して略0°で螺旋状に巻き回して形成した。
これら4種類のタイヤそれぞれについて、下記の測定方法により、高速耐久性、荷重耐久性及び転がり抵抗を測定した。
〔測定方法〕
(1)高速耐久性は、ドラム表面が平滑な鋼性でかつ直径1707mmのドラム試験機を用い、周辺温度で38±3℃に制御し、リムサイズ17×7.5JJ、試験内圧180kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、JATMAで規定された最大荷重120%の荷重を与え速度120km/hで2時間走行させた。次いで、同一荷重にて速度を150km/hにて30分走行、以下30分ごとに速度を10km/hずつステップアップさせながらタイヤが破壊するまでドラム走行を続け、タイヤが破壊した速度を測定した。この速度を、従来例を100とする指数値で評価した。指数値が大きいほど高速耐久性が優れている。
(2)荷重耐久性は、ドラム表面が平滑な鋼性でかつ直径1707mmのドラム試験機を用い、周辺温度で38±3℃に制御し、リムサイズ17×7.5JJ、試験内圧180kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、走行速度を81km/h、負荷荷重をJATMA規定の最大荷重88%から2時間毎に13%ずつ荷重を増加させながらタイヤが破壊するまでの総走行距離を測定した。この総走行距離を、従来例を100とする指数値で評価した。指数値が大きいほど荷重耐久性が優れている。
(3)転がり抵抗は、リムサイズ17×7.5JJのリムに装着し、JATMAで規定された空気圧条件で30分間予備走行を行った後、直径1700mmの試験ドラムの上で9.8kNの負荷を与えながら速度120km/hで走行するときの転がり抵抗を測定した。この転がり抵抗を、従来例を100とする指数値で評価した。指数値が大きいほど転がり抵抗が優れている。
Figure 0005293135
表1より、実施例のタイヤは、従来のタイヤに比べ、高速耐久性と転がり抵抗とが共に優れている。
本発明の実施形態による空気入りラジアルタイヤの一例を示す断面図である。 本発明の他の実施形態による空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。 本発明の更に他の実施形態による空気入りラジアルタイヤを示す断面図である。
符号の説明
1 トレッド部
3 ビード部
4 カーカス層
6 ベルト層
7 ベルト補強層
7a 低弾性ベルト補強層
7b 高弾性ベルト補強層
A 中央領域
B 両端部領域

Claims (2)

  1. タイヤ幅方向の左右両側に設けられた一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周に複数のベルト層を層間でコードが互いに交差するように配置すると共に、該ベルト層の外周に有機繊維コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻き付けたベルト補強層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト補強層を前記ベルト層の少なくとも中央領域を覆う低弾性ベルト補強層と前記ベルト層の両端部領域をそれぞれ覆う高弾性ベルト補強層とで構成し、前記低弾性ベルト補強層の幅を前記ベルト層のうち最大幅のベルト層の幅の40%〜110%にすると共に、前記低弾性ベルト補強層の補強コードを単一種類の繊維の撚りコードから構成する一方で、前記高弾性ベルト補強層の補強コードを荷重0N〜切断時の弾性率が10000MPa以上の高弾性繊維と荷重0N〜切断時の弾性率が10000MPa未満の低弾性繊維とを撚り合わせた複合コードから構成し、且つ、前記低弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度aを12〜16%、前記高弾性ベルト補強層を構成する補強コードの破断伸度bを6〜10%にし、前記低弾性ベルト補強層を構成する補強コードの荷重99N〜149N負荷時の弾性率を5000MPa以下、前記高弾性ベルト補強層を構成する補強コードの荷重99N〜149N負荷時の弾性率を6000MPa以上にした空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記高弾性ベルト補強層のそれぞれの幅が前記ベルト層のうち最大幅のベルト層の幅の10%〜30%である請求項に記載の空気入りラジアルタイヤ。
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