JP2014196419A - ガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルム - Google Patents

ガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】廃棄時に有害物質の発生源となりうる塩素系物質を含まず、また、高湿度条件下でのガスバリア性に優れるため、高温高湿下でも高いバリア性を保ち、かつ、耐熱性や耐久性に優れた包装用ガスバリア性フィルムを提供する。【解決手段】ガスバリア性コーティング剤であって、構成成分(A)として、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、構成成分(B)として、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)として、無機層状粘土鉱物とを含有し、全固形分重量のうち、構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であり、かつ、かつガスバリア性コーティング剤中の全固形分濃度が5%以上であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、乾燥食品・菓子・パンなどの湿気や酸素を嫌う食品や、使い捨てカイロ、錠剤・粉末薬又は湿布・貼付剤などの医薬品の包装に関する。さらに、詳しくは、高いガスバリア性と内容物の認識が可能な透明性を必要とされる包装に用いられるガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルムに関する。
食品や医薬品などの包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗などを抑制し、内容物の機能や性質を保持するために、水蒸気・酸素・その他内容物を変質させる気体の進入を遮断する性質(ガスバリア性)が必要である。
そのため、従来、これら包装材料には、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を設けている。また、ガスバリア層はフィルムや紙などの基材上に、スパッタ法や蒸着法、ウェットコーティング法や印刷法などを用いて設けられている。さら、ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属からなる金属箔や金属蒸着膜、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂膜などを利用することが提案されている。
しかしながら、金属箔や金属蒸着フィルムは、ガスバリア性には優れるが不透明であるため、内容物を確認することができない。また、金属箔や金属蒸着フィルムは伸縮性に劣るため、数%の伸びでクラックが生じ、ガスバリア性が低下する。また、使用後の廃棄時に、不燃物として処理する必要が有ったりと数々の問題がある。
また、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂膜からなるガスバリアフィルムは、低湿度下では優れたガスバリア性を示す。しかしながら、湿度上昇と共にガスバリア性は低下していき、80%RH以上ではガスバリア性は失われてしまうため、使用上の制限があった。これを改善するために、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などに、無機層状化合物を添加し、湿度依存性を低下させる方法などが提案されているが、十分な改善には至らず、基材との密着性が低下する弊害を有し、包装材料としての十分な強度が得られ難かった(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂膜からなるガスバリアフィルムは、湿度依存性が低く、優れたガスバリア性を示すが、廃棄処理などの際に、有害物質の発生源となりうる可能性が有り、環境上の問題を避けられない。
そのため、塩素系物質を含まない材料からなり、高湿度雰囲気下でも高いガスバリア性を有し、基材への密着も良好な、ガスバリア性樹脂膜が強く求められている。例えば、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体などと無機層状化合物の複合体に、水系ポリウレタンを添加して、基材への密着性を改善したガスバリアフィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、80%RH以上の高湿度雰囲気下でのガスバリア性は、まだ十分とは言えない。
さらに、ガスバリア層の内面にシクロデキストリンからなる層を形成し、包装材から発生する樹脂臭のトラップや外からの異臭物の内包物への染み出しを阻害することが提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、これはガスバリア層自体のガスバリア性や基材密着強度の向上を目的とするものではない。
特開2001−287294号公報 特開平11−165369号公報 特開平6−93133号公報 特開平9−150484号公報 特許第3764109号公報 特許第3351208号公報 特許第4434907号公報 特開2007−83619号公報
本発明は、上記の課題を考慮して成されたもので、廃棄時に有害物質の発生源となりうる塩素系物質を含まず、高湿度条件下でのガスバリア性に優れ、また、基材フィルムへの密着性も良好な、透明性、耐熱性や耐久性に優れた包装用ガスバリアコーティング剤およびガスバリア性フィルムを提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明はガスバリア性コーティング剤であって、構成成分(A)として、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、構成成分(B)として、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)として、無機層状粘土鉱物とを含有し、全固形分重量のうち、構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であり、かつ、ガスバリア性コーティング剤中の全固形分濃度が5%以上であることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載のガスバリア性コーティング剤であって、シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンであることを特徴とする。また、シクロデキストリン誘導体がカチオン界面活性剤をゲスト分子とするシクロデキストリンの包接化合物であってもよい。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1記載のガスバリア性コーティング剤であって、無機層状粘土鉱物が、モンモリロナイトであることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明はプラスチック材料からなる基材フィルムを備えるガスバリア性フィルムであって、基材フィルムの片面或いは両面に、構成成分(A)として、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、構成成分(B)として、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)として、無機層状粘土鉱物とを含有する皮膜が形成されており、皮膜中に占める全固形分重量のうち、構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4記載のガスバリア性フィルムであって、シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンであることを特徴とする。また、シクロデキストリン誘導体がカチオン界面活性剤をゲスト分子とするシクロデキストリンの包接化合物であってもよい。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4記載のガスバリア性フィルムであって、無機層状粘土鉱物が、モンモリロナイトであることを特徴とする。
本発明の包装用ガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルムは、構成成分(A)として酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、構成成分(B)としてシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)として無機層状粘土鉱物とを含有し、廃棄時に有害物質の発生源となりうる塩素系物質などの材料を含まない。また、本発明の包装用ガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルムは、構成成分(B)のシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)の無機層状粘度鉱物とを組み合わせることにより、高湿度条件下でのガスバリア性に優れ、基材への密着性、皮膜の凝集力も良好であり、包装用材料として用いることで内容物の品質保持性を高め、様々な包装用資材として活用することができる。
本発明の構成成分(A)の酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂は一般的なウレタン樹脂とは異なり、剛直な分子骨格を形成することでガスバリア性を有する。また、一般的なウレタン樹脂同様に、乾燥皮膜は水に不溶であるため、湿度依存性の低いガスバリア性皮膜となる。しかし、構成成分(A)のウレタン樹脂単体のガスバリア性は、ポリ塩化ビニリデン樹脂に比べると劣る。構成成分(C)の無機層状粘土鉱物を添加することで、ガスバリア性は向上し、ポリ塩化ビニリデン樹脂同等以上のガスバリア性が得られる。しかし、無機層状粘土鉱物の添加量が増えるに従い、ガスバリア性コーティング剤中での均一分散状態を保つことが難しくなり、更に、コーティング剤のゲル化発生など、コーティング剤の質低下の問題が発生する。また、フィルム化した場合、バリア皮膜の凝集力が急激に弱まり、包装用積層フィルムとしての密着強度を維持できない問題なども現れてくる。
また、従来から、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子と水膨潤性の無機層状粘土鉱物とを複合化した皮膜のガスバリア性は知られていたが、皮膜の凝集力や基材への密着力の低下などの問題もあった。これらを回避するために、架橋成分の添加や、よりアスペクト比の高い層状鉱物の添加などが検討されてきた。しかし、架橋成分を添加すると、均一な分子配列を乱し、バリア性を低下させることになったり、アスペクト比の高い層状鉱物を添加すると、無機物と有機物の接触面の密着強度が保てず、結果的に皮膜凝集力の低下につながったりしてしまう。このように、高湿度雰囲気下での高いバリア性と十分な密着強度の両立はきわめて困難であった。
そこで、本発明者らは、廃棄時に有害物質の発生源となりうる塩素系物質を含まず、高湿度条件下でのガスバリア性に優れ、また、基材フィルムへの密着性も良好な、透明性、耐熱性や耐久性に優れた包装用ガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルムを創案した。以下に、本発明に係るガスバリア性コーティング剤およびガスバリア性フィルムを詳細に説明する。
本発明の構成成分(A)としては、例えば、特許文献7に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物が好ましく用いられる。つまり、ポリウレタン樹脂(アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂)の酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基などが例示できる。酸基は、ポリウレタン樹脂の末端又は側鎖(特に少なくとも側鎖)に位置していてもよい。この酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成してもよい。なお、酸基は、ポリアミン化合物のアミノ基(イミノ基又は第三級窒素原子)と結合可能である。
ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性又は水分散性を付与できる範囲で選択でき、通常、5〜100mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/g(例えば、10〜60mgKOH/g)、さらに好ましくは15〜60mgKOH/g(例えば、16〜50mgKOH/g)程度である。
また、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基(尿素基)濃度の合計濃度は、ガスバリア性の観点から、15重量%以上であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましい。なお、ウレタン基濃度及びウレア基濃度とは、ウレタン基の分子量(59g/当量)又はウレア基の分子量(一級アミノ基(アミノ基):58g/当量、二級アミノ基(イミノ基):57g/当量)を、繰り返し構成単位構造の分子量で除した値を意味する。なお、混合物を用いる場合、ウレタン基およびウレア基の濃度は、反応成分の仕込みベース、すなわち、各成分の配合割合をベースとして算出できる。
ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、800〜1,000,000、好ましくは800〜200,000、さらに好ましくは800〜100,000程度の範囲から選択できる。
ポリウレタン樹脂は、ハードセグメント(ウレタン基やウレア基の密度が高く、結晶性が高くなっている部分)とソフトセグメント(例えば、ウレタン基やウレア基の密度が低く、長鎖のアルキル基や炭化水素鎖で構成された柔軟な部分)とを有している。ポリウレタン樹脂の繰り返し単位におけるハードセグメントの割合は、10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%、さらに好ましくは20〜60重量%程度である。
ポリウレタン樹脂は、ガスバリア性を高めるため、結晶性であってもよい。また、ポリウレタン樹脂のガラス転移点は、100℃以上(例えば、100〜200℃程度)、好ましくは110℃以上(例えば、110〜180℃程度)、さらに好ましくは120℃以上(例えば、120〜150℃程度)である。
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、通常、ポリウレタン樹脂と中和剤を含み、水性媒体中に溶解或いは分散した状態で形成される。水性媒体としては、水、水溶性又は親水性溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリルなどのニトリル類など)から選ばれる1種又は2種以上の混合溶媒を用いることができる。なお、水性媒体は、通常、水、又は水を主成分として含む水性溶媒である。ポリウレタン樹脂は、水性媒体に溶解した水溶液、又は水性媒体に分散した水分散体のいずれの形態であってもよい。
ポリウレタン樹脂の製造法としては、アセトン法、プレポリマー法など通常のポリウレタン樹脂の水性化技術を利用して調製することができるが、特に限定されるものではない。また、ウレタン化反応では、必要に応じてアミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒などウレタン化触媒を使用してもよい。例えば、不活性溶媒(アセトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類など)中で、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要によりポリオール成分及び/又は鎖伸長剤成分とを反応させることによりポリウレタン樹脂を調製することができる。より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性又は水溶性有機溶媒)中で、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分とを反応させ、末端イソシアネート基を有するプレポリマーを生成させ、中和剤で中和して水性媒体に溶解又は分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより水性ポリウレタン樹脂を調製することができる。
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、架橋剤としてのポリアミン化合物と、ポリウレタン樹脂の酸基と結合させることにより、ガスバリア性を発現させている。なお、ポリアミン化合物と、ポリウレタン樹脂の酸基との結合は、イオン結合(例えば、第三級アミノ基とカルボキシル基とのイオン結合など)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合など)であってもよい。そのため、ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基から選択された複数の塩基性窒素原子を有する種々のポリアミン類を用いることができる。
ポリアミン化合物としては、酸基と結合し、かつ、ガスバリア性を向上できる限り種々の化合物が使用でき、通常、ポリアミン化合物のアミン価は、100〜1900mgKOH/g程度が好ましく、150〜1900mgKOH/g程度がより好ましく、200〜1900mgKOH/g程度がさらに好ましく、200〜1700mgKOH/g程度が最も好ましい。例えば、300〜1500mgKOH/g程度のポリアミン化合物を用いてもよく、アミン価が300〜1900mgKOH/g程度のポリアミン化合物を用いてもよい。
本発明の構成成分(B)としては、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体が用いられる。
まず、シクロデキストリンとは、D−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をとった環状オリゴ糖の一種であり、D−グルコースが6個つながったものをα−シクロデキストリン、7個つながったものをβ−シクロデキストリン、8個つながったものをγ−シクロデキストリンという。グルコースのヒドロキシル基はシクロデキストリン環の外側に向いており、外側は親水性を、内側は疎水性を示す。また、シクロデキストリンの環状構造の内側は、比較的小さな分子を抱え込める程度の空孔となっている。空孔の大きさはα−シクロデキストリンで内径0.45nm−深さ0.67nm、β−シクロデキストリンで 内径0.7nm−深さ0.7nm、γ−シクロデキストリンで内径0.85nm−深さ0.7nmである。この空孔に入る分子の具体的な例を挙げると、α−シクロデキストリンではベンゼン環やアルキル基、β−シクロデキストリンではナフタレン、γ−シクロデキストリンではピレンのような縮合環が二分子くらい入る。しかし、シクロデキストリンは、その空孔の大きさだけでなく、相性のような選択性を示す。このように、空孔に他分子を抱え込むことを包接作用といい、包接された他分子をゲスト分子といい、ゲスト分子を包接したシクロデキストリンを包接化合物と呼ぶ。また、シクロデキストリンのヒドロキシル基は、この空孔の外側にあるため、水溶性であるが、空孔内部は疎水性となる。そのため、シクロデキストリンは、疎水性の分子を包接しやすい。この性質を利用して、水不溶性の物質をシクロデキストリンに包接させることで水に溶解したり、水や酸素と反応しやすい物質を保護したり、包接物質はいろいろな用途に利用されている。
本発明のシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンを用いることができる。また、本発明のシクロデキストリン誘導体としては、ゲスト分子として、水酸化ラウリルトリメチルアンモニム、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどのカチオン界面活性剤を内包したシクロデキストリンの包接化合物も用いることができる。このようなシクロデキストリンの包接化合物を用いることにより、無機層状粘土鉱物の分散性が向上し、環状オリゴ糖であるシクロデキストリンの効果により、無機層状粘土鉱物の層間隔を均一にすることができ、結晶性が高くなる。その結果、包装用積層フィルムとしての十分な密着強度を有し、高湿度雰囲気でのさらに高いガスバリア性を得ることができる。
本発明の構成成分(C)としては、モンモリロナイトが用いられる。モンモリロナイトは、層状ケイ酸塩鉱物の1種であるスメクタイトに分類される粘土鉱物であり、結晶構造はケイ酸四面体層−アルミナ八面体層−ケイ酸四面体層からなる積層体である。各層の厚さは約1nmで、面の長径は約0.1〜1μmであり、極薄の板状である。アルミナ八面体層の中心原子であるAlの一部がMgに置換されることで陽電荷不足となり、結晶層面は負の帯電を示し、結晶層端面は正の帯電を示す。しかし、結晶層間にNa、K、Ca2+、Mg2+などの陽イオンを挟むことで電荷不足を中和し、モンモリロナイトは安定状態となり、モンモリロナイトは結晶層が何層も重なり合った状態で存在することができる。しかし、モンモリロナイトの結晶層表面の負電荷と、層間陽イオンとの結合力は弱いため、他のイオンを含む溶液と接触すると、層間陽イオンと液中の陽イオンは瞬間的に交換反応し、陽イオン交換が生じる。この陽イオン交換反応を用いて、シクロデキストリン誘導体と相溶し、液中での分散状態が安定化すると共に、乾燥時には均一な層間隔保ち、見かけの結晶性をもったモンモリロナイトを得ることができる。
モンモリロナイトは水への膨潤性や分散性は良好であるが、何層も重なり合った結晶層毎に液中に分散することは難しい。分散性を向上させるために、カチオン界面活性剤を添加することがある。しかし、製品中に界面活性剤が含んでいると、長期保管中や高温下に放置された場合、界面活性剤が表面にブリードアウトし、製品の品質低下を起こすなどの問題を含んでいる。
そこで、上述のシクロデキストリンの包接機能を利用して、カチオン界面活性剤をゲスト分子とするシクロデキストリン誘導体の包接化合物を形成させることによって、カチオン界面活性剤の安定性が高くなり、上記の品質低下の問題を解決できる。
界面活性剤とは、親水基と疎水基の二つの性質をもつ物質で、特に、水中で親水基の部分がプラスイオンに電離するものをカチオン界面活性剤とよび、マイナスに帯電して入る固体表面に強く吸着する。カチオン界面活性剤としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデジルトリメチルアンモニウムブロマイドやラウリルジメチルエチルアンモニウムサルフェートなどの4級アミンアンモニウム塩やアミン塩型や型に大別される。用途としては、衛生用途では、殺菌剤、柔軟剤、ヘアリンス剤に用いられ、産業用途では、帯電防止性や分散性を付与する助剤として使用されている。
本発明のガスバリア性コーティング剤は、構成成分(A)と構成成分(B)と構成成分(C)とを含有し、その全固形分重量のうち、構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であることが好ましい。構成成分(A)の固形分配合比率が50%より少ないと、基材フィルムへの濡れ性、密着性、耐水性、耐湿性、膜凝集強度が不足する。構成成分(A)の固形分配合比率が80%を超えると、ガスバリア性の低下を招く。構成成分(B)の固形分配合比率が5%より少ないと、高湿度雰囲気において十分なガスバリア性が得られない。また、構成成分(B)の固形分配合比率が20%を超えると、ガスバリア性は飽和するのに対し、密着強度や皮膜としての凝集強度が低下する。構成成分(C)の固形分配合比率が5%より少ないと、コーティング剤の安定性とガスバリア性が低下する。また、構成成分(C)の固形分配合比率が30%を超えると、ガスバリア性は飽和するのに対し、皮膜としての凝集強度が低下する。本発明のガスバリア性コーティング剤は、上記の構成成分(A)と、構成成分(B)と、構成成分(C)との3成分を主たる構成成分として、これらの配合比率を上記の所定範囲に調整することで、高湿度雰囲気下での高いバリア性と十分な密着強度を両立することに成功した。
また、本発明のガスバリア性コーティング剤に、反応性硬化剤を添加してもよい。反応性硬化剤を添加すると、さらに基材密着強度、膜凝集強度、耐水・耐溶剤性を向上させることができる。上記の反応性硬化剤としては、ポリイソシアネート、カルボジイミド、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物などが挙げられる。
さらに、ガスバリア性や包装用積層フィルムとしての強度を損なわない範囲内であれば、本発明のガスバリア性コーティング剤は、各種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
また、本発明のガスバリア性コーティング剤に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
さらに、本発明のガスバリア性コーティング剤中の、構成成分(A)と、構成成分(B)と、構成成分(C)との3成分を含む全固形分濃度が5%以上であることが好ましい。全固形分濃度が5%以上であると、後述する多様なコーティング手法に対応でき、かつ、良好な塗布性を示す。また、狙いの膜厚の乾燥皮膜を形成するためのwet塗布量(ガスバリア性コーティング剤の乾燥前の塗布量)を低く設定できるため、乾燥エネルギーの低減、加工速度の向上に寄与することができる。
次に、本発明のガスバリア性フィルムは、少なくともプラスチック材料からなる基材フィルムの片面或いは両面に、上述のガスバリア性コーティング剤を用い、構成成分(A)と、構成成分(B)と、構成成分(C)とを主成分とする皮膜を形成したものである。また、これらの固形分配合比率は、上述のガスバリア性コーティング剤で説明した範囲に準ずる。
上記プラスチック材料からなる基材フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのポリC2−10オレフィン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族ポリアミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体)、セロファンなどからなるフィルムを例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。基材フィルムとしては、単一の樹脂で構成された単層フィルムや複数の樹脂を用いた単層又は積層フィルムを用いることができる。また、これらの樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい。基材フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特にポリプロピレンフィルムなど)、ポリエステル系樹脂フィルム(特にポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、ポリアミド系樹脂フィルム(特にナイロンフィルム)を用いることが好ましい。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、一軸又は二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコート又はアンダーコート処理したフィルムであってもよい。さらに、基材フィルムは複数の樹脂や金属などを積層した積層フィルムであってもよい。
また、基材フィルムの皮膜を形成する面に、コロナ処理、低温プラズマ処理などを施すことで、良好な濡れ性と接着強度とを得ることができる。
基材フィルムの厚さは特に限定されるものではない。しかしながら、包装材料としての適性や他の樹脂層の積層適性を考慮し、基材フィルムの厚さは、実用的には3〜200μm、好ましくは5〜120μm、さらに好ましくは10〜100μmの範囲で、かつ、価格や用途によって適宜選択することがより好ましい。
さらに、本発明のガスバリア性フィルムは、適宜、印刷層、アンカーコート層、オーバーコート層、遮光層、接着剤層、ヒートシール層などを含んでいてもよい。
構成成分(A)と、構成成分(B)と、構成成分(C)とを主成分とする皮膜は、少なくとも構成成分(A)と、構成成分(B)と、構成成分(C)とを含む上述のガスバリア性コーティング材料を、公知の湿式コーティング方法により塗工した後、溶媒成分を乾燥除去して設けることができる。
湿式コーティング方法としては、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ダイコート、スクリーン印刷、スプレーコートなどを用いることができる。これらの湿式コーティング方法を用いて、基材の片面もしくは両面に塗布する。乾燥する方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など、公知の乾燥法で乾燥することが可能である。
乾燥皮膜の厚さは、求められるガスバリア性に応じて設定でき、好ましくは0.1〜5μmの範囲であり、さらには0.2〜2μmの範囲であることがより好ましい。乾燥皮膜の厚さが0.1μm以下では十分なガスバリア性が得られにくく、乾燥皮膜の厚さが5μm以上では均一な塗膜面を設けることが難しいのとともに、乾燥負荷の増大、製造コストの増大につながり好ましくない。
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性や包装用積層フィルムとしての強度を損なわない範囲内であれば、各種の添加剤が含まれていても構わない。例えば、反応性硬化剤(ポリイソシアネート、カルボジイミド、エポキシ化合物、オキサゾリドン化合物、アジリジン系化合物など)、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
さらに、本発明のガスバリア性フィルムは、ヒートシール可能な熱融着層を積層することで、熱シールにより密封可能なガスバリア性包装用積層フィルムを形成できる。ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系などの公知の接着剤を利用して、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法などでヒートシール可能な熱融着層を積層することが可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例の形態に限定されるものではない。
まず、はじめに、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂の製造例を以下に記す。
<製造例1>
mXDI(メタキシリレンジイソシアネート)45.5g、水添XDI(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)93.9g、エチレングリコール24.8g、ジメチロールプロピオン酸13.4g及び溶剤としてメチルエチルケトン80.2gを混合し、窒素雰囲気下70℃で5時間反応させた。次いで、このカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を40℃でトリエチルアミン9.6gにて中和した。このポリウレタンプレポリマー溶液を624.8gの水にホモディスパーにより分散させ、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール21.1gで鎖伸長反応を行い、メチルエチルケトンを留去することにより、固形分25重量%、酸価26.9mgKOH/gの水分散型の酸基を有するポリウレタン樹脂を得、ポリアミン化合物としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(アミン価544mgKOH/g)を用い、酸基と塩基性窒素原子のモル比が1/1となる比率で混合して、製造例1の水性ポリウレタン樹脂を得た。
<製造例2>
製造例1で用いたポリアミン化合物に代えて、水添XDI(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)97.1gに、ジメチルエタノールアミン93.6gを滴下して混合し、窒素雰囲気下60℃で2時間反応させて得られたポリアミン化合物を用い、それ以外は製造例1と同様にして、製造例2の水性ポリウレタン樹脂を得た。
上記で製造したポリウレタン樹脂の評価方法を以下に記す。酸価はJISK2501−2003に準拠して実施した。具体的には、上記で得られたポリウレタン樹脂を約0.05g秤量し、200mlのトールビーカに入れ、滴定溶剤としてキシレン/ジメチルホルムアミド=1/1の混合溶媒150mlを添加し、攪拌機能付き加熱装置で液温が80℃になるよう過熱し、試料を溶解させ、液温が80℃で一定なったことを確認した後、0.1mol/Lの水酸化カリウム・メタノール溶液を用いて、電位差滴定を行った。電位差計としては、京都電子工業製の電位差自動滴定装置 AT400を用いた。飽和曲線の変曲点を終点として、酸価[mgKOH/g]={(滴定量[ml])−ブランク値[ml]}×滴定液のファクター×5.611[mg/ml]÷(試料の重量値[g])で算出した。
次に、シクロデキストリン誘導体の製造例を以下に記す。
<製造例3>
シクロデキストリンとカチオン界面活性剤とがモル比8/2になる様に、シクロデキストリンとしてα−シクロデキストリン(塩水港製糖製K−100)100gを蒸留水30mlに溶解させ、次にカチオン界面活性剤として、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB) 9.4gを蒸留水30mlに溶解させ、各々の水溶液を得た。次に、これらの水溶液を混合し、攪拌機能付き加熱装置で液温60℃になるように過熱し、3時間の過熱攪拌後、室温まで冷却し、8時間静置した。その後、遠心分離を行い、得られた沈殿物を真空乾燥し、カチオン界面活性剤を包接した製造例3のシクロデキストリン誘導体を得た。
<製造例4>
シクロデキストリンとカチオン界面活性剤とがモル比9/1になる様に、シクロデキストリンとしてβ−シクロデキストリン(シクロケム製CAVAMAX(登録商標)(R)W7Food)1.8gを蒸留水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)の混合溶媒100mlに溶解させ、次にカチオン界面活性剤として、臭化ベンザルコニウム4.5gを蒸留水30mlに溶解させ、各々の水溶液を得た。次に、これらの水溶液を混合し、攪拌機能付き加熱装置で液温50℃になるように過熱し、3時間の過熱攪拌後、室温まで冷却し、8時間静置した。その後、遠心分離を行い、得られた沈殿物を真空乾燥し、カチオン界面活性剤を包接した製造例4のシクロデキストリン誘導体を得た。
ゲスト分子を内包したシクロデキストリンの包接化合物はゲスト分子の熱安定性を向上させることが知られている。そのため、包接していることの確認は熱分解温度をみることで分かる。
熱分解温度は、示差熱重量測定装置 SII製TGDTA6000を用いて、測定温度範囲30〜400℃、昇温速度10℃/min、窒素ガス200ml/min雰囲気下で示差熱重量測定を行った。
示差熱重量測定結果より、得られたシクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンとカチオン界面活性剤の包接化合物からなることが確認できた。示差熱重量測定結果を表1に示す。
Figure 2014196419
次に、シクロデキストリン誘導体とモンモリロナイトの水分散体の製造例を以下に記す。
200mlの三角フラスコに蒸留水45mlを入れ、攪拌機能つき加熱装置で攪拌しながら、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)5gをゆっくり加え、よく攪拌し、上記で得たシクロデキストリン誘導体を加えた後、液温50℃で3時間攪拌し、シクロデキストリン誘導体とモンモリロナイトとの水分散体を得た。
シクロデキストリン誘導体を用いてモンモリロナイトを水中に分散させると、シクロデキストリン誘導体の分散効果により、モンモリロナイトの各層の間隔が広くなり、モンモリロナイトが安定した分散状態を保つことができるようになる。このモンモリロナイトの層間隔の変化は、広角X線回折装置の面内角度をみることで分かる。
広角X線回折は、リガク製RINT2000を用いて、X線出力0.8kW、管電圧値40kV、管電流値20mAで行った。
広角X線回折測定結果より、シクロデキストリン誘導体とモンモリロナイトの水分散体中のモンモリロナイトの層間隔が広くなっていることが確認できた。広角X線回折測定結果を表2に示す。
Figure 2014196419
(実施例1)
実施例1には、構成成分(A)として、製造例1で得た水性ポリウレタン樹脂を用い、構成成分(B)として、製造例3で得たシクロデキストリン誘導体を用い、構成成分(C)として、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)を用いた。
(実施例2)
実施例2には、構成成分(A)として、製造例2で得た水性ポリウレタン樹脂を用い、構成成分(B)として、製造例3で得たシクロデキストリン誘導体を用い、構成成分(C)として、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)を用いた。
(実施例3〜4)
実施例3〜4には、構成成分(A)として、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン タケラックWPB−341を用い、構成成分(B)として、製造例3で得たシクロデキストリン誘導体を用い、構成成分(C)として、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)を用いた。
(実施例5〜6)
実施例5〜6には、構成成分(A)として、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン タケラックWPB−341を用い、構成成分(B)として、製造例4で得たシクロデキストリン誘導体を用い、構成成分(C)として、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)を用いた。
実施例1〜6において、上記の各成分を後述する表3に示す固形分比率で配合して、最終的な固形分濃度が後述する表3に記載の固形分濃度になるよう、イオン交換水とイソプロパノールで希釈し、塗工直前に後述する表3に記載の硬化剤(三井化学社製 水溶性ポリソシアネート タケラックWD−725)を添加して、実施例1〜6のコーティング剤とした。
(比較例1)
比較例1には、水性ポリウレタン樹脂として、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン タケラックWPB−341を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体として、製造例3で得たシクロデキストリン誘導体を用い、無機層状粘土鉱物として、精製モンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピア−F)を用いた。
(比較例2)
比較例2には、水性ポリウレタン樹脂として、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン タケラックWPB−341を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体は用いず、
無機層状粘土鉱物として、水膨潤性合成雲母(トピー工業社製 NTS−5)を用いた。
(比較例3)
比較例3には、水性ポリウレタン樹脂として、製造例1で得たポリウレタン樹脂を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と無機層状粘土鉱物とは用いなかった。
(比較例4)
比較例4には、水性ポリウレタン樹脂の代わりに、一般的な水溶性ポリウレタン樹脂として、DIC社製 ポリエステルポリウレタン樹脂水溶液ハイドランHW350を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の代わりに、α−シクロデキストリン単体を用い、無機層状粘土鉱物として、水膨潤性合成雲母(トピー工業社製 NTS−5)を用いた。
(比較例5)
比較例5には、水性ポリウレタン樹脂の代わりに、一般的な水溶性ポリウレタン樹脂として、DIC社製 ポリエステルポリウレタン樹脂水溶液ハイドランHW350を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の代わりに、β−シクロデキストリン単体を用い、無機層状粘土鉱物は用いなかった。
(比較例6)
比較例6には、水性ポリウレタン樹脂の代わりに、一般的な水溶性ポリウレタン樹脂として、第一工業製薬社製 ポリエーテルポリウレタン樹脂水溶液エストランH−38を用い、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の代わりに、カチオン界面活性剤として、臭化ベンザルコニウムを用い、無機層状粘土鉱物として、水膨潤性合成雲母(トピー工業社製 NTS−5)を用いた。
比較例1〜6において、上記の各成分を後述する表4に示す固形分比率で配合して、最終的な固形分濃度が後述する表4に記載の固形分濃度になるよう、イオン交換水とイソプロパノールで希釈して、塗工直前に、比較例4には、後述する表4に記載の硬化剤(三和ケミカル社製 N−メチロール化メラミンMW−12LF)を添加して、比較例1〜6のコーティング剤とした。
上記で得た実施例1〜6、比較例1〜6の水系コーティング剤を、グラビアコーターを用いて、東レ社製2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムP−60 厚み12μm(PET)、或いは、三井化学東セロ社製2軸延伸ポリプロピレンフィルムU−1 厚み20μm(OPP)のコロナ処理を行った面に、後述する表3および表4に記載のdry塗布量(ガスバリア性コーティング剤の乾燥後の塗布量)となるように塗布し、90℃のオーブンを10秒間通過させて乾燥して、実施例1〜6および比較例1〜6のガスバリア性フィルムを得た。
上記作製した各ガスバリア性フィルムの性能について、下記の方法に従って評価した。
「酸素透過度」
上記で得られたガスバリア性フィルムの酸素ガスバリア性を、酸素透過度測定装置(MOCON社製 OXTRAN−2/20)を用いて、20℃80%RHの雰囲気下で測定した。
「ラミネート強度」
上記で得られたガスバリア性フィルムのコーティング面側に、ドライラミネーション加工によりポリエステルウレタン系接着剤(三井化学社製 タケラックA−525/同タケネートA−52)を介して、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 CPP GLC)をラミネートし、40℃で48時間養生した。この積層フィルムを15mm幅の短冊状にカットし、引張試験機テンシロンにより300mm/分の速度で90°剥離させてラミネート強度を測定した。
表3に実施例1〜6のガスバリア性フィルムの組成および評価結果を示す。
Figure 2014196419
表4に比較例1〜6のガスバリア性フィルムの組成および評価結果を示す。
Figure 2014196419
実施例1〜6に対し、比較例1のガスバリア性コーティング剤は、固形分濃度が低いため、dry塗布量を上げるために、コーティング時のwet塗布量を多くする必要があった。そのため、グラビアコーターでの乾燥が不十分になり、均一な成膜ができなかった。また、無機層状粘土鉱物の添加量が多いのにも関わらず、20℃80%RHの酸素透過度の値も5cc/m・dayとなっており、十分なバリア性があるとは言えなかった。更に、ラミネート強度も低く、包装材として使える強度ではなかった。また、比較例2〜6のガスバリア性フィルムは、20℃80%RHの酸素透過度が5cc/m・day以上となっている或いはラミネート強度が1.0N/15mm以下となっており、両特性の両立ができていない。
一方で、実施例1〜6のガスバリア性コーティング剤では、いずれも良好なグラビアコート適性が確認された。また、実施例1〜6のガスバリア性フィルムでは、20℃80%RHの酸素透過度が5cc/m・day以下、かつ、ラミネート強度が1.0N/15mm以上であり、ガスバリア性包装材として適用できる特性が得られた。
本発明の包装用ガスバリア用コーティング剤およびガスバリア性フィルムは、廃棄時に有害物質の発生源となりうるものを含まず、また、高湿度条件下でのガスバリア性に優れるため、高温高湿下でも高いバリア性を保ち、かつ、耐熱性や耐久性を有するものである。また、上記性質を有する包装体として利用することで、乾燥食品・菓子・パンなどの湿気や酸素を嫌う食品や、使い捨てカイロ、錠剤・粉末薬又は湿布・貼付剤などの医薬品の包装用資材等に有用である。

Claims (6)

  1. ガスバリア性コーティング剤であって、
    構成成分(A)として、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、
    構成成分(B)として、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、
    構成成分(C)として、無機層状粘土鉱物とを含有し、
    全固形分重量のうち、前記構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、前記構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、前記構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であり、かつ、前記ガスバリア性コーティング剤中の全固形分濃度が5%以上であることを特徴とする、ガスバリア性コーティング剤。
  2. 前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンであり、シクロデキストリン誘導体がカチオン界面活性剤をゲスト分子とするシクロデキストリンの包接化合物であることを特徴とする、請求項1記載のガスバリア性コーティング剤。
  3. 前記無機層状粘土鉱物が、モンモリロナイトであることを特徴とする、請求項1記載のガスバリア性コーティング剤。
  4. プラスチック材料からなる基材フィルムを備えるガスバリア性フィルムであって、
    前記基材フィルムの片面或いは両面に、構成成分(A)として、酸基を有するポリウレタン樹脂とポリアミン化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂と、構成成分(B)として、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体と、構成成分(C)として、無機層状粘土鉱物とを含有する皮膜が形成されており、前記皮膜中に占める全固形分重量のうち、前記構成成分(A)の固形分配合比率が50〜80%であり、前記構成成分(B)の固形分配合比率が5〜20%であり、前記構成成分(C)の固形分配合比率が5〜30%であることを特徴とする、ガスバリア性フィルム。
  5. 前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンであり、シクロデキストリン誘導体がカチオン界面活性剤をゲスト分子とするシクロデキストリンの包接化合物であることを特徴とする、請求項4記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記無機層状粘土鉱物が、モンモリロナイトであることを特徴とする、請求項4記載のガスバリア性フィルム。
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