JP2014195447A - 肉牛用飼料及び飼育方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】肉牛の発育を損なうことなく、脂肪交雑をはじめとする肉質を改善し得る肉牛用飼料及び肉牛飼育方法を提供すること。
【解決手段】ビタミンB6、或いはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択されるそのエステル、又は単糖、二糖、三糖及び四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される糖が結合したその配糖体と、ビオチン又はその塩とを含む肉牛用飼料及び当該飼料を給与する肉牛の飼育方法とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪交雑を向上し得る肉牛用飼料及び肉牛飼育方法に関する。より具体的には、ビタミンB6とビオチンを有効成分として含み、肉牛の枝肉重量、ロース芯面積およびバラの厚さ等を向上させつつ、かつ脂肪交雑をはじめとする肉質を改善し得る肉牛用飼料及び肉牛飼育方法に関する。
脂肪交雑とは、筋肉内脂肪の量と分布を意味し、わが国の牛肉格付で最も重要視される項目である。脂肪交雑の多い牛肉は、風味が良好で柔らかく、食味に優れるため、高級肉として認知されており、肉質等級や枝肉単価を大きく高める。黒毛和種では脂肪交雑の向上に重点を置いた育種改良と飼養技術の開発が進められてきており、わが国で飼養される黒毛和種や黒毛和種とホルスタイン種の交雑種などは、世界的に見て高い水準の脂肪交雑を有する。
脂肪交雑を高めるために、わが国では、濃厚飼料を多給しビタミンAを給与制限する飼養技術が普及している。しかしながら、濃厚飼料の多給は、飼料摂取量の減少、ルーメンアシドーシス、鼓脹症、尿石症の発症を助長し、一方、ビタミンAの給与制限は、飼料摂取量の減少、発育停滞、尿石症、夜盲症などのリスクを抱える(非特許文献1)。そのため、過度の濃厚飼料多給やビタミンAの給与制限は、枝肉重量の減少や事故率増加に繋がり、飼料摂取量が減少してしまうために脂肪交雑も高まらないというケースにも陥り得る。このように、脂肪交雑を高位安定させながら、良好な枝肉重量と低い事故率を達成するのは技術的な困難を伴う。
その他の脂肪交雑を向上させる飼養技術としては、脂肪細胞分化促進因子であるとされるビタミンCの給与(非特許文献2)や亜鉛の給与が研究されている。しかしながら、ビタミンCは牛の第一胃(以下、ルーメンと省略する)内で損耗するためルーメンバイパス加工を施す必要があり、現状では非常に高コストであることや、必ずしも効果が得られないこともあると報告されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。亜鉛給与の脂肪交雑への影響についても、いくつかの研究例はあるが一致した見解は得られていない(非特許文献6、非特許文献7)。カルシウムとリンのバランスも脂肪交雑に影響する可能性が示唆されており、炭酸カルシウムを添加してカルシウム:リン比を1:1にすると、尿アンモニア添加改良法による結晶性リン酸マグネシウム塩の出現率は下がるものの、脂肪交雑、枝肉重量およびロース芯面積は劣る傾向であったことが報告されているが(非特許文献8)、極端なカルシウム低減は骨格形成に悪影響を及ぼすと考えられる。また、黒毛和種去勢肥育牛において、飼料中の中性デタージェント繊維(以下、NDFと省略する)含量を乾物換算で31.4重量%まで高めると乾物摂取量は最大となり、飼料中NDF含量とロース芯脂肪含量には正の相関が認められることが報告されており(非特許文献9)、NDFを一定の範囲で高めることは有効であるが、一般に、NDFはでんぷんや脂肪に比べエネルギー価が低いため、NDFを高めると可消化養分総量(以下、TDNと省略する)が下がり、肉牛の増体速度が低下し得るという側面がある。このように、発育成績やコストの点で問題がなく、かつ十分な効果が得られる脂肪交雑改善技術は確立されていない。
ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの総称であり、アミノ酸代謝や神経伝達などの機能に関与する水溶性ビタミンである。飼料へは主に塩酸ピリドキシンの形態で添加されるが、ルーメン内で微生物によって牛の要求量を超える量が合成されるため(非特許文献10)、通常、牛用飼料に添加されない。Lambertらは、メチオニンが第1制限アミノ酸である去勢育成牛において、ビタミンB6を10mg、葉酸を10mg、ビタミンB12を0.1mg給与すると、窒素収支が改善されることを報告したが(非特許文献11)、この他、ビタミンB6の牛における生理的機能や飼育成績への影響はほとんど研究されていない。アフリカミドリザル腎由来細胞COS−1および分化前・分化後のマウス脂肪前駆細胞3T3−L1において、活性型ビタミンB6であるピリドキサール5‘−リン酸(PLP)は、転写活性を調節する核内タンパク質であるnuclear receptor interacting protein 140(RIP140)と共役し、9−cis−レチノイン酸受容体であるRAR−β2活性を抑制すること、分化後の3T3−L1細胞において中性脂肪の蓄積を促進すること(非特許文献12)、ビタミンB6は3T3−L1の脂肪細胞への分化を促進すること(非特許文献13)が報告されており、異なる動物種の細胞レベルでは脂肪蓄積との関与が示唆されているものの、牛への給与効果は明らかとなっていなかった。
ビオチンは、糖新生、プロピオン酸代謝、脂肪酸合成などにおいて補酵素として機能する水溶性ビタミンである。飼料へは主にd−ビオチンの形態で添加されるが、ルーメン内で微生物によって牛の要求量を超える量が合成されると推測されるため(非特許文献10)、肉牛用飼料へ添加されることは少ない。乳牛では、ビオチンは蹄の健康に寄与することが知られ、20mg/日の添加で歩様スコアと跛行を示す牛の頭数が減少したことが報告されており(非特許文献14)、Chenらのメタ解析では、ビオチンの給与は乾物摂取量と乳量を増加させることが示唆されている(非特許文献15)。肉牛では、27ヶ月齢の黒毛和種肥育牛に3ヶ月間、ビオチンを170〜240mg/日給与すると、筋内脂肪中のオレイン酸割合が向上するが、脂肪交雑にはほとんど影響のないことが報告されている(特願2011−258102)。また、黒毛和種とアンガス種の交雑種去勢牛において、ビオチン無添加、10mg/日添加または20mg/日添加の3群で比較した試験では、脂肪交雑と筋内脂肪含量に有意な差は認められなかったことが報告されている(非特許文献16)。このように、肉牛では、ビオチンの給与に関する研究は少なく、脂肪交雑を向上し得るとの知見はなかった。更に、本発明者の知る限りでは、肉牛へビタミンB6とビオチンを同時給与した事例は報告されておらず、この両者の組み合わせが脂肪交雑に及ぼす影響についても知見は見当たらない。
前出吉光,小岩政照監修 デーリィマン社発行「新版 主要症状を基礎にした牛の臨床」p.353−356、p.467―471、p.554−557、p.622―625 鳥居伸一郎.1995.肉用牛研究会報.60:27−28. 中川徹.2011.肉牛ジャーナル.12月号p.24−27. 北川政幸.2008.肉牛ジャーナル.2月号p.50−54. 柏木ら.2001.和歌山県農林水産総合技術センター研究報告.3:71−80. 吉川ら.2007.和歌山県農林水産総合技術センター研究報告.8:101−106. 瀧澤ら.2007.愛知県農業総合試験場研究報告.39:51−59. 塩崎ら.2005.鳥取県畜産試験場研究報告.33号.p.22−27. 橋端ら.1995.畜産試験場研究資料.第8号.p.1−14. National Academy Press,(株)デーリィ・ジャパン社発行「NRC乳牛飼養標準(2001年・第7版)」p.164−169. Lambert et al.2004.J.Anim.Physiol.Anim.Nutr.(Berl).Aug;88(7−8):288−300. Huq et al.2007.Nature ChemicalBiology.Vol.3(3):161−165. Kawada et al.1990.Comp.Biochem.Physiol.Vol.96A(2):323−326. Fitzgerald et al.2000.J.Dairy Sci.83:338−344. Chen et al.2011.J.Dairy Sci.94:3537−3546. Lawrence et al.2007.Meat Sci.77(2):228−237. 岡章生.2006.肉牛ジャーナル.4月号p.64−68.5月号p.56−59.7月号p.87−91.8月号p.42−47.9月号p.48−53.11月号p.32−37. Cianzio et al.1985.J.Anim.Sci.60:970−976. 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)飼料分析基準[平成25年2月18日検索] インターネットhttp://www.famic.go.jp/ffis/feed/bunseki/bunsekikijun/01_01_04_inorg.pdf#page=5 農林水産省農林水産技術会議事務局編 中央畜産会発行「日本飼養標準肉用牛(2000年版)」p.24. 独立行政法人農業・食品技術総合研究機構編 社団法人中央畜産会発行 「日本標準飼料成分表(2009年版)」 日本食肉格付協会牛枝肉取引規格[平成25年2月25日検索] インターネットhttp://www.jmga.or.jp/
本発明は、以上の技術的背景において、肉牛の発育を損なうことなく、脂肪交雑をはじめとする肉質を改善し得る肉牛用飼料及び肉牛飼育方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来困難であった、肉牛の発育を損なうことなく、十分な脂肪交雑の改善効果を実現する飼料及び飼育方法を求めて鋭意検討を重ねた結果、ビタミンB6とビオチンを飼料へ添加したところ、脂肪交雑が改善し、かつ枝肉重量、ロース芯面積およびバラの厚さを向上し得ることを見出した。
即ち、本発明は、ビタミンB6とビオチンを含む肉牛用飼料及び当該飼料を給与する肉牛の飼育方法を提供するものである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、以下の説明によって限定されるものではない。
本発明の飼料は、肉牛に給与するための飼料であり、ビタミンB6とビオチンを有効成分として含有する。後述の実施例で実証する通り、ビオチンは、脂肪前駆細胞の脂肪細胞への分化を促す効果を有し、ビタミンB6と組み合わせて給与することで、脂肪細胞の分化と脂肪細胞への脂肪蓄積が促進される結果、脂肪交雑が改善される。更に、ビタミンB6とビオチンは、前述の通りアミノ酸やエネルギーの代謝にも関わる栄養素であるため、肉牛の発育は改善される。
ビタミンB6は、通常、塩酸ピリドキシンとして給与されるが、これに限定されるものではなく、ピリドキシン、ピリドキサールおよびピリドキサミンまたはその塩、エステル、配糖体からなる群の少なくとも1種類を含む他の飼料原料、飼料添加物または天然物で、塩酸ピリドキシンの一部もしくは全量を代替することができる。これらは、牛の体内で活性を奏する形態であれば良く、塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、あるいはメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマール酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、ケイ皮酸塩、乳酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。酸性基が存在する場合には、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、又はアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩を挙げることができる。グリシンなどのアミノ酸と塩を形成する場合もある。エステルとしては、カルボン酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステルなどを挙げることができ、任意の水酸基とエステル結合を形成して良い。硫酸基としてはモノ硫酸、ピロ硫酸などが挙げられ、リン酸基としてはモノリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などが挙げられる。配糖体においては、グリコシル基とピリジン環とのエーテル結合のアノマー型はα又はβ型のいずれでもよく、あるいは両者の混合物であってもよい。グリコシル基を構成する糖化合物の種類は特に限定されず、例えば単糖、二糖、三糖、又は四糖以上のオリゴ糖のいずれでもよい。糖化合物の立体に関しては、D−又はL−、あるいは混合物のいずれであってよい。グリコシル基を構成する糖化合物としては、例えば、D−グルコース、L−グルコース、D−ガラクトース、L−ガラクトース、D−マンノース、L−マンノース、D−フルクトース、L−フルクトース、D−リボース、L−リボース、D−キシロース、L−キシロース、D−アラビノース、L−アラビノース、D−タロース、L−タロース、D−リキソース、L−リキソース、D−アロース、L−アロース、D−アルトロース、L−アルトロース、D−グロース、L−グロース、D−イドース、L−イドース、D−キノボース、L−キノボース、D−ラムノース、L−ラムノース、D−フコース、L−フコース、マルトース、セロビオース、ラクトース、又はマルトトリオースなどが挙げられる。また、小麦粉、ハダカ麦、大豆、米ぬか、ふすま、ホミニーフィード、コーングルテンフィード、トウモロコシ/大麦/小麦ジスチラーズソリュブル、菜種粕、ゴマ粕、ヒマワリ粕、サフラワー粕、酵母、糖蜜などはビタミンB6を比較的多く含むため、配合飼料においてビタミンB6の好適な供給源となり得る。これらの原料は、配合飼料の場合、乾物換算でそれぞれ通常0〜40重量%含まれる。
ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体の含有量は、飼料の形態に応じて、発育の維持ないし促進と脂肪交雑の改善効果を発揮し得る量とすることが好ましい。水溶性ビタミンであるビタミンB6は、通常、過剰による害の危険性は低いため、後の試験例で示すように血中濃度が十分に上昇する量以上を給与することが望ましい。例えば、配合飼料とする場合には、肉牛の1日当たりの飼料摂取量を考慮の上発育の維持ないし促進と脂肪交雑の改善効果を発揮させるために、ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を飼料中に乾物換算で30〜2,000mg/kg含むことが好ましく、十分な脂肪交雑の改善効果と添加コストの抑制といった観点から30〜1,000mg/kg含むことがより好ましく、30〜500mg/kg含むことがより好ましく、30〜200mg/kg含むことがより好ましく、30〜150mg/kg含むことがより好ましく、40〜120mg/kg含むことが特に好ましく、50〜100mg/kg含むことが最も好ましい。
また、混合飼料(飼料添加物を米ぬか等の賦形剤と混合したものを含む)又は単体飼料とする場合のように他の飼料と組合せて用いられる飼料の場合には、組合せて用いられる他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが、粗飼料を除く)との1日当りの総量において、上記含有量のビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を飼料中に含むようにすることが好ましい。
これを、1日当たりの牛1頭に供給する量で見ると、ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を250〜20,000mg/日・頭供給する形態の飼料が好ましく、250〜10,000mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、250〜5,000mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、250〜3,000mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、250〜1,500mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、300〜1,200mg/日・頭供給する形態の飼料が特に好ましく、400〜1,000mg/日・頭供給する形態の飼料が最も好ましい。従って、混合飼料等によってビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を供給する場合には、このような1日当りの供給量を単独で又は他の飼料と共に達成可能な量のビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を混合飼料等が含有することになる。通常、混合飼料等は、1日1〜10回、1回当たり10〜1,000g給与されるので、このようなビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体の供給を単独で達成可能な混合飼料等は、通常、ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を飼料中に乾物換算で0.1〜50重量%含み、好ましくは1〜30重量%含む。
なお、本明細書に記載するビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体の重量及び重量パーセント濃度は、ピリドキシン換算の重量及び重量パーセント濃度を指す。
ビオチンは、不斉炭素を3個含むため理論上は8個の立体異性体があるが、天然に存在するd−ビオチン((+)−cis−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ−(3,4)−イミダゾール−4−吉草酸)がビタミン活性、補酵素活性を有し、通常、d−ビオチンとして給与されるが、これに限定されるものではなく、ビオチン又はその塩からなる群の少なくとも1種類を含む他の飼料原料、飼料添加物または天然物で、d−ビオチンの一部もしくは全量を代替することができる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。また、米ぬか、菜種粕、ヒマワリ粕、サフラワー粕、コーンジャーム粕、酵母、糖蜜などはビオチンを比較的多く含むため、配合飼料においてビオチンの好適な供給源となり得る。これらの原料は、配合飼料の場合、乾物換算で通常0〜40重量%含まれる。
ビオチン又はその塩の含有量は、飼料の形態に応じて、発育の維持ないし促進と脂肪交雑の改善効果を発揮し得る量とすることが好ましい。水溶性ビタミンであるビオチンは、通常、過剰による害の危険性は低いため、後の試験例で示すように血中濃度が十分に上昇する量以上を給与することが望ましい。例えば、配合飼料とする場合には、肉牛の1日当たりの飼料摂取量を考慮の上発育の維持ないし促進と脂肪交雑の改善効果を発揮させるために、ビオチン又はその塩を飼料中に乾物換算で3〜200mg/kg含むことが好ましく、十分な脂肪交雑の改善効果と添加コストの抑制といった観点から3〜100mg/kg含むことがより好ましく、3〜50mg/kg含むことがより好ましく、3〜20mg/kg含むことがより好ましく、4〜15mg/kg含むことが特に好ましく、6〜12mg/kg含むことが最も好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料とする場合のように他の飼料と組合せて用いられる飼料の場合には、組合せて用いられる他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが、粗飼料を除く)との1日当りの総量において、上記含有量のビオチン又はその塩を飼料中に含むようにすることが好ましい。
これを、1日当たりの牛1頭に供給される量で見ると、ビオチン又はその塩を30〜2,000mg/日・頭供給する形態の飼料が好ましく、30〜1,000mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、30〜500mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、30〜300mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、30〜160mg/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、40〜140mg/日・頭供給する形態の飼料が特に好ましく、50〜120mg/日・頭供給する形態の飼料が最も好ましい。従って、混合飼料等によってビオチン又はその塩を供給する場合には、このような1日当りの供給量を単独で又は他の飼料と共に達成可能な量のビオチン又はその塩を混合飼料等が含有することになる。通常、混合飼料等は、1日1〜10回、1回当たり10〜1,000g給与されるので、このようなビオチン又はその塩の供給を単独で達成可能な混合飼料等は、通常、ビオチン又はその塩を飼料中に乾物換算で0.01〜7.0重量%含み、好ましくは0.01〜5.0重量%含み、より好ましくは0.1〜5.0重量%含み、特に好ましくは0.1〜3.0重量%含む。
なお、本明細書に記載するビオチン又はその塩の重量及び重量パーセント濃度は、d−ビオチン換算の重量及び重量パーセント濃度を指す。
ビタミンB6は9−cis−レチノインによるRAR−β2活性化およびRAR−β2の遺伝子発現を抑制するため(非特許文献12)、本発明の飼料ではビタミンA給与による脂肪交雑への負の影響を緩和し得る。そのため、本発明の飼料において、発育を損なわない水準までビタミンAの含有量を高めることは、一定水準の脂肪交雑を維持しつつ発育を促進するという観点から有効である。
一方、本発明の飼料は、従来の脂肪交雑改善技術と組み合わせることでより高い脂肪交雑改善効果を奏する。例えば、ビタミンAは、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を抑制する因子であるため(非特許文献2、非特許文献13)、脂肪細胞への分化が最も活発であるとされる肥育中期(黒毛和種や黒毛和種とホルスタイン種の交雑種の場合、おおよそ生後13〜21ヶ月齢)にビタミンA制限を行うことが脂肪交雑改善の観点から有効と考えられているが(非特許文献17、非特許文献18)、本発明の飼料は脂肪細胞への分化を促すのみでなく、脂肪細胞への脂肪蓄積も促進し得ると考えられ、後述するように肥育後期のみに本発明の飼料を給与することでも脂肪交雑を改善し得るため、ビタミンAの給与制限との組み合わせは脂肪交雑の改善効果をより高めるという観点から特に有効である。配合飼料とする場合では、ビタミンAの含有量を乾物換算で0〜2,000IU/kgとすることが好ましく、0〜800IU/kgとすることがより好ましく、0〜500IU/kgとすることが最も好ましい。同様の理由で、脂肪細胞分化促進因子であるビタミンCについても、本発明の飼料と組み合わせることは有効であり、配合飼料とする場合では、ビタミンCの含有量を乾物換算で1〜10g/kgとすることができ、2〜7g/kgとすることが好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料等のように他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、1日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが粗飼料は含まない)との飼料全体において、ビタミンAまたはビタミンCを上記の量含有するものとすることができる。
本発明の飼料は、好ましくはNDFを一定量含む。
ここで、本明細書において「中性デタージェント繊維(NDF)」とは、セルロース、へミセルロース、及び/又はリグニンからなる繊維性物質(これらは細胞壁を構成する主な成分である)を意味し、NDF値は、耐熱性α−アミラーゼを加えながら、中性デタージェント溶液で試験飼料を煮沸した後、残渣から灰分を除いた画分の質量を計測するによって求められる。測定方法は、飼料分析基準(非特許文献19)に準ずる。
NDF供給原料としては、例えばふすま、麦ぬか、こめぬか、コーングルテンフィード、コーンハル等の小麦、大麦、米、とうもろこし等の穀物を精白する際に生じる副産物;とうもろこし、小麦、精白米等の穀物を用いてエタノールを製造した際の残渣であるDDGS等の穀物由来エタノール副産物;大麦から主にデンプンを除去した際の残渣であるビール粕;大豆種実の外皮である大豆皮;醤油製造における固形残渣である醤油粕;大豆から豆乳を製造した残渣である豆腐粕;並びに脱脂米ぬか、コーンジャーム粕等の繊維質を主成分とする穀物副産物の脱脂処理産物;綿実粕、ごま粕、やし粕、ひまわり粕、サフラワー粕、パーム核粕等の繊維質を主成分とする油糧作物の脱脂処理産物等を挙げることができる。前述のとおり、NDFを一定の範囲で高めると脂肪交雑は向上するが、本発明の飼料では脂肪交雑が改善されるため、大幅にNDF含量を高める必要はなく、肉牛の増体速度を損なわない範囲でTDNを維持しつつNDF含量を高めることで、優れた脂肪交雑と十分な発育成績を両立することが出来る。具体的には、NDFを乾物換算で18〜33重量%含むことが好ましく、20〜30重量%含むことがより好ましく、22〜28重量%含むことが更に望ましい。同様の理由により、TDNは、乾物換算で77〜88重量%含むことが好ましく、79〜87重量%含むことがより好ましく、81〜86重量%含むことが更に好ましい。
混合飼料又は単体飼料などの他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、1日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含むが粗飼料は含まない)との飼料全体において、NDF及びTDNを上記の量含有することができる。典型的には、混合飼料は、乾物換算で2〜50重量%のNDFを含有し、好ましくは4〜40重量%のNDFを含有することができる。同様に、典型的な混合飼料は、TDNを乾物換算で5〜90重量%含有し、好ましくは10〜80重量%含有する。
本発明の飼料においては、飼料コストを抑えつつ、十分な発育成績とルーメン内微生物によるビタミンB6とビオチンの合成を促すため、粗たん白質を一定量含有することが望ましい。具体的には、本発明の飼料は、粗たん白質を乾物換算で12〜20重量%含有することが好ましく、14〜18重量%含有することがより好ましい。
前述の通り、カルシウムを供給してカルシウム:リン比を高めると、脂肪交雑は低下する傾向にあるが、本発明の飼料では脂肪交雑が向上するため、カルシウムを十分に供給することができる。一方で、カルシウムの供給量を骨格形成に最低限必要な量に留めた場合には、本発明の脂肪交雑改善効果と相まってより優れた脂肪交雑を実現できる。具体的には、カルシウムを乾物換算で0.15〜1重量%含むことが好ましく、0.25〜0.75重量%含むことがより好ましい。また、本発明の飼料は、好ましくはリンを乾物換算で0.5〜1.0重量%含有することができ、0.6〜0.8重量%含有することができる。
混合飼料又は単体飼料などの他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含むが粗飼料は含まない)との飼料全体において、カルシウム及びリンを上記の量含有することができる。典型的には、混合飼料は、乾物換算で0.001〜30重量%のカルシウムを含有し、好ましくは0.005〜25重量%のカルシウムを含有することができる。同様に、典型的な混合飼料は、リンを乾物換算で0.001〜20重量%含有し、好ましくは0.005〜15重量%含有する。
ここで、本発明の好ましい実施形態の飼料の組成を以下に示す。
ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体:乾物換算で30〜2,000mg/kg
ビオチン又はその塩:乾物換算で3〜200mg/kg
粗たん白質:乾物換算で14〜18重量%
NDF:乾物換算で18〜33重量%
カルシウム:乾物換算で0.25〜0.75重量%
リン:乾物換算で0.5〜1.0重量%
ビタミンA:乾物換算で0〜2,000IU/kg
なお、混合飼料又は単体飼料によってビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体とビオチン又はその塩を供給する場合には、それと組み合わせて給与する配合飼料、混合飼料及び/又は単体飼料との合算において、上記の組成とすれば良い。
本発明の飼料は、生後10ヶ月齢以上の肉牛を対象とし、と畜(通常は生後3年以内)までの少なくとも一部の期間(望ましくは生後14ヶ月からと畜までの少なくとも一部の期間、特に望ましくは生後22ヶ月齢からと畜までの少なくとも一部の期間)給与される。給与方法については、特に制限はなく、粗飼料と併用することができ、不断給餌又は制限給餌とすることができる。配合飼料の場合には、通常1日1〜10回に分割して給与することができ、1日当たり5〜12kgの飼料を給与して、ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体を250〜20,000mg/日・頭、好ましくは300〜1,200mg/日・頭、ビオチン又はその塩を30〜2,000mg/日・頭、好ましくは40〜140mg/日・頭供給される。
ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体とビオチン又はその塩の供給は混合飼料又は単体飼料によって行ってもよく、この場合には、1日当たりのビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体の供給量が250〜20,000mg/日・頭、好ましくは300〜1,200mg/日・頭、ビオチン又はその塩の供給量が30〜2,000mg/日・頭、好ましくは40〜140mg/日・頭となるように混合飼料又は単体飼料を給与する。混合飼料又は単体飼料と組み合わされる飼料は混合給与若しくは分離給与され、牛が同時に摂取できるようにすることが望ましい。
本発明の方法では、ビタミンB6またはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及び/又はリン酸エステルからなる群から選択されるエステル、単糖、二糖、三糖及び/又は四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される配糖体とビオチン又はその塩と共に、粗たん白質、NDF、カルシウム、リン及びビタミンAを以下の量を供給することができる(各成分の供給量の技術的意義は、飼料に関して述べたところと同様である)。

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
1.各種栄養素がマウス脂肪前駆細胞3T3−L1細胞の脂肪細胞分化に及ぼす影響
脂肪細胞の分化を促進する栄養因子をスクリーニングするため、マウス脂肪前駆細胞
3T3−L1を各種栄養素を加えた分化培地で分化させ、GPDH(グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)活性を測定し分化の程度を評価した。
試験は、Kawadaら(非特許文献13)の方法を一部改変して行った。3T3−L1細胞は、10%の成牛血清を含んだダルベッコ改変イーグル培地でコンフルエントになるまで培養した後、0.25μM dexamethazone,0.5mM 3−isobutyl−methylxantine,5μg/ml insulin,10%の牛胎児血清と各種栄養素を含んだダルベッコ改変イーグル培地で2日間分化誘導を行い、続いて0.5μg/ml insulin,10%の牛胎児血清と各種栄養素を含んだダルベッコ改変イーグル培地で6日間培養した。GPDH活性はGPDH活性測定キット(Takara)を用いて測定した。培養は、37℃、5%CO2、95%空気の条件下で行った。
GPDH活性の測定結果を図1に示した。無添加のcontrolに対し、アスコルビン酸2−リン酸(VC−2P)とビオチンは、GPDH活性を増加させた。DL−パントテン酸、FeSO4、NaF、MnCl2、CoCl2およびH2SeO3は、GPDH活性を低下させた。
前述の通り、ビタミンCは脂肪細胞への分化を促進し、肥育牛への給与により脂肪交雑を改善し得ることが知られているが、本実験においても、ビタミンCは3T3−L1細胞の脂肪細胞分化を促進した。また、本実験によって、ビオチンが脂肪細胞の分化を促進し得ることが明らかとなった。
2.ビタミンB6とビオチンの給与量が血中濃度に及ぼす影響
脂肪細胞分化促進因子であることが示唆されたビタミンB6とビオチンについて、給与量と血中濃度の関係を検討した。ホルスタイン種非妊娠未経産牛4頭(22〜45ヶ月齢、体重413〜662kg)を供試し、1期14日間の4×4ラテン方格法にて試験した。基礎飼料は細断したUSチモシー乾草2番草とフレーク&ペレット形態の市販配合飼料(成分値:表2)とし、おおよそ3:7の割合で日本飼養標準・肉用牛(2000年版)(非特許文献20)の成雌牛の維持要求量を満たす量を、朝・夕1日2回、等量ずつ給与した(配合飼料の給与量は3.6〜4.6kg/日、平均4.0kg/日、乾草の給与量は1.6〜2.0kg/日、平均1.75kg/日)。試験区設定は、塩酸ピリドキシン・d−ビオチン無添加、塩酸ピリドキシン250mg/日(ピリドキシンとして207mg/日)・d−ビオチン30mg/日添加、塩酸ピリドキシン500mg/日(ピリドキシンとして413mg/日)・d−ビオチン60mg/日添加および塩酸ピリドキシン1,000mg/日(ピリドキシンとして827mg/日)・d−ビオチン120mg/日添加の4区であり、設定した給与量となるよう脱脂米ぬかを用いて希釈したものを朝・夕1日2回、1回当たり100g、配合飼料にトップドレスして給与した。各期の最終日に採血を行い、血清を分離し、測定まで−20℃で凍結保存した。血清ピリドキシン・ピリドキサール・ピリドキサミン濃度をHPLCにて、ビオチン濃度を「VitaFast Biotin kit」(R−Biopharm社)を用いて測定した。


注)成分値(設計値:乾物中の値)は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献21)の値を引用した。NFC(非繊維性炭水化物)は、100−水分−粗たん白質−粗脂肪−粗灰分−NDFにより求めた。
結果を図2と図3に示した。ピリドキサミンは全サンプルが、ピリドキシンは一部サンプルが測定下限値以下であったため、ピリドキサール濃度のみで示したが、塩酸ピリドキシン添加量が0〜1,000mg/日の範囲では、血清ピリドキサール濃度は添加量依存的に二次曲線的な増加を示した。一方、d−ビオチン添加量が0〜120mg/日の範囲では、血清ビオチン濃度は直線的に増加した。以上の結果より、塩酸ピリドキシンを250mg/日以上、d−ビオチンを30mg/日以上追加給与することで、血清ピリドキサールおよびビオチン濃度は上昇することが示された。
3.黒毛和種去勢牛における肥育期のビタミンB6とビオチン給与が枝肉成績に及ぼす影響
黒毛和種去勢肥育素牛(9〜10ヶ月齢の育成牛)を市場導入する肥育農家において、ビタミンB6とビオチンの給与が枝肉成績に及ぼす影響について検討した。農場で14ヶ月齢以降の肥育牛全頭に給与する配合飼料(成分値:表3)に現物換算で塩酸ピリドキシン50mg/kgとd−ビオチン6mg/kgを添加(配合飼料摂取量を10kg/日とすると、塩酸ピリドキシン500mg/日、d−ビオチン60mg/日を追加給与したこととなる)し、約30ヶ月齢で出荷(おおよそ月1回、30ヶ月齢に達した肥育牛をまとめて出荷)し格付成績(日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格に準ずる:非特許文献22)、モモ肉および皮下脂肪サンプルを得た。添加前と添加期間のモモ肉の水分、粗たん白質、粗脂肪、粗灰分、ビオチン含量および皮下脂肪とモモ肉脂肪の上昇融点を測定した。水分、粗たん白質、粗脂肪および粗灰分は飼料分析基準(非特許文献19)に順じて行い、ビオチン含量は「VitaFast Biotin kit」(R−Biopharm社)を用いて測定した。脂肪上昇融点は、ジエチルエーテルを溶媒としてソックスレー抽出装置にて脂肪を抽出した後、毛細管に脂肪を充填し、水浴・加温して脂肪が上昇する温度を読み取ることで測定した。結果を表4、表5および図4に示す。

注)成分値(設計値:乾物中の値)は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献21)の値を引用した。NFC(非繊維性炭水化物)は、100−水分−粗たん白質−粗脂肪−粗灰分−NDFにより求めた。




データを「添加前」、「ビタミンB6+ビオチン添加期間」、「添加中止10〜15ヵ月後」および「添加中止16〜27ヵ月後」に分けて集計した。すなわち、「添加前」は試験開始前、「ビタミンB6+ビオチン添加期間」は出荷1ヶ月前のみビタミンB6+ビオチン添加飼料を摂取したものから、14ヶ月齢〜出荷まで全期間摂取したものを含むデータである。「添加中止10〜15ヵ月後」は、肥育中期(一般的には13〜21ヶ月齢とされる)のみビタミンB6+ビオチン添加飼料を摂取した牛のデータであり、14〜20ヶ月齢まで摂取したものから14ヶ月齢から1ヶ月間のみ摂取したものを含む。「添加中止16〜27ヵ月後」は、一切ビタミンB6+ビオチン添加飼料を摂取しなかったもののデータである。
脂肪交雑の指標であるBMS No.は、添加前、添加中止10〜15ヵ月後および添加中止16〜27ヶ月後に比べ、ビタミンB6+ビオチン添加期間において0.6〜0.9ポイント高い値を示した。なお、試験期間中、月毎にBMS No.を独立変数、枝肉単価を従属変数とする回帰分析を行ったところ、BMS No.1ポイントの増加は枝肉単価として平均で104.3円の上昇に相当し、添加前比0.6ポイントのBMS No.増加により104.3×0.6×537(枝肉重量)=33,605円/頭、枝肉販売額が高まったと考えられた。その他の格付成績に明確な差は認められなかった。モモ肉の粗脂肪含量は、添加前に比べ添加期間の方が2.3%高く、ビオチン含量は添加期間の方が統計的に有意(p<0.01)に高値を示した。
以上の結果より、黒毛和種去勢肥育牛にビタミンB6とビオチンを給与すると、脂肪交雑が高まることが示唆された。
4.黒毛和種雌牛における肥育後期のビタミンB6とビオチン給与が枝肉成績に及ぼす影響
黒毛和種雌肥育素牛(9〜10ヶ月齢の育成牛)を市場導入する肥育農家において、肥育後期のビタミンB6とビオチンの給与が枝肉成績に及ぼす影響について検討した。約25ヶ月齢の黒毛和種雌肥育牛15頭を供試し、ビタミンB6+ビオチン添加群8頭と無添加群7頭に分けた。両群には表6の成分値の市販配合飼料を給与し(供試牛には、当該配合飼料を約14ヶ月齢から給与していた)、ビタミンB6+ビオチン添加群には塩酸ピリドキシン400mg/日(ピリドキシンとして331mg/日)とd−ビオチン48mg/日を、脱脂米ぬかで希釈して配合飼料にトップドレスして給与した。約30ヶ月齢で出荷し格付成績(日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格に準ずる:非特許文献22)を得た。結果を表7に示す。


注)成分値(設計値:乾物中の値)は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献21)の値を引用した。NFC(非繊維性炭水化物)は、100−水分−粗たん白質−粗脂肪−粗灰分−NDFにより求めた。

供試牛の配合飼料摂取量は、平均で8.5kg/日であった。すなわち、ビタミンB6+ビオチン添加群においては、配合飼料中のピリドキシン含量は乾物換算でおおよそ50.5mg/kg、d−ビオチンは6.65mg/kgであった計算となる。無添加群に比べ、ビタミンB6+ビオチン添加群は、BMS No.(p<0.10)、脂肪交雑等級(p<0.10)、締まり(p<0.05)、きめ(p<0.10)、締まりきめ等級(p<0.10)が優れる結果となった。枝肉重量、ロース芯面積およびバラの厚さも優れる傾向であり、枝肉単価は+122円/kg、+枝肉販売額は99千円/頭高くなった。以上の結果より、出荷前5ヶ月間、黒毛和種雌肥育牛へビタミンB6とビオチンを給与することで、脂肪交雑と締まり・きめが改善され、枝肉重量、ロース芯面積およびバラの厚さも高まる傾向にあることが示された。
本発明の飼料では、ビタミンB6とビオチンの双方が脂肪細胞への分化を促進すると考えられるが、肥育後期のみの添加であっても脂肪交雑は改善された。前述の通り、活性型ビタミンB6であるピリドキサール5‘−リン酸(PLP)分化後の3T3−L1細胞において中性脂肪の蓄積を促進することが報告されており、ビオチンは、アセチルCoAカルボキシラーゼの補酵素としての作用等を通じ、脂肪酸合成に関与する。従って、本発明の飼料では、脂肪細胞の分化が促進されるだけでなく、脂肪細胞への脂肪蓄積が促され、脂肪交雑改善効果を発揮するものと考えられる。
肥育牛において、脂肪細胞の分化が活発な時期は肥育中期(おおよそ13〜21ヶ月齢)と言われており、そのため従来技術であるビタミンA制限やバイパスビタミンCの給与は、主に肥育中期を対象としたものであった。本発明の飼料は、肉牛の発育を向上させつつ、肥育後期(おおよそ22〜30ヶ月齢)の給与であっても脂肪交雑改善効果を発揮する点で、従来技術とは異なる技術的特性を有し、新たな脂肪交雑改善策を提供し得るものである。
各種栄養素を培地へ添加し分化誘導した3T3−L1細胞のGPDH活性を示したものである。 塩酸ピリドキシンの添加量を段階的に設定し、血清ピリドキサール濃度を測定した結果を示したものである。 d−ビオチンの添加量を段階的に設定し、血清ビオチン濃度を測定した結果を示したものである。

Claims (6)

  1. ビタミンB6、或いはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択されるそのエステル、又は単糖、二糖、三糖及び四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される糖が結合したその配糖体を、乾物換算で30〜2,000mg/kg含み、ビオチン又はその塩を乾物換算で3〜200mg/kg含む、肉牛用飼料。
  2. 前記ビタミンB6、或いはその塩、エステル、又は配糖体を、乾物換算で30〜1,000mg/kg含み、前記ビオチン又はその塩を、乾物換算で3〜100mg/kg含む、請求項1に記載の飼料。
  3. 配合飼料及び/又は単体飼料と組み合わせて用いるための混合飼料であって、該配合飼料及び/又は単体飼料と該混合飼料との全体で換算したときに、前記ビタミンB6、或いはその塩、エステル、又は配糖体が、乾物換算で30〜2,000mg/kgとなる量含み、前記ビオチン又はその塩が、乾物換算で3〜200mg/kgとなる量を含む混合飼料。
  4. 前記ビタミンB6、或いはその塩、エステル、又は配糖体を、乾物換算で1〜30重量%含み、前記ビオチン又はその塩を、乾物換算で0.1〜5.0重量%含む、請求項3に記載の飼料。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の飼料を肉牛に給与することを特徴とする、肉牛の脂肪交雑の改善方法。
  6. ビタミンB6、或いはその塩、カルボン酸エステル、硫酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択されるそのエステル、又は単糖、二糖、三糖及び四糖以上のオリゴ糖からなる群から選択される糖が結合した配糖体を、250〜20,000mg/日・頭供与し、前記ビオチン又はその塩を、30〜2,000mg/日・頭供与する、肉牛の脂肪交雑の改善方法。
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