JP2014194992A - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】非鉛系の材料で構成され、優れた圧電特性を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子を提供する。
【解決手段】圧電体層70と、圧電体層70の両側に設けられた第1電極60及び第2電極80と、を備えた圧電素子300を具備する液体噴射ヘッドIであって、圧電体層70は、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせ、圧電体層と圧電体層に電圧を印加する電極を有する圧電素子を具備する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子に関する。
圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電材料からなる圧電体層(圧電体膜)を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このような圧電素子を構成する圧電体層として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる(特許文献1参照)。しかしながら、環境問題の観点から、鉛の含有量を抑えた圧電材料が求められている。鉛を含有しない圧電材料としては、例えば、Bi及びFeを含有するBiFeO系の圧電材料がある(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−223404号公報 特開2009−252789号公報
しかしながら、これまで提案されているBiFeO系の圧電材料は、鉛(Pb)系の材料に比べて圧電特性が低く、大きな変位量を得ることができない。このため、非鉛系の材料で構成され、優れた圧電特性を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子が求められている。
本発明はこのような事情に鑑み、非鉛系の材料で構成され、優れた圧電特性を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、圧電体層と、該圧電体層の両側に設けられた第1電極及び第2電極と、を備えた圧電素子を具備する液体噴射ヘッドであって、前記圧電体層は、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、前記リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、圧電体層が、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有するものとすることにより、ヤング率を低下させ、変位量を向上させることができる。また、かかる複合酸化物によれば、鉛の含有量を抑えられるため、環境への負荷を低減できる。よって、非鉛系の材料により、優れた圧電特性を有する液体噴射ヘッドを実現できる。
そして、前記圧電体層は、マンガンをさらに含むことが好ましい。これによれば、リーク特性を向上させ、非鉛系の材料によって、より圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
また、前記圧電体層は、銅をさらに含み、前記リチウム及び前記銅を0.5mol%以上1.0mol%未満含有することが好ましい。これによれば、リチウム及び銅の含有量を調整し、非鉛系の材料によって、より圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
また、前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄及びチタンを含む第1圧電体層と、ビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含む第2圧電体層と、からなることが好ましい。これによれば、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有する圧電体層を、容易に作製できるようになる。
本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、ヤング率の低い圧電素子を有するため、非鉛系の材料により、優れた圧電特性を有する液体噴射装置を実現できる。
また、本発明の他の態様は、圧電体層と、該圧電体層の両側に設けられた第1電極及び第2電極と、を備え、前記圧電体層は、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、前記リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有することを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、圧電体層が、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有するものとすることにより、ヤング率を低下させ、変位量を向上させることができる。また、かかる複合酸化物によれば、鉛の含有量を抑えられるため、環境への負荷を低減できる。よって、非鉛系の材料により、優れた圧電特性を有する圧電素子を実現できる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図及び要部拡大図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。 実施例1及び比較例1の比誘電率及び変位量を説明する図。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図であり、図3(a)は図2のA−A′線断面図、図3(b)は図3(a)の要部拡大図である。図1〜図3に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば厚さ30〜50nm程度の酸化チタン等からなり、弾性膜50等の第1電極60の下地との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。なお、弾性膜50上に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が設けられていてもよい。
さらに、この密着層56上には、第1電極60と、厚さが3μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。
本実施形態においては、圧電体層70は、少なくともビスマス(Bi)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、チタン(Ti)及びリチウム(Li)を含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物である。ペロブスカイト型構造、すなわち、ABO型構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。そして、このAサイトにBi、Ba及びLiが、BサイトにFe、Tiが位置している。
かかる圧電体層70は、Bi、Ba、Fe、Tiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物が所定量のLiを含有するものであり、LiはAサイトのBi又はBaの一部を置換した状態で存在するか、結晶粒界に存在するものと推定される。Liの含有量は、圧電体層70の全体として、0.5mol%以上1.0mol%未満であり、Liがどのような状態で存在するかは問わない。また、圧電体層70は、全体として同じ組成であってもよいし、下層がBi、Ba、Fe及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1圧電体層74からなり、上層がBi、Ba、Fe、Ti及びLiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2圧電体層72からなる2層構造であってもよい。また、このような2層構造では上層を形成する際にLiが下層に拡散したものであってもよい。
ここで、圧電体層70の基本組成となる、又は圧電体層70の下層を構成する、Bi、Ba、Fe及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物は、(Bi、Ba)(Fe、Ti)Oとして表されるが、代表的な組成としては、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶として表されるものである。かかる混晶とは、X線回折パターンで、鉄酸ビスマスやチタン酸バリウムが単独では検出できないものをいう。勿論、(Bi、Ba)(Fe、Ti)Oは、混晶の組成から外れる組成も含むものである。また、元素(Bi、Ba、Fe、Ti)が一部欠損する又は過剰であったり、元素の一部が他の元素に置換されたものも知られているが、本発明で鉄酸ビスマス、チタン酸バリウムと表記した場合、欠損・過剰により化学量論の組成からずれたものや元素の一部が他の元素に置換されたものも、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウムの範囲に含まれるものとする。また、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの比も、種々変更することができる。
また、(Bi、Ba)(Fe、Ti)Oで表される複合酸化物は、Bi、Ba、Fe及びTi以外の元素をさらに含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)などが挙げられる。これら他の元素を含む複合酸化物である場合も、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。
圧電体層70が、Mn、CoやCrを含む場合、Mn、CoやCrはペロブスカイト構造のBサイトに位置した構造の複合酸化物である。例えば、Mnを含む場合、圧電体層70を構成する複合酸化物は、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムが均一に固溶した固溶体のFeの一部がMnで置換された構造、又は、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸バリウムとのペロブスカイト構造を有する複合酸化物として表され、基本的な特性は鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとのペロブスカイト構造を有する複合酸化物と同じであるが、リーク特性が向上することがわかっている。また、CoやCrを含む場合も、Mnと同様にリーク特性が向上するものである。なお、X線回折パターンにおいて、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム、鉄酸マンガン酸ビスマス、鉄酸コバルト酸ビスマス、及び、鉄酸クロム酸ビスマスは、単独では検出されないものである。また、Mn、CoおよびCrを例として説明したが、その他遷移金属元素の2元素を同時に含む場合にも同様にリーク特性が向上することがわかっており、これらも圧電体層70とすることができ、さらに、特性を向上させるため公知のその他の添加物を含んでもよい。
本実施形態においては、圧電体層70は、図3(b)に示すように、第1圧電体層74と、第2圧電体層72とを有する。そして、本実施形態においては、第1圧電体層74を第1電極60側に設け、第2圧電体層72を第2電極80側に設けた。
また、上述したように、圧電体層70を構成する第1圧電体層74及び第2圧電体層72は、少なくともBi、Ba、Fe、Ti及びLiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、Liは、圧電体層70の全体として、0.5mol%以上1.0mol%未満含有されるものである。
このように、圧電体層70を、少なくともBi、Ba、Fe、Ti及びLiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であって、Liを0.5mol%以上1.0mol%未満含有するものとすることにより、後述する実施例に示すように、圧電体層70のヤング率を低下させ、変位量を向上させることができる。したがって、圧電特性に優れたインクジェット式記録ヘッドとなる。特に、下層となる第1圧電体層74と比較して、上層となる第2圧電体層72がLi含有量が多くなることにより、多くの変位を受ける圧電体層70の上層が下層と比較して低ヤング率となるので、さらに変位量が向上する。
ここで、圧電体層70は、Mnをさらに含むことが好ましい。これによれば、上述のように、リーク電流を抑制し、非鉛系の材料によって、より圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
また、圧電体層70は、Cuをさらに含み、Li及びCuを、圧電体層70の全体として、0.5mol%以上1.0mol%未満含有することが好ましい。これによれば、圧電体層70に対するLi及びCuの割合を調整し、非鉛系の材料によってより圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
このような二層構造とした場合の第1圧電体層74及び第2圧電体層72の厚さの比は、第2圧電体層72が、全体の15〜35%とすることができる。この範囲を外れると、上層のヤング率を低下させて変位量を向上させる効果が顕著には発揮されないからである。ただし、二層構造とした場合の第1圧電体層74及び第2圧電体層72の厚さの比は上記の範囲に限定されない。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上や必要に応じて設ける絶縁体膜上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜50や必要に応じて設ける絶縁体膜及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、必要に応じて設ける絶縁体膜等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法の一例について、図4〜図7を参照して説明する。なお、図4〜図7は、圧力発生室の長手方向の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる二酸化シリコン膜を熱酸化等で形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化チタン等からなる密着層56を、スパッタリング法や熱酸化等で形成する。
次に、図5(a)に示すように、密着層56の上に白金、イリジウム、酸化イリジウム又はこれらの積層構造等からなる第1電極60をスパッタリング法や蒸着法等により全面に形成する。
次に、図5(b)に示すように、形成した第1電極60上に所定形状のレジスト(図示無し)をマスクとして、第1電極60及び密着層56の側面が傾斜するように同時にパターニングする。
次いで、この白金膜上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、金属錯体を含む溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層(圧電体膜)を得るMOD(Metal−Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層70を製造できる。その他、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法など、液相法でも固相法でも圧電体層70を製造することもできる。
圧電体層70を化学溶液法で形成する場合の具体的な形成手順例としては、まず、金属錯体、具体的には、Bi、Ba、Fe、Mn及びTiを含有する金属錯体を含むMOD溶液やゾルからなる圧電体膜形成用組成物(前駆体溶液)であって、第1圧電体層74を形成するための前駆体溶液と、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液とを作成する。
この第1圧電体層74を形成するための前駆体溶液、及び、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液は、焼成によりBi、Ba、Fe、Mn及びTiを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を混合し、該混合物を有機溶媒に溶解または分散させたものである。Bi、Ba、Fe、Mn及びTiをそれぞれ含む金属錯体の混合割合は、所望の鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸バリウムを含む固溶体として表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物となる割合である。
Bi、Ba、Fe、Mn及びTiをそれぞれ含む金属錯体としては、例えばアルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。Biを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸ビスマス、酢酸ビスマスなどが挙げられる。Feを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸鉄、酢酸鉄などが挙げられる。Mnを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。Baを含む金属錯体としては、例えばバリウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸バリウム、バリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。Tiを含有する金属錯体としては、例えばチタニウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸チタン、チタン(ジ−i−プロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)などが挙げられる。勿論、Bi、Ba、Fe、Mn及びTiを二種以上含む金属錯体を用いてもよい。
そして、第1圧電体層74を形成するための前駆体溶液を、図5(c)に示すように、第1電極60上に、スピンコート法などを用いて塗布して、第1の圧電体層前駆体膜71を形成する(塗布工程)。
次いで、この第1の圧電体層前駆体膜71を所定温度(例えば、150〜200℃)に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した第1の圧電体層前駆体膜71を所定温度(例えば、350〜450℃)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。ここで言う脱脂とは、第1の圧電体層前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定されず、大気中、酸素雰囲気中や、不活性ガス中でもよい。なお、塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を複数回行ってもよい。
次に、図5(d)に示すように、第1の圧電体層前駆体膜71を所定温度、例えば600〜850℃程度に加熱して、一定時間、例えば1〜10分間保持することによって結晶化させ、第1電極60上に、少なくともBi、Ba、Fe、Mn及びTiを含有するペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第1圧電体膜73を形成する(焼成工程)。この焼成工程においても、雰囲気は限定されず、大気中、酸素雰囲気中や、不活性ガス中でもよい。
本実施形態においては、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返して複数の第1圧電体膜73からなる第1圧電体層74を形成することで、第1電極60上に、複数層の第1圧電体膜73からなる所定厚さの第1圧電体層74を形成する。なお、本実施形態では、図5(d)に示すように、第1圧電体層74を、10層の第1圧電体膜73により形成したが、層数は限定されない。
さらに、図5(d)に併せて示すように、この第1圧電体層74上に、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液を、スピンコート法などを用いて塗布して、第2の圧電体層前駆体膜75を形成する(塗布工程)。
その後、図5(e)に示すように、第1電極60上に第1圧電体層74を設ける方法と基本的には同様の方法で、第1圧電体層74上に、第2圧電体膜76を形成する。
第2圧電体膜76についても、上述のような塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を実施し、第1圧電体層74上に、複数層の第2圧電体膜76を形成する。乾燥工程、脱脂工程、焼成工程の雰囲気は限定されず、大気中、酸素雰囲気中や、不活性ガス中でもよい。なお、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を複数回行ってもよい。これらの工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返し、複数層からなる第2圧電体膜76を形成するようにしてもよい。本実施形態では、図5(e)に示すように、第2圧電体層72を、2層の第2圧電体膜76により形成したが、層数は限定されない。
ここで、本実施形態において、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液は、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti及びLiを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を混合し、該混合物を有機溶媒に溶解または分散させたものである。
具体的に、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液は、Li、又はLi及びCuを、第2圧電体層72と第1圧電体層74とを形成するための前駆体溶液全体として、3.0〜6.0mol%含有するものとし、第2圧電体層72の圧電体層70の厚さに対する割合を、例えば15〜35%とした。Liを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸リチウム、酢酸リチウムなどが挙げられる。また、Cuを含む金属錯体としては、2−エチルヘキサン酸銅、酢酸銅などが挙げられる。
このように、本実施形態では、第2圧電体層72の前駆体溶液として、Liを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体が混合されたものを用いる。そして、Liを第1圧電体層74の側に拡散させた後に、上述の焼成工程を実施し、第1圧電体層74上に、第2圧電体層72を形成する。勿論、上述したように、Liは、圧電体層70全体として0.5mol%以上1.0mol%未満含有するようにする必要がある。
このようにして形成した第1圧電体層74と、第2圧電体層72とで、圧電体層70となる。このように、少なくともBi、Ba、Fe、Ti及びLiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、Liは、圧電体層70の全体として0.5mol%以上1.0mol%未満含有する圧電体層70とすることにより、ヤング率を低下させ、圧電特性を向上させることができる。
ヤング率を低下させることで圧電特性を向上させることができる理由は、以下の通りである。すなわち、圧電特性の指標となる変位量(d33)は、下記式(1)のように表される。尚、式(1)中、k33は電気機械結合係数、ε33Tは比誘電率、Eはヤング率である。
[式1]
33=k33√(ε33 /E) (1)
式(1)より、電気信号から機械的振動への変換効率や電気特性に変化がなく、電気機械結合係数k33及び比誘電率ε33 が一定であるとすると、ヤング率Eを低下させることで、圧電変位量d33を大きくできることが分かる。よって、所定の電圧に対する変位量を向上させ、圧電特性を向上させることができる。
上述のように圧電体層70を形成した後は、図6(a)に示すように、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とからなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、例えば、600〜850℃の温度域でアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、マスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面のマスク膜52を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、(110)に配向した単結晶シリコン(Si)基板の表面に熱酸化により膜厚1170nmの二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にRFマグネトロンスパッター法により膜厚40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタン膜を形成した。次に、酸化チタン膜上にRFマグネトロンスパッター法により膜厚100nmの白金膜(第1電極60)を形成した。
次いで、第1電極60上に圧電体層70をスピンコート法により形成した。その手法は以下のとおりである。まず、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸バリウム及び2−エチルヘキサン酸チタンのn−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn及びTiのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0となるように混合して、第1圧電体層74を形成するための前駆体溶液(第1前駆体溶液)を調製した。
そして、調製した第1前駆体溶液を、形成した第1電極60に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させ、第1前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した(乾燥工程)。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った(脱脂工程)。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置で、750℃で5分間焼成を行った(焼成工程)。次いで、上記の工程を5回繰り返し、計10回の塗布により、計10層からなる第1圧電体層74を形成した。
次いで、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン及び2−エチルヘキサン酸リチウムの各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti及びLiのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:3.0となるように混合して、第2圧電体層72を形成するための前駆体溶液(第2前駆体溶液)を調製した。
そして、調製した第2前駆体溶液を、形成した第1圧電体膜73上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させ、第2前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した(乾燥工程)。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った(脱脂工程)。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行った(焼成工程)。次いで、上記の工程を2回繰り返し、計2回の塗布により、計2層からなる第2圧電体層72を形成した。以上により、計12層からなる圧電体層70を形成した。
その後、形成した第2圧電体層72上に、第2電極80としてスパッター法により厚さ100nmの白金膜(第2電極)を形成することにより、少なくともBi、Ba、Fe、Ti及びLiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、Liを、圧電体層70の全体として0.5mol%以上1.0mol%未満含有する圧電体層70を具備する実施例1の圧電素子300を形成した。
実施例1の圧電素子300では、計12層からなる圧電体層70のうち、Liの含有量は、0.5mol%であった。結果を表1に示す。尚、圧電体層70におけるLi(及びCu)の含有量は、下記式(2)に基づいて算出した。
[式2]
X=A×(B/C) (2)
X:圧電体層におけるLi(及びCu)の含有量(mol%)
A:第2前駆体溶液に含まれるBFM―BT組成に対するLi(及びCu)のmol比
B:第2の圧電体層の合計層
C:圧電体層の合計層数
(実施例2)
第2前駆体溶液として、Liのmol比を増加させた溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン及び2−エチルヘキサン酸リチウムの各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti及びLiのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:5.9となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、実施例2の圧電素子を形成した。
式(2)より、実施例2の圧電素子では、圧電体層におけるLiの含有量は、0.98mol%であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
第2前駆体溶液として、Li及びCuを含む溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸リチウム及び2−エチルヘキサン酸銅の各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti、Li及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:3.0:1.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、実施例3の圧電素子を形成した。
式(2)より、実施例3の圧電素子では、圧電体層におけるLiの含有量は0.5mol%であった。また、圧電体層におけるLi及びCuの合計含有量は0.67mol%であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
第2前駆体溶液として、Li及びCuを含む溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸リチウム及び2−エチルヘキサン酸銅の各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti、Li及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:3.0:2.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、実施例4の圧電素子を形成した。
式(2)より、実施例4の圧電素子では、圧電体層におけるLiは0.50mol%であった。また、圧電体層におけるLi及びCuは0.83mol%であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
第2前駆体溶液として、Li及びCuを含まない溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタンの各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn及びTiのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例1の圧電素子を形成した。
式(2)より、比較例1の圧電素子では、圧電体層におけるLiは0mol%であった。結果を表1に示す。
(比較例2)
第2前駆体溶液として、Liのmol比を低下させた溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン及び2−エチルヘキサン酸リチウムの各n−オクタン溶液を、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti、Liのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:1.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例2の圧電素子を形成した。
式(2)より、比較例2の圧電素子では、圧電体層におけるLiは0.17mol%であった。結果を表1に示す。
(比較例3〜4)
第2前駆体溶液として、Liに代えてCuを混合した溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸銅の各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:1.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例3の圧電素子を形成した。また、上記の各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:3.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例4の圧電素子を形成した。
式(2)より、比較例3〜4の圧電素子では、圧電体層におけるLiは0mol%であった。尚、圧電体層におけるCuは、比較例3〜4の圧電素子でそれぞれ0.17mol%、0.50mol%であった。結果を表1に示す。
(比較例5〜6)
第2前駆体溶液として、Li及びCuを混合した溶液、すなわち、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸リチウム及び2−エチルヘキサン酸銅の各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti、Li及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:6.0:1.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例5の圧電素子を形成した。また、上記の各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Ba、Fe、Mn、Ti、Li及びCuのmol比が75.0:25.0:71.25:3.75:25.0:1.0:6.0となるように混合して調製した溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。以上により、比較例6の圧電素子を形成した。以上により、計12層から成る圧電体層とした。
式(2)より、比較例5〜6の圧電素子では、圧電体層におけるLiは、それぞれ1.0mol%及び0.17mol%であった。また、圧電体層におけるLi及びCuは、比較例5〜6の圧電素子でそれぞれ1.17mol%であった。結果を表1に示す。
(ヤング率測定)
実施例1〜4及び比較例1〜6の圧電素子につき、圧電体層のヤング率を測定した。ヤング率の測定は、球状圧子を用いたナノインデンテーション法により行った。すなわち、先端が球状の圧子を圧電素子の表面に押込み、そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積とから、圧電体層のヤング率を算出した。結果を表1に示す。
実施例1〜4及び比較例1〜6の圧電素子につき、アグザクト社製の変位測定装置(DBLI)を用い室温で、φ=500μmの電極パターンを使用し、周波数1kHzの電圧を印加して、電界誘起歪(変位量)を測定し、印加電圧30Vにおける変位量から、圧電定数を算出した。結果を表1に示す。尚、圧電定数は、圧電体層に電圧を印加した場合における変位量の指標となるものであり、上述した式(1)を用いて算出することが可能である。
Figure 2014194992
表1に示すように、実施例1〜4の圧電素子のヤング率は91〜102.0(GPa)であり、比較例1〜6の圧電素子のヤング率104.5〜113(GPa)に対し、0.87倍〜0.90倍となる低いヤング率を有することが確認された。よって、実施例1〜4の圧電素子は、比較例1〜6の圧電素子に比べ、優れた圧電特性を有することが分かった。
また、ヤング率が寄与する圧電定数についても、実施例1〜4の圧電素子の圧電定数は73.8〜87.8(pm/V)であり、比較例1〜6の圧電素子の圧電定数62.8〜69.3(pm/V)に対し、1.18倍〜1.27倍となる高い圧電定数を有することが確認された。よって、実施例1〜4の圧電素子は、比較例1〜6の圧電素子に比べ、優れた圧電特性を有することが分かった。
また、図8に示すように、実施例1の圧電素子は、比較例1の圧電素子に対し、点線で表されるヒステリシスループがほぼ重なることから、比誘電率はほぼ同等と考えられることが分かった。一方、実線で表されるバタフライ曲線では、実施例1〜4の圧電素子は、比較例1の圧電素子に対し、最下点と最高点との差が大きいことから、大きい変位量を有することが確認された。このことからも、実施例1〜4の圧電素子は、比較例の圧電素子に比べ、優れた圧電特性を有することが分かった。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子300にも本発明を適用することができる。
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図9に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、IRセンサー等の焦電素子等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。
また、上述した実施形態では、非鉛系の材料を用いることで、環境への負荷を低減できる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 71 第1の圧電体層前駆体膜、 72 第2圧電体層、 73 第1圧電体膜、 74 第1圧電体層、 75 第2の圧電体層前駆体膜、 76 第2圧電体膜、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

Claims (6)

  1. 圧電体層と、該圧電体層の両側に設けられた第1電極及び第2電極と、を備えた圧電素子を具備する液体噴射ヘッドであって、
    前記圧電体層は、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、前記リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記圧電体層は、マンガンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記圧電体層は、銅をさらに含み、前記リチウム及び前記銅を0.5mol%以上1.0mol%未満含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄及びチタンを含む第1圧電体層と、
    ビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含む第2圧電体層と、からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  6. 圧電体層と、該圧電体層の両側に設けられた第1電極及び第2電極と、を備え、
    前記圧電体層は、少なくともビスマス、バリウム、鉄、チタン及びリチウムを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、前記リチウムを0.5mol%以上1.0mol%未満含有することを特徴とする圧電素子。
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