JP2014194857A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池寿命末期まで安全性が高いリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 スピネル系リチウムマンガン複酸化物を主成分とする正極活物質が、フッ素樹脂を主成分とするバインダを用いて正極集電体31に保持されてなる正極板7と、
電解質としてリチウム塩を含有しかつ難燃化剤が添加された非水電解液とを備えるリチウムイオン電池1を作製する。難燃化剤には、ホスファゼン系化合物または亜リン酸エステル系化合物のいずれか1種またはこれらの混合物を用いる。非水電解液の電解質を構成するリチウム塩には、四フッ化ホウ酸リチウムを用いる。バインダの主成分を構成するフッ素樹脂には、少なくともテトラフルオロエチレンが含有されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、二次電池に関するものであり、特にリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、現在一般的に使われている電池の中で、最もエネルギー密度が高い電池であり、ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話などのモバイル電子機器の電源として広く使用されている。今後は、自動車・鉄道用蓄電装置、電力貯蔵用蓄電システムおよび通信設備の非常用バックアップ電源などの産業用途への利用が予想され、大型リチウムイオン電池の市場の拡大が期待されている。モバイル電子機器のリチウムイオン電池の容量は1〜3Ah程度であるのに対して、産業用リチウムイオン電池では100Ahを超える大容量のものが開発されている。
一般に、リチウムイオン二次電池には可燃性を有する有機電解液を用いる。このため、内部短絡のような電池異常時の温度上昇などにより熱暴走が起こる危険性がある。リチウムイオン電池の大容量化に伴い、電池の蓄熱が大きくなるため、小型電池よりも安全性についてより配慮が必要となる。このような問題を解決するため、特許第3055358号公報(特許文献1)には、リチウムイオン二次電池の非水電解液に難燃化剤としてホスファゼン系化合物を添加する技術が開示されている。
モバイル電子機器のライフサイクルは一般に数年である。しかしながら、産業用途では10年前後あるいはそれ以上の寿命が要求される。特に、太陽光や風力などの自然エネルギーの利用技術と組み合わせた蓄電用途では、17年から20年以上の寿命が要求される。WO2010/101177(特許文献2)には、四フッ化ホウ酸リチウムを電解質として含有するリチウムイオン二次電池の非水電解液に、難燃化剤としてホスファゼン系化合物を10重量%以上添加する技術が開示されている。特許文献2の発明では、非水電解液に対してホスファゼン系難燃化剤が含有されているので、電池の安全性を向上させることができる。さらに、電解質として四フッ化ホウ酸リチウムが添加されているので、正極活物質のリチウムマンガン複酸化物とホスファゼン系の難燃化剤とを併用しても、マンガンイオンの溶出が抑制され、長寿命の非水電解液電池を提供することができる。
特許第3055358号公報 WO2010/101177
ホスファゼン化合物は、電気化学的に安定であるものの、17年から20年以上の長期に亘って電池を保存した場合には、リチウムイオン電池内では正極の高い電位あるいは負極の低い電位により分解し、難燃化剤としての機能を部分的に失う可能性がある。そのため、電池の長寿命化に合わせて、電池の難燃性も長期間持続させる必要がある。
本発明の目的は、電池の長寿命化と電池の長期安全性とを同ときに達成することができるリチウムイオン電池を提供することにある。
本発明が改良の対象とするリチウムイオン二次電池は、スピネル系リチウムマンガン複酸化物を主成分とする正極活物質が、フッ素樹脂を主成分とするバインダを用いて正極集電体に保持されてなる正極板と、電解質としてリチウム塩を含有しかつ難燃化剤が添加された非水電解液とを備えている。スピネル系リチウムマンガン複酸化物は、マンガンサイトの一部が、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、コバルト、ニッケルのうち少なくとも1種類以上で置換されたスピネル系リチウムマンガン複酸化物であってもよい。このようなスピネル系リチウムマンガン複酸化物を正極活物質として用いると、結晶構造をより強固にできるので、スピネル系リチウムマンガン複酸化物からのマンガンの溶出を抑制することができる。
難燃化剤としては、ホスファゼン系化合物または亜リン酸エステル系化合物のいずれか1種またはこれらの混合物を用いる。非水電解液にこのような難燃化剤を添加すると、非水電解液に難燃性(自己消火性)が付与される。これにより、異常な高温環境下に曝されたときに非水電解液が発火しても自己消火されるので、電池の安全性を向上させることができる。
非水電解液の電解質を構成するリチウム塩としては、四フッ化ホウ酸リチウムを用いる。放電特性の長期維持による電池の長寿命化の観点から四フッ化ホウ酸リチウムの含有量は、非水電解液に対して0.6〜1.8mol/l以上に調整されている。
バインダの主成分を構成するフッ素樹脂には、少なくともテトラフルオロエチレン(TFE)が含有されている。すなわち、テトラフルオロエチレンのみからなるフッ素樹脂、または、テトラフルオロエチレンと他のフッ素樹脂との混合物をバインダの主成分として用いることができる。
このような正極板と非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池では、上記のようにマンガンイオンの溶出が抑制されるため、放電特性を長期間維持できる。その上、電解質やバインダと難燃化剤との副反応が抑制されるため、電池の難燃性を長期間維持することができる。その結果、本発明によれば、リチウムイオン電池の寿命を長くしながら、リチウムイオン電池の長寿命化に合わせてリチウムイオン電池の安全性を長期間持続させることができる。
難燃化剤としてホスファゼン系化合物を用いる場合は、非水電解液に対するホスファゼン系化合物の添加量を5〜20重量%に調整するのが好ましい。ホスファゼン系化合物の添加量を5〜20重量%の範囲に調整すると、非水電解液の導電性の低下を小さくしながら、十分な難燃性を発揮することができる。なお、ホスファゼン系化合物の添加量が5重量%未満の場合は、難燃性が全く得られない訳ではないものの、十分な難燃性が得られなくなる可能性がある。一方、ホスファゼン系化合物の添加量が20重量%を超える場合は、ある程度の導電性は得られるものの、導電性が低下する傾向がある。
難燃化剤としてホスファゼン系化合物を用いる場合は、さらにバインダに対するテトラフルオロエチレンの含有量を10〜50重量%に調整するのが好ましい。バインダに含まれるテトラフルオロエチレンの含有量を10〜50重量%の範囲に調整することによって、放電特性を長期間維持しながら難燃性も長期間維持するという上述の効果を確実に得ることができる。なお、テトラフルオロエチレンの含有量が10重量%に満たない範囲では、難燃性を長期間維持する効果はある程度は得られるものの十分には得られない。また、テトラフルオロエチレンの含有量が50重量%を超える範囲では、難燃性を長期間維持する効果は頭打ちとなる。さらに、テトラフルオロエチレンの含有量が50重量%を超える範囲では、テトラフルオロエチレンが水や有機溶媒に溶けにくくなるため、テトラフルオロエチレンをバインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成することができなくなるおそれがある。
また、難燃化剤として亜リン酸エステル系化合物を用いる場合は、非水電解液に対する亜リン酸エステル系化合物の添加量を2〜15重量%に調整するのが好ましい。亜リン酸エステル系化合物の添加量を2〜15重量%の範囲に調整すると、非水電解液の導電性の低下を小さくしながら、十分な難燃性を発揮することができる。なお、亜リン酸エステル系化合物の添加量が2重量%未満の場合は、難燃性が全く得られない訳ではないが十分な難燃性を得ることができない。一方、亜リン酸エステル系化合物の添加量が15重量%を超える場合は、ある程度の導電性は得られるものの、非水電解液の導電性の低下する傾向がある。
難燃化剤として亜リン酸エステル系化合物を用いる場合は、さらにバインダに対するテトラフルオロエチレンの含有量を15〜50重量%に調整するのが好ましい。バインダに含まれるテトラフルオロエチレンの含有量を15〜50重量%の範囲に調整することによって、放電特性を長期間維持しながら難燃性も長期化維持するという上述の効果を確実に得ることができる。なお、テトラフルオロエチレンの含有量が15重量%に満たない範囲では、難燃性を長期間維持する効果は多少得られるものの十分には得られない。また、テトラフルオロエチレンの含有量が50重量%を超える範囲では、難燃性を長期間維持する効果は頭打ちとなる。さらに、テトラフルオロエチレンの含有量が50重量%を超えると、テトラフルオロエチレンが水や有機溶媒に溶けにくくなるため、テトラフルオロエチレンをバインダとして用いた塗料を調整したときに、効率良く塗膜を形成することができなくなるおそれがある。
バインダの主成分を構成するフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレンのみに限らず、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン以外のフッ素樹脂(例えばビニリデンフルオライド等)との混合物、またはテトラフルオロエチレン以外のフッ素樹脂(例えばビニリデンフルオライド)のみを用いることもできる。この場合は、難燃化剤としてホスファゼン系化合物を用いる条件の下では、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比を1.2〜3の範囲に調整すればよい。バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比を1.2〜3の範囲に調整することにより、バインダの主成分を構成するフッ素樹脂として、テトラフルオロエチレンのみに限らず、テトラフルオロエチレン以外のフッ素樹脂を用いた場合でも、放電特性に合わせて難燃性を長期間維持する効果を確実に得ることができる。なお、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が1.2未満の場合は、難燃性を長期間維持する効果が十分に得られない。また、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が3を超える場合は、難燃性を長期間維持する効果は頭打ちの傾向になる。さらに、C−F/C−H結合比が3を超えると、バインダが水や有機溶媒に溶け難くなるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成することができない。
また、難燃化剤として亜リン酸エステル系化合物を用いる条件の下では、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比を1.4〜3の範囲に調整すればよい。バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比を1.4〜3の範囲に調整することにより、バインダの主成分を構成するフッ素樹脂として、テトラフルオロエチレンのみに限らず、テトラフルオロエチレン以外のフッ素樹脂を用いた場合でも、放電特性に合わせて難燃性を長期間維持する効果を確実に得ることができる。なお、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が1.4未満の場合は、難燃性を長期間維持する効果が十分に得られない。また、バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が3を超える場合は、難燃性を長期間維持する効果は頭打ちの傾向になる。さらに、難燃化剤として亜リン酸エステル系化合物を用いる条件下でも、C−F/C−H結合比が3を超えると、バインダが水や有機溶媒に溶け難くなるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成することができない。
バインダの主成分を構成するフッ素樹脂として、テトラフルオロエチレンに加えさらにビニリデンフルオライドが含有された混合物(例えば、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体)を用いる場合は、難燃化剤としてホスファゼン系化合物を用いる条件の下では、バインダに対してテトラフルオロエチレンを10〜50重量%含有し、残部がビニリデンフルオライドとなるように調整すればよい。また、難燃化剤として亜リン酸エステル系化合物を用いる条件の下では、バインダに対してテトラフルオロエチレンを15〜50重量%含有し、残部がビニリデンフルオライドとなるように調整すればよい。
本発明を適用した実施形態の円筒型リチウムイオン二次電池を示す断面図である。 テトラフルオロエチレン(TEF)の割合(C−F/C−H結合比)に対する、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)の試験開始から分解し始めるまでの月数(及び推定年数)を示す表である。 実施例1の円筒型リチウムイオン二次電池において、正極バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合に対する、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始める月数をプロットしたグラフである。 実施例1の円筒型リチウムイオン二次電池において、正極バインダ中のC− F/C−H結合比に対する、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始める月数をプロットしたグラフである。 テトラフルオロエチレン(TEF)の割合(C−F/C−H結合比)に対する、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)の試験開始から分解し始めるまでの月数(及び推定年数)を示す表である。 実施例2の円筒型リチウムイオン二次電池について、正極バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合に対する、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始める月数をプロットしたグラフである。 実施例2の円筒型リチウムイオン二次電池において、正極バインダ中のC−F/C−H結合比に対して、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始める月数をプロットしたグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態であるリチウムイオン二次電池(円筒型リチウムイオン電池)を示す図である。
円筒型リチウムイオン電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で、外径40mm、内径39mmの寸法を備える有底円筒状の電池容器3内に、ポリプロピレン製で中空円筒状の軸心5に対して帯状の正極板7と負極板9とがセパレータ11を介して断面渦巻状に捲回された電極群15が収納された構成を有する。
電極群15の上端部側には、正極板7からの電流を集電するためのアルミニウム製の正極集電リング17が配置されている。正極集電リング17は、軸芯5の上端部5aの内周面に固定されている。正極集電リング17の鍔部17aには、正極板7から導出された正極リード片19の端部が超音波溶接で接合されている。正極集電リング17の上方には、図示しない安全弁を備え、正極外部端子となる円盤状の電池蓋21が配置されている。電池蓋21は、絶縁性で耐熱性の合成樹脂製ガスケット22を介して電池容器3の上部にカシメ固定されている。このため、円筒型リチウムイオン電池1内は、電極群15に後述する非水電解液が含浸された状態で密閉されている。正極集電リング17と電池蓋21の下面とは、正極リード板23を介して接合されている。正極リード板23は、電池容器3内に折りたたんで収容されている。
一方、電極群15の下端部側には、負極板9からの電流を集電するための銅製の負極集電リング25が配置されている。負極集電リング25の内周面には、軸心5の下端部5bの外周面が固定されている。負極集電リング25の鍔部25aには、負極板9から導出された負極リード片27の端部が超音波溶接で接合されている。負極集電リング25の下部には、電気的導通のための銅製の負極リード板29が溶接されている。負極リード板29は、電池容器3の底部3bに溶接で接合されている。
このように構成された円筒型リチウムイオン電池1には、所定電圧および電流で充電することによって、二次電池としての機能が付与される。
(非水電解液)
電池容器3内には、図示しない非水電解液が注液されている。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)が体積比2:3で混合された混合溶媒が用いられている。なお、非水電解液の有機溶媒は、上述の混合溶媒に制限されるものではない。本実施の形態以外の形態で用いることのできる有機溶媒としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等のいずれか1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒の配合比も、特に限定されるものではない。
上記の混合溶媒には、電解質としてリチウム塩(四フッ化ホウ酸リチウム)が、0.6〜1.8mol/L(0.6〜1.8M)になるように添加されている。リチウムマンガン複酸化物等のマンガン系正極活物質には、正極合剤層からマンガンイオンが溶出するという問題がある。さらに、マンガン系正極活物質とホスファゼン系難燃化剤とを併用すると、マンガンイオンの溶出がさらに増加するという問題がある。また、マンガンイオンが溶出し、負極側に析出すると、電解液の分解を加速し電池特性が劣化するという問題もある。しかしながら、本実施形態のリチウムイオン電池では、非水電解液の電解質として四フッ化ホウ酸リチウムを用いるため、マンガンが比較的溶出し難くなっている。したがって、放電容量や出力を維持することができ、結果的に長寿命化を図ることができる。なお、四フッ化ホウ酸リチウムの添加量が少なすぎる場合は、非水電解液の電気伝導度が低下するので、電池の容量や出力が低下するおそれがある。反対に四フッ化ホウ酸リチウムの添加量が過剰な場合は、粘度が向上するため、電池特性が低下するおそれがある。したがって、非水電解液には、できる限り少ない量(0.6〜1.8M)の四フッ化ホウ酸リチウムが添加されている。
本実施の形態の一態様では、この非水電解液に、難燃化剤としてリンおよび窒素を主体とするホスファゼン誘導体、すなわち、ホスファゼン系化合物が、非水電解液に対して5〜20重量%添加されている。ホスファゼン誘導体(ホスファゼン系化合物)は、一般式(NPRまたは(NPRで表される環状化合物である。一般式中のRは、フッ素や塩素等のハロゲン元素または一価の置換基を示している。一価の置換基としては、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基やメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基、メチル基やエチル基等のアルキル基、フェニル基やトリル基等のアリール基、メチルアミノ基等の置換型アミノ基を含むアミノ基、メチルチオ基やエチルチオ基等のアルキルチオ基、および、フェニルチオ基等のアリールチオ基を挙げることができる。ホスファゼン系化合物は、電池異常時の高温環境下において非水電解液中で難燃作用(自己消火機能)を発揮する。
また、本実施の形態の他の一態様では、難燃化剤として、ホスファゼン系化合物の代わりに、亜リン酸エステル系化合物が、非水電解液に対して2〜15重量%添加されている。亜リン酸エステルは、一般式P(OR)で表される化合物である。一般式Rは、メチル基、エチル基等を示している。亜リン酸エステル系化合物も、電池異常時の高温環境下において非水電解液中で難燃作用(自己消火機能)を発揮する。
難燃化剤の例としては、ホスファゼン系化合物および亜リン酸エステル系化合物以外の難燃化剤(例えばリン酸エステル)を用いてもよい。すなわち、電解質に四フッ化ホウ酸リチウムを用い、正極のバインダに少なくともテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドを含む共重合体を用いることにより、難燃化剤の寿命を向上させるものであれば、難燃化剤をホスファゼン系化合物および亜リン酸エステル系化合物に限定する必要ない。
なお、難燃化剤の添加量が多すぎると、容量や出力等の電池特性を低下させるおそれがある。言い換えると、ホスファゼン系難燃化剤の添加量が多くなると、難燃化の点では有利となるが、電池性能の点では不利となる場合がある。そのため、非水電解液に対して、難燃性の効果を発揮できる範囲で、できる限り少ない量の難燃化剤を添加するのが好ましい。
(電極群)
電極群15は、正極板7と負極板9とが直接接触しないように、厚さ30μmでリチウムイオンが通過可能なポリエチレン製のセパレータ11を用いて、軸芯5の周囲に捲回されている。電極群15の巻数は、電極群15の最大径が電池容器3の内径より僅かに小さくなるように調整されている。正極リード片19と負極リード片27とは、それぞれ電極群15を介して上下に対向するように配置されている。電極群15の直径は、正極板7、負極板9、セパレータ11の長さを調整することによって、38±0.5mmに設定されている。電極群15には、電極群15と電池容器3との電気的接触を防止するために、絶縁被覆が施されている。絶縁被覆には、ポリイミド製の基材の片面にヘキサメタアクリレートの粘着剤が塗布された粘着テープが用いられている。粘着テープは、正極集電リング17の鍔部17aの周囲から電極群15の外周面に亘って一重以上に捲回されている。
(正極板)
電極群15を構成する正極板7は、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体29を備えている。正極集電体31の両面には、正極合剤層33が積層されている。正極合剤層33は、正極活物質としてスピネル結晶構造を有したマンガン酸リチウム(LiMn)粉末、または、その結晶中のマンガンサイト(Mnサイト)の一部が、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)のうち少なくとも1種類以上で置換されたスピネル系リチウムマンガン複酸化物(LiMn2−XMn、MnはAl、Mg、Li、Co、Niから選ばれる1種類以上の遷移金属)の粉末を含む正極合剤が、実質的に均等かつ均質に正極集電体31に塗着されて構成されている。すなわち、正極合剤層33の厚さがほぼ一定であり、かつ、正極合剤層33内では正極合剤がほぼ均一に分散されている。正極合剤には、例えば、正極活物質100重量%に対して、導電剤として鱗片状黒鉛8重量%と、バインダ5重量%とが配合されている。なお、導電剤には、非水電解液電池に通常使用される別の導電剤を用いても良い。正極集電体31に正極合剤を塗着するときは、分散溶媒のN−メチル−ピロリドン(以下NMPと略記する)が用いられる。正極集電体31の幅方向(図1の上下方向)の一方の端部は、幅30mmの未塗着部(正極合剤の塗着されない部分)を構成する。この未塗着部は櫛状に切り欠かれており、この切り欠き残部が正極リード片19を構成する。本例では、隣り合う正極リード片19の間隔が20mm、正極リード片19の幅が5mmに設定されている。正極板7は、乾燥後プレス加工され、幅80mmに裁断される。
(正極バインダ)
正極合剤の中のバインダが少なすぎると、正極合剤層の剥離が起こり易くなり、電池の容量あるいは出力の劣化を招くおそれがある。また、正極合剤中のバインダが多すぎると、エネルギー密度の低下あるいは抵抗の増加による出力の低下を招く。そのため、正極合剤中のバインダは、通常は3重量%〜10重量%程度が好適である。本例では、正極合剤に対して5重量%の正極のバインダが配合されている。
上述の正極合剤のバインダには、少なくともテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドを含む共重合体からなるフッ素樹脂が含まれている。テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの割合、例えば、正極バインダ100重量%に対してテトラフルオロエチレンが30重量%、ビニリデンフルオライドが70重量%に調整されている。本例で用いるテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドの共重合体は、化学的、電気化学的に安定性が高いため、長時間電池を充電状態で保存したり、充放電を繰り返したりしても、難燃化剤に影響を与え難い。したがって、このようなフッ素樹脂を用いると、電池の安全性を長期間保つことができる。なお、テトラフルオロエチレンの割合が多いほど、バインダの電気化学的な安定性は高くなる傾向がある。
(負極板)
負極板9は、厚さ10μmの圧延銅箔からなる負極集電体35を備えている。負極集電体35の両面には、負極合剤層37が積層されている。負極合剤層37は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵、放出可能な炭素粉末を含む負極合剤が、実質的に均等かつ均質に負極集電体35に塗着されて構成されている。すなわち、負極合剤層37の厚さがほぼ一様であり、かつ、負極合剤層37内では負極合剤がほぼ均一に分散されている。負極活物質には、非晶質炭素粉末もしくは黒鉛、またはその混合物が用いられている。なお、負極活物質の種類、形状、結晶構造等について特に制限されるものではない。負極合剤には、例えば、炭素粉末90重量%に対して、バインダとしてPVDF10重量%が配合されている。負極集電体35の幅方向(図1の上下方向)に沿う一方の端部は、正極板と同様に幅30mmの未塗着部(負極合剤が塗着されない部分)を構成し、この未塗着部の切り欠き残部が負極リード片27を構成する。本例では、隣り合う負極リード片27の間隔が20mm、負極リード片27の幅が5mmに設定されている。負極板9は、乾燥後プレス加工され、幅86mmに裁断される。なお、負極板9の長さは、正極板7および負極板9を捲回したときに、捲回最内周および最外周で捲回方向に正極板7が負極板9からはみ出すことがないように、正極板7の長さより120mm長く設定されている。また、負極合剤層37(負極合剤塗布部)の幅は、捲回方向と垂直方向において正極合剤層33(正極合剤塗布部)が負極合剤層37(負極合剤塗布部)からはみ出すことがないように、正極合剤層33(正極合剤塗布部)の幅より6mm長く設定されている。
上述の実施形態に従い作製したリチウムイオン二次電池1の実施例について説明する。[実施例1]
実施例1では、正極活物質にスピネル系LiMn、負極活物質に黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池を作製した。実施例1では、難燃化剤(ホスファゼン化合物)として2フェノキシ−2、4、6、6フルオロシクロホスファゼンを、非水電解液100重量%に対して10重量%添加した非水電解液を用いた。電解質には四フッ化ホウ酸リチウムを用い、濃度は1.0Mとした。バインダには、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体を用いた。共重合体のテトラフルオロエチレンの割合を0、10、12、15、20、26、30、40、および50重量%とした。
[実施例2]
実施例2では、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)として亜リン酸トリメチルを、非水電解液に対して10重量%添加した非水電解液を用いた。電解質(四フッ化ホウ酸リチウム)の濃度は1.6Mとした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、リチウムイオン二次電池を作製した。バインダには、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体を用いた。
上記の実施形態に従って作製したリチウムイオン二次電池1の比較例について説明する。
[比較例1]
比較例1では、電解質として6フッ化リン酸リチウムを用い、濃度は1.0Mとした。バインダとして用いたテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体中のテトラフルオロエチレンの割合を50重量%のみとした。それ以外は、実施例1と同じ条件で、リチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例2]
比較例2では、電解質として6フッ化リン酸リチウムを用い、濃度は1.0Mとした。バインダにはビニリデンフルオライドのみから合成した重合体を用いた。それ以外は、実施例1と同じ条件でリチウムイオン二次電池を作製した。
(試験)
作製したリチウムイオン二次電池について、初充電、1週間のエージング期間の後、容量を確認した。その後、満充電状態とし、80℃の恒温槽で保存した。一定時間保存後に電池を解体し、非水電解液中の難燃化剤の分解の有無を測定した。測定にはNMR(ブルカーバイオスピン社製、AV400M)を用いた。測定核種は31P(基本周波数:161.97MHz)とした。得られたNMRのチャートから難燃化剤の分解の有無を解析した。また、複数の電池を作製しておき、保存期間を変えて測定を行い、難燃化剤が分解し始めるまでの月数を確認した。
実施例1のホスファゼン系化合物(2フェノキシ‐2、4、6、6フルオロシクロホスファゼン)の試験結果を、図2及び図3に示す。図2及び図3から、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が0重量%の場合は、80℃では3ヶ月弱で分解が始まっていることが分かる。なお、化学反応の速度が10℃で2倍に加速されると仮定すると、25℃では136ヶ月、すなわち約11年で分解を始めると推定される。
一方、図2及び図3から、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が増加するに従って、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなっていることが分かる。具体的には、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が10重量%の場合は、80℃では約4.5ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(上記と同様に仮定すると、25℃では約17年で分解を始めると推定される)。また、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が30重量%の場合は、80℃では約7ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(上記と同様に仮定すると、25℃では約27年で分解を始めると推定される)。さらに、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が50重量%の場合は、80℃では約8.5ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(25℃では約32年で分解を始めると推定される)。なお、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が50重量%を超える場合は、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が試験開始から分解し始めるまでの時間が遅くなる度合いは、図3を見る限り、頭打ちとなることが推測される。さらに、テトラフルオロエチレンの割合が50重量%を超えると、テトラフルオロエチレンが水や有機溶媒に溶け難くなるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成することができない。
なお、実施例1について、高率放電容量の数値は特に示していないが、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めたときの高率放電容量は、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合に関係なく、試験開始直後の高率放電容量とほぼ同一であり、放電特性は維持されていた。
このように、難燃化剤としてホスファゼン系化合物を使用した場合では、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が10重量%を超えると、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が室温で17年間分解しないことが推定されるため好ましい。しかしながら、テトラフルオロエチレンの割合が50重量%を超えると、上述のように難燃化剤(ホスファゼン系化合物)の分解開始を遅くする効果は頭打ちとなり、しかも効率良く塗膜を形成することができない。したがって、テトラフルオロエチレンの割合は10重量%〜50重量%に調整するのが好ましい。また、四フッ化ホウ酸リチウムは熱安定性や耐加水分解性が比較的高いため、本例のように、電解質として四フッ化ホウ酸リチウムを用いることにより、副反応による難燃化剤の分解が相乗的に抑制されたものと考えられる。
図4は、図3のグラフについて、横軸をC−F/C−H結合比に換算して示したグラフである。図4から、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.0の場合は、80℃では約3ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)の分解が開始していることが分かる。化学反応の速度が10℃で2倍に加速されると仮定すると、25℃では約11年で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)の分解が始まると推定される。
一方、図4から、バインダ中のC−F/C−H結合比が増加するに従って、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなっていることが分かる。具体的には、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.2の場合は、80℃では約4.5ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(25℃では、17年で分解を始めると推定される)。また、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.9の場合は、80℃では約7ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(25℃では、約27年で分解を始めると推定される)。さらに、バインダ中のC−F/C−H結合比が3.0の場合には、80℃では約8.5ヶ月で難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めている(25℃では、約32年で分解を始めると推定される)。バインダ中のC−F/C−H結合比が大きい領域(3.0を超える領域)では、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなる度合いは、図3を見る限り、頭打ちとなることが推測される。さらに、C−F/C−H結合比が3.0を超えると、バインダが水や有機溶媒に溶け難くなるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成できない。
テトラフルオロエチレンの化学的、電気化学的安定性の基礎は、C−F結合にあると考えられる。したがって、C−F結合のC−H結合に対する比が大きいほどバインダの電気化学な安定性は高い。C−F/C−H結合比が1.2を超えると、ホスファゼン系難燃化剤が室温で17年間分解しないことが推定されるため好ましい。しかしながら、C−F/C−H結合比が3.0を超えると、上述のように難燃化剤(ホスファゼン系化合物)の分解開始を遅くする効果は頭打ちとなり、しかも効率良く塗膜を形成できなくなる。したがって、C−F/C−H結合比は、1.2〜3までの範囲に調整するのが好ましい。
実施例2の亜リン酸エステル系化合物(亜リン酸メチル)の試験結果を、図5及び図6に示す。図5及び図6から、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が0重量%の場合は、80℃では2.3ヶ月で分解が開始していることが分かる。化学反応の速度が10℃で2倍に加速されると仮定すると、25℃では約9年で分解を始めると推定される。また、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が12重量%の場合は、80℃では約 4.1ヶ月で分解が開始していることが分かる(25℃では約15年で分解を始めると推定される)。
一方、図5及び図6から、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が増加するに従って、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなっていることが分かる。具体的には、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が15重量%の場合は、80℃では約4.5ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では約17年で分解を始めると推定される)。また、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が30重量%の場合は、80℃では約5.9ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では約22年で分解を始めると推定される)。バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が50重量%の場合は、80℃では約7.1ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では約27年で分解を始めると推定される)。なお、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合が50重量%を超える場合は、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなる度合いは、図6を見る限り、頭打ちとなることが推測される。さらに、テトラフルオロエチレンの割合が50重量%を超えると、水や有機溶媒に不溶であるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成できない。
なお、実施例2についても、高率放電容量の数値は特に示していないが、バインダ中のテトラフルオロエチレンの割合に関係なく、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が分解し始めたときの高率放電容量は、試験開始直後の高率放電容量とほぼ同一であり、放電特性は維持されていた。
図7は、図6のグラフについて、横軸をC−F/C−H結合比に換算して示したグラフである。図7から、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.0の場合は、80℃では約2.3ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)の分解が開始していることが分かる。化学反応の速度が10℃で2倍に加速されると仮定すると、25℃では9年で分解を始めると推定される。また、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.2の場合は、80℃では約3.8ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)の分解が開始していることが分かる(25℃では、約14年で分解を始めると推定される)。
一方、図7から、バインダ中のC−F/C−H結合比が増加するに従って、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなっていることが分かる。具体的には、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.4の場合には80℃では約4.4ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では約17年で分解を始めると推定される)。また、バインダ中のC−F/C−H結合比が1.9の場合には80℃では約6ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では、約22年で分解を始めると推定される)。さらに、バインダ中のC−F/C−H結合比が3.0の場合には、80℃では約7.1ヶ月で難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めている(25℃では、約27年で分解を始めると推定される)。バインダ中のC−F/C−H結合比が大きい領域(3.0を超える領域)では、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が分解し始めるまでの時間が遅くなる度合いは、図7を見る限り、頭打ちとなることが推測される。さらに、C−F/C−H結合比が3.0を超えると、バインダが水や有機溶媒に溶け難くなるため、バインダとして用いた塗料を調整したときに効率良く塗膜を形成できない。
上述のように、C−F結合のC−H結合に対する比が大きいほどバインダの電気化学な安定性は高い。C−F/C−H結合比が1.4を超えると、難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)が室温で17年間分解しないことが推定されるため好ましい。しかしながら、C−F/C−H結合比が3.0を超えると、上述のように難燃化剤(亜リン酸エステル系化合物)の分解開始を遅くする効果は頭打ちとなり、また効率良く塗膜を形成できない。したがって、C−F/C−H結合比が1.4〜3.0の範囲になるようにバインダを調整するのが好ましい。
比較例1および比較例2では、電解質は6フッ化リン酸リチウムとしている。比較例1および比較例2ともに、難燃化剤(ホスファゼン系化合物)が、80℃では1ヶ月で分解しており、25℃では約4年で分解することを示している。これは、電解質として用いた6フッ化リン酸リチウムが、高温で分解し易く、比較的加水分解し易いため、副反応を起こしやすいことに起因していると考えられる。これに対して、本例で電解質として用いた四フッ化ホウ酸リチウムは、熱安定性や耐加水分解性が比較的高いため、副反応による難燃化剤の分解が相乗的に抑制されたものと考えられる。したがって、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2は、バインダ(フッ素樹脂)と電解質(リチウム塩)とが相乗的に機能することにより、放電特性を長期間維持しながら難燃化剤(ホスファゼン系化合物または亜リン酸エステル系化合物)の分解開始を遅くする効果(すなわち、電池の長寿命化と電池の長期安定性とを同ときに達成する効果)を発揮していることを示している。
なお、太陽光や風力等のような自然エネルギーと組み合わせたリチウムイオン電池の寿命は、17年から20年以上が目標となる。また、寿命末期まで安全性が保証されることも重要である。したがって、寿命末期まで難燃化剤が分解しないことが目標となる。バインダに少なくともテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドを含む共重合体を用い、電解質に四フッ化ホウ酸リチウムを用いることにより、難燃化剤の寿命が17年以上になるものと推定される。
以上、本発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく変更が可能であるのは勿論である。特に、本実施形態では、円筒形リチウムイオン二次電池20を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非水電解液を使用する電池一般に適用することができる。また、電池の形状についても特に制限はなく、円筒形以外に、例えば、角形等としてもよい。また、本実施の形態では、正極板、負極板を捲回した電極群(電極群15)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、矩形状の正極板、負極板を積層した電極群としてもよい。さらに、本発明の適用可能な電池としては、上述した電池容器3に電池蓋21がカシメ固定されて封口されている構造以外の構造の電池であっても構わない。このような構造の一例として正負極外部端子が電池蓋を貫通し電池容器内で軸芯を介して押し合っている構造を挙げることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、スピネル系リチウムマンガン複酸化物を主成分とする正極活物質が、少なくともテトラフルオロエチレンが含有されたフッ素樹脂を主成分とするバインダを用いて正極集電体に保持されてなる正極板と、電解質として四フッ化ホウ酸リチウムを含有しかつ難燃化剤としてホスファゼン系化合物または亜リン酸エステル系化合物のいずれか1種またはこれらの混合物が添加された非水電解液とを備えているため、放電特性を長期間維持できる上に、電池の難燃性を長期間維持することができる。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池は、電池の寿命末期まで安全性を保証することができるため、リチウムイオン二次電池としての利用価値が高い。
1 円筒型リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)
7 正極板
31 正極集電体

Claims (13)

  1. スピネル系リチウムマンガン複酸化物を主成分とする正極活物質が、フッ素樹脂を主成分とするバインダを用いて正極集電体に保持されてなる正極板と、
    電解質としてリチウム塩を含有しかつ難燃化剤が添加された非水電解液とを備えるリチウムイオン電池であって、
    前記難燃化剤は、ホスファゼン系化合物または亜リン酸エステル系化合物のいずれか1種またはこれらの混合物であり、
    前記非水電解液の前記電解質を構成するリチウム塩は、四フッ化ホウ酸リチウムであり、
    前記フッ素樹脂には、少なくともテトラフルオロエチレンが含有されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
  2. 前記難燃化剤がホスファゼン系化合物であり、
    前記非水電解液に対する前記ホスファゼン系化合物の添加量が5〜20重量%である請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  3. 前記バインダに対する前記テトラフルオロエチレンの含有量が10〜50重量%である請求項2に記載のリチウムイオン電池。
  4. 前記バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が1.2〜3の範囲にある請求項2に記載のリチウムイオン電池。
  5. 前記フッ素樹脂には、さらにビニリデンフルオライドが含有されている請求項2または4に記載のリチウムイオン電池。
  6. 前記フッ素樹脂には、前記バインダに対して10〜50重量%のテトラフルオロエチレンが含有され、残部としてビニリデンフルオライドが含有されている請求項2または4に記載のリチウムイオン電池。
  7. 前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体である請求項2または4に記載のリチウムイオン電池。
  8. 前記非水電解液に対する前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が2〜15重量%である請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  9. 前記バインダに対する前記テトラフルオロエチレンの含有量が15〜50重量%である請求項8に記載のリチウムイオン電池。
  10. 前記バインダ中のC−F結合のC−H結合に対する結合比が1.4〜3の範囲にある請求項8に記載のリチウムイオン電池。
  11. 前記フッ素樹脂には、さらにビニリデンフルオライドが含有されている請求項8または10に記載のリチウムイオン電池。
  12. 前記フッ素樹脂は、前記バインダに対して15〜50重量%のテトラフルオロエチレンと、残部としてビニリデンフルオライドが含有されている請求項8または10に記載のリチウムイオン電池。
  13. 前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとの共重合体である請求項8または10に記載のリチウムイオン電池。
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