JP2014192150A - アルカリ金属イオン二次電池用負極材料、アルカリ金属イオン二次電池用負極活物質、アルカリ金属イオン二次電池用負極およびアルカリ金属イオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非晶質炭素を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極材料であって、負極として前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料、前記負極の対極として金属リチウム、電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1.0mol/dm3の割合でLiPF6を加えた溶液を用いて作製したハーフセルを所定のハーフセル充電条件にて充電した後に、前記ハーフセルより回収した前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の7Li核−固体NMR分析における主共鳴ピークの半値幅が0.4kHz以上2.0kHz以下であり、かつ、塩化リチウムの共鳴線に対して低磁場側に10ppm以上35ppm以下シフトして観測されることを特徴とする非晶質炭素を用いる。
【選択図】なし
Description
しかし、黒鉛質材料はリチウムのドープ・脱ドープにより結晶子の層間が伸縮するため、結晶子に歪みが生じやすい。そのため、黒鉛質材料は充放電の繰り返しによる結晶構造の破壊が起こりやすく、黒鉛質材料を負極材料に用いたリチウムイオン二次電池は充放電サイクル特性に劣るとされている。
換媒体として測定した密度(ρH )の比(ρH /ρB )が1.15以上であることを
特徴とする二次電池電極用炭素質材料が記載されている。
このような炭素質材料は結晶子の層間が黒鉛質材料に比べて大きく、充放電の繰り返しによる結晶構造の破壊が黒鉛質材料に比べて起こり難いため、充放電サイクル特性に優れるとされている(特許文献1、2参照)。
非晶質炭素を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極材料であって、
負極として前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料、
前記負極の対極として金属リチウム、
電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1.0mol/dm3の割合でLiPF6を加えた溶液
を用いて作製したハーフセルを下記<ハーフセル充電条件>にて充電した後に、前記ハーフセルより回収した前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の7Li核−固体NMR
分析における主共鳴ピークの半値幅が0.4kHz以上2.0kHz以下であり、
かつ、塩化リチウムの共鳴線に対して低磁場側に10ppm以上35ppm以下シフトして観測されることを特徴とするアルカリ金属イオン二次電池用負極材料が提供される。
<ハーフセル充電条件>
温度:25℃
充電電流:25mA/g
充電終止電圧:0V
充電方法:定電流法
以下、第一発明に係る実施形態について説明する。
<負極材料>
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、
非晶質炭素を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極材料であって、
負極として前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料、
前記負極の対極として金属リチウム、
電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1.0mol/dm3の割合でLiPF6を加えた溶液
を用いて作製したハーフセルを下記<ハーフセル充電条件>にて充電した後に、前記ハーフセルより回収した前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の7Li核−固体NMR
分析における主共鳴ピークの半値幅が0.4kHz以上2.0kHz以下であり、かつ、塩化リチウムの共鳴線に対して低磁場側に10ppm以上35ppm以下シフトして観察されることを特徴とする。
<ハーフセル充電条件>
温度:25℃
充電電流:25mA/g
充電終止電圧:0V
充電方法:定電流法
前記7Li核−固体NMR分析における主共鳴ピークの半値幅は、0.5kHz以上1.
9kHz以下であることが好ましく、0.6kHz以上1.8kHz以下であることがより好ましい。これにより、さらに不可逆容量を抑制しつつ、且つサイクル特性を向上させることができる。
また、前記7Li核−固体NMR分析における主共鳴ピークは、塩化リチウムの共鳴線に
対して低磁場側に、14ppm以上31ppm以下シフトして観測されることが好ましく、17ppm以上28ppm以下シフトして観測されることがより好ましい。これにより、さらに保存特性を向上することができる。
所定量の本発明のアルカリ金属イオン二次電池用負極材料とカルボキシメチルセルロースとを混合し、ミキサーで撹拌し、スラリーを得、次に、当該スラリーを集電体である銅箔上に塗布し、60℃で2時間予備乾燥を行い、次に、120℃で15時間真空乾燥し、その後、所定の大きさに切り出すことにより、前記負極を製造する。
セパレーターとしては、ポリオレフィンの多孔質膜等を用いることができる。このような多孔質膜としては、セルガード2400(セルガード社製)を用いることができる。さらに、電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1.0mol/dm3の割合でLiPF6を加えた溶液を用いる。
20℃〜30℃)で分析することができる。
まず固体NMR法とは、固体状態にある分子や原子のNMR信号を検出し、固体材料の化学構造や分子のインフォメーション、また分子運動性を調べる方法である。アルカリ金属イオン二次電池用負極材中の炭素に取り込まれた7Liの固体NMRを測定した場合、リ
チウムが存在している状態によりピークのシフト位置やサテライトピークの形が異なり、炭素の種類や炭素内部の微細構造を知ることができる。
一般に難黒鉛化炭素材のような非晶質構造をもつ炭素材では、ドープされるLi量に伴ってピーク位置がより低磁場側にシフトし、一般には120ppm付近までにピークを持つ幅広いスペクトルを示す。この際、満充電におけるピーク位置がより低磁場側にシフトする炭素材ほど、炭素材内部におけるLiがより金属状態に近い状態、すなわち、より大きい空孔に存在しているということができる。一方、充電状態における半値幅は炭素内部にドープされているLiが取りうる構造形態の分布を示唆している。
分析における、主共鳴ピークの半値幅を上記範囲内とすることで、炭素内部にドープされているLiの構造形態の分布を制限し、不可逆容量を抑制しつつ、且つサイクル特性を向上させることができる。また、塩化リチウムの共鳴線に対する低磁場側へのシフトを上記範囲内とすることで、適度な大きさの空孔へのドープを可能とし、保存特性を向上することができる。
本実施形態のアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折法により求められる(002)面の平均層面間隔d002(以下、「d002」とも呼ぶ。)が好ましくは0.340nmであり、より好ましくは0.350nm以上で
あり、さらに好ましくは0.365nm以上である。d002が上記下限値以上であると、アルカリ金属のドープ・脱ドープの繰り返しによる結晶構造の破壊が抑制されるため、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の充放電サイクル特性を向上させることができる。
平均層面間隔d002の上限は特に限定されないが、0.400nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.395nm以下であり、特に好ましくは0.390nm以下である。d002が上記上限値以下であると、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の不可逆容量を抑制することができる。
ab」を用いて、例えば、管電圧:45kV、管電流:200mA、2θ/θスキャン法でスキャン速度が毎分2°、ステップ角が0.01°の条件で測定することができる。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が1.0m2/g以上15m2/g以下であり、3.0m2/g以上8.0m2/g以下であることが好ましい。
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が上記上限値以下であることにより、負極材料と電解液との不可逆的な反応をより一層抑制することができる。
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が上記下限値以上であることにより、電解液のアルカリ金属イオン二次電池用負極材料への適切な浸透性を得ることができる。
下記(1)式より単分子吸着量Wmを算出し、下記(2)式より総表面積Stotalを算出し、下記(3)式より比表面積Sを求める。
1/[W・{(Po/P)−1}]={(C−1)/(Wm・C)}(P/Po)(1/(Wm・C) (1)
上記式(2)中、N:アボガドロ数、M:分子量、Acs:吸着断面積
式(3)中、w:サンプル重量(g)
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、X線回折法により求めたc軸方向の結晶子の大きさ(以下「Lc(002)」と略記することがある。)が、好ましくは5.0nm以下であり、より好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。これにより、不可逆容量を抑制しつつ、且つサイクル特性を向上させることができる。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は体積基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)が、1.0μm以上50μm以下であることが好ましく、2.0μm以上30μm以下であることがより好ましい。これにより、高密度の負極を作製することができる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、炭酸ガスの吸着量が好ましくは10ml/g未満であり、より好ましくは8.0ml/g以下であり、さらに好ましくは6.0ml/g以下である。炭酸ガスの吸着量が上記上限値以下であると、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の保存特性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、炭酸ガスの吸着量が好ましくは0.05ml/g以上であり、より好ましくは0.10ml/g以上である。炭酸ガスの吸着量が上記下限値以上であると、アルカリ金属の充電容量をより一層向上させることができる。
なお、炭酸ガスの吸着量の測定は、真空乾燥機を用いて、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を130℃で3時間以上真空乾燥を行ったものを測定試料とし、Micromeritics Instrument Corporation社製ASAP−2000Mを使用して行うことができる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、ハロゲン含有量が好ましくは50ppm未満であり、より好ましくは30ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。ハロゲン含有量が上記上限値未満または以下であると、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の保存特性を向上させることができる。ハロゲン含有量は、炭素化処理に際して用いる処理ガス中のハロゲンガス濃度や、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の原料に含まれるハロゲン量を調整することにより制御することができる。ハロゲン含有量は、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を燃焼し、生成した燃焼ガス中のハロゲン水素ガスを水酸化ナトリウムに吸収させた後、この溶液中のハロゲン含有量をイオンクロマトグラフィー分析装置で定量することにより、算出できる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、好ましくは窒素原子および硫黄原子を含む。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料中の窒素原子の含有量は、不可逆容量の低減の観点から、好ましくは1.0ppm以上30000ppm以下であり、より好ましくは100ppm以上25000ppm以下である。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料中の硫黄原子の含有量は、不可逆容量の低減の観点から、好ましくは1.0ppm以上30000ppm以下であり、より好ましくは5.0ppm以上1000ppm以下である。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料中の窒素原子の含有量は、元素分析法を用いて定量することができる。また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料中の硫黄原子の含有量は、イオンクロマト法を用いて定量することができる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、充填密度向上の観点から、水銀圧入法により求めた細孔直径が好ましくは0.003μm〜5μmの細孔容積が0.55ml/g未満であり、好ましくは0.53ml/g以下であり、よりさらに好ましくは0.50ml/g以下である。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、不可逆容量の低減の観点から、水銀圧入法により求めた細孔直径が0.003μm〜5μmの細孔容積が好ましくは0.10ml/g以上であり、より好ましくは0.20ml/g以上であり、さらに好ましくは0.30ml/g以上である。
ここで、水銀圧入法による細孔容積はMICROMERITICS社製オートポアIII9420を用いて測定することができる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、生産効率向上の観点から、真球度が好ましくは0.80未満であり、より好ましくは0.70以下であり、よりさらに好ましくは0.60以下である。
なお、真球度は、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料をエポキシ樹脂に埋め込み、研磨後、光学顕微鏡で観察し、平均粒径D50±50%の粒径を有する粒子で、かつ他の粒子との重なりおよび接触の無い粒子30個について高機能画像解析システム(旭エンジニアリング製「IP−500PC」)により粒子の平面画像解析を行い、下記式による円形度Cの平均値をもって真球度とする。
円形度C=4・π・S/l2
ここで、l:周囲長、S:面積である。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、空気気流下で測定した示差熱分析において、好ましくは650℃未満、好ましくは550℃以上645℃以下、より好ましくは590℃以上640℃以下に少なくとも1個の発熱ピークを有する。これにより、保存特性および充電放電容量を向上させることができる。
次に、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の製造方法について説明する。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料は、例えば、特定の樹脂組成物を原料として、適切な条件で炭化処理することにより製造することができる。
樹脂組成物を原料として、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を製造すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、(1)樹脂組成物の組成、(2)炭化処理の条件、(3)炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合、などの因子を高度に制御することにより、本発明の課題を達成するものである。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を得るためには、これらの因子を高度に制御することが重要となる。
特に、本発明者らは、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を得るためには、上記(1)と(2)の条件を適切に設定した上で、(3)炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を従来の基準よりも低く設定することが重要であることを見出した。
以下、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の製造方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の製造方法は、以下の例に限定されない。
はじめに、(1)アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の原料として、炭化処理すべき樹脂組成物を選定する。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の原材料となる樹脂組成物に含まれる樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂;熱可塑性樹脂;エチレン製造時に副生する石油系のタールやピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分やピッチ、石炭の液化により得られるタールやピッチなどのような石油系または石炭系のタール若しくはピッチ;さらには上記タールやピッチなどを架橋処理したもの;などが挙げられる。これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、原料段階での精製が可能であり、不純物の少ないアルカリ金属イオン二次電池用負極材料が得られ、かつ、精製に要する工程を大幅に短縮できコスト低減に繋がる点から、熱硬化性樹脂が好ましい。
これらが種々の成分で変性された変性物を用いることもできる。
これらの中でも、残炭率が高いという理由からホルムアルデヒドを用いる樹脂である、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;アニリン樹脂が好ましい。
用いられる硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、ポリアセタール、パラホルムアルデヒドなどを用いることができる。レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミンなどを用いることができる。
硬化剤の配合量は、通常は上記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上50質量部以下である。
つぎに、得られた樹脂組成物を炭化処理する。
ここで炭化処理の条件としては、例えば、常温から1℃/時間以上200℃/時間以下で昇温して、800℃以上3000℃以下、0.01Pa以上101kPa(1気圧)以下で、0.1時間以上50時間以下、好ましくは0.5時間以上10時間以下保持して行うことができる。炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下;不活性ガス中に微量の酸素が存在するような実質的に不活性な雰囲気下;還元ガス雰囲気下などで行うことが好ましい。このようにすることで、樹脂の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望のアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を得ることができる。
ここで、プレ炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、200℃以上1000℃以下で1時間以上10時間以下行うことができる。このように、炭化処理前にプレ炭化処理を行うことで、樹脂組成物を不融化させ、炭化処理工程前に樹脂組成物などの粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の樹脂組成物などが炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とするアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を効率的に得ることができるようになる。
硬化処理方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に硬化反応が可能な熱量を与えて熱硬化する方法、あるいは、熱硬化性樹脂と硬化剤とを併用する方法などにより行うことができる。これにより、プレ炭化処理を実質的に固相で行うことができるため、熱硬化性樹脂の構造をある程度維持した状態で炭化処理またはプレ炭化処理を行うことができ、アルカリ金属イオン二次電池用負極材の構造や特性を制御することができるようになる。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を得るには、炭化処理を行う空間に占める原料の占有割合を適切に調整することが重要である。具体的には、炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を好ましくは10.0kg/m3以下、より好ましくは5.0kg/m3以下、特に好ましくは1.0kg/m3以下に設定する。ここで、炭化処理を行う空間は、通常は炭化処理に使用する熱処理炉の炉内容積を表す。
炭化処理を行う空間に占める原料の占有割合を上記上限値以下とすることにより、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極材料を得ることができる理由は必ずしも明らかでないが、炭化処理時に原料(樹脂組成物)から発生するガスが系外に効率良く除去されるためと考えられる。
以下、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極活物質について説明する。アルカリ金属イオン二次電池用負極活物質とは、アルカリ金属イオン二次電池において、アルカリ金属イオンを出し入れすることができる物質のことをいう。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極活物質は、上述した本実施形態に係る負極材料を含むものである。
材料が挙げられる。
以下、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池用負極およびアルカリ金属イオン二次電池について説明する。
また、本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池は、本実施形態に係る負極を用いて製造されたものである。これにより、保存特性および充放電容量に優れたアルカリ金属イオン二次電池を提供することができる。
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン電池の一例を示す模式図である。
負極集電体14としては特に限定されず、一般的に公知の負極用集電体を用いることができ、例えば、銅箔またはニッケル箔などを用いることができる。
負極13は、例えば、以下のようにして製造することができる。
得られたスラリーを圧縮成形、ロール成形などによりシート状、ペレット状などに成形して、負極活物質層12を得ることができる。そして、このようにして得られた負極活物
質層12と負極集電体14とを積層することにより、負極13を得ることができる。
また、前記負極スラリーを負極集電体14に塗布して乾燥することにより、負極13を製造することもできる。
正極活物質層20としては特に限定されず、一般的に公知の正極活物質により形成することができる。正極活物質としては特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)などの複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子;などを用いることができる。
そして、本実施形態における正極21は、一般的に公知の正極の製造方法により製造することができる。
はじめに、後述する実施例および比較例で得られたアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の評価方法を説明する。
堀場製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置LA−920を用いて、レーザー回折法により、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の粒度分布を測定した。測定結果から、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料について、体積基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)を求めた。
ユアサ社製のNova−1200装置を使用して窒素吸着におけるBET3点法により測定した。具体的な算出方法は、上述したとおり である。
上記平均層面間隔d002は、株式会社リガク製・粉末X線回折装置「Smart Lab」を用いて、以下の条件で測定した。
線源: CuKα線
管電圧:45kV
管電流:200mA
スキャン速度:毎分2°
ステップ角:0.01°
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料のX線回折測定から求められるスペクトルより、(002)面の平均層面間隔d002を以下のBragg式より算出した。
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
また、Lc(002)は以下のようにして測定した。
X線回折測定から求められるスペクトルにおける002面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc(002)=0.94 λ/(βcosθ) ( Scherrerの式)
Lc(002) : 結晶子の大きさ
λ : 陰極から出力される特性X線Kα1の波長
β : ピークの半値幅( ラジアン)
θ : スペクトルの反射角度
炭酸ガスの吸着量の測定は、真空乾燥機を用いて、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を130℃で3時間以上真空乾燥を行ったものを測定試料とし、Micromeritics Instrument Corporation社製ASAP−2000Mを使用して行った。
測定用試料管に測定試料0.5gを入れ、0.2Pa以下の減圧下、300℃で3時間以上減圧乾燥を行い、その後、炭酸ガスの吸着量の測定を行った。
吸着温度は0℃とし、測定試料を入れた試料管の圧力が0.6Pa以下になるまで減圧にした後、炭酸ガスを試料管に導入し、試料管内の平衡圧力が0.11MPa(相対圧力0.032に相当)に達するまでの炭酸ガスの吸着量を定容法により求め、ml/g単位で表した。吸着量は標準状態(STP)に換算した値である。
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を酸水素炎燃焼装置を用いて燃焼させ、生成した燃焼ガス中のHClを0.01モルのNaOH水溶液に吸収させた。次いで、この水溶液中の塩素の含有量をイオンクロマトグラフィー分析装置で定量した。なお、イオンクロマトグラフィー分析装置の検量線は、イオンクロマトグラフィー用塩化物イオン標準液(塩化ナトリウム水溶液、塩素イオン濃度1000ppm、関東化学社製)を希釈すること
により調製した溶液を分析して作成した。
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料をエポキシ樹脂に埋め込み、研磨後、光学顕微鏡で観察し、平均粒径D50±50%の粒径を有する粒子で、かつ他の粒子との重なりおよび接触の無い粒子30個について高機能画像解析システム(旭エンジニアリング製「IP−500PC」)により粒子の平面画像解析を行い、下記式による円形度Cの平均値をもって真球度とした。
円形度C=4・π・S/l2
ここで、l:周囲長、S:面積である。
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を白金製パンに2.0mg秤量し、示差熱分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 TG/DTA6200)に設置し、100ミリリットル/分の流量で乾燥空気(露点−50℃以下)を流し、200℃で1時間保持した。その後、10℃/分の昇温速度で昇温し、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の発熱曲線を測定し、最大発熱量を示した温度を発熱ピーク温度とした。
水銀圧入法による細孔容積はMICROMERITICS社製 オートポアIII9420を用いて測定した。
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。ついで水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀をアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の細孔へ圧入する(最高圧力414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量の関係から以下の式を用いてアルカリ金属イオン二次電池用負極材料の細孔容積分布を測定する。細孔直径5μmに相当する圧力(0.25MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに負極材料に圧入された水銀の体積を、細孔直径5μm以下の細孔容積とした。細孔直径の算出は、直径Dの円筒形の細孔に水銀を圧力Pで圧力する場合、水銀の表面張力γ、水銀と細孔壁との接触角をθとすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式が成り立つ。
−πDγcosθ=π(D/2)2・P
D=(−4γcosθ)/P
ここで、水銀の表面張力を484dyne/cm、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPa、細孔直径Dをμmで表示し、下記式により圧力Pと細孔直径Dの関係を求めた。
D=1.27/P
窒素含有量は、住化分析センター社製 スミグラフを用いて、燃焼法により測定した。
硫黄含有量は、ダイオネクス社製 ICS2000を用いて、イオンクロマト法により測定した。
製造直後の負極材料および以下の保存試験後の負極材料について、以下の方法に従って初期効率をそれぞれ測定した。次いで、初期効率の変化率をそれぞれ算出した。
アルカリ金属イオン二次電池用負極材料1gについて、小型環境試験器(ESPEC社
製SH−241)の装置内で、温度40℃、相対湿度90%RHの条件下で7日間保持した。なお、負極材料は、できる限り薄い厚みとなるように、縦5cm、幅8cm、高さ1.5cmの容器に広げた上で、装置内に静置した。その後、上記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料を温度130℃、窒素雰囲気の条件下で1時間保持して乾燥した。
7Li核−固体NMR分析は以下の方法に従って測定した。
後述する実施例、比較例で得られたアルカリ金属イオン二次電池用負極材料100部に対して、カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、CMCダイセル2200)1.5部、および蒸留水100部を加え、自転・公転ミキサーで撹拌・混合し、負極スラリーを調製した。
<ハーフセル充電条件>
温度:25℃
充電電流:25mA/g
充電終止電圧:0V
充電方法:定電流法
下でMAS−7Li−NMRを測定した。
<測定条件>
装置:日本電子製JNM−ECA400
測定温度:室温
パルス幅:30°pulse
パルス繰り返し時間:300秒
測定基準:塩化リチウム
積算回数:8 scan
上記のハーフセルを、電池充放電装置(北斗電工株式会社製HJ1010mSM8)を用いて、以下の条件で充放電をおこなった。
<充電条件>
温度:25℃
充電電流:25mA/g
充電電圧:0V
充電終止電流:2.5mA/g
充電方法:定電流定電圧法
<放電条件>
温度:25℃
放電電流:25mA/g
放電終止電圧:2.5V
放電方法:定電流法
初期効率 [%] = 100×(放電容量)/(充電容量)
初期効率の変化率 [%] =100×(保存試験後の初期効率)/(製造直後の初期効率)
(実施例1)
特開平8−279358号公報の段落0051に記載の方法に準じて、酸化ピッチを作製した。次いで、この酸化ピッチを原料として、以下の工程(a)〜(f)の順で処理を行い、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料1を得た。
(d)その後、炉内容積24L(縦40cm、幅30cm、高さ20cm)の熱処理炉内に、得られた粉末204gをできる限り薄い厚みとなるように広げて静置した。次いで、不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1200℃まで、100℃/時間で昇温した。
(f)不活性ガス(窒素)流通下、600℃まで自然放冷後、600℃から100℃以下まで、100℃/時間で冷却した。
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂PR−55321B(住友ベークライト社製)を原料として、以下の工程(a)〜(f)の順で処理を行い、アルカリ金属イオン二次電池用負極材料2を得た。
(d)その後、炉内容積24L(縦40cm、幅30cm、高さ20cm)の熱処理炉内に、得られた粉末204gをできる限り薄い厚みとなるように広げて静置した。次いで、不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1200℃まで、100℃/時間で昇温した。
(f)不活性ガス(窒素)流通下、600℃まで自然放冷後、600℃から100℃以下まで、100℃/時間で冷却した。
炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を3.5kg/m3に変更した以外は実施例2と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料3を作製した。
炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を0.9kg/m3に変更した以外は実施例2と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料4を作製した。
炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を0.5kg/m3に変更した以外は実施例2と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料5を作製した。
炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を16kg/m3に変更した以外は実施例1と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料6を作製した。
炭化処理を行う空間に対する原料の占有割合を16kg/m3に変更した以外は実施例2と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料7を作製した。
炭化処理条件(e)活性ガス(窒素)流通下、1200℃で8時間保持を、活性ガス(窒
素)流通下、1100℃で2時間保持に変更した以外は、実施例1と同様の方法でアルカリ金属イオン二次電池用負極材料8を作製した。
、放電容量、初期効率に優れ、さらに、保存特性にも優れることが確認された。
12 負極活物質層
13 負極
14 負極集電体
16 電解液
18 セパレーター
20 正極活物質層
21 正極
22 正極集電体
Claims (5)
- 非晶質炭素を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極材料であって、
負極として前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料、
前記負極の対極として金属リチウム、
電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比で1:1で混合した混合溶媒に1.0mol/dm3の割合でLiPF6を加えた溶液
を用いて作製したハーフセルを下記<ハーフセル充電条件>にて充電した後に、前記ハーフセルより回収した前記アルカリ金属イオン二次電池用負極材料の7Li核−固体NMR
分析における主共鳴ピークの半値幅が0.4kHz以上2.0kHz以下であり、
かつ、塩化リチウムの共鳴線に対して低磁場側に10ppm以上35ppm以下シフトして観測されることを特徴とするアルカリ金属イオン二次電池用負極材料。
<ハーフセル充電条件>
温度:25℃
充電電流:25mA/g
充電終止電圧:0V
充電方法:定電流法 - 請求項1に記載の負極材料において、線源としてCuKα線を用いたX線回折法により求められる(002)面の平均層面間隔d002が0.340nm以上であるアルカリ金属イオン二次電池用負極材料。
- 請求項1または2に記載の負極材料を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極活物質。
- 請求項3に記載の負極活物質を含むアルカリ金属イオン二次電池用負極。
- 請求項4に記載のアルカリ金属イオン二次電池用負極と、電解質と、正極とを少なくとも備えたアルカリ金属イオン二次電池。
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