JP2014185054A - セラミックス結晶粒子、セラミックス焼結体およびそれらの製造方法 - Google Patents

セラミックス結晶粒子、セラミックス焼結体およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】工具材料として用いた場合に、高硬度と高靭性を兼ね備え、耐摩耗性と耐欠損性に優れた工具を得ることのできる、セラミックス結晶粒子、セラミックス焼結体、および、それらの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、主として立方晶AlCrNを含む最外層と、主として六方晶AlNを含むコアとを有するセラミックス結晶粒子である。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミックス結晶粒子、セラミックス焼結体およびそれらの製造方法に関する。
切削加工などに用いられる切削工具の材料として、酸化アルミニウム(Al2)焼結体が知られている。酸化アルミニウム焼結体は、鉄系被削材との反応性が低く、安価に製造することができるという点で優れているが、その靭性が低い傾向にある。酸素とアルミニウムの結合力は極めて強く高い硬度が得られるが、酸化アルミニウムは六方晶で異方性が強いため、c軸に垂直な方向など弱い結合方向に沿って粒内破壊しやすいためである。このために、酸化アルミニウム焼結体は、切削工具として使用した場合に、破損しやすい傾向がある。さらに、酸化アルミニウムは、結合材となる周期律表の第4A族、第5A族および第6A族の金属の窒化物、炭窒化物などの金属化合物との反応性が低い。したがって、酸化アルミニウムと、これらの金属化合物とを用いて焼結体を作製すると、得られた焼結体は欠損や結晶粒の脱落によるチッピングも起きやすいという傾向がある。
特許文献1(特開2001−89242号公報)には、低温領域から高温領域における硬さ、強度および靭性が高く、耐熱衝撃性および耐サーマルクラック性の高いセラミックス焼結部材として、酸化アルミニウムに代えて窒化アルミニウムを用い、さらにチタン化合物を含むセラミックス焼結部材が開示されている。
特許文献2(特開平4−300248号公報)には、欠損や結晶粒の脱落によるチッピングが防止されたセラミックス焼結体として、40〜80体積%の窒化チタン(TiN)と、バインダの主成分としての窒化アルミニウム(AlN)との混合粉末を焼結してなる焼結体が開示されている。
ここで、窒化アルミニウムには、六方晶の結晶構造を有する六方晶窒化アルミニウム(以下、「hAlN」ともいう)と立方晶の結晶構造を有する立方晶窒化アルミニウム(以下、「cAlN」ともいう)とが存在する。六方晶窒化アルミニウムと立方晶窒化アルミニウムのそれぞれの硬度を比較すると、立方晶窒化アルミニウムの方が硬度が大きく、切削工具の材料としては望ましいと考えられる。しかしながら、常温常圧下では、六方晶窒化アルミニウムが安定であり、立方晶窒化アルミニウムは準安定系である。したがって、常温常圧下では立方晶窒化アルミニウムを得ることができない。
特許文献3(特開2004−284851号公報)には、六方晶窒化アルミニウムの粉末と搬送ガスをエアロゾル状態として、減圧された成膜室内の基板に吹き付け、基板に衝突したときの衝撃により六方晶窒化アルミニウムの結晶構造を、立方晶窒化アルミニウムに変化させる方法が開示されている。しかしながら、該方法によれば、粉末状あるいは薄膜状の立方晶窒化アルミニウムしか得られず、立方晶窒化アルミニウムを主成分とする焼結体は得られないという問題があった。
非特許文献1(“プロシーディングス オブ ザ ジャパン アカデミー(Proceedings of the Japan Academy)”、1990年、シリーズB、第66巻、p.7−9)には、六方晶窒化アルミニウムを、16.5GPa、1400〜1600℃の超高圧高温で処理することにより、立方晶窒化アルミニウムと六方晶窒化アルミニウムとを含む粉末を得たことが開示されている。しかしながら、得られた粉末には六方晶窒化アルミニウムが残存しており、準安定系の立方晶窒化アルミニウムを高純度で含む粉末を得ることはできないという問題があった。
また、切削加工などに用いられる切削工具の材料として、高速度鋼(以下、「ハイス」ともいう)も使用されている。
特許文献4(特開2002−160129号公報)には、ハイスに、耐熱性および耐磨耗性に優れたAlCrN系硬質皮膜をコーティングする方法が開示されている。しかしながら、AlCrN系硬質被膜は薄いため、工具のコーティング被膜が摩耗や欠損などにより失われると、急速に工具の摩耗が進行して寿命が短くなるという問題があった。
特開2001−89242号公報 特開平4−300248号公報 特開2004−284851号公報 特開2002−160129号公報
本発明は、工具材料として用いた場合に、高硬度と高靭性を兼ね備え、耐摩耗性と耐欠損性に優れた工具を得ることのできる、セラミックス結晶粒子、セラミックス焼結体、および、それらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、主として立方晶AlCrNを含む最外層と、主として六方晶AlNを含むコアとを有するセラミックス結晶粒子である。
前記最外層中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、前記最外層中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下であることが好ましい。
前記立方晶AlCrNが、一般式AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされることが好ましい。
前記最外層は、さらに、周期律表の第4A族元素、第5A族元素および第6A族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含むことが好ましい。
前記最外層の総量に対する前記遷移金属元素の総量は、1at%以上30at%以下であることが好ましい。
前記最外層において、前記遷移金属元素は前記立方晶AlCrNに固溶して、一般式AlCr(Mは遷移金属元素、A+B+C=1、0.7≦y≦1)で表わされる固溶体を形成していることが好ましい。
また、本発明は、上記のセラミックス結晶粒子を用いて製造されるセラミックス焼結体にも関する。
また、本発明は、上記のセラミックス結晶粒子および結合材を用いて製造されるセラミックス焼結体にも関する。
前記結合材は、
周期律表の第4A族元素、第5A族元素および第6A族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素と、炭素、窒素および酸素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる少なくとも1種の結合材化合物、
前記結合材化合物の固溶体、
鉄、コバルト、ニッケル、チタンおよびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、ならびに、
前記金属間の化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記セラミックス焼結体中の前記結合材の配合率は、5体積%以上60体積%以下であることが好ましい。
また、本発明は、上記のセラミックス結晶粒子の製造方法であって、
六方晶AlN粉末を撹拌しながら、コアとなる該六方晶AlN粉末を構成する各粒子の表面に、主として立方晶AlCrNを含む最外層を気相合成する工程を含み、
前記気相合成において、AlおよびAlNよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr、CrNおよびCrNよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合してなるターゲットを用いる、製造方法にも関する。
前記気相合成は、アルゴンおよび窒素からなる混合ガス雰囲気中で実施されることが好ましい。
また、本発明は、上記のセラミックス結晶粒子の製造方法であって、
Al粉末およびAlN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr粉末、CrN粉末およびCrN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合して第1混合粉末を得る工程と、
前記第1混合粉末を加熱加圧処理する工程とを含む、製造方法にも関する。
前記加熱加圧処理は窒素雰囲気中で実施されることが好ましい。
前記加熱加圧処理は、10kPa以上12MPa以下の圧力下および600℃以上3500℃以下の温度で実施されることが好ましい。
また、本発明は、上記のセラミックス焼結体の製造方法であって、
前記セラミックス結晶粒子と前記結合材とを混合して第2混合粉末を得る工程と、
前記第2混合粉末を加熱加圧処理する工程とを含む、製造方法にも関する。
前記加熱加圧処理は、非酸化雰囲気中で実施されることが好ましい。
前記加熱加圧処理は、10kPa以上15GPa以下の圧力および800℃以上1900℃以下の温度で実施されることが好ましい。
本発明のセラミックス結晶粒子またはセラミックス焼結体を工具材料等として用いることにより、高硬度と高靭性を兼ね備え、耐摩耗性と耐欠損性に優れた工具等を得ることができる。
立方晶AlCrNと六方晶AlNの複合粒子の透過型電子線顕微鏡によるTEM像を示す図である。 図1の位置1で撮影した立方晶AlCrN粒子の電子線回折像を示す図である。 図1の位置2で撮影した六方晶AlN粒子の電子線回折像を示す図である。 立方晶AlCrNと六方晶AlNの複合粒子の透過型電子線顕微鏡によるTEM像を示す図である。 立方晶AlCrNの220回折波で結像したTEM像である。 六方晶AlNの100回折波で結像したTEM像である。 第2の実施形態の一例における第2工程前と第2工程後の第1混合粉末のX線回折線パターンを示すグラフである。
<セラミックス結晶粒子>
本発明のセラミックス結晶粒子は、主として立方晶AlCrNを含む最外層と、主として六方晶AlNを含むコアとを有することを特徴とする。
実際に、本発明のセラミックス結晶粒子の一例を透過型電子線顕微鏡(TEM)で観察すると、図1のように立方晶AlCrNと六方晶AlNの複合粒子を確認することができる。更に該立方晶AlCrN、六方晶AlNの複合粒子の外周部(最外層)の位置1の電子線回折像(TED)には、図2のように3つの同心円を確認できる。これは、立方晶AlCrN粒子が、ランダムな方向性を有する微粒子結晶を含んでいることを示している。各同心円の直径から各結晶の面間隔を算出すると、内側の同心円からそれぞれ2.36オングストローム、2.04オングストローム、1.44オングストロームとなる。以上より、立方晶AlCrN粒子はNaCl型の結晶構造を有していること、および上記の3つの同心円はそれぞれ(111)面、(200)面、(220)面の電子線回折線に由来することが分かる(面指数を図2に示す)。なお、この面間隔は、立方晶AlNと立方晶CrNのちょうど中間の値であるため、観察した立方晶AlCrNには、立方晶AlNと立方晶CrNが含まれていることが分かる。
更に、該立方晶AlCrN、六方晶AlNの複合粒子の内部(コア)の位置2(図1参照)の電子線回折像(TED)を図3に示す。図3に示されるTEDには、点状の配列パターンが見られる。この格子の距離から面間隔を算出すると、d=2.69オングストロームとなり、六方晶AlNの(100)面の面間隔に由来することが分かる。
このことは、立方晶および六方晶の回折像で結像したTEM像(図4〜図6)からも分かる。図4に、全ての電子線回折像を用いて結像したTEM像を示す。図5に示す立方晶AlCrNの(220)回折波で結像したTEMでは、複合粒子(本発明のセラミックス結晶粒子)の外周部に像が存在し、図6に示す六方晶AlNの(100)回折波で結像したTEMでは、複合粒子の内部に像が存在した。
立方晶AlCrNは、高硬度で耐酸化性、耐溶着性に優れているという特徴があるが、低靭性であるという問題があった。本発明のセラミックス結晶粒子(複合粒子)は、最外層に立方晶AlCrNが存在するだけでなく、内部(コア)に高靭性の六方晶AlNが存在することにより、高硬度と高靭性を兼ね備え、耐摩耗性と耐欠損性に優れたコアシェル構造の硬質粒子となる。
セラミックス結晶粒子の最外層中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、前記最外層中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下であることが好ましく、0.50以上0.92以下であることがより好ましい。立方晶AlNは立方晶CrNよりも相対的に硬度が大きい。したがって、セラミックス結晶粒子中の最外層中に含まれるアルミニウムの原子分率が0.35以上であると、セラミックス結晶粒子の硬度が大きくなる。このようなセラミックス結晶粒子を工具材料として用いた場合、優れた耐摩耗性を有する工具を得ることができる。
上記立方晶AlCrNは、一般式AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされることが好ましい。上記yの値は、さらに0.9≦y≦1.0の範囲であることがより好ましい。また、上記の立方晶AlCrNのX線回折強度が維持される範囲内で、一部の窒素を酸素で置換してたAlCrONとしてもよい。このように事前に酸化させた組成にすることで、結晶や焼結体として耐熱性および耐酸化性が増強する。酸素の範囲としては窒素以下であることが望ましい。
また、セラミックス結晶粒子の最外層は、立方晶AlCrN以外に、さらに周期律表の第4A族元素、第5A族元素、第6A族元素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とを含むことが好ましい。ここで、「周期律表の第4A族元素」としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。「周期律表の第5A族元素」としては、バナジウム、ニオブ、タンタルなどが挙げられる。「周期律表の第6A族元素」としては、クロム、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。上記遷移金属元素を含むセラミックス結晶粒子は優れた耐摩耗性を有し、工具材料として用いた場合、より優れた耐摩耗性を工具に付与することができる。
遷移金属元素の総量は、セラミックス結晶粒子の最外層の総量に対して1at%以上30at%以下であることが好ましい。この場合、セラミックス結晶粒子中の立方晶AlCrN、立方晶AlN、立方晶CrNおよび遷移金属元素のそれぞれの含有量のバランスがよく、セラミックス結晶粒子の耐摩耗性が良好になる。
最外層において、遷移金属元素は立方晶AlCrNに固溶して、一般式AlCr(Mは遷移金属元素、A+B+C=1、0.7≦y≦1)で表わされる固溶体を形成していることが好ましい。窒素量が少ない場合、金属的性質を持ち始めると共に、立方晶の維持が困難になり六方晶になりやすく低硬度になるためである。
<セラミックス結晶粒子の製造方法>
[第1の実施形態]
第1の実施形態のセラミックス結晶粒子の製造方法は、上記のセラミックス結晶粒子を製造するための方法であって、
六方晶AlN粉末を撹拌しながら、該六方晶AlN粉末を構成する各粒子の表面に、主として立方晶AlCrNを含む最外層を気相合成する工程を含み、
前記気相合成において、AlおよびAlNよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr、CrNおよびCrNよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合してなるターゲットを用いることを特徴とする。以下、詳細について説明する。
まず、AlおよびAlNよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr、CrNおよびCrNよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合してなるターゲット(アーク電源の陰極)を準備する。ここで、ターゲット中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、該ターゲット中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下であることが好ましい。これにより、セラミックス結晶粒子の最外層中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、前記最外層中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下とすることができる。
このようなターゲットを用いた気相合成は、アークイオンプレーティングや直流スパッタリングなどにより実施される。気相合成に用いるプロセスガスとしては、例えば、Arガス、Nガス、ArおよびNの混合ガスが挙げられるが、ArガスおよびNガスの混合ガスを用いることが好ましい。アーク電流は10〜300A、バイアス電圧は10〜500V、Nガス圧力は0.1〜30Paなどの範囲とする。
さらに、六方晶AlN粉末を撹拌しながら100〜500℃に加熱し、該六方晶AlN粉末を構成する各粒子の表面に上記の気相合成を行う。窒素雰囲気下でプラズマ中の処理を行うことで、AlとCrの原子拡散と窒化が行われる。
この際に、本来六方晶が安定なAlNに立方晶のCrNが混合されることで、高硬度かつ異方性の少ない立方晶AlCrNへの変化を促進することができる。
上記の圧力、バイアス電圧および温度で処理すると、一般式AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる立方晶AlCrNを、六方晶AlN粉末(コア)の表面に得ることができる。一般的に、立方晶AlCrNは、窒素の量が不十分であると、常圧で安定な六方晶AlCrNへ変化しやすい。本発明の製造方法により得られた立方晶AlCrNは、窒素の量yが0.7≦y≦1の範囲であり十分に含まれているため、立方晶の結晶構造を安定して維持することができる。
ターゲット中には、上記のAl、Cr、AlN、CrN、CrN以外に、さらに遷移金属元素が混合されていてもよい。遷移金属元素とは、周期律表の第4A族元素、第5A族元素および第6A族元素である。ここで、「周期律表の第4A族元素」としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。「周期律表の第5A族元素」としては、バナジウム、ニオブ、タンタルなどが挙げられる。「周期律表の第6A族元素」としては、クロム、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。
上記遷移金属元素は、AlNの立方晶化を促進するため、セラミックス結晶粒子を強靭化するという効果を発揮する。更に、特に4族のチタン、ジルコニウム、ハフニウムは鉄に対して優れた耐反応摩耗特性を発揮する。したがって、上記遷移金属元素を含むセラミックス結晶粒子は優れた耐摩耗性を有することができる。
上記遷移金属元素は、ターゲット中に1at%以上30at%以下の量で含まれるように混合することが好ましい。これにより、セラミックス結晶粒子の最外層の総量に対する遷移金属元素の総量を、1at%以上30at%以下とすることができる。
ターゲットが遷移金属元素を含む場合は、上記の圧力、バイアス電圧および温度で処理すると、一般式AlCr(Mは遷移金属元素、A+B+C=1、0.7≦y≦1)で表わされる固溶体を得ることができる。該固溶体は、窒素の量yが0.7≦y≦1の範囲であり十分に含まれているため、立方晶の結晶構造を安定して維持することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態のセラミックス結晶粒子の製造方法は、上記のセラミックス結晶粒子を製造するための方法である点で、第1の実施形態と同様であるが、
Al粉末およびAlN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr粉末、CrN粉末およびCrN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合して第1混合粉末を得る工程(以下、「第1工程」ともいう)と、第1混合粉末を加熱加圧処理する工程(以下、「第2工程」ともいう)とを含む点で、第1の実施形態とは異なる。
従来、立方晶AlNを得るために、六方晶AlNを16GPa以上の超高圧条件下で衝撃処理をしたり、または六方晶AlNをエアロゾル状態にして衝撃処理を行っていた。しかし、このような方法によっても、六方晶AlNの一部が立方晶AlNに変換されるのみであった。
本発明者らは、Al粉末およびAlN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr粉末、CrN粉末およびCrN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合した後に、窒化して立方晶CrNを合成すると、AlおよびAlN(六方晶AlN)も外周部から立方晶AlNへと変化することを見出した。これは、六方晶CrNの立方晶CrNへの結晶構造の変化に影響されて、六方晶AlNも立方晶AlNへ結晶構造が変化するためと考えられる。以下、本実施形態の一例について詳細に説明する。
(第1工程)
まず、Al粉末、Cr粉末、AlN(六方晶AlN)粉末、CrN(六方晶CrN)粉末およびCrN粉末を混合して第1混合粉末を得る。
上記Al粉末、Cr粉末、AlN粉末、CrN粉末、CrN粉末は、いずれも平均粒径が2μm以下であることが好ましく、さらに1μm以下であることが好ましい。ここで、「平均粒径が2μm以下」とは、エタノール20g中に六方晶AlN0.5gまたは六方晶CrN0.5gを投入して、超音波振動装置で1分間、解砕、分散させた後、レーザー式の粒度分布測定装置(マイクロトラック製MT3300EX2)で、エタノールの屈折率を1.36、測定粉末の屈折率を2.20として測定した時の累積%が50%の粒子径(D50)が2μm未満であることを意味する。平均粒径が2μm以下であると、以下に述べる第2工程において、AlとCrとAlNとCrNの拡散、六方晶CrNの立方晶化およびこれに伴う六方晶AlNの外周部における立方晶化、AlCrN固溶体の立方晶化を促進することができる。
上記立方晶AlNと上記立方晶CrNは、第1混合粉末中のアルミニウムおよびクロムの合計に対する上記アルミニウムの原子分率が、0.35以上0.99以下となるようにそれぞれの量を調整して準備することが好ましい。これにより、セラミックス結晶粒子の最外層中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、前記最外層中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下とすることができる。
本発明のセラミックス結晶粒子は、第1混合粉末を、以下に述べる第2工程において、窒素雰囲気下で加熱加圧処理を行うことにより得ることができる。該処理により、六方晶Cr2Nが、立方晶CrNに変化する。この結晶構造の変化に影響されて、六方晶AlNも立方晶AlNに変化すると考えられる。第1混合粉末中のアルミニウムおよびクロムの割合を上記のように調整しておくと、第2工程において、六方晶CrNの立方晶CrNへの結晶構造の変化に伴う、六方晶AlNの立方晶AlNへの変化を促進することができる。
第1工程において、Al粉末、Cr粉末、AlN(六方晶AlN)粉末、Cr2N(六方晶Cr2N)粉末およびCrN粉末以外にも、さらに遷移金属元素の粉末を混合してもよい。遷移金属元素とは、周期律表の第4A族元素、第5A族元素および第6A族元素である。「周期律表の第4A族元素」としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。「周期律表の第5A族元素」としては、バナジウム、ニオブ、タンタルなどが挙げられる。「周期律表の第6A族元素」としては、クロム、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。
上記遷移金属元素は、AlNの立方晶化を促進するため、セラミックス結晶粒子を強靭化するという効果を発揮する。更に、特に4族のチタン、ジルコニウム、ハフニウムは鉄に対して優れた耐反応摩耗特性を発揮する。したがって、上記遷移金属元素を含むセラミックス結晶粒子は優れた耐摩耗性を有することができる。
上記遷移金属元素は、第1混合粉末中に1at%以上30at%以下の量で含まれるように混合することが好ましい。これにより、セラミックス結晶粒子の最外層の総量に対する遷移金属元素の総量を、1at%以上30at%以下とすることができる。
第1混合粉末は、たとえば六方晶AlNと六方晶Cr2Nとをエタノールなどの有機溶媒中で超音波分散するか、またはビーズミルで粉砕、混合して、得られたスラリーをドライヤーなどで乾燥して得ることができる。
(第2工程)
次に、上記第1混合粉末を、所定圧力および所定温度で加熱加圧処理する。
加熱加圧処理は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この時、窒素の量が不十分であると、常圧で安定的な六方晶CrNが得られやすくなる。したがって、上記yの値が0.7≦y≦1の範囲となるように十分な窒素量を用いて加熱加圧処理を行うことにより、立方晶AlCrNを安定的に得られ易くなる。加熱は、外部ヒーター等を用いて行ってもよく、Al、Cr、TiもしくはAlCr合金などの金属の自己燃焼熱を利用して行っても良い。
加熱加圧処理の圧力は、好ましくは10kPa以上12MPa以下であり、より好ましくは5MPa以上20MPa以下の圧力である。加熱加圧処理の温度は、好ましくは600℃以上3500℃以下であり、より好ましくは1200℃以上3000℃以下である。温度を高温にすることで、AlとCrの相互拡散が促進され、高圧であるため反応中の窒素抜けが起きにくいためである。加熱加圧処理に用いる装置としては、例えば、熱間等方加圧(HIP)などの加圧炉や、加圧燃焼合成炉を用いることができる。
上記の圧力および温度で処理すると、一般式AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる立方晶AlCrNを得ることができる。一般的に、立方晶AlCrNは、窒素の量が不十分であると、常圧で安定な六方晶AlCrNへ変化しやすい。本発明の製造方法により得られた立方晶AlCrNは、窒素の量yが0.7≦y≦1の範囲であり十分に含まれているため、立方晶の結晶構造を安定して維持することができる。
第2工程前と第2工程後の第1混合粉末の一例について、X線回折法により得られたX線回折線パターンを図7に示す。図7中、実線は第2工程前の第1混合粉末のX線回折線パターン、点線は第2工程後の第1混合粉末のX線回折線パターンである。第2工程前のパターン(実線)には、六方晶AlNと六方晶CrNのピークが観察できる。一方、第2工程後のパターン(点線)では、六方晶AlNと六方晶CrNのピークは消失し、代わりに立方晶AlNと立方晶CrNのピークが観察できる。これは、第2工程を行うことによって、第1混合粉末中の六方晶AlNと六方晶Cr2Nが、立方晶AlNと立方晶CrNに変化したためと考えられる。
第1混合粉末が遷移金属元素を含む場合は、上記の圧力および温度で処理すると、一般式AlCr(Mは遷移金属元素、A+B+C=1、0.7≦y≦1)で表わされる固溶体を得ることができる。該固溶体は、窒素の量yが0.7≦y≦1の範囲であり十分に含まれているため、立方晶の結晶構造を安定して維持することができる。
<セラミックス焼結体>
本発明のセラミックス焼結体は、上記セラミックス結晶粒子を用いて製造され、好ましくは、上記セラミックス結晶粒子と結合材とを用いて製造される。
結合材は、結合材化合物、該結合材化合物の固溶体、所定の金属、および、該金属間の化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。これらの結合材は、セラミックス結晶粒子との親和性が高いため、セラミックス結晶粒子と混合して焼結すると、耐摩耗性および耐欠損性に優れたセラミックス焼結体を得ることができる。
上記結合材化合物は、周期律表の第4A族元素、第5A族元素、第6A族元素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素と、炭素、窒素および酸素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる。ここで、「周期律表の第4A族元素」としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。「周期律表の第5A族元素」としては、バナジウム、ニオブ、タンタルなどが挙げられる。「周期律表の第6A族元素」としては、クロム、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。
具体的な結合材化合物としては、たとえば、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化クロム(CrN)、窒化モリブデン(MoN)、および窒化タングステン(WN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル(TaC)、炭化クロム(Cr)、炭化モリブデン(MoC)、炭化タングステン(WC)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化クロム(Cr)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)である。中でも、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化アルミニウム(Al)が挙げられる。
上記所定の金属は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。これらの金属間の化合物としては、たとえば、FeNi、FeNiCo、FeAl、NiAl、AlTi、AlTiである。中でも、FeAl、NiAl、AlTiを用いることが好ましい。
上記結合材は、上記セラミックス焼結体中に5体積%以上60体積%以下の量で含まれることが好ましい。この場合、セラミックス焼結体は優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。より好ましくは、結合材は、セラミックス焼結体中に30体積%以上50体積%以下の量で含まれる。なお、セラミックス焼結体中の結合材の含有量(体積%)は、SEM−EDX、TEM−EDXまたはAES(オージェ電子分光法)マッピングによって算出することができる。
<セラミックス焼結体の製造方法>
本発明の一実施の形態において、セラミックス焼結体の製造方法は、
セラミックス結晶粒子と結合材とを混合して第2混合粉末を得る工程(以下、「第3工程」ともいう)と、
第2混合粉末を加熱加圧処理する工程(以下、「第4工程」ともいう)とを含む。以下、本発明のセラミックス焼結体の製造方法の一例について説明する。
(第3工程)
本工程では、セラミックス結晶粒子と結合材とを混合して第2混合粉末を得る。結合材としては、上述のセラミックス焼結体に含まれているものと同様のものを使用することができる。
上記セラミックス結晶粒子と上記結合材の粉末は、いずれも平均粒径が0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、上記第1工程に示したのと同様の方法で測定した値である。
結合材は、第2混合粉末中に5体積%以上60体積%以下の量で含まれるように混合することが好ましい。これにより、セラミックス焼結体中の結合材の配合率を、5体積%以上60体積%以下とすることができる。
第2混合粉末は、たとえばセラミックス結晶粒子と結合材の粉末とをエタノールなどの有機溶媒中で超音波分散するか、またはボールミルで粉砕、混合して、得られたスラリーをドライヤーなどで乾燥して得ることができる。
(第4工程)
次に、上記第2混合粉末を10kPa以上15GPa以下の圧力および800℃以上1900℃以下の温度で加熱加圧処理して、焼結体を得る。第4工程は、非酸化雰囲気中で実施されることが好ましく、特に真空中、または窒素雰囲気下で実施されることが好ましい。焼結方法としては、特に限定されないが、放電プラズマ焼結(SPS)、ホットプレス、超高圧プレスなどを用いることができる。
以下に、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、これらの実施例は例示的なものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1−1〜1−50]
(セラミックス結晶粒子の作製)
本実施例では、粒径0.5μmの六方晶AlN粉末を用意し、アークイオンプレーティングにより、この六方晶AlN粉末の表面に、立方晶AlCrNを主成分とするコーティング膜(最外層)を形成した。
アークイオンプレーティングに用いるターゲット(アーク電源の陰極)としては、表1〜3の「原料の組成(vol%)」欄に記載の割合となるようにAlおよびCr、もしくは、Al、CrおよびTiを混合してなる市販のターゲットを用いた。窒素雰囲気中で圧力2Pa、温度400℃、バイアス電圧110V、表1〜3に記載のアーク電流の条件で、上記粒径0.5μmの六方晶AlN粉末を撹拌しながら、その表面にコーティング膜を成膜した。
(セラミックス結晶粒子の測定)
得られたセラミックス結晶粒子について、TEMを用いた電子線回折法で分析すると、セラミックス結晶粒子の中心部に六方晶AlNが存在し、外周部に立方晶AlCrNが存在することが分かった。結果を表1〜3の「セラミックス結晶粒子のX線回折強度比(%)」欄に示す。なお、実施例1−5では、遷移金属元素の窒化物(TiN)に対応するX線回折線のピークが同定された。
また、立方晶AlCrNをTEM−EDXを用いて、AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる場合のNの価数を測定した。結果を表1〜3の「AlCrNの窒素比率y」欄に示す。
(焼結体の作製)
次に、セラミックス結晶粒子と結合材の粉末とをボールミルで混合して混合粉末を得た。各実施例で用いた結合材の種類および混合粉末中の結合材の量(vol%)を表1〜3の「結合材」の欄に示す。該混合粉末を乾燥させた後、タンタル製のカプセルに充填し、プレス機を用いて、圧力5000MPa、温度1300℃の焼結条件で、加熱加圧処理し、焼結体を作製した。
(焼結体の測定)
得られた結晶体中の立方晶AlCrNを、TEM−EDXを用いて、AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる場合の各元素の価数を測定した。結果を表1〜3の「立方晶AlCrNの価数」欄に示す。また、透過電子線回折により、焼結体中のセラミックス結晶粒子が、六方晶AlNの外周に立方晶AlCrNが存在するコアシェル構造となっていることを確認した。
(切削工具の作製)
得られた焼結体を、レーザにより切断して仕上げ加工し、先端ノーズR0.8mmの切削工具を作製した。
[比較例1、2]
比較例として、超硬合金(組成:WC/Co=50体積%/50体積%、比較例1)またはアルミナセラミックス(組成:Al/Y=95体積%/5体積%、比較例2)を用いて上記実施例と同様の切削工具を作製した。
<切削試験1>
上記実施例1−1〜1−50および比較例1、2で得られた切削工具について、以下の切削条件で鋼(S45C)の切削試験を行い、1km切削後の各切削工具の逃げ面の摩耗量(μm)を測定した。
切削速度:400m/min.
切込み量:0.2mm
送り量:0.1mm/rev
切削油:なし
測定の結果を表1〜3に示す。
表1〜3に示す結果から分かるように、実施例1−1〜1−50のセラミックス焼結体は、セラミックス結晶粒子の中心部(コア)に六方晶AlNを有し、外周部(シェル、最外層)に立方晶AlCrNを有するコアシェル構造となっていた。また、実施例1−1〜1−50のセラミックス結晶粒子を用いて作製した焼結体からなる切削工具は、従来例である比較例1および2の切削工具よりも、耐摩耗性に優れていた。
[実施例2−1〜2−63]
市販の金属Al粉末(平均粒径1μm)、金属Cr粉末(平均粒径10μm)、六方晶AlN粉末(平均粒径1μm)、六方晶CrN粉末(平均粒径5μm)および遷移金属元素からなる粉末(平均粒径5μm)を表4〜7の「原料の組成(vol%)」欄に記載の割合となるように秤量した。これらをビーズミルで粉砕、混合処理して、均一に混合されたスラリーを作り、該スラリーを乾燥させることで混合粉末を準備した。
次に、該混合粉末を窒素炉中で、表4〜7の「処理条件」欄に記載の窒素圧力および温度で加熱加圧処理して、セラミックス結晶粒子を作製した。
(セラミックス結晶粒子の測定)
得られたセラミックス結晶粒子について、TEMを用いた電子線回折法で分析すると、セラミックス結晶粒子の中心部に六方晶AlNが存在し、外周部に立方晶AlCrNが存在することが分かった。さらに、実施例2−6〜2−10では、遷移金属元素の窒化物及び炭化物(TiN、TiC)に対応するX線回折線のピークが同定された。
次に、実施例1−1〜1−50と同様の方法により、各結晶のXRD強度比を算出した。
また、立方晶AlCrNをTEM−EDXを用いて、AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる場合のNの価数を測定した。結果を表4〜7の「AlCrNの窒素比率y」欄に示す。
(焼結体の作製)
次にセラミックス結晶粒子と結合材の粉末とをボールミルで混合して混合粉末を得た。各実施例で用いた結合材の種類および混合粉末中の結合材の量(vol%)を表4〜7の「結合材」の欄に示す。該混合粉末を乾燥させた後、タンタル製のカプセルに充填し、プレス機を用いて、表4〜7に示す「焼結条件」欄に記載の圧力および温度で処理して焼結体を作製した。
(焼結体の測定)
得られた結晶体中の立方晶AlCrNを、TEM−EDXを用いて、AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる場合の各元素の価数を測定した。結果を表4〜7の「立方晶AlCrNの価数」欄に示す。また、透過電子線回折により、焼結体中のセラミックス結晶粒子が、六方晶AlNの外周に立方晶AlCrNが存在するコアシェル構造となっていることを確認した。
(切削工具の作製)
得られた焼結体を、レーザにより切断して仕上げ加工し、先端ノーズR0.8mmの切削工具を作製した。
<切削試験2>
得られた切削工具を用いて、以下の切削条件で鋼(S45C)の切削試験を行い、1km切削後の各切削工具の逃げ面の摩耗量(μm)を測定した。
切削速度:400m/min.
切込み量:0.2mm
送り量:0.1mm/rev
切削油:なし
測定の結果を表4〜7に示す。
表4〜7に示す結果から分かるように、実施例2−1〜2−63のセラミックス焼結体は、セラミックス結晶粒子の中心部(コア)に六方晶AlNを有し、外周部(シェル)に立方晶AlCrNを有するコアシェル構造となっていた。また、実施例2−1〜2−63のセラミックス結晶粒子を用いて作製した焼結体からなる切削工具は、従来例である比較例1および2の切削工具よりも、耐摩耗性に優れていた(比較例については表3参照)。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のセラミックス結晶粒子およびセラミックス焼結体は、工具材料等として広く利用することができ、切削工具に用いた場合は、長距離にわたって、被削材の表面に平滑な切削表面を形成することができる。特に、硬度の高い被削材、耐熱合金からなる被削材、鉄系材料を含む被削材を切削するための切削工具に好適に利用することができる。
1 外周部(最外層)の位置、2 内部(コア)の位置。

Claims (18)

  1. 主として立方晶AlCrNを含む最外層と、主として六方晶AlNを含むコアとを有するセラミックス結晶粒子。
  2. 前記最外層中に含まれるアルミニウムの量の原子分率が、前記最外層中に含まれるアルミニウムおよびクロムの総量に対して、0.35以上0.99以下である、請求項1に記載のセラミックス結晶粒子。
  3. 前記立方晶AlCrNが、一般式AlCr1−x(0<x<1、0.7≦y≦1)で表わされる、請求項1または2に記載のセラミックス結晶粒子。
  4. 前記最外層は、さらに、周期律表の第4A族元素、第5A族元素および第6A族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス結晶粒子。
  5. 前記最外層の総量に対する前記遷移金属元素の総量は、1at%以上30at%以下である、請求項4に記載のセラミックス結晶粒子。
  6. 前記最外層において、前記遷移金属元素は前記立方晶AlCrNに固溶して、一般式AlCr(Mは遷移金属元素、A+B+C=1、0.7≦y≦1)で表わされる固溶体を形成している、請求項4または5に記載のセラミックス結晶粒子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックス結晶粒子を含むセラミックス焼結体。
  8. さらに結合材を含む、請求項7に記載のセラミックス焼結体。
  9. 前記結合材は、
    周期律表の第4A族元素、第5A族元素、第6A族元素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素と、炭素、窒素および酸素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる少なくとも1種の結合材化合物、
    前記結合材化合物の固溶体、
    鉄、コバルト、ニッケル、チタンおよびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、ならびに、
    前記金属間の化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項8に記載のセラミックス焼結体。
  10. 前記セラミックス焼結体中の前記結合材の配合率は、5体積%以上60体積%以下である、請求項8または9に記載のセラミックス焼結体。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックス結晶粒子の製造方法であって、
    六方晶AlN粉末を撹拌しながら、該六方晶AlN粉末を構成する各粒子の表面に、前記最外層を気相合成する工程を含み、
    前記気相合成において、AlおよびAlNよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr、CrNおよびCrNよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合してなるターゲットを用いる、製造方法。
  12. 前記気相合成は、アルゴンガスおよび窒素ガスの混合ガス雰囲気中で実施される、請求項11に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックス結晶粒子の製造方法であって、
    Al粉末およびAlN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、Cr粉末、CrN粉末およびCrN粉末よりなる群から選ばれる少なくとも1種とを混合して第1混合粉末を得る工程と、
    前記第1混合粉末を加熱加圧処理する工程とを含む、製造方法。
  14. 前記加熱加圧処理は窒素雰囲気中で実施される、請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記加熱加圧処理は、10kPa以上12MPa以下の圧力下および600℃以上3500℃以下の温度で実施される、請求項13または14に記載の製造方法。
  16. 請求項8〜10のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記セラミックス結晶粒子と前記結合材とを混合して第2混合粉末を得る工程と、
    前記第2混合粉末を加熱加圧処理する工程とを含む、製造方法。
  17. 前記加熱加圧処理は非酸化雰囲気中で実施される、請求項16に記載の製造方法。
  18. 前記加熱加圧処理は、10kPa以上15GPa以下の圧力および800℃以上1900℃以下の温度で実施される、請求項16または17に記載の製造方法。
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