JP2014181730A - 車両の動力伝達機構の制御装置 - Google Patents

車両の動力伝達機構の制御装置 Download PDF

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Masato SHIGENAGA
正人 重長
Takeshi Kurata
武嗣 藏田
Shohei Aoki
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Abstract

【課題】車両搭載駆動源に接続される入力軸にクラッチを介して接続される出力軸を有する動力伝達機構を備えた車両において、クラッチの係合力を補正してクラッチの振動を抑制すると共に、製造バラツキや経年劣化などに対応して補正するようにした車両の動力伝達機構の制御装置を提供する。
【解決手段】動力伝達機構の検出されたクラッチの出力回転数からその出力回転変化率を算出し、算出値が正値のときはクラッチの係合力を減少補正する一方、負値のときは増加補正する装置であって、所定の学習条件が成立するとき、補正量を徐々に増加しながらクラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、減少補正または増加補正によってクラッチの出力回転数に生じた振動の振幅が変化したときの補正量を学習し(S200からS238)、学習された補正量に基づいてクラッチの係合力を補正する。
【選択図】図10

Description

この発明は車両の動力伝達機構の制御装置に関し、より具体的には車両の動力伝達機構のクラッチの振動(ジャダ)を抑制するようにした装置に関する。
車両に搭載される駆動源に接続される入力軸と入力軸に油圧クラッチを介して接続される出力軸を有する自動変速機などの動力伝達機構を備えた車両において、動力伝達機構のクラッチの入出力の差回転に起因して振動(ジャダ)が生じて乗員に違和感を与えることがある。この振動はクラッチの劣化が進むにつれて顕著となる。
従来、トルクコンバータを備えた動力伝達機構においてロックアップクラッチのスリップ量が目標値に制御されているときにロックアップクラッチの振動が検出されたとき、目標スリップ量を増加補正してロックアップクラッチの振動を抑制することが特許文献1記載の技術によって提案されている。
特許第3518648号公報
特許文献1記載の技術の場合、クラッチがトルクコンバータのロックアップクラッチであるため、スリップ量を増加させて振動を抑制しても支障ないが、クラッチが駆動源に接続される入力軸と出力軸を接続する駆動力伝達用である場合、単にスリップ量を増加させるだけでは駆動力の不足を招いてしまう。
従って、クラッチの係合力を補正してクラッチの入出力の差回転に起因して生じる振動を抑制することが望ましいが、製造バラツキや経年変化などに対応して補正するようにすると、一層望ましい。
この発明の目的は上記した課題を解決し、車両搭載駆動源に接続される入力軸にクラッチを介して接続される出力軸を有する動力伝達機構を備えた車両において、クラッチの係合力を補正してクラッチの振動を抑制すると共に、製造バラツキや経年劣化などに対応して補正するようにした車両の動力伝達機構の制御装置を提供することにある。
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、車両に搭載される駆動源と、前記駆動源に接続される入力軸と前記入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構のクラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、前記クラッチの出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出手段と、前記検出されたクラッチの出力回転数から前記クラッチの出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段と、所定の学習条件が成立するとき、補正量を徐々に増加しながら前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記減少補正または増加補正によって前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が変化したときの補正量を学習するクラッチ係合力学習手段とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された補正量に基づいて前記クラッチの係合力を補正する如く構成した。
請求項2に係る車両の動力伝達機構の制御装置にあっては、前記クラッチ係合力学習手段は、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻で前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻を学習する如く構成した。
請求項3にあっては、車両に搭載される駆動源と、前記駆動源に接続される入力軸と前記入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構のクラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、前記クラッチの出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出手段と、前記検出されたクラッチの出力回転数から前記クラッチの出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段と、所定の学習条件が成立するとき、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻で前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻を学習するクラッチ係合力学習手段とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された時刻に基づいて前記クラッチの係合力を補正する如く構成した。
請求項4に係る車両の動力伝達機構の制御装置にあっては、前記クラッチ係合力学習手段は、前記クラッチの出力回転数に既定値以上の振動的変位が生じたとき、前記補正量の極性を反転させた値を学習する如く構成した。
請求項1にあっては、車両に搭載される駆動源に接続される入力軸と入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、クラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、駆動源から出力される駆動力を係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、クラッチの出力回転数を検出してそれからクラッチの出力回転変化率を算出し、算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときはクラッチの係合力を減少補正する一方、算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときはクラッチの係合力を増加補正する如く構成したので、クラッチの振動をクラッチ出力回転変化率から検知できると共に、クラッチ出力回転変化率が正値、換言すればクラッチの差回転が減少しているときはクラッチ係合力を減少補正する一方、クラッチ出力回転変化率が負値、換言すればクラッチの差回転が増加しているときはクラッチ係合力を増加補正するように構成したので、クラッチの差回転を適正な値に保持することができ、クラッチの入出力の差回転に起因して生じる振動を抑制することができ、よって乗員に違和感を与えることがない。
また、所定の学習条件が成立するとき、補正量を徐々に増加しながらクラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、それによってクラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が変化したときの補正量を学習し、学習された補正量に基づいてクラッチの係合力を補正する如く構成したので、クラッチの係合力が作動油の油圧で調整される場合、クラッチを含む動力伝達機構の製造バラツキや経年変化などに起因する油圧の応答遅れなどにより、係合力を補正することで振動が却って増加することも生じ得るが、所定の学習条件が成立する時点を製造バラツキや経年変化を捕捉し得る時期に適宜設定すると共に、所定の学習条件が成立するときに学習される補正量に基づいて係合力を補正するようにすることで、振動を効果的に抑制することができる。
請求項2に係る車両の動力伝達機構の制御装置にあっては、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻(遅れ時間)でクラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻(遅れ時間)を学習する如く構成したので、上記した効果に加え、振動を一層効果的に抑制することができる。
請求項3にあっては、車両に搭載される駆動源に接続される入力軸と入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、クラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、駆動源から出力される駆動力を係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、クラッチの出力回転数を検出してそれからクラッチの出力回転変化率を算出し、算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときはクラッチの係合力を減少補正する一方、算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときはクラッチの係合力を増加補正するように構成したので、クラッチの差回転を適正な値に保持することができ、クラッチの入出力の差回転に起因して生じる振動を抑制することができ、よって乗員に違和感を与えることがない。
また、所定の学習条件が成立するとき、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻(遅れ時間)でクラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻を学習し、学習された時刻に基づいてクラッチの係合力を補正する如く構成したので、クラッチの係合力が作動油の油圧で調整される場合、クラッチを含む動力伝達機構の製造バラツキや経年変化などに起因する油圧の応答遅れなどにより、係合力を補正することで振動が却って増加することも生じ得るが、所定の学習条件が成立する時点を製造バラツキや経年変化を捕捉し得る時期に適宜設定すると共に、所定の学習条件が成立するときにクラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻(遅れ時間)に基づいて係合力を補正するようにすることで、振動を効果的に抑制することができる。
請求項4に係る車両の動力伝達機構の制御装置にあっては、クラッチの出力回転数に既定値以上の振動的変位が生じたとき、補正量の極性を反転させた値を学習する如く構成したので、上記した効果に加え、振動を一層効果的に抑制することができる。
この発明に係る車両の動力伝達機構の制御装置を概略的に示す全体図である。 図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。 図1に示す装置の車速センサから出力されるパルス信号を示す説明図である。 同様に図1に示す装置の車速センサから出力されるパルス信号を示す説明図である。 図2フロー・チャートで算出されるクラッチ出力回転数とクラッチ出力回転変化率を示す説明図である。 図2フロー・チャートの処理を説明する説明図である。 図2フロー・チャートの処理で算出されるクラッチ出力回転変化率に対するクラッチ補正指令圧の特性を示す説明図である。 図2フロー・チャートの処理で使用される第1、第2の所定時間などを示す、図5と同様の説明図である。 図1に示す装置において図2フロー・チャートと平行して行われる学習動作を示すフロー・チャートである。 図9フロー・チャートの学習動作の詳細を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図9フロー・チャートの学習動作で調整(操作)されるゲインと時刻を説明するタイム・チャートである。 図10フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。 同様に図10フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。 同様に図10フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
以下、添付図面を参照してこの発明に係る車両の動力伝達機構の制御装置を実施するための形態について説明する。
図1は、この実施例に係る車両の動力伝達機構の制御装置を概略的に示す全体図である。
図1において符号1は車両を示し、車両1には動力伝達機構2が搭載される。動力伝達機構2は自動変速機、より具体的には無段変速機CVT(以下「CVT」という)10などを備える。CVT10はエンジン(駆動源)12の出力を変速し、ディファレンシャル機構Dを介して左右の駆動輪(前輪)WL,WRに伝達する。エンジン12は例えばガソリンを燃料とする火花点火式の4気筒の内燃機関からなる。
CVT10は互いに平行に設けられた入力軸14と出力軸16と中間軸18を有し、ディファレンシャル機構Dと共にCVTケース10a内に収容される。入力軸14はエンジン12、より具体的にはエンジン12の出力軸(クランク軸)12bにカプリング機構CPを介して接続される。入力軸14にはCVT10のドライブプーリ20が設けられる。
ドライブプーリ20は、入力軸14に相対回転不能で軸方向移動不能に設けられた固定プーリ半体20aと、入力軸14に相対回転不能で固定プーリ半体20aに対して軸方向移動自在に設けられた可動プーリ半体20bからなる。可動プーリ半体20bの側方には、供給された油圧(作動油の圧力)に応じてドライブプーリ20のプーリ幅(換言すれば側圧)を調整するドライブプーリ幅調整機構22が設けられる。
ドライブプーリ幅調整機構22は、可動プーリ半体20bの側方に設けられたシリンダ壁22aと、シリンダ壁22aと可動プーリ半体20bとの間に形成されたシリンダ室22bと、シリンダ室22b内に設けられて可動プーリ半体20bを常時固定プーリ半体20aに近づける方向に付勢するリターンスプリング22cとを有する。
シリンダ室22b内の油圧が上昇すると、可動プーリ半体20bが固定プーリ半体20aに近づき、ドライブプーリ20のプーリ幅が狭められ(側圧が増加され)、作動油の圧力が低下すると、可動プーリ半体20bが固定プーリ半体20aから離れてプーリ幅は広げられる(側圧が減少される)。
出力軸16にはドリブンプーリ24が設けられる。ドリブンプーリ24は、出力軸16に相対回転不能で軸方向移動不能に設けられた固定プーリ半体24aと、出力軸16に相対回転不能で固定プーリ半体24aに対して軸方向移動自在に設けられた可動プーリ半体24bからなる。可動プーリ半体24bの側方には、供給された油圧に応じてドリブンプーリ24のプーリ幅(側圧)を調整するドリブンプーリ幅調整機構26が設けられる。
ドリブンプーリ幅調整機構26は、可動プーリ半体24bの側方に設けられたシリンダ壁26aと、シリンダ壁26aと可動プーリ半体24bとの間に形成されたシリンダ室26bと、シリンダ室26b内に設けられて可動プーリ半体24bを常時固定プーリ半体24aに近づける方向に付勢するリターンスプリング26cとを有する。
シリンダ室26b内の油圧が上昇すると、可動プーリ半体24bが固定プーリ半体24aに近づき、ドリブンプーリ24のプーリ幅が狭められ(側圧が増加され)、作動油の圧力が低下すると、可動プーリ半体24bが固定プーリ半体24aから離れてプーリ幅は広げられる(側圧が減少される)。
ドライブプーリ20とドリブンプーリ24との間には金属製のV字形状のベルト(動力伝達要素)30が巻き掛けられる。ベルト30は多数のエレメントが図示しないリング状部材により連結され、各エレメントに形成されたV字面がドライブプーリ20とドリブンプーリ24のプーリ面と接触し、両側から強く押圧された状態でエンジン12などの動力をドライブプーリ20からドリブンプーリ24に伝達する。
入力軸14上には遊星歯車機構32が設けられる。遊星歯車機構32は、入力軸14にスプライン嵌合されて入力軸14と一体に回転するサンギヤ34と、ドライブプーリ20の固定プーリ半体20aと一体に形成されたリングギヤ36と、入力軸14に対して相対回転自在に設けられたプラネタリキャリヤ40と、プラネタリキャリヤ40に回転自在に支承された複数のプラネタリギヤ42とを有する。
各プラネタリギヤ42は、サンギヤ34とリングギヤ36の双方と常時噛合する。サンギヤ34とリングギヤ36との間にはFWD(前進)クラッチ44が設けられ、プラネタリキャリヤ40とケース10aとの間にはRVS(後進)ブレーキクラッチ46が設けられる。
FWDクラッチ44は、シリンダ室44aに作動油が供給されるとき、クラッチピストン44bをリターンスプリング44cのばね力に抗して図1で左方に移動させることにより、サンギヤ34側の摩擦板とリングギヤ36側の摩擦板とを係合させてサンギヤ34とリングギヤ36とを結合することで係合(インギヤ)され、車両1を前進走行可能にする。
RVSブレーキクラッチ46は、シリンダ室46aに作動油が供給され、ブレーキピストン46bをリターンスプリング46cのばね力に抗して図1で左方に移動させることにより、ケース10a側の摩擦板とプラネタリキャリヤ40側の摩擦板とを係合させてケース10aとプラネタリキャリヤ40とを結合することで係合(インギヤ)され、車両1を後進走行可能にする。
出力軸16には、中間軸ドライブギヤ50と共に、発進(スタート)クラッチ(前記した「クラッチ」)52が設けられる。発進クラッチ52はシリンダ室52aに作動油が供給され、クラッチピストン52bをリターンスプリング52cのばね力に抗して移動させることにより、出力軸16側の摩擦板と中間軸ドライブギヤ50側の摩擦板とを係合させて出力軸16と中間軸ドライブギヤ50とを結合する。
中間軸18には、中間軸ドリブンギヤ54とDF(ディファレンシャル)ドライブギヤ56とが設けられる。中間軸ドリブンギヤ54とDFドライブギヤ56は共に中間軸18上に固定して設けられ、中間軸ドリブンギヤ54は中間軸ドライブギヤ50と常時噛合する。DFドライブギヤ56はケースDcに固定されたDFドリブンギヤ58と常時噛合する。
ディファレンシャル機構Dには左右のドライブシャフト60が固定されると共に、その端部には左右の駆動輪WL,WRが取り付けられる。DFドリブンギヤ58はDFドライブギヤ56と常時噛合し、中間軸18の回転に伴ってケースDc全体が左右のドライブシャフト60まわりに回転するように構成される。
上記したプーリの両シリンダ室22b,26bに供給される作動油の圧力を制御し、ベルト30の滑りが発生しない側圧をドライブプーリ20のシリンダ室22bとドリブンプーリ24のシリンダ室26bとに与えた状態で入力軸14にエンジン12の回転を入力すると、その回転は、入力軸14→ドライブプーリ20→ベルト30→ドリブンプーリ24→出力軸16と伝達される。
このとき、ドライブプーリ20とドリブンプーリ24の両プーリの側圧を増減させることによってプーリ幅を変化させ、ベルト30の両プーリ20,24に対する巻き掛け半径を変化させることにより、巻き掛け半径の比(プーリ比)に応じた所望の変速比を無段階で得ることができる。
動力伝達機構2はドライブプーリ20とドリブンプーリ24とFWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46と発進クラッチ52から構成され、ドライブプーリ20とドリブンプーリ24のプーリ幅とFWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46と発進クラッチ52の係合・非係合は、油圧制御装置62を介してそれらのシリンダ室22b,26b,44a,46a,52aに供給される作動油の圧力(油圧)を制御することで行われる。
油圧制御装置62はエンジン12で駆動されてリザーバ62aから作動油を汲み上げて油路62bに吐出する油圧ポンプ62cと、油路62bに配置されて作動油の流れと圧力を切り替える一群の電磁制御バルブ62dを備える。
一群の電磁制御バルブ62dは、ドライブプーリ幅調整機構22とドリブンプーリ幅調整機構26のシリンダ室22b,26bへの供給油圧をそれぞれ制御する(ノーマルオープン型の)リニアソレノイドバルブと、FWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46のシリンダ室44a,46aへの供給油圧をそれぞれ制御するシフトソレノイドバルブと、発進クラッチ52のシリンダ室52aへの供給油圧を制御するリニアソレノイドバルブを含む。
エンジン12の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されたアクセルペダルとの機械的な接続が絶たれてDBW(Drive By Wire)機構64に接続され、そのアクチュエータ(ステッピングモータ)64aによって開閉される。
エンジン12においてスロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ66から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブが開放されたときに燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室で混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動して出力軸12bを回転させた後、排気となってエンジン12の外部に放出される。
エンジン12のカム軸(図示せず)付近にはクランク角センサ68が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流には絶対圧センサ70が設けられて吸気管内圧力(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
エンジン12の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ72が設けられて冷却水温TWに応じた出力を生じると共に、スロットルバルブの上流の適宜位置には吸気温センサ74が設けられて吸気温TAに応じた出力を生じる。DBW機構64のステッピングモータ64aの付近にはスロットル開度センサ76が設けられてスロットル開度THに比例した信号を出力する。
油圧制御装置62においてリザーバ62aの内部などには油温センサ78が設けられてCVT10に供給される作動油(ATF)の温度を示す出力を生じる。
CVT10においてドライブプーリ20の付近にはNDRセンサ80が設けられてドライブプーリ20の回転数(CVTの入力回転数NDR)に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ24の付近にはNDNセンサ82が設けられ、ドリブンプーリ24の回転数(CVTの出力回転数NDN)を示すパルス信号を出力する。
ドライブシャフト60の付近には車速センサ84が設けられ、ドライブシャフト60の回転数を通じて車速(車両1の走行速度)V、あるいは中間軸18の回転数(換言すれば発進クラッチ52の出力回転数)を示すパルス信号を出力する。
NDRセンサ80とNDNセンサ82と車速センサ84は磁気ピックアップなどの磁電変換素子からなり、ドライブ/ドリブンプーリ20,24と中間軸18の軸回りに配置された複数個の突起で形成される磁界との交錯に応じて1回転当たり複数個のパルス信号を出力する。
さらに、車両運転席のアクセルペダル付近にはアクセル開度センサ86が設けられ、運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APを示す信号を出力する。
上記したクランク角センサ68などの出力はECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)90に送られる。ECU90はマイクロコンピュータ90aを備え、上記したセンサ出力はそのマイクロコンピュータ90aに入力される。ECU90においてマイクロコンピュータ90aはセンサ出力に基づいてエンジン12の動作を制御すると共に、作動油の給排による係合力の調整を通じてCVT10とFWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46と発進クラッチ52の動作を制御する。
このように、この実施例においては、車両1に搭載されるエンジン(駆動源)12と、エンジン12に接続される入力軸14と入力軸14に発進クラッチ(クラッチ)52を介して接続される出力軸16とを少なくとも有するCVT10を備える動力伝達機構2と、発進クラッチ52に供給される作動油を介してCVT10の発進クラッチ52の係合力を調整するECU(クラッチ係合力調整手段)90とを備え、エンジン12から出力される駆動力をECU90によって係合力が調整された発進クラッチ(以下単に「クラッチ」という)52を介して駆動輪WL,WRに伝達して走行するように構成される。
図2は上記した装置の動作、より具体的にはECU90の動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S10においてクラッチ出力回転数(クラッチ52の出力回転数、より正確には中間軸18の回転数)を算出する。尚、「S」は図2フロー・チャートの処理ステップを示す。クラッチ出力回転数の算出は車速センサ84から出力されるパルス信号の時間間隔を計測することで行う。
図3は車速センサ84から出力されるパルス信号を示す説明図である。この種の計測では従来の計測手法ではパルス列の立上がりエッジの時間間隔を用いるが、この実施例においては、それに加え、立下りエッジの時間間隔も用いてクラッチ出力回転数を算出する。
尚、図3に示す構成に代え、図4に示す如く、パルス列の立上がりエッジの時間間隔と、立上がりエッジと立下りエッジの時間間隔を用いてクラッチ出力回転数を算出しても良い。
図2フロー・チャートでは次いでS12に進み、クラッチ出力回転変化率(クラッチ52の出力回転変化率)を算出する。クラッチ出力回転変化率は、S10で算出されたクラッチ出力回転数の微分値を求めることで算出する。
図5にクラッチ出力回転数とクラッチ出力回転変化率を示す。尚、中間軸18の回転数(車速V)が極めて低いときはノイズが混入して検出精度が低下することから、S12の処理において中間軸18の回転数を所定値と比較し、それ未満のときはクラッチ出力回転変化率の算出を停止する。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS14に進み、クラッチ出力回転変化率が算出できたか、換言すれば中間軸18の回転数が所定値以上か否か判断し、否定されるときはS16に進み、タイマ(タイマカウンタ。後述)の値を0にリセットし、フラグFのビットを0にリセットする。
次いでS18に進み、クラッチF/B制御を停止する。「クラッチF/B制御」は、「算出されたクラッチ出力回転変化率が正値のときはクラッチの係合力(クラッチ圧)を減少補正する一方、負値のときはクラッチの係合力を増加補正する」処理を意味する。
この処理は具体的には、図5に示す如く、クラッチ出力回転変化率の正負に応じて回転変化率にゲイン(比例ゲイン)GTを乗じた値をクラッチ補正指令圧(減少補正または増加補正の量)Pcmdとすることで行う。
図6はこの実施例に係る装置の動作を説明するタイム・チャートである。
図2フロー・チャートの説明を続ける前に図6を参照してこの実施例に係る装置の動作を概説すると、最初に述べたようにクラッチ52の入出力の差回転に起因して振動(ジャダ)が生じて乗員に違和感を与えることがある。この振動はクラッチ52の劣化が進むにつれて顕著となる。尚、この実施例ではクラッチ52の入出力の差回転をクラッチ52の出力回転数で示す。
図示の如く、クラッチ52の振動は車速センサ84が配置されるドライブシャフト60の捩れによっても増加すると共に、クラッチ52の摩擦係数(摩擦板の摩擦係数)μの影響を受け、クラッチ52の入出力の差回転が増大し、摩擦係数μが減少する状態で発生する。
従って、この実施例においては、クラッチ出力回転数からクラッチ出力回転変化率を求め、算出されたクラッチ出力回転変化率が正値のときはクラッチ52の入出力の差回転が少なくなり、摩擦係数μが大きくなるため、クラッチの係合力を減少補正するようにクラッチ補正指令圧を算出する一方、負値のときはクラッチ52の入出力の差回転が大きくなり、摩擦係数μが低下するため、クラッチの係合力を増加補正するようにクラッチ補正指令圧を算出するように構成した。
図7はクラッチ出力回転変化率に対するクラッチ補正指令圧の特性を示す説明図である。
図示の如く、クラッチ補正指令圧Pcmdは、減少補正する場合であっても増加補正する場合であっても、クラッチ出力回転変化率が大きいほど増加するように算出される。即ち、クラッチ補正指令圧Pcmdは、クラッチ出力回転変化率が絶対値において大きいほど減少補正または増加補正の量が大きくなるように算出される。
また、図5を参照して説明した如く、クラッチ補正指令圧Pcmdはクラッチ出力回転変化率にゲインGTを乗じて算出されるが、そのゲインGTも変化率の正負に応じて持ち替えることとする。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、他方、S14で肯定されてクラッチ出力回転変化率が算出できたと判断されるときはS20に進み、クラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲(所定範囲)外か否か、即ち、クラッチ出力回転変化率にしきい値を超える振動(振動的変位)が生じたか否か、換言すればクラッチ52に振動(振動的変位)が生じたか否か判断する。
図8にしきい値の範囲を示す。図示の如く、しきい値はクラッチ出力回転変化率の零を中心とした正負(上下)の微小な値th1,th2に設定され、しきい値の範囲はこれら上下の値th1,th2で区画される範囲を意味する。
図2フロー・チャートにおいてはS20で否定されてクラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲(所定範囲)外ではない、換言すればしきい値の範囲内にあると判断されるときはS22に進み、タイマの値を0にリセットすると共に、フラグFのビットを0にリセットし、次いでS24に進み、クラッチF/B制御を停止する。
一方、S20で肯定されてクラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲(所定範囲)外と判断されるときはS26以降に進み、条件が成立すればクラッチF/B制御を実行する。
S20でこのように判断するのは、不要な補正を回避する一方、必要な補正を確実に行うためである。即ち、クラッチ52の振動は、クラッチ52に供給される作動油ATFの温度(油温)TATFによって相違すると共に、出力軸16の回転数(車速V)にも依存する。
従って、しきい値の範囲は油温と車速、少なくとも油温に基づき、振動が発生し易い領域では狭く設定する(即ち、クラッチF/B制御が実行され易い)一方、振動が発生し難い領域では広く(即ち、クラッチF/B制御が停止され易い、換言すれば不要な制御が実行されるのを回避)するように変更することとする。
換言すれば、クラッチ52の振動が生じ易い領域か否かに応じてしきい値の範囲を設定することで、振動が生じ易い領域では範囲を縮小して所定レベル以上の振動に対して補正し易くする一方、振動が生じ難い領域では範囲を拡大して補正し難くすることが可能となり、よって不要な補正を回避する一方、必要な補正を確実に行えるからである。
また、しきい値の範囲は油温と車速、少なくともクラッチ52に供給される作動油の温度に基づいて変更される如く構成したので、不要な補正を一層確実に回避する一方、必要な補正を一層確実に行えるからである。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、S20で肯定されるときはS26に進み、前記したフラグFのビットが0にリセットされているか否か判断し、肯定されるときはS28に進み、前記したタイマをスタートさせて時間計測を開始する一方、S26で否定されるときはS28をスキップする。
次いでS30に進み、第1の所定時間が経過、即ち、クラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲外と判断されてから第1の所定時間が経過したか否か判断する。図8に第1の所定時間を示す。
S30で否定されるときはS18に進む一方、肯定されるときはS32に進み、第2の所定時間が経過、即ち、クラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲外と判断されてから第2の所定時間が経過したか否か判断する。図8に第2の所定時間を示す。第2の所定時間は第1の所定時間より長い(大きい)値に設定される。
S32で肯定されてクラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲外と判断されてから第2の所定時間が経過したと判断されたときはS34に進み、クラッチF/B制御を停止する一方、否定されるときはS36に進み、クラッチ出力回転変化率が正値か否か判断する。
S36で肯定されてクラッチ出力回転変化率が正値と判断されるときはS38に進み、ECU90によって調整されたクラッチ圧(クラッチ52への供給油圧)を減少補正するF/B制御を実行する一方、S36で否定されてクラッチ出力回転変化率が負値と判断されるときはS40に進み、ECU90によって調整されたクラッチ圧を増加補正するF/B制御を実行する。
前記した如く、クラッチF/B制御においてはクラッチ出力回転変化率にゲインGTを乗じて得たクラッチ補正指令圧をクラッチ出力回転変化率の正負と位相が反転するように出力することで行う。
図8を参照して上記を説明する。
クラッチ出力回転変化率は図示のように正値から負値または負値から正値への反転を繰り返すが、しきい値の範囲外と判断されたことはクラッチ出力回転変化率が正値から負値に反転、または負値から正値に反転して上下の値th1,th2のいずれかを超えたことを意味する。
ここで、クラッチ出力回転変化率が正値から負値または負値から正値に反転して上下の値th1,th2のいずれかを超えてから第1の所定時間が経過するまではクラッチF/B制御を停止するのは、ノイズに起因して不要な補正を行う結果となるのを回避するためである。
即ち、クラッチ出力回転変化率は正値と負値の間で頻繁に反転を繰り返すことから、クラッチ出力回転変化率が連続してしきい値の範囲を超えた場合に限定してクラッチF/B制御を実行することで、ノイズに起因して不要な補正を行う結果となるのを回避する。
また、クラッチ出力回転変化率が正値から負値または負値から正値に反転して上下の値th1,th2のいずれかを超えてから第1の所定時間より長い第2の所定時間が経過した後はクラッチF/B制御を停止するのは、クラッチF/B制御を行うことで作動油の応答遅れによって却って振動を増大させてしまう結果となるのを回避するためである。
従って、第2の所定時間は作動油の応答遅れを考慮した値となるため、ノイズ除去用の第1の所定時間に比して必然的に長い値に設定されると共に、油温などの作動油の応答性によって変更自在に設定される。
図2フロー・チャートのS38のクラッチ圧を減少補正するF/B制御、あるいはS40のクラッチ圧を増加補正するF/B制御にあっては、続いて述べる学習動作で得られた学習値があるときは、それが使用される。
以下、その学習動作について説明する。
図9は図2フロー・チャートと平行して行われる学習動作を示すフロー・チャート、図10は図9フロー・チャートの学習動作の詳細を示すサブ・ルーチン・フロー・チャート、図11は図9フロー・チャートの学習動作で調整(操作)されるゲインと時刻を示すタイム・チャート、図12から図14はそれらを詳細に示すタイム・チャートである。
以下説明すると、図9のS100において所定の学習条件が成立するか否か判断する。CVT10などが搭載される車両1が製造工場から出荷されるとき、図2の処理でクラッチ52の振動が収束するまでに既定時間以上を要するようになったとき、出荷などから起算される既定のクラッチ累積ダメージが積算されたとき、所定の学習条件が成立したと判断される。
S100で否定されるときは以後の処理をスキップする一方、肯定されるときはS102に進み、ゲインGT(クラッチ補正指令圧を決定)と時刻T(クラッチ補正指令圧の出力時刻に相当)をリセット(初期化)し、S104に進み、学習を実行する。
図10はその処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S200において図2フロー・チャートのS20の処理と同様、算出されたクラッチ出力回転変化率がしきい値の範囲外か、即ち、クラッチ出力回転変化率にしきい値を超える振動(振動的変位)が生じたか否か判断する。
S200で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS202に進み、フラグF1のビットが0にリセットされているか否か判断する。
フラグF1のビットの初期値は0にリセットされていることから、S202の判断は通例肯定されてS204に進み、ゲインGTをG0(最小値。例えば1.0)に設定し、S206に進み、設定されたゲインGTを算出されたクラッチ出力回転変化率に乗じてクラッチ補正指令圧Pcmdを時刻Tで出力する。
遅れ時間Tはクラッチ出力回転数の周期Tの起算点に相当する時刻t0から1/2が経過した時刻t1までの間の時刻を意味する。この場合、図11に示す如く、T=t0で時刻は零とする。
次いでS208に進み、フラグF1のビットを1にセットし、S210に進み、図2フロー・チャートのS10の処理と同様、クラッチ出力回転数を算出(検出)し、S212に進み、算出されたクラッチ出力回転数の振幅(より詳しくは算出されたクラッチ出力回転数の振動的変位の振幅)に変化が生じたか否か判断する。
S212で否定されるときはS200に進み、クラッチ出力回転変化率にしきい値を超える振動が生じたか否か再び判断し、肯定されるときはS202に進み、フラグF1のビットが0にリセットされているか否か判断する。このフフラグのビットはS208で1にセットされていることからS202の判断は否定されてS214に進み、ゲインGTの値に所定値αを加算して増加する。
このようにS212でクラッチ出力回転数の振幅に変化が生じたと判定されるまでS214でゲインGTを徐々に増加させてクラッチ補正指令圧Pcmdを徐々に増加させる。尚、S214までの処理で遅れ時間Tは零に固定される。
これについて説明すると、図1の油圧制御装置62においてリザーバ62aから油圧ポンプ62cで作動油が汲み上げられて油路62bと電磁制御バルブ62dを介してクラッチ52のシリンダ室52aへの供給油圧が制御されるが、油圧には本来的に応答遅れがあると共に、それらの部材の製造バラツキや経年変化に起因して油圧応答遅れも変化する。
そこで、この実施例にあっては、図11に示す如く、クラッチ出力回転数の変化に応じてクラッチ補正出力圧Pcmdを決定するゲインGTを徐々に増加するようにした。また、図10フロー・チャートのS220以降の処理の説明で続いて述べるように、ゲインGTを固定しつつ、クラッチ補正出力圧Pcmdを出力する時刻を意味する遅れ時間Tを徐々に遅延させるようにした。
その結果、クラッチ補正出力圧Pcmdは同図に符号1,2,3で示すように徐々に増加させられると共に、遅れ時間Tはクラッチ出力回転数の周期Tの起算点に相当する時刻t0から1/2が経過した時刻t1までの間で徐々に増加(遅延)させられる。
図12はゲインの増加を説明するタイム・チャートであり、この場合には回転振幅、即ち、クラッチ出力回転数の振幅にm1からm2などへの変化が生じるまで、ゲインGTを増加させるようにした。また、振幅が増減(より具体的には減少)したときのゲインGTを格納して記憶(学習)する。
図13は遅れ時間(時刻)Tの変更を説明するタイム・チャートであり、この場合には補正すべきタイミングがあっていないために振動が収束しないことから、クラッチ出力回転数の振幅が増減、より具体的には最小の値m0に減少(変化)するまで、遅れ時間Tを変更するようにした。また、振幅が増減(より具体的には減少)したときの遅れ時間Tを格納して記憶(学習)する。
図14は遅れ時間Tの変更の別の例を説明するタイム・チャートであり、この場合には遅れ時間Tを変更するとき、クラッチ補正実圧Pactの位相が重なることで出力回転数の振幅を増加させていることから、ゲインGTの極性(正負)を反転させてクラッチ補正実圧Pactの極性を反転させるようにした。また、振幅が増減(より具体的には増加)したときのゲインGTを格納して記憶(学習)する。
図10フロー・チャートの説明に戻ると,S212で肯定されるときはS216に進み、フラグF1のビットを0にリセットし、S218に進み、ゲインGTの値を格納し、S218に所定値αを加算して増加する。次いで、S220からS238に進み、図13と図14を参照して説明した処理を実行する。
尚、この実施例ではクラッチ52の入出力の差回転を車速センサ84の出力から検出されたクラッチ52の出力回転数で示したが、それに加え、NDNセンサ82の出力から検出されるクラッチ52の入力回転数を用いてクラッチ52の入出力の差回転をそのまま算出しても良い。
上記した如く、この実施例にあっては、車両1に搭載される駆動源(エンジン)12と、前記駆動源に接続される入力軸14と前記入力軸にクラッチ(発進クラッチ)52を介して接続される出力軸16とを少なくとも有する動力伝達機構(CVT10と遊星歯車機構32のFWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46と発進クラッチ52からなる)2と、前記動力伝達機構2のクラッチ(発進クラッチ)52の係合力を調整するクラッチ係合力調整手段(ECU90)とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチ52を介して駆動輪WL,WRに伝達して走行する車両1の動力伝達機構2の制御装置において、前記クラッチ52の出力回転数を検出(算出)するクラッチ出力回転数検出手段(ECU90,S10)と、前記検出されたクラッチ52の出力回転数から前記クラッチ52の出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段(ECU90,S10,S12)と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段(ECU90,S14からS40)と、所定の学習条件が成立するとき、補正量(クラッチ補正指令圧Pcmd)を徐々に増加しながら前記クラッチ52の係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記減少補正または増加補正によって前記クラッチの出力回転数に生じた振動(振動的変位)の振幅が変化したときの補正量を学習するクラッチ係合力学習手段(ECU90,S100からS104,S200からS238)とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された補正量に基づいて前記クラッチ52の係合力を補正する如く構成したので、クラッチ52の振動をクラッチ出力回転変化率から検知できると共に、クラッチ出力回転変化率が正値、換言すればクラッチの差回転が減少しているときはクラッチ係合力を減少補正する一方、クラッチ出力回転変化率が負値、換言すればクラッチ52の差回転が増加しているときはクラッチ係合力を増加補正するように構成したので、クラッチ52の差回転を適正な値に保持することができ、クラッチ52の入出力の差回転に起因して生じる振動を抑制することができ、よって乗員に違和感を与えることがない。
また、所定の学習条件が成立するとき、補正量を徐々に増加しながらクラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、それによってクラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が変化したときの補正量を学習し、学習された補正量に基づいてクラッチの係合力を補正する如く構成したので、クラッチ52の係合力が作動油の油圧で調整される場合、クラッチ52を含む動力伝達機構2の製造バラツキや経年変化などに起因する油圧の応答遅れなどにより、係合力を補正することで振動が却って増加することも生じ得るが、所定の学習条件が成立する時点を製造バラツキや経年変化を捕捉し得る時期に適宜設定すると共に、所定の学習条件が成立するときに学習される補正量に基づいて係合力を補正するようにすることで、振動を効果的に抑制することができる。
また、前記クラッチ係合力学習手段は、所定時点(時刻t0)から起算される規定の時間(時刻t1までのクラッチ出力回転数の周期Tの1/2)内に異なる時刻(遅れ時間)Tで前記クラッチ52の係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチ52の出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻(遅れ時間)を学習する(ECU90,S100からS104,S220からS238)如く構成したので、上記した効果に加え、振動を一層効果的に抑制することができる。
また、車両1に搭載される駆動源(エンジン)12と、前記駆動源に接続される入力軸14と前記入力軸にクラッチ(発進クラッチ)52を介して接続される出力軸16とを少なくとも有する動力伝達機構(CVT10と遊星歯車機構32のFWDクラッチ44とRVSブレーキクラッチ46と発進クラッチ52からなる)2と、前記動力伝達機構2のクラッチ(発進クラッチ)52の係合力を調整するクラッチ係合力調整手段(ECU90)とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチ52を介して駆動輪WL,WRに伝達して走行する車両1の動力伝達機構2の制御装置において、前記クラッチ52の出力回転数を検出(算出)するクラッチ出力回転数検出手段(ECU90,S10)と、前記検出されたクラッチ52の出力回転数から前記クラッチ52の出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段(ECU90,S10,S12)と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段(ECU90,S14からS40)と、所定の学習条件が成立するとき、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻(遅れ時間)Tで前記クラッチ52の係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチ52の出力回転数に生じた振動的変位(振動)の振幅が増減したときの遅れ時間Tを学習するクラッチ係合力学習手段(ECU90,S100からS104,S200からS238)とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された時刻(遅れ時間)Tに基づいて前記クラッチ52の係合力を補正する如く構成したので、クラッチの差回転を適正な値に保持することができ、クラッチの入出力の差回転に起因して生じる振動を抑制することができ、よって乗員に違和感を与えることがない。
また、所定の学習条件が成立するとき、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻(遅れ時間)でクラッチ52の係合力を減少補正または増加補正すると共に、クラッチ52の出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻(遅れ時間)を学習し、学習された時刻(遅れ時間)に基づいてクラッチ52の係合力を補正する如く構成したので、クラッチ52の係合力が作動油の油圧で調整される場合、クラッチ52を含む動力伝達機構2の製造バラツキや経年変化などに起因する油圧の応答遅れなどにより、係合力を補正することで振動が却って増加することも生じ得るが、所定の学習条件が成立する時点を製造バラツキや経年変化を捕捉し得る時期に適宜設定すると共に、所定の学習条件が成立するときにクラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻(遅れ時間)に基づいて係合力を補正するようにすることで、振動を効果的に抑制することができる。
また、前記クラッチ係合力学習手段は、前記クラッチ52の出力回転数に既定値以上の振動的変位が生じたとき、前記補正量の極性を反転させた値を学習する(ECU90,S100からS104,S220からS238)如く構成したので、上記した効果に加え、振動を一層効果的に抑制することができる。
尚、上記においてクラッチとして発進クラッチを開示したが、この発明はそれに限られるものではなく、車両に搭載される駆動源に接続される入力軸と出力軸を接続するクラッチであれば、FWDクラッチ44やRVSブレーキクラッチ46であっても良く、さらにはトルクコンバータのロックアップクラッチなどであっても良い。
また、上記において駆動源としてエンジンを開示したが、この発明はそれに限られるものではなく、電動機、電動機とエンジンのハイブリッドであっても良い。
また、上記において動力伝達機構2として変速機能を備えた自動変速機(CVT)10を備えるものを示したが、この発明はそれに限られるものではなく、車両に搭載される駆動源に接続される入力軸と入力軸にクラッチを介して接続される出力軸を有する機構であれば、変速機能を備えなくても良い。
1 車両、2 動力伝達機構、10 CVT(無段変速機)、12 エンジン(駆動源)、14 入力軸、16 出力軸、18 中間軸、20 ドライブプーリ、22 ドライブプーリ幅調整機構、24 ドリブンプーリ、26 ドリブンプーリ幅調整機構、30 ベルト(動力伝達要素)、44 FWDクラッチ、46 RVSブレーキクラッチ、52 発進クラッチ(クラッチ)、52a シリンダ室、60 ドライブシャフト、62 油圧制御装置、62d 電磁制御バルブ、64 DBW機構、68 クランク角センサ、70 絶対圧センサ、72 水温センサ、74 吸気温センサ、76 スロットル開度センサ、78 油温センサ、80 NDRセンサ、82 NDNセンサ、84 車速センサ、86 アクセル開度センサ、90 ECU(電子制御ユニット)、WL,WR 駆動輪

Claims (4)

  1. 車両に搭載される駆動源と、前記駆動源に接続される入力軸と前記入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構のクラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、前記クラッチの出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出手段と、前記検出されたクラッチの出力回転数から前記クラッチの出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段と、所定の学習条件が成立するとき、補正量を徐々に増加しながら前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記減少補正または増加補正によって前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が変化したときの補正量を学習するクラッチ係合力学習手段とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された補正量に基づいて前記クラッチの係合力を補正することを特徴とする車両の動力伝達機構の制御装置。
  2. 前記クラッチ係合力学習手段は、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻で前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻を学習することを特徴とする請求項1記載の車両の動力伝達機構の制御装置。
  3. 車両に搭載される駆動源と、前記駆動源に接続される入力軸と前記入力軸にクラッチを介して接続される出力軸とを少なくとも有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構のクラッチの係合力を調整するクラッチ係合力調整手段とを備え、前記駆動源から出力される駆動力を前記クラッチ係合力調整手段によって係合力が調整されたクラッチを介して駆動輪に伝達して走行する車両の動力伝達機構の制御装置において、前記クラッチの出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出手段と、前記検出されたクラッチの出力回転数から前記クラッチの出力回転変化率を算出するクラッチ出力回転変化率算出手段と、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が正値のときは前記クラッチ係合力調整手段によって調整されたクラッチの係合力を減少補正する一方、前記算出されたクラッチの出力回転変化率が負値のときは前記クラッチの係合力を増加補正するクラッチ係合力補正手段と、所定の学習条件が成立するとき、所定時点から起算される規定の時間内に異なる時刻で前記クラッチの係合力を減少補正または増加補正すると共に、前記クラッチの出力回転数に生じた振動的変位の振幅が増減したときの時刻を学習するクラッチ係合力学習手段とを備えると共に、前記クラッチ係合力補正手段は前記学習された時刻に基づいて前記クラッチの係合力を補正することを特徴とする車両の動力伝達機構の制御装置。
  4. 前記クラッチ係合力学習手段は、前記クラッチの出力回転数に既定値以上の振動的変位が生じたとき、前記補正量の極性を反転させた値を学習することを特徴とする請求項3記載の車両の動力伝達機構の制御装置。
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