以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタ500という)の一実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るプリンタ500の基本的な構成について説明する。
図2は、プリンタ500を示す概略構成図である。プリンタ500は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の四つの作像ユニット1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。
四つの作像ユニット1の上方には、中間転写体としての中間転写ベルト14を備える転写ユニット60が配置されている。詳細は後述する各作像ユニット1Y,C,M,Kが備える感光体3Y,C,M,Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上に重ね合わせて転写される構成である。
また、四つの作像ユニット1の下方に光書込ユニット40が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット40は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、各作像ユニット1Y,C,M,Kの感光体3Y,C,M,Kに照射する。これにより、感光体3Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。
なお、光書込ユニット40は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー41によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,C,M,Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
光書込ユニット40の下方には、第一給紙カセット151、第二給紙カセット152が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体である転写紙Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されており、一番上の転写紙Pには、第一給紙ローラ151a、第二給紙ローラ152aがそれぞれ当接している。
第一給紙ローラ151aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第一給紙カセット151内の一番上の転写紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路153に向けて排出される。また、第二給紙ローラ152aが図示しない駆動手段によって図2中反時計回りに回転駆動せしめられると、第二給紙カセット152内の一番上の転写紙Pが、給紙路153に向けて排出される。
給紙路153内には、複数の搬送ローラ対154が配設されている。給紙路153に送り込まれた転写紙Pは、これら搬送ローラ対154のローラ間に挟み込まれながら、給紙路153内を図2中下側から上側に向けて搬送される。
給紙路153の搬送方向下流側端部には、レジストローラ対55が配設されている。レジストローラ対55は、転写紙Pを搬送ローラ対154から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
図3は、四つの作像ユニット1のうちの一つの概略構成を示す構成図である。
図3に示すように、作像ユニット1は、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
感光体3の周囲には、帯電ローラ4、現像装置5、一次転写ローラ7、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10及び不図示の除電ランプ等が配置されている。
帯電ローラ4は、帯電手段としての帯電装置が備える帯電部材であり、現像装置5は、感光体3の表面上に形成された潜像をトナー像化する現像手段である。
一次転写ローラ7は、感光体3の表面上のトナー像を中間転写ベルト14に転写する一次転写手段としての一次転写装置が備える一次転写部材である。クリーニング装置6は、トナー像を中間転写ベルト14に転写した後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段である。
潤滑剤塗布装置10は、クリーニング装置6がクリーニングした後の感光体3の表面上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段である。不図示の除電ランプは、クリーニング後の感光体3の表面電位を除電する除電手段である。
帯電ローラ4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電ローラ4によって一様帯電された感光体3の表面は、潜像形成手段である光書込ユニット40から画像情報に基づいてレーザ光Lが照射され静電潜像が形成される。
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。
また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の二本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51の表面上に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
クリーニング装置6は、ファーブラシ101、クリーニングブレード62などを有している。クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード62の詳細については後述する。
潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103や潤滑剤加圧スプリング103a等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。
固形潤滑剤103は、ブラケット103bに保持され、潤滑剤加圧スプリング103aによりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
本実施形態の帯電装置は、帯電ローラ4を感光体3に近接させた非接触の近接配置方式であるが、帯電装置としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の構成を用いることができる。
これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。
光書込ユニット40のレーザ光Lの光源や除電ランプ等の光源には、例えば、次のものを用いることができる。すなわち、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザは照射エネルギーが高く、また600[nm]〜800[nm]の長波長光を有するため、良好に使用される。
転写手段たる転写ユニット60は、中間転写ベルト14の他、ベルトクリーニングユニット162、第一ブラケット63、第二ブラケット64などを備えている。また、四つの一次転写ローラ7Y,C,M,K、二次転写バックアップローラ66、駆動ローラ67、補助ローラ68、テンションローラ69なども備えている。中間転写ベルト14は、これら8つのローラ部材に張架されながら、駆動ローラ67の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
四つの一次転写ローラ7Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト14を感光体3Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト14の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。
中間転写ベルト14は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
二次転写バックアップローラ66は、中間転写ベルト14のループ外側に配設された二次転写ローラ70との間に中間転写ベルト14を挟み込んで二次転写ニップを形成している。
先に説明したレジストローラ対55は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを、中間転写ベルト14上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。
中間転写ベルト14上の四色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ70と二次転写バックアップローラ66との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で転写紙Pに一括二次転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト14には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット162によってクリーニングされる。
なお、ベルトクリーニングユニット162は、ベルトクリーニングブレード162aを中間転写ベルト14のおもて面に当接させており、これによって中間転写ベルト14上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
転写ユニット60の第一ブラケット63は、図示しないソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ68の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。
プリンタ500は、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第一ブラケット63を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ68の回転軸線を中心にしてY,C,M用の一次転写ローラ7Y,C,Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト14をY,C,M用の感光体3Y,C,Mから離間させる。
そして、四つの作像ユニット1Y,C,M,Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY,C,M用の作像ユニット1を無駄に駆動させることによる作像ユニット1を構成する各部材の消耗を回避することができる。
二次転写ニップの図中上方には、定着ユニット80が配設されている。この定着ユニット80は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ81と、定着ベルトユニット82とを備えている。
定着ベルトユニット82は、定着部材たる定着ベルト84、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ83、テンションローラ85、駆動ローラ86、図示しない温度センサ等を有している。
そして、無端状の定着ベルト84を加熱ローラ83、テンションローラ85及び駆動ローラ86によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト84は加熱ローラ83によって裏面側から加熱される。
このようにして加熱される定着ベルト84の加熱ローラ83への掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ81がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ81と定着ベルト84とが当接する定着ニップが形成されている。
定着ベルト84のループ外側には、図示しない温度センサが定着ベルト84のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト84の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ83に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ81に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。
上述した二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト14から分離した後、定着ユニット80内に送られる。そして、定着ユニット80内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト84によって加熱され、押圧されることによりフルカラートナー像が転写紙Pに定着される。
このようにして定着処理が施された転写紙Pは、排紙ローラ対87のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ500本体の筺体の上面には、スタック部88が形成されており、排紙ローラ対87によって機外に排出された転写紙Pは、このスタック部88に順次スタックされる。
転写ユニット60の上方には、Y,C,M,Kトナーを収容する四つのトナーカートリッジ100Y,C,M,Kが配設されている。トナーカートリッジ100Y,C,M,K内のY,C,M,Kトナーは、作像ユニット1Y,C,M,Kの現像装置5Y,C,M,Kに適宜供給される。これらトナーカートリッジ100Y,C,M,Kは、作像ユニット1Y,C,M,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
次に、プリンタ500における画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電ローラ4及び現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、光書込ユニット40及び除電ランプなどの光源にもそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体3が図中矢印方向に回転駆動される。
感光体3が図中矢印方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電ローラ4によって所定の電位に一様帯電される。そして、光書込ユニット40から画像情報に対応したレーザ光Lが感光体3上に照射され、感光体表面上のレーザ光Lが照射された部分が除電され静電潜像が形成される。
静電潜像の形成された感光体3の表面は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシによって摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。各作像ユニット1において、同様の作像プロセスが実行され、各作像ユニット1Y,C,M,Kの各感光体3Y,C,M,Kの表面上に各色のトナー像が形成される。
このように、プリンタ500では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
各感光体3Y,C,M,Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上で重なるように、順次一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色トナー像が形成される。
中間転写ベルト14上に形成された四色トナー像は、第一給紙カセット151または第二給紙カセット152から給紙され、レジストローラ対55のローラ間を経て、二次転写ニップに給紙される転写紙Pに転写される。このとき、転写紙Pはレジストローラ対55に挟まれた状態で一旦停止し、中間転写ベルト14上の画像先端と同期を取って二次転写ニップに供給される。
トナー像が転写された転写紙Pは中間転写ベルト14から分離され、定着ユニット80へ搬送される。そして、トナー像が転写された転写紙Pが定着ユニット80を通過することにより、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙P上に定着されて、トナー像が定着された転写紙Pはプリンタ500装置外に排出され、スタック部88にスタックされる。
一方、二次転写ニップで転写紙Pにトナー像を転写した中間転写ベルト14の表面は、ベルトクリーニングユニット162によって表面上の転写残トナーが除去される。
また、一次転写ニップで中間転写ベルト14に各色のトナー像を転写した感光体3の表面は、クリーニング装置6によって転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
プリンタ500の作像ユニット1は、図3に示すように感光体3と、プロセス手段として帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などとが枠体2に収められている。そして、作像ユニット1は、プロセスカートリッジとしてプリンタ500本体から一体的に着脱可能となっている。
プリンタ500では、作像ユニット1をプロセスカートリッジとして、光体3、帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10を一体的に交換するようになっている。しかしながら、感光体3、帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
次に、本実施形態に係るプリンタ500で好適に用いられるトナーについて説明する。
プリンタ500に用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。
具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100[ml]〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1[ml]〜0.5[ml]加える。更に測定試料(トナー)を0.1[g]〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1分〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000[万個/μl]〜1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
そして、この測定結果に基づき、図4(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図4(b)に示す真円の外周長をC2としたときの「C2/C1」を求め、その平均値を円形度とした。
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。
より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1[%]NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100[ml]〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1[ml]〜5[ml]加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2[mg]〜20[mg]加え、超音波分散器で約1分〜3分間分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100[ml]〜200[ml]を入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。アパーチャーとしては、100[μm]のものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。
チャンネルとしては、2.00[μm]〜2.52[μm]未満;2.52[μm]〜3.17[μm]未満;3.17[μm]〜4.00[μm]未満;4.00[μm]〜5.04[μm]未満;5.04[μm]〜6.35[μm]未満;6.35[μm]〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08[μm]〜12.70[μm]未満;12.70[μm]〜16.00[μm]未満;16.00[μm]〜20.20[μm]未満;20.20[μm]〜25.40[μm]未満;25.40[μm]〜32.00[μm]未満;32.00[μm]〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上32.0[μm]以下のトナー粒子を対象とする。
そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、「X」は各チャンネルにおける代表径、「V」は各チャンネルの代表径における相当体積、「f」は各チャンネルにおける粒子個数である。
このような重合トナーにおいては、従来の粉砕トナーを感光体表面から除去するときと同じようにしてクリーニングブレード62で除去しようとしても、その重合トナーを感光体表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生する。
そこで、クリーニングブレード62の感光体3への当接圧を高めて、クリーニング性をアップしようとすると、クリーニングブレード62が早期に摩耗してしまうという問題があった。
また、クリーニングブレード62と感光体3との摩擦力が高まって、クリーニングブレード62の感光体3と当接している先端稜線部が感光体3の移動方向に引っ張られて、先端稜線部がめくれてしまう。クリーニングブレード62の先端稜線部がめくれると、異音や振動、先端稜線部の欠落などの様々な問題が生じてしまう。
図5は、クリーニングブレード62の斜視図である。図6は、クリーニングブレード62が感光体3の表面に当接している状態の説明図であり、図7は、クリーニングブレード62の先端稜線部62c近傍の拡大説明図である。
クリーニングブレード62は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー621と、短冊形状の弾性体ブレード622とで構成されている。弾性体ブレード622は先端稜線部62cに詳細は後述する含浸処理がなされている。また、ブレード先端面62aとブレード下面62bには、ブレード長手方向にわたって表面層623が形成されている。
弾性体ブレード622は、ホルダー621の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー621の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。
弾性体ブレード622としては、感光体3の偏心や感光体3の表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性体体率を有するものが好ましく、ウレタンゴムなどが好適である。
なお、弾性体ブレード622の硬さは含浸処理によるウレタンゴムそのものの改質で変化し、さらに表面層623の形成によっても影響を受けるので、各々の効果を調整することが必要である。
弾性体ブレード622の先端稜線部を含む部分に紫外線硬化樹脂を含浸させ、かつ表面層を形成することで弾性体ブレードの変形が適度に抑制され、高い耐久性とトナークリーニング性が両立する。
しかし、マシンの多様な使用状況において、環境変動や画像濃度によっては弾性体ブレード622が感光体摺動方向に引き込まれる力が変化し、弾性体ブレード622の変形量は一定ではなくなる。本発明においても、紫外線硬化樹脂膜が硬すぎると弾性体ブレード622の変形が抑制されすぎるし、柔らかすぎるとマシンの変動要因による変形量が大きくなり、いずれもブレードの耐久性が低下する原因となる。
紫外線硬化樹脂によるブレード変形抑制量の最適範囲指標として、次の方法が有効である。すなわち、紫外線硬化樹脂を含浸し、かつ表面層623を形成した弾性体ブレード622の先端稜線部62cを含む部分を、図1に示すように丸棒20の周面に巻き付けて曲率半径2[mm]で折り曲げ変形させる。そして、その際の先端稜線部62cから0.5[mm]以内の表面層623に割れや剥離の発生を見る方法が有効である。
なお、このように丸棒20の周面に弾性体ブレード622を巻き付けた際の巻き付け角θは、図1に示すように、ブレード下面62bを通る基準直線L1と、表面層623のブレード下面側表面を通る基準直線L2とでなす角の角度として求められる。
また、前述したように折り曲げて変形させた際、先端稜線部62cから0.5[mm]以内に形成された表面層623に、割れまたは剥離が発生する折り曲げ角度θが180[°]以上となるようにクリーニングブレード62を構成するのが良い。より好ましくは、折り曲げ角度θが360[°]となるまで折り曲げても、前記表面層に割れまたは剥離が発生しないようにクリーニングブレード62を構成するのが良い。
これにより表面層623に異常が起きなければ、実際のランニングにおいても高い耐久性を継続して発揮する。このような特性をもつ紫外線硬化樹脂材料は、モノマー中のアクリル基濃度([アクリル基の分子量]/[全分子量])が45[%]〜65[%]、かつアクリル基1つあたりの官能基当量分子量([全分子量]/[アクリル基の官能基数])が120〜160であることが必要である。
弾性体ブレード622の先端稜線部62cへの含浸処理は、ハケ塗り、スプレー塗工、ディップ塗工などによって、紫外線硬化樹脂をゴム表面より内部まで濃度勾配を持ちながら含浸させることが可能である。
この時、温度・濃度・溶剤の種類などの処理条件を調整して、弾性体ブレード622の先端稜線部62cを含む部分より150[μm]までの範囲に含浸させる。これにより、感光体表面と当接する弾性体ブレード622の先端稜線部62cが、感光体表面移動方向に変形するのを適度に抑制することができる。
さらに、経時表面層摩耗によって内部が露出したときも内部への含浸作用により、同様に変形を抑制することができる。
表面層623は、弾性体ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させて所定時間風乾させた後に、スプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等によって、クリーニングブレード62の先端稜線部62cを被覆する。表面層623は表面張力により稜線部には薄く付着するが、最も厚い部分でも5[μm]以下となるよう付着させることが好ましい。
また、表面層623は、弾性体ブレード622よりも硬度が高い部材とすることで、剛直なため、変形し難く、クリーニングブレード62の先端稜線部62cのめくれを抑制することができる。
紫外線硬化樹脂を含浸させた後、または、表面層623による被覆を行った後に、紫外線を照射することで、図6に示す含浸改質部62dを形成し、先端稜線部62cの硬度上昇を図る改質効果を生じさせることができる。
特許文献3に記載の弾性体ブレードでは、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物等の含浸をさせて改質を行っているが、本実施形態のように紫外線硬化樹脂を含浸させて紫外線を照射することで、さらに耐久性の向上を図ることができる。これは以下の理由によるものと考えられる。
まず考えられるのは、ゴム内部に紫外線硬化樹脂の網目鎖が形成されることで、ゴム自体の架橋密度が擬似的に増加し、耐摩耗性が向上している可能性である。この場合、紫外線硬化樹脂とウレタンゴムが化学的にほとんど結合しないであろう点がポイントである。
一般にウレタンゴムを含浸操作で強化しようとする場合、含浸材料としてイソシアネートを用いることが多い。しかしながら、イソシアネートはウレタンゴムと化学的に反応するので、架橋密度が上がりすぎてしまい、ゴムというよりガラスに近い状態となる。そのため、エッジの動きが抑制されすぎて逆に耐摩耗性を悪化させることが考えられる。
もう一つの可能性として、含浸した紫外線硬化樹脂が、表面に追加された紫外線硬化樹脂に対し、いわゆる「アンカー効果」を発揮して、樹脂膜とゴムの密着性を増大させていることが考えられる。これにより紫外線硬化樹脂の剥離を防ぐとともに、樹脂膜自体の耐久性が底上げされていると考えることもできる。
本実施形態のクリーニングブレード62では、ウレタンゴムからなる弾性体ブレード622の基材に対して、ディップ塗工により紫外線硬化樹脂を含浸させる。そして、さらに表面層623を形成する紫外線硬化樹脂をスプレー塗工した後、紫外線照射により樹脂を硬化させている。
含浸させた紫外線硬化樹脂を硬化させるために紫外線を照射するタイミングとしては、弾性体ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させた後、表面層623を被覆する前に、紫外線を照射してもよい。
弾性体ブレード622の基材となるウレタンゴムに紫外線硬化樹脂を含浸させた後、一度、紫外線を照射して含浸させた紫外線硬化樹脂を硬化させる。そして、その後に、表面層623を形成する樹脂で被覆する構成であれば、表面層623を形成する前にウレタンゴムに対して紫外線硬化樹脂の含浸状態を固定し、後から表面層623を形成する紫外線硬化樹脂を塗布しても、含浸状態が変化しない。そのため、所望の含浸状態の弾性体ブレード622を作成できる。
本実施形態のクリーニングブレード62は、図7中の矢印で示すように、含浸改質部62dにおける弾性体ブレード622の内部ほどウレタンゴムに対して紫外線硬化樹脂の含有量が少なくなるような傾斜性が生じるように含浸させている。
具体的には、短時間の含浸操作や含浸し難い条件で含浸操作を行うことで、含浸する紫外線硬化樹脂の量を少なくして、含浸させた部分の弾性体ブレード622の外側は含浸量を多く、内側に向かうほど含浸量が少なくなるように含浸操作を行う。
また、ゴム切削断面の微小硬度をFischer社HM−8000で測定する。そして、ゴム表面(弾性体ブレード表面)のマルテンス硬度最大変化率が20[%]以下となり、かつ同変化率が1[%]以下となるゴム表面からの距離が150[μm]以下となる含浸改質量が適切である。本実施形態では、含浸操作としてはディッピング方式で行い、含浸時間を30秒〜180秒の範囲で適宜設定した。
含浸操作を長時間行うなど、基材(弾性体ブレード622のウレタンゴム)の内部まで充分に紫外線硬化樹脂が浸透する条件で実施すれば、一種の平衡状態となり、全体は均一組成となって傾斜性をもたない状態も作り出すことは可能である。
しかし、本実施形態では、含浸操作で紫外線硬化樹脂の含浸する量を抑制することで、弾性体ブレード622のウレタンゴムに対する紫外線硬化樹脂の含有量に傾斜性を持たせている。
本実施形態のクリーニングブレード62では、弾性体ブレード622よりも硬い表面層623を設け、先端稜線部62cと感光体表面との摩擦係数の低減を図っている。
ここで、弾性体ブレード622の基材に紫外線硬化樹脂を含浸させず、この基材よりも硬度の硬い表面層623のみを備える構成について説明する。
表面層623を設けて摩擦係数を低減させても、経時で表面層623は摩耗し減少する。このとき、長期使用に耐え得るように、表面層623を厚くすると、弾性体ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性体変形を阻害して、クリーニング不良となるおそれがある。
一方、弾性体ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性体変形を阻害しないように、表面層623を薄くすると、短時間で基材が露出する程度に表面層623が摩耗する。硬度の低い基材が露出して感光体3の表面に直接接触すると、クリーニングブレード62と感光体表面との摩擦係数が大きくなり、異常摩耗や異音が発生する。
本実施形態のクリーニングブレード62は、硬度の高い表面層623の内側の弾性体ブレード622の基材に対して紫外線硬化樹脂が傾斜性を持つように存在する。これにより、基材となる弾性体ブレード622(ウレタンゴム)の機械強度や剛性が適度に強化され、感光体表面との摺動においてブレード先端部の挙動を適度に抑えることで良好なクリーニングを行うことができる。また、異常摩耗や異音の発生を抑えることで、高い耐摩耗性を発揮させることが可能となる。
また、弾性体ブレード622の基材に硬度の高い表面層623のみを設けると、高硬度層と基材層との境目で硬度が急激に変化して応力が集中し、弾性体ブレード622が破損するおそれがある。これに対して、弾性体ブレード622の基材に含有量に傾斜性を生じさせることで、高硬度層と基材層との境目で硬度が急激に変化することを抑制し、応力集中に起因して弾性体ブレード622が破損することを防止できる。
上記特許文献1には、表面層のみを設ける構成、または、弾性体ブレードの基材に樹脂材料を含浸させるのみの構成が記載されている。表面層のみを設ける構成であると、上述した不具合が生じる。
また、樹脂材料を含浸させるのみの構成であると、使用開始当初のクリーニングブレードの感光体と当接する部分の硬度が表面層を設けるものほどの硬度を得ることができず、耐摩耗性が不十分となる。
また、使用する樹脂が鉛筆硬度B〜6Hのものであり、これを表面層として用いても鉛筆硬度が十分ではなく、耐久性に劣る。この耐久性を補うために、表面層を厚膜にすると、エッジ(先端稜線部)の姿勢制御が損なわれ、耐久性が低下する。
上記特許文献2には、弾性体ブレードをフッ素系樹脂の水性分散液に含浸、あるいはスプレー塗工することで、弾性体ブレードの基材ゴム内部にフッ素系樹脂を含浸させ、かつ弾性体ブレードの表面が同樹脂で覆われた構成が記載されている。
しかし、特許文献2に記載のフッ素系樹脂は、本実施形態の表面層に用いる樹脂に比べ、耐久性に劣る。
本実施形態のクリーニングブレード62は、表面をウレタン基を持つ紫外線硬化樹脂からなる追従性の大きい表面層623で覆い、さらに、弾性体ブレード622の基材のウレタンゴムの内部にウレタン基を持たない紫外線硬化樹脂が傾斜性をもちつつ含浸している。
弾性体ブレード622に紫外線硬化樹脂を含有させて硬度上昇させているため、表面層623の厚みを薄くしても経時の耐久性を確保することができる。表面層623についての非常に薄い膜厚と、高いマルテンス硬度および適度な弾性体仕事率により、先端稜線部62cの姿勢制御と耐久性付与とを同時に発現することが可能と成る高耐久化を図ることができる。
また、弾性体ブレード622に含有させる紫外線硬化樹脂の含浸量を抑制することで、基材ゴムの膨潤によるゴム機械強度低下と、高硬度な樹脂材料の浸潤による網目構造強化との両立を図ることができる。
上述したように、本実施形態においては、弾性体ブレード622の先端稜線部62cを含浸処理により硬度上昇させているため、弾性体ブレード622の先端稜線部62cが変形し難くなっている。
このため、弾性体ブレード622のブレード下面62bの全面に弾性体ブレード622よりも硬度が高い表面層623を形成すると、ブレード下面62bに形成した表面層623が、弾性体ブレード622の先端稜線部62cの感光体表面への弾性体変形を阻害してしまう。そのため、先端稜線部62cにおいて感光体表面への当接圧を高める向きに働く弾性体変形に対する復元力がほとんど得られなくなってしまう。その結果、先端稜線部62cが感光体3の偏心や微小なうねりに対して追随できなくなってしまう。
したがって、感光体3に対する当接圧が変動してしまう。そして、連続的なベタ画像形成時等、先端稜線部62cに堰きとめたトナーから大きな押圧力を受けるなどの厳しい条件において、当接圧が低下したときに、トナーがクリーニングブレード62からすり抜けてクリーニング不良を生じるおそれがある。
このような問題に対して、弾性体ブレード622のブレード下面62bに表面層623を形成しないことも考えられる。
しかし、ブレード下面62bに表面層623を形成しなかった場合は、弾性体ブレード622の先端稜線部62cが感光体3の表面移動方向へ大きく弾性体変形して、先端稜線部62cがめくれてしまい、めくれ摩耗が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、ブレード先端面62aおよびブレード下面62bの両方に、最も厚い部分で層厚(膜厚)が5[μm]以下となるように表面層623を形成した。
これにより、ブレード先端面62aにのみ表面層623を形成したものに比べて、弾性体ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性体変形を阻害するのを抑制することができる。また、先端稜線部62cがめくれない程度に、弾性体ブレード622の先端稜線部62cを感光体表面移動方向へ弾性体変形させることができる。
また、感光体3に偏心などがあった場合でも、弾性体ブレード622の先端稜線部62cの弾性体変形に対する復元力により、先端稜線部62cを感光体3の表面に対して追随させることができ、良好なクリーニング性を維持することができる。
また、表面層623の材質としては、樹脂が好ましく、アクリルまたはメタクリル系紫外線硬化樹脂がより好ましい。アクリルまたはメタクリル系紫外線硬化樹脂を用いることで、クリーニングブレード62の先端稜線部62cに付着した樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の硬度を有する表面層623を得ることができる。よって、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
上記紫外線硬化樹脂としてはペンタエリスリトール・トリアクリレートを主要骨格とするモノマーを含む材料を1種以上用いることが好ましい。ペンタエリスリトール・トリアクリレート骨格を持つ材料を添加しないと、表面層623は脆弱になり過ぎるおそれがある。
これは、アクリレートの重合反応はアクリル基同士でしか起こらないため、官能基当量分子量の大きい材料ではクリーニングブレードの基材内部に含浸した状態で反応進行する確率が低下し、モノマーとして残るためである。含浸改質部62dが脆弱になると、表面層623が摩耗して基材部が露出した際は速やかに摩耗進行し、長期に渡るクリーニング性を保持できなくなる。
また、表面層623の層厚は、最も厚い部分で5[μm]以下であることが好ましい。層厚が、5[μm]より大きくなると、表面層623の剛性が高くなりすぎて追従性が損なわれ、クリーニングブレード62の先端稜線部62cの感光体表面との摺動における挙動が小さくなりすぎるおそれがある。その結果、先端稜線部62cに振動エネルギーが集中することにより、不快な異音が発生しやすくなる他、摩耗速度も大きくなってしまい、早期に使用不可能となるおそれがある。
以上、本実施形態においては、クリーニングブレード62を構成する弾性体ブレード622の先端稜線部62cを含む表面に、弾性体ブレード622よりも硬い表面層623を設けている。そのため、先端稜線部62cを含む部分に含浸させる紫外線硬化樹脂の量を先端稜線部62cの最表面の硬度に関係無く調節することができる。これにより、含浸量を任意に設定することが可能となり、含浸改質部62dが過剰に硬く且つ過剰に深く形成されることに起因して、先端稜線部62cの感光体表面への追随性が低下することを抑制できる。
また、表面層623を薄くして、経時使用において短時間で弾性体ブレード622が感光体表面に接触しても、弾性体ブレード622単体よりも硬度が高い、弾性体ブレード622と紫外線硬化樹脂とが混在した含浸改質部62dが、感光体表面と接触する。そのため、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制することができる。これにより、表面層623を薄くすることが可能となり、表面層623を厚くすることに起因して、先端稜線部62cの感光体表面への追随性が低下することを抑制できる。
また、表面層623を設けることで、先端稜線部62cのめくれを抑制でき、表面層623を薄くしても経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制できる。そのため、先端稜線部62cの感光体表面への追随性を維持するために、硬度が高い表面層623の層厚を薄くすることが可能となる。
[実験]
次に、本願発明者らが行った検証実験について説明する。
弾性体ブレード622の材質、表面層623の材質、含浸処理方法、ブレード下面62bにおける表面層623の形成をそれぞれ変化させて、耐久試験を行った。
[弾性体ブレード]
弾性体ブレード622としては、23[℃]における物性が以下の物性となっている3つのウレタンゴムを用意した。また、各ウレタンゴムの特性をまとめたものを表1に示す。
・ウレタンゴム1(単層):JIS−A硬度70度
・ウレタンゴム2(単層):JIS−A硬度75度
・ウレタンゴム3(積層):JIS−A硬度 稜線側78度、裏面側68度
ウレタンゴムの硬度は、島津製作所製デュロメーターを用い、JIS K6253に準じて測定した。試料は厚さ12[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
[硬化材料]
含浸処理や表面層623の形成処理に用いる硬化材料としては、以下の硬化材料を用いた。また、各硬化材料に用いられる紫外線硬化樹脂の構造式などを表2に示す。
<硬化材料1>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 PETIA 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 ODA−N 122部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 11部
溶媒 :2−ブタノン 488部
<硬化材料2>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 PETIA 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 EBECRYL150 11部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 6部
溶媒 :2−ブタノン 464部
<硬化材料3>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 DPHA 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 IBOA 72部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 9部
溶媒 :2−ブタノン 688部
<硬化材料4>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 DPHA 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 EBECRYL150 110部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 11部
溶媒 :2−ブタノン 840部
<硬化材料5>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 EBECRYL40 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 HDDA 22部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 6部
溶媒 :2−ブタノン 488部
<硬化材料6>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 PETIA 5部
紫外線硬化樹脂2:新中村化学社 A−DCP 95部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 10部
溶媒 :2−ブタノン 100部
<硬化材料7>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 PETIA 100部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 5部
溶媒 :2−ブタノン 400部
<硬化材料8>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 DPHA 100部
紫外線硬化樹脂2:第一工業製薬社 MPE−600 51部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 8部
溶媒 :2−ブタノン 604部
<硬化材料9>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック社 PETIA 100部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック社 IBOA 128部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 11部
溶媒 :2−ブタノン 912部
上記硬化材料に用いる紫外線硬化樹脂の官能基数、官能基当量、アクリル基濃度を表3、表4、表5に示す。
次に、検証実験を行った画像形成装置の構成について説明する。
上記ウレタンゴム1からウレタンゴム3のいずれかを用いて、厚さ1.8[mm]の短冊形状の弾性体ブレードを作成し、この弾性体ブレードを含浸材料として上記硬化材料1から硬化材料9のいずれかに所定時間浸漬したのち、3分間風乾する。
さらに、スプレー塗工法により上記硬化材料1〜硬化材料9のいずれかからなる表面層623を形成した。具体的には、適宜含浸処理を行った各々のウレタンゴムからなる弾性体ブレードに対し、スプレー塗工によりブレード先端面から10[mm/s]のスプレーガン移動速度にて所定の層厚になるように先端面全面に重ね塗りを行った。その後、さらに3分間指触乾燥を行い、紫外線露光(140[W/cm]×5[m/min]×5パス)を行った。
表面層が形成された弾性体ブレードをリコー製カラー複合機(imagio MP C4500)に搭載できる板金ホルダーに接着剤により固定し、試作のクリーニングブレード62とした。
これを同じくリコー製カラー複合機(imagio MP C4500、プリンタ部は図2に示すプリンタ500と同様の構成)に取り付け、実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例7の画像形成装置を作製した。
なお、クリーニングブレード62は、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。
また、本実験で用いる装置は感光体表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
なお、感光体表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046に記載されている。
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%]RH、通紙条件:画像面積率5[%]チャートを3[プリント/ジョブ]で、100,000枚(A4横)で行った。そして、以下の項目を評価した。
〔評価項目〕
クリーニング不良発生:有無(目視観察)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(A4横)
ブレードエッジ摩耗断面積:図8に示すようにブレード先端部の摩耗損失部分
表6に実施例1から実施例12、比較例1から比較例7のクリーニングブレード62の構成及び検証実験の結果を示す。
なお、表面層の層厚は、キーエンス製マイクロスコープVHX−100を用い、別途同様に塗工した弾性体ブレードの断面により測定した。試料は日進EM製SEM試料作製用トリミングカミソリを用い断面を切断したものとした。
また、表6中、折り曲げ変形時の表面層状態は、KEYENCE社VHX−100にて、倍率1,000倍で先端稜線部62cから0.5[mm]の範囲を観察し、表面層623にヒビ割れや剥離の発生の有無を確認した。
実施例1から実施例12においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、異音の発生も抑えることができた。
また、実施例1から実施例12においては、含浸処理による硬度上昇を図り、先端稜線部62cの改質処理がなされている。さらに、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持されている。このため、ブレード先端面62aに表面層623を設けた構成において、経時的な異音発生を回避することができたと考えられる。
さらに、感光体3と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力を低減することができ、先端稜線部62cのめくれを抑制することができるとともに、弾性体ブレード622の摩耗も抑制することができたと考えられる。表面層623は感光体3との接触部近傍の弾性体ブレード部分を補強する効果を有しており、それにより先端稜線部62cの運動を適度に制御することができ、異音発生を生じることなく、めくれを抑制できたと考えられる。
一方、比較例1は、クリーニング評価において全面にクリーニング不良が発生した。これは、含浸操作をせず、表面層623も形成しないゴムでは耐摩耗性が充分ではなく、大きく摩耗して先端稜線部全体に渡って稜線が損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例2は、クリーニング評価において帯状にクリーニング不良が発生した。これは、表面層材料の官能基当量が小さすぎて表面層623の追従性が悪く、表面層623にヒビ割れが生じたことと、弾性体ブレード622の変形が抑制されすぎて耐久性が低下したためと考えられる。
また、比較例3は、クリーニング評価において帯状にクリーニング不良が発生した。これは紫外線硬化樹脂がゴム内部に深く含浸しすぎたため、弾性体ブレード622の変形が抑制されすぎて耐久性が低下したためと考えられる。
また、比較例4及び比較例6は、クリーニング評価において帯状にクリーニング不良が発生した。これは、表面層623を厚くしすぎたため、弾性体ブレード622の変形に表面層623が追従できず、表面層623にヒビ割れが生じたことと、弾性体ブレード622の変形が抑制されすぎて耐久性が低下したためと考えられる。
特に、表面層623の厚み以外が同じ、実施例1と比較例4とを比べた場合、比較例4よりも表面層623の厚みが薄い実施例1では、折り曲げ角度θが360[°]でも表面層623に割れが発生しなかった。これに対し、比較例4では、折り曲げ角度θが120[°]で表面層623に割れが発生した。すなわち、表面層623の厚みが実施例1よりも厚い比較例1では、折り曲げ角度θが180[°]未満で表面層623に割れが発生した。
このことから、表面層623に割れが発生する折り曲げ角度θが180[°]以上となるよう、表面層623の厚みを薄くして、弾性体ブレード622の変形に表面層623が追従できるように、クリーニングブレード62を構成するのが良いことがわかる。これにより、実施例1の結果からわかるように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、良好なクリーニング性を維持することができる。
また、比較例5は、クリーニング評価において全面にクリーニング不良が発生した。これは含浸改質部62dのマルテンス硬度最大変化率を大きくしすぎたため、弾性体ブレード622の変形が抑制されすぎることにより先端稜線部62cに感光体3との摺動エネルギーが集中し耐久性が低下したためと考えられる。
また、比較例7及び比較例8は、クリーニング評価において帯状にクリーニング不良が発生した。これは表面層623の官能基当量分子量が小さいため、表面層623が柔らかすぎて弾性体ブレード622の変形を抑制できず、耐久性が低下したためと考えられる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
短冊形状の弾性体ブレード622などの弾性体ブレードで構成され、弾性体ブレードの先端稜線部62cなどの先端稜線部を表面移動する感光体3などの被清掃部材の表面に当接して、被清掃部材表面をクリーニングするクリーニングブレード62などのクリーニングブレードにおいて、先端稜線部を含む弾性ブレードの表面が紫外線硬化樹脂の表面層で覆われており、弾性体ブレードの先端稜線部を含む部分を、曲率半径2[mm]で折り曲げて変形させた際、先端稜線部から0.5[mm]以内に形成された前記表面層に、割れまたは剥離が発生する折り曲げ角度が180[°]以上である。これよれば、上記実施形態について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、良好なクリーニング性を維持することができる。
(態様B)
(態様A)において、上記紫外線硬化樹脂が、モノマー中のアクリル基濃度45[%]〜65[%]、官能基当量平均分子量120〜160であるアクリルまたはメタクリル材料である。これによれば、上記実施形態について説明したように、高い耐久性を継続して発揮することができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、上記紫外線硬化樹脂が、少なくともペンタエリスリトール・トリアクリレートを主要骨格とする材料を1種類以上含む。これによれば、上記実施形態について説明したように、先端稜線部を覆う表面層が脆弱になり過ぎるのを抑制することができる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、上記紫外線硬化樹脂が、上記弾性体ブレードの上記先端稜線部を含む表面から150[μm]以内の範囲に、濃度勾配を持ちながら含浸される。これによれば、上記実施形態について説明したように、先端稜線部が被清掃部材表面移動方向に変形するのを適度に抑制することができる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、上記紫外線硬化樹脂を含浸し硬化後の弾性体ブレード表面のマルテンス硬度最大変化率が20[%]以下である。これによれば、上記実施形態について説明したように、含浸改質量が適切となる。
(態様F)
表面移動部材である感光体3などの像担持体上に形成した画像を最終的に転写紙Pなどの記録媒体に転移させるプリンタ500などの画像形成装置において、像担持体の表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニング部材として、(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)または(態様E)のクリーニングブレードを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、良好なクリーニング性を維持することができる。
(態様G)
表面移動する感光体3などの像担持体上に形成した画像を最終的に転写紙Pなどの記録媒体に転移させるプリンタ500などの画像形成装置の本体に着脱自在に構成され、像担持体を被清掃部材としてその表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するクリーニング部材を有するクリーニング装置6などのクリーニング手段と、像担持体とを一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、前記クリーニング部材として、(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)または(態様E)のクリーニングブレードを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、良好なクリーニング性を維持することができる。