JP2014174459A - リフレクター、および、その製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銀合金膜を反射膜として用いながら、高い耐硫化性と耐塩水性を兼ね備えたリフレクターを提供する。
【解決手段】基材1上に、銀合金からなる反射膜2と、接着層となる薄い金属層3と、保護膜6とを順に積層した構成である。保護膜6は、酸化珪素膜4と、DLC(Diamond Like Carbon)膜5の積層構造である。酸化珪素膜4が接着層3により密着性よく反射膜1を覆うため、塩水の浸透を抑制して耐塩水性を向上させる。DLC膜5は、硫黄をはじく作用により耐硫化性を向上させる。これにより、耐久性の高いリフレクターを提供できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射率の高い銀合金膜を用いたリフレクターに関し、特に、耐久性に優れたリフレクターに関する。
アルミニウム膜よりも反射率の高い銀膜または銀合金(銀マグネシウム、銀パラジウム、銀白金、銀ロジウム)膜を反射膜として用い、高い反射率を実現可能なリフレクターが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、銀膜を耐熱性に優れた二酸化珪素またはDLC(Diamond Like Carbon)またはイットリウム等の酸化物からなるオーバーコート層で被覆し、銀膜が空気中等の酸素、水分、亜硫酸ガス等と反応して変色するのを防止することを提案している。銀膜とオーバーコート層との間には、フッ化マグネシウム等からなる中間層を配置し、オーバーコート層を形成する際に用いるプラズマによって銀膜が変色するのを防いでいる。
DLCは、グラファイト構造とダイヤモンド構造が混在したアモルファスカーボンであり、高硬度・高耐摩耗・低摩擦・高絶縁性・赤外透過性・高ガスバリア性・生体適合性等の特性を備えることが知られている(非特許文献1)。非特許文献1には、PIG(Penning Ionization Gauge)タイプのプラズマガンを用い、プラズマCVD法により炭化水素系ガスを原料としてDLC膜を形成する方法等が開示されている。具体的には、PIGタイプのプラズマガンを用いて、プラズマ密度が1011/cm台のプラズマを発生させ、アセチレン等の炭化水素ガス由来のイオンやラジカル等を生成して、基板に入射させている。基板には、正負電圧を所定の周波数で供給する。これにより、基板温度〜250℃の低温で、3μm/h〜最大5.5μm/hの成膜レートでDLCが成膜されることが開示されている。
特開2001−13309号公報
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.87, No.8 August 2011 548-555
銀や銀合金膜を反射膜として用いるリフレクターは、高い反射率が期待できるが、銀や銀合金(銀マグネシウム、銀パラジウム、銀白金、銀ロジウム)膜は、特許文献1のようにプラズマから銀膜を保護する中間層や、その上にオーバーコート層を配置したとしても耐久性が十分ではない。特に、自動車灯体用リフレクター等のように、高い耐硫化性および耐塩水性が要求される用途に銀や銀合金膜を反射膜として用いた場合、著しい反射率の低下を生じるため使用することが困難である。
また、DLC膜を銀膜または銀合金膜の上に備えるリフレクターを製造する場合、従来の非特許文献1の製造方法では成膜速度が遅く(最大5.5μm/h)、製造効率が悪い。
本発明の目的は、銀合金膜を反射膜として用いながら、高い耐硫化性と耐塩水性を兼ね備えたリフレクターを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のリフレクターは、基材と、基材上に配置された銀合金からなる反射膜と、反射膜の上に配置された金属薄膜の接着層と、接着層の上に配置された保護膜とを有し、保護膜は、酸化珪素膜とDLC膜とを含む構成とする。
本発明のリフレクターは、酸化珪素膜が接着層により密着性よく反射膜を覆うため、塩水の浸透を抑制して耐塩水性を向上させる。DLC膜は、硫黄をはじく作用により耐硫化性を向上させる。これにより、耐久性の高いリフレクターを提供できる。
実施形態のリフレクターの断面図。 実施形態の成膜装置のブロック図。 プラズマガンの具体的な構成を示すブロック図。
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態のリフレクターの構造について説明する。図1は、本実施形態のリフレクターの断面図である。図1のように、本実施形態のリフレクターは、基材1上に、銀合金からなる反射膜2と、接着層となる薄い金属層3と、保護膜6とを順に積層した構成である。保護膜6は、酸化珪素膜4と、DLC(Diamond Like Carbon)膜5の積層構造である。
基材1は、樹脂製や金属製等、リフレクターとして要求される耐熱性や耐久性を満たすものであれば所望の材質のものを用いることができる。例えば、ポリカーボネート(PC)製の基材を用いることができる。基材1は、反射膜2の反射特性を向上させるため、表面が滑らかであることが望ましい。具体的には、表面は、鏡面であることが望ましい。
反射膜2は、純銀よりも耐硫化性および耐塩水性に優れた銀合金から成ることが望ましい。銀合金としては、例えば、Ag−Bi−Cu合金や、Ag−Pd合金、Ag−Nd合金、Ag−Mg合金、Ag−Pt合金、Ag−Rh合金を用いることができる。Ag−Bi−Cu合金の場合、その組成は、Biが0.85at%、Cuが2.0at%、残部Agであることが、耐硫化性および耐塩水性に優れているため好ましい。反射膜2の膜厚は、所望の反射率を得られる厚さであることが望ましく、例えば、反射率90%以上のリフレクターである場合、反射膜2は、50nm以上であることが望ましい。反射膜2は、スパッタ法や蒸着法等の所望の成膜方法によって形成することが可能である。
接着層となる薄い金属層3は、反射膜2と保護膜6との接着性を向上させるために配置されている。金属層3を構成する金属として、Ti、Cr等を用いることができる。金属層3の厚さは、反射膜2の反射率を低下させないために薄いことが望ましい。例えば、1nm以上4nm以下であることが望ましく、特に、1nm以上2nm以下であることが望ましい。特に、Tiからなる金属層3は、上記厚さの範囲であれば透明性が高く、かつ、銀合金製の反射膜2と酸化珪素膜4との密着性を向上させる性能が高いため望ましい。金属層3は、所望の成膜方法により形成することができる。例えば、DCマグネトロンスパッタ法により金属層3を形成することができる。
保護膜6を構成する酸化珪素膜4は、硬度が高く保護膜として作用し、リフレクターの耐久性を向上させる。また、金属層3と積層されることにより、反射膜2への密着性が向上し、塩水が反射膜2に浸透するのを抑制する作用を発揮する。酸化珪素膜4はSiO膜である場合、透明性が高いため望ましい。酸化珪素膜4の厚さは、透明性を確保し、かつ、塩水浸透抑制効果を発揮するために10nm以上100nm以下であることが望ましく、特に、10nm以上50nm以下であることが望ましい。酸化珪素膜4は、所望の成膜方法により形成することができる。例えば、RFマグネトロンスパッタ法や、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)を原料としたプラズマCVD法により形成することができる。
保護膜6を構成するDLC膜5は、グラファイト構造とダイヤモンド構造が混在したアモルファスカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)からなる。DLCには、硫黄を弾く効果があり、DLC膜5を備えることにより、反射膜2へ硫化物の到達が抑制される。よって、リフレクターの耐硫化性が向上する。また、DLC膜5は、高硬度・高耐摩耗・高ガスバリア性もあり、リフレクターの耐久性を向上させる。DLC膜5の厚さは、透明性を確保するために1nm以上100nm以下であることが望ましく、特に、1nm以上50nm以下であることが望ましい。DLC膜5は、炭化水素系ガスを原料としたプラズマCVD法により形成することができる。特に、CHを原料とした直流高密度プラズマCVD法により成膜する場合、成膜速度が速く製造効率を向上させることができる。直流高密度プラズマCVD法については、後で詳しく説明する。
このような積層構造の本実施形態のリフレクターは、DLC膜5の作用により耐硫化性が高い。また、金属層3の作用により、酸化珪素膜4が反射膜2に密着するため、塩水浸透抑制効果も得られる。よって、反射膜2として銀合金を用いても、銀合金が硫黄や塩素イオンによって化学反応を生じたり、凝集を生じたりしにくく、銀合金の高い反射率を維持することができる。また、金属層3は、膜厚が薄いため、透過率が高く、酸化珪素膜4およびDLC膜5も透過率が高いため、反射膜2の上に、これらの膜を積層しても反射膜2の反射率を大きく低下させない。よって、銀合金の反射膜2の高い反射率を維持することができ、例えば90%以上の反射率を長期間維持できる。
なお、保護膜6の酸化珪素膜4とDLC膜5の積層順を入れ替えることも可能である。この場合、DLC膜5が金属層3に接触するが、金属層3はDLC膜5との密着性も高い。また、DLC膜5と酸化珪素膜4との密着性も高いため、酸化珪素膜4とDLC膜5の積層順を入れ替えても塩水浸透抑制効果と硫化物を弾く効果を発揮することができる。よって、耐硫化性および耐塩水性が高く、銀合金からなる反射膜2の反射特性が低下しにくい、耐久性のよいリフレクターを提供することができる。
また、本発明では、DLC膜5の成膜に図2の成膜装置を用いることにより、成膜速度を向上させることができる。この装置は、カソードからアノードに到達する間のプラズマを利用し、プラズマの電子密度が高いアノード近傍で成膜を行うことにより、成膜対象(基材)近傍のプラズマ密度を従来の非特許文献1の装置よりもひと桁高くすることができる。しかも、プラズマ中心に近い位置にフローティング電位で成膜対象(基材1)を配置することにより、成膜対象が強力にマイナスにバイアスされるようにする。これにより、大量のカーボンイオンを成膜対象に供給し、成膜速度を大きくする。
図2の成膜装置は、直流アーク放電高密度プラズマを用いるCVD成膜装置である。図2に示すように、この成膜装置は、成膜室11とプラズマガン100と排気ポンプ(不図示)とを備えている。プラズマガン100は、成膜室11の側面に設けられたプラズマ導入口21に取り付けられている。成膜室11内には、成膜対象の基材(ここでは基板)10を支持する基板ホルダー13と、原料ガス導入管17と、プラズマガン100のアノード54が配置されている。アノード54は、成膜室11のプラズマ導入口21と対向する位置に配置されている。
プラズマガン100は、プラズマガン容器103と、カソード51と、キャリアガス導入口102とを備えている。プラズマガン100の一例としては、図3に示すように、筒状のプラズマガン容器103に、カソード51、第1中間電極52、第2中間電極53をプラズマガン中心軸101に沿って順に配置したものを用いることができる。カソード51、第1中間電極52および第2中間電極53は、不図示のガイシによって相互に絶縁されている。カソード51は、アーク放電に適した公知のカソード構造である。図3の構造では、カソード51にキャリアガス導入口102が備えられている。第1および第2中間電極52、53は、それぞれ中央に所定の径の貫通孔(オリフィス)52a,53aを有している。この貫通孔52a,53aが、プラズマガン容器103の圧力を成膜室11よりも陽圧に維持し、圧力勾配を形成する。
また、図2のように、プラズマガン100の外周、成膜室11の中央部外周、および、アノード54の近傍には、電磁コイル22、23、24がプラズマガン中心軸101と同軸で配置されている。これら電磁コイル22、23、24の形成する磁場によって、プラズマガン100内および成膜室11内でプラズマをプラズマガン中心軸101を中心に収束し、高密度化する。
成膜室11のアノード54の前には、成膜対象である基材1を保持するための基板ホルダー13が配置されている。これにより、成膜室11内でプラズマの電子密度がもっとも高いと思われるアノード近傍で、かつ、プラズマ中心軸(プラズマガン中心軸101)に近い位置に基材1を配置することができる。基材1は、フローティング電位である。すなわち、基材1には、電極等によりバイアス電圧を印加していない。なお、基板ホルダー13の向きは、図3では、主平面をプラズマガン中心軸101にほぼ垂直に向けられているが、本発明はこの向きに限定されるものではなく、基板ホルダー13の主平面を他の向きに配置することも可能である。
成膜室11の基板ホルダー13の下方には、原料ガス導入管17が配置されている。
図2および図3の成膜装置を用いて、図1の層構成のリフレクターを製造する方法について説明する。
成膜対象である基材1は、形状が板状のものに限られず、所望の形状のものを用いる。また、基材1をヒーターで高温に加熱する必要はないため、樹脂製の基材1を用いることが可能である。基材1には、予め反射膜2、金属層3および酸化珪素膜4が積層されている。基材1は、図2の基板ホルダー13に取り付けておく。
まず、プラズマガン100の内部および成膜室11内を所定の圧力まで排気する。プラズマガン100にキャリアガスとしてHeガスを供給し、直流電源16からカソード51とアノード54間に電圧を印加する。また、第1および第2の中間電極52,53には、ホーロー抵抗120,121を介して所定の電圧を直流電源16から印加する。この電圧印加により、カソード51にグロー放電を生じさせ、その後、アーク放電に移行させ、熱電子を放出させる。放出された熱電子は、貫通孔52a、53aを通過して成膜室11内の空間を進み、アノード54へ到達する。これにより、プラズマガン中心軸101に沿って直流アーク放電プラズマ105を成膜室11内に発生させることができる。
プラズマ105は、プラズマガン100の外周、成膜室11の中央外周、およびアノード近傍に配置された電磁コイル22,23,24の形成する磁場によって、プラズマガン中心軸101に中心に収束され高密度化する。
また、このプラズマガン100は、アノードを通り過ぎたプラズマを成膜室内に引き出す反射型ではなく、成膜室11内のプラズマ導入口21との対向面にアノード54を配置し、カソード51からアノード54に到達するまでのプラズマを利用するため、電子密度を高くすることができる。具体的には、電子密度1012/cm台、すなわち1×1012/cm以上を達成することができる。
基材1は、成膜室11内で最も電子密度が高いと思われるアノード近傍、かつ、プラズマ105の中心軸に近い位置に設置されているため、プラズマ105によって強力にマイナスにバイアスされる。原料ガス導入管17から、炭化水素ガス(例えばCH)を供給すると、高密度のプラズマ105によりカーボンイオンが大量に生成され、プラズマ105によって強力にマイナスにバイアスされた基材1に供給される。これにより、基材1上にCVD法によりアモルファスカーボン膜を大きな成膜速度で形成することができる。例えば、6〜20μm/hの成膜速度でDLC膜5を基材1上に形成できる。形成したいDLC膜5の膜厚が3μmである場合、成膜時間は30分以下である。
基材1は、ヒーターなどによる加熱は行わないが、プラズマにより100℃程度以下に加熱されていると思われる。
このように、本実施形態の成膜装置では、成膜室11内にアノード54を配置し、カソード51からアノード54に到達するまでのプラズマを用いることにより、電子密度1012/cm台のプラズマ105を生じさせることができる。電子密度が高いアノード近傍で、かつ、プラズマ中心に近い位置にフローティング電位で基板を配置することにより、基材1が強力にマイナスにバイアスされるため、大量のカーボンイオンを基材1に供給でき、アモルファスカーボン膜の成膜速度を大きくすることができる。この成膜方法により、大きな成膜速度でDLC膜を形成することができるという効果が得られる。
また、上述の成膜方法では、DLC膜5のみを図2の成膜装置で成膜したが、反射膜2、金属層3および酸化珪素膜4のうちの1以上についても図2の成膜装置で成膜することが可能である。例えば、反射膜2および金属層3は、成膜装置11内にこれらの膜の成膜材料が入れられた坩堝を配置し、坩堝をヒーターで加熱するか、もしくは、プラズマ105を坩堝内に引き込んで加熱し、成膜材料の蒸気を基材1上に堆積させることにより、蒸着法で成膜することができる。また、酸化珪素膜4は、原料ガス導入管17からHMDSOガスを導入し、プラズマ105を用いてプラズマCVD法により基材1上に成膜することができる。また、これらの成膜方法を用いることにより、図2の成膜装置を用いて反射膜2からDLC膜5までを連続成膜することも可能である。連続成膜を行うことにより、成膜室11の真空を破ることなく、すべての膜の成膜を行うことができるため、成膜時間を短縮でき、製造効率が向上する。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例として、図1の層構成のリフレクターを製造した。まず、ポリカーボネート基材1上に、DCマグネトロンスパッタ法により、Ag−Bi(0.85at%)−Cu(2.0at%)合金をターゲットとして、Ag−Bi−Cu合金の反射膜2を厚さ120nmで成膜した。反射膜2の上に金属層3として、Tiを厚さ1〜2nmの厚さにDCマグネトロンスパッタ法により成膜した。つぎに、RFマグネトロンスパッタ法により、酸化珪素(SiO)膜4を金属層3の上に成膜した。最後に、図2の成膜装置を用いてDLC膜5をCHを原料として直流高密度プラズマCVDにより、厚さ30nmで成膜した。これにより、実施例のリフレクターを製造した。
また、比較例1として、ポリカーボネート基材1上に反射膜2のみを成膜したリフレクターを製造した。反射膜2の成膜方法は、上記実施例と同様である。
比較例2として、ポリカーボネート基材1上に反射膜2とDLC膜5のみをこの順に成膜したリフレクターを製造した。これらの膜の成膜方法は、上記実施例と同様である。
比較例3として、ポリカーボネート基材1上に反射膜2と酸化珪素(SiO)膜4のみをこの順に成膜したリフレクターを製造した。これらの膜の成膜方法は、上記実施例と同様である。
比較例4として、ポリカーボネート基材1上に反射膜2と、金属層3と、酸化珪素(SiO)膜4のみをこの順に成膜したリフレクターを製造した。これらの膜の成膜方法は、上記実施例と同様である。
比較例5として、ポリカーボネート基材1上に反射膜2と、酸化珪素(SiO)膜4と、DLC膜5のみをこの順に成膜したリフレクターを製造した。これらの膜の成膜方法は、上記実施例と同様である。
(硫化試験および塩水試験)
得られた実施例のリフレクタの試料と、比較例1〜5のリフレクタの試料に対して、硫化試験と塩水試験をそれぞれ行った。
硫化試験は、5wt%濃度の(NH雰囲気に試料を2時間暴露する試験である。試験の前後の試料の反射率を測定し、波長560nmの光に対する反射率低下の割合を求めた。
塩水試験は、5wt%濃度のNaCl水溶液に試料を48時間浸漬する試験である。試験の前後の試料の反射率を測定し、波長560nmの光に対する反射率低下の割合を求めた。
(評価結果)
硫化試験と塩水試験の結果を表1に示す。
(1)〜(5)は、それぞれ比較例1〜5の試料の試験結果であり、(6)は、実施例の試料の試験結果である。
Figure 2014174459
表1において、試験の前後で、波長560nmの光に対する反射率の低下が5%以下であるものを○、反射率の低下が5%より大きく10%以下であるものを△、反射率の低下が10%より大きいものを×で示している。
表1から明らかなように、比較例1の試料は、硫化試験の試料および塩水試験の試料ともに、反射率が10%より低下し、×判定であった。Ag−Bi−Cu合金の反射膜2は、BiおよびCuが反射膜の表面近傍に高い濃度で存在し、これらが酸化物となるため、純銀の反射膜と比較すると耐硫化性および耐塩水性が高いが、保護膜6がない状態では、自動車灯体用リフレクター等のように高い耐硫化性および耐塩水性が要求される用途には使用できないことがわかる。
比較例2の試料は、反射膜2の上にDLC膜5を備えているため、DLC膜の硫黄を弾く作用により、硫化試験では反射率の低下が5%以内であり、○判定であった。しかし、塩水試験では、DLC膜5に塩素イオンが浸透して反射膜2に到達したため、反射膜2の銀が凝集した。このため、反射率が大きく低下し、×判定であった。
比較例3の試料は、反射膜2の上に直接酸化珪素膜4を備えているが、硫化試験および塩水試験ともに反射率が低下して×判定であり、保護膜として機能を発揮できないことが確認された。特に、塩水試験では、酸化珪素膜4が剥がれ、反射膜2の銀が凝集し、反射率が大きく低下していた。
比較例4の試料は、反射膜2の上に金属層3を配置して、その上に酸化珪素膜4を配置しているため、金属層3の作用により、酸化珪素膜4が反射膜2に密着し、塩水の浸透が抑制され、塩水試験は△判定であった。ただし、酸化珪素膜4では耐硫化性が低いため、硫化試験は×判定であった。
比較例5の試料は、反射膜の上に、直接酸化珪素膜4を配置し、その上にDLC膜5を配置しており、DLC膜5の硫黄を弾く作用により、硫化試験は○判定であった。しかしながら、金属層3を配置していないため、酸化珪素膜4と反射膜2との密着性が弱く、塩水試験では酸化珪素膜4が剥がれ、×判定であった。
これらに対し、実施例の試料は、Ag−Bi−Cu合金の自体の耐久性、金属層3を配置したことによる酸化珪素膜4と反射膜2との密着性の向上による塩水浸透抑制効果、DLC膜5による硫黄を弾く効果が総合的に発揮され、硫化試験および塩水試験のいずれについても○判定であった。これにより、本発明の膜構成のリフレクターが耐硫化性および耐塩水性がいずれも高いことが確認された。
1…基材、2…反射膜、3…金属層、4…酸化珪素膜、5…DLC膜、11…成膜室、13…基板ホルダー、16…直流電源、17…原料ガス導入管、21…プラズマ導入口、22、23,24…電磁コイル、51…カソード、52…第1中間電極、53…第2中間電極、54…アノード、100…プラズマガン、101…プラズマガン中心軸、102…キャリアガス導入口、103…プラズマガン容器、105…プラズマ、120,121…ホーロー抵抗

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材上に配置された銀合金からなる反射膜と、前記反射膜の上に配置された金属薄膜の接着層と、前記接着層の上に配置された保護膜とを有し、
    前記保護膜は、酸化珪素膜と、DLC膜とを含むことを特徴とするリフレクター。
  2. 請求項1に記載のリフレクターであって、前記接着層は、Ti層であることを特徴とするリフレクター。
  3. 請求項1または2に記載のリフレクターであって、前記銀合金は、Ag−Bi−Cu合金であることを特徴とするリフレクター。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリフレクターであって、前記保護膜は、前記接着層の上に、前記酸化珪素膜と前記DLC膜とをこの順に積層した構成であることを特徴とするリフレクター。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリフレクターであって、前記保護膜は、前記接着層の上に、前記DLC膜と前記酸化珪素膜とをこの順に積層した構成であることを特徴とするリフレクター。
  6. 基材と、前記基材上に配置された銀合金からなる反射膜と、前記反射膜の上に配置された金属薄膜の接着層と、前記接着層の上に配置された、酸化珪素膜とDLC膜とを含む保護膜とを備えたリフレクターの製造方法であって、
    前記DLC膜は、
    プラズマガンのカソードとアノードの間であって、前記アノードの前記カソードと対向する面の前に前記基材を配置し、
    前記カソードから前記アノードに向かってプラズマを発生させ、前記プラズマにより前記基材をマイナスにバイアスし、前記プラズマに炭化水素ガスを供給することによりカーボンイオンを生成し、前記基材に堆積させることにより成膜する、
    ことを特徴とするリフレクターの製造方法。
  7. 請求項6に記載のリフレクターの製造方法において、前記基材は、フローティング電位であることを特徴とするリフレクターの製造方法。
  8. 請求項6または7に記載のリフレクターの製造方法において、前記プラズマは、最も密度が高い部分の電子密度が1×1012/cm以上であることを特徴とするリフレクターの製造方法。
  9. 請求項6ないし8のいずれか1項に記載のリフレクターの製造方法において、前記アノードと前記カソードとの間の中央部で、前記プラズマに収束磁場を印加することを特徴とするリフレクターの製造方法。
  10. 請求項6ないし9のいずれか1項に記載のリフレクターの製造方法において、前記カソードと前記アノード間の放電電流は、10Aよりも大きいことを特徴とするリフレクターの製造方法。
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