JP2014173541A - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents

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啓之 川合
Shohei Masuda
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Abstract

【課題】段部が備えられた凹部に係合するロック部材を高速で作動させてロック解除を短時間で行う弁開閉時期制御装置を構成する。
【解決手段】駆動側回転体と従動側回転体20との相対回転位相を固定するための凹部27と、これに係合するロック部材とを備えている。凹部27には、ロック用溝部Taを形成し、これより浅い規制用溝部Tbとを形成し、開口位置から規制用底面Ubまでの深さ寸法Dbを、この規制用底面Ubからロック用底面Uaまでの深さ寸法Daより大きく設定した。
【選択図】図5

Description

本発明は、弁開閉時期制御装置に関し、詳しくは、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相をロックするロック機構を備えた弁開閉時期制御装置に関する。
上記のように構成された弁開閉時期制御装置として特許文献1には、駆動側回転体(文献では駆動側回転部材)の内部に従動側回転体(文献では従動側回転部材)を、相対回転位相変更自在に配置し、駆動側回転体と従動側回転体とをロック位相に固定するロック機構(文献では回転位相拘束機構)を備えた構成が示されている。
この特許文献1では、駆動側回転体の内周面側に出退自在にロック部材(文献では移動体)を備え、このロック部材の突出端が係合する凹部(文献では溝)を従動側回転体の外周の2箇所に形成することでロック機構が構成されている。この2箇所の凹部に対して対応するロック部材が係合する状態で駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相が固定されるロック状態に達する。
また、この特許文献1に示される2箇所の凹部には、凹部の底部より浅い底部の段部を備えており、この段部に対してロック部材が係合する状態では、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を固定する状態に達するものではなく、相対回転が可能となる範囲を小さくする規制状態となる。具体的な作動形態として、相対回転位相が進角側に変化した場合には、進角用ロック部のロック部材が対応する凹部の段部に係合し、この係合状態において、相対回転位相が更に進角側に変化した場合には、遅角用ロック部のロック部材が対応する凹部に備えられる段部に係合する状態となる。この後に、相対回転位相が更に進角側に変化した場合に、2箇所の凹部に対して対応するロック部材が同時に係合してロック状態に移行できるように構成されている。
尚、この特許文献1では、従動側回転体の外周面を基準にした段部の底部までの深さ寸法が、凹部の底部までの深さ寸法の1/2程度に設定されている。
特開2004‐257313号公報
弁開閉時期制御装置に備えられるロック機構は、エンジンを円滑に始動させるための弁の開閉時期を決めるものであり、エンジンを停止させる操作(例えば、人為的にキー操作等)が行われた場合には、弁開閉時期制御装置の相対回転位相をロック位相まで変化させロック状態に移行した後にエンジンを停止させる制御が行われている。
また、弁開閉時期制御装置の従動側回転体は、内燃機関のカムシャフトに直結しているため、このカムシャフトからの反力により、この従動側回転体と駆動側回転体との相対回転位相は進角方向と遅角方向とに振動するように交互に小さく変化するものである。この理由から、特許文献1の構成では、相対回転位相をロック位相に固定するために相対回転位相をロック位相の方向に変化させた場合には、ロック部材がロック凹部に達する以前に、ロック部材を段部に係合させることにより相対回転位相の変化を小さくしてロック位相への移行を確実、迅速に行えるようにしている。
また、エンジンの始動時には、前述したように弁開閉時期制御装置の相対回転位相がロック位相に維持されており、エンジンが始動した後には、ロックを解除してアイドリング状態において燃費が良好となる相対回転位相に移行している。
しかしながら、ロックを解除するためにロック部材を移動させることを考えると、ロック部材は凹部に係合する状態にあるため、クランクシャフトが回転した状態では凹部の壁面とロック部材とが強い力で当接することになり、ロック解除を油圧で行うための油圧に高い圧力を必要とし、ロック解除に遅れを招くこともあり改善の余地がある。
本発明の目的は、段部が備えられた凹部に係合するロック部材を高速で作動させてロック解除を短時間で行う弁開閉時期制御装置を合理的に構成する点にある。
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトから回転力が伝達される駆動側回転体と、前記駆動側回転体に内包され、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成し、前記駆動側回転体と同軸芯上で弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、前記駆動側回転体及び前記従動側回転体のうちの何れか一方に形成された凹部、及び、当該凹部に係合・離脱可能に前記駆動側回転体及び前記従動側回転体のうちの何れか他方に備えられたロック部材、及び、ロック部材を係合方向に付勢する付勢手段を有するロック機構とを備え、前記凹部が、前記ロック部材の係合により前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相をロック位相に固定するロック用溝部と、前記ロック用溝部に連なる位置に形成され、前記ロック部材の係合により前記相対回転位相のロック位相に近づく方向への変化を許容しつつ、前記ロック位相から離れる方向への変化を規制する規制用溝部とを備えて構成され、前記ロック用溝部において前記ロック部材の突出側端部が当接するロック用底面より、前記規制用溝部において前記ロック部材の突出側端部が当接する規制用底面が浅い位置に形成されると共に、前記凹部の開口位置から前記規制用底面までの深さ寸法が、この規制用底面から前記ロック用底面までの深さ寸法より大きく設定されている点にある。
この構成では、開口位置から規制用底面までの深さ寸法が、開口位置からロック用底面までの深さ寸法の1/2より長いため、ロック用底面が1/2の寸法に設定されたものと比較すると、ロック部材が規制用溝部に係合した状態ではロック部材を深く嵌合させて係合状態を強く維持できる。次に、ロック部材がロック用溝部に係合して内燃機関が停止している状態では、ロック用底面が1/2の寸法に設定されたものと比較すると、ロック用溝部の壁面のうち、規制用溝部の側の壁面とロック部材との当接面積が短い。この理由から、この後に内燃機関の始動に伴ってロック部材をロック用溝部から抜き出す場合には、ロック用溝部の壁面とロック部材との当接部分での摩擦を小さくして高速でロック部材を抜き出すことが可能となる。
その結果、段部が備えられた凹部に係合するロック部材を高速で作動させてロック解除を短時間で行う弁開閉時期制御装置が構成された。
本発明は、前記規制用溝部において深さ方向に沿って形成される縦壁面のうち、ロック用溝部に隣接する位置において前記ロック部材が当接可能な縦壁面が、前記凹部の開口の側の端部から深さ方向に沿った一部の領域に形成されていても良い。
これによると、ロック部材の突出側端部がロック用溝部を抜け出し、規制用溝部の底壁面に達した後に、規制用溝部の縦壁面に当接することがあっても、このように当接する縦壁面の面積が小さめ、当接によりロック部材に作用する抵抗の増大を抑制する。これによりロック部材を凹部から迅速に抜き出すことが可能となる。
弁開閉時期制御装置の断面図である。 図1のII−II線断面図である。 ロック部材がロック解除状態にある弁開閉時期制御装置の断面図である。 最遅角ロック位相にある弁開閉時期制御装置の断面図である。 第1ロック凹部の寸法関係を説明する図である。 中間ロック位相でのロック状態を示す断面図である。 ロック部材が係合を解除する際の状態を示す断面図である。 別実施形態(a)の弁開閉時期制御装置の断面図である。 別実施形態(a)でロック部材がロック用溝部に係合した状態の断面図である。 別実施形態(a)でロック部材のロック解除時の状態の断面図である。 別実施形態(b)の第1ロック凹部の寸法関係を説明する図である。 別実施形態(b)で中間ロック位相でのロック状態を示す断面図である。 別実施形態(c)で中間ロック位相でのロック状態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び図2に示すように、内燃機関としてのエンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体としての外部ロータ10と、エンジンEの吸気弁2を開閉するカムシャフト3に連結する従動側回転体としての内部ロータ20とを同軸芯上に配置し、外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)の変更により吸気弁2の開閉時期(開閉タイミング)を制御する弁開閉時期制御装置が構成されている。
エンジンEは乗用車等の車両に備えられるものであり、弁開閉時期制御装置は、ECUとして構成されるエンジン制御ユニット5によって制御される。このエンジン制御ユニット5は、エンジンEからのフィードバック情報、あるいは、運転者の操作情報を取得すると共に、電磁式の位相制御弁31と電磁式のロック制御弁32とを操作する(この操作による弁開閉時期制御装置の作動形態は後述する)。位相制御弁31とロック制御弁32とは単一の弁ユニットVに収容され、この弁ユニットVの一部が弁開閉時期制御装置に挿入される形態で備えられている。
〔弁開閉時期制御装置〕
図1〜図4に示すように、弁開閉時期制御装置は、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する外部ロータ10と、エンジンEの燃焼室の吸気バルブを開閉するカムシャフト3に対して連結ボルト23により連結する内部ロータ20とをカムシャフトの回転軸芯Xと同軸芯上に配置すると共に、外部ロータ10と内部ロータ20とを、回転軸芯Xを中心にして相対回転自在に備えている。
外部ロータ10は、円筒状となるロータ本体11を有すると共に、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体11の一方の端部に当接して配置されるリヤブロック12と、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体11の他方の端部に当接して配置されるフロントプレート13とを複数の締結ボルト14により締結した構成を有している。リヤブロック12は、外部ロータ10の一方の開口を閉じる位置に配置され、フロントプレート13は外部ロータ10の他方の開口を閉塞する位置に配置されている。また、リヤブロック12の外周には、クランクシャフト1から回転力が伝達される受動部としてのスプロケット12Sが形成され、ロータ本体11には円筒状の内壁面と、回転軸芯Xに近接する方向(径方向内側)に突出する複数の突出部11Tとが一体的に形成されている。
突出部11Tに対して回転軸芯Xから放射状となる姿勢で一対のガイド溝が形成され、これらのガイド溝にプレート状のロック部材15を出退可能に挿入している。また、ロータ本体11の内部にはロック部材15を回転軸芯Xに接近する方向に付勢する付勢手段としてのロックスプリング16を備えている。この構成から、一方のロック部材15と、これを突出する方向に付勢するロックスプリング16とで第1ロック機構L1が構成され、他方のロック部材15と、これを突出する方向に付勢するロックスプリング16とで第2ロック機構L2が構成されている。なお、ロック部材15の形状はプレート状に限るものではなく、例えば、ロッド状であっても良い。
内部ロータ20は、回転軸芯Xと同軸芯上でシリンダ内面状となる内周面20Sが形成されると共に、回転軸芯Xを中心とする外周面20Tが形成され、この外周面20Tには外方に突出する複数のベーン21が嵌め込まれている。この内部ロータ20のうち回転軸芯Xに沿う方向での一方の端部には鍔状部22が形成され、この鍔状部22の内周位置において回転軸芯Xと同軸芯に形成される孔部に挿通する連結ボルト23により内部ロータ20がカムシャフト3に連結されている。内部ロータ20には図2、図3、図4に示す進角室Caに連通する進角流路24と、遅角室Cbに連通する遅角流路25と、一対のロック解除流路26とが形成されている。
内部ロータ20の外周面20Tの外周径を、外部ロータ10のロータ本体11の複数の突出部11Tの突出端に密接する状態で嵌り込む値に設定し、複数のベーン21の突出端がロータ本体11の円筒状部位の内面に当接するように各々のベーン21の突出量を設定している。このような構成から、内部ロータ20を外部ロータ10に嵌め込むことでロータ本体11の内側表面(円筒状の内壁面及び複数の突出部11T)と内部ロータ20の外周面20Tとで取り囲まれる領域に流体圧室Cが形成される。更に、この流体圧室Cをベーン21が仕切る形態となり進角室Caと遅角室Cbとが形成される。
この内部ロータ20の外周には前述した第1ロック機構L1のロック部材15の係合・離脱が可能な第1ロック凹部27と、第2ロック機構L2のロック部材15の係合・離脱が可能な第2ロック凹部28とが形成されている。この第1ロック凹部27と第2ロック凹部28と最遅角ロック凹部29とは、図2〜図5に示すように内部ロータ20の外周面20Tに対して回転軸芯Xの方向に窪む凹部として形成されている。第1ロック凹部27には一対のロック解除流路26のうちの一方が連通し、第2ロック凹部28には一対のロック解除流路26のうちの他方が連通している。また、進角室Caに連通する進角流路24が第1ロック凹部27に近接する位置に形成され、この進角流路24の開口部位に最遅角ロック凹部29が形成され、この進角流路24と隣接する進角室Caとの間で作動油の流れを可能にする接続流路24Aが内部ロータ20の外周に溝状に形成されている。
図2に示すように、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27に嵌り込むと同時に、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28に嵌り込む状態が中間ロック位相となる。また、図4に示すように、第2ロック機構L2のロック部材15が最遅角ロック凹部29に嵌り込む状態が最遅角ロック位相となる。
弁開閉時期制御装置は、外部ロータ10のロータ本体11の内部に内部ロータ20を嵌め込み、これらを挟み込む位置にリヤブロック12とフロントプレート13とを配置し、締結ボルト14で連結されている。リヤブロック12の内側面と、フロントプレート13の内側面とに対しては複数のベーン21と2つのロック部材15とが接触する状態で配置される。
また、外部ロータ10のリヤブロック12と内部ロータ20とに亘って、トーションスプリング17が備えられる。このトーションスプリング17は、例えば、相対回転位相が最遅角にある状態から、少なくとも中間ロック位相に達するまで付勢力を作用させる。
このように弁開閉時期制御装置は、外部ロータ10に内部ロータ20を内包することで流体圧室Cが形成されると共に、この流体圧室Cをベーン21が仕切ることで進角室Caと遅角室Cbとが形成される。また、進角室Caに対して進角流路24が連通し、遅角室Cbに対して遅角流路25が連通する状態に達する。更に、第1ロック機構L1のロック部材15と第2ロック機構L2のロック部材15とは、対応する第1ロック凹部27と第2ロック凹部28とに嵌合可能な位置関係に達する。
この弁開閉時期制御装置では、エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット1Sと、外部ロータ10のスプロケット12Sとに亘ってタイミングチェーン4を巻回している。これにより、外部ロータ10はクランクシャフト1と同期回転する。本実施形態では、外部ロータ10にスプロケット12Sを形成していたが、これに代えて、外部ロータ10にタイミングプーリを形成し、これにタイミングベルトによりクランクシャフト1の回転力を伝える構成を用いて良い。これと同様に、外部ロータ10の外面にギヤを形成し、これにギヤトレインによりクランクシャフト1の回転力を伝える構成を用いても良い。また、本発明の弁開閉時期制御装置は、吸気弁2の開閉時期を制御するものに限るのではなく、エンジンEの排気弁の開閉時期を制御するように用いても良く、吸気弁2と排気弁との双方の開閉タイミングを制御するように一対の弁開閉時期制御装置を用いても良い。
〔弁ユニットV〕
弁ユニットVは、ユニットケースに対して位相制御弁31とロック制御弁32とを収容した構造を有しており、このユニットケースに一体的に形成した流路形成軸部33を内部ロータ20の内周面20Sに挿入する形態で備えられている。この流路形成軸部33の外周には、位相制御弁31のポートと連通する周状の溝状部と、ロック制御弁32のポートと連通する周状の溝状部とが形成され、これらの溝状部を分離するように流路形成軸部33の外周と、内部ロータ20の内周面20Sとの間には複数のリング状のシール34が備えられている。
エンジンEには、オイルパンのオイルを作動油として供給するようにエンジンEで駆動される油圧ポンプPを備えており、この油圧ポンプPからの作動油を位相制御弁31とロック制御弁32とに供給する流路が形成されている。
〔ロック凹部の詳細〕
図5に示すように、第1ロック凹部27は、ロック用溝部Taと、このロック用溝部Taの開口に連なる位置においてロック用溝部Taより浅い状態で段状に形成される規制用溝部Tbとを有している。ロック用溝部Taは、相対回転位相が中間ロック位相にある場合に、第1ロック機構L1のロック部材15が係合することにより相対回転位相をロック位相に固定するように機能する。規制用溝部Tbは、ロック部材15が係合することにより、相対回転位相が遅角位相からロック位相に近づく方向への変化を許容しつつ、ロック位相から離れる方向への変化を規制するように機能する。尚、この規制用溝部Tbを、相対回転位相が進角位相からロック位相に近づく方向への変化を許容するようにロック用溝部Taとの位置関係を設定して形成しても良い。
特に、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27のロック用溝部Taに係合する状態では、図2に示すように、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28に係合する状態に達する。
また、ロック用溝部Taにはロック部材15の突出側端部が当接するロック用底面Uaが形成されている。ロック用底面Uaを基準に進角方向Saの方向の位置(規制用溝部Tbに隣接する位置)から立ち上がる姿勢の壁部にはロック部材15が当接可能な主縦壁面Waと、これと逆側の位置で立ち上がる姿勢の壁部には中間ロック位相においてロック部材15が当接する副縦壁面Wbとを有している。
規制用溝部Tbにはロック部材の突出端が当接する規制用底面Ubが形成されると共に、この規制用底面Ubを基準に進角方向Saの位置で立ち上がる姿勢でロック部材15に当接可能な規制壁Wrを有している。
この実施形態では、ロック用底面Uaにロック部材15が係合した状態で、ロック解除を行う際にロック部材15の突出側端部に作動油を容易に供給するための突起をロック用底面Uaに形成しており、この突起の突出端をロック用底面Uaの位置として説明する。なお、突起を形成せずにロック用底面Uaに溝を形成することにより、係合状態のロック部材15の先端に作動油を供給できるように構成しても良く、このような構成を作用した場合には、ロック用底面Uaの平坦な部分がロック用底面Uaの位置となる。
特に、内部ロータ20の外周面20T(開口位置)から第1ロック凹部27のロック用底面Uaまでの深さが、深さ寸法D1(以下、第1深さ寸法D1と称する)に設定されている。内部ロータ20の外周面20T(開口位置)から第1ロック凹部27の規制用底面Ubまでの深さ寸法Db(以下、規制側深さ寸法Dbと称する)が、この規制用底面Ubからロック用底面Uaまでの深さ寸法Da(以下、ロック側深さ寸法Daと称する)より大きい値に設定されている。つまり、このような深さ寸法の関係から、規制用底面Ubの位置が第1深さ寸法D1の1/2より大きい値となる。
また、内部ロータ20の外周面20Tから第2ロック凹部28の第2底面28Uまでの深さ寸法と、内部ロータ20の外周面20Tから最遅角ロック凹部29の第3底面29Bまでの深さ寸法とは等しく設定されている。更に、第2ロック凹部28に形成された一対の縦壁面のうち進角方向Saの側には中間ロック位相においてロック部材15が当接する進角側縦壁面Vaが形成され、遅角方向Sbの側には、ロック部材15の接当が可能な遅角側縦壁面Vbが形成されている。
第1ロック凹部27の主縦壁面Waの深さ方向での寸法と、規制壁Wrの深さ方向での寸法と、副縦壁面Wbの深さ方向での寸法と、第2ロック凹部28の進角側縦壁面Vaの深さ方向での寸法と、遅角側縦壁面Vbの深さ方向での寸法とが、等しい値に設定されている。つまり、第1ロック凹部27の一対の壁面のロック用底面Uaに連なる部位の一部を切削等により取り除く加工により、主縦壁面Waと副壁面Wbとが形成され、これと同様の加工により、進角側縦壁面Vaと遅角側縦壁面Vbが形成されている。
〔作動形態〕
図1、図2に示すように、弁開閉時期制御装置は、クランクシャフト1からタイミングチェーン4を介して伝えられる駆動力により外部ロータ10が駆動回転方向Sに向けて回転する。また、外部ロータ10に対して内部ロータ20が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置では、相対回転位相が進角方向Saに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1とカムシャフト3との関係が設定されている。
ベーン21で仕切られた流体圧室Cのうち、作動油が供給されることで相対回転位相を進角方向Saに変位させる空間が進角室Caであり、これとは逆に、作動油が供給されることで相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる空間が遅角室Cbである。ベーン21が進角方向Saの移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン21が遅角側の移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。
尚、最遅角位相とは遅角側の移動端に限るものではなく、この移動端の近傍を含む概念であり、前述した最遅角ロック位相を含んでいる。これと同様に、最進角とは進角側の移動端に限るものではなく、この移動端の近傍を含む概念である。
この弁開閉時期制御装置では、図2、図6に示すように第1ロック機構L1のロック部材15がロックスプリング16の付勢力により第1ロック凹部27のロック用溝部Taに係合すると同時に、第2ロック機構L2のロック部材15がロックスプリング16の付勢力により第2ロック凹部28に係合する状態で、外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転が阻止される。この回転位相が中間ロック位相である。この中間ロック位相は放熱状態のエンジンEを始動させる場合に最適の吸気タイミングを設定する相対回転位相である。
また、図4に示すように、第2ロック機構L2のロック部材15だけがロックスプリング16の付勢力により最遅角ロック凹部29に係合する状態で、外部ロータ10と内部ロータ20との相対回転が阻止される。この相対回転位相が最遅角ロック位相であり、相対回転位相が最遅角に近い位相となる。この遅角回転位相は、例えば、アイドルストップ時再始動など、エンジンEが放熱しない状態においてエンジンEを始動させる場合に最適の吸気タイミングを設定させる相対回転位相である。
この最遅角ロック位相から相対回転位相を中間ロック位相に変更する場合には、位相制御弁31の操作により進角流路24に作動油を供給して、最遅角ロック凹部29に係合するロック部材15の係合を解除すると共に、相対回転位相を進角方向Saの方向に変化させる。この変化が進むことにより、最初に第1ロック機構L1のロック部材15がロックスプリング16の付勢力により第1ロック凹部27の規制用溝部Tbに係合する状態に達する。
このように相対回転位相を進角方向Saに変化させる場合には、カムシャフト3からの反力が内部ロータ20に作用するため、相対回転位相が進角方向Saと遅角方向Sbとに振動するように交互に小さく変化する。
前述したように、規制用溝部Tbの規制用底面Ubの位置が第1ロック凹部27の第1深さ寸法D1の1/2より大きい値に設定されているため、例えば、規制用溝部Tbの規制用底面Ubの位置が第1深さ寸法D1の1/2に設定されているものと比較すると、第1ロック機構L1のロック部材15が規制用溝部Tbに係合した状態では、係合深さが大きく係合状態を強く維持する。この構成では、前述したように、規制側深さ寸法Dbがロック側深さ寸法Daより大きく(深く)設定されているので、規制用底面Ubに塵埃等が侵入しても、規制用溝部Tbに対するロック部材15の係合を確実にする。
そして、相対回転位相が進角方向Saに変位することにより、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28に係合する状態に移行し、この後に、第1ロック機構L1のロック部材15がロック用溝部Taに係合する状態に移行することで、図6に示すように、相対回転位相が中間ロック位相に固定する状態に達する。また、中間ロック位相に達した状態では、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27の副縦壁面Wbに当接すると同時に第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28の進角側縦壁面Vaに当接する状態となり、この中間ロック位相が強固に固定される。
また、中間ロック位相に達した状態では、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27の副縦壁面Wbに対して所定の隙間で近接し、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28の進角側縦壁面Vaに対して所定の隙間で近接する関係となり、中間ロック位相で強固に固定される。
この中間ロック位相にある状態でエンジンEの停止が行われるものであり、停止状態のエンジンEを始動する際には、ロックを解除して相対回転位相を変化させることになる。ロック解除時には、ロック制御弁32の操作によりロック解除流路26に作動油が供給される。
このロック解除時には、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27の副縦壁面Wbにロック部材15が接触する面積が小さく、第2ロック凹部28の進角側縦壁面Vaとロック部材15が接触する面積が小さいため、ロック部材15に作用する摩擦力を小さくして円滑なロック解除が実現する。また、第1ロック凹部27のロック用溝部Taのロック側深さ寸法Daが、規制用溝部Tbより浅く設定されているため、ロックが解除されるまでに必要とする作動油の油量を低減すると共に、ロックが解除されるまでの時間を短縮する。
図7に示すように、第1ロック機構L1のロック部材15がロック用溝部Taから離間した後には、カムシャフト3からの反力により相対回転位相が進角方向Saと遅角方向Sbとに振動するように交互に小さく変化することにより、ロック部材15が規制壁Wrに接触することがあっても、この接触時にロック部材15に作用する抵抗を低減してロック部材15の作動速度を減ずることなく、ロック部材15を高速で作動させ、迅速なロック解除を可能にする。
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では前記実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施形態と共通の番号、符号を付している)。
(a)図8〜図10に示すように、内部ロータ20に対して複数のベーン部21を一体的に形成することにより、ベーン部21によって流体圧室Cを進角室Caと遅角室Cbとに仕切るように構成した弁開閉時期制御装置において、複数のベーン部21の1つに対し、回転軸芯Xに沿って作動するロック部材15を有するロック機構Lに対して本発明の構成を適用する。
この別実施形態(a)では、ロック部材15が円柱状に成形され、このロック部材15が1つのベーン部21に形成された孔部21Aの内部に対し回転軸芯Xに沿う方向にスライド移動できるように収容されると共に、ロックスプリング16により突出する方向に付勢されている。また、ロック部材15は一端側に大径部15Aを形成し、他端側に小径部15Bを形成することで中間部分に段状部を形成したおり、大径部15Aにはロックスプリング16の一部を収容する空間が形成されている。
ベーン部21には、ロック部材15の小径部15Bが挿通する貫通孔が形成されると共に、ロック部材15の中間の段状部に作動油を供給することで、このロック部材15をロック解除方向に作動させるロック解除流路26が形成されている。リヤブロック12にはロック部材15の小径部15Bの突出側端部の係合・離脱が可能なロック凹部27が形成されている。尚、ロック部材15が係合する凹部は、フロントプレート13に形成しても良い。
この別実施形態(a)では、ロック凹部27は、前述した実施形態と同様に、ロック用溝部Taと、このロック用溝部Taの開口に連なる位置に、ロック用溝部Taより浅い状態で段状に形成される規制用溝部Tbとを有している。ロック用溝部Taは、相対回転位相が中間ロック位相にある場合に、ロック部材15が係合することにより、相対回転位相をロック位相に固定するように機能する。規制用溝部Tbは、ロック部材15が係合することにより、相対回転位相がロック位相に近づく方向への変化を許容しつつ、ロック位相から離れる方向への変化を規制するように機能する。
ロック用溝部Taにはロック部材15の突出側端部が当接するロック用底面Uaが形成されている。規制用溝部Tbにはロック部材の突出端が当接する規制用底面Ubが形成されている。特に、ロック凹部27は、開口位置からロック用底面Uaまでの深さが、深さ寸法D1(以下、第1深さ寸法D1と称する)に設定されている。また、開口位置から第1ロック凹部27の規制用底面Ubまでの深さ寸法Db(以下、規制側深さ寸法Dbと称する)が、この規制用底面Ubからロック用底面Uaまでの深さ寸法Da(以下、ロック側深さ寸法Daと称する)より大きい値に設定されている。つまり、このような深さ寸法の関係から、規制用底面Ubの位置が第1深さ寸法D1の1/2より大きい値となる。
この別実施形態(a)のように構成したものでも、例えば、規制用溝部Tbの規制用底面Ubの位置が第1深さ寸法D1の1/2に設定されているものと比較すると、規制側深さ寸法Dbがロック側深さ寸法Daより大きい(深い)のでロック部材15が規制用溝部Tbに係合した際の係合深さを大きくして強い係合を実現する。また、相対回転位相が進角方向Saに変化した場合には、ロック部材15の突出側端部を確実にロック用溝部Taに導入して中間ロック位相に保持することが可能となる。
(b)図11、図12に示すように、前述した実施形態と同様に、第1ロック凹部27が、ロック用溝部Taと、このロック用溝部Taの開口に連なる位置においてロック用溝部Taより浅い状態で段状に形成される規制用溝部Tbとで構成されている。ロック用溝部Taは、相対回転位相が中間ロック位相にある場合に、第1ロック機構L1のロック部材15が係合することにより相対回転位相をロック位相に固定するように機能する。規制用溝部Tbは、ロック部材15が係合することにより、相対回転位相が遅角位相からロック位相に近づく方向への変化を許容しつつ、ロック位相から離れる方向への変化を規制するように機能する。
ロック位相においては、中間ロック位相に達した状態では、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27の主縦壁面Waに対して所定の隙間で近接し、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28の遅角側縦壁面Vbに対して所定の隙間で近接する位置関係となり、この中間ロック位相が強固に固定される。
この別実施形態(b)のようにロック位相でのロック形態を設定したものでも、第1ロック機構L1のロック部材15が規制用溝部Tbに係合した状態では、係合深さが大きく係合状態を強く維持する。この構成では、前述したように、規制側深さ寸法Dbがロック側深さ寸法Daより大きく(深く)設定されているので、規制用底面Ubに塵埃等が侵入しても、規制用溝部Tbに対するロック部材15の係合を確実にする。
また、中間ロック位相に達した状態では、第1ロック機構L1のロック部材15が第1ロック凹部27の主縦壁面Waに当接すると同時に第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28の遅角側縦壁面Vbに当接する状態となり、この中間ロック位相が強固に固定される。
(c)図13に示すように、第2ロック凹部28を、第1ロック凹部27と同様の深さ寸法の関係で、ロック用溝部Tcと規制用溝部Tdとで構成する。この構成では、 第1ロック機構L1のロック部材15が、第1ロック凹部27の規制用溝部Tbに係合した後に、第2ロック機構L2のロック部材15が第2ロック凹部28の規制用溝部Tdに係合する順序となる。このように構成したものでも、第2ロック凹部28においては、第1ロック凹部27と同様にロック部材15が作動して係合状態に達する。
(d)実施形態に示した一対のロック部材15に代えて、単一のロック部材15を備えて弁開閉時期制御装置を構成する。このように単一のロック部材15を備えたものでも、相対回転位相を所望の位相に固定することが可能となる。
(e)ロック部材15を内部ロータ20(従動側回転体)に対して出退自在に支持し、外部ロータ10(駆動側回転体)に対して凹部を形成し、この凹部に対してロック部材15の突出側端部が係合・離脱可能に構成する。このように構成した弁開閉時期制御装置においても凹部には、ロック用溝部Taと規制用溝部Tbとを隣接する位置に形成することにより確実な係合を実現する。
本発明は、ロック部材が凹部に係合することで相対回転位相を固定する弁開閉時期制御装置に利用することができる。
1 クランクシャフト
3 カムシャフト
10 駆動側回転体(外部ロータ)
15 ロック部材
16 付勢部材(ロックスプリング)
20 従動側回転体(内部ロータ)
27 凹部(第1ロック凹部)
Ca 進角室
Cb 遅角室
Da 深さ寸法
Db 深さ寸法
E 内燃機関(エンジン)
Ta ロック用溝部
Tb 規制用溝部
Ua ロック用底面
Ub 規制用底面
Wa 縦壁面(主縦壁面)

Claims (2)

  1. 内燃機関のクランクシャフトから回転力が伝達される駆動側回転体と、
    前記駆動側回転体に内包され、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成し、前記駆動側回転体と同軸芯上で弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
    前記駆動側回転体及び前記従動側回転体のうちの何れか一方に形成された凹部、及び、当該凹部に係合・離脱可能に前記駆動側回転体及び前記従動側回転体のうちの何れか他方に備えられたロック部材、及び、ロック部材を係合方向に付勢する付勢手段を有するロック機構とを備え、
    前記凹部が、前記ロック部材の係合により前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相をロック位相に固定するロック用溝部と、
    前記ロック用溝部に連なる位置に形成され、前記ロック部材の係合により前記相対回転位相のロック位相に近づく方向への変化を許容しつつ、前記ロック位相から離れる方向への変化を規制する規制用溝部とを備えて構成され、
    前記ロック用溝部において前記ロック部材の突出側端部が当接するロック用底面より、前記規制用溝部において前記ロック部材の突出側端部が当接する規制用底面が浅い位置に形成されると共に、前記凹部の開口位置から前記規制用底面までの深さ寸法が、この規制用底面から前記ロック用底面までの深さ寸法より大きく設定されている弁開閉時期制御装置。
  2. 前記規制用溝部において深さ方向に沿って形成される縦壁面のうち、ロック用溝部に隣接する位置において前記ロック部材が当接可能な縦壁面が、前記凹部の開口の側の端部から深さ方向に沿った一部の領域に形成してある請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009250073A (ja) * 2008-04-02 2009-10-29 Denso Corp バルブタイミング調整装置

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