JP2014172303A - 液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧力発生手段を駆動させることで生じる残留振動に基づいて噴射異常を検出する構成において検出精度を向上させることが可能な液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法を提供する。
【解決手段】ノズル28からインクを噴射して着弾対象にドットを形成する第4噴射駆動パルスおよび検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動パルスPdを発生すると共に、検査駆動パルスによる圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動パルスPpを検査駆動パルスの前に発生させる。
【選択図】図5
【解決手段】ノズル28からインクを噴射して着弾対象にドットを形成する第4噴射駆動パルスおよび検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動パルスPdを発生すると共に、検査駆動パルスによる圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動パルスPpを検査駆動パルスの前に発生させる。
【選択図】図5
Description
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法に関し、特に、ノズルに連通する圧力室の一部を構成する作動部を変形させることで当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることによりノズルから液体を噴射させる液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法に関するものである。
液体噴射装置は、液体を液滴としてノズルから噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタに用いられる色材、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な種類の液体の噴射に液体噴射装置が用いられている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
例えば、上記のプリンターでは、インクの増粘による目詰まり等の要因によりノズルからインクが噴射されない場合、即ち、所謂ドット抜けが発生した場合、記録媒体に記録された画像の画質が低下するおそれがある。従って、全てのノズルからインクが確実に噴射されるか否かを検査する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、アクチュエーター(圧力発生手段)を駆動したときの振動板の残留振動の振動パターンに基づいてインクの噴射異常を検査する技術が開示されている。
ところで、上記のプリンターに搭載される記録ヘッドでは、記録紙等の記録媒体に対して画像等を印刷する動作(記録動作)を行っている最中に上記の噴射異常を検査する場合、インク噴射時に圧力室内のインクに生じる圧力振動の減衰振動(残留振動)によってアクチュエーターに逆起電力が生じ、この逆起電力に基づく電流が検査回路に流れ込む(リーク電流)問題がある。すなわち、検査対象のノズルに対応するアクチュエーターのみならず、同一ノズル列に属する他のノズルのアクチュエーターからもリーク電流が検査回路に流れ込むことにより、流れ込んだ電流が検出信号に対してノイズとして重畳してしまう。その結果、噴射異常の検出精度が低下するという問題があった。
なお、このような問題は、インクを噴射する記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、圧力発生手段を駆動させることで生じる残留振動に基づいて噴射異常を検出する構成を有する他の液体噴射装置においても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力発生手段を駆動させることで生じる残留振動に基づいて噴射異常を検出する構成において検出精度を向上させることが可能な液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法を提供することにある。
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を噴射するノズル(28)、当該ノズルに連通する圧力室(17)、及び、当該圧力室の一部を構成する作動部と、前記作動部(振動板21)を変形させる圧力発生手段(圧電素子10)を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッド(記録ヘッド2)と、
前記圧力発生手段を駆動させて前記圧力室内に圧力振動を生じさせる駆動波形を発生する駆動波形発生手段(駆動信号発生回路39)と、
前記圧力発生手段の駆動によって生じる前記作動部の振動に基づき噴射異常を検査する検査手段(噴射異常検出回路51、プリンターコントローラー31)と、を備え、
前記駆動波形発生手段は、前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形(第4噴射駆動パルスP4)および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形(検査駆動パルスPd)を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形(前駆動パルスPp)を発生させることを特徴とする。
前記圧力発生手段を駆動させて前記圧力室内に圧力振動を生じさせる駆動波形を発生する駆動波形発生手段(駆動信号発生回路39)と、
前記圧力発生手段の駆動によって生じる前記作動部の振動に基づき噴射異常を検査する検査手段(噴射異常検出回路51、プリンターコントローラー31)と、を備え、
前記駆動波形発生手段は、前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形(第4噴射駆動パルスP4)および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形(検査駆動パルスPd)を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形(前駆動パルスPp)を発生させることを特徴とする。
本発明によれば、検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形を発生させるので、噴射異常検査を行う前の液体噴射によって生じた位相や振幅が不規則な残留振動に対して上記の予備的な圧力振動が合成されることで、位相等が比較的規則的な振動とすることができる。これにより、噴射異常検査における残留振動による悪影響を低減することができ、噴射異常の検出精度を向上させることが可能となる。
また、上記構成において、前記前駆動波形は、前記圧力室を膨張させるように電位が変化する第1の変化要素(第2膨張要素p21)と、当該第1の変化要素の後に発生されて前記圧力室を収縮させるように電位が変化する第2の変化要素(第2収縮要素p22)と、を有し、
前記第1の変化要素の始端から前記第2の変化要素の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定され、
前記第1の変化要素の始端から前記検査駆動波形の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定されることが望ましい。
前記第1の変化要素の始端から前記第2の変化要素の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定され、
前記第1の変化要素の始端から前記検査駆動波形の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定されることが望ましい。
この構成によれば、第1の変化要素により生じた振動を制振し得るタイミングで第2の変化要素が圧力発生手段に印加され、第2の変化要素により生じた振動を制振し得るタイミングで検査駆動波形が圧力発生手段に印加される。これにより、前駆動波形による予備的な振動と検査駆動波形による圧力振動が合成されたときに振幅が大きくなりすぎてノズルから液体が誤噴射される等の不具合を抑制することが可能となる。
そして、本発明の液体噴射装置の制御方法は、液体を噴射するノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室の一部を構成する作動部と、前記作動部を変形させる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段を駆動させて前記圧力室内に圧力振動を生じさせる駆動波形を発生する駆動波形発生手段と、前記圧力発生手段の駆動によって生じる前記作動部の振動に基づき噴射異常を検査する検査手段と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形を発生させることを特徴とする。
前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形を発生させることを特徴とする。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。このプリンター1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、液体供給源の一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録動作時の記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6(記録媒体あるいは液体着弾対象の一種)の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7と、主走査方向に直交する副走査方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8と、を備えて概略構成されている。
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)がプリンターコントローラー31の制御部37(図4参照)に送信される。リニアエンコーダー10は位置情報出力手段の一種であり、記録ヘッド2の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。このため、制御部37は、受信したエンコーダーパルスに基づいてキャリッジ4に搭載された記録ヘッド2の走査位置を認識できる。即ち、例えば、受信したエンコーダーパルスをカウントすることで、キャリッジ4の位置を認識することができる。これにより、制御部37はこのリニアエンコーダー10からのエンコーダーパルスに基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作を制御することができる。
キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジの走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面(ノズルプレート29:図3参照)を封止するキャッピング部材11と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙6上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録が可能に構成されている。
図2及び図3に示すように、記録ヘッド2は、圧力発生ユニット15と流路ユニット16とから構成されており、これらを重ね合わせた状態で一体化してある。圧力発生ユニット15は、圧力室17を区画するための圧力室プレート18、供給側連通口22及び第1連通口24aを開設した連通口プレート19、及び、圧電素子20を実装した振動板21と、を積層し、焼成等により一体化することで構成されている。また、流路ユニット16は、供給口23や第2連通口24bを形成した供給口プレート25、リザーバー26や第3連通口24cを形成したリザーバープレート27、及び、ノズル28が形成されたノズルプレート29からなるプレート部材を積層状態で接着することで構成されている。ノズルプレート29は、複数(例えば、360個)のノズル28が列設されてノズル列が構成されている。このノズル列は、例えば、インク(液体の一種)の色毎に設けられる。
圧力室17とは反対側となる振動板21の外側表面には、圧力室17毎に対応して圧電素子20が配設される。例示した圧電素子20は、所謂撓み振動モードの圧電素子であり、駆動電極20aと共通電極20bとによって圧電体20cを挟んで構成されている。そして、圧電素子20の駆動電極に駆動信号(駆動パルス)が印加されると、駆動電極20aと共通電極20bとの間には電位差に応じた電場が発生する。この電場は圧電体20cに付与され、圧電体20cが付与された電場の強さに応じて変形する。即ち、駆動電極20aの電位を高くする程、圧電体層20cの幅方向(ノズル列方向)の中央部が圧力室17の内側(ノズルプレート29に近づく側)に撓み、圧力室17の容積を減少させるように振動板21を変形させる。一方、駆動電極20aの電位を低くする程(0に近づける程)、圧電体層20cの短尺方向の中央部が圧力室17の外側(ノズルプレート29から離れる側)に撓み、圧力室17の容積を増加させるように振動板21を変形させる。ここで、振動板21において、圧力室17の開口部を封止している部分は、本発明における作動部として機能する。この作動部の面積は、当該作動部によって封止される圧力室17の開口面積よりも少し広くなっている。これにより、作動部が圧力室17の開口面よりも内側又は外側に容易に撓むことができるようになっている。なお、例示した構成において、駆動電極20aと共通電極20bとを逆にする構成を採用することも可能である。
図4は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、プリンターコントローラー31とプリントエンジン32とで概略構成されている。プリンターコントローラー31は、ホストコンピューター等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インタフェース(外部I/F)33と、各種データ等を記憶するRAM34と、各種制御のための制御プログラム等を記憶したROM35と、ROM35に記憶されている制御プログラムに従って各部の統括的な制御を行う制御部37と、クロック信号を発生する発振回路38と、記録ヘッド2へ供給する駆動信号を発生する駆動信号発生回路39(駆動波形発生手段の一種)と、印刷データをドット毎に展開することで得られたドットパターンデータや駆動信号等を記録ヘッド2に出力するための内部インタフェース(内部I/F)40と、を備えている。また、プリントエンジン32は、記録ヘッド2、キャリッジ移動機構7、紙送り機構8、及び、リニアエンコーダー10から構成されている。
制御部37は、リニアエンコーダー10から出力されるエンコーダーパルスからタイミングパルスPTS(図5参照)を生成するタイミングパルス生成手段として機能する。このタイミングパルスPTSは、駆動信号発生回路39が発生する駆動信号の発生開始タイミングを定める信号である。つまり、駆動信号発生回路39は、このタイミングパルスPTSを受信する毎に駆動信号COMを出力する。換言すると、駆動信号発生回路39は、上記のタイミングパルスPTSに基づく周期(以下、単位周期Tという。)で駆動信号COMを繰り返し発生する。また、制御部37は、印刷データのラッチタイミングを規定するラッチ信号LAT、及び、駆動信号に含まれる各噴射駆動パルスの選択タイミングを規定するチェンジ信号CHを出力する。なお、本実施形態のラッチ信号LATは、タイミングパルスPTSの受信によって1つ目のLAT1を発生し、その後、規定時間の経過を条件に2つ目のLAT2を発生する。
駆動信号発生回路39は、駆動電圧供給源と定電圧供給源とから構成され(何れも図示せず)、駆動電圧供給源から上記の駆動信号COMを出力するとともに、定電圧供給源から直流電圧VBSを出力する。駆動電圧供給源は、圧電素子20毎に設けられた第1スイッチ48を介して圧電素子20の駆動電極20aに電気的に接続されている(図7参照)。また、定電圧供給源は、同一ノズル列に属する各圧電素子20に対して共通に設けられた第2スイッチ49および当該第2スイッチ49と並列に接続されている検出抵抗器50を介して圧電素子20の共通電極20bに電気的に接続されている(図7参照)。
図5は、本実施形態における駆動信号COMの構成の一例を説明する波形図、及び、波形選択データの対応表である。なお、同図において横軸は時間を、縦軸は電位を、それぞれ示している。本実施形態の駆動信号COMは、ラッチ信号を基準として前半部分と後半部分とに分けることができる。本実施形態において、前半(期間T1)に対応する部分が記録用単位信号であって、後半(期間T2)に対応する部分が検査用単位信号である。そして、本実施形態においては、記録紙6等の記録媒体に対する記録動作中(画像等の印刷動作中)に、後半の検査用単位信号を用いてノズル28の噴射異常検査を行うことができるように構成されている。この噴射異常検査の詳細については後述する。
本実施形態における記録用単位信号は、4つの噴射駆動パルス(本発明における噴射駆動波形の一種)P1〜P4を期間T1内に有する一連の信号である。本実施形態において、前半部分の期間T1は、4つの期間(パルス発生期間)t1〜t4に区分されている。そして、期間t1で第1噴射駆動パルスP1が発生し、期間t2で第2噴射駆動パルスP2が発生し、期間t3で第3噴射駆動パルスP3が発生する。また、期間t4では、第4噴射駆動パルスP4が発生する。各噴射駆動パルスP1〜P4は、基準電位VBとこれよりも低い噴射電位VLとの間で電位が略逆台形状に変化する波形となっている。これらの噴射駆動パルスP1〜P4の駆動電圧Vh(基準電位VBから噴射電位VLまでの電位差)は、ノズル28から所定量のインクが噴射されるような値に設定されている。本実施形態では、1つの画素(画像等の構成単位)の形成領域に対し、ドットを形成しない非記録も含めて合計4階調の表現が可能となっている。
より具体的には、これらの第1噴射駆動パルスP1〜第4噴射駆動パルスP4が圧電素子20にそれぞれ印加される毎に、規定量のインクがノズル28から噴射される。そして、期間T1内で圧電素子20に印加する噴射駆動パルスの数を変えることで1つの画素領域(記録紙6における仮想上の画素形成領域)に対して記録されるドットの大きさを異ならせることができる。期間T1内における噴射駆動パルスの選択は、図5の対応表の左欄(LAT1)に示すように、印刷データに基づいて生成される2ビットの選択データに応じて行われる。
例えば、選択データが(00)の場合には、何れの噴射駆動パルスも圧電素子20に印加されない。このため、期間T1においてノズル28からはインクが噴射されない。即ち、選択データが(00)の場合、ドットが形成されない非記録(非吐出)となる。また、期間T1において選択データが(01)の場合、期間T1内の期間t2における第2噴射駆動パルスP2のみが圧電素子20に印加されることで、期間T1でノズル28から1回だけインクが噴射される。これにより、記録紙6には1つのドット(以下、単位ドットという。)が形成され、これが小ドットとなる。さらに、選択データが(10)の場合、期間T1内の期間t1における第1噴射駆動パルスP1とt3における第3噴射駆動パルスP3が選択されて圧電素子20に順次印加される。これにより、期間T1内ではインクの噴射動作が2回連続して行われる。これらのインクが記録紙6に着弾すると、当該記録紙6には2つの単位ドットが形成され、この2つの単位ドットにより中ドットが構成される。そして、選択データが(11)の場合、期間T1内の4つの噴射駆動パルスP1〜P4がそれぞれ選択されて圧電素子20に順次印加されることで、期間T1内でインクの噴射動作が4回連続して行われる。これにより、記録紙6には各インクが着弾して4つの単位ドットが形成され、これらの単位ドットにより大ドットが構成される。
例えば、選択データが(00)の場合には、何れの噴射駆動パルスも圧電素子20に印加されない。このため、期間T1においてノズル28からはインクが噴射されない。即ち、選択データが(00)の場合、ドットが形成されない非記録(非吐出)となる。また、期間T1において選択データが(01)の場合、期間T1内の期間t2における第2噴射駆動パルスP2のみが圧電素子20に印加されることで、期間T1でノズル28から1回だけインクが噴射される。これにより、記録紙6には1つのドット(以下、単位ドットという。)が形成され、これが小ドットとなる。さらに、選択データが(10)の場合、期間T1内の期間t1における第1噴射駆動パルスP1とt3における第3噴射駆動パルスP3が選択されて圧電素子20に順次印加される。これにより、期間T1内ではインクの噴射動作が2回連続して行われる。これらのインクが記録紙6に着弾すると、当該記録紙6には2つの単位ドットが形成され、この2つの単位ドットにより中ドットが構成される。そして、選択データが(11)の場合、期間T1内の4つの噴射駆動パルスP1〜P4がそれぞれ選択されて圧電素子20に順次印加されることで、期間T1内でインクの噴射動作が4回連続して行われる。これにより、記録紙6には各インクが着弾して4つの単位ドットが形成され、これらの単位ドットにより大ドットが構成される。
本実施形態における検査用単位信号は、前駆動パルスPp(本発明における前駆動波形の一種)および検査駆動パルスPd(本発明における検査駆動波形の一種)を期間T2内に有する一連の信号である。本実施形態において、期間T2は、さらに2つの期間t5およびt6に区分されている。そして、期間t5で前駆動パルスPpが発生され、期間t6で検査駆動パルスPdが発生される。
図6は、前駆動パルスPpおよび検査駆動パルスPdの構成を説明する波形図である。
検査駆動パルスPdは、基準電位VBからこれよりも低い検査電位Vdまで電位が変化(降下)する第1膨張要素p11と、検査電位Vdで一定な第1膨張ホールド要素p12と、検査電位Vdから基準電位VBまで電位が変化(上昇)する第1収縮要素p13と、を有する電圧波形である。すなわち、検査駆動パルスPdは、圧電素子20に対して圧力室17の外側に撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積から検査電位Vdに対応する膨張容積まで膨張させた後、圧力室17の内側に向けて撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積まで収縮させる一連の動作を行わせる波形である。この一連の動作が実行された後、振動板21は次の駆動パルスが印加されるまで、または十分な時間が経過するまで減衰振動を行う。この減衰振動を残留振動とも称する。
検査駆動パルスPdは、基準電位VBからこれよりも低い検査電位Vdまで電位が変化(降下)する第1膨張要素p11と、検査電位Vdで一定な第1膨張ホールド要素p12と、検査電位Vdから基準電位VBまで電位が変化(上昇)する第1収縮要素p13と、を有する電圧波形である。すなわち、検査駆動パルスPdは、圧電素子20に対して圧力室17の外側に撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積から検査電位Vdに対応する膨張容積まで膨張させた後、圧力室17の内側に向けて撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積まで収縮させる一連の動作を行わせる波形である。この一連の動作が実行された後、振動板21は次の駆動パルスが印加されるまで、または十分な時間が経過するまで減衰振動を行う。この減衰振動を残留振動とも称する。
この検査駆動パルスPdの駆動電圧Vh1(基準電位VBから検査電位Vdまでの電位差)は、噴射駆動パルスの駆動電圧Vhよりも低く、尚かつ、前駆動パルスPpの駆動電圧Vh2(後述)よりも高く設定されている。検査駆動パルスPdは、圧電素子20を駆動することで圧力室17内のインクに圧力振動を生じさせることを目的とするパルスである。このため、検査駆動パルスPdの印加により圧電素子20を駆動させたときにノズル28からインクが噴射されても良いし、インクが噴射されなくても良い。但し、本実施形態においては、記録動作中にノズル28の噴射異常検査を行う構成であるため、検査駆動パルスPdが圧電素子20に印加されてもノズル28からインクが噴射されないような駆動電圧Vh1に設定されている。
また、前駆動パルスPpは、基準電位VBから前駆動電位Vpまで電位が変化(降下)する第2膨張要素p21(本発明における第1の変化要素に相当)と、前駆動電位Vpで一定な第2膨張ホールド要素p22と、前駆動電位Vpから基準電位VBまで電位が変化(上昇)する第2収縮要素p23(本発明における第2の変化要素に相当)と、を有する電圧波形である。すなわち、検査駆動パルスPdは、圧電素子20に対して圧力室17の外側に撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積から前駆動電位Vpに対応する膨張容積まで膨張させた後、圧力室17の内側に向けて撓ませて圧力室17の容積を基準電位VBに対応する基準容積まで収縮させる一連の動作を行わせる波形である。
上記の前駆動パルスPpは、噴射異常検査に必要な圧力振動(以下、適宜、検査用振動という。)を検査駆動パルスPdにより生じさせる前に予備的な圧力振動(以下、適宜、予備振動(プレ振動あるいはマスク振動)という。)を生じさせるための駆動パルスである。この予備振動は、直前の期間T1でインクが噴射された後の残留振動の噴射異常検査に対する悪影響を抑制するためのものである。すなわち、インク噴射後の残留振動は、検査対象ノズル以外のノズル28側からの振動が重なる等して位相や振幅が不規則な振動になる傾向にある。特に、期間T1において最後にどの噴射駆動パルスでインクを噴射したかによって残留振動の位相が異なる。このため、このような残留振動が検査用振動に重なると噴射異常の検出精度が低下するおそれがある。この点、本発明に係るプリンター1では、インク噴射後の残留振動よりも振幅の大きい予備振動を発生させることで、残留振動の影響を低減する(リセットする)ことができる。つまり、残留振動に対して予備振動が合成(マスク)されることで、位相等が比較的規則的な振動とすることができる。そして、噴射異常が生じていないときの予備振動と検査用振動の合成波をリファレンス振動として検査を行うことで、噴射異常の検出精度が向上する。
ここで、上記の予備振動を生じさせるのは、主に前駆動パルスPpの第2膨張要素p21である。このため、残留振動を低減するのに適した大きさの予備振動を発生させ得るように前駆動パルスPpの駆動電圧Vh2が設定される。例えば、噴射駆動パルスの駆動電圧Vhに対して、0.2×Vh≦Vh2≦0.3×Vhの範囲内に設定される。駆動電圧Vh2の適正値は、噴射駆動パルスから前駆動パルスPpまでの時間や、インクの粘度或いは温度・湿度の環境等により変動するが、上記範囲内の値に設定することで残留振動が低減され得る。一方で、例えば、予備振動と検査用振動が合成されたときに振幅が大きくなりすぎてノズル28からインクが誤噴射される等の不具合が生じる可能性もある。このため、本実施形態においては、予備振動の発生直後の第2収縮要素p23によって予備振動を相殺させるように構成されている。具体的には、予備振動に対して逆位相となる振動を生じさせるように2収縮要素p23のタイミングが設定される。すなわち、予備振動の励起が開始されるタイミングである第2膨張要素p21の始端から第2収縮要素p23の始端までの時間Δt1が、圧力室17内のインクに生じる圧力振動の周期(固有振動周期)をTcとして、例えば、Δt1=n×Tcに設定される(n:自然数)。あるいは、メニスカスが噴射側から圧力室側に向かって移動しているタイミングで第2収縮要素p23による圧力室の収縮が開始されるようにΔt1が設定される。
ここで、上記のTcは、一般的には次式で表すことができる。
Tc=2π√〔(Mn+Ms)/(Mn×Ms×(Cc+Ci))〕
上記式において、Mnはノズル28におけるイナータンス(単位断面積あたりのインクの質量)、Msはインク供給口(22,23)におけるイナータンス、Ccは圧力室17のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)、Ciはインクのコンプライアンス(Ci=体積V/〔密度ρ×音速c2〕)である。
ここで、上記のTcは、一般的には次式で表すことができる。
Tc=2π√〔(Mn+Ms)/(Mn×Ms×(Cc+Ci))〕
上記式において、Mnはノズル28におけるイナータンス(単位断面積あたりのインクの質量)、Msはインク供給口(22,23)におけるイナータンス、Ccは圧力室17のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)、Ciはインクのコンプライアンス(Ci=体積V/〔密度ρ×音速c2〕)である。
また、第2収縮要素p23による振動も残るので、本実施形態では、当該振動を検査駆動パルスPdの第1膨張要素p11によって相殺させるように構成されている。すなわち、前駆動パルスPpの第2収縮要素p23の始端から、検査駆動パルスPdの第1膨張要素p11の始端までの時間Δt2が、例えば、Tcの自然数倍(Δt2=n×Tc)に設定される。あるいは、メニスカスが圧力室側から噴射側に向かって移動しているタイミングで第1膨張要素p11による圧力室の膨張が開始されるようにΔt2が設定される。
このように構成することにより、予備振動と検査用振動が合成されたときに振幅が大きくなりすぎてノズル28からインクが誤噴射される等の不具合を抑制することが可能となる。
このように構成することにより、予備振動と検査用振動が合成されたときに振幅が大きくなりすぎてノズル28からインクが誤噴射される等の不具合を抑制することが可能となる。
噴射異常検査モード(期間T2)における検査駆動パルスPdの選択は、期間T1の噴射駆動パルスの選択と同様に、2ビットの選択データに基づいて行われる。本実施形態では、例えば、噴射異常検出を行わない場合(非検出)には、選択データ(00)が割り当てられている。即ち、選択データが(00)の場合、期間T2において圧電素子20には前駆動パルスPpおよび検査駆動パルスPdの何れも印加されない。また、期間T1においてインクの噴射が行われなかった(何れの噴射駆動パルスも選択されなかった)後に期間T2において検査対象ノズルを駆動する場合には、選択データ(01)が割り当てられている。この場合、残留振動をリセットする必要が無いので期間T2における期間t5の前駆動パルスPpは選択されることなく、期間t6の検査駆動パルスPdのみが選択されて検査対象ノズルに対応する圧電素子20に印加される。さらに、期間T1においてインクの噴射が行われた(少なくとも1つ以上の噴射駆動パルスが選択された)後に期間T2において検査対象ノズルを駆動する場合には、選択データ(11)が割り当てられている。この場合、残留振動をリセットする必要があるので期間T2における期間t5の前駆動パルスPpおよび期間t6の検査駆動パルスPdが選択されて検査対象ノズルに対応する圧電素子20に順次印加される。なお、本実施形態における噴射異常検査モードでは、選択データ(10)は使用されない。
次に、この記録ヘッド2の電気的構成について説明する。この記録ヘッド2は、図4に示すように、第1シフトレジスター41及び第2シフトレジスター42からなるシフトレジスター(SR)回路と、第1ラッチ回路43及び第2ラッチ回路44からなるラッチ回路と、デコーダー45と、制御ロジック46と、レベルシフター47と、スイッチ48(第1スイッチ)と、圧電素子20と、スイッチ49(第2スイッチ)と、噴射異常検出回路51と、を備えている。そして、各シフトレジスター41,42、各ラッチ回路43,44、レベルシフター47、第1スイッチ48、及び、圧電素子20は、それぞれノズル28毎に対応した数だけ設けられる。なお、図4では、1ノズル分の構成のみが図示され、他のノズル分の構成については図示が省略されている。
この記録ヘッド2は、プリンターコントローラー31から送られてくる選択データ(階調データ)SIに基づいてインクの噴射制御を行う。本実施形態では、2ビットで構成された選択データの上位ビット群、選択データの下位ビット群の順に記録ヘッド2へクロック信号CLKに同期して送られてくるので、まず、選択データの上位ビット群が第2シフトレジスター42にセットされる。全てのノズル28について選択データの上位ビット群が第2シフトレジスター42にセットされると、次にこの上位ビット群が第1シフトレジスター41にシフトする。これと同時に、選択データの下位ビット群が第2シフトレジスター42にセットされる。
第1シフトレジスター41の後段には、第1ラッチ回路43が電気的に接続され、第2シフトレジスター42の後段には、第2ラッチ回路44が電気的に接続されている。そして、プリンターコントローラー31側からのラッチパルスが各ラッチ回路43,44に入力されると、第1ラッチ回路43は記録データの上位ビット群をラッチし、第2ラッチ回路44は記録データの下位ビット群をラッチする。各ラッチ回路43,44でラッチされた記録データ(上位ビット群,下位ビット群)はそれぞれ、デコーダー45へ出力される。このデコーダー45は、記録データの上位ビット群及び下位ビット群に基づいて、駆動信号COMに含まれる各駆動パルスを選択するためのパルス選択データを生成する。
第1スイッチ48の入力側には駆動信号発生回路39からの駆動信号COMが供給される。また、第1スイッチ48の出力側には、圧電素子20の個別電極20aが接続されている(図7参照)。この第1スイッチ48は、上記の選択データに基づき各駆動信号に含まれる各駆動パルスを圧電素子20へ選択的に供給する。このような動作をする第1スイッチ48は、選択供給手段の一種として機能する。
一方、圧電素子20の共通電極20b側には、第2スイッチ49を介して噴射異常検出回路51が接続されている。第2スイッチ49は、制御ロジック46から出力される切替信号に応じて切替制御される。噴射異常検出回路51は、検査駆動パルスPdによって圧電素子20が駆動されたときの残留振動に基づく圧電素子20の逆起電力信号を検出信号としてプリンターコントローラー31側に出力するように構成されている。プリンターコントローラー31(制御部37)は、噴射異常検出回路51から出力される逆起電力信号に基づき、検査対象ノズルの噴射異常の有無を検査する。したがって、噴射異常検出回路51およびプリンターコントローラー31は、本発明における検査手段として機能する。
図7は、圧電素子20の逆起電力信号Scを検出する回路構成を説明する図である。なお、同図では、ノズル3つ分の構成を例示し、他のノズル28に対応する構成は便宜上省略しているが、圧電素子20および第1スイッチ48は同一ノズル列を構成するノズル28の数分だけ設けられる。そして、同図では、中央の圧電素子20が、検査対象ノズル(第1ノズル)に対応する圧電素子20である。上述したように、駆動信号発生回路39の駆動電圧供給源は、圧電素子20毎の第1スイッチ48を介して圧電素子20の駆動電極20aにそれぞれ接続され、定電圧供給源は、第2スイッチ49および当該第2スイッチ49と並列に接続されている検出抵抗器50を介して圧電素子20の共通電極20bに電気的に接続されている。この第2スイッチ49は、例えばMOS−FETから構成され、期間T1における記録動作中或いは、期間T2における前駆動パルスPpおよび検査駆動パルスPdの印加中(圧力振動発生区間)においてはオンに切り替えられる(図7(a))。この場合、電流Idは、第2スイッチ49側を流れる。一方、期間T2における検査駆動パルスPdの印加直後の検出区間においてはオフに切り替えられる(図7(b))。この場合、電流Idは、検出抵抗器50側を流れる。
ここで、検査駆動パルスPdによって圧電素子20が駆動された後には、圧力室17内のインクに生じた圧力振動に応じて当該圧力室17の作動部である振動板21が振動する。これに伴って圧電素子20にも減衰振動(残留振動)が生じ、この残留振動に基づく逆起電力が生じる。噴射異常検出回路51は、上記の検出抵抗器50の両端の電位差を増幅および2値化することで圧電素子20の逆起電力信号Sc(検出信号)を得る。ノズル28からインクが噴射されない所謂ドット抜けの場合や、ノズル28からインクが噴射されるとしても正常なノズル28と比較してインクの量や飛翔速度が極端に低下している場合などの異常時には、上記の検出信号の周期成分、振幅成分、およびラッチ信号(LAT2)を基準としたときの位相成分が、正常時のものと比較して異なることが判っている。このため、逆起電力信号Scに基づく噴射異常の判定は、例えば、上記各成分についてそれぞれ正常とされる範囲を予め規定しておき、検出信号の各成分が規定範囲内に入るか否かに基づいて行われる。なお、より詳細な判定方法については周知であるため、その説明は省略する。
噴射異常検査は、ノズル列を構成する各ノズル28について1つずつ順次行われる。期間T2における噴射異常検査モードでは、まず、検査対象ノズルに対応する圧電素子20の第2スイッチ49が切替信号によりオンとされる(第1の工程。図7(a))。なお、検査対象ノズル以外のノズルに対応する圧電素子20については、第1スイッチ48がオフにされる。これは検査対象ノズルの圧電素子20の逆起電力信号Scを検出する際に、他の圧電素子20からのリーク電流が検出抵抗器50側に回り込まないようにするためである。
そして、期間T1においてインクが噴射された場合、図7(a)に示すように、検査対象ノズルに対応する圧電素子20には、選択データ(11)に基づいて期間t5の前駆動パルスPpおよび期間t6の検査駆動パルスPdが順次印加される。また、期間T1においてインクが噴射さなかった場合、検査対象ノズルに対応する圧電素子20には、選択データ(01)に基づいて期間t5の前駆動パルスPpは選択されずに期間t6の検査駆動パルスPdのみが印加される。これに対し、他のノズルに対応する圧電素子20には、選択データ(00)に基づき検査駆動パルスPdは印加されない(非検出)。これにより、検査対象ノズルに対応する圧電素子20のみが駆動され(第2の工程)、検査対象ノズルに対応する圧力室17には圧力変動が生じる。この圧力振動の減衰振動(残留振動)に伴って、当該圧力室17の作動部である振動板21および圧電素子20も振動し、この振動により圧電素子20には逆起電力が生じる。
続いて、切替信号により第2スイッチ49がオフに切り替えられる(第3の工程:図7(b))。これにより、検出抵抗器50には、検査対象ノズルに対応する圧電素子20の上記逆起電力に基づく電流Idが流れる。そして、噴射異常検出回路51は、上記の検出抵抗器50の両端の電位差から圧電素子20の逆起電力信号Scを得る。この逆起電力信号Scに基づいて、ノズル28の異常の有無が判定される(第4の工程)。
このように本発明に係るプリンター1では、検査駆動パルスPdによる検査用振動に先立って予備振動を生じさせる前駆動パルスPpを検査駆動パルスPdの前に発生させるので、期間T2における噴射異常検査モードの直前の期間T1においてインクの噴射に伴って生じた残留振動の影響を低減する(リセットする)ことができる。そして、噴射異常検査では、噴射異常が生じていないときの予備振動と検査用振動の合成波をリファレンス振動として検査を行うことで、噴射異常の検出精度を向上させることが可能となる。
なお、上記実施形態では、前駆動パルスPpが検査駆動パルスPdの前に1つだけ発生する構成を例示したが、これには限られず、前駆動パルスPpが検査駆動パルスPdの前に複数発生される構成を採用することも可能である。この場合、前駆動パルスPpの駆動電圧は、後に発生されるものほど低く設定されることが望ましい。これにより、先に発生される前駆動パルスPpによる予備振動を段階的に制振させることができ、検査駆動パルスPdによる検査用振動への影響をより低減することができる。
また、上記実施形態では、圧力発生手段として所謂撓み振動型の圧電素子を例示したが、これには限られない。例えば、所謂縦振動型の圧電素子を圧力発生手段として採用する構成においても本発明を適用することができる。この場合、上記の噴射駆動パルス、前駆動パルスPp、および検査駆動パルスPdの波形の極性が反転することになる。
そして、本発明は、圧力発生手段を駆動させることで生じる残留振動に基づいて噴射異常を検出する構成を有する液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。
1…プリンター,2…記録ヘッド,17…圧力室,20…圧電素子,21…振動板(作動部),28…ノズル,31…プリンターコントローラー,37…制御部,39…駆動信号発生回路,48…第1スイッチ,49…第2スイッチ,50…検出抵抗器,51…噴射異常検出回路
Claims (3)
- 液体を噴射するノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室の一部を構成する作動部と、前記作動部を変形させる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動させて前記圧力室内に圧力振動を生じさせる駆動波形を発生する駆動波形発生手段と、
前記圧力発生手段の駆動によって生じる前記作動部の振動に基づき噴射異常を検査する検査手段と、を備え、
前記駆動波形発生手段は、前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形を発生させることを特徴とする液体噴射装置。 - 前記前駆動波形は、前記圧力室を膨張させるように電位が変化する第1の変化要素と、当該第1の変化要素の後に発生されて前記圧力室を収縮させるように電位が変化する第2の変化要素と、を有し、
前記第1の変化要素の始端から前記第2の変化要素の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定され、
前記第1の変化要素の始端から前記検査駆動波形の始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる固有振動周期Tcの自然数倍に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。 - 液体を噴射するノズル、当該ノズルに連通する圧力室、及び、当該圧力室の一部を構成する作動部と、前記作動部を変形させる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段を駆動させて前記圧力室内に圧力振動を生じさせる駆動波形を発生する駆動波形発生手段と、前記圧力発生手段の駆動によって生じる前記作動部の振動に基づき噴射異常を検査する検査手段と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記ノズルから液体を噴射させて着弾対象にドットを形成させる噴射駆動波形および当該噴射駆動波形の後であって前記検査手段による検査時に圧力振動を生じさせる検査駆動波形を発生させると共に、当該検査駆動波形による圧力振動に先立って予備的な圧力振動を生じさせる前駆動波形を発生させることを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
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CN107405915A (zh) * | 2015-03-24 | 2017-11-28 | 精工爱普生株式会社 | 液体排出装置及其控制方法、设备驱动器以及打印系统 |
JP2018501126A (ja) * | 2015-01-13 | 2018-01-18 | オセ−テクノロジーズ ビーブイ | インクジェットノズルの動作状態を検出するための方法 |
JP7500269B2 (ja) | 2020-05-15 | 2024-06-17 | 東芝テック株式会社 | 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 |
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