JP2014167654A - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリビニルアルコール系重合体フィルムを染色および一軸延伸する偏光フィルムの製造方法であって、当該一軸延伸は、ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液中で行われ、延伸倍率が7倍以上8倍以下であり、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを、ほう酸を2.0質量%を超える濃度で含む水溶液と接触させないことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。前記水溶液はほう酸とヨウ化カリウムのみを成分として含むかまたはジカルボン酸を含まない。
【選択図】なし
Description
また、高いコントラストの偏光フィルムを製造する方法として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾式の熱ロール等を使用して一軸延伸したのちヨウ素または二色性染料を吸着配向させ、次いで水100重量部あたりほう酸を2〜18重量部(具体例としては7.5重量部)含有するほう酸水溶液に浸漬しながら1.1〜1.8倍に延伸する方法が知られている(特許文献2参照)。
さらに、ヨウ素含有量の高い偏光子(偏光フィルム)を製造する方法として、浴温度の異なる2つのヨウ素染色浴を用いる方法が知られている(特許文献3参照)。特許文献3には、架橋工程を延伸工程とともに行うことができること、および、架橋工程において濃度が0.1〜13重量%程度(具体例としては、3重量%)のホウ酸水溶液が用いられることが記載されている。
[1]ポリビニルアルコール系重合体フィルムを染色および一軸延伸する偏光フィルムの製造方法であって、当該一軸延伸は、ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液中で行われ、前記水溶液はほう酸とヨウ化カリウムのみを成分として含み、延伸倍率が7倍以上8倍以下であり、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを、ほう酸を2.0質量%を超える濃度で含む水溶液と接触させないことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法、
[2]ポリビニルアルコール系重合体フィルムを染色および一軸延伸する偏光フィルムの製造方法であって、当該一軸延伸は、ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液(但し、ジカルボン酸を含むものを除く)中で行われ、延伸倍率が7倍以上8倍以下であり、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを、ほう酸を2.0質量%を超える濃度で含む水溶液と接触させないことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法、
[3]前記ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液がヨウ化カリウムを0.01〜10質量%含む上記[1]または[2]の製造方法、
[4]前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムが、ポリビニルアルコール系重合体100質量部に対して可塑剤を3〜20質量部含む上記[1]〜[3]のいずれか1つの製造方法、
[5]前記偏光フィルム中のほう素原子の含有率が前記偏光フィルムの質量に基づいて0.1〜2.0質量%である上記[1]〜[4]のいずれか1つの製造方法、
[6]前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムの厚みに対する前記偏光フィルムの厚みの割合が0.35以下である上記[1]〜[5]のいずれか1つの製造方法、
[7]前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムの面積に対する前記偏光フィルムの以下で定義される有効面積が2.75倍以上である上記[1]〜[6]のいずれか1つの製造方法、
有効面積:偏光フィルムのTD(幅方向)の長さのうち最も短い長さと、MD(延伸方向)の長さとの積。
[8]偏光フィルムの厚みが10〜40μmである上記[1]〜[7]のいずれか1つの製造方法、
に関する。
本発明の偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体[以下、「ポリビニルアルコール系重合体」を「PVA」と略記する場合がある]フィルムを染色および一軸延伸して得られる。当該PVAフィルムを構成するPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステル系重合体をけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(H2C=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
特に、上記他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する単量体単位となり得る単量体である場合には、PVAフィルムから偏光フィルムを製造する際などにおいて水溶液中での処理時にフィルムが溶解したり溶断したりするのを防止するために、ポリビニルエステル系重合体におけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル系重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において使用されるPVAフィルムにおける、PVA、可塑剤および界面活性剤の合計の占める割合としては、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、95〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
PVAフィルムを適切な状態に調整するためには、熱処理装置;調湿装置;各ロールを駆動するためのモータ;変速機等の速度調整機構などが付設されることが望ましい。
PVAフィルムの製造工程での乾燥処理における乾燥温度は、偏光フィルムを製造する際の延伸性や染色性に優れ、しかも得られる偏光フィルムの偏光性能や耐久性が良好となるPVAフィルムが得られることから、50〜150℃の範囲内であることが好ましく、60〜140℃の範囲内であることがより好ましい。
また、偏光フィルムの製造に際しては熱処理を行うことが好ましい。熱処理の具体的な方法としては、例えば、上記乾燥処理によりフィルムの水分率を10質量%以下とした後、当該フィルムに張力を掛けた状態で、熱処理として80〜120℃の範囲内の温度で1〜5分間処理する方法が挙げられる。当該方法によれば、寸法安定性、耐久性などに一層優れる偏光フィルムを得ることができる。
なお以下の製造例、実施例および比較例において採用された、PVAフィルムの熱水切断温度および膨潤度、偏光フィルムの透過度(T)、偏光度(V)および有効面積(S)ならびに偏光フィルム中のほう素原子の含有率の各測定方法を以下に示す。
5mm(TD)×30mm(MD)にカットしたPVAフィルムの長手方向先端から、そこより長手方向に5mmの部分にかけて、クリップにより重りを取り付けた。重りの質量はクリップの質量も含めて、PVAフィルムの膜厚1μmあたり0.05gとなるようにした。続いて、クリップにより重りを取り付けた部分も含め、PVAフィルムのクリップを取り付けた側の端から長手方向に10mmまでを40℃の蒸留水中に浸漬させた。次いで蒸留水の温度を3℃/分の昇温速度で上昇させて、フィルムが切断する温度を熱水切断温度(℃)とした。
PVAフィルムを1.5g以上となるようにカットし、30℃の1000gの蒸留水中に浸漬した。30分浸漬後にPVAフィルムを取り出し、ろ紙で表面の水を吸い取った後、質量「A」を測定した。続いてそのPVAフィルムを105℃の乾燥機で16時間乾燥した後、質量「B」を測定し、以下の式により膨潤度を算出した。
膨潤度(質量%)=A/B×100
偏光フィルムの透過度(T)は、紫外可視分光光度計「U−4100」(日立製作所製)を用いて以下のようにして測定した。なお、測定にあたっては、日本電子機械工業規格に基づく波長依存の重率関数が乗された380〜780nmにおける積分値(Y値)を測定した。
作製した偏光フィルムの中心部をTD(幅方向)×MD(延伸方向)=4cm×8cmのサイズに切り取り、切り取ったフィルムをMDの中央部でさらに2つに切り、偏光フィルムサンプル2枚(4cm×4cm)を得た。このうちの1枚の偏光フィルムサンプルを用いて、そのMD(延伸方向)が分光器に対して任意の角度に設定したときの透過度と、これを入射光に垂直な平面上で90°回転させたときの透過度とを測定し、これらの平均値を偏光フィルムの透過度(T)(単位:%)とした。
上記偏光フィルムの透過度(T)の測定において作製した2枚の偏光フィルムサンプルをMDが互いに平行になるように重ねたときの透過度(T‖)(単位:%)を、1枚の偏光フィルムサンプルを用いた上記偏光フィルムの透過度(T)の測定と同様にして、任意の角度に設定したときの透過度と90°回転させたときの透過度との平均値として求めた。また、上記2枚の偏光フィルムサンプルをMDが直交するように重ねたときの透過度(T⊥)(単位:%)を、上記と同様にして、任意の角度に設定したときの透過度と90°回転させたときの透過度との平均値として求めた。得られたT‖とT⊥を用いて、以下の式により偏光フィルムの透過度(V)(単位:%)を算出した。
V(%)=[(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)]1/2×100
偏光フィルムの有効面積(S)は、TDの長さのうち最も短い長さ(幅が最も狭い部分の長さ)を「a」、およびMDの長さを「b」として、以下の式により算出した。
S=a×b
偏光フィルム中のほう素原子の含有率の測定は、ICP発光分析装置「IRIS AP」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて行った。なお、測定サンプルは、偏光フィルムを10mg秤量後、吸収液にイオン交換水20mLを用いて酸素フラスコ燃焼を行い、0.45μmフィルターでろ過して調製した。
PVAフィルムのサンプルの製造:
平均重合度2400、けん化度99.95モル%のポリビニルアルコール100質量部と可塑剤としてグリセリン12質量部とを含み、ポリビニルアルコールの濃度が10質量%である水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムを枠に固定して、140℃で3分間熱処理をした。得られた熱処理後のフィルムの熱水切断温度は68.2℃であり、膨潤度は200質量%であった。
また、上記熱処理後のPVAフィルムをカットしてサンプルを得た。サンプルのサイズは、一軸延伸される部分に対応する幅10cm×長さ4cmの部分と、一軸延伸する際の固定部分とを考慮し、幅10cm×長さ14cmとした。なお、サンプルの幅はPVAフィルム製造時のTD(長手方向に対して垂直方向)に対応し、長さはPVAフィルム製造時のMD(長手方向)に対応するようにした。
製造例1で得られたPVAフィルムのサンプル2枚を30℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素を0.05質量%、ヨウ化カリウムを2.5質量%およびほう酸を1質量%の割合で含有する30℃の水溶液(染色浴)に2.5分間浸漬してヨウ素を吸着させた。次いで、ほう酸を2質量%、ヨウ化カリウムを5質量%の割合で含有する52.5℃の水溶液(延伸浴)中において、上記2枚のサンプルを並列させた状態で同時に一軸延伸したところ、延伸倍率7.5倍のときに一方のサンプルが破断したため延伸を止めた。その後、破断しなかった方の一軸延伸後のフィルムを50℃で4分間乾燥することにより偏光フィルムを得た。
この偏光フィルムの透過度(T)は44.5%、偏光度(V)は99.4%、TDの長さのうち最も短い長さは4.1cm、MDの長さは30.0cm(有効面積(S)は123.0cm2;使用したサンプルの一軸延伸される部分の面積に対して3.1倍)、厚みは23μm(使用したサンプルの厚みに対して0.31倍)であった。また偏光フィルム中のほう素原子の含有率は1.2質量%であった。
製造例1で得られたPVAフィルムのサンプル2枚を30℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素を0.05質量%、ヨウ化カリウムを2.5質量%およびほう酸を1質量%の割合で含有する30℃の水溶液(染色浴)に3.5分間浸漬してヨウ素を吸着させた。次いで、ほう酸を1質量%、ヨウ化カリウムを5質量%の割合で含有する52.5℃の水溶液(延伸浴)中において、上記2枚のサンプルを並列させた状態で同時に一軸延伸したところ、延伸倍率7.5倍のときに一方のサンプルが破断したため延伸を止めた。その後、破断しなかった方の一軸延伸後のフィルムを50℃で4分間乾燥することにより偏光フィルムを得た。
この偏光フィルムの透過度(T)は44.4%、偏光度(V)は99.6%、TDの長さのうち最も短い長さは4.0cm、MDの長さは30.0cm(有効面積(S)は120.0cm2;使用したサンプルの一軸延伸される部分の面積に対して3.0倍)、厚みは22μm(使用したサンプルの厚みに対して0.29倍)であった。また偏光フィルム中のほう素原子の含有率は0.8質量%であった。
製造例1で得られたPVAフィルムのサンプル2枚を30℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素を0.05質量%、ヨウ化カリウムを2.5質量%およびほう酸を1質量%の割合で含有する30℃の水溶液(染色浴)に2.5分間浸漬してヨウ素を吸着させた。次いで、ほう酸を4質量%、ヨウ化カリウムを5質量%の割合で含有する52.5℃の水溶液(延伸浴)中において、上記2枚のサンプルを並列させた状態で同時に一軸延伸したところ、延伸倍率6.0倍のときに一方のサンプルが破断したため延伸を止めた。その後、破断しなかった方の一軸延伸後のフィルムを50℃で4分間乾燥することにより偏光フィルムを得た。
この偏光フィルムの透過度(T)は44.5%、偏光度(V)は99.6%、TDの長さのうち最も短い長さは4.4cm、MDの長さは24.0cm(有効面積(S)は105.6cm2;使用したサンプルの一軸延伸される部分の面積に対して2.6倍)、厚みは28μm(使用したサンプルの厚みに対して0.37倍)であった。また偏光フィルム中のほう素原子の含有率は3.2質量%であった。
製造例1で得られたPVAフィルムのサンプル2枚を30℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素を0.05質量%、ヨウ化カリウムを2.5質量%およびほう酸を1質量%の割合で含有する30℃の水溶液(染色浴)に2.5分間浸漬してヨウ素を吸着させた。次いで、ほう酸を3質量%、ヨウ化カリウムを5質量%の割合で含有する52.5℃の水溶液(延伸浴)中において、上記2枚のサンプルを並列させた状態で同時に一軸延伸したところ、延伸倍率6.6倍のときに一方のサンプルが破断したため延伸を止めた。その後、破断しなかった方の一軸延伸後のフィルムを50℃で4分間乾燥することにより偏光フィルムを得た。
この偏光フィルムの透過度(T)は44.8%、偏光度(V)は99.1%、TDの長さのうち最も短い長さは4.3cm、MDの長さは26.4cm(有効面積(S)は113.5cm2;使用したサンプルの一軸延伸される部分の面積に対して2.8倍)、厚みは25μm(使用したサンプルの厚みに対して0.33倍)であった。また偏光フィルム中のほう素原子の含有率は2.8質量%であった。
Claims (8)
- ポリビニルアルコール系重合体フィルムを染色および一軸延伸する偏光フィルムの製造方法であって、当該一軸延伸は、ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液中で行われ、前記水溶液はほう酸とヨウ化カリウムのみを成分として含み、延伸倍率が7倍以上8倍以下であり、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを、ほう酸を2.0質量%を超える濃度で含む水溶液と接触させないことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系重合体フィルムを染色および一軸延伸する偏光フィルムの製造方法であって、当該一軸延伸は、ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液(但し、ジカルボン酸を含むものを除く)中で行われ、延伸倍率が7倍以上8倍以下であり、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを、ほう酸を2.0質量%を超える濃度で含む水溶液と接触させないことを特徴とする、偏光フィルムの製造方法。
- 前記ほう酸を0.1〜2.0質量%含む水溶液がヨウ化カリウムを0.01〜10質量%含む請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムが、ポリビニルアルコール系重合体100質量部に対して可塑剤を3〜20質量部含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記偏光フィルム中のほう素原子の含有率が前記偏光フィルムの質量に基づいて0.1〜2.0質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムの厚みに対する前記偏光フィルムの厚みの割合が0.35以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系重合体フィルムの面積に対する前記偏光フィルムの以下で定義される有効面積が2.75倍以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
有効面積:偏光フィルムのTD(幅方向)の長さのうち最も短い長さと、MD(延伸方向)の長さとの積。 - 偏光フィルムの厚みが10〜40μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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