JP2014164969A - 端子の製造方法、端子材、その端子材を用いて得られる端子、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材 - Google Patents

端子の製造方法、端子材、その端子材を用いて得られる端子、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザ溶接の溶接効率に優れる、端子の製造方法、端子材、その端子材を用いて得られる端子、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材を提供すること。
【解決手段】電線と圧着接合する管体かしめ部を有する端子の製造方法であって、湾曲されて前記管体かしめ部を形成する管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子材を用意し、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まるようにスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として形成し、前記管展開部を湾曲させて互いに突き合わせて管体に成形し、突き合わせた部分を近赤外線レーザ光照射によるレーザ溶接によって接合して前記管体かしめ部を形成する各工程をこの順に有してなる、端子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、高いレーザ溶接効率で突き合わせ溶接できる端子の製造方法、端子材、その端子材を用いて得られる端子、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材に関する。
近年、自動車の燃費向上のために各構成部品の軽量化が求められている。そのため、自動車内のワイヤーハーネスなどに使用される電線の芯線を、銅もしくは銅合金より軽量の、アルミニウムもしくはアルミニウム合金に置き換えることが進められている。このアルミニウムもしくはアルミニウム合金電線(以下、単に「アルミニウム電線」と言う)の先端に圧着接続される端子は、通常、金属材料が使用されるので、電線の終端接続部ではこれらの接続を適切に行うことが必要となる。
一般に、機械強度やばね性などの観点から、端子は銅または銅合金製である。端子の圧着部では、電線導体のアルミニウムもしくはアルミニウム合金が露出しているため、アルミニウム電線と端子の接続部分に水分等が付着すると、アルミニウム電線のアルミニウムもしくはアルミニウム合金と端子の銅もしくは銅合金とは、異種金属間で電位差が異なるために腐食(電食)し、腐食が進行すると欠損を生じる恐れがあった。また、腐食の進行によって、電線及び端子の接続部に割れや接触不良が生じ、製品寿命が短くなっていた。
これらの問題を防止するためには、アルミニウムもしくはアルミニウム導体(以下、単に「アルミニウム導体」と言う)を外界から遮断することが望ましい。その例として、端子の圧着部全体を樹脂によりモールドする方式(例えば、特許文献1参照。)があり、腐食を確実に防止することができる。また、金属製キャップを電線導体に被せた後に圧着する手法により、アルミニウム導体を外界から遮断する技術(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
これに対して本願出願人は、銅合金板材から切り出して成形した端子基材の両端部をレーザ溶接によって突合せ溶接することにより端子の管体かしめ部を形成し、この管体かしめ部内にアルミニウム電線のアルミニウム導体を挿入した上でかしめることによって、前記導体を端子内に収納して電気的導通を取るとともに、異種金属接合である導体と管体かしめ部の接続部分が外部の水分と接触しない構造とすることを提案している。
しかし、銅や銅合金をレーザ溶接しようとする場合、銅や銅合金は、溶接用レーザ光として広く用いられている近赤外レーザ光の反射率が90%以上と高い(レーザ光の吸収性が低い)ためにレーザ溶接の効率が悪く、溶接速度を上げることができなかった(例えば、特許文献3参照)。
特許文献4には、バスバーを構成するそれぞれ銅合金製のパターン部に別体のタブ端子部を当てがって、予めタブ端子部の基材上へSnめっきなどの処理を施しておくことによって銅合金のレーザ光吸収率を高める方法が提案されている。
レーザ光の吸収を良くするには、端子の表面に凹凸をつけることが考えられる。
特許文献5には、電気めっき工程でのH発生量を調整することによって、電気めっき層(例えばSnめっき層)の表面に、電気めっき層を貫通してその下に位置する下地電極層(例えばNiめっき層)の表面で孔が留まる多数の有底開孔を設けることによって、はんだ爆ぜを回避することができる、外部電極層を有する電子部品が提案されている。
また、特許文献6では、Snめっき材の表面に微小凹部を設けることによって、めっき材表面での光学濃度つまり光沢度を低く、すなわち可視光の吸収を良くすることが提案されている。
特開2011−222243号公報 特開2004−207172号公報 特開2011−117048号公報 特開平10−334962 特許第4569784号 特開昭2012−201932号公報
特許文献1に記載された技術では、モールド部が肥大するため、コネクタハウジングのサイズを大きくする必要が生じ、結果としてコネクタが肥大してしまう。そのため、このコネクタを用いた組み電線(例えば、自動車用ワイヤハーネスなど)全体を高密小型に成形することができなかった。また、モールド成形は圧着後に個々の圧着部に対して処理することが必要であり、組み電線製造の工程数が大きく増してしまい、かつ、個々の作業が煩雑である。
また、特許文献2に記載された技術では、圧着前に個々の導体へキャップを装着する工程が煩雑である上に、また、圧着時にワイヤバレルによりキャップを破壊してしまい浸水経路が生じてしまう恐れがあった。
特許文献4では、バスバーを構成するタブ端子部の銅合金基材の表面中央部へSnめっきなどの処理を施しておくことが提案されているものの、導体の収納や端子との圧着接続を検討したものではなく、端子材にそのような処理を施すことについては何ら検討されていない。
特許文献5に記載された技術では、有底開孔の底部位置が下地層の表面であるので下地層が外部に露出した状態となっている為、レーザ溶接性が良くないことが分かった。
一方、特許文献6では、可視光(波長約380〜800nm)の全反射を評価したものであり、溶接用レーザ光の波長領域(例えば約1000〜2500nm)におけるエネルギー吸収については検討されていない。
さらに、これらの特許文献5と特許文献6では、端子に一般的に使われるSnめっきの表面性状を検討してはいるものの、導体の収納や端子との圧着接続について、さらにはレーザ溶接については、何らの検討もなされていない。
本発明者らの検討により、スズめっきを施す場合においても、得られるめっき層の表面性状がレーザ溶接性に影響するため、レーザ溶接効率の良いめっき層表面形態を実現する必要があることが分かった。
そこで、端子の形成する銅合金材に対して、特にその管体かしめ部においてレーザ光の反射率を低くする(レーザ光の吸収性を良くする)処理を行うことで、簡便な溶接方法であるレーザ溶接によって管体構造の端子を効率よく形成する方法が求められていた。
従って、本発明は、レーザ溶接の溶接効率に優れる、端子の製造方法、端子材、その端子材を用いて得られる端子、電線の終端接続構造体の製造方法と電線の終端接続構造体、および端子用の銅または銅合金板材を提供することを課題とする。
本発明者らは前記課題に鑑み鋭意検討した結果、プレス加工によって打ち抜かれた端子材(いわゆるスケルトン)の表面に設けるスズ(Sn)層またはスズ層の表面性状に着目し、これをレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御することで、レーザ溶接して管体かしめ部を形成する際の当該端子材の管体かしめ部におけるレーザ溶接性を著しく向上させることができることを見い出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
すなわち、上記課題は以下の手段により解決される。
(1)電線と圧着接合する管体かしめ部を有する端子の製造方法であって、湾曲されて前記管体かしめ部を形成する管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子材を用意し、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まるようにスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として形成し、前記管展開部を湾曲させて互いに突き合わせて管体に成形し、突き合わせた部分を近赤外線レーザ光照射によるレーザ溶接によって接合して前記管体かしめ部を形成する、各工程をこの順に有してなる、端子の製造方法。
(2)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である(1)に記載の端子の製造方法。
(3)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である(1)または(2)に記載の端子の製造方法。
(4)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される側の表面に形成する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
(5)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される領域に形成する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
(6)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される管展開部の端面に形成する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
(7)電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として有してなる、端子材。
(8)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である(7)に記載の端子材。
(9)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である(7)または(8)に記載の端子材。
(10)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部のレーザ溶接のレーザ光照射側の表面に有してなる(7)〜(9)のいずれか1項に記載の端子材。
(11)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部における前記レーザ溶接領域に有してなる(7)〜(10)のいずれか1項に記載の端子材。
(12)前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部における前記レーザ溶接される管展開部の端面に有してなる(7)〜(10)のいずれか1項に記載の端子材。
(13)(7)〜(12)のいずれか1項に記載の端子材の管体かしめ部となる管展開部が湾曲されて展開端部同士が互いに突き合わせた部分がレーザ溶接で接合されてなる端子。
(14)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の端子の製造方法で作製された端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続する電線の終端接続構造体の製造方法であって、前記管体かしめ部内に前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を挿入し、前記管体かしめ部をかしめて前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を前記管体かしめ部内に圧着接続する、電線の終端接続構造体の製造方法。
(15)(13)に記載の端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続した電線の終端接続構造体。
(16)銅または銅合金からなる基材上に、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層を最表層として有する、端子用銅または銅合金板材。
(17)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である(16)に記載の端子用銅または銅合金板材。
(18)前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である(16)または(17)に記載の端子用銅または銅合金板材。
本発明の端子材によれば、前記表面のスズ(Sn)層またはスズ合金層をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御することで、当該スズ層またはスズ合金層がレーザ光の吸収性が高い(レーザ光の反射率が低い)ために効率よくレーザ溶接を行うことができるので、端子を簡便な方法で効率よく製造するのに好適である。
本発明の端子材の製造方法は、前記端子材を簡便な方法で効率よく製造することができる方法として好適である。
本発明の端子の製造方法は、前記端子を簡便な方法で効率よく製造することができる方法として好適である。
本発明の板材によれば、前記スズ層またはスズ合金層がレーザ光の吸収性が高い(レーザ光の反射率が低い)ために効率よくレーザ溶接を行うことができるので、端子材や端子を簡便な方法で効率よく製造するのに好適である。
本発明に係るのスズめっき層の一例(スズめっき層の厚さ1μmでの例)の上面視を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 本発明の端子の好ましい一実施形態を示した斜視図である。 本発明の端子の管体かしめ部の長手方向断面を示した断面図である。 本発明の電線の終端接続構造体の一例を示した斜視図である。 本発明の端子のレーザ溶接中の一状態を模式的に示した斜視図である。 板材を打抜きプレスして作製したメス端子の成形前の端子材(連鎖型)の展開した状態を示した平面図である。 端子材を加工して管体かしめ部を成形した状態を示した斜視図である。
本発明の端子は、例えば図2に示すとおりかしめ部に管体構造を有する端子である(以下、本発明の端子を管体端子ともいう。)。
本発明においては、スズ層またはスズ合金層がその表面に多数の凹部を有してなり、該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっていることを特徴とする。ここで、多数の凹部とは、例えば、スズ層またはスズ合金層の表面に、凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満となるように一個当たり0.01×10−4mm以上10×10−4mm以下のサイズの凹部が存在することを意味する。また、凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているとは、凹部がスズ層またはスズ合金層を貫通してその下の銅または銅合金基材に達していないことをいう。もしスズ層またはスズ合金層と基材との間に中間層(例えば、銅やスズの拡散を防止するNiやNi合金からなる中間層)が存在する場合には、該凹部が前記スズ層またはスズ合金層を貫通していて、但し、該凹部が前記中間層は貫通せずにこの凹部の底部が中間層中で留まっていてその下の銅または銅合金基材には達していない状態であってもよい。
このように、スズ層またはスズ合金層の表面に多数の凹部を設けて、その凹部の底部をスズ層またはスズ合金層中で留めておくことによって、銅または銅合金基材が外部に露出することがないので、レーザ光が基材に照射されることがない。従って、照射されるレーザ光はその全てがレーザ光吸収率が高いスズまたはスズ合金の層に当たり、吸収されて溶融が起こる。これによって、レーザ溶接性が向上する。
以下、本書において、このような「表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層」を、「表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層」ともいう。
前記表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下であることが好ましい。前記凹部のサイズは、さらに好ましくは、一個当たり0.01×10−4mm以上10×10−4mm以下であり、特に好ましくは、一個当たり0.05×10−4mm以上5×10−4mm以下である。この凹部のサイズは、小さすぎても大きすぎても、レーザ光の吸収を改善することができず、溶接性が向上しない。特に、凹部のサイズが小さすぎると、レーザ光の波長に合わないので、レーザ光の吸収性が悪い。前記凹部の深さには特に制限はなく、このスズ層またはスズ合金層の厚さよりも浅くなるように設けられていればよい。前記凹部の深さは、好ましくは0.5μm以上2μm以下である。
また、前記表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満であることが好ましい。
この面積比率は、めっきの最上面を基準面としたとき、(凹部が基準面に投影される面積)/(基準面の面積)の百分率で表わされる。
前記凹部の面積比率は、さらに好ましくは0.1%以上30%未満であり、特に好ましくは10〜15%である。前記凹部の面積比率が大きすぎる場合には、それに伴って不可避的にスズ層またはスズ合金層(例えば、スズまたはスズ合金のめっき層)が存在しない開孔部が生成してしまうのでレーザ光吸収に寄与するスズまたはスズ合金の存在領域が不足するので、レーザ光の吸収が悪くレーザ溶接性が向上しない。また、この場合、溶接後の耐食性にも劣る。一方、前記凹部の面積比率が小さすぎると、スズ層またはスズ合金層表面に凹部が設ける効果が不足して、レーザ光の吸収が不足し、レーザ溶接性が向上しない。
本発明の端子は、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を基材上の最表層として有する銅もしくは銅合金からなる基材を溶接してなる管体端子であって、溶接前の該最表層のスズ層またはスズ合金層の表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態になるように制御したことから、レーザ溶接の溶接効率、特に対向面同士を突き合せるレーザ溶接効率が高く、電子部品、代表的には自動車用などの端子、として優れるものである。
この表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、スズやスズ合金の電気めっき処理の他、無電解めっき法、溶融めっき法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相成長法、等の種々の皮膜形成技術、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。この内、操作性やコストなどの観点から、電気めっき処理を施してスズ層やスズ合金層を設けることが好ましい。
前記形成方法の例としては以下のものを挙げることができる。
方法1は、電気めっき処理において、電流密度の制御や攪拌条件の制御で、気泡の発生とめっき面への吸着により、部分的な不めっき領域を作り、この不めっき箇所を凹部とするものである。
方法2は、パルスめっきであり、電流のONとOFFを繰り返すことにより、この時のDUTY比を調整する、あるいは電流ON(+)と電流ON(−)の繰り返しによって、凹部を設けるものである。
方法3は、共析めっき処理によって微粒子をめっき層中に取り込み、その後で、微粒子を加熱分解等で取り除く処理である。これによって、取り除かれた微粒子が存在していた部分を凹部とするものである。
これらの方法を組み合わせたり、それ以外の方法で、凹部を形成することができるめっき方法を選択することができる。
以下、前記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層について、代表として、スズめっき層またはスズ合金めっき層を例に説明する。
本発明では、少なくともレーザ照射する側の銅もしくは銅合金の表面もしくはレーザ照射される領域に、銅や銅合金よりもレーザ光を吸収しやすいスズ層またはスズ合金層を配設する。そして、このスズ層またはスズ合金層は、その形成を後述の所定の条件下で行うことによって、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層とすることができる。
スズ合金の例としては、スズコバルト、スズパラジウム、スズ銅、スズビスマス、スズ銀等が挙げられる。
この表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層の厚さは、通常0.2〜2μm、好ましくは0.3〜1μm、さらに好ましくは0.3〜0.5μmである。このスズ層またはスズ合金層の厚さが前記の範囲内であれば、良好な溶接性向上効果が奏される。Snめっき層の厚さが薄すぎると、レーザ光を吸収して熱に変換する量が少なくなり、溶接速度が低下する。一方、Snめっき層の厚さが厚すぎると、めっき層自体を溶かすエネルギーが必要となるため、レーザの出力上げる、もしくは加工時間を延ばす必要がある。その場合、スパッタが飛散する可能性が高くなり、溶接表面の凹凸が激しくなり、管構造の内部を汚染してしまい電線圧着時の接触抵抗に悪影響を及ぼすことがある。
ここで、銅合金製の端子材(端子材料)に表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を設けると、SnやSn合金はレーザ光の波長領域に対するレーザ光吸収率が高い(レーザ光反射率が低い)ため、溶接性が向上する。
その作用としては、次のように考えられる。まず表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層のスズ(Sn)がレーザ光のエネルギーによって溶融する。ついで、溶融したスズから熱エネルギーが伝播してその直下の基材の銅(Cu)が溶融する。レーザ光照射後には前記溶融した金属スズおよび金属銅が凝固し、接合が完了する。
表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層は、レーザ照射によるレーザ溶接後には、レーザ溶接部(後述の図2などの、符号50)において基材の銅合金に溶融されて取り込まれている。これは、溶接前にスズ層またはスズ合金層として存在していたスズまたはスズ合金が、溶接により、凝固組織内に取り込まれ、基材の銅母相内に固溶した状態であるか、および/または、Cu−Sn金属間化合物として銅母相内/外に晶出した状態である。なお、溶融部の外側までスズやスズ合金が付着していても良く、この場合は、スズやスズ合金の一部は基材中に取り込まれずに溶接後にも基材の表面に残留する。
以下、この表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層の電気めっきによる層形成について説明する。
表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まるようにスズめっき層またはスズ合金めっき層を形成するためには、めっき条件を、電流密度が0.1A/dm以上であって、これと同時にあるいはこれに代えて、めっき中の攪拌速度を300rpmより小さくすることが好ましい。
この理由は以下のように考えられる。このようにめっき条件を制御することで、めっき処理中の気泡発生量を多くすることができ、かつ、発生した気泡をめっき面の表面に滞留させやすくなる。電流密度が小さすぎると、気泡の発生が十分でなく、めっき面への吸着が少ないために必要な凹部の面積を得ることが困難である。
凹部のサイズを調整するには主として電流密度の制御に拠ることができる。電流密度が大きいほど発生した気泡のサイズは大きくなるが、電流密度が5A/dm以上では、この発生気泡サイズに対する依存性が小さくなり、効果が飽和してくる。さらに電流密度が大きくなると気泡発生が激しくなるため、気泡発生によりめっき液の流動が激しくなるが、攪拌速度を200rpm未満にすることでめっき面に対するめっき液の移動速度を5m/分以下とすることができ凹部を形成することは可能である。なお、電流密度が10A/dmを超えると、樹脂状の結晶がめっき面に形成される、いわゆる“焼けめっき”となり、外観の光沢が得られなくなるだけでなく、気泡発生に要される電流が多くなるため電流効率が低下するが、レーザ吸収に必要な実用上凹部の形成には問題はない。
凹部の数密度(単位面積当たりの個数および面積率)の調整は、主として攪拌速度で行うことができる。攪拌速度が300rpm未満とする理由は、300rpm以上であるとめっき面に吸着した気泡を引きはがす現象が顕著になり、十分な数密度を得ることが困難になるためである。この際のめっき面に対するめっき液の移動速度は5m/分以下とすることが好ましい。攪拌速度は20rpm以下でもよいが、その場合にはめっき液中のめっき成分イオンの供給が途絶えないためにめっき速度を低く抑える必要があるが、実用上凹部の形成は問題がない。
このように、電気めっきの条件として、電流密度と攪拌速度を調整すればよい。
一方、パルスめっきでは、電流密度が大きい場合のイオン供給の欠乏を間欠時間(めっきOFFあるいはめっきON(−)時に補うことができるので優れた方法であるが、ONとOFFのDUTY比(ON時間とOFF時間の比)を適切に設定し、めっき面に吸着した気泡の離脱を最小化することが可能である。好ましくは、ON時間:OFF時間=1:1である。またON電流(+):ON電流(−)=n:m(n,mとも任意の実数)の場合は、ON時間:OFF時間=m:nが好ましい。
なお、代表的なめっき液は、硫酸スズを用いたもので、ゼラチン、にかわ、ベータナフトール、クレゾールスルホン酸、及び有機化合物からなる1種以上の添加材もしくは光沢剤から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
めっき液の温度は15℃〜30℃が好ましい。温度が低いと、均一なめっきを得られる電流密度が低くなり、所望のめっき厚を得るのに時間がかかり経済性が損なわれる。温度が高いと、めっきのむらやシミなどの欠陥を発生しやすくなるためである。
次に、スズめっき層またはスズ合金めっき層を前記凹部のサイズが一個当たり0.01×10−4mm以上10×10−4mm以下となるように形成するためには、めっき条件を、電流密度を0.1〜10A/dmとすることや、めっき液の攪拌条件を300rpm以下とすることが好ましい。前記電流密度と攪拌条件を同時に調整することがさらに好ましい。
また、スズめっき層またはスズ合金めっき層を前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が0.1%以上30%未満となるように形成するためには、めっき条件を、電流密度を1〜5A/dmとすることや、めっき液の攪拌条件を10〜100rpmとすることが好ましい。前記電流密度と攪拌条件を同時に調整することがさらに好ましい。
このようにして得られた本発明に係るスズめっき層の一例を、図1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真に示す。図1は、スズめっき層の上面をSEMで観察したものであり、写真中で黒く見える部分が凹部である。凹部は底部がスズ層中で留まっており、凹部のサイズは一個当たり10×10−4mm以下、凹部の面積率は30%未満である。
本発明では、プレス加工によって銅もしくは銅合金板材もしくは板材から打ち抜かれた端子材であって、まだ、端子形状への曲げ加工等の成型加工もその後のレーザ溶接処理もされていない展開形状の端子材の所定の溶接しようとする部分、つまり前記管展開部に表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を設けることに関する。そして、基材である銅もしくは銅合金材の特定の位置に対して吸収率の高い材料として前記特定のスズ層またはスズ合金層を配設することで、端子基材の銅もしくは銅合金のレーザ溶接性を改善するものである。
本発明においては、前記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を、レーザ光の照射部位に設けることを特徴とする。このためには、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を、かしめ部(図2などでの符号30)を形成する端子材の管展開部(端子材の基材が管展開部での幅方向に張り出した部分)に設ける。少なくとも、管展開部中の溶接部(図2などでの符号50)を形成する領域とその近傍に、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を設けることが必要である。
また、この表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層は、プレス打ち抜き加工した端子材のかしめ部(30)を形成する管展開部に、あるいは、管展開部の端部、すなわち管展開部の溶接部(50)を形成する領域とその近傍に、設けられていれば良いが、端子材の全面に設けられていても良い。例えば、全面にめっきを施してスズ層またはスズ合金層を設ける場合は、プレス打ち抜き加工した端子材全体をめっき浴に浸漬してめっきを行う。かしめ部(30)を形成する管展開部の端部のみにめっきする場合は、めっきが不要な部分にマスクをしてからめっき浴に浸漬してめっきを行っても良い。
さらには、かしめ部(30)を形成する管展開部を一旦馬蹄形状(∩状)に中間成形し、馬蹄形の両端部のみをめっき浴に浸漬することで、管展開部の端面のみ、あるいは、該端面とその周囲のみに部分めっきを行うことも可能である。この場合は、めっき完了後に、管展開部が管状になるように再度プレス成形することになる。
あるいはまた、管展開部のみに例えば板材の相当領域にストライプめっきを施してスズ層またはスズ合金層を設けてもよい。
さらにはまた、管展開部の溶接部(50)を形成する領域とその近傍のみに例えば板材の相当領域にスポットめっきを施してスズ層またはスズ合金層を設けてもよい。
なお、先にめっき処理工程に付した板材(基材)に打ち抜き工程を行って端子材の形状としてもよく、あるいは、先に板材(基材)の打ち抜き工程を行って端子材の形状としてからめっき処理工程に付してもよい。本発明においては、めっき処理工程と打ち抜き工程の工程順は、適宜選択される。また、めっき処理は、板材の全面(表面および裏面)に行っても、板材のレーザ光照射側の表面全面に行っても、管体かしめ部とする領域を含むようにストライプ状に行っても、レーザ溶接部となる領域面にのみにスポット状に行ってもよい。板材の全面にめっき処理する場合以外は、例えば、めっき処理を施さない面にマスクをしてから、めっき浴に浸漬してめっき処理すればよい。
この発明の好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
図2は本発明の製造方法で製造される端子の好ましい一実施形態である端子1を示している。この端子1は、雌型端子のボックス部20と、アルミニウム電線が挿入された後、圧着によって電線と端子の基材とを接続する管体かしめ部30を有し、これらのボックス部20と管体かしめ部30とを連絡するトランジション部40を有する。さらに、端子1は管体かしめ部30にレーザ溶接部50(図中、斜線で示す部分)を有する。端子1は、導電性と強度およびばね性を確保するために基本的に金属材料(銅または銅合金等)の基材で作製されている。また、レーザ溶接部50の形状は特に制限はない。レーザ溶接部50のように管体かしめ部30の長手方向に帯形状に形成するのが好ましい。
ここで、溶接部50は、1つの基材上の一対の管展開部をそれぞれ湾曲させて互いに突合せ対抗部(対向する端面)同士が、レーザ溶接されて形成される。前記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が溶融されたスズまたはスズ合金(以下、これらを併せてスズ成分ともいう)が、溶接部50で銅基材に取り込まれていることは、前述の通りである。
端子1を構成する端子材の基材の材料は、銅または銅合金、好ましくは銅合金である。
また、基材の材料として、銅合金の代わりに銅(タフピッチ銅や無酸素銅など)を用いることもできる。
端子材に用いられる銅合金の例としては、例えば、黄銅(例えば、CDA(Copper Development Association)のC2600、C2680)、りん青銅(例えば、CDAのC5210)、コルソン系銅合金(Cu−Ni−Si−(Sn,Zn,Mg,Cr)系銅合金)等が挙げられ、この内、コルソン系銅合金が好ましい。
コルソン系銅合金の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、古河電気工業株式会社製の銅合金FAS−680、FAS−820(いずれも商品名)、三菱伸銅製の銅合金MAX−375、MAX251(いずれも商品名)などを用いることができる。また、CDAのC7025などを用いることもできる。
前記FAS−680の合金組成の一例は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.55質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.1質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
また、前記FAS−820の合金組成の一例は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.65質量%、マグネシウム(Mg)を0.1質量%、およびクロム(Cr)を0.15質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
また、他の銅合金組成の例としては、例えば、Cu−Sn−Cr系銅合金、Cu−Sn−Zn−Cr系銅合金、Cu−Sn−P系銅合金、Cu−Sn−P−Ni系銅合金、Cu−Fe−Sn−P系銅合金、Cu−Mg−P系銅合金、Cu−Fe−Zn−P系銅合金などを挙げることができる。
ここで、以上に記載した必須元素以外に不可避不純物を含んでいても良いことは当然である。
端子の基材及び端子材の厚さは、0.08〜0.64mmが好ましい。
レーザ溶接前には、端子1、少なくとも管体かしめ部30の表面には、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が形成されており、レーザ溶接後は、前述のとおり、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を構成する金属スズやスズ合金はレーザ溶接部50およびその近傍の熱影響部に溶融されて取り込まれて見かけ上、溶接部表面からは該表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が消失する。
雌型端子のボックス部20は、例えば雄型端子等の挿入タブの挿入を許容するボックス部である。本発明において、このボックス部の細部の形状は特に限定されない。すなわち、本発明の端子の他の実施形態ではボックス部を有さなくてもよく、例えば、前記ボックス部に替えて雄型端子の挿入タブであっても良い。また他の形態に係る端子の端部であっても良い。本明細書では、本発明の端子を説明するために便宜的に雌型端子の例を示している。どのような接続端部を有する端子であっても、トランジション部40を介し管体かしめ部30を有していれば良い。また、その管体かしめ部30に形成された溶接部50が、管体かしめ部を構成する基材よりも軟らかいことが好ましい。
管体かしめ部30は、端子1と電線(図示せず)とを圧着接合する部位である。その一端はアルミニウム電線等の電線あるいはその導体を挿入することができる電線挿入口(導体挿入口)31を有し、他端はトランジション部40に接続されている。管体かしめ部30は、そのトランジション部40側で、例えばプレス加工等の潰し加工によって管体かしめ部30の対向する2つの管壁(通常は上下の管壁)を潰した上で、例えばレーザ溶接などの溶接加工によって閉口されて、この閉口部を底部とし前記電線もしくは導体の挿入口(31)で開口する「缶状」の構造を有している。端子1の基材(銅または銅合金など)とアルミニウム電線との接点に水分が付着すると、両金属の起電力の差からいずれかの金属(合金)が腐食してしまうので、管体かしめ部30は外部より水分等が侵入しないような管体構造となっている。本発明の端子のかしめ部は、管体であれば腐食に対して一定の効果が得られる為、必ずしも長手方向に対して断面が円筒である必要はなく、場合によっては断面が楕円筒や矩形筒の管体であっても良い。また、断面の径が一定である必要はなく、長手方向で断面の径が変化していても良い。
この端子1を用いれば、かしめ部30が管体であることにより、アルミニウム電線と端子1の基材の接点に外部からの水分の付着がなされにくくなっている。
管体かしめ部30では、管体かしめ部を構成する基材とアルミニウム(アルミニウム合金)電線とが機械的に圧着接合されることにより、同時に電気的な接合を確保する。かしめ接合は、基材や電線(芯線)の塑性変形によって接合が行われる。したがって、管体かしめ部30は、かしめ接合をすることができるように肉厚を設計される必要があるが、人力加工や機械加工等で接合を自由に行うことができるので、特に限定されるものではない。
本発明の管体かしめ部30は、板体の基材が突き合わされて構成されており、その突き合わせ部分を接合するレーザ溶接部50を有する。すなわち、レーザ溶接部50は、管体かしめ部30の突き合わせ部分に沿って長手方向に連続的に設けられている。そして、トランジション部40から電線挿入口31にかけて直線状領域として設けられている。
またレーザ溶接部50には、レーザ溶接前には表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が形成されていたものであり、この層によってレーザ溶接の際のレーザ光の吸収を高めることができる。レーザ溶接後には、前記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層のSnのうち一部または全部が溶融して基材の銅(Cu)もしくは銅合金中にとりこまれていることは前述の通りである。
管体かしめ部30の長手方向の断面図の一部を図3に示す。この図ではレーザ溶接部(焼きなまし部)50の表記を省略した。管体かしめ部30は、先述したとおり、好ましくは銅合金からなる基材32により構成されている。また、管体かしめ部の内壁面33には、電線との接触圧を保つための、電線係止溝34aもしくは34bを有していても良い。電線の芯線であるアルミニウム及びアルミニウム合金は、銅合金と比較すると銅の酸化膜より高い絶縁性を持つ酸化膜を表面にもつため、接続に不安がある。そこで、このような溝を設けることで、溝の山によって接圧を大きくすることが行われる。図3において、電線係止溝34aは矩形断面の溝であり、電線係止溝34bは半円形断面の溝である。このような電線係止溝は、管体かしめ部30を形成する前に、基材そのものに加工を施しておくと設けやすい。後述するファイバレーザや機械による切削加工等で設けることができる。なお、管体かしめ部30を形成する前に予めこのような電線係止溝を設けておくと、効率よく生産することができる。
なお、管体かしめ部には電線挿入口31からアルミニウム電線あるいはその導体が挿入されるので、電線係止溝34aや34bはアルミニウム芯線と接触する位置に設けられることが好ましい。アルミニウム電線は、通常アルミニウム芯線(導体)とこれを覆う絶縁被覆とからなっている。そして、電線と端子の電気的接合は、先端の絶縁被覆部を除去(皮むき)したアルミニウム芯線が端子の管体かしめ部と圧着接合されることで行われる。したがって接圧を十分に確保することが、電気的性能の維持につながるので、電線係止溝のような溝が必要となる。このような溝はセレーションとも呼ばれる。
そして、少なくとも一本以上の電線係止溝を管体かしめ部30の内面に設けることによって、端子と電線とが確実に圧着されるので、長期信頼性により優れるものとすることができる。
図4に本発明に従って製造する端子を用いた電線の終端接続構造体10を示す。終端接続構造体10は、本発明に従って製造する端子1と、アルミニウム電線(60)とが接続された構造を有している。終端接続構造体10は、端子1の管体かしめ部30内にアルミニウム電線60あるいはその導体を挿入し、管体かしめ部30をかしめることで、アルミニウム電線60が管体かしめ部30内に圧着接合されている。圧着の様態は特に限定されないが、図4では、第一の圧着縮径部35および第二の圧着縮径部36からなっている。通常、圧着接合すると、管体かしめ部30は塑性変形を起こして、元の径よりも縮径されることで、電線60との圧着接合をなす。図4に示した例では、第一の圧着縮径部35が、縮径率が一番高くなっている部分である。このように圧着接合を2段階の縮径で行ってもよく、3段階の縮径で行ってもい。
なお、電線60は、絶縁被覆61と図示しないアルミニウムまたはアルミニウム合金電線の芯線とからなっている。電線60は裸線であっても良いが、防食の観点から通常は絶縁被覆された電線を用いる。
本発明の電線の終端接続構造体は、アルミニウム系材料からなる電線と銅系材料からなる端子の基材との異種金属間腐食の防止に寄与する。また、レーザ溶接部50およびその近傍の熱影響部の機械特性は、レーザ溶接前の基材よりも低下しているものの、大きく損なうことなく、実用上、レーザ溶接部50および熱影響部の破損しない程度以上の機械特性を保持している。したがって、レーザ溶接部50および熱影響部は、製造時および使用時にレーザ溶接部が破損しにくく、端子製造時の歩留まりおよび端子の長期信頼性に寄与する。その一方で、レーザ溶接部50および熱影響部は、基材である端子板材よりも柔らかい焼きなまし部ともすることができるため、電線と端子の圧着箇所のスプリングバックを防ぐことができ、この点からも長期信頼性に優れる。
上記スプリングバックとは、加工部分が元の形状に戻ろうとする現象である。すなわち、電線(図示せず)と圧着接合させた管体かしめ部の変形部分が弾性力等でもとの形状に戻ろうとするため、管体かしめ部30の内面と電線との間に隙間ができてしまう。このようなスプリングバックが端子の圧着部で起こると、電線60と端子1との接点不良を招くことは勿論、間隙に水分の侵入を許しやすくなり腐食の原因となる恐れがある。
本発明の電線の終端接続構造体10を製造する場合、管体かしめ部30のレーザ溶接部50を積極的に塑性変形させる圧着接合が好ましい。端子1の管体かしめ部30と電線60とを圧着する場合は、専用の治具やプレス加工機等で行う。このとき、管体かしめ部30の全体を縮径させても良いが、管体かしめ部を凹型のように部分的に強加工して圧着する場合もある。このときは、レーザ溶接部50の塑性変形量が大きくなるように位置を調整すると良い。すなわち、レーザ溶接部50の直上(外側)にプレス加工時の凸部先端があたるように調整すると、レーザ溶接部50の変形量が大きくなる。このようにすると、比較的軟らかいレーザ溶接部50が塑性変形の多くを担うことができるために、スプリングバックの低減に寄与することができる。
次に、端子1の製造方法を、その製造に用いられる端子材の製造方法と併せて、説明する。本発明に従って製造する端子1は管体かしめ部30を有し、この管体かしめ部30にレーザ溶接部(前記図2など参照。)を有する端子であるので、この構成を達成し得るならば製造方法は限定されるものではない。
端子1は基材(銅合金など)からなる板材を平面展開した端子形状に打ち抜いて本発明の端子材を得て、その管体かしめ部上に前記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を設け、その後に、曲げ加工によってボックス部20およびトランジション部40を形成し、曲げ加工等によって湾曲させて突き合わせた管体かしめ部を形成する管展開部をレーザ溶接して管体かしめ部30を形成する。したがって、端子形状に打ち抜かれた端子材は、ボックス部20、トランジション部40および管体かしめ部30を曲げ加工等によって形成できる形状を一体に有している。管体かしめ部30を曲げ加工等によって形成できる端子材の管展開部の形状としては、代表的には矩形であるが、一端が閉塞した管体を形成できる形状であれば特に限定されず、例えば、略扇形状、矩形またはこれらの組み合わせ形状を有していてもよい。ボックス部20およびトランジション部40を形成可能な形状はボックス部20およびトランジション部40の形状に応じて適宜に選択される。加えて、端子材は、少なくとも管体かしめ部を形成する管展開部の表面に特定の表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が形成されている。このような形状および特定の表面層を有する本発明の端子材は、電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部の部分を湾曲させて突き合わせて管体に成形し、突き合わせた部分を接合して管体かしめ部を形成する端子の製造方法に好適に供される。
管体かしめ部30を形成するとき、平面状の管展開部は曲げ加工によってC字型断面となっているので、この開放部分の端面を突き合わせて溶接することによって接合し、管体かしめ部30とする。管体かしめ部30の好ましい製造方法としては、近赤外線レーザ光を発振するファイバレーザ加工機を用いたレーザ溶接にて行う。
通常、銅合金は発振波長が近赤外線領域のレーザ光の吸収効率が悪いため、溶接幅を細くできなかったり、熱影響部(HAZ)の幅を狭くできなかったりする場合がある。そこで、レーザ溶接部50となる基材32の突合せ部の端面に近赤外レーザ光の吸収が銅合金よりもよい、前記の表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を形成すること、およびファイバレーザ光のようなエネルギー密度が高いレーザ光を用いることで、上記課題は克服される。また、ファイバレーザ光による溶接によって、管体かしめ部30の突き合わせ部を溶接しながら、レーザ溶接部50を焼きなまし部とすることもできる。このように、一工程で管体かしめ部30の溶接加工と焼きなまし加工を行うことができるので、効率よく端子1を製造することができる。
上記表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層は、近赤外線レーザ光の反射が銅合金表面よりも少ないため、近赤外線レーザ光の吸収性が良い。分光高度法による近赤外光の反射率測定では、本発明に用いるSn層は、80%を下回る程度の反射率であり、90%以上の反射率がある純銅または銅合金よりも低くなっている。このように近赤外レーザ光の吸収性が高いSn層を形成した領域に近赤外レーザ光が照射されると、Snが溶融して溶融池を形成し、これによりレーザ光の吸収が高まり、その下地の基材表面が溶融し、さらにその溶融領域がレーザ光を吸収して基材の突き合わせ部分を溶融していくことで当該突合せ部の貫通溶接が進行している。
端子1を構成する基材の材料によって変化するため一概に言うことはできないが、前記突合せ部上に表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が形成された銅合金の基材ならば、近赤外線レーザ光照射によって、表面層がレーザ光を吸収し溶融して溶融池を形成する。さらに、その熱およびレーザ光照射によって光エネルギーが変換された熱エネルギーによって、基材の銅合金が溶融し、突き合わされた部分が接合されて、レーザ溶接部50が形成される。したがって、基材が融点以上に昇温されることでレーザ溶接部50が設けられる。具体的には管体かしめ部30の突き合わせ部をSn層またはSn合金層を含めて基材を融点以上沸点以下の温度に上昇させ、必要により所定時間保持してレーザ溶接を施すことで、レーザ溶接部50が形成される。通常、レーザ光は掃引されているので、掃引速度を適宜決定することで、レーザ光照射領域の温度が基材の融点以上になるようにすればよい。好ましくは、基材が溶融して貫通するように、レーザ光照射条件を調整する。
上記レーザ溶接では近赤外線レーザ光を用いている。近赤外線レーザ光は、発振波長が700nm〜2.5μmであり、好ましくは1000nm〜2000nmの発振波長のレーザ光を用いる。このようなレーザ光としては、イットリビウム(Yt)ドープガラスファイバレーザ光(発振波長1084nm)、エルビウム(Er)ドープガラスファイバレーザ光(発振波長1550nm)等がある。
上記溶接には、近赤外レーザ光を連続発振するファイバレーザ装置を用いるが、これとは異なるレーザ装置を用いた溶接により管体かしめ部30を形成しても良い。例えば、連続発振するYAGレーザ光発振装置、ガラスレーザ光発振装置等やパルス発振するレーザ光発振装置等が挙げられるが、拡がり角の狭さ、レーザ光のビーム径の細さ、レーザ連続発振の安定性等からファイバレーザ発振器を用いることが好ましい。
図5は、本発明の端子1の製造中の一状態を模式的に表した図である。
図5に示すように、近赤外線の波長1084nm±5nmのレーザ光を発振するファイバレーザ溶接装置FLから発せられたレーザ光Lが突き合わせ部37に照射され、この突合せ部を貫通溶接することによって、管体かしめ部30が形成される。この溶接時には、レーザ光のエネルギーが熱に変換されることによって、まず突き合わせ部37の表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層が、次いで突合せ部37の基材自体が溶融し、その後、冷却してレーザ溶接部50が設けられる。レーザ溶接部50は被溶接材料の融点以上の加熱処理によって設けることができる。ただし、ファイバレーザ光Lのエネルギーが高過ぎるかまたはエネルギー密度が低過ぎると、熱影響部が必要以上に広範囲で形成されてしまい、極端な場合には管体かしめ部30全体が軟化してしまう。したがって、ファイバレーザ光Lは100〜400Wの出力で溶接するのが好ましい。また、掃引速度を調整することによって、レーザ溶接部50を適切な範囲に設ける。
<<板材>>
本発明の板材は、前記銅または銅合金からなる基材上に、好ましくはその管体かしめ部上の前記所定の部分に、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹部を有する状態に制御したスズ層またはスズ合金層を有しているものである。基材の種類、表面をレーザ光吸収性が高い所定の凹凸状態に制御したスズ層またはスズ合金層、これらの詳細および好ましい範囲などは、前述の通りである。
この板材の幅は、前記端子材を、例えばプレス加工に打ち抜くことができる幅であれば特に制限はない。例えば、板材の幅は10〜60mm、好ましくは15mm〜40mmとする。
ここで、本発明の板材はもっと幅狭のいわゆる条材をも包含する意味である。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜6)
端子の基材として、古河電気工業株式会社製の銅合金FAS−680(商品名、厚さ0.25mm、H材)を用いた。
FAS−680の合金組成は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.55質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.1質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。FAS−680の融点は1078℃(液相)、比熱は377J/(kg・K)、熱伝導率は170W/(m・K)、線膨張係数が17.7×10−6/K(20〜300℃)、および導電率40%IACSである。また、引張強さは600〜700N/mm、伸び(引張破断伸び、以下同様。)は15%以上、0.2%耐力は500〜600N/mm、およびビッカース硬さは160〜220Hvである。
前記基材に電解脱脂処理とその後で酸浸漬処理を行った。
その後、所定の電流密度5A/dmで200rpmとなるように攪拌条件を調整して基材にスズめっき処理を施して、レーザ溶接を行う部分、つまり前記管展開部の表面に、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層中で留まるようにスズ層を設けた。この表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層中で留まっているスズ層は、その凹部のサイズを変えて形成した。
その後、めっき層を設けた基材(板材、5)を、図6に示すように、その長手方向に連なるよう(連鎖型)に端子を展開した形状にプレス加工によって打ち抜いて、連鎖型の端子材(32a)を形成した。
その後、図7のように、管体かしめ部の端面(30S)同士を突き合わせて、突き合わせた部分を全長1cmに渡りレーザ溶接によって貫通溶接することで接合し、管体かしめ部(30)を形成した(図7参照)。また、この溶接により、管体かしめ部中に焼きなまし部も得た。
各種条件を変化させることで、溶接性と接合強度を評価した。
実験条件は下記の通りである。
<前処理(電解脱脂、酸浸漬)>
(電解脱脂)
処理液:10%水酸化ナトリウム水溶液
処理温度:60℃
陰極電流密度:3.5A/dm
処理時間:30秒
(酸浸漬)
処理液:10%硫酸
処理温度:25℃
浸漬処理時間:30秒
<Snめっき条件>
処理液:硫酸第一スズ 80g/L、硫酸 80g/L、UTB513Y(石原薬品製、商品名) 80g/L
処理温度:15〜30℃
電流密度:凹部のサイズを変更するよう調整した。
処理時間:凹部のサイズを変更するように調整した。
以上の条件の範囲内で電流密度を設定した後、めっき時間を変化させて、所望の厚さ±0.2μm以内になっているサンプルを各厚さ水準で10個ずつ作成した。
なお、Sn層の厚さは、蛍光X線膜厚計によって、端部上のSn層の平均の厚さを測定した。
レーザ溶接条件は下記の通りである。
(1)レーザ溶接装置:古河電気工業株式会社製 シングルモードファイバレーザ ASF1J221(商品名)
レーザ光の光源:Ybドープガラスファイバレーザ発振器
レーザ光発振波長:1084±5nm
レーザ光最大出力:500W(連続発振)
(2)レーザ光照射条件
レーザ光出力:400W(連続発振で使用)
レーザ光掃引速度:90〜300mm/secで調整
レーザ光掃引距離:10mm
全条件ジャストフォーカスでレーザ光照射(スポット径サイズ:20μm)
(比較例1〜6)
この比較例は、前記特許文献5(特許第4569784号)に記載の技術を模した試験例である。
端子の基材として、表面に多数の凹部を有しているが該凹部がスズ層を貫通して凹部の底部位置が基材の銅合金表面となっているスズめっき層を設けた以外は、実施例1〜6と同様に作製した。
なお、この各比較例においては中間層(例えばNiめっき層)は設けていないが、銅合金基材上に常法に従ってNiめっき中間層を設け、その中間層上にスズめっき層を設けることによって開孔部の底部をNi中間層上とした場合(つまり、開孔部の底ではNiが露出した状態)であっても、同様の結果を得た。
レーザ溶接後の溶接部の状態を、「溶接性」と「接合強度」を以下の通り測定、評価した。
「溶接性」は、レーザ光による貫通溶接が可能な速度がどの程度の速度であったかをもって評価した。
レーザ光掃引速度とレーザ光掃引時間の関係から、レーザ光掃引速度が速い場合をレーザ光掃引時間が短い、つまりレーザ溶接にかかるエネルギーが少なくて工業的観点から望ましい、と判断できる。具体的には、レーザ光掃引速度が、300mm/sec以上で貫通溶接できる場合を「A(良)」と、100mm/sec以上300mm/sec未満で貫通溶接できる場合を「B(可)」と、100mm/secより遅い速度で貫通溶接できる、あるいは、全く貫通溶接できない場合を「C(劣)」と、それぞれ判断した。
また、「接合強度」は、前記溶接後の端子の管体かしめ部(つまり、溶接部。但し、電線導体とのかしめは行っていない状態。)に対して、引張試験を行って評価を行った。前記溶接部で破断した引張破断強度を測定して評価した。具体的には、引張破断強度が、200MPa以上の場合を「A(良)」と、200MPa未満100MPa以上の場合を「B(可)」と、100MPaより低いの場合を「C(劣)」と、それぞれ判断した。破断強度が100MPaより低いと端子形状にする成形加工に耐えられない。
上記各種試験条件とその評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例では、いずれも速いレーザ光掃引速度でレーザ溶接が可能であり、溶接性が良好であった。さらに、接合強度が高く、良好な接合状態が得られることを確認した。
一方、各比較例では、遅いレーザ光掃引速度でしかレーザ溶接が行うことができなかったかもしくはレーザ溶接が全くできず、溶接性に劣った。さらに、接合強度が低く、端子形状にする成形加工では割れが生じてしまうことを確認した。
(実施例11〜18)
前記実施例と同様にして、但し、前記凹部の面積の合計がスズ層の面積に対して占める面積比率が30%未満となるようにスズめっき処理を施して、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層中で留まるようにスズ層を設けた。この表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層中で留まっているスズ層は、以下の条件を変えることによって、その凹部の面積比率を30%未満の範囲内で変えて形成した。
凹部の面積比率は、所定の高電流密度8A/dmで20rpmとなるように攪拌条件を調整することに凹部の面積比率を調整した。
(比較例11〜13)
この比較例は、前記特許文献6(特開昭2012−201932号公報、請求項9など)に記載の技術を模した試験例である。
端子の基材として、凹部の面積比率を30%以上、あるいは0.1%以下に変えてスズめっき層を設けた以外は、実施例11〜18と同様に作製した。
その結果を表2に示す。
表2から明らかなように、各実施例では、いずれも速いレーザ光掃引速度でレーザ溶接が可能であり、溶接性が良好であった。
一方、各比較例では、遅いレーザ光掃引速度でしかレーザ溶接が行うことができなかったかもしくはレーザ溶接が全くできず、溶接性に劣った。
また、前記各実施例で用いた端子の基材として、前記銅合金(FAS−680)の代わりに別の銅合金(例えば、FAS−820(古河電気工業株式会社製、商品名)、MAX−375(三菱伸銅製、商品名)およびMAX251(三菱伸銅製、商品名))を用いた場合にも、前記と同様の結果が得られることを確認した。
FAS−820の合金組成は、スズ(Sn)を0.15質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.3質量%、シリコン(Si)を0.65質量%、マグネシウム(Mg)を0.1質量%、およびクロム(Cr)を0.15質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
MAX−375の合金組成は、スズ(Sn)を0.5質量%、亜鉛(Zn)を0.5質量%、ニッケル(Ni)を2.85質量%、およびシリコン(Si)を0.7質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
MAX251の合金組成は、スズ(Sn)を0.5質量%、亜鉛(Zn)を1質量%、ニッケル(Ni)を2質量%、およびシリコン(Si)を0.5質量%含有し、かつ銅(Cu)を95質量%以上含有し、および残部が不可避不純物である。
1 端子
10 終端接続構造体
20 ボックス部
30 管体かしめ部
31 電線挿入口
32 端子基材
33 管体かしめ部の内壁面
34a,34b 電線係止溝
35 第一の圧着縮径部
36 第二の圧着縮径部
37 突き合わせ部
40 トランジション部
50 溶接部
60 電線
61 絶縁被覆
FL ファイバレーザ溶接装置
L ファイバレーザ光

Claims (18)

  1. 電線と圧着接合する管体かしめ部を有する端子の製造方法であって、
    湾曲されて前記管体かしめ部を形成する管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子材を用意し、
    表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まるようにスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として形成し、
    前記管展開部を湾曲させて互いに突き合わせて管体に成形し、
    突き合わせた部分を近赤外線レーザ光照射によるレーザ溶接によって接合して前記管体かしめ部を形成する
    各工程をこの順に有してなる、端子の製造方法。
  2. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である請求項1に記載の端子の製造方法。
  3. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である請求項1または2に記載の端子の製造方法。
  4. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される側の表面に形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
  5. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される領域に形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
  6. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を前記管展開部の前記レーザ溶接される管展開部の端面に形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の端子の製造方法。
  7. 電線と圧着接合する管体かしめ部となる管展開部を備えた銅または銅合金製基材からなる端子の展開形状を有する端子材であって、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部上に最表層として有してなる、端子材。
  8. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である請求項7に記載の端子材。
  9. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である請求項7または8に記載の端子材。
  10. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部のレーザ溶接のレーザ光照射側の表面に有してなる請求項7〜9のいずれか1項に記載の端子材。
  11. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部における前記レーザ溶接領域に有してなる請求項7〜10のいずれか1項に記載の端子材。
  12. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層を、前記管展開部における前記レーザ溶接される管展開部の端面に有してなる請求項7〜10のいずれか1項に記載の端子材。
  13. 請求項7〜12のいずれか1項に記載の端子材の管体かしめ部となる管展開部が湾曲されて展開端部同士が互いに突き合わせた部分がレーザ溶接で接合されてなる端子。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子の製造方法で作製された端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続する電線の終端接続構造体の製造方法であって、前記管体かしめ部内に前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を挿入し、前記管体かしめ部をかしめて前記アルミニウムまたはアルミニウム合金電線を前記管体かしめ部内に圧着接続する、電線の終端接続構造体の製造方法。
  15. 請求項13に記載の端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金電線とを、前記端子の管体かしめ部において圧着接続した電線の終端接続構造体。
  16. 銅または銅合金からなる基材上に、表面に多数の凹部を有していて該凹部の底部がスズ層またはスズ合金層中で留まっているスズ層またはスズ合金層を最表層として有する、端子用銅または銅合金板材。
  17. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部のサイズが一個当たり10×10−4mm以下である請求項16に記載の端子用銅または銅合金板材。
  18. 前記最表層のスズ層またはスズ合金層において、前記凹部の面積の合計がスズ層またはスズ合金層の面積に対して占める面積比率が30%未満である請求項16または17に記載の端子用銅または銅合金板材。
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