以下、本発明の一実施形態について、図1〜図20を参照しつつ説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るフーリエ変換型分光装置の構成を示すブロック図であり、図2は、前記フーリエ変換型分光装置における干渉計及びその周辺の構成を示す図である。また、図3は、前記干渉計における光反射機構の構成を示す拡大斜視図であり、図4は、前記光反射機構における移動鏡の往復振動の様子を示す断面図である。また、図5は、前記フーリエ変換型分光計における受光処理部の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係るフーリエ変換型分光装置(以下、「FT型分光装置」と略記する。)10は、分光対象光のスペクトルを測定する装置である。このFT型分光装置10は、分光対象光を干渉計11によって干渉させ、この分光対象光の干渉光を測定して得られた前記干渉光の波形(インターフェログラム)をフーリエ変換することによって分光対象光のスペクトルを求める。
具体的に、FT型分光装置10は、干渉計11において生成された分光対象光の干渉光を光電変換することによって得られた電気信号を、所定のサンプリングタイミングでサンプリングして複数の測定データを取得する。そして、FT型分光装置10は、この取得した複数の測定データ(即ち、分光対象光のインターフェログラム)からフーリエ変換を用いて分光対象光の1次スペクトルを求める。さらに、FT型分光装置10は、迷光補正係数を用いて1次スペクトルを補正することにより、迷光の影響を抑えた(除去した)分光対象光の2次スペクトル(正規光のスペクトル)を求める。
以下では、FT型分光装置10の設計等において予定(設定)されている正規の光路を正規光路と称する。また、正規光路を構成する複数の光学素子のうちの所定の光学素子等によって所定の回数(設計上予定されている回数)反射された後、第1受光部21によって検出される光を正規光と称し、正規光路を通っているが、前記所定の回数よりも多く光学素子等によって反射された後、第1受光部21によって検出される光、即ち、正規光よりも正規光路における反射回数の多い光を迷光と称する。また、試料SMにおいて反射され、当該試料SMから第1受光部(検出器)21に到達する光を分光対象光と称し、干渉計11から出力される分光対象光には、正規光と迷光とが含まれる。
本実施形態のFT型分光装置10は、SN比を改善し、良好な精度の結果を得るために、分光対象光の1次スペクトルを求めるためのフーリエ変換の変換対象として、積算インターフェログラムを用いる。この積算インターフェログラムは、干渉計11において生成された分光対象光のインターフェログラムを複数積算することによって得られたインターフェログラムである。
このようなFT型分光装置10は、例えば、図1〜図5に示すように、測定光光源部50と、受光レンズ12と、干渉計11と、受光処理部(測定部)20と、タイミング発生部30と、制御演算部41と、入力部42と、出力部43と、を備える。
測定光光源部50は、測定光を所定のジオメトリで測定対象の物体である試料SMへ照射する。本実施形態では、試料SMの測定光が照射される面(測定面SF)にカバーガラスCGが被せられた状態で、測定光光源部50が試料SMに測定光を照射する。換言すると、測定光がカバーガラスCGを介して測定面SFに照射される。このカバーガラスCGは、試料SMの表面(測定面SF)を保護するために被せられているものである。尚、試料SMの測定面SFにカバーガラスCGが被せられていなくてもよい。
測定光光源部50は、例えば、測定光光源51(図2参照)及びその周辺回路を備える。測定光光源51は、測定光を放射してこの測定光を例えば45:0度のジオメトリで試料SMへ照射する。測定光は、試料SMにおけるその反射光(分光対象光)のスペクトルを測定するために用いられる光であり、予め設定された所定の波長帯において連続スペクトルを持つ。本実施形態の測定光光源51は、例えば、ハロゲンランプである。
本実施形態のFT型分光装置10では、測定光光源51から照射された測定光は、図2に示されるように、カバーガラスCGを介して、45度の入射角で試料SMの表面(測定面SF)に入射する。試料SM(測定面SF)において反射された測定光の反射光は、0度の方向から測定される。即ち、測定面SFの法線方向(0度)に反射した反射光の成分が分光対象光として干渉計11に入射する。
尚、本実施形態の分光対象光は、試料SMにおいて反射した測定光の反射光であるが、これに限定されない。分光対象光は、例えば、試料SMを透過した透過光であってもよく、また、測定光を照射することによって試料SMから再放射(例えば蛍光発光等)される光であってもよい。また、分光対象光は、測定光が照射されることなく、試料SMが自発光した光であってもよい。即ち、FT型分光装置10は、反射光だけでなく、透過光、再放射の光、自発光等のスペクトルも測定可能である。
受光レンズ12は、試料SMからの反射光を分光対象光として入射開口13を通じて干渉計11内に導入する。
干渉計11は、試料SMで反射した測定光の反射光が分光対象光として入射し、この分光対象光の干渉光を射出する。この干渉計11は、分光対象光が入射したときに、この入射した分光対象光を2つの光束(第1分岐光及び第2分岐光)に分岐する。そして、干渉計11は、これら分岐させた第1分岐光及び第2分岐光を、互いに異なる2つの経路(第1内部光路及び第2内部光路)を進行(伝播)させた後、再び合流させる。このとき、第1内部光路及び第2内部光路において、分光対象光の分岐点(分岐位置)から、分岐させた光の合流点(合流位置、干渉位置)までの間に光路長差があると、前記合流の際に第1分岐光と第2分岐光との間に位相差が生じ、この位相差に応じた干渉光が発生する。
本実施形態のFT型分光装置10では、例えば、図2に示すような、マイケルソン干渉計11が用いられる。
具体的に、干渉計11は、2つの光路(内部光路)を形成する複数の光学素子と、平行移動機構(移動鏡駆動部)150と、を備える。
複数の光学素子は、半透鏡(ハーフミラー)112と、固定鏡114と、光反射面が光軸方向に移動する移動鏡115とを含む。これらの光学素子112、113、114、115は、干渉計11において、以下のように配置されている。
固定鏡114と移動鏡115とは、各鏡面の法線が互いに直交するようにそれぞれ配置されている。また、半透鏡112は、その法線が固定鏡114及び移動鏡115における各法線の直交点を通り、これら各法線に対して45度の角度で交差するように配置されている。
このように複数の光学素子112、114、115が配置された干渉計11に入射した分光対象光は、半透鏡112によって2つの光束(第1分岐光及び第2分岐光)に分けられる。この分岐した一方の光束(第1分岐光)は、半透鏡112において反射された分光対象光であり、固定鏡114に入射する。そして、第1分岐光は、固定鏡114で反射され、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。一方、この分岐した他方の光束(第2分岐光)は、半透鏡112を通過した分光対象光であり、移動鏡115に入射する。そして、第2分岐光は、移動鏡115で反射され、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。尚、本実施形態の半透鏡112において第1分岐光が反射される面は、第2分岐光の透過側(移動鏡115側)の面である。
これら固定鏡114で反射された後の第1分岐光と、移動鏡115で反射された後の第2分岐光とは、半透鏡112で合流することにより干渉する。このような構成の干渉計(マイケルソン干渉計)11では、分光対象光は、移動鏡115の鏡面における法線方向に沿って干渉計11に入射し、分光対象光の干渉光は、固定鏡114の鏡面における法線方向に沿って干渉計11から射出される。
また、本実施形態の干渉計11は、位相補償板113を備えている。この位相補償板113は、第1分岐光における半透鏡112の透過回数と第2分岐光における半透鏡112の透過回数との相違から生じる第1分岐光と第2分岐光との間の位相差を無くす(即ち、位相差を補償する)のに用いられる光学素子である。
本実施形態の位相補償板113は、半透鏡112の透過側に配置される。具体的に、位相補償板113は、半透鏡112を透過して移動鏡115に向かう第2分岐光の光路と、半透鏡112から第1受光部21に向かう干渉光(固定鏡114で反射された第1分岐光と移動鏡115で反射された第2分岐光とが半透鏡112で合流(干渉)した後の光)の光路と、に跨るように配置されている。本実施形態の位相補償板113は、半透鏡112との間に所定の間隔を空けた状態で半透鏡112に対して平行な姿勢で配置されている。
尚、半透鏡112と位相補償板113とは、互いに接するように配置されてもよい。例えば具体的には、半透鏡112と位相補償板113とが、オプティカルコンタクトや接着剤による接合等によって一体的に構成されていてもよい。また、半透鏡112が第1分岐光を反射する反射面が本実施形態と反対側(分光対象光の入射側)の場合、位相補償板113は、半透鏡112と固定鏡114との間の第1分岐光の光路上に配置される。
以上のように、本実施形態の干渉計11において、第1分岐光は、分光対象光の入射位置から、半透鏡112、固定鏡114、半透鏡112、及び位相補償板113を順に介して第1受光部21に向かう第1内部光路を辿る。また、本実施形態の干渉計11において、第2分岐光は、分光対象光の入射位置から、半透鏡112、位相補償板113、移動鏡115、位相補償板113、半透鏡112、及び位相補償板113を順に介して第1受光部21に向かう第2内部光路を辿る。尚、固定鏡114で反射された後の第1分岐光と、移動鏡115で反射された後の第2分岐光とは、半透鏡112において合流(干渉)し、この合流した状態で位相補償板113を通過して第1受光部21に向かう。
また、本実施形態の干渉計11は、分光対象光を平行光で半透鏡112へ入射させる入射光学系111と、半透鏡112において第1分岐光及び第2分岐光を干渉させることによって生じた分光対象光の干渉光を集光して第1受光部21へ入射させる射出光学系116とを有する。本実施形態の入射光学系111は、例えば、コリメータレンズであり、試料SMの測定面SFと半透鏡112との間の適宜な位置に配置されている。また、本実施形態の射出光学系116は、例えば、集光レンズであり、半透鏡112と第1受光部21との間の適宜な位置に配置されている。
移動鏡115は、干渉計11に配置される前記複数の光学素子の一つであり、例えば、平行移動機構150の共振振動によって2つの内部光路(第1内部光路及び第2内部光路)間に光路長差を生じさせる。この移動鏡115は、分光対象光のインターフェログラムを複数生成するために、平行移動機構150によって光軸方向に1回以上往復させられる。即ち、FT型分光装置10では、移動鏡115が光軸方向に1往復することによって2つ(移動鏡115が往路を移動したときと復路を移動したときとで各1つずつ)のインターフェログラムが生成される。
平行移動機構150は、移動鏡115が取り付けられ、この移動鏡115を光軸方向(図2における左右方向)に往復振動(往復移動)させる。移動鏡115がこの平行移動機構150に取り付けられたものとして、例えば、特開2011−80854号公報や特開2012−42257号公報に開示の光反射機構が挙げられる。尚、図3も参照しつつ以下に説明する光反射機構15において、鏡面領域(移動鏡)115を除く部位が平行移動機構150である。
この光反射機構15は、第1板バネ151及び第2板バネ152からなる一対の板バネと、これら一対の板バネ151、152を共振させるために板バネ151、152同士を連結する一対の支持体(第1支持体及び第2支持体)153、154と、一対の板バネ151、152を駆動する圧電素子(板バネ駆動部)155と、一方の板バネ151上に形成された移動鏡115と、を備えている。
第1及び第2板バネ151、152は、間隔を空けて互いに対向するように平行配置されている。
第1支持体153は、第1及び第2板バネ151、152の間における一方端部(図3における左側端部)において、当該第1及び第2板バネ151、152に連結されて配置されている。第2支持体154は、第1及び第2板バネ151、152の間における他方端部(一方端部と反対側の端部:図3における右側端部)において、当該第1及び第2板バネ151、152に連結されて配置されている。これら第1及び第2支持体153、154は、第1及び第2板バネ151、152の間において、互いに離間した状態で配置されている。
圧電素子155は、第1板バネ151の他方端部における第2板バネ152と反対側の面(図3における上面)に配置されている。詳しくは、圧電素子155は、図3において、第1板バネ151における第2支持体154の上方で、且つ、第2支持体154とは反対側の表面上に配置されている。この圧電素子155は、図4(A)にも示されるように、圧電材料である例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電体155aを一対の電極155b、155cによって狭持することにより構成されている。
移動鏡115は、図3において、第1板バネ151の一方端部における上面上に設けられている。詳しくは、移動鏡115は、第1板バネ151における第1支持体153の上方で、且つ、第1支持体153とは反対側の表面上に設けられている。この移動鏡115は、例えば、鏡を第1板バネ151に貼着等したものでもよく、また、例えば、アルミニウム等の金属の薄膜を第1板バネ151上に形成(成膜)したものでもよい。
以上のように構成される光反射機構15は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって製造される。
このような構造の光反射機構15では、図4(A)に示されるように、圧電素子155が伸張すると、第1板バネ151が上に凸となるように変形し、この結果、移動鏡115が、第1及び第2板バネ151、152に関する対向方向の下方に変位する一方、圧電素子155が縮小すると、図4(B)に示されるように、第1板バネ151が、下に凸となるように変形し、この結果、移動鏡が前記対向方向の上方に変位する。そして、この光反射機構15は、大きな変位量を得るために一対の板バネ151、152の共振によって前記変位を繰り返し、移動鏡115を光軸方向に沿って往復振動(往復移動)させる。より具体的には、平行移動機構150の一方端部の往復振動(往復移動)に歪みがない場合には、一対の板バネ151、152が共振する周波数(共振周波数f0)の信号が圧電素子155に入力されると、圧電素子155が共振周波数f0で伸縮を繰り返す。これにより、移動鏡115は、図4(C)に示されるように、変位量が0(ゼロ)となる原点位置X0(振動振幅の中心位置)を中心に、この原点位置X0からの変位量が最大となる位置Xm、−Xmの間で時間経過とともに略正弦波状に変位し、固有振動数で一定の周期でかつ正確に振動する。
以上のように構成される光反射機構15は、制御演算部41の移動鏡制御部416によってその動作を制御されている。
図1に戻って、受光処理部20は、干渉計11において生成された分光対象光の干渉光を受光して光電変換することによって、分光対象光の干渉光の波形に関する電気信号(分光対象光の干渉光における光強度変化を表す電気信号)を出力する。この受光処理部20は、前記電気信号を所定のサンプリングタイミングでサンプリングすることによって複数の測定データを順次に出力する回路である。受光処理部20は、例えば、図5に示されるように、第1受光部21と、増幅部22と、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter)23と、アナログ−デジタル変換部(以下、「AD変換部」と呼称する。)26と、を備える。
第1受光部21は、干渉計11において生成された分光対象光の干渉光を受光して光電変換し、分光対象光の干渉光における光強度に応じた電気信号(第1受光信号)を出力する回路である。本実施形態のFT型分光装置10は、例えば、波長1200nm以上の赤外域の光、より具体的には、波長1200nm以上から2500nm以下(波数4000cm−1以上から8334cm−1以下)までの赤外域の光を測定対象とする。このため、第1受光部21は、例えばInGaAsフォトダイオード及びその周辺回路を備えた赤外線センサ等によって構成される。第1受光部21は、受光結果を増幅部22へ出力する。
増幅部22は、第1受光部21の出力(増幅結果)を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器である。この増幅部22は、例えば、オペアンプなどの増幅器とその周辺回路とを備えている。増幅部22は、その増幅結果をバンドパスフィルタ23(詳しくはバンドパスフィルタ23の一部を構成するハイパスフィルタ24)へ出力する。
バンドパスフィルタ23は、ハイパスフィルタ(High Pass Filter)24と、ローパスフィルタ(Low Pass Filter)25とを有し、ノイズをカットするために、所望の周波数帯域のみを通過させる。ハイパスフィルタ24は、所定の遮断周波数以上の周波数の信号を通過させ、低域のノイズをカットするための回路であり、濾波結果をローパスフィルタ25へ出力する。ローパスフィルタ25は、所定の遮断周波数以下の周波数の信号を通過させ、高域のノイズをカットするための回路であり、濾波結果をAD変換部26へ出力する。
AD変換部26は、増幅部22の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換(AD変換)する回路である。このAD変換のタイミング(サンプリングタイミング)は、タイミング発生部30(詳しくは、タイミング発生部30のゼロクロス検出部37)から入力されたゼロクロス信号のゼロクロスタイミングである。AD変換部26は、その変換結果のデジタル信号を制御演算部41へ出力する。
タイミング発生部30は、受光処理部20(詳しくはAD変換部26)において電気信号をサンプリングするためのサンプリングタイミングを生成する。このタイミング発生部30は、例えば、位置測定用光源31と、第2受光部36と、ゼロクロス検出部37と、を備えている。このタイミング発生部30は、位置測定用光源31から放射されたレーザ光の干渉光を干渉計11で得るために、図2に示されるように、コリメータレンズ32と、光合波器33と、光分波器34と、集光レンズ35とをさらに備えている。
位置測定用光源31は、波長の既知な単色レーザ光を放射する。本実施形態の位置測定用光源31は、例えば、波長680nmの赤色レーザ光を発光する半導体レーザを備える。この位置測定用光源31としては、例えば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)や分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD(Distributed Feedbak Laser Diode))、ヘリウムネオンレーザ等の発振波長が安定しており、スペクトル幅の狭い光源が好ましい。
図2において、コリメータレンズ32及び光合波器33は、位置測定用光源31から放射されたレーザ光を平行光で干渉計11へ入射させるための入射光学系を構成する。光合波器33は、例えばレーザ光を反射すると共に分光対象光を透過するダイクロイックミラー等である。この光合波器33は、その法線が移動鏡115の法線(光軸)に対し45度で交差するように、コリメータレンズ111と半透鏡112との間に配置される。コリメータレンズ32は、例えば両凸のレンズであり、前記のように配置された光合波器33に対し45度の入射角で位置測定用光源31から放射されたレーザ光が入射されるように、適宜な位置に配置される。
また、光分波器34及び集光レンズ35は、干渉計11において生成された前記レーザ光の干渉光を干渉計11から取り出すための射出光学系を構成する。光分波器34は、例えばレーザ光の干渉光を反射すると共に分光対象光の干渉光を透過するダイクロイックミラー等である。この光分波器34は、その法線が固定鏡114の法線(光軸)に対し45度で交差するように、半透鏡112と集光レンズ116との間に配置される。集光レンズ35は、例えば両凸のレンズであり、前記のように配置された光分波器34において45度の射出角で射出されるレーザ光の干渉光を集光して第2受光部36へ入射させる。
このようにコリメータレンズ32、光合波器33、光分波器34及び集光レンズ35の各光学素子が配置されると、位置測定用光源31から放射された単色のレーザ光は、コリメータレンズ32によって平行光とされ、その光路が光合波器(本実施形態の例ではダイクロイックミラー)33によって約90度曲げられ、これにより、干渉計11の光軸(移動鏡115の鏡面における法線方向)に沿って進行する。従って、このレーザ光は、分光対象光と同様に、干渉計11内を進行し、干渉計11において前記レーザ光の干渉光が生成される。そして、このレーザ光の干渉光は、光分波器(本実施形態の例では、ダイクロイックミラー)34によって約90度曲げられて、干渉計11から外部に取り出される。この取り出されたレーザ光の干渉光は、集光レンズ35によって集光されて第2受光部36によって受光される。
図1に戻って、第2受光部36は、干渉計11において生成されたレーザ光の干渉光を受光して光電変換し、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号(第2受光信号)を出力する回路である。この第2受光部36は、例えば、シリコンフォトダイオード(SPD)及びその周辺回路を備えた受光センサ等である。第2受光部36は、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号をゼロクロス検出部37へ出力する。
ゼロクロス検出部37は、第2受光部36から入力された、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号がゼロとなるタイミング(ゼロクロスタイミング)を検出する回路である。ゼロクロス検出部37は、ゼロクロス信号をゼロクロスタイミングでAD変換部26へ出力する。
ゼロクロスタイミングは、所定の基準電圧をゼロレベルとして、前記電気信号がこのゼロレベルとなる時間軸上の位置である。詳しくは、以下の通りである。尚、図6は、本実施形態のフーリエ変換型分光計におけるレーザ光の干渉波形の一例を示す図である。
干渉計11の移動鏡115が光軸方向に移動している場合、半透鏡112から固定鏡114を介して再び半透鏡112に戻ったレーザ光の位相に対し、半透鏡112から移動鏡115を介して再び半透鏡112に戻ったレーザ光の位相がずれる。このため、レーザ光の干渉光は、移動鏡115の移動量に応じて正弦波状に強弱する。このとき、干渉計11の移動鏡115がレーザ光の波長の1/2の長さだけ移動すると、半透鏡112から移動鏡115を介して再び半透鏡112に戻ったレーザ光の位相は、この移動の前後において、2πずれる。このため、レーザ光の干渉光は、例えば、図6に示されるように、移動鏡115の光軸方向への移動に従って正弦波状に強弱を繰り返す。
ゼロクロス検出部37は、この正弦波状に強弱を繰り返す前記電気信号のゼロクロスを検出する。そして、ゼロクロス検出部37は、この検出したゼロクロスのタイミングでゼロクロス信号をAD変換部26へ出力する。AD変換部26は、このゼロクロス信号が入力されると、ゼロクロスのタイミングで、第1受光部21から入力された、分光対象光の干渉光の光強度に応じた電気信号をサンプリングしてAD変換する。
図1に戻って、制御演算部41は、分光対象光のスペクトルを求めるべく、FT型分光装置10の各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する。この制御演算部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えたマイクロコンピュータによって構成される。尚、制御演算部41は、AD変換部26から出力されるデータ等や、後述する迷光補正係数を記憶(格納)するために、例えばハードディスク等の比較的大容量の記憶装置(記憶部)410をさらに備える。
このように構成される制御演算部41には、当該制御演算部41がプログラムを実行することによって、機能的に、サンプリングデータ記憶部411と、センターバースト位置算出部412と、積算インターフェログラム算出部413と、1次スペクトル算出部414と、補正部415と、上述の移動鏡制御部416と、が構成される。
サンプリングデータ記憶部411は、AD変換部26から出力された、分光対象光の干渉光に関する測定データを記憶する。この測定データは、上述したように、分光対象光の干渉光における光強度に応じた電気信号を、ゼロクロス検出部37において検出したゼロクロスのタイミング(データピッチ)で、AD変換部26によってサンプリングすることで得られたデータである。
積算インターフェログラム算出部413は、分光対象光を連続的に複数回測定することによって得られた複数のインターフェログラムを、位置合わせを行いつつ積算することによって、積算インターフェログラムを求める。
センターバースト位置算出部412は、サンプリングデータ記憶部411に記憶された測定データから、公知の常套手法によってセンターバーストの位置を求める。
1次スペクトル算出部414は、積算インターフェログラム算出部413においてインターフェログラムを複数積算することによって得られた積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって1次スペクトルを求める。
補正部415は、記憶装置410に記憶(格納)されている迷光補正係数を用いて1次スペクトルを補正することにより、2次スペクトル(迷光の影響を除去した(抑制した)分光対象光のスペクトル、即ち、正規光のスペクトル)を算出する。
この補正部415によって用いられる迷光補正係数は、当該迷光補正係数によって1次スペクトル(分光対象光の干渉光を測定した測定結果)を補正することによって、分光対象光の波数k(k:実数)の成分が干渉計11の2つの内部光路を予定通りに通過することによって生じる光路長差に対して、前記波数kの成分の一部が予定とは異なる2つの内部光路を通過することによって生じる光路長差がn倍(n:2以上の整数)となることにより、1次スペクトルの波数nkの位置に表れる迷光の影響を抑える。本実施形態の迷光補正係数では、最も強度の大きな(即ち、分光対象光のスペクトルの測定結果に最も影響が大きい)迷光の影響を抑えるために、nが2の迷光の影響を抑えている。この迷光(n=2の迷光、2倍波数の迷光)の光路について、以下、具体的に説明するが、先ず、正規光の光路について説明する。尚、図7は、正規光の光路の一例を示す模式図であり、図8は、迷光(n=2の迷光)の光路の一例を示す模式図である。これら図7及び図8は、正規光及び迷光の干渉計内における反射位置、及び正規光路における正規光及び迷光の反射回数を説明するために各光路を模式的に示した図であり、正規光及び迷光の実際の光路とは異なっている。
正規光は、図7に示されるように、第1分岐光(実線)が固定鏡114で1回反射され、第2分岐光(破線)が移動鏡115で1回反射された後、これらの干渉光が第1受光部21によって受光されるような光路である。この正規光のインターフェログラム干渉信号の波数kの成分は、
と表される。
本実施形態の迷光(n=2の迷光)は、図8に示されるように、第1分岐光(実線)が第1受光部21で1回、固定鏡114で2回反射され、第2分岐光(破線)が第1受光部21で1回、移動鏡115で2回反射された後、これらの干渉光が第1受光部21によって受光されるような光路である。図7及び図8から明らかなように、迷光の第1分岐光と第2分岐光との光路長差は、正規光の第1分岐光と第2分岐光との光路長差の2倍である。これら迷光の第1分岐光と第2分岐光との干渉信号の振幅は、第1受光部21の入射面での反射率や、半透鏡112等での反射率及び透過率によって変化する。また、前記干渉信号の位相も、半透鏡112での反射位相等によって変化する。よって、前記干渉信号の波数kの成分は、
と表される。
上記式(1)、式(2)から、次のことが分かる。測定されたインターフェログラムをフーリエ変換すると、分光対象光の波数kの成分のうち、正規光成分は、スペクトル上で正しく波数kの信号となるが、迷光成分は、波数2kの信号(迷光信号)となってしまう。本実施形態のFT型分光装置10では、この迷光(n=2の迷光)を補正する。
本実施形態の迷光補正係数は、迷光の振幅と正規光の振幅との比(以下、「迷光正規光振幅比」とも称する。)と、迷光の位相と正規光の位相との差(以下、「迷光正規光間位相差」とも称する。)と、係数設定光の位相と、を含む。尚、係数設定光とは、以下のように迷光補正係数を求めるときに用いられる光である。
本実施形態の迷光補正係数(迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相)は、迷光の影響を抑えたい波数域を含まない光(係数設定光)をFT型分光装置10によって測定した結果(測定結果)に基づいて設定されている。具体的には、以下の通りである。
本実施形態のFT型分光装置10の例では、
・第1受光部21の測定可能波数域が3700cm−1〜11000cm−1
・FT型分光装置10としての測定波数域(SN比(信号量(signal)と雑音量(noise)の比)が許容値以上、即ち、測定精度が確保できる測定波数域)が4000cm−1〜8334cm−1
である。
この場合、測定可能波数域内において迷光の原因となる波数域は、3700cm−1〜4167cm−1であり、この波数域の光に起因する迷光の影響は、7400cm−1〜8334cm−1の波数域に現れる。
そこで、先ず、図9に示すような、波数が7400cm−1以上の成分の透過率がゼロとみなせる光学フィルタを測定光光源51と試料SMとの間に配置した状態でスペクトルの測定を行う。図9は、前記光学フィルタの特性を示す図であり、縦軸が透過率であり、横軸が波数である。尚、光学フィルタの透過特性において所定の波数域の透過率が「ゼロとみなせる」の定量的な判断条件は、FT型分光装置10において許容される迷光の強度によって適宜決定される。
これにより、試料SMに照射される測定光は、測定面SFに到達するときには、7400cm−1以上の波数域がゼロとみなせる光(係数設定光)となっている。
この測定光光源51と試料SMとの間に配置される光学フィルタは、例えば、当該光学フィルタを構成する材料自体の光の吸収特性を利用したもの、表面に光学薄膜をコートして所望の透過特性を実現したもの、又は、これらを組み合わせたもの等である。尚、本実施形態のFT型分光装置10では、試料SMに係数設定光(迷光の影響を抑えたい波数域を含まない光)を照射するために光学フィルタを用いたが、この構成に限定されない。例えば、FT型分光装置10は、所望の波数域の強度がゼロ若しくはゼロとみなせる光を照射可能なLEDや蛍光体等を用いて試料SMに係数設定光を照射する構成であってもよい。
このようにして測定された係数設定光のスペクトル(1次スペクトル)の一例を図10及び図11に示す。図10は、1次スペクトルの振幅と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が振幅、横軸が波数である。この図10において、振幅は最大値を1に規格化している。また、図11は、1次スペクトルの位相と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が位相、横軸が波数である。この図11では、位相を±180°の範囲で表している。
これら図10及び図11は、上述のようにして測定されたインターフェログラム(必要に応じてこのインターフェログラムに、例えば、ハニング窓関数、ハミング窓関数等の適当な窓関数を掛けてもよい。)をフーリエ変換して得られた複素数(複素振幅p=r*exp(iθ))における振幅と位相とを示している。このようにして得られた振幅には、試料SMの拡散反射の反射率の情報が含まれ、位相には、干渉計11内の半透鏡112での反射時の位相変化、及びフーリエ変換する際のゼロ点位置(干渉計11内の2つの内部光路の光路長差が0の位置)等の情報が含まれている。また、振幅の小さい波数域における位相の情報ではノイズが支配的となっているため、意味は無い。
係数設定光では、波数が7400cm−1以上の範囲の成分が0とみなせるため、図10及び図11においてこの範囲に表れているのは迷光成分であることが分かる。換言すると、波数が7400cm−1以上の範囲では、迷光成分のみが測定されている。尚、波数が7400cm−1よりも小さい範囲に表れているのは、係数設定光成分(即ち、正規光成分)である。
上述のようにして迷光成分の振幅と位相とが検出されると、次に、これらを用いて迷光補正係数(本実施形態では、迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相)が導出される。このようにして得られた迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相の一例を図12〜図14に示す。
図12は、迷光正規光振幅比と係数設定光の波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が迷光正規光振幅比、横軸が波数である。図13は、迷光正規光間位相差と係数設定光の波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が迷光正規光間位相差、横軸が波数である。図14は、係数設定光の位相(正規光の位相)とその波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が位相、横軸が波数である。図13及び図14では、位相を±180°の範囲で表している。ここで、図13及び図14において、+180°から−180°、あるいは−180°から+180°へ位相が急激に変化しているように見える場所があるが、これは位相を±180°の範囲に折り返して表示しているためであり、意味はない。
尚、本実施形態では、正規光の波数kの成分に対して測定されたスペクトルの波数2kの位置に現れる迷光成分を当該スペクトルから除去しよう(抑えよう)としているため、測定の際の正規光のデータピッチが迷光のデータピッチの1/2でなければならないが、フーリエ変換によって求められるスペクトルは等波数ピッチで算出される。そのため、本実施形態のFT型分光装置10では、線形補間、ラグランジュ補間等や、フーリエ変換前に正規光の各データの前後に0点を付加してフーリエ変換後のデータピッチを細かくする等の処理が行われている。
ここで、本実施形態において、迷光補正係数として、迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相が用いられる理由について説明する。
分光対象光を測定して求めた1次スペクトルには、正規光の成分と迷光の成分とが含まれている。即ち、1次スペクトルは、正規光の成分と迷光の成分とが重畳された状態のスペクトルである。そこで、試料SMで反射されて実際に測定された反射光(分光対象光)の干渉光の波数2kの振幅をA’(2k)、位相をθ’(2k)とし、正規光の振幅をA’
0(2k)、位相をθ’
0(2k)とし、迷光の振幅をA’
s2(k)、位相をθ’
s2(k)とする(原因光の波数がkであり且つスペクトル上において波数2kの位置に表れる迷光)とすると、測定された分光対象光は、以下の式(3)のように表せ、
この式(3)から正規光を表す以下の式(4)が得られる。
ここで、迷光の振幅A
s2(k)は、正規光の振幅A
0(k)と、迷光と正規光との振幅比C
s2(k)を用いて以下の式(5)のように表せる。
また、迷光の位相θ’s2(k)は、以下の式(6)のように表される。
この式(6)を、以下の式(7)のように変形する。
以上より、正規光を、測定結果(実際に測定される分光対象光の干渉光)と、迷光正規光振幅比と、迷光正規光間位相差と、係数設定光の位相と、を用いて表せることが分かる。そこで、本実施形態のFT型分光装置10は、迷光補正係数として、これら迷光正規光振幅比と、迷光正規光間位相差と、係数設定光の位相と、を用い、分光対象光の測定結果から2次スペクトル(正規光のスペクトル)を求めている。
尚、本実施形態のFT型分光装置10では、迷光正規光振幅比と、迷光正規光間位相差と、係数設定光の位相と、を用い、分光対象光の測定結果から2次スペクトル(正規光のスペクトル)を求めているが、この構成に限定されない。例えば、迷光正規光振幅比に基づく値、迷光正規光間位相差に基づく値、及び係数設定光の位相に基づく値、又は、前記3つの値のうちのいずれかを用いて分光対象光の測定結果から2次スペクトルを求める構成等であってもよい。具体的には、FT型分光装置10が、迷光正規光振幅比に基づく値(例えば、迷光正規光振幅比を3倍した値)を迷光補正係数(又はその一部)として持ち、分光対象光の測定結果を補正する際に、前記値(迷光正規光振幅比の3倍の数値)を1/3にした後、この1/3にした前記値(即ち、迷光正規光振幅比)を用いて補正を行う構成であってもよい。同様に、FT型分光装置10が迷光正規光間位相差をN倍(N:2以上の整数)した値を迷光補正係数(又はその一部)として持ち、分光対象光の測定結果を補正する際に、前記値(迷光正規光間位相差のN倍の数値等)を1/Nにした後、この1/Nにした前記値(即ち、迷光正規光間位相差)を用いて補正を行う構成であってもよい。また、FT型分光装置10が係数設定光の位相をN倍(N:2以上の整数)した値を迷光補正係数(又はその一部)として持ち、分光対象光の測定結果を補正する際に、前記値(係数設定光の位相のN倍の数値等)を1/Nにした後、この1/Nにした前記値(即ち、係数設定光の位相)を用いて補正を行う構成であってもよい。
また、例えば、迷光正規光振幅比と、迷光正規光間位相差に基づく値と、係数設定光の位相と、を含む迷光補正係数のように、迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び係数設定光の位相の3つ係数のうちのいずれかを、その係数に基づく値に変えたものを迷光補正係数としてもよい。
入力部42は、例えば、試料SMの測定開始を指示するコマンド等の各種コマンド、及び測定対象の試料SMにおける識別子の入力やフーリエ変換の際に用いられる窓関数の選択入力等のスペクトルを測定する上で必要な各種データをFT型分光装置10に入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。
出力部43は、入力部42から入力されたコマンドやデータ、及び、FT型分光装置10によって測定された分光対象光のスペクトルを出力する機器である。この出力部43は、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
次に、以上のように構成されるFT型分光装置10の動作について説明する。
FT型分光装置10では、測定対象である試料SMの測定が開始される前に、まず、平行移動機構150が、その一方端部を光軸方向に振動させ始める。即ち、制御演算部41の移動鏡制御部416が、平行移動機構150の共振振動を開始させる。そして、移動鏡115の往復振動が安定すると、分光対象光の測定が以下のようにして行われる。
試料SMがFT型分光装置10にセットされ、その後、FT型分光装置10によって試料SMの測定が開始される。測定が開始されると、測定光光源51は、測定光を放射することにより、試料SMへ例えば45度の入射角で測定光を照射する。そして、試料SMで反射した測定光の反射光は、分光対象光として0度方向から干渉計11に入射する。
干渉計11に入射した分光対象光は、干渉計11で分光対象光の干渉光となって受光処理部20の第1受光部21によって受光される。より具体的には、分光対象光は、コリメータレンズ111によって平行光とされ、光合波器33を介して半透鏡112で反射及び透過することにより第1及び第2分岐光に分岐される。半透鏡112で反射されることによって分岐した第1分岐光は、固定鏡114において反射され、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。一方、半透鏡112を通過することによって分岐した第2分岐光は、位相補償板113を介して移動鏡115へ入射し、移動鏡115において反射されて来た光路を逆に辿って再び位相補償板113を介して半透鏡112に戻る。これら固定鏡114で反射された第1分岐光、及び移動鏡115で反射された第2分岐光は、半透鏡112において合流して干渉する。この分光対象光の干渉光は、位相補償板113を通過した後、干渉計11から第1受光部21へ射出される。このとき、正規光路を通っている光ではあるが、第1受光部21における干渉光の入射面や、干渉計11内の光学素子、カバーガラスCG等で反射したことにより、正規光よりも反射回数の多い光(迷光)も正規光と共に第1受光部21へ射出されている。
第1受光部21は、入射した分光対象光の干渉光(正規光成分と迷光成分とを含む干渉光)を光電変換し、前記分光対象光の干渉光における光強度に応じた電気信号を増幅部22へ出力する。増幅部22は、第1受光部21から出力された電気信号(分光対象光の干渉光における光強度に応じた電気信号)を所定の増幅率で増幅し、AD変換部26へ出力する。
一方、干渉計11は、位置測定用光源31から放射された単色のレーザ光も取り込む。このレーザ光は、光合波器33を介して干渉計11に入射し、上述と同様に干渉計11で干渉する。干渉光となったレーザ光は、光分波器34を介して第2受光部36によって受光される。第2受光部36は、この入射したレーザ光の干渉光を光電変換し、このレーザ光の干渉光における光強度に応じた電気信号をゼロクロス検出部37へ出力する。ゼロクロス検出部37は、前記レーザ光の干渉光に応じた電気信号がゼロとなるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出し、このゼロクロスタイミングをサンプリングタイミング(AD変換タイミング)としてAD変換部26へ出力する。
このような所定光及びレーザ光がそれぞれ干渉計11に取り込まれている間、干渉計11の移動鏡115は、光軸方向に往復振動(往復移動)している。
AD変換部26は、増幅部22から出力された、前記分光対象光の干渉光における光強度に応じた電気信号を、ゼロクロス検出部37から入力されたゼロクロスタイミングでサンプリングしてアナログ信号からデジタル信号へAD変換する。そして、AD変換部26は、このAD変換したデジタル信号の前記電気信号を制御演算部41へ出力する。
ここで、図15に、本実施形態のフーリエ変換型分光装置10において、実測した分光対象光の干渉光の波形(インターフェログラム)の一例を示す。図15の縦軸は、インターフェログラムの振幅Fm(x)であり、横軸は、第1内部光路と第2内部光路との間の光路長差xである。また、図16に、インターフェログラムと窓関数との関係を示す。図16の縦軸は振幅であり、横軸は、第1内部光路と第2内部光路との間の光路長差xである。図16中の実線は、インターフェログラム形状を示し、破線は窓関数を示す。
上述のように動作することによって、分光対象光のインターフェログラムにおける測定データがAD変換部26から制御演算部41へ出力され、この測定データがサンプリングデータ記憶部411に記憶される。そして、SN比を改善し、良好な精度の結果を得るために、このような分光対象光のインターフェログラムが移動鏡115の往復に合わせて連続的に複数回、同様に、測定され、これら各インターフェログラムの各測定データがサンプリングデータ記憶部411にそれぞれ記憶される。即ち、移動鏡115が1往復すると、1回の走査が終了し、インターフェログラムの測定データが2つ(移動鏡115が往路を移動したときと復路を移動したときとで各1つずつ)得られる。
次に、積算インターフェログラム算出部413は、複数回測定することによって得られた分光対象光の複数のインターフェログラムを、位置合わせを行いつつ積算することによって、分光対象光に対する積算インターフェログラムを求める。
次に、センターバースト位置算出部412は、積算インターフェログラムにおけるセンターバーストの位置を求める。そして、1次スペクトル算出部414は、積算インターフェログラム算出部413によって求められた積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって、分光対象光の1次スペクトルを求める。
ここで、図17及び図18に、上述のようにして求められた1次スペクトルの一例を示す。図17は、1次スペクトルの振幅と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が振幅、横軸が波数である。この図17において、振幅は最大値を1に規格化している。図18は、1次スペクトルの位相と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が位相、横軸が波数である。この図18では、位相を±180°の範囲で表している。
続いて、補正部415は、1次スペクトル算出部414によって求められた1次スペクトルを、記憶装置410に格納されている迷光補正係数を用いて補正する。その結果を、図19及び図20に示す。図19は、迷光補正係数を用いて補正した後のスペクトル(2次スペクトル)の振幅と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が振幅、横軸が波数である。この図19において、振幅は最大値を1に規格化している。図20は、迷光補正係数を用いて補正した後のスペクトル(2次スペクトル)の位相と波数との関係の一例を示す図であり、縦軸が位相、横軸が波数である。この図20では、位相を±180°の範囲で表している。これら図19及び図20からも分かるように、迷光補正係数を用いて1次スペクトルを補正することによって、迷光成分が除去されている(抑えられている)。
上述のように、分光対象光の2次スペクトル(迷光補正係数を用いて補正した後のスペクトル)が求められると、制御演算部41は、この求めたスペクトルを出力部43へ出力する。
以上のFT型分光装置10によれば、迷光補正係数を用いて分光対象光の測定結果を補正することによって、分光対象光の干渉光の受光強度を低下させることなく前記干渉光の測定結果における迷光の影響を抑制することが可能となる。即ち、迷光補正係数によって測定結果(1次スペクトル)を補正して迷光の影響を抑えることで、分光対象光を測定する(検出器等で受光する)際にマスク部材を分光対象光の光路上に配置してその一部を遮ったときのような受光強度の低下が生じない。これにより、分光対象光の受光強度を十分に確保しつつ、前記干渉光の測定結果における迷光の影響を抑制することができる。
また、本実施形態のFT型分光装置10では、迷光補正係数が記憶装置410に予め格納(記憶)されているため、分光対象光のスペクトル(試料SM)の測定毎に迷光補正係数を求めることなく前記スペクトルを測定することができる。
また、本実施形態の迷光補正係数は、前記迷光の影響を抑えたい波数域を含まない光である係数設定光の測定結果に基づいて設定されていることから、分光対象光のスペクトルの測定結果において迷光の影響を確実に抑えることができる。即ち、係数設定光のスペクトルを測定することによって当該測定での測定結果における迷光成分を確実に抽出することができるため、この迷光成分に基づいて迷光補正係数を設定することによって、分光対象光のスペクトルの測定結果における迷光の影響を確実に抑えることができる。
また、本実施形態の迷光補正係数が係数設定光の位相を含んでいるため、迷光補正係数における0点位置(詳しくは、係数設定光の測定の際に干渉計において2つの内部光路間の光路長差が0になったときの位置)を特定することができる。これにより、迷光補正係数における0点位置と、分光対象光の測定結果における0点位置とを一致させた状態で、迷光補正係数によって1次スペクトルを補正することが可能となり、その結果、分光対象光のスペクトルの測定精度がより向上する。具体的には、以下の通りである。
本実施形態のFT型分光装置10では、干渉計11の2つの内部光路間の光路長差が0の位置となる移動鏡115の位置を直接的に検出する手段を備えていない。このため、FT型分光装置10では、広い分光分布の分光対象光のインターフェログラムにおいて、前記光路長差が0付近でほぼ全ての波数の光が強め合い強度が極大になること利用し、この光の強度が極大になる位置(センターバースト)を光路長差が0の位置(0点位置)と擬制している。しかし、この0点位置は、分光反射率等によって変化するため、測定する試料によって異なる。このため、係数設定光を用いて迷光補正係数を求めたときの0点位置と、試料SMの反射光(分光対象光)から得られたインターフェログラム(測定結果)の0点位置とが異なっていても、迷光補正係数が係数補正係数の位相を含むことで、互いの0点位置を一致させた状態で、測定結果の補正を行うことが可能となる。
尚、本発明の迷光補正方法、及びこれを用いたフーリエ変換型分光装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態のFT型分光装置10では、迷光補正係数によって、第1受光部21における分光対象光の入射面において1回反射される光路を通る迷光(2倍波数の迷光)の影響を抑えているが、これに限定されない。入射光学系(コリメータレンズ等)111や、射出光学系(集光レンズ等)116、カバーガラスCG等で反射される光路を通る迷光であっても、上記実施形態のように、光路長差が2倍となる迷光(即ち、測定されたスペクトルの波数kの成分に対して当該スペクトルの波数2kの位置に表れる迷光)が生じる。これらの場合であっても、上記実施形態の迷光補正係数によって迷光の影響を抑えることができる。
また、上記実施形態のFT型分光装置10は、第1受光部21において1回反射され、固定鏡114と移動鏡115とにおいて2回反射される光路を通った迷光(図8参照)、即ち、干渉計11の2つ内部光路における光路長差が予定されている光路長差のn倍となり(n:2以上の整数)、測定されたスペクトル(1次スペクトル)において波数nkの位置に表れる迷光において、n=2の場合の迷光の影響を抑えているが、この構成に限定されない。FT型分光装置は、例えば、nが3以上の迷光の影響を抑える構成であってもよい。この場合、迷光補正係数として、n=2の場合と同様に求めたn=3の場合の迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相、n=4の場合の迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相、n=5の場合の迷光正規光振幅比、迷光正規光間位相差、及び、係数設定光の位相、…が用いられる。
また、上記実施形態のFT型分光装置10は、試料SMからの拡散反射光を干渉計11に入射させる構成であるが、この構成に限定されない。FT型分光装置は、試料SMを透過した透過光を干渉計に入射させる構成であってもよく、また、干渉計11において先に干渉させた光(干渉光)を試料に照射し、この干渉光の拡散反射光を測定する構成でもよい。また、FT型分光装置において、試料SMでの拡散反射光を干渉計11まで導光する光学系の具体的構成は限定されない。例えば、前記拡散反射光を光ファイバによって干渉計11まで導光する構成であってもよい。
また、FT型分光装置は、正規光と迷光との波数分解能の相違に起因する測定エラーを防ぐことができるように構成されてもよい。この正規光と迷光との波数分解能の相違に起因する測定エラーは、FT型分光装置の波数分解能程度以下の半値幅のピークを持つ輝線光源やレーザ光を測定する場合や、半値幅の狭い吸収ピークをもつ試料等の測定の際に生じる場合がある。詳しくは、以下の通りである。
スペクトルの正規光の波数分解能に対して、正規光の2倍の波数の位置に表れる迷光(2倍波数の迷光)の波数分解能は約1/2である。詳しくは、FT型分光装置の波数分解能は、干渉計11の入射開口13、コリメータ、最大光路長差(フーリエ変換されるインターフェログラムの幅)、及び窓関数によっておおよそ決まる。ここで、波数分解能は、輝線の測定スペクトルの半値幅とする。この輝線の測定スペクトルの半値幅は、理論的には、最大光路長差に反比例する。図7及び図8から明らかなように、正規光の最大光路長差(干渉計の2つの内部光路間の最大光路長差)が、例えば、Dmaxの時、2倍波数の迷光の最大光路長差は、正規光の2倍の2Dmaxとなる。そのため、2倍波数の迷光は、正規光の半分の半値幅となる。このため、測定される分光対象光のスペクトルに装置分解能を超えた細かい形状がある場合、スペクトルの正規光成分は、装置の波数分解能で制約されたスペクトル形状となるが、2倍波数の迷光成分は、その約半分の細かさの形状まで再現されるため、測定結果(1次スペクトル)がうまく補正されない(即ち、FT型分光装置において測定エラーが生じる)場合がある。そこで、以下のようにすることで、上述の測定エラーを防ぐことができる。
試料SMを測定する際に、先ず、最大光路長差が通常の約2倍となるようにして試料SMからの拡散反射光のインターフェログラムを測定し、迷光の原因光における正規光成分のスペクトルを通常の約1/2の半値幅で求め、この求めたスペクトルを用いて迷光成分を算出する。そして、通常の最大光路長差で、試料SMからの拡散反射光のインターフェログラムを測定し、通常の半値幅のスペクトルを算出し、前記算出しておいた迷光成分を用いて迷光補正を行うことにより、上述の測定エラーを防ぐことができる。
または、以下のようにしても、上述の測定エラーを防ぐことができる。
先ず、最終的に求められるスペクトル(最終スペクトル)の算出に使用する範囲(即ち、インターフェログラムと窓関数との積の値がゼロでない範囲)と比べて最大光路長差が約2倍となる範囲で、試料SMからの拡散反射光のインターフェログラムを測定する。
そして、測定された全範囲のインターフェログラムをフーリエ変換したもの(インターフェログラムと窓関数との積の値がゼロでない範囲が最終スペクトルを算出する際に用いられるデータの約2倍であるデータを、フーリエ変換したもの)から迷光の原因光における正規光成分のスペクトルを最終スペクトルの約1/2の半値幅で求め、この求めた正規光成分のスペクトルから迷光成分を算出する。続いて、前記インターフェログラムのデータのうち、最終スペクトルの算出に使用する光路長差範囲(インターフェログラムと窓関数との積の値がゼロでない範囲)をフーリエ変換して最終の半値幅のスペクトルを算出する。そして、算出したスペクトルを前記算出した迷光成分を用いて迷光補正を行うことにより、上述の測定エラーを防ぐことができる。
FT型分光装置10では、適切なインターフェログラムを測定するためには、干渉計11の入射開口、コリメータ、最大光路長差、分光対象光の波数等の関係に制約がある。このため、上述のように最大光路長差を通常の2倍にした場合、適切なインターフェログラムを測定できるか懸念されるが、以下の通り、適切なインターフェログラムを測定することができる。
FT型分光装置10において干渉計11の入射開口13、コリメータの条件が固定されている場合、許容される最大光路長差は、およそ、波数に反比例する。このため、通常の光路長差は、最も制約の厳しい測定域の最大波数により制約されている。補正する迷光の最大波数が測定域の最大波数である場合、2倍波数の迷光の原因光である正規光の波数は、2倍波数の迷光の1/2である。このため、最大光路長差を通常の2倍にした状態で正規光のスペクトルを迷光成分算出用に測定することには、何ら問題はない。
n倍波数の迷光(波数kに対してスペクトルの波数nk(3以上の自然数)の位置に表れる迷光)の場合についても、同様に、通常の約n倍の最大光路長差でインターフェログラムを測定し、迷光成分を求め、この成分を用いて、通常の最大光路長差で測定した試料からの拡散反射光(分光対象光)の測定結果を補正することで、上述の測定エラーを防ぐことができる。
また、迷光成分算出の際に最大光路長差を通常のn倍にする場合の他に、迷光成分を求めるときに通常の測定で使用する窓関数よりも半値幅が狭くなる窓関数(例えば、矩形窓関数(インターフェログラムの測定範囲で1、それ以外で0となる関数)等)を用いてもよい。詳しくは、以下の通りである。
FT型分光装置において使用する窓関数を変えると、半値幅とサイドローブ(メインピークの両側に現れる偽ピーク)が変化する。この半値幅とサイドローブとはトレードオフの関係にあり、通常、FT型分光装置では、例えば、ハニング窓関数、ハミング窓関数等のようなサイドローブがある程度小さくなるような窓関数が用いられている。しかし、迷光補正を行う場合、強度の最も強いメインピークを補正する事が重要であり、サイドローブの影響で、若干、迷光補正残りが発生してしまう事は許容される。そこで、FT型分光装置10では、サイドローブは大きくなるが、最も半値幅の狭くなる矩形窓関数が用いられることが好ましい。
また、上述の2つの方法(係数設定光の測定において最大光路長差が通常の測定時の2倍にする方法と、迷光補正係数を設定するときの窓関数を通常の測定時と異なるものを使う方法)を組み合わせてもよい。
上記実施形態の迷光補正係数は、実測に基づいて、即ち、迷光の影響を抑えたい波数域の強度がゼロとみなせる分光分布の光(係数設定光)を試料に照射してその拡散反射光を実際に測定し、この測定結果に基づいて求められているが、これに限定されない。迷光補正係数は、FT型分光装置10の設計情報等からシミュレーションによって求められてもよい。
迷光の強度が環境温度に依存して変化する場合、FT型分光装置は、温度毎の迷光補正係数と、温度センサと、をさらに備えてもよい。これにより、FT型分光装置は、環境温度に応じた迷光補正を精度よく行うことができる。ここで、温度毎の迷光補正係数とは、温度毎に上述の方法(係数設定光の測定結果を用いる方法)によって求められた迷光補正係数である。
また、迷光の強度が環境湿度に依存して変化する場合、FT型分光装置は、湿度毎の迷光補正係数と、湿度センサと、をさらに備えてもよい。これにより、FT型分光装置は、環境湿度に応じた迷光補正を精度よく行うことができる。
また、FT型分光装置は、迷光の発生によって減少した正規光の振幅を補正(増幅)するように構成されてもよい。この場合、例えば、FT型分光装置は、正規光の振幅が減少した状態で、既知の反射率の拡散反射板を測定することによって試料での反射率を校正するように構成される。
また、上記実施形態の迷光補正方法は、ハードウェアでの対策によって迷光の影響を防ぐ構成のFT型分光装置に適用されてもよい。これにより、迷光の影響をより抑えることができる。このハードウェアでの対策としては、例えば、特許文献(特開平5−79913号公報)に開示された迷光の進行を遮るマスク部材を正規光路に配置する構成や、干渉光を検出するセンサ面やカバーガラス等を傾ける構成、分光対象光を導光する光ファイバの端面と当該端面に入射(出射)する分光対象光の光軸とのなす角度を、垂直からずれた角度にする構成等がある。
分光対象光において迷光の原因となる波数域の強度が小さい場合には、迷光補正しなくてもスペクトルを精度よく測定することができる。このため、FT型分光装置は、迷光補正を行う補正モードと、迷光補正を行わない非補正モードとの間でモードを切換可能に構成されてもよい。この場合、FT型分光装置における前記モードの切り換えは、当該FT分光装置のユーザーが切り換える構成でもよく、1次スペクトルに含まれる迷光成分の大きさに基づいて自動的に切り換わる構成でもよい。
また、FT型分光装置10は、迷光補正前のスペクトル(1次スペクトル)と、迷光補正後のスペクトル(2次スペクトル)との両方を出力するように構成されてもよい。
また、上記実施形態のFT型分光装置10では、当該FT型分光装置10において、試料SMからの反射光(分光対象光)の測定、及び、測定結果の補正の両方が行われるが、この構成に限定されない。例えば、FT型分光装置において前記反射光の測定のみが行われ、FT型分光装置による測定結果の補正がPC等の他の演算装置によって行われる構成等であってもよい。
移動鏡115に対する半透鏡112の具体的な姿勢(即ち、移動鏡115の法線と半透鏡112の法線とのなす角の具体的な値)は限定されない。上記実施形態では、移動鏡115の法線と半透鏡112の法線とのなす角が45°となるように、移動鏡115及び半透鏡112が配置されているが、例えば、移動鏡115の法線と半透鏡112の法線とのなす角が30°等であってもよい。
また、移動鏡115に対する光合波器33及び光分波器34の具体的な姿勢(即ち、移動鏡115の法線と光合波器33の法線とのなす角の具体的な値と、移動鏡115の法線と光分波器34の法線とのなす角の具体的な値と)は限定されない。
上記実施形態では、移動鏡115の法線と光合波器33の法線とのなす角、及び移動鏡115の法線と光分波器34の法線とのなす角がそれぞれ45°となるように、移動鏡115、光合波器33及び光分波器34がそれぞれ配置されているが、例えば、移動鏡115の法線と光合波器33(又は光分波器34)の法線とのなす角が30°等であってもよい。
干渉計11において、半透鏡112に対する移動鏡115の位置と固定鏡114の位置とが反対であってもよい。即ち、干渉計11において、半透鏡112に反射された分光対象光(第1分岐光)が進む方向に移動鏡115が配置され、半透鏡112を透過した分光対象光(第2分岐光)が進む方向に固定鏡114が配置されてもよい。
位置測定用光源31、光合波器34、及びコリメータレンズ32の具体的な配置位置は限定されない。例えば、図2における位置測定用光源31、光合波器34、コリメータレンズ32の相対的な位置及び姿勢を維持しつつ、移動鏡115の法線を回転軸としてこれら位置測定用光源31、光合波器34、コリメータレンズ32を所定の角度(例えば、180°等)だけ回転させた位置にそれぞれ配置してもよい。
同様に、光分波器34、集光レンズ35、及び第2受光部36の具体的な配置位置も限定されない。即ち、図2における相対的な位置及び姿勢を維持しつつ、固定鏡114の法線を回転軸として、光分波器34、集光レンズ35、及び第2受光部36を所定の角度だけ回転させた位置にそれぞれ配置してもよい。
また、上記実施形態のFT型分光装置10は、位置測定用光源31から放射されたレーザ光の一部が位置測定用光源31に入射することを防ぐために、レーザ光の移動鏡115への入射角が移動鏡115の法線に対して例えば2°となるように、構成されてもよい。具体的には、以下の通りである。
上記実施形態のFT型分光装置10は、位置測定用光源31から放射されたレーザ光が移動鏡115に対して垂直に入射するように構成されている。この場合、位置測定用光源31から放射されたレーザ光が、コリメータレンズ32を透過し、光合波器33で反射され、半透鏡112、位相補償板113を透過して移動鏡115に到達する。このレーザ光は、移動鏡115で反射されて位相補償板113を透過し、その一部が半透鏡112を透過し、光合波器33、コリメータレンズ32を経て、位置測定用光源31に入射する。位置測定用光源31によっては、レーザ光の放射部位からレーザ光が入射した場合、出力が不安定になる可能性がある。そこで、光合波器33の法線と移動鏡115の法線とのなす角が、例えば、46°となるように光合波器33を配置すれば、位置測定用光源31の放射したレーザ光が移動鏡115に対して入射角が2°となり、これにより、移動鏡115での反射後に半透鏡112を透過した前記レーザ光の一部が位置測定用光源31に入射することを防ぐことができる。
上記実施形態のFT型分光装置10において、コリメータレンズ111や集光レンズ116等のレンズは、球面鏡、放物面鏡等のミラーによって構成されてもよい。
また、集光レンズ36、116等は、FT型分光装置10内の光学系の構成によって、適宜、省略されてもよい。
移動鏡115や固定鏡114は、例えば、コーナーキューブミラー、コーナーキューブプリズム等によって構成されてもよい。
上記実施形態の干渉計11内の光路を形成する光学系の具体的な構成は限定されない。例えば、前記光路中にミラー、レンズ等の光学素子が挿入され、前記光路を途中で折り曲げる、収束又は発散させる等が行われてもよい。
また、図2のFT型分光装置10において、各光学素子の大きさや、光学素子間の間隔等が適宜変更されてもよい。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。