以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
図1は、実施形態におけるフーリエ変換型分光計の構成を示すブロック図である。図2は、実施形態のフーリエ変換型分光計における主に干渉計の構成を示す図である。図3は、実施形態のフーリエ変換型分光計における第1態様のアタッチメントの構成を示す断面図である。図4は、一例として、実施形態のフーリエ変換型分光計における輝線光の輝線スペクトルを示す図である。図4の横軸は、cm−1単位で表す波数であり、その縦軸は、相対強度である。
実施形態におけるフーリエ変換型分光計(以下、「FT型分光計」と略記する。)Dは、被測定光のスペクトルを測定する装置であって、前記被測定光を干渉計で測定し、この測定した被測定光の干渉光の波形(インターフェログラム)をフーリエ変換することによって被測定光のスペクトルを求める装置である。そして、本実施形態のFT型分光計Dでは、SN比を改善し、良好な精度の結果を得るために、前記被測定光のスペクトルを求めるためにフーリエ変換される変換対象には、前記干渉計で生成された前記被測定光のインターフェログラムを複数積算することによって得られた積算インターフェログラムが用いられる。このようなFT型分光計Dは、例えば、図1ないし図3に示すように、測定対象の物体である試料SMに測定光を照射するための測定光光源51と、試料SMで反射した測定光の反射光が被測定光として入射され、前記被測定光の干渉光を射出する干渉計11と、干渉計11で得られた被測定光の干渉光を受光して光電変換することによって被測定光の干渉光の波形の電気信号(被測定光の干渉光における光強度変化を表す電気信号)を出力する受光処理部20と、干渉計11における移動鏡115の位置を検出する位置検出処理部30と、制御演算部41と、入力部42と、出力部43と、筐体1とを備えている。
筐体1は、これら測定光光源51、干渉計11、受光処理部20、位置検出処理部30、制御演算部41、入力部42および出力部43を収容する箱体であり、その一面には、試料SMを載置するための試料台1bが形成されている。試料台1bには、被測定光を入射させるための入射開口1aとして貫通開口が形成されている。そして、このFT型分光計Dは、その波長校正を行うために用いられるフーリエ変換型分光計用アタッチメント(以下、「アタッチメント」と略記する。)ATをさらに備えている。このアタッチメントATは、波長校正を行う場合、試料台1bに配置されて用いられる。
測定光光源51は、測定光を放射してこの測定光を45:0度のジオメトリで試料SMへ照射する光源装置である。測定光は、予め設定された所定の波長帯で連続スペクトルを持つ光である。測定光は、測定の際には、試料SMを測定するために用いられ、波長校正の際には、1または複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ輝線光に重畳されるバイアス光として用いられる。このように、本実施形態では、測定光光源51は、バイアス光を放射するバイアス光光源としても用いられる。このような測定光光源51には、本実施形態では、例えばハロゲンランプが用いられる。
試料SMを測定する場合には、入射開口1aを覆うように試料台1bに試料SMが配置され、入射開口1aに臨む試料SMの表面が測定面SFとなる。そして、測定光光源51から照射された測定光は、45度の入射角で試料SMに入射し、試料SMで反射され、この反射された測定光の反射光は、0度の方向から測定される。すなわち、入射開口1aの開口面における法線方向(0度)に反射した反射光の成分が被測定光として干渉計11に入射される。このように本実施形態のFT型分光計Dは、試料SMで反射した測定光の反射光を被測定光とする反射型である。
なお、この例では、被測定光は、試料SMで反射した測定光の反射光であるが、測定光を照射することによって試料SMから再放射(例えば蛍光発光等)される光であってもよく、また、測定光が照射されることなく、試料SMで自発光した光であってもよい。よく、また、他の光源から放射された光が照射され、前記光を反射、透過または再放射(例えば蛍光発光等)することによって光を放射するものであってもよい。反射型のFT型分光計Dは、反射光だけでなく、このような再放射の光や、自発光の光も測定可能である。
一方、波長校正を行う場合には、入射開口1aを覆うように試料台1bにアタッチメントATが配置される。このアタッチメントATは、例えば、図3に示すように、輝線光光源61と、この輝線光光源61を収容する筐体62とを備える第1態様のアタッチメントATaである。
輝線光光源61は、波長の既知な1または複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ輝線光を放射する光源装置である。輝線光光源61は、本実施形態では、キセノンランプであり、好ましくは、複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ光を、比較的、安定的に再現性良く放射することができることから、封入されているガス圧が比較的低い低圧キセノンランプである。より具体的には、本実施形態では、輝線光光源61は、ペン型低圧キセノンランプである。この低圧キセノンランプの輝線スペクトルが図4に示されている。図4には、波数4000(cm−1)から波数8400(cm−1)までの間に、キセノン(Xe)の輝線として、11個の輝線が示されている。
筐体62は、略直方体形状の箱体であり、一方主面には、輝線光光源61が嵌り込む収容凹部621が形成されている。この収容凹部621に輝線光光源61としての前記ペン型低圧キセノンランプ61が嵌り込んで配設されることで、ペン型低圧キセノンランプ61が筐体62に収納され、収容凹部621の開口622が、ペン型低圧キセノンランプ61から放射される輝線光を外部へ照射するための照射開口622となっている。そして、この照射開口622が形成されている筐体62の前記一方主面には、少なくとも照射開口622に隣接する領域の表面に、バイアス光に含まれる波長帯域の光を反射する反射領域623が形成されている。この反射領域623は、FT型分光計Dに備えられている測定光光源51から放射される測定光をバイアス光として用いるために、輝線光の照射方向に合わせて測定光を反射するための領域である。反射領域623は、例えば、照射開口622の一方側に形成されてもよく、また例えば、照射開口622の両側に形成されてもよく、また例えば、前記一方主面の全面が反射領域623とされてもよい。なお、照射開口622には、例えば防塵のために、カバーガラスが配置されてもよい。
このような構成の第1態様のアタッチメントATaでは、波長校正のために試料台1bに配置されている場合に、輝線光光源61から放射された輝線光OP3は、照射開口622を介して入射開口1aに入射し、干渉計11に入射する。また、FT型分光計Dの測定光光源51から放射された測定光OP1は、反射領域623で反射することによってバイアス光OP2として輝線光の照射方向に合わせて入射開口1aに入射し、干渉計11に入射する。そして、輝線光OP3とバイアス光OP2とを被測定光として干渉計11に入射させる場合には、輝線光光源61と測定光光源51とが同時に点灯され、バイアス光OP2のみを被測定光として干渉計11に入射させる場合には、輝線光光源61が消灯されるとともに測定光光源51が点灯される。
図1に戻って、干渉計11は、被測定光が入射され、この入射された被測定光を2個の第1および第2被測定光に分岐し、これら分岐した第1および第2被測定光のそれぞれを、互いに異なる2個の経路である第1および第2光路のそれぞれに進行(伝播)させ、再び合流させるものであり、この分岐点(分岐位置)から合流点(合流位置、干渉位置)までの間に第1および第2光路間に光路差があると、前記合流の際に位相差が生じているため、前記合流によって干渉縞を生じるものである。干渉計11は、例えばマッハツェンダー干渉計等の種々のタイプの第1および第2光路を備える干渉計を利用することができるが、本実施形態では、図2に示すように、マイケルソン干渉計によって構成されている。
より具体的には、図2に示すように、干渉計11は、複数の光学素子として半透鏡(ハーフミラー)112、固定鏡114、および、光反射面が光軸方向に移動する移動鏡115を備え、固定鏡114と移動鏡115とは、各鏡面の各法線が互いに直交するようにそれぞれ配置され、半透鏡112は、その法線が前記固定鏡114および移動鏡115における各法線の直交点を通り、これら各法線に対し45度の角度で交差するように配置される。この干渉計11において、干渉計11に入射された被測定光は、半透鏡112で2個の第1および第2被測定光に分岐する。この分岐した一方の第1被測定光は、半透鏡112で反射されて固定鏡114に入射する。この第1被測定光は、固定鏡114で反射し、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。一方、この分岐した他方の第2被測定光は、半透鏡112を通過して移動鏡115に入射する。この第2被測定光は、移動鏡115で反射し、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。これら固定鏡114で反射された第1被測定光および移動鏡115で反射された第2被測定光は、半透鏡112で互いに合流して干渉する。このような構成のマイケルソン干渉計11では、被測定光は、移動鏡115の鏡面における法線方向に沿って干渉計11へ入射され、被測定光の干渉光は、固定鏡114の鏡面における法線方向に沿って干渉計11から射出される。
そして、本実施形態では、干渉計11は、被測定光を半透鏡112で2個の第1および第2被測定光に分岐する場合において、半透鏡112で反射した半透鏡112の反射側に配置される位相補償板113をさらに備えている。すなわち、本実施形態では、半透鏡112で反射した第1被測定光は、位相補償板113を介して固定鏡114へ入射され、固定鏡114で反射された第1被測定光は、位相補償板113を介して再び半透鏡112へ入射される。位相補償板113は、第1被測定光の半透鏡112の透過回数と第2被測定光の半透鏡112の透過回数の相違から生じる第1被測定光と第2被測定光との位相差を無くして前記位相差を補償するものである。
したがって、本実施形態では、第1被測定光は、このような被測定光の入射位置から、半透鏡112、位相補償板113、固定鏡114および位相補償板113をこの順に介して半透鏡112に再び至る第1光路を辿る。第2被測定光は、このような被測定光の入射位置から、半透鏡112および移動鏡115をこの順に介して半透鏡112に再び至る第2光路を辿る。
この位相補償板113を備えることによって、FT型分光計Dの干渉計11は、移動鏡115によって生じる光路差に起因する干渉縞を生じる。
また、本実施形態では、移動鏡115には、光路差形成光学素子の一例であり、共振振動を用いることによって2個の第1および第2光路間に光路差を生じさせる光学素子である。移動鏡115は、被測定光のインターフェログラムを複数生成するために、光軸方向に2回以上往復する。このような移動鏡115として、例えば、特開2011−80854号公報や特開2012−42257号公報に開示の光反射機構が挙げられる。この光反射機構は、互いに対向して配置される第1および第2の板ばね部と、前記第1および第2の板ばね部の間で互いに離間して配置され、それぞれが前記第1および第2の板ばね部と連結される第1および第2の支持体と、前記第1および第2の板ばね部の前記対向方向に、前記第1の支持体に対して前記第2の支持体を平行移動させる駆動部とを備えている。そして、この光反射機構では、前記第2の支持体の前記移動方向において、前記第1および第2の支持体の厚さは、前記第1および第2の板ばね部よりも厚く、前記第2の支持体における前記移動方向に垂直な一端面に、反射膜が形成されており、前記第2の支持体は、前記反射膜が露出するように前記第1および第2の板ばね部と連結されている。このような光反射機構は、共振振動によって前記反射膜を往復移動させるものであり、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって製造される。
ここで、移動鏡115の絶対位置を検出することができる場合には、積算インターフェログラムを求める際にセンターバースト位置は、必要とされないが、このような共振を利用する移動鏡115の場合には、積算インターフェログラムを求める際に、各測定で得られる各インターフェログラムを重ね合わせる積算の基準位置としてセンターバースト位置は、必要とされる。なお、移動鏡115の絶対位置の検出では、例えば試料SMの位置変動による検出誤差が含まれ、高精度に検出することが難しいが、センターバースト位置の検出には、このような点で優位性がある。
さらに、本実施形態では、被測定光を平行光で半透鏡112へ入射させるために、試料面SFと半透鏡112との間の適宜な位置に、入射光学系として例えばコリメータレンズ111が配置され、半透鏡112で第1および第2被測定光を合流して干渉させることによって生じた被測定光の干渉光を集光して第1受光部21へ入射させるために、半透鏡112と第1受光部21との間の適宜な位置に、射出光学系として例えば集光レンズ116がさらに配置されている。
図1に戻って、受光処理部20は、例えば、第1受光部21と、増幅部22と、アナログ−ディジタル変換部(以下、「AD変換部」と呼称する。)23とを備えている。第1受光部21は、干渉計11で得られた被測定光の干渉光を受光して光電変換することによって、被測定光の干渉光における光強度に応じた電気信号を出力する回路である。本実施形態のFT型分光計Dは、例えば、波長800nm以上の近赤外域の光、より具体的には、波長1200nm以上から2500nm以下までの近赤外域の光を測定対象とする仕様であるために、第1受光部21は、例えばInGaAsフォトダイオードおよびその周辺回路を備えて構成される赤外線センサ等である。増幅部22は、第1受光部21の出力を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器である。AD変換部23は、増幅部22の出力をアナログ信号からディジタル信号へ変換(AD変換)する回路である。このAD変換のタイミング(サンプリングタイミング)は、後述のゼロクロス検出部37から入力されたゼロクロスタイミングで実行される。
また、位置検出処理部30は、例えば、位置測定用光源31と、第2受光部36と、ゼロクロス検出部37とを備えている。そして、位置検出処理部30は、この位置測定用光源31から放射されたレーザ光の干渉光を干渉計11で得るために、図2に示すように、コリメータレンズ32と、光合波器33と、光分波器34と、集光レンズ35とをさらに備えている。
位置測定用光源31は、単色レーザ光を放射する光源装置である。図2において、コリメータレンズ32および光合波器33は、位置測定用光源31から放射されたレーザ光を平行光で干渉計11へ入射させるための入射光学系である。光合波器33は、例えばレーザ光を反射するとともに被測定光を透過するダイクロイックミラー等であり、その法線が移動鏡115の法線(光軸)に対し45度で交差するように、コリメータレンズ111と半透鏡112との間に配置される。コリメータレンズ32は、例えば両凸のレンズであり、このように配置された光合波器33に対し45度の入射角で位置測定用光源31から放射されたレーザ光が入射されるように、適宜な位置に配置される。そして、光分波器34および集光レンズ35は、干渉計11で生じた前記レーザ光の干渉光を干渉計11から取り出すための射出光学系である。光分波器34は、例えばレーザ光の干渉光を反射するとともに被測定光の干渉光を透過するダイクロイックミラー等であり、その法線が固定鏡114の法線(光軸)に対し45度で交差するように、半透鏡112と集光レンズ116との間に配置される。集光レンズ35は、例えば両凸のレンズであり、このように配置された光分波器34において45度の射出角で射出されるレーザ光の干渉光を集光して第2受光部36へ入射させる。
このようにコリメータレンズ32、光合波器33、光分波器34および集光レンズ35の各光学素子が配置されると、位置測定用光源31から放射された単色のレーザ光は、コリメータレンズ32で平行光とされ、その光路が光合波器33のダイクロイックミラー33で約90度曲げられて、干渉計11の光軸(移動鏡115の鏡面における法線方向)に沿って進行するようになる。したがって、このレーザ光は、被測定光と同様に、干渉計11内を進行し、干渉計11でその干渉光を生じさせる。そして、このレーザ光の干渉光は、光分波器34のダイクロイックミラー34で約90度曲げられて、干渉計11から外部に取り出され、集光レンズ35で集光されて第2受光部36で受光される。
図1に戻って、第2受光部36は、干渉計11で得られたレーザ光の干渉光を受光して光電変換することによって、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号を出力する回路である。第2受光部36は、例えばシリコンフォトダイオード(SPD)およびその周辺回路を備えて構成される受光センサ等である。第2受光部36は、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号をゼロクロス検出部37へ出力する。
ゼロクロス検出部37は、第2受光部36から入力された、レーザ光の干渉光の光強度に応じた電気信号がゼロとなるタイミング(ゼロクロスタイミング)を検出する回路である。ゼロクロスタイミングは、前記電気信号がゼロとなる時間軸上の位置である。干渉計11の移動鏡115が光軸方向に移動している場合に、半透鏡112から固定鏡114を介して再び半透鏡に戻ったレーザ光の位相に対し、半透鏡112から移動鏡115を介して再び半透鏡に戻ったレーザ光の位相がずれるので、レーザ光の干渉光は、その移動量に応じて正弦波状に強弱する。そして、干渉計11の移動鏡115がレーザ光の波長の1/2の長さだけ移動すると、半透鏡112から移動鏡115を介して再び半透鏡に戻ったレーザ光の位相は、この移動の前後において、2πずれる。このため、レーザ光の干渉光は、移動鏡115の移動に従って正弦波状に強弱を繰り返すことになる。ゼロクロス検出部37は、この正弦波状に強弱を繰り返す前記電気信号のゼロクロスを検出している。ゼロクロス検出部37は、この検出したゼロクロスのタイミングをAD変換部23へ出力し、AD変換部23は、このゼロクロスのタイミングで、第1受光部21から入力された、被測定光の干渉光の光強度に応じた電気信号をサンプリングしてAD変換する。
制御演算部41は、被測定光のスペクトルを求めるべく、FT型分光計Dの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するものである。制御演算部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えたマイクロコンピュータによって構成される。なお、制御演算部41は、AD変換部23から出力されるデータ等を記憶するために、例えばハードディスク等の比較的大容量の記憶装置をさらに備えてもよい。そして、制御演算部41には、プログラムを実行することによって、機能的に、サンプリングデータ記憶部411、センターバースト位置算出部412、インターフェログラム算出部413、スペクトル算出部414、波長校正部415および記憶部416が構成される。
サンプリングデータ記憶部411は、AD変換部23から出力された、被測定光の干渉光に関する測定データを記憶するものである。この測定データは、上述したように、被測定光の干渉光における光強度に応じた電気信号を、ゼロクロス検出部37で検出したゼロクロスのタイミングで、AD変換部23によってサンプリングすることによって得られる。より具体的には、サンプリングデータ記憶部411は、波長校正では、AD変換部23から出力された、波長校正用の光に対する干渉光に関する測定データを記憶し、サンプリングデータ記憶部411は、試料SMの測定では、AD変換部23から出力された、試料SMの光に対する干渉光に関する測定データを記憶する。波長校正用の光は、上述したように、被測定光としての輝線光およびバイアス光と、被測定光としての前記バイアス光のみとであり、また、試料SMの光は、上述したように、測定光の反射光、再放射光および自発光光である。
センターバースト位置算出部412は、サンプリングデータ記憶部411に記憶された測定データから、公知の常套手法によってセンターバーストの位置を求めるものである。より具体的には、センターバースト位置算出部412は、波長校正では、サンプリングデータ記憶部411に記憶された、波長校正用の光に対する干渉光に関する測定データからセンターバーストの位置を求め、センターバースト位置算出部412は、試料SMの測定では、サンプリングデータ記憶部411に記憶された、試料SMの光に対する干渉光に関する測定データからセンターバーストの位置を求める。
インターフェログラム算出部413は、被測定光を複数回測定することによって得られた複数のインターフェログラムを、センターバースト位置算出部412によって求められた各センターバースト位置で位置合わせを行いつつ、積算することによって積算インターフェログラムを求めるものである。より具体的には、インターフェログラム算出部413は、波長校正では、波長校正用の光を複数回測定することによって得られた、波長校正用の光に対する干渉光に関する複数のインターフェログラムを、センターバースト位置算出部412によって求められた各センターバースト位置で位置合わせを行いつつ、積算することによって積算インターフェログラム(波長校正用の積算インターフェログラム)を求め、インターフェログラム算出部413は、試料SMの測定では、試料SMの光を複数回測定することによって得られた、試料SMの光に対する干渉光に関する複数のインターフェログラムを、センターバースト位置算出部412によって求められた各センターバースト位置で位置合わせを行いつつ、積算することによって積算インターフェログラム(試料SMの積算インターフェログラム)を求める。
波長校正部415は、波長校正のための測定でインターフェログラム算出部413によって求められた波長校正用の積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって求められたフーリエ変換結果と実際の波長値とを対応付ける波長校正を行うものである。
記憶部416は、波長校正部415で求められた波長校正結果のデータを記憶するものである。波長校正部415は、求めた波長校正結果のデータを記憶部416に記憶させる。
スペクトル算出部414は、インターフェログラム算出部413でインターフェログラムを複数積算することによって得られた積算インターフェログラムをフーリエ変換することによってスペクトルを求めるものである。より具体的には、スペクトル算出部414は、波長校正では、波長校正のための測定でインターフェログラム算出部413によって求められた波長校正用の積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって、波長校正用の光におけるスペクトルを求め、また、スペクトル算出部414は、試料SMの測定では、波長校正部415によって求められ記憶部416に記憶されている波長校正結果に基づいて、試料SMの測定でインターフェログラム算出部413によって求められた試料SMの積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって試料SMの光におけるスペクトルを求める。
ここで、前記波長校正部415は、本実施形態では、1または複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ輝線光および連続スペクトルを持つバイアス光を干渉計11に入射させることによってスペクトル算出部414で求められた第1スペクトルと、前記バイアス光を干渉計11に入射させることによってスペクトル算出部414で求められた第2スペクトルとの差分を求めることによって前記輝線光の前記輝線スペクトルを求め、この求めた前記輝線スペクトルに含まれる輝線ピークに基づいて、前記波長校正を行う。
入力部42は、例えば、波長校正を指示するコマンドや試料SMの測定開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば測定対象の試料SMにおける識別子の入力やフーリエ変換の際に用いられる窓関数の選択入力等のスペクトルを測定する上で必要な各種データをフーリエ変換型分光計Dに入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。出力部43は、入力部42から入力されたコマンドやデータ、および、FT型分光計Dによって測定された被測定光のスペクトルを出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
次に、本実施形態の動作について説明する。図5は、実施形態のフーリエ変換型分光計における波長校正の動作を示すフローチャートである。図6は、一例として、輝線光とバイアス光とを干渉計に入射した場合に観察されるインターフェログラムを示す図である。図7は、一例として、バイアス光を干渉計に入射した場合に観察されるインターフェログラムを示す図である。図6(A)および図7(A)は、全体を示す全体図であり、図6(B)および図7(B)は、センターバースト位置の付近部分を拡大した一部拡大図であり、そして、図6(C)および図7(C)は、センターバースト位置を除いた部分を拡大した一部拡大図である。これら各図の横軸は、時間(ゼロクロスのカウント値)であり、その縦軸は、強度(AD変換のカウント値)である。図8は、輝線スペクトルの算出方法を説明するための図である。
図5において、波長校正を行う場合には、まず、輝線光およびバイアス光に対する第1積算インターフェログラムが求められ(S11)、輝線光およびバイアス光に対する第1スペクトルが求められる(S12)。
より具体的には、アタッチメントATaにおける照射開口622の一部または全部および反射領域623の一部または全部が入射開口1aに同時に臨むように、試料台1bにアタッチメントATaが配置される。そして、アタッチメントATaの輝線光光源61が図略の点灯スイッチの操作等によって点灯される。そして、入力部42から波長校正の開始の指示が入力されると、FT型分光計Dにおける制御演算部41の波長校正部415は、バイアス光を放射するために、測定光光源51を点灯する。
これによって、輝線光光源61から放射された輝線光OP3は、照射開口622を介して入射開口1aに入射し、干渉計11に入射する。そして、測定光光源51から放射された測定光OP1は、反射領域623で反射することによってバイアス光OP2として輝線光の照射方向に合わせて入射開口1aに入射し、干渉計11に入射する。このように輝線光OP3およびバイアス光OP2(測定光OP1)が被測定光として干渉計11に入射される。
この干渉計11に入射された輝線光およびバイアス光の被測定光は、干渉計11で被測定光の干渉光となって第1受光部21で受光される。より具体的には、被測定光は、コリメータレンズ111で平行光とされ、光合波器33を介して半透鏡112で反射および透過することで第1および第2被測定光に分岐される。半透鏡112で反射することによって分岐した第1被測定光は、位相補償板113を介して固定鏡114へ入射し、固定鏡114で反射し、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。一方、半透鏡112を通過することによって分岐した第2被測定光は、移動鏡115へ入射し、移動鏡115で反射し、来た光路を逆に辿って再び半透鏡112に戻る。これら固定鏡114で反射された第1被測定光および移動鏡115で反射された第2被測定光は、半透鏡112で互いに合流して干渉する。この被測定光の干渉光は、干渉計11から第1受光部21へ射出される。第1受光部21は、この入射された被測定光の干渉光を光電変換し、前記被測定光の干渉光における光強度に応じた電気信号を増幅部22へ出力する。増幅部22は、所定の増幅率で前記被測定光の干渉光に応じた前記電気信号を増幅し、AD変換部23へ出力する。
一方、FT型分光計Dは、位置測定用光源31から放射された単色のレーザ光も取り込む。このレーザ光は、光合波器33を介して干渉計11に入射され、上述と同様に干渉計11で干渉し、レーザ光の干渉光となって光分波器34を介して第2受光部36で受光される。第2受光部36は、この入射されたレーザ光の干渉光を光電変換し、前記レーザ光の干渉光における光強度に応じた電気信号をゼロクロス検出部37へ出力する。ゼロクロス検出部37は、前記レーザ光の干渉光に応じた前記電気信号がゼロとなるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出し、このゼロクロスタイミングをサンプリングタイミング(AD変換タイミング)としてAD変換部23へ出力する。
このような被測定光およびレーザ光がそれぞれ干渉計11に取り込まれている間に、干渉計11の移動鏡115は、制御演算部41の制御に従って光軸方向に沿って移動される。
AD変換部23は、増幅部22から出力された、前記被測定光の干渉光における光強度に応じた電気信号を、ゼロクロス検出部37から入力されたゼロクロスタイミングでサンプリングしてアナログ信号からディジタル信号へAD変換し、このAD変換したディジタル信号の前記電気信号を制御演算部41へ出力する。
このように動作することによって、輝線光およびバイアス光のインターフェログラムにおける測定データがAD変換部23から制御演算部41へ出力され、サンプリングデータ記憶部411に記憶される。このように測定される、輝線光およびバイアス光のインターフェログラムの一例が図6に示されている。輝線光のみでは、輝線光のスペクトルが不連続スペクトルであるためセンターバーストが現れないが、輝線光に、連続スペクトルを持つバイアス光を重畳しているので、図6に示すように、このバイアス光によるセンターバーストが現れている。そして、SN比を改善し、良好な精度の結果を得るために、このような輝線光およびバイアス光のインターフェログラムが複数回、同様に、測定され、これら各インターフェログラムの各測定データがサンプリングデータ記憶部411に記憶される。
次に、センターバースト位置算出部412は、サンプリングデータ記憶部411に記憶された各インターフェログラムの各測定データのそれぞれについて、輝線光およびバイアス光のインターフェログラムにおけるセンターバーストの位置を求める。
次に、インターフェログラム算出部413は、複数回測定することによって得られた、輝線光およびバイアス光の複数のインターフェログラムを、センターバースト位置算出部412によって求められた各センターバースト位置で位置合わせを行いつつ、積算することによって、輝線光およびバイアス光に対する波長校正用の第1積算インターフェログラムを求める。
次に、スペクトル算出部414は、インターフェログラム算出部413によって求められた前記第1積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって、輝線光およびバイアス光の第1スペクトルを求める。
このスペクトルの算出について、より具体的に説明すると、まず、m回目の測定でのインターフェログラムFm(xi)は、光路差をxiとし、波数をνjとし、波数νjのスペクトル振幅をB(νj)とし、光路差0の位置をX0とし、波数νjの光路差0の位置における位相をφ(νj)とする場合に、式1で表される。なお、mは、m番目の測定による測定結果であることを表す。
したがって、積算インターフェログラムF(xi)は、式2で表される。
このように積算インターフェログラムがインターフェログラム算出部413で求められると、スペクトル算出部414は、積算インターフェログラムを例えば高速フーリエ変換(FFT)することによって被測定光のスペクトルを求める。
より具体的には、高速フーリエ変換する場合には、サイドローブの発生を低減するために、センターバーストの位置を中心に左右対称な窓関数Awindow(xi)が掛け合わされてから(式3)、高速フーリエ変換が行われ、被測定光のスペクトルの振幅|Bwindow(νj)|が求められる(式4)。
上記窓関数Awindow(xi)は、適宜な種々の関数を挙げることができるが、例えば、式5−1ないし式5−3で表される関数である。式5−1は、Hanning Window(ハニング窓)関数と呼ばれ、式5−2は、Hamming Window(ハミング窓)関数と呼ばれ、式5−3は、Blackman Window(ブラックマン窓)関数と呼ばれる。
上述のように、第1スペクトルが求められると、次に、バイアス光に対する第2積算インターフェログラムが求められ(S13)、バイアス光に対する第2スペクトルが求められる(S14)。
より具体的には、まず、アタッチメントATaの輝線光光源61が図略の点灯スイッチの操作等によって消灯される。ここで、アタッチメントATaは、そのまま試料台1bに配置される。なお、第1スペクトルを求めたか否かは、例えば、第1スペクトルを求めた旨を表すメッセージを出力部43に表示すればよい。
これによって、測定光光源51から放射された測定光OP1が反射領域623で反射することによって入射開口1aに入射したバイアス光OP2のみが、干渉計11に入射する。このようにバイアス光OP2(測定光OP1)のみが被測定光として干渉計11に入射される。
そして、この干渉計11に入射されたバイアス光のみの被測定光は、干渉計11で被測定光の干渉光となって第1受光部21で受光され、上述と略同様な動作によって、バイアス光のインターフェログラムにおける測定データがAD変換部23から制御演算部41へ出力され、サンプリングデータ記憶部411に記憶される。このように測定される、バイアス光のインターフェログラムの一例が図7に示されている。図7に示すように、バイアス光は、この連続スペクトルを持つので、バイアス光のインターフェログラムには、センターバーストが現れている。そして、SN比を改善し、良好な精度の結果を得るために、このようなバイアス光のインターフェログラムが複数回、同様に、測定され、これら各インターフェログラムの各測定データがサンプリングデータ記憶部411に記憶される。
次に、センターバースト位置算出部412は、サンプリングデータ記憶部411に記憶された各インターフェログラムの各測定データのそれぞれについて、バイアス光のインターフェログラムにおけるセンターバーストの位置を求める。
次に、インターフェログラム算出部413は、複数回測定することによって得られた、バイアス光の複数のインターフェログラムを、センターバースト位置算出部412によって求められた各センターバースト位置で位置合わせを行いつつ、積算することによって、バイアス光に対する波長校正用の第2積算インターフェログラムを求める。
次に、スペクトル算出部414は、インターフェログラム算出部413によって求められた前記第2積算インターフェログラムをフーリエ変換することによって、バイアス光の第2スペクトルを求める。
次に、波長校正部415は、第1および第2スペクトルから輝線光に対するスペクトルを求める(S15)。より具体的には、図8(A)に示すように、波長校正部415は、輝線光およびバイアス光に対する第1スペクトルから、バイアス光に対する第2スペクトルを差し引くことによって、輝線光に対するスペクトルを求める。このように第1スペクトルと第2スペクトルとの差分を求めることによって、前記第1スペクトルにおけるバイアス光に対する成分が除去され、輝線光に対するスペクトルが求められる。
そして、波長校正部415は、この輝線光に対するスペクトルから波長校正を行うための波長校正データを求める(S16)。
より具体的には、波長校正部415は、まず、輝線光に対するスペクトルから、輝線のピーク位置(ピーク波長、ピーク波数)を求める。この求める輝線のピーク位置は、1個であってもよいが、より高精度に波長校正を行うために、複数であることが好ましい。
このピーク位置は、第1および第2スペクトルの差分における輝線(極大値)の位置(波長、波数)そのものであってもよい。しかしながら、第1および第2スペクトルの差分における輝線(極大値)の前記位置が必ずしも真の位置であるとは限らないので、より高精度にピーク位置を検出するために、図8(B)に示すように、まず、前記輝線(極大値)が、単一の極大値を持ち上に凸なプロファイルを持つ関数、例えば、ガウス関数で近似され、この近似したガウス関数のピーク位置が、輝線のピーク位置とされる。なお、ガウス関数は、一般に、a×exp(−(x−b)2/(2c2))で表される(a,b,cは前記近似によって決定されるパラメータである)。
このように求めた輝線のピーク位置は、既知であるので、波長校正部415は、例えば、この求めた輝線のピーク位置をこの既知な値で値付けすることによって、波長校正を行う。また例えば、既に値付けされている場合には、波長校正部415は、この求めた輝線のピーク位置と既に値付けされている値とのずれを補償(解消)する補正データを求めることによって、波長校正を行う。例えば、Waと既に値付けされている値がWbと求められた場合には、補正データは、補正倍率として、Wa/Wbとなる。
なお、輝線のピーク位置が複数である場合には、複数の各輝線の各ピーク位置が既知ないずれの値に対応するか特定する必要がある。この場合には、例えば、輝線スペクトルの各輝線の間隔(波長間隔、波数間隔)には、例えば、図4から分かるように、所定のパターンが有るので、この求めた各輝線の各ピーク位置から求まる輝線間隔パターンと、既知な輝線スペクトルから求まる輝線間隔パターンとのパターンマッチングを行うことによって、この求めた各輝線の各ピーク位置が既知ないずれの値に対応するか特定することができる。また例えば、図4から分かるように、輝線スペクトルの各輝線の相対強度には、所定のパターンが有るので、この求めた各輝線の各ピーク強度から求まる輝線強度パターンと、既知な輝線スペクトルから求まる輝線強度パターンとのパターンマッチングを行うことによって、この求めた各輝線の各ピーク位置が既知ないずれの値に対応するか特定することができる。
また、複数の輝線のピーク位置が用いられる場合、所定の波長帯に生じる全ての輝線が用いられてもよいが、相対強度の比較的小さい輝線は、例えばノイズによって検出されない虞や、また例えばノイズによって発生したピークと誤認する虞があるので、相対強度の比較的大きな輝線が用いられることが好ましい。例えば、低圧キセノンランプの場合、相対強度の比較的大きな輝線として、波長1262.3391nm(波数7921.8017cm−1)、波長1365.7055nm(波数7322.2228cm−1)、波長1473.2806nm(波数6787.5733cm−1)、波長1541.8394nm(波数6485.7598cm−1)および波長2026.2242nm(波数4935.2880cm−1)の各輝線が挙げられる。
そして、波長校正部415は、試料SMのスペクトルを求める際にこの波長校正データを使用することができるように、この求めた波長校正データを記憶部416に記憶する。
このように動作することによって、本実施形態のFT型分光計Dおよびこれに実装されたFT型分光方法は、波長校正を行うことができる。そして、本実施形態のFT変換型分光計DおよびFT型分光方法は、波長校正を行うための基準光として、物理的に波長が決まり単一波長の輝線を用いるので、その再現性が非常に高くそして半値幅が極めて狭いから、従来より高精度に波長校正を行うことができる。そして、このような本実施形態のFT型分光計DおよびFT型分光方法は、干渉計11の光路差形成光学素子として、いわゆる反射鏡を光軸方向に往復振動させる往復振動型の移動鏡115が用いられる場合でも、バイアス光によってセンターバースト位置が検出可能であるから、積算インターフェログラムを適切に求めることができ、したがって、輝線を用いた波長校正が可能となる。
ここで、上述の特許文献1に開示の技術と比較すると、特許文献1では、前記狭帯域化にファブリペローエタロンフィルタを用いているため、その対向した反射面間の干渉効果により特定の波長の光を強めてその特定の波長の光を透過させるという原理から、高精度な研磨技術、コーティング技術、干渉間距離の調整技術および平行度調整技術等が必要となり、その製作難易度が高い。そして、ファブリペローエタロンフィルタは、入射角に応じて透過波長が大きく変化してしまうため、波長校正対象の分光計に所望の透過波長の光を入射させるためには、前記分光計にファブリペローエタロンフィルタを組み込む際に、高度な組み込み調整技術も必要となる。さらに、ファブリペローエタロンフィルタは、温度変化による光路長変化や圧力変化による屈折率変化によって、透過波長が変化するため、使用環境も考慮する必要がある。しかしながら、本実施形態のFT型分光計Dは、輝線光光源61、より具体的には例えば低圧キセノンランプを用い、輝線光光源61から放射される輝線光を用いているので、このような技術を特に必要としていない。
一方、上述の特許文献2に開示の技術と比較すると、特許文献2では、標準化液体が用いられており、この標準化液体の吸収ピークは、温度変化によって変化してしまうため、使用環境を考慮する必要がある。しかしながら、本実施形態のFT型分光計Dは、輝線光光源61から放射される輝線光を用いているので、輝線の生成メカニズムから使用環境によって輝線の波長が変化することはなく、このような使用環境の変化を特に考慮する必要がない。
また、本実施形態のFT型分光計Dは、測定光光源51が測定光およびバイアス光を放射する光源として兼用されるので、別途にバイアス光を放射するバイアス光光源を必要とせず、小型化とコストダウンとを図ることができる。
また、本実施形態のFT型分光計Dでは、第1態様のアタッチメントATaを備えるので、照射開口622と反射領域623とが互いに隣接して配置されているから、照射開口622と反射領域623とが同時に入射開口1aに臨むように、アタッチメントATaをFT型分光計Dに取り付けることが可能となる。このため、このようなFT型分光計DおよびアタッチメントATaは、FT型分光計Dの測定光光源51から放射される測定光をバイアス光として干渉計11に入射させることができるとともに、輝線光光源61から放射される輝線光を干渉計11に入射させることができる。そして、このようなFT型分光計DおよびアタッチメントATaは、そのアタッチメントATaの取り付け位置を調整することによって、入射開口1aに臨む照射開口622の開口面積と入射開口1aに臨む反射領域623の反射面積との比を調整することができ、入射開口1aから干渉計11に入射される輝線光の光量と入射開口1aから干渉計11に入射されるバイアス光の光量との比を調整することができる。このため、このようなFT型分光計DおよびアタッチメントATaは、輝線光にバイアス光を重畳する場合でも、センターバースト位置を検出しつつ輝線を検出可能なインターフェログラムを得ることが可能となる。なお、干渉計11に入射される輝線光の光量とバイアス光の光量との前記比を調整するために、前記位置調整に代え、または前記位置調整と合わせて、反射領域623の表面処理や材質等が適宜に選択されてよい。
図9は、第2態様のアタッチメントの構成を示す断面図である。図10は、第3態様のアタッチメントの構成を示す断面図である。
なお、上述の実施形態では、図3に示す第1態様のアタッチメントATaが用いられたが、アタッチメントATは、これに限定されるものではなく、他の態様も可能である。
第2態様のアタッチメントATbは、FT型分光計Dを波長校正する際に、所定光を入射させるための入射開口1aを形成した試料台1bに配置されて用いられる装置である。第1態様のアタッチメントATaは、輝線光光源61を収容する筐体62の一方主面に反射領域623を設けたが、第2態様のアタッチメントATbは、輝線光光源を収容する筐体とは別体に、バイアス光として測定光を反射する反射領域を備える反射部材を設けたものである。このような第2態様のアタッチメントATbは、例えば、図9に示すように、輝線光光源71と、筐体72と、反射部材74とを備え、さらに、図9に示す例では、輝線光光源71から放射された輝線光を集光する集光光学系73を備えている。
輝線光光源71は、輝線光光源61と同様であり、波長の既知な1または複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ輝線光を放射する光源装置である。輝線光光源71は、本実施形態では、例えば、輝線光光源61と同様に、ペン型低圧キセノンランプである。
筐体72は、輝線光光源71および集光光学系73を収容する略直方体形状の箱体である。筐体72の内部には、輝線光光源71が嵌り込む収容凹部721が形成されている。この収容凹部721に輝線光光源71としての前記ペン型低圧キセノンランプ71が嵌り込んで配設されることで、ペン型低圧キセノンランプ71が筐体72に収納される。筐体72の一方主面には、収容凹部721の開口に臨むように(収容凹部721の開口位置と一致するように)、ペン型低圧キセノンランプ71から放射される輝線光を外部へ照射するための照射開口722が形成されている。そして、筐体72内に形成される、ペン型低圧キセノンランプ71と照射開口722との間の空間723には、適宜な位置に、集光光学系73が配置されている。この集光光学系73は、例えば両凸の正レンズ等の1または複数のレンズを備えている。
反射部材74は、FT型分光計Dに備えられている測定光光源から放射される測定光をバイアス光として用いるために、輝線光の照射方向に合わせて測定光を反射するための部材である。反射部材74は、輝線光を透過させるための貫通開口741と、少なくとも貫通開口741に隣接する領域の表面に形成され、バイアス光に含まれる波長帯域の光を反射する反射領域742とを備える。反射領域742は、例えば、貫通開口741の一方側に形成されてもよく、また例えば、貫通開口741の両側に形成されてもよく、また例えば、前記一方主面の全面が反射領域742とされてもよい。反射部材74は、筐体72と、FT型分光計Dにおける入射開口1aを形成した試料台1bとの間に、筐体72の照射開口722と貫通開口741とが一部または全部で一致するように、配置される。このように配置されることによって、輝線光光源71から放射された輝線光は、集光光学系73、照射開口722および貫通開口741を介して入射開口1aに入射され、そして、反射領域742によって、FT型分光計Dに備えられている測定光光源から放射される測定光をバイアス光として、輝線光の照射方向に合わせて測定光を反射し、バイアス光としての測定光が入射開口1aに入射される。
なお、照射開口722および/または貫通開口741には、例えば防塵のために、カバーガラスが配置されてもよい。ここで、Aおよび/またはBは、AおよびBのうちの少なくとも一方を意味する。
このような構成の第2態様のアタッチメントATbでは、輝線光光源71から放射された輝線光は、集光光学系73、照射開口722および貫通開口741を介して入射開口1aに入射するとともに、FT型分光計Dの測定光光源から放射された測定光OP1は、反射領域742で反射することによってバイアス光OP2として輝線光の照射方向に合わせて入射開口1aに入射する。
したがって、このような第2態様のアタッチメントATbを備えるFT型分光計Dでは、貫通開口741と反射領域742とが互いに隣接して配置されているので、貫通開口741と反射領域742とが同時に入射開口1aに臨むように、アタッチメントATbをFT型分光計Dに取り付けることが可能となる。このため、このようなFT型分光計DおよびアタッチメントATbは、照射開口722を介して射出された輝線光を貫通開口741に入射させることで、FT型分光計Dの測定光光源から放射される測定光をバイアス光として干渉計11に入射させることができるとともに、輝線光光源71から放射される輝線光を干渉計11に入射させることができる。そして、このようなFT型分光計DおよびアタッチメントATbは、そのアタッチメントATbの反射部材74の取り付け位置を調整することによって、入射開口1aに臨む貫通開口741の開口面積と入射開口1aに臨む反射領域742の反射面積との比を調整することができ、入射開口1aから干渉計11に入射される輝線光の光量と入射開口1aから干渉計11に入射されるバイアス光の光量との比を調整することができる。このため、このような構成のFT型分光計およびアタッチメントATbは、輝線光にバイアス光を重畳する場合でも、センターバーストを検出しつつ輝線を検出可能なインターフェログラムを得ることが可能となる。
そして、第2態様のアタッチメントATbは、集光光学系73を備えるので、より多くの光量の輝線光を干渉計11へ入射させることができ、SN比の向上を図ることが可能となる。
また、第3態様のアタッチメントATcは、FT型分光計Dを波長校正する際に、所定光を入射させるための入射開口1aを形成した試料台1bに配置されて用いられる装置である。第1および第2態様のアタッチメントATa、ATbは、FT型分光計Dの測定光をバイアス光としても用いたが、第3態様のアタッチメントATcは、輝線光光源だけでなくバイアス光を放射するバイアス光光源も備えるものである。このような第3態様のアタッチメントATcは、例えば、図10に示すように、輝線光光源81と、バイアス光光源82と、重畳光学系83と、筐体84とを備えている。
輝線光光源81は、輝線光光源61と同様であり、波長の既知な1または複数の輝線を含む輝線スペクトルを持つ輝線光を放射する光源装置である。輝線光光源81は、本実施形態では、例えば、輝線光光源61と同様に、ペン型低圧キセノンランプである。
バイアス光光源82は、連続スペクトルを持つバイアス光を放射する光源装置である。バイアス光光源82には、バイアス光として用いられる波長帯の光を放射する適宜なランプが用いられ、例えば、本実施形態では、ハロゲンランプが用いられる。
重畳光学系83は、輝線光光源81から放射される輝線光と、バイアス光光源82から放射されるバイアス光とを互いに重畳するための光学系である。本実施形態では、輝線光光源81とバイアス光光源82とは、各光軸が互いに直交するように、筐体84内にそれぞれ配置されており、このため、重畳光学系83には、例えば、前記各光軸が直交するように交差する位置に、輝線光およびバイアス光がそれぞれ45度の入射角で入射するように配置された半透鏡(ハーフミラー)83である。
筐体84は、輝線光光源81、バイアス光光源82および重畳光学系83を収容する略直方体形状の箱体である。筐体84の一方主面には、重畳光学系83で重畳された、輝線光光源81から放射される輝線光およびバイアス光光源82から放射されるバイアス光を外部へ照射するための照射開口841が形成されている。
このような第3態様のアタッチメントATcでは、輝線光光源81から放射された輝線光OP3は、半透鏡83を透過し、照射開口722を介して入射開口1aに入射するとともに、バイアス光光源82から放射されたバイアス光OP2は、半透鏡83で反射することによってその光路が輝線光OP3の照射方向に折り曲げられ、輝線光OP3の照射方向に合わせて照射開口722を介して入射開口1aに入射する。
このような第3態様のアタッチメントATcは、外付けで、輝線光光源81とバイアス光光源82とを提供することができる。したがって、FT型分光計が測定光光源を備えない場合でも、波長校正を行うことができ、一方、FT型分光計が測定光光源を備える場合には、輝線光の輝線スペクトルに対して好適な、測定光の連続スペクトルとは別の連続スペクトルを持つ光をバイアス光として用いることができる。例えば、バイアス光は、輝線光における輝線の位置(波長、波数)に相当する位置(波長、波数)の強度が比較的小さい連続スペクトルを持つことが好ましい。
なお、第1態様のアタッチメントTAaおよび第3態様のアタッチメントTAcも、図9に示す第2態様のアタッチメントATbと同様に、輝線光光源61としてのペン型低圧キセノンランプ61から照射開口622以前に配置され、ペン型低圧キセノンランプ61から放射された輝線光を集光する集光光学系をさらに備えてもよい。
また、上述では、FT型分光計Dは、測定対象の試料SMで反射した反射光のスペクトルを求める反射型であったが、測定対象の試料SMを透過した透過光のスペクトルを求める透過型であってもよい。このような透過型のFT型分光計では、測定光光源が入射開口に対向する位置に配置され、試料SMは、測定光光源と入射開口との間における試料台に配置される。このため、波長校正を行う場合に、試料SMに代えアタッチメントATが測定光光源と入射開口との間における前記試料台に配置されると、測定光光源からの測定光が入射開口に入射できない虞がある。このような場合でも図10に示す第3態様のアタッチメントATcは、バイアス光光源82を備えるので、波長校正を行うことができ、透過型のFT型分光計に対し、好適である。
また、上述では、FT型分光計Dは、輝線光光源61、71、81がアタッチメントATa、ATb、ATc内に設けられたが、FT型分光計Dの筐体1内に設けられてもよい。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。