JP2009222690A - 分光測定器及び分光測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 測定データから迷光を取り除くことが可能な安価な分光測定器及び分光測定方法を提供する。
【解決手段】 グレーティング2で分光された被測定光が入射する検出素子3の検出結果から分光放射照度を演算処理部6が求める。検出素子3への光路上に配置された第一第二のフィルタ71,72は分光透過特性が同じであり、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する。両方のフィルタ71,72を光路上に配置しない状態で測定した分光放射照度をA(Δλ)、第一のフィルタ71のみを配置した状態で測定した分光放射照度をB(Δλ)、第一第二のフィルタ71,72を配置した状態で測定した分光放射照度をC(Δλ)としたとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を、迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する。
【選択図】 図1
【解決手段】 グレーティング2で分光された被測定光が入射する検出素子3の検出結果から分光放射照度を演算処理部6が求める。検出素子3への光路上に配置された第一第二のフィルタ71,72は分光透過特性が同じであり、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する。両方のフィルタ71,72を光路上に配置しない状態で測定した分光放射照度をA(Δλ)、第一のフィルタ71のみを配置した状態で測定した分光放射照度をB(Δλ)、第一第二のフィルタ71,72を配置した状態で測定した分光放射照度をC(Δλ)としたとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を、迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する。
【選択図】 図1
Description
本願の発明は、分光測定の技術に関するものである。
波長毎の光の強さを測定する分光測定器は、産業の各分野で盛んに使用されている。例えば、吸光度等を利用した試料の組成分析に分光測定器が多く使用されている。図7は、一般的な分光測定器の構成の一例を模式的に示した図である。
分光測定器は、入射スリット1と、入射スリット1を通過した被測定光が入射する分散素子としてのグレーティング(回折格子)2と、グレーティング2で分光された光が入射する検出素子3と、光学系4,5等から構成されている。グレーティング2は、光軸に垂直な軸の周りに回転可能となっており、グレーティング2を回転させ、光軸に対する角度を選択することで任意の波長の光のみを検出素子3に入射させることができる。グレーティング2の角度を順次変えながら検出素子3で強度を検出することで、被測定光の分光放射照度の分布を測定することができる。
特開2000−55733号公報
分光測定器は、入射スリット1と、入射スリット1を通過した被測定光が入射する分散素子としてのグレーティング(回折格子)2と、グレーティング2で分光された光が入射する検出素子3と、光学系4,5等から構成されている。グレーティング2は、光軸に垂直な軸の周りに回転可能となっており、グレーティング2を回転させ、光軸に対する角度を選択することで任意の波長の光のみを検出素子3に入射させることができる。グレーティング2の角度を順次変えながら検出素子3で強度を検出することで、被測定光の分光放射照度の分布を測定することができる。
このような分光測定器では、迷光の存在が測定データの信頼性を低下させる問題がある。即ち、図7において、例えば検出素子3に波長λxの光が入射するようにグレーティング2の設定したとする。この場合、本来は波長λxの光のみが検出素子3に入射する筈であるが、波長λx以外の波長λyの光が検出素子3に入射してしまう。このような本来入射してはいけない波長の光を、本明細書では「迷光」と総称する。
例えば太陽光の分光放射照度の測定において、紫外域の光を測定するため、その角度にグレーティング2を設定した際に、本来は微弱な信号しか得られない筈なのに、かなり大きな信号が検出素子3から出力される。これは、可視域の光が迷光となって検出素子3に入射してしまい、検出信号に含まれてしまうためである。
例えば太陽光の分光放射照度の測定において、紫外域の光を測定するため、その角度にグレーティング2を設定した際に、本来は微弱な信号しか得られない筈なのに、かなり大きな信号が検出素子3から出力される。これは、可視域の光が迷光となって検出素子3に入射してしまい、検出信号に含まれてしまうためである。
このような迷光の発生の原因としては、幾つか考えられるが、例えばグレーティング2の性能の限界からくるものが考えられる。グレーティング2の各溝の表面は完全な平坦面とすることは不可能であり、わずかな乱反射や散乱等が生じていると考えられる。また、各溝の境界部分(山又は谷のエッジ部分)でもわずかな光の乱反射や散乱が生じていると推測され、これらが迷光の要因となると考えられる。
いずれにしても、このような迷光により、本来到達してはいけない波長の光が検出素子3に到達してしまい、それが測定データに含まれて誤差となってしまっている。従来の分光測定器では、どのような迷光がどの程度含まれるか予測することが困難であり、このため、測定データの信頼性を損ねる結果となっている。
グレーティングを二基搭載した分光測定器(ダブルモノクロメータ)によれば、二度分光を行うため、迷光の影響を小さく抑え込むことが可能である。しかしながら、高価な測定器となってしまう問題がある。
本願の発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、測定データから迷光を取り除くことが可能な安価な分光測定器及び分光測定方法を提供することを課題としている。
グレーティングを二基搭載した分光測定器(ダブルモノクロメータ)によれば、二度分光を行うため、迷光の影響を小さく抑え込むことが可能である。しかしながら、高価な測定器となってしまう問題がある。
本願の発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、測定データから迷光を取り除くことが可能な安価な分光測定器及び分光測定方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、被測定光を分光する分光素子と、分光素子で分光された被測定光が入射する検出素子と、検出素子の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める演算処理部とを備えた分光測定器であって、
検出素子への光路上には、第一第二の二つのフィルタ又はフィルタ群が配置可能となっており、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
この第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、光路上に位置する遮断状態と光路上から退避した非遮断状態とを取り得るものであり、
前記演算処理部は、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が非遮断状態である際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、
第一のフィルタ又はフィルタ群は遮断状態とし、第二のフィルタ又はフィルタ群は非遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としたとき、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)
で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群には、フィルタ駆動器が設けられており、このフィルタ駆動器は、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第一状態と、第一のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とし第二のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第二状態と、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とする第三状態とすることが可能なものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、前記分光素子の入射側の光路上に配置されるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記検出素子は、多数の光電変換部が並べられたリニアアレイセンサであり、分光素子を回転させることなく一回の測定で多波長域の測定が行えるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、被測定光を分光素子で分光し、分光された被測定光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める分光測定方法であって、
迷光を含むと予想される被測定光である迷光含有被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、太陽光又は太陽にスペクトルを近似させた光源からの光である被測定光を分光素子で分光し、分光された太陽光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から分光放射照度を求める分光測定方法であって、
被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、カット波長より短い波長域を遮断するカットフィルタであって、カット波長より短い波長域は、可視域の光の分光放射照度に比べて1/100以下又は1/1000以下の分光放射照度となることが予想される波長域であり、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を、迷光分が除去された、カット波長より短い波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えているという構成を有する。
検出素子への光路上には、第一第二の二つのフィルタ又はフィルタ群が配置可能となっており、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
この第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、光路上に位置する遮断状態と光路上から退避した非遮断状態とを取り得るものであり、
前記演算処理部は、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が非遮断状態である際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、
第一のフィルタ又はフィルタ群は遮断状態とし、第二のフィルタ又はフィルタ群は非遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としたとき、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)
で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群には、フィルタ駆動器が設けられており、このフィルタ駆動器は、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第一状態と、第一のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とし第二のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第二状態と、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とする第三状態とすることが可能なものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、前記分光素子の入射側の光路上に配置されるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記検出素子は、多数の光電変換部が並べられたリニアアレイセンサであり、分光素子を回転させることなく一回の測定で多波長域の測定が行えるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、被測定光を分光素子で分光し、分光された被測定光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める分光測定方法であって、
迷光を含むと予想される被測定光である迷光含有被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、太陽光又は太陽にスペクトルを近似させた光源からの光である被測定光を分光素子で分光し、分光された太陽光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から分光放射照度を求める分光測定方法であって、
被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、カット波長より短い波長域を遮断するカットフィルタであって、カット波長より短い波長域は、可視域の光の分光放射照度に比べて1/100以下又は1/1000以下の分光放射照度となることが予想される波長域であり、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を、迷光分が除去された、カット波長より短い波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えているという構成を有する。
以下に説明する通り、本願の請求項1又は5記載の発明によれば、迷光分が除去された測定結果が得られるので、測定結果の信頼性が高くなる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、本実施形態の分光測定器は、フィルタ駆動部を有するので、上記二枚のフィルタの順次配置を手動で行う必要がない。したがって、使い勝手が良い。
また、請求項3記載の発明によれば、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、前記分光素子の入射側の光路上に配置されるので、迷光が分光素子から出て光路を大きく外れるような場合でも確実に効果を得ることができる。
また、請求項4記載の発明によれば、検出素子が多数の光電変換部が並べられたリニアアレイセンサであり、分光素子を回転させることなく一回の測定で多波長域の測定が行えるものであるので、迷光分の除去によるデータ信頼性向上の効果が著しい。
また、請求項6記載の発明によれば、太陽光の紫外域の分光放射照度の測定において迷光分が除去された信頼性の高い結果が得られるので、有害紫外線の測定等において大きな意義がもたらされる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、本実施形態の分光測定器は、フィルタ駆動部を有するので、上記二枚のフィルタの順次配置を手動で行う必要がない。したがって、使い勝手が良い。
また、請求項3記載の発明によれば、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、前記分光素子の入射側の光路上に配置されるので、迷光が分光素子から出て光路を大きく外れるような場合でも確実に効果を得ることができる。
また、請求項4記載の発明によれば、検出素子が多数の光電変換部が並べられたリニアアレイセンサであり、分光素子を回転させることなく一回の測定で多波長域の測定が行えるものであるので、迷光分の除去によるデータ信頼性向上の効果が著しい。
また、請求項6記載の発明によれば、太陽光の紫外域の分光放射照度の測定において迷光分が除去された信頼性の高い結果が得られるので、有害紫外線の測定等において大きな意義がもたらされる。
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る分光測定器の概略構成を示した図である。図1に示す分光測定器は、入射スリット1と、入射スリット1を通過した被測定光が入射する分光素子としてのグレーティング2と、グレーティング2で分光された光が入射する検出素子3と、第一第二の光学系4,5等から構成されている。
図1は、本願発明の実施形態に係る分光測定器の概略構成を示した図である。図1に示す分光測定器は、入射スリット1と、入射スリット1を通過した被測定光が入射する分光素子としてのグレーティング2と、グレーティング2で分光された光が入射する検出素子3と、第一第二の光学系4,5等から構成されている。
第一の光学系4は、入射スリット1の像をグレーティング2に投影するためのものである。第二の光学系5は、グレーティング2からの光を検出素子3に結像させるためのものである。第一第二の光学系4,5としては、チェルニー・ターナー型、エバート型、ファスティー・エバート型等、任意のものを採用し得る。特開2000−55733号公報所載の光学系を採用すると、収差が小さく分解能が高くなるので好適である。
分光測定器は、検出素子3の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める演算処理部6を備えている。演算処理部6は、検出素子3で得られた検出信号(被測定光を光電変換することで得られた信号)から分光放射照度を求めるものである。演算処理部6は、検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、検出信号を増幅する増幅回路、分光放射照度の絶対値を算出するための基準値を校正する校正回路、演算のためにデータを一時的に記憶する記憶回路(メモリ)等を含んでいる。
この分光測定器では、検出素子3の入射側において第一第二のフィルタ71,72を重ねて配置できるようになっている。第一第二のフィルタ71,72は、迷光分を除去した測定データを得るのに使用されるものである。第一第二のフィルタ71,72は、迷光分を除去する対象の波長域の光(以下、対象波長域)をカット(遮蔽)し、その他の波長域、特に迷光の波長域を透過する特性を有するものとされる。そして、第一第二のフィルタ71,72としては、同じ分光透過特性を有するものが使用される。第一第二のフィルタ71,72は、本実施形態では、入射スリット1と第一の光学系4との間の光路上に配置されるようになっている。
第一第二のフィルタ71,72には、フィルタ駆動部8が設けられている。フィルタ駆動部8は、第一第二のフィルタ71,72のそれぞれについて、光路上に位置して対象波長域を遮断する状態(以下、遮断状態)と、光路上から退避して対象波長域を遮断しない状態(以下、非遮断状態)とを取り得るようにするものである。フィルタ駆動部8は、それぞれのフィルタにソレノイド又はエアシリンダ等を使用した駆動機構を設けることで容易に構成できる。
第一第二のフィルタ71,72は、交換可能に設けられている。これは、後述するように、対象波長域が異なる別の測定を行う場合に交換する必要が生じるからである。
第一第二のフィルタ71,72は、交換可能に設けられている。これは、後述するように、対象波長域が異なる別の測定を行う場合に交換する必要が生じるからである。
検出素子33としては、本実施形態では、多数の光電変換部が一列に並べられたリニアアレイセンサが使用されている。各光電変換部は、各波長域の光を光電変換するフォトダイオード等である。
図1に示す分光測定器は、リニアアレイセンサより成る検出素子33を使用した、いわゆるマルチチャンネルタイプの測定器である。マルチチャンネルタイプでは、グレーティング2の角度を変える必要はなく、設定された角度に保持した状態の一回の測定で各波長域の光の強度を同時に測定することができる。
図1に示す分光測定器は、リニアアレイセンサより成る検出素子33を使用した、いわゆるマルチチャンネルタイプの測定器である。マルチチャンネルタイプでは、グレーティング2の角度を変える必要はなく、設定された角度に保持した状態の一回の測定で各波長域の光の強度を同時に測定することができる。
この他、分光測定器は、全体を制御するコントローラ9や、演算処理部6での処理結果を出力する出力インターフェース91等を備えている。出力インターフェース91は、測定結果を表示するディスプレイや測定結果を印刷するプリンタを測定器に接続するためのものである。また、分光測定器はパソコン等のコンピュータに接続される場合もあり、この場合は、出力インターフェース91は、USBのようなコンピュータ用のインターフェースとされる。
また、被測定光の取り込みには、光ファイバが使用されることもある。この場合には、入射スリット1の入射側に光ファイバが設けられた構成とされる。分光測定器は、各部を内部に納めた筐体を備える構成とされ、筐体に光ファイバの後端(出射端)が接続される構成とされる。光ファイバの先端は、被測定光の取り込み位置に配置される。
また、被測定光の取り込みには、光ファイバが使用されることもある。この場合には、入射スリット1の入射側に光ファイバが設けられた構成とされる。分光測定器は、各部を内部に納めた筐体を備える構成とされ、筐体に光ファイバの後端(出射端)が接続される構成とされる。光ファイバの先端は、被測定光の取り込み位置に配置される。
このような本実施形態の分光測定器は、第一第二の二つのフィルタ71,72を配置状態を順次変えた測定を行うことで、迷光分を除去した測定データを得ることが可能となっている。以下、この点について詳説する。以下の説明は、分光測定方法の発明の実施形態の説明でもある。
図2は、図1に示す第一第二のフィルタ71,72の分光透過特性の一例を示す図である。この例では、対象波長域は紫外域の光となっており、前述した例と同じように、太陽光の分光測定において、そこに含まれる紫外線の量を測定することが想定されている。
図2は、図1に示す第一第二のフィルタ71,72の分光透過特性の一例を示す図である。この例では、対象波長域は紫外域の光となっており、前述した例と同じように、太陽光の分光測定において、そこに含まれる紫外線の量を測定することが想定されている。
図2に示すように、第一第二のフィルタ71,72は、例えば300nm程度より短い波長の光をカット(遮断)するカットフィルタとなっている。尚、「カットする」とは、本実施形態では、実質的に透過率がゼロになるようにすることを意味している。このようなフィルタは、各光学部品メーカーから市販されているので、任意のものを選んで使用できる。尚、カットされる臨界の波長を、以下、カット波長とし、λcとする。
迷光を除去した測定を行う場合、コントローラ9は、フィルタ駆動部8に対して制御信号を送り、まず、第一フィルタ71も第二のフィルタ72も非遮蔽状態として測定が行われる(第一のステップ)。この測定は、従来の分光測定器における測定と同様であり、測定データには迷光分が含まれると予想される。
次に、コントローラ9は、フィルタ駆動部8に対して制御信号を送り、第一のフィルタ71のみ光路上に配置して遮蔽状態とし、この状態で測定を行わせる(第二のステップ)。この測定では、カット波長λcより短い波長の光を第一のフィルタ71が被測定光からカットするので、この波長域の光は検出素子3には入射しない。
次に、コントローラ9は、フィルタ駆動部8に対して制御信号を送り、第一のフィルタ71に加えて第二のフィルタ72を光路上に配置し、第一第二の二つのフィルタ71,72を遮蔽状態とした上で測定が行われる(第三のステップ)。
次に、コントローラ9は、フィルタ駆動部8に対して制御信号を送り、第一のフィルタ71のみ光路上に配置して遮蔽状態とし、この状態で測定を行わせる(第二のステップ)。この測定では、カット波長λcより短い波長の光を第一のフィルタ71が被測定光からカットするので、この波長域の光は検出素子3には入射しない。
次に、コントローラ9は、フィルタ駆動部8に対して制御信号を送り、第一のフィルタ71に加えて第二のフィルタ72を光路上に配置し、第一第二の二つのフィルタ71,72を遮蔽状態とした上で測定が行われる(第三のステップ)。
尚、第一〜第三のステップにおいて、検出素子3から出力されるデータ(検出結果)は、各波長域毎の分光放射照度I(λ)である。検出素子3内に増幅回路が設けられている場合もあり、検出結果は出力された時点で既に増幅されていることもある。検出結果における波長域の細かさ(分解能)は、グレーティング2の性能やリニアアレイセンサを構成する光電変換部の数等に依存する。
演算処理部3は、上記第一〜第三のステップにおいて、検出素子33の検出結果を増幅し、基準値と比較した上で各波長域毎の分光放射照度の絶対値を算出し、メモリに一時的に保存する。次に、演算処理部3は、これら記憶した値をさらに処理し、対象波長域について迷光量の分を除去した被測定光の分光放射照度を得る補正を行う。
演算処理部3は、上記第一〜第三のステップにおいて、検出素子33の検出結果を増幅し、基準値と比較した上で各波長域毎の分光放射照度の絶対値を算出し、メモリに一時的に保存する。次に、演算処理部3は、これら記憶した値をさらに処理し、対象波長域について迷光量の分を除去した被測定光の分光放射照度を得る補正を行う。
より具体的には、第一のステップで得られた分光放射照度のデータのうち、対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップで得られた分光放射照度のデータをB(Δλ)とし、第三のステップで得られた分光放射照度のデータをC(Δλ)とする。本実施形態では、Δλは、カット波長λcよりも短い波長域であって、測定器が測定可能な最も短い波長までの範囲の波長域である。
演算処理部6は、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C
で表現されるD(Δλ)を迷光分が除去された対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うようになっている。
演算処理部6は、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C
で表現されるD(Δλ)を迷光分が除去された対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うようになっている。
上記の点について、図3を使用してさらに詳しく説明する。図3は、図2に示す特性のフィルタ71,72を使用した迷光分の除去について模式的に示した図である。図3において、A(λ)は第一のステップで得られた分光放射照度を示し、B(λ)は第二のステップで得られた分光放射照度を示し、C(λ)は第三のステップで得られた分光放射照度を示す。また、D(λ)は、演算処理部6が補正した(迷光分を除去した)分光放射照度を示す。
図3に示すA(λ)は、全くフィルタを配置しないで得たデータであり、従来の分光測定器で得られるデータと同じである。測定者は、このデータを見て、紫外域の値が異常に大きいのに気づき、迷光分が含まれているのでないかと疑う。そして、第二のステップを行い、データB(λ)を得る。
図3に示すA(λ)は、全くフィルタを配置しないで得たデータであり、従来の分光測定器で得られるデータと同じである。測定者は、このデータを見て、紫外域の値が異常に大きいのに気づき、迷光分が含まれているのでないかと疑う。そして、第二のステップを行い、データB(λ)を得る。
この第二のステップでは、第一のフィルタ71によりカット波長λcより短い紫外域の光が光路から取り除かれている。したがって、この紫外域の値はゼロになる筈であるが、図3に示すように、値があるのが確認される。この値は、第一のフィルタ71により遮断されずにグレーティング2に達した可視域の光が受光素子3に入射して得られた値である。つまり、受光素子3において、カット波長λcより短い各波長域について設けられた光電変換部をT1〜Tmとし、カット波長λcより長い各波長域について設けられた光電変換部をTm+1〜Tnとしたとき、カット波長λcより長い可視域の光は、本来入射すべき筈のTm+1〜Tnの各光電変換部に入射してB(Δλm+1〜Δλn)の値を発生させるとともに、グレーティング2等において迷光となり、本来入射すべき光電変換部ではないT1〜Tmの部分に入射して、B(Δλ1〜Δλm)の値を発生させている。即ち、カット波長λcよりも短い領域におけるB(Δλ1〜Δλm)は、迷光によるものである。
したがって、基本的には、A(Δλ)においてB(Δλ)の値を引いておけば、迷光分を除去した測定結果を得ることができる。しかしながら、単純にA(Δλ)においてB(Δλ)を差し引いただけでは、正しい測定結果を得ることはできない。即ち、B(Δλ)の値は、第一のフィルタ71を透過した可視域の光によるものであるが、この光自体が第一のフィルタ71を通過する際に減衰してしまっているからである。したがって、第一のフィルタ71を挿入したことによる迷光量の減衰を知り、その分を嵩上げする必要がある。
このようなことから、第三のステップを行い、データC(λ)を得る。データC(λ)では、同じ特性の第二のフィルタ72を追加して光路に配置しているので、カット波長λcより高い波長の光は第一第二のフィルタ71,72を透過するものの、さらに減衰する。このため、カット波長λcより高い波長の光が迷光となることで生じたC(Δλ)も、B(Δλ)に比べて減衰する。このB(Δλ)からC(Δλ)への減衰分は、純粋に第二のフィルタ72が追加して光路に配置されことによる迷光の減衰分であり、その量は、第二のステップにおいて第一のフィルタ71を光路に配置した際に生じていた迷光の減衰分に等しい。したがって、B(Δλ)に対し、B(Δλ)/C(Δλ)を乗算することで、減衰してしまった迷光分を嵩上げし、本来生じていた迷光の分光放射照度とすることができる。
このようなことから、演算処理部6は、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)
を対象波長域の正しい分光放射照度であると補正するのである。このD(Δλ)を図3中に破線で示す。
尚、対象波長領域以外では(即ち、カット波長λcより高い波長域では)、A(λ)の値をそのまま使用しても良いし、すべての波長域において上記のように補正演算をしても良い。即ち、
D(λ)=A(λ)−B(λ)×B(λ)/C(λ)
とし、D(λ)を測定結果の分光放射照度としても良い。
上述した演算処理において、検出素子3からの検出結果をそのままメモリに記憶して補正を行っても良い。この場合、補正後の値について増幅及び基準値との比較を行って絶対値を算出することになる。
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)
を対象波長域の正しい分光放射照度であると補正するのである。このD(Δλ)を図3中に破線で示す。
尚、対象波長領域以外では(即ち、カット波長λcより高い波長域では)、A(λ)の値をそのまま使用しても良いし、すべての波長域において上記のように補正演算をしても良い。即ち、
D(λ)=A(λ)−B(λ)×B(λ)/C(λ)
とし、D(λ)を測定結果の分光放射照度としても良い。
上述した演算処理において、検出素子3からの検出結果をそのままメモリに記憶して補正を行っても良い。この場合、補正後の値について増幅及び基準値との比較を行って絶対値を算出することになる。
このように、本実施形態の分光測定器及び分光測定方法によれば、迷光分が除去された測定結果が得られるので、測定結果の信頼性が高くなる。また、二枚のフィルタ71,72を順次光路上に配置して測定するという簡単な方法によるものであって、ダブルモノクロメータ方式に比べると極めて安価な測定器となる。尚、本願発明は、二以上の分光素子を設けることを排除するものではない。二以上の分光素子を設けた構成においても、本願発明の構成を適用することでさらに迷光分が除去された測定が行えることになるので、好適である。
上述した迷光分の除去によるデータ信頼性向上の効果は、本実施形態のようなリニアアレイセンサを使用したマルチチャンネルタイプの分光測定器の場合に特に顕著である。即ち、迷光分が含まれることによるデータの信頼性低下は、マルチチャンネルタイプの分光測定器の場合に著しい。グレーティングを回転させるタイプの分光測定器(以下、シングルチャンネルタイプと呼ぶ)では、検出素子は分解能に応じた狭い波長域の光のみを受光するものである。つまり、リニアアレイセンサを構成する多数の光電変換部のうちの一つののみを検出素子として使用した構成に相当している。したがって、迷光が入射してしまう確率や全体の入射量も、シングルチャンネルタイプでは格段に少ない。一方、マルチチャンネルタイプでは、一回の測定で多波長域の測定ができるメリットがあるものの、検出素子への迷光の入射確率や全体の入射量が多い問題がある。したがって、実施形態の構成は、マルチチャンネルタイプの構成において特に効果がある。
また、本実施形態の分光測定器は、フィルタ駆動部8を有するので、上記二枚のフィルタ71,72の順次配置を手動で行う必要がない。したがって、使い勝手が良い。
本実施形態の方式は、被測定光の分光放射照度に波長毎の強弱が大きい場合の分光測定に適している。被測定光が、各波長の強度にそれほどのばらつきがない場合(ほぼフラットな分光放射照度である場合)、迷光の影響をそれほど大きくない。迷光分というのは、正しく光路を伝わる光の例えば1%以下の微弱なものであり、フラットな分光放射照度においては問題とならない。これがフラットでない場合、大きな問題となる。
例えば、正しく光路を伝わる光(以下、正常光)のうち、波長λ1の大きさが波長λ2の100倍である場合を考える。この場合、波長λ1の光が迷光となり、波長λ2用の光電変換部に紛れ込んで入射すると、波長λ2の光は2倍の強度となり、50%もの誤差を含むことになる。
例えば、正しく光路を伝わる光(以下、正常光)のうち、波長λ1の大きさが波長λ2の100倍である場合を考える。この場合、波長λ1の光が迷光となり、波長λ2用の光電変換部に紛れ込んで入射すると、波長λ2の光は2倍の強度となり、50%もの誤差を含むことになる。
上記の点について、太陽光の分光放射照度を測定する場合を例にしてさらに詳しく説明する。近年、オゾン層の破壊等を背景として、太陽光に含まれる有害紫外線の問題がクローズアップされている。各所の紫外線量を測定したり、年間の紫外線量の変化を測定したりすることが行われいる。このような紫外線量の測定を、汎用の分光測定器を使って可視域の分光放射照度とともに測定しようとすると、上記迷光の問題が顕著となる。
図4、図5及び図6は、太陽光の分光放射照度の測定において実施形態の方法を適用した結果について示した概略図である。このうち、図4は、分光測定器を使用して日本のある場所における太陽光の分光放射照度を測定した結果を示している。また、図5及び図6は、図4の測定結果のうち、紫外域の値を確認するために拡大した結果を示している。図5及び図6において、P1は図4のデータであり、補正前のデータを示す。また、P2は、米国試験材料協会(ASTM)が認証している太陽光の分光放射照度の基準データである。P3は、補正後のデータを示す。
図4に示すように、この観測データは、400nmから800nm程度の可視域に強い強度を持つ一方、300nm以下の紫外域の光は全く観察されていない。これは縦軸のスケールが可視域の光に合わせているためで、紫外域の光を観察するため、縦軸のスケールを大きくして拡大すると、図5及び図6に示すように紫外域に値があることが確認される。尚、図6は図5をさらに拡大した図である。
図5及び図6を見る限り、この太陽光にはかなりの紫外線が含まれていることになるが、この紫外域の光は、前述したように迷光が含まれている可能性があり、信頼性が低い。一般的には、太陽光の紫外域の光は、300nmより短くなると激減し、290nmの光は、300nmの光の5桁程度も弱くなる(即ち、1/100000程度)。したがって、可視域の光がごく僅かに迷光となって300nm以下の光に紛れ込んだだけでも非常に大きな誤差成分となる。誤差の中に本来の値が埋没してしまうとも言える。図5及び図6に拡大して示すP1の300nm以下の値も、迷光分を含んだものと推測される。
このP1のデータに対し、上述した実施形態の方法を実際に適用し、値を補正すると、図5及び図6中にP3に示す分光放射照度(補正データ)が得られた。補正データP3は、ASTMの基準データP2にほぼ近いものである。この結果は、実施形態の方法の有効性を示すものと言える。周知のように、太陽光には300nmより短い波長域においてもいわゆる有害紫外線とよばれる波長の光が存在しており、この波長域の分光放射照度を正確に測定できることの意義は大変大きい。
上記構成では、第一第二のフィルタ71,72は300nm以下をカットするものであったが、厳密な意味で300nm以下である必要はなく、310nm以下をカットするものを使用したり、290nm以下をカットするものを使用したりすることもある。一般的には、高い分光放射照度となる波長域の光(ここでは可視域の光)に比べて分光放射照度が1/100以下又は1/1000以下の低い値になることが予想される場合、迷光の影響が無視できなくなる。したがって、照度が他の波長域に比べて1/100以下又は1/1000以下程度の弱い光を知りたい場合、この波長域の光をカットするフィルタを用いるようにすれば良い。
上記実施形態において、フィルタ71,72の配置位置は、グレーティング2の入射側の光路上とすることがより望ましい。グレーティング2が迷光の発生源であるとすると、迷光は、グレーティング2を出た後どのような経路をたどって検出素子3に入射しているか、よくわからないとも言える。迷光は、光路を大きく外れ、筐体の内面に反射して検出素子3に入射しているかもしれない。そうであるとすると、グレーティング2の出射側の光路上にフィルタ71,72を配置した場合、迷光はフィルタ71,72を外れて検出素子3に入射することがあり得る。そうなると、第一のフィルタ71を配置した際や第一第二の二つのフィルタ71,72を配置した際でも迷光は減衰せずに検出素子3に入射することになり、上述した演算処理の前提が崩れてしまう。よって、グレーティング2の入射側とすることが望ましい。グレーティング以外の分光素子を使う場合も、同様である。
上記実施形態において、第一第二のフィルタ71,72は、カット波長より短い光をカットするカットフィルタであったが、カット波長より長い波長をカットするカットフィルタであってもよい。これは、例えば太陽光のうち赤外域の光に含まれる迷光を除去する場合にあり得る構成である。
また、第一第二のフィルタ71,72として、カットフィルタではなくバンドバスフィルタを使用しても良い。即ち、対象波長域よりも短い波長域と長い波長域とを遮断するフィルタを第一第二のフィルタ71,72としても良い。この場合は、その短波長側の光が迷光となったのを除去するとともに長波長側の光が迷光となったのを除去することになる。
さらに、第一第二のフィルタ71,72は、複数のフィルタ(即ち、フィルタ群)で構成されていても良い。即ち、第一のフィルタ71群で得られる被測定光の分光透過特性と、第二のフィルタ72群で得られる被測定光の分光特性が同じになっていれば良い。
また、第一第二のフィルタ71,72として、カットフィルタではなくバンドバスフィルタを使用しても良い。即ち、対象波長域よりも短い波長域と長い波長域とを遮断するフィルタを第一第二のフィルタ71,72としても良い。この場合は、その短波長側の光が迷光となったのを除去するとともに長波長側の光が迷光となったのを除去することになる。
さらに、第一第二のフィルタ71,72は、複数のフィルタ(即ち、フィルタ群)で構成されていても良い。即ち、第一のフィルタ71群で得られる被測定光の分光透過特性と、第二のフィルタ72群で得られる被測定光の分光特性が同じになっていれば良い。
尚、第二のフィルタ72(又はフィルタ群)は、第一のフィルタ71(又はフィルタ群)に近接した位置に配置されることが望ましい。これは、第二のフィルタ72(又はフィルタ群)が第一のフィルタ71(又はフィルタ群)を配置することによる迷光の減衰率を知るためのものであるからである。第一のフィルタ71(又はフィルタ群)がグレーティングの入射側に配置されているなら、第二のフィルタ72(又はフィルタ群)もグレーティングの入射側に配置されることが望ましく、第一のフィルタ71(又はフィルタ群)がグレーティングの出射側なら第二のフィルタ72(又はフィルタ群)も出射側であることが望ましい。
また、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、筐体の外側に設けられていても良い。既存の分光測定器に機能を追加する場合には、このような構成があり得る。例えば、取り込み位置から被測定光を導く第一の光ファイバの出射端近傍に第一第二のフィルタ又はフィルタ群を設け、その出射側に第二の光ファイバを接続して被測定光を筐体内の入射スリット1に導くようにする。第二の光ファイバが分光測定器に付属のものである等の場合、第一の光ファイバ、第一第二のフィルタ又はフィルタ群、フィルタ駆動部などをユニットにし、オプション品として販売することも考えられる。
また、上記実施形態の分光測定器は、検出素子3はリニアアレイセンサであり、グレーティング2を固定した姿勢のままで分光測定するタイプのものであったが、検出素子が一つの光電変換部のみから成るものであり、グレーティングの角度を順次変えながら測定するタイプのものであっても本願発明は同様に実施できる。但し、リニアアレイセンサを使用して多波長域を同時測定するタイプの方が迷光による影響が出やすく、本願発明の優位性が発揮され易い。
上記説明では、太陽光の分光測定を専ら採り上げたが、本願の発明は、太陽にスペクトルを近似させた光源からの光の分光測定にも適用できることは明らかである。例えば、太陽にスペクトルを近似させた光源としてキセノンランプが知られており、キセノンランプを使用した太陽光シミュレータ(ソーラーシミュレータ)が開発されている。このような太陽光シミュレータにおける分光放射照度測定についても、本願発明は同様に適用できる。
尚、分光素子としては、グレーティング以外のものを用いてもよく、原理的にはプリズムのような分光素子を使用した場合でも本願発明は実施可能である。
また、上記説明において、「分光放射照度」を測定すると説明したが、特定の波長又は波長域の放射照度のみを測定する場合もあるし、全波長域における分光放射照度の分布(分光放射照度分布)を測定結果として得る場合もある。
尚、分光素子としては、グレーティング以外のものを用いてもよく、原理的にはプリズムのような分光素子を使用した場合でも本願発明は実施可能である。
また、上記説明において、「分光放射照度」を測定すると説明したが、特定の波長又は波長域の放射照度のみを測定する場合もあるし、全波長域における分光放射照度の分布(分光放射照度分布)を測定結果として得る場合もある。
1 入射スリット
2 グレーティング
3 検出素子
4 第一の光学系
5 第二の光学系
6 演算処理部
71 第一のフィルタ
72 第二のフィルタ
8 フィルタ駆動部
2 グレーティング
3 検出素子
4 第一の光学系
5 第二の光学系
6 演算処理部
71 第一のフィルタ
72 第二のフィルタ
8 フィルタ駆動部
Claims (6)
- 被測定光を分光する分光素子と、分光素子で分光された被測定光が入射する検出素子と、検出素子の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める演算処理部とを備えた分光測定器であって、
検出素子への光路上には、第一第二の二つのフィルタ又はフィルタ群が配置可能となっており、第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
この第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、光路上に位置する遮断状態と光路上から退避した非遮断状態とを取り得るものであり、
前記演算処理部は、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が非遮断状態である際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、
第一のフィルタ又はフィルタ群は遮断状態とし、第二のフィルタ又はフィルタ群は非遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、
第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群が遮断状態とした際に検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としたとき、
D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)
で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うものであることを特徴とする分光測定器。 - 前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群には、フィルタ駆動器が設けられており、このフィルタ駆動器は、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第一状態と、第一のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とし第二のフィルタ又はフィルタ群を非遮断状態とする第二状態と、第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を遮断状態とする第三状態とすることが可能なものであることを特徴とする請求項1記載の分光測定器。
- 前記第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、前記分光素子の入射側の光路上に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の分光測定器。
- 前記検出素子は、多数の光電変換部が並べられたリニアアレイセンサであり、分光素子を回転させることなく一回の測定で多波長域の測定が行えるものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の分光測定器。
- 被測定光を分光素子で分光し、分光された被測定光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から被測定光の分光放射照度を求める分光測定方法であって、
迷光を含むと予想される被測定光である迷光含有被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、迷光を除去する波長域である対象波長域の光を遮断し他の波長域の光を透過する分光透過特性を有しており、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を迷光分を除去した対象波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えていることを特徴とする分光測定方法。 - 太陽光又は太陽にスペクトルを近似させた光源からの光である被測定光を分光素子で分光し、分光された太陽光を検出素子に入射させ、検出素子の検出結果から分光放射照度を求める分光測定方法であって、
被測定光を第一第二のフィルタ又はフィルタ群により選択的に遮断しながら測定する方法であり、
第一第二のフィルタ又はフィルタ群は、分光透過特性が同じものであって、カット波長より短い波長域を遮断するカットフィルタであって、カット波長より短い波長域は、可視域の光の分光放射照度に比べて1/100以下又は1/1000以下の分光放射照度となることが予想される波長域であり、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群も第二のフィルタ又はフィルタ群も配置しないで測定を行う第一のステップと、
検出素子への光路上に第一のフィルタ又はフィルタ群を配置し第二のフィルタ又はフィルタ群を配置しないで測定を行う第二のステップと、
検出素子への光路上に第一第二の両方のフィルタ又はフィルタ群を配置して測定を行う第三のステップと、
第一のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をA(Δλ)とし、第二のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をB(Δλ)とし、第三のステップにおいて検出素子で検出された対象波長域の分光放射照度をC(Δλ)としとき、D(Δλ)=A(Δλ)−B(Δλ)×B(Δλ)/C(Δλ)で表現されるD(Δλ)を、迷光分が除去された、カット波長より短い波長域の分光放射照度であると補正する演算を行うステップと
を備えていることを特徴とする分光測定方法。
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