JP4622673B2 - 紫外可視近赤外分光光度計用検出装置 - Google Patents

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本発明は、紫外線、可視光及び近赤外線に亘る波長領域(概ね、150nm〜3500nm)を対象とする汎用分光光度計の検出装置に関する。
上記のような広い波長範囲に亘る汎用分光光度計においては、単一の検出器で全ての波長を検出することは不可能である。そのため、従来より、それら波長域を適宜周波数で複数の領域に分割し、各領域毎に別個の検出器を設けるようにしていた。通常、紫外線及び可視光領域では光電子増倍管(PMT)検出器を使用し、近赤外線領域ではPbS(硫化鉛)検出器を使用することが多い。また、各波長領域内を更に複数の領域に分け、同種のしかし特性の異なる検出器に各部分領域を分担させることも行われている。例えば、特許文献1には、近赤外線領域を分光感度特性の異なる2個のPbS検出器で分担させた例が記載されている。
特開2002-62189号公報
このように、従来の分光光度計用検出装置では広範囲の波長領域を複数の部分領域に分け、各部分領域に適した分光感度特性を有する検出器を使用しているものの、それらの境界の領域においては感度が不足気味であり、十分なS/N比を得ることが困難である。特に、異種の分光器の境界部分ではその傾向が強く、例えば、紫外・可視領域を分担する光電子増倍管(PMT)と近赤外領域を分担するPbS検出器は概ね800〜900nm付近で切り替えが行われているが、図1(a)に示すように、この部分では双方の検出器とも感度が低下している。
PbS検出器は冷却することにより感度を上昇させることができるが、この場合、応答速度が低下するという問題がある。また、PbS検出器は光導電性の検出器であるため、入力光の強度と出力電圧との関係の直線性が十分でないという問題もある。特に後者の問題は、光通信で用いられる部材の反射防止膜を測定する場合のように、低反射率の対象を測定する場合に問題となる。
従って、本発明が解決しようとする課題は、紫外線・可視光・近赤外線領域の全範囲に亘って十分な感度を有し、なおかつ十分な直線性を確保した分光光度計用検出装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光光度計用検出装置は、紫外線、可視光、近赤外線に亘る電磁波を対象とするダブルビーム方式の分光光度計であって、光電子増倍管検出器、InGaAs検出器及びPbS検出器、並びに、それら検出器を切り替える切替手段を備え、前記切替手段が、サンプルセルからの光及び参照セルからの光を光電子増倍管検出器又は後述の第2切替器のいずれかに振り分ける第1切替器と、InGaAs検出器及びPbS検出器が搭載され、且つ各検出器の両脇にサンプルセルからの光又は参照セルからの光を通過させる窓が設けられた第2切替器と、前記第2切替器の窓を通過したサンプルセルからの光を反射して所定の集光点に集光させる第1集光手段と、前記第2切替器の窓を通過した参照セルからの光を反射して前記集光点に集光させる第2集光手段とを有し、前記第2切替器を移動させてInGaAs検出器又はPbS検出器のいずれかを前記集光点に置くことにより、InGaAs検出器及びPbS検出器を切り替えるものであることを特徴とするものである。
また、それら検出器を配した単一の積分球を備え、前記積分球に外接する立方体の1面に前記3つの検出器のいずれか1つが配置され、該検出器が配置された面と対向する面に残る2つの検出器のいずれか1つが配置され、前記立方体の残りの面のうちの1面にサンプルセルからの光を積分球内に導入するための入射口が設けられ、前記残りの面のうちの前記入射口が設けられた面と直交する面に参照セルからの光を積分球内に導入するための入射口が設けられ、前記立方体の角にあたる位置に残る1つの検出器が配置されており、前記各検出器はその入射面が積分球の内壁面に面しているものであってもよい。
さらに、各検出器間の直線性の相違を補正するための出力変換手段を備えるものであってもよい。
本発明に係る検出装置では、従来の装置と同様、光電子増倍管検出器は対象とする紫外線・可視光・近赤外線領域範囲内の短波長側の領域(紫外線領域)を分担し、PbS検出器は長波長側の領域(近赤外線領域)を分担するが、InGaAs検出器にはその間の領域を分担させる。すなわち、少なくとも上記800〜900nmの領域をこのInGaAs検出器に分担させることにより、図1(b)に示すように、紫外可視近赤外の測定範囲全域に亘って感度低下の少ない、S/N比の高い検出を行うことができる。また、InGaAsはフォトダイオードであり、光起電力素子であるため、その直線性は良好である。従って、本発明に係る分光光度計では、光電子増倍管検出器が分担する波長範囲に加え、InGaAs検出器が分担する波長範囲においても直線性が大きく改善されるようになる。
さらに、上記出力変換手段を設けることにより、各検出器間の直線性の相違が解消され、特にPbS検出器の不十分な直線性が補償されることにより、非直線性に起因する入射光量に依存した測定データの変動を解消することができる。これは、低反射率試料の測定を低ノイズで行うことを可能とするものである。
回転セクタ鏡によるダブルビーム方式における透過光測定分光光度計に本発明に係る検出装置を用いた実施例を図2に示す。図示せぬ分光器において分光された光は出口スリットSLを通過した後、回転セクタ鏡RSMにより交互にサンプルセルSC及び参照セルRCに入射され、それぞれのセルを通過する。各セルを通過した光は、図2に示すように可動鏡VMが光路内に挿入されたときはPbS/InGaAs切替器MUの方(図2では左上方)に送られる。この場合、両セルからの光はPbS/InGaAs切替器MUの窓を通過して各凹面鏡CMによりInGaAs切替器MU上の1点に集束される。PbS/InGaAs切替器MUは、矢印の方向に移動することにより、PbS検出器又はInGaAs検出器をその集光点に置く。一方、可動鏡VMが光路外に移動されたときは、各セルからの光は光電子増倍管PMTに入射する。こうして、測定目的波長に応じて可動鏡VM及びPbS/InGaAs切替器MUの位置を適宜制御することにより、紫外線から近赤外線に亘る広い範囲の波長の分光測定を高感度で行うことができるようになる。
3種の検出器の切り替えは、このような切り替え機構を用いたものに限られることはない。図3に、積分球を用いた例を示す。この例では、光電子増倍管PMT、PbS検出器、InGaAs検出器がそれぞれ1個、その入射面が積分球30の内壁面に面するように配置されている。各検出器はサンプルセル及び参照セルからの入射光の入射口31、32に直接対向しない位置に置かれ、入射光が直接各検出器に入射しないようになっている。このように積分球30を用いることにより装置を小型化することができるとともに、可動部分を伴わないため装置の信頼性を高めることができる。
図3の積分球30では3個の検出器を別個の位置に配したが、図4に示すように、PbS検出器とInGaAs検出器を一体としてパッケージ化した検出器として積分球30の壁面に配することもできる。(a)の例はパッケージ40内で両検出器を横に配列したものであるが、(b)に示すようにPbS検出器の検出面の内部にInGaAs検出器を配することもできる。この場合、パッケージ40を更に小型にすることができる。積分球では開口部分(非反射面部分)が少ない方が良いため、これらにより感度の向上を実現することができる。
この装置を用いて、スリットSLの幅を0.5mmから12.0mmの間で変化させて入射光量を変化させたときのPbS検出器とInGaAs検出器によるNDフィルタの透過率測定結果を図5に示す。両検出器の切り替え波長は1650nmとした。長波長側を分担するPbS検出器ではスリット幅により透過率測定値がばらついているが、短波長側を分担するInGaAs検出器ではスリット幅に拘わらずスペクトルが重なっていることが分かる。従来の検出装置ではPMT検出器とPbS検出器の切り替えは800〜900nmの間(例えば830nm)で行われており、前記の通り、それよりも長波長領域において直線性の低下が問題であったが、本実施例に係る検出装置を使用することにより、1650nmまで良好な直線性が得られるようになる。
図6は、近赤外光遮断フィルタの透過率を1000nmから1600nmの範囲でInGaAs検出器により測定したものである。InGaAs検出器のS/N比が極めて良好であることが確認できる。
このように、3種の検出器を切り替えることにより、特に中間波長領域において良好な感度及びS/N比を得ることができるが、検出器出力に基いてデータ解析等を行う際には、入力光量の強さと出力信号の大きさの間に直線性があることが望ましい。しかし、前記の通り、光電子増倍管やInGaAs検出器は光起電力型検出器であるため良好な直線性を有するが、PbS検出器は光導電性検出器であるため、特に高入力の部分で非直線性が強い。図7は、同一の入力(波長1650nm)に対するInGaAs検出器の出力とPbS検出器の出力をプロットしたグラフであるが、特に大入力において出力値が直線的に増加しないというPbS検出器の特性が明瞭に表れている。
従って、特にInGaAs検出器とPbS検出器の間にまたがって測定を行う場合、両検出器の切り替え波長において透過率や吸光度に不連続な段差が発生する。図8は、入力光量を各種値に切り替えたときに、InGaAs検出器(左側)とPbS検出器(右側)の切り替え箇所において吸光度出力がどのように変化するかを示すグラフである。測定対象は透過率30%相当のNDフィルタで、入力光量の切り替えは、スリット幅を波長換算で0.2nm、0.5nm、1nm、2nm、3nm、5nm、8nmに変化させることにより行った。このグラフから明らかなように、入力光量が増加するにつれてPbS検出器の出力が大きく低下する。
そこで、図10(a)に示すように、PbS検出器の出力側にアナログ信号変換回路CVを設けることにより、その入力−出力特性の直線性を確保する。具体的には、図7に示すようなPbS検出器の出力特性を補償すべく、このグラフを数式化し、変換回路CVにおいてその式にもとづいて直線化を行う。変換式は、目的とする精度に応じた次数の多項式を用いることができるが、実用上は3次多項式程度で十分その目的を達成することができる。例えば、図7のグラフの場合、
y1 = Ax1 3+Bx1 2+Cx1
なる3次曲線fで良好に近似することができる。変換式は、原点を通る1次式(Cx1)に摂動項(Ax1 3+Bx1 2)を加えた式となっている。そこで、InGaAs検出器の出力をy = Cxのカーブに投影し、線形出力x2を得る。
y1 = Cx2
すなわち、PbS検出器の出力x1を次式でx2に換算することにより、切り替え点で段差の無い、直線性を確保した出力を得ることができるようになる。
x2 = y1/C = (A/C)x1 3+(B/C)x1 2+x1
図10(a)のアナログ信号変換回路CVにおいてこの換算式を用いた場合の、図8と同じ条件で測定を行ったときのInGaAs検出器とPbS検出器の間の出力変化を図9に示す。図8に見られた、切り替え波長における入力光量による出力の段差が大きく改善されている。
なお、変換式は、上記のように1つの式だけを用いるのではなく、波長範囲をいくつかのセグメントに区切り、各セグメントにおいて別個の式を用いるようにしてもよい。これにより、より精度の高い変換を行うことが可能となる。
また、上記実施例では図10(a)に示すようにPbS検出器のアナログ出力において変換を行っていたが、デジタル化した後の信号に対して変換を行うことも可能である。この場合、図10(b)に示すように、アナログ信号変換回路CVは不要となり、代わりに制御部(又はデータ解析部)においてソフトウェア的にデータ変換を行うこととなる。
光電子増倍管(PMT)検出器・PbS検出器を備えた従来の検出装置の感度特性グラフ(a)、及びPMT検出器・InGaAs検出器・PbS検出器を備えた本発明の検出装置の感度特性グラフ(b)。 本発明に係る検出装置を用いたダブルビーム方式透過光測定分光光度計の配置図。 本発明の別の実施例である、積分球に3検出器を配置した検出装置の斜視図。 上記実施例の変形例である、InGaAs検出器とPbS検出器を1つのパッケージに配置した2種の例の配置図。 入射光量を変化させた場合のPbS検出器とInGaAs検出器によるNDフィルタの透過率測定結果のグラフ。 近赤外光遮断フィルタの1000〜1600nmのInGaAs検出器による透過率測定結果のグラフ。 同一の入力(波長1650nm)に対するInGaAs検出器の出力とPbS検出器の出力をプロットしたグラフ。 PbS検出器の出力に対する変換を行わない場合の、入力光量をパラメータとしたInGaAs検出器とPbS検出器の出力変化の様子を示すグラフ。 PbS検出器の出力に対する変換を行った場合の、入力光量をパラメータとしたInGaAs検出器とPbS検出器の出力変化の様子を示すグラフ。 PbS検出器の出力に対する変換を行うためのアナログ出力変換回路を挿入した場合の回路図(a)、及び、ソフトウェア的に変換を行う場合の回路図(b)。
符号の説明
SL…分光器出口スリット
RSM…回転セクタ鏡
FM…固定反射鏡
RC…参照セル
SC…サンプルセル
VM…可動鏡
MU…PbS/InGaAs切替器
CM…凹面鏡
30…積分球
31、32…光入射口
40…PbS検出器・InGaAs検出器パッケージ
CV…アナログ信号変換回路
A/D…AD変換器

Claims (6)

  1. 紫外線、可視光、近赤外線に亘る電磁波を対象とするダブルビーム方式の分光光度計用検出装置であって、光電子増倍管検出器、InGaAs検出器及びPbS検出器、並びに、それら検出器を切り替える切替手段を備え、
    前記切替手段が、
    サンプルセルからの光及び参照セルからの光を光電子増倍管検出器又は後述の第2切替器のいずれかに振り分ける第1切替器と、
    InGaAs検出器及びPbS検出器が搭載され、且つ各検出器の両脇にサンプルセルからの光又は参照セルからの光を通過させる窓が設けられた第2切替器と、
    前記第2切替器の窓を通過したサンプルセルからの光を反射して所定の集光点に集光させる第1集光手段と、
    前記第2切替器の窓を通過した参照セルからの光を反射して前記集光点に集光させる第2集光手段と、
    を有し、
    前記第2切替器を移動させてInGaAs検出器又はPbS検出器のいずれかを前記集光点に置くことにより、InGaAs検出器及びPbS検出器を切り替えるものであることを特徴とする紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
  2. 紫外線、可視光、近赤外線に亘る電磁波を対象とするダブルビーム方式の分光光度計用検出装置であって、光電子増倍管検出器、InGaAs検出器及びPbS検出器、並びに、それら検出器を配した単一の積分球を備え
    前記積分球に外接する立方体の1面に前記3つの検出器のいずれか1つが配置され、該検出器が配置された面と対向する面に残る2つの検出器のいずれか1つが配置され、前記立方体の残りの面のうちの1面にサンプルセルからの光を積分球内に導入するための入射口が設けられ、前記残りの面のうちの前記入射口が設けられた面と直交する面に参照セルからの光を積分球内に導入するための入射口が設けられ、前記立方体の角にあたる位置に残る1つの検出器が配置されており、前記各検出器はその入射面が積分球の内壁面に面していることを特徴とする紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
  3. 上記各検出器の出力の直線性の相違を補正する出力変換手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
  4. 上記変換手段が、PbS検出器のアナログ出力を変換するアナログ信号変換手段であることを特徴とする請求項3に記載の紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
  5. 上記変換手段が、PbS検出器のアナログ出力をデジタル化した後のデジタルデータを補正するデジタルデータ変換手段であることを特徴とする請求項3に記載の紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
  6. 上記変換手段が3次式を用いることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の紫外可視近赤外分光光度計用検出装置。
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