JP2014162755A - 金属錯体およびそれを用いたα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(A)で表される金属錯体、およびそれを用いたα−オレフィン重合体またはα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
[式中、Mは周期表の10族に属する遷移金属を、R3は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を、L1はMに配位したリガンドを、X1は酸素または硫黄を、E1はリン、砒素またはアンチモンを表す。R4及びR5は、水素原子または炭素数1〜40のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基を表す。R10〜R13は、水素原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基などを表す。]
【選択図】なし
Description
また、Brookhartらは、α−ジイミン配位子を用いたパラジウム錯体を触媒として、エチレンとアクリル酸エステルの共重合体が製造できることを報告している。
しかしながら、得られた共重合体は、分岐構造に富むものであり、分岐は、メチル基、エチル基をはじめ、種々の炭素数の置換基であって、かつ、分岐の数も非常に多く、結果として、得られた共重合体は、結晶性の低いものであった(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、エチレンとの共重合が進行するのは、極性モノマー中の極性基がオレフィンから離れている場合に限られることが報告されており、極性基がオレフィンに直接結合している(メタ)アクリル酸エステルとα−オレフィンとの共重合例は、報告されていない(例えば、非特許文献2および特許文献1参照。)。
なお、例外的に、Gibsonらは、SHOP系のニッケル錯体を用いて、エチレンとメタクリル酸メチルの共重合を行っているが(例えば、非特許文献6参照。)、触媒構成成分として、ビスシクロオクタジエンニッケル(Ni(COD)2)がホスフィンスカベンジャーとして必要であり、かつ、メタクリル酸メチルは、重合体の末端のみに存在し、末端以外の主鎖中には取り込まれていない。
また、Pughら(例えば、非特許文献3参照。)、野崎ら(例えば、非特許文献4参照。)、Goodallら(例えば、特許文献3参照。)は、ホスフィノスルホン酸配位子を有するパラジウム錯体を触媒として用いることにより、エチレンとアクリル酸メチルの共重合体が得られることを報告している。
しかしながら、これらの公知文献で用いられている触媒は、希少な資源であり、かつ、高価なパラジウムを用いているため、工業的な応用には問題が大きい。
このため、オレフィン重合体やオレフィン・アクリル酸エステル共重合体の分子量を向上させ、また、活性も比較的高い触媒に係る技術についても、開発が求められている。
近年になって、特許文献4などで、分岐が少なく、結晶性を有するα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体が製造可能な、いわゆるSHOP系のニッケルキレート錯体が報告されている。これら錯体を用いると、重合活性及び共重合体の分子量は向上しているが、分子量の更なる向上が求められている。
さらに、本発明の第3の発明によれば、下記一般式(B)又は(C)で表される化合物と、周期表の10族に属する遷移金属を含む遷移金属錯体(D)とを接触させることにより得られることを特徴とする第1又は2の発明に係る金属錯体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第4の発明において、一般式:Al(R16)3(式中、R16は、炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、一般式:Al(R16)3(式中、R16は、炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下で重合を行うことを特徴とするα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法が提供される。
本発明の金属錯体は、構造が上記の一般式(A)で表される遷移金属化合物からなるものであって、本発明において、α−オレフィン重合用触媒成分として使用され、α−オレフィン重合体の製造に用いられる。
その理由は、必ずしも明らかではないが、本発明における一般式(A)で示される金属錯体は、R4及びR5に、酸素原子などのヘテロ原子含有基を有し、さらに、OCH(R14)(R15)のように嵩高い置換基を有することを特徴とする。
R4及びR5のヘテロ原子により、E1の中心金属Mへのドナー性が増大し、ヘテロ原子を経由した中心金属Mへの配位効果が生じると、考えられる。さらに、嵩高い置換基を配置することで、重合体の分子量低下を招くβ−水素基脱離反応が起こりにくくなると、考えられる。結果として、一般式(A)で示される金属錯体が安定化し、重合体の連鎖移動反応が抑制されるため、こうした特徴が本発明の特異性をもたらすものと、推察することができる。
以下、共重合体の構成モノマー、触媒成分、製造方法等について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「重合」という用語は、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。
(a)α−オレフィン
本発明における成分(a)は、一般式:CH2=CHR7で表されるα−オレフィンである。ここで、R7は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R7の炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しない傾向がある。このため、なかでも、好ましい(a)成分としては、R7が水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるα−オレフィンが挙げられる。
さらに好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレンが挙げられる。なお、単独の(a)成分を使用してもよいし、複数の(a)成分を併用してもよい。
本発明における成分(b)は、一般式:CH2=C(R8)CO2(R9)で表される(メタ)アクリル酸エステルである。ここで、R8は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R9は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。さらに、R9内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
R8の炭素数が11以上であると、十分な重合活性が発現しない傾向がある。したがって、R8は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であるが、好ましい(b)成分としては、R8が水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。より好ましい(b)成分としては、R8がメチル基であるメタクリル酸エステルまたはR8が水素原子であるアクリル酸エステルが挙げられる。同様に、R9の炭素数が30を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R9の炭素数は1〜30であるが、R9は、好ましくは炭素数1〜12であり、さらに好ましくは炭素数1〜8である。
また、R9内に含まれていても良いヘテロ原子としては、酸素、硫黄、セレン、リン、窒素、ケイ素、フッ素、ホウ素等が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、ケイ素、フッ素が好ましく、酸素が更に好ましい。また、R9は、ヘテロ原子を含まないものも好ましい。
本発明の反応生成物、すなわち金属錯体は、下記一般式(A)で表される。
Mの価数については、2価が好ましい。ここでMの価数とは、有機金属化学で用いられる形式酸化数(formal oxidation number)を意味する。すなわち、ある元素が関与する結合中の電子対を電気陰性度の大きい元素に割り当てたとき、その元素の原子上に残る電荷の数を指す。例えば、本発明の一般式(A)において、E1がリン、X1が酸素、Mがニッケル、R3がフェニル基、L1がピリジンであり、ニッケルがリン、酸素、フェニル基の炭素、ピリジンの窒素と結合を形成している場合、ニッケルの形式酸化数、すなわちニッケルの価数は2価となる。なぜならば、上述の定義に基づき、これらの結合において、電子対は、ニッケルよりも電気陰性度の大きいリン、酸素、炭素、窒素に割り当てられ、電荷は、リンが0、酸素が−1、フェニル基が−1、ピリジンが0で、錯体は、全体として電気的に中性であるため、ニッケル上に残る電荷は+2となるからである。
R3の具体的な例としては、ヒドリド基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
L1は、Mと配位結合を形成するが、本発明においては、(a)成分の重合や(a)成分と(b)成分の共重合を進行させるために、L1をMから取り除く化合物(スカベンジャー)を使用する必要がない。
R4とR5は、金属Mの近傍にあって、立体的および/または電子的に、Mに相互作用を及ぼす。こうした効果を及ぼすためには、R4とR5は、かさ高い方が好ましい。R4、R5の好ましい炭素数は、6〜40、さらに好ましくは8〜40である。
R4、R5において、ヘテロ原子含有基中に含まれるヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素、フッ素、ホウ素などが挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素が好ましい。また、これらのヘテロ原子を含むヘテロ原子含有基としては、酸素含有基として、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アロイル基、カルボキシレート基などが挙げられ、窒素含有基としては、アミノ基、イミノ基、アミド基などが挙げられ、硫黄含有基としては、チオアルコキシ基やチオアリーロキシ基などが挙げられ、リン含有置換基としては、ホスファノ基などが挙げられ、ケイ素含有基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基などが挙げられる。これらのヘテロ原子含有基のうち、もっとも好ましいのは、アミノ基、アルコキシ基、またはアリーロキシ基である。
すなわち、酸素含有基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、アセトキシ基、エチルカルボキシレート基、t−ブチルカルボキシレート基、フェニルカルボキシレート基などを挙げることができる。また、窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などを挙げることができる。また、硫黄含有基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ−n−プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオ−t−ブトキシ基、チオフェノキシ基、p−メチルチオフェノキシ基、p−メトキシチオフェノキシ基などを挙げることができる。さらに、リン含有置換基としては、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジ−n−プロピルホスフィノ基、シクロヘキシルホスフィノ基などを挙げることができる。
上記炭素数1〜40のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基は、具体的に、ヘテロ原子を含有する分岐鎖状炭化水素基、ヘテロ原子を含有する脂肪環式炭化水素基、ヘテロ原子を含有するアリール基が挙げられる。前記したように、R4およびR5は、かさ高い方が好ましい。したがって、これらのうち、ヘテロ原子を含有する脂環式炭化水素基、または、ヘテロ原子を含有するアリール基が好ましく、ヘテロ原子を含有するアリール基が最も好ましい。こうしたアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスラセニル基などを挙げることができる。
さらに、上記のように、芳香環のオルト位に、OCH(R14)(R15)を2個含有する芳香族炭化水素基としては、例えば、2,4,6−トリイソプロポキシフェニル基のように、芳香環のオルト位以外に、芳香環のパラ位やメタ位に、OCH(R14)(R15)基を含有してもよい。
これらのうち、R13については、母核であるアリール基に対して、電子求引性の置換基で、かつ、嵩高い置換基である方が、高活性の重合触媒を与える傾向にあり、好ましい。R13の例を、具体的に挙げると、ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、沃素を挙げることができ、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基として、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ニトロフェニル基、ジニトロフェニル基、シアノフェニル基、アンスラセニル基、ピリジル基、ピロリル基、カルバゾリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、あるいはそれらの異性体などを挙げることができる。
これらのうち、特に好ましいR13として、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロフェニル基、9−カルバゾリル基が挙げられる。
R4とR5は、前述した通りであるが、R4とR5の組み合わせにおいて、特に好ましいものを表1に示す。
本発明の金属錯体は、下記一般式(B)および/または(C)で表される化合物と、10族の遷移金属を含む遷移金属錯体(D)とを、接触させることにより得ることができる。
カウンターカチオンとしては、具体的には、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウム、周期表1族〜14族の金属イオンを挙げることができる。これらのうち好ましくは、NH4 +、R1 4N+(ここでR1は、前記したとおりであり、4つのR1は、同じでも異なっていてもよい)、R1 4P+(ここでR1は、前記したとおりであり、4つのR1は、同じでも異なっていてもよい)、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+であり、さらに好ましくは、R1 4N+(ここでR1は、前記したとおりであり、4つのR1は、同じでも異なっていてもよい)、Li+、Na+、K+である。
例えば、ニッケルを含む遷移金属錯体(D)としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、一般式:(CH2CR1CH2)2Niで表される錯体(ここでR1は、前記した通りである。)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、一般式:Ni(CH2SiR1 3)2L1 2で表される錯体(ここでR1、L1は、本明細書に記載した通りである。)、一般式:NiR1 2L1 2で表される錯体(ここでR1、L1は、本明細書に記載した通りである。)等を使用することができる。
なお、反応を行う際に、本発明に係るL1を共存させてもよい。本発明に係るMとして、ニッケルやパラジウムを用いた場合には、ルイス塩基性のL1を系内に共存させることによって、精製した錯体(A)の安定性が増す場合があり、このような場合には、L1が本発明の重合反応または共重合反応を阻害しない限りにおいて、L1を共存させることが好ましい。
本発明において、一般式(A)で表される金属錯体を、重合または共重合の触媒成分として使用することができる。前記したように、一般式(A)で表される金属錯体は、一般式(B)または(C)で表される化合物と遷移金属錯体成分(D)との反応によって、形成させることができる。一般式(A)で表される金属錯体を触媒成分に用いる場合、単離したものを用いてもよいし、担体に担持したものを用いてもよい。こうした担持をα−オレフィンの重合やα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロサイト、ハロサイト等のハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
上記有機アルミニウム化合物としては、オレフィン重合触媒の分野で公知の有機アルミニウム化合物を用いることができるが、トリアルキルアルミニウムなどの下記一般式で表される有機アルミニウム化合物を用いることが、重合活性の観点から好ましい。
一般式:Al(R16)3
(式中、R16は、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
有機アルミニウム化合物は、その存在下では、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどのコモノマーに対するモル比が10−5〜0.9、好ましくは10−4〜0.2、更に好ましくは10−4〜0.1となる量を接触させることが、重合活性やコストの観点から好ましい。
また、有機アルミニウム化合物の存在下では、モノマーまたはコモノマーと有機アルミニウム化合物との接触方法は、特に制限はないが、例えば、反応系に金属錯体添加後に、コモノマーと有機アルミニウム化合物とを接触させた混合物を添加する方法、反応系にコモノマーを添加後、有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、金属錯体を添加する方法、反応系に有機アルミニウム化合物を添加後、コモノマーを添加して接触させた後、金属錯体を添加する方法等が挙げられる。
具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機およびまたは有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で、重合を行っても良い。さらに、本発明に係るL1やイオン液体を添加剤として用いてもよい。
これらのうち、特に好ましいルイス塩基は、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類であり、なかでも好ましいルイス塩基は、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピペリジン誘導体、イミダゾール誘導体、アニリン誘導体、ピペリジン誘導体、トリアジン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体である。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても、特に制限はなく、目的に応じて、さまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、または間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
また、(b)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)成分の(a)成分に対する比率や、(b)成分の濃度を制御することによっても、分子量調節が可能である。遷移金属錯体中のリガンド構造を制御して分子量調節を行う場合には、前記したR4中のヘテロ原子含有基の種類、数、配置を制御したり、金属Mのまわりに、かさ高い置換基を配置したり、前記したR10〜R13中にヘテロ原子を導入したりすることによって、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。なお、金属Mに対して、アリール基やヘテロ原子含有置換基などの電子供与性基が相互作用可能となるように電子供与性基を配置することが好ましい。こうした電子供与性基が金属Mと相互作用可能であるかどうかは、一般に、分子模型や分子軌道計算で電子供与性基と金属Mとの距離を測定することによって判断できる。
以下の合成例で、とくに断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
(1)融点Tm:
以下のDSC測定により求めた。
Perkin Elmer社製PYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を使用して、試料(約5mg)を210°
Cで5分間融解後、10°
C/分の速度で−20°
Cまで降温し、−20°
Cで5分保持した後に、10°
C/分の速度で210°
Cまで昇温することにより、融解曲線を得た。融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとした。
以下のGPC測定により求めた。
はじめに、試料約20(mg)をポリマーラボラトリー社製高温GPC用前処理装置PL−SP260VS用のバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを含有するo−ジクロロベンゼン(BHT濃度=0.5g/L)を加え、ポリマー濃度が0.1(重量%)になるように調整した。ポリマーを上記高温GPC用前処理装置PL−SP260VS中で135℃に加熱して溶解させ、グラスフィルターにて濾過して試料を調製した。
なお、本発明におけるGPC測定において、グラスフィルターに捕捉されたポリマーはなかった。
次に、カラムとして、東ソー社製TSKgel GMH−HT(30cm×4本)およびRI検出器を装着したウォーターズ社製GPCV2000を使用してGPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液注入量:524.5(μl)、カラム温度:135℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン、流量:1.0(ml/min)を採用した。分子量の算出は、以下のように行った。すなわち、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびエチレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。
なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E−4、α=0.70を使用し、エチレン系重合体に対しては、K=4.77E−4、α=0.70を使用した。
[合成例1]:(リガンドB−204の合成)
下記のスキームにしたがって、リガンドB−204を合成した。
反応溶液は25℃まで冷却し、氷水(500mL)を加え、TBME(300mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。粗成生物は石油エーテル/酢酸エチル(20/1)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、化合物2を得た。
(ii)化合物2(5.82g,30.0mmol)のTHF溶液(20mL)に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,12mL,30.0mmol)を−78℃にて加え、室温にて2時間攪拌し、化合物3を含む溶液を得た。
(iii)化合物5(2.07g,15.0mmol)のTHF溶液(10.0mL)にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,12mL,30.0mmol)を−78℃にて加え、室温で2時間攪拌した。その後、三塩化リン(8.22g,60.0mmol)を−78℃にて加え、−78℃で30分攪拌した。溶媒および過剰の三塩化リンを減圧下にて除去した後、THF(20mL)を加え、化合物6を含む溶液を得た。これに前段の化合物3のTHF溶液を−78℃にて加え、室温にて15時間攪拌し、化合物7を含む溶液を得た。
(iv)化合物7(1.70g,3.1mmol)のTHF溶液(10mL)を−78℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,1.3mL,3.3mmol)を滴下し、室温にて2時間攪拌した。これにヘキサフルオロベンゼン(1.71g,9.2mmol)を−78℃にて加え、室温にて16時間攪拌した。氷水(10mL)を加えて反応を停止させ、有機溶媒を減圧下にて除去した後、酢酸エチル(30mL)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物8を白色個体として得た。
(v)化合物8(0.2g,0.28mmol)を酢酸エチル(2mL)に溶解させ、塩酸の酢酸エチル溶液(4.00M,5.0mL)を0℃にて加え、徐々に室温まで昇温した後、3時間攪拌した。溶媒を減圧下にて除去し、残渣を飽和重曹水溶液にて中和し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。油相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧乾燥すると化合物B−204が得られた(2.50g,3.6mmol,75%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):8.08−7.86(m,1H),7.16−7.13(m,3H),7.19−7.08(m,3H),6.93−6.78(m,1H),6.50−6.40(m,4H),4.56−4.37(m,4H),1.37−1.01(m,24H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm)−54.6(s).
(1)2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノフェニルメトキシメチルエーテル(B−27DM−5)の合成
フェニルメトキシメチルエーテル(B−27DM−4,2.87g,20.8mmol)を脱水THF(20mL)に溶解させ、n−ブチルリチウム(8.3mL,20.8mmol)のn−ヘキサン溶液に、0℃で滴下した。得られた混合物を0℃で30分攪拌した後、室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。この反応溶液に、合成例7(2)と同様に得られた化合物(B−14−4)のTHF溶液(20.8mmol,150mL)を0℃で添加し、さらに室温で終夜攪拌を行った。反応液を水でクエンチし、減圧下にTHFを除去した。得られた混合物からジクロロメタンで抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。さらに、有機層に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を除去して濃縮した。
得られた粗生成物を、ジクロロメタンを展開液としてシリカゲルカラムで精製し、ジクロロメタンを除去して、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノフェニルメトキシメチルエーテル(B−27DM−5)の白色固体を得た。
上記で得られた化合物(B−27DM−5,3.2g,7.2mmol)を脱水THF(50mL)に溶解させた。この溶液に、n−ブチルリチウム(2.9mL,7.2mmol)を0℃で滴下した。得られた反応溶液を攪拌しながら昇温し、室温で2時間攪拌した。
次いで溶液を−78℃に冷却し、ヘキサフルオロベンゼン(4.2mL,36mmol)をゆっくり加えた。溶液を攪拌しながら室温まで昇温し、室温で終夜攪拌を行った。水を加えて反応をクエンチし、減圧下に溶媒を除去した。固体残渣に対してジクロロメタンで抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。
次いで有機層を硫酸ナトリウムで脱水させ、硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下に溶媒を除去して濃縮した。粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(7/1,v/v)の混合溶液を展開液として、シリカゲルカラムで精製することで、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノ−6−ペンタフルオロフェニルフェニルメトキシメチルエーテル(B−27DM−6)を得た(1.2g,2.0mmol,28%収率)。同様な操作を行い、化合物(B−27DM−6)を6.7g得た。
上記で得られた化合物(B−27DM−6,5.5g,9.0mmol)を、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M,100mL)に0℃で加えた。得られた混合物を徐々に室温まで昇温し、引き続き室温で1.5時間攪拌を行った。減圧下に酢酸エチルを除去したところ、2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノ−6−ペンタフルオロフェニルフェノールの塩酸塩(B−27DMHCl)が白色固体として得られた。
塩酸塩(B−27DMHCl,5.0g,7.7mmol)、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(200mL)および酢酸エチル(100mL)の混合物を室温、アルゴン雰囲気下で2時間攪拌した。得られた反応混合物より、酢酸エチルで目的化合物を抽出し、有機層を食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水した後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を除去した。
粗生成物を石油エーテルと酢酸エチルの混合溶媒で洗浄し、目的とする2−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスファノ−6−ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B−27DM)を白色固体として得た(2.8g,5.0mmol,60%収率)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.72(dq,J=7.6,1.5Hz,1H),7.25(br(s),1H),7.21(t,J=8.3Hz,2H),7.09(d,J=6.8Hz,1H),6.87(dt,J=7.6,1.0Hz,1H),6.48(dd,J=8.3,3.0Hz,4H),3.36(s,12H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm):−59.1(s).
下記のスキームにしたがって、リガンドB−111を合成した。
(ii)化合物3(5.26g,20mmol)のTHF溶液(40mL)にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(8mL,20mmol,2.5M)を0℃にて加え、室温にて2時間攪拌し、化合物4を含む溶液を得た。これに前段の化合物2のTHF溶液を−78℃にて加え、室温にて30分攪拌し、化合物5を含む溶液を得た。
(iii)化合物6(2.72g,20mmol)のTHF溶液を0℃に冷却し、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(8mL,20mmol,2.5M)を滴下し、室温にて2時間攪拌した。これに前段の化合物5の溶液を−78℃にて滴下し、室温にて16時間攪拌した。水を加えて反応を停止させ、溶媒を減圧下にて除去し、新たに酢酸エチルを加えて水槽を分離した。油相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物7を得た(6.0g,10.6mmol)。
(iv)化合物7(2.83g,5mmol)をTHF(30mL)に50℃で溶解させ、0℃に冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2mL,5mmol,2.5M)を滴下し、室温で2時間攪拌した。次に、ヘキサフルオロベンゼン(2.3g,12.5mmol)を−78℃にて滴下し、室温にて16時間攪拌した。水を加えて反応を停止させ、溶媒を減圧下にて除去し、新たに酢酸エチルを加え、水相を分離した。油相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=10:1)で精製し、化合物8(0.5g,0.7mmol)を得た。
(v)化合物8(5.2g,7.3mmol)に1規定塩酸の酢酸エチル溶液(80mL)を0℃にて加え、徐々に室温まで昇温した後、1.5時間攪拌した。溶媒を減圧下にて除去し、残渣を飽和重曹水溶液にて中和し、酢酸エチルを加えて水相を分離した。油相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧乾燥すると化合物B−111が得られた(4.1g,6.0mmol)。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.60(m,1H),7.25(d,J=4.0Hz,1H),7.17(m,6H),7.04(d,J=7.3Hz,1H),6.98(t,J=7.4Hz,2H),6.72(dt,J=7.6Hz,0.76Hz,1H),6.63(m,5H),6.39(dd,J=8.4Hz,3.0Hz,2H),3.58(s,6H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm)−59.1(s).
下記のスキームにしたがって、リガンドB−147を合成した。
(ii)化合物2(6.00g,18.4mmol)のTHF溶液(30mL)に、イソプロピルマグネシウムクロライドのTHF溶液(2.0M,9.2mL,18.4mmol)を−78℃にて加えて、室温にて2時間攪拌し、化合物5を含む溶液を得た。
(iii)化合物6(2.54g,18.4mmol)のTHF溶液(20mL)に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,7.4mL,18.4mmol)を0℃にて加え、室温にて2時間攪拌した。ここに三塩化リン(8.0mL,92mmol)を−78℃にて加え、室温にて1時間攪拌した。過剰の三塩化リンおよび溶媒を減圧下にて除去し、新たにTHF(20mL)を加え、化合物7を含む溶液を得た。ここに前段の化合物5の溶液を−78℃にて滴下し、室温にて1時間攪拌し、化合物8を含む溶液を得た。
(iv)化合物3(4.83g,18.4mmol)のTHF溶液(20mL)に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,7.4mL,18.4mmol)を0℃にて加え、室温にて2時間攪拌し、化合物4を含む溶液を得た。
また、化合物8に化合物4の溶液を0℃にて加え、室温にて16時間攪拌した。水を加えて反応を停止させ、溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルで抽出した。有機相は、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は、石油エーテル/酢酸エチル(10/1)を展開液としてシリカゲルカラムにて精製し、化合物9を得た。
(v)化合物9(6.00g,9.6mmol)のTHF溶液(20mL)にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.5M,3.9mL,9.8mmol)を0℃にて加え、室温にて2時間攪拌した。ここに、ヘキサフルオロベンゼン(4.5g,24mmol)を0℃にて加え、室温にて14時間攪拌した。水を加えて反応を停止させ、溶媒を減圧下にて除去し、新たに酢酸エチルを加え、水相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下にて濃縮した。粗生成物を、石油エーテル/酢酸エチル(80/1,v/v)を展開液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物10を得た。
(vi)化合物10(6.5g,8.2mmol)を酢酸エチル(50mL)に溶解させ、塩酸の酢酸エチル溶液(4M,80mL)を0℃にて加えて、徐々に室温まで昇温した後に3時間攪拌した。減圧下にて溶媒を除去し、飽和重曹水溶液を加えて中和し、酢酸エチル(300mL)を加え、水相を分離した。油相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=80/1)にて精製し、化合物B−147(2.7g,3.6mmol,44%収率)を得た。
1HNMR(CDCl3,δ,ppm):7.63−7.59(m,1H),7.26−7.11(m,8H),7.04−6.96(m,4H),6.69−6.62(m,7H),6.58−6.53(m,3H),6.44(dd,J=8.4Hz,3.4Hz,1H),3.62(s,3H);31PNMR(CDCl3,δ,ppm)−60.1(s).
リガンドB−204を用いるエチレン・アクリル酸エステルの共重合
(1)錯体の形成
以下の操作は、すべて高純度アルゴン雰囲気下で行った。以下、ビス−1,5−シクロオクタジエンニッケル(0)をNi(COD)2と称する。
初めに4mlのスクリューキャップ付きバイアル瓶に、合成例1で得られたB−204(34mg)を秤り取った。
次に、Ni(COD)2(28mg)を20mlのバイアル瓶に秤り取り、トルエン(10ml)に溶解させ、10mMのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。得られた溶液は、黄色透明であった。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液(5.0ml)を、B−204を有するバイアル瓶に加え、スクリューキャップで密閉した後、30秒間振って攪拌し、溶液を得た。その後、溶液の色が次第に暗黄色から赤色に変化し、沈殿は見られなかった。室温で3時間静置した後、得られた溶液0.5mlを2mlのバイアル瓶に分取し、トルエン(1.5ml)で希釈し、B−204とNi(COD)2の反応生成物の2.5mM溶液を得た。ここで、反応生成物の濃度は、B−204とNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。錯体の形成は31PNMRにより確認した。31PNMR(CDCl3,δ,ppm)−3.62(s).
内容積2Lの誘導攪拌式オートクレーブに、乾燥トルエン(1L)およびコノモノマーとして所定量のアクリル酸エステルを導入した。攪拌しながらオートクレーブを所定温度に昇温した後、エチレンをオートクレーブに供給し、温度と圧力が所定の条件になるように調整した。調整終了後、上記(1)で得られた反応生成物を所定量供給し、共重合を開始させた。所定時間重合させた後、エタノールを投入して反応を停止させた。未反応ガスを除去した後、オートクレーブを開放し、濾過、溶媒洗浄、加熱乾燥を行い、共重合体を得た。
尚、実施例1は、トリ−n−オクチルアルミニウム(TNOA)の非存在下での共重合であり、一方、実施例2は、TNOAの存在下での共重合である。
共重合に用いたコモノマーの種類と量については、表2に記載した。なお、コモノマーは、Aldrich社製のAldrich Inhibitor Removerを充填したカラムを用いて、高純度アルゴン雰囲気下、室温で精製した後に使用した。また、重合に用いたTNOA量、重合温度、重合中のオートクレーブ内圧についても、表2に記載した。
表2において、tBAは、アクリル酸tブチルを示す。また、活性Vpは、重合に用いた錯体1molあたり、重合時間1時間あたりの共重合体収量(kg)を表す。なお、Vpは、B−204とNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。得られた重合体に関するGPCおよびDSC測定結果についても、表2に記載した。
B−27DMを用いるエチレンのホモ重合およびエチレン・アクリル酸エステルの共重合
(1)錯体の形成
リガンドとして合成例2で得られたB−27DM(28mg)を使用した以外は、実施例1と同様にして錯体の形成を行った。
錯体として、上記(1)で得られた化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・アクリル酸エステルの共重合を行った(比較例2、5)。なお、比較例1のエチレンのホモ重合を行う場合には、アクリル酸エステルの仕込みは行わなかった。結果を表3に示す。
尚、比較例1、2は、TNOAの非存在下での共重合であり、一方、比較例5は、TNOAの存在下での共重合である。
B−111を用いるエチレン・アクリル酸エステルの共重合
(1)錯体の形成
リガンドとして合成例3で得られたB−111(24mg)を使用した以外は、実施例1と同様にして、錯体の形成を行った。
錯体として上記(1)で得られた化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・アクリル酸エステルの共重合を行った。結果を表3に示す。
尚、比較例3は、TNOAの非存在下での共重合であり、一方、比較例6は、TNOAの存在下での共重合である。
B−147を用いるエチレン・アクリル酸エステルの共重合
(1)錯体の形成
リガンドとして合成例4で得られたB−147(24mg)を使用した以外は、実施例1と同様にして、錯体の形成を行った。
錯体として上記(1)で得られた化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・アクリル酸エステルの共重合を行った。結果を表3に示す。
尚、比較例4は、TNOAの非存在下での共重合であり、一方、比較例7は、TNOAの存在下での共重合である。
例えば、エチレン・アクリル酸エステルの共重合で、リガンドB−204とNi(COD)2との反応生成物のニッケル錯体を用いた実施例1、2と、リガンドB−27DMとNi(COD)2との反応生成物のニッケル錯体を用いた比較例2、5との対比から、リガンドB−27DMでのR4とR5が同一(具体的には、2,6−ジメトキシフェニル基)である比較例2、5に比べて、実施例1、2は、リガンドB−204でのR4及びR5の少なくとも一つは、芳香環のオルト位にOCH(R14)(R15)を2個含有する芳香族炭化水素基(具体的には、R4とR5が2,6−ジイソプロポキシフェニル基)を有することにより、Mwが高い重合体が得られていることがわかる。
Claims (9)
- 下記一般式(A)で表される金属錯体。
- 一般式(A)中、R4及びR5は、それぞれ独立に、芳香環のオルト位に、OCH(R14)(R15)を2個含有する芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
- 請求項1又は2に記載の金属錯体の存在下、α−オレフィンを重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
- 有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とする請求項4に記載のα−オレフィン重合体の製造方法。
- 一般式:Al(R16)3(式中、R16は、炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下で重合を行うことを特徴とする請求項4に記載のα−オレフィン重合体の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の金属錯体の存在下、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することを特徴とするα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
- 有機アルミニウム化合物の非存在下で重合を行うことを特徴とする請求項7に記載のα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
- 一般式:Al(R16)3(式中、R16は、炭素数1〜20の炭化水素基である。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下で重合を行うことを特徴とする請求項7に記載のα−オレフィン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法。
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