JP2014158055A - 液冷ジャケット - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量化を図ることができる液冷ジャケットを提供することを課題とする。
【解決手段】熱発生体が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体が流れるとともに一部が開口した凹部11を有する熱可塑性樹脂製のジャケット本体10に、凹部11の開口部を封止する金属製の封止体30が接合されている液冷ジャケットPであって、封止体30は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、封止体30は、ジャケット本体10との接触面にエッチング処理又は陽極酸化処理によって凸凹が形成されており、凹部分に熱可塑性樹脂が入り込んでいることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、液冷ジャケットに関する。
樹脂部材と金属部材とを接着又は機械的に固着させる技術は、自動車業界、産業機器業界等の広い分野から求められている。樹脂部材と金属部材とを比較的簡易に接合させる方法として接着材を用いることが挙げられるが、接着材では十分な強度が得られないという問題があった。そこで、特許文献1には、アルミニウム合金製の金属部材を予め金型に挿入した後、当該金型に樹脂塑性物を射出して両部材を接合する技術が開示されている。
特開2007−50630号公報
従来、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の熱発生体を冷却するために用いられる液冷ジャケットが知られている。当該液冷ジャケットは、さらなる軽量化が求められている。
このような観点から本発明は、軽量化を図ることができる液冷ジャケットを提供することを課題とする。
このような課題を解決するために本発明は、熱発生体が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体が流れるとともに一部が開口した凹部を有する熱可塑性樹脂製のジャケット本体に、前記凹部の開口部を封止する金属製の封止体が接合されている液冷ジャケットであって、前記封止体は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、前記封止体は、前記ジャケット本体との接触面にエッチング処理又は陽極酸化処理によって凸凹が形成されており、凹部分に熱可塑性樹脂が入り込んでいることを特徴とする。
かかる構成によれば、ジャケット本体が樹脂製であるため、軽量化を図ることができる。また、ジャケット本体の凹部分に溶融した熱可塑性樹脂が入り込み、ジャケット本体と封止体との接触面積が増加するため、より強固に接合することができる。
また、前記封止体は、蓋板部と、前記蓋板部に形成されるとともに前記凹部に向けて延設された複数のフィンと、を備え、前記凹部の底面と複数の前記フィンとで前記凹部内に筒状の空間が区画されていることが好ましい。
かかる構成によれば、前記凹部の底面と複数の前記フィンとで区画された空間を、熱輸送流体が流れる流路とすることができる。
本発明に係る液冷ジャケットによれば、軽量化を図ることができる。
第一実施形態に係る樹脂部材と金属部材の接合方法を示した斜視図である。 摩擦攪拌用回転ツールを示した図であって、(a)は、断面図、(b)は、底面図である。 第二実施形態に係る液冷ジャケットを示した分解斜視図である。 第二実施形態に係る液冷ジャケットの封止体を下方から臨む斜視図である。 第二実施形態に係る摩擦攪拌工程を段階的に示した平面図である。 図5の(a)のI−I線断面図である。 第二実施形態に係る摩擦攪拌工程の変形例を示した断面図である。 第三実施形態に係る樹脂部材と金属部材の接合方法を示した斜視図である。 実施例を説明するための斜視図である。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態においては、板状の樹脂部材2と、板状の金属部材3とを接合して複合部材1を形成する場合を例にして説明する。
本実施形態に係る樹脂部材と金属部材の接合方法(以下、単に「接合方法」という)は、樹脂部材2と金属部材3とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、金属部材3に対して摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程とを含む。
まず、重ね合わせ工程では、図1に示すように、樹脂部材2の上に金属部材3を載せ置き、樹脂部材2の上面の一部と金属部材3の下面の一部とを接触させる。樹脂部材2は、本実施形態では、PET(Polyethylene terephthalate)製の板状部材である。樹脂部材2の材質は、PETに限定されるものではなく、熱可塑性樹脂の中から用途に応じて適宜選択すればよい。
金属部材3は、本実施形態では、アルミニウム合金製(A5052−O)の板状部材である。金属部材3は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料から用途に応じて適宜選択すればよい。以下、金属部材3を「アルミニウム合金部材3」ともいう。
次に、摩擦攪拌工程では、図2の(a)及び(b)に示すように、回転ツールG(以下、摩擦攪拌用回転ツールGともいう)を用いて、アルミニウム合金部材3の上面側からアルミニウム合金部材3に対して摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌用回転ツールGは、略円柱状を呈するショルダー部G1と、ショルダー部G1の下面(端面)から突出したピン部G2とを有する。摩擦攪拌用回転ツールGは、工具鋼などアルミニウム合金部材3よりも硬質の金属材料からなる。ピン部G2は、図2の(b)に示すように、平面視渦巻き状を呈する渦巻き部G11と、ショルダー部G1の中央に形成され平面視円形状を呈する円形部G12とを有する。ショルダー部G1及びピン部G2の形状、大きさ等は、接合する対象物に応じて適宜設定すればよい。また、ピン部G2を設けずに、ショルダー部G1の下面(端面)が平坦な摩擦攪拌用回転ツールを用いてもよい。
摩擦攪拌工程では、樹脂部材2及びアルミニウム合金部材3を移動不能に拘束した後、摩擦攪拌用回転ツールGの下面(端面)をアルミニウム合金部材3に対向させ、アルミニウム合金部材3の上面の任意の位置に所定の深さで押し込み(押圧し)、アルミニウム合金部材3の長手方向に沿って摩擦攪拌用回転ツールGを相対的に移動させる。摩擦攪拌用回転ツールGの回転速度及び進行速度は、特に制限されるものではないが、例えば、回転速度1000rpm、進行速度300mm/minで移動させる。
アルミニウム合金部材3の上面には、摩擦攪拌用回転ツールGの移動軌跡に沿って塑性化領域Wが形成される。ここで、「塑性化領域」とは、摩擦攪拌用回転ツールGの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、摩擦攪拌用回転ツールGが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。本実施形態では、塑性化領域Wが樹脂部材2に接触しない程度の押込み量で摩擦攪拌を行っている。なお、摩擦攪拌によってアルミニウム合金部材3の上面に発生したバリは切削加工により切除することが好ましい。
かかる接合方法によれば、樹脂部材2とアルミニウム合金部材3との重ね代に対して、アルミニウム合金部材3の上方から回転した摩擦攪拌用回転ツールGを押圧して移動させることにより、その摩擦熱で樹脂部材2の表面(表層部分)に係る樹脂が溶融し、温度低下に伴って再び硬化する。これにより、樹脂部材2がアルミニウム合金部材3の下面に溶着して接合される。つまり、摩擦攪拌用回転ツールGを押圧するだけで、両部材を比較的用容易に接合することができる。また、前記した従来方法では、樹脂の射出成形と、樹脂部材とアルミニウム合金部材との接合を同時に行っていたため既存の部材に対して接合することは不可能であったが、本実施形態に係る接合方法によれば既存の樹脂部材2及びアルミニウム合金部材3に対して接合することができる。
また、所望の接合箇所に対して摩擦攪拌用回転ツールGを押圧するだけなので、設計の自由度を高めることができる。また、摩擦攪拌用回転ツールGの端面をアルミニウム合金部材3に押圧することで、金属部材をバランスよく押圧することができるため、接合精度を高めることができる。また、摩擦攪拌によって形成される塑性化c領域Wが、樹脂部材2に接触するように接合してもよいが、本実施形態のように塑性化領域Wが樹脂部材2に接触しない程度に浅めに摩擦攪拌を行っても接合することができる。
なお、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部G1の外径を、アルミニウム合金部材3の厚みの2〜5倍に設定することが好ましい。また、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量(アルミニウム合金部材3の上面からショルダー部G1の下面までの押込み長さ)を、アルミニウム合金部材3の厚みの5%〜20%に設定することが好ましい。ショルダー部G1の外径又は摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量をこのように設定することで、接合強度を高めることができる。根拠については後記する。
また、アルミニウム合金部材3のうち少なくとも樹脂部材2と接触する面に、エッチング処理又はアルマイト(陽極酸化)処理を施して、当該接触面を凸凹に形成した後に、前記した摩擦攪拌工程を行うことが好ましい。かかる接合方法によれば、アルミニウム合金部材3の凹部分に溶融した樹脂が入り込み、樹脂部材2とアルミニウム合金部材3との接触面積が増加するため、より強固に接合することができる。
エッチング処理は、例えば、塩酸溶液中に塩化アルミニウム六水和物を添加して調製したエッチング液にアルミニウム合金部材3を浸漬させて行う。一方、アルマイト処理は、希硫酸やシュウ酸などを用いてアルミニウム合金を陽極として電気分解することにより、アルミニウム合金部材3の表面を電気化学的に酸化させて行う。
なお、アルミニウム合金部材3の表面を凸凹にする表面処理としては、エッチング処理やアルマイト処理に限定されるものではなく、例えばワイヤーブラシ等で表面を粗く削って凸凹を形成してもよい。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態では、図3に示すように、樹脂製のジャケット本体10と金属製(本実施形態ではアルミニウム合金製)の封止体30とを有する液冷ジャケットPを製造する場合を例にして説明する。液冷ジャケットPは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の熱発生体を冷却するために用いられる。
図3に示すように、液冷ジャケットPは、熱発生体であるCPU(図示せず)が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体である冷却水(図示せず)が流れるとともに一部が開口した凹部11を有するジャケット本体10に、凹部11の開口部12を封止する封止体30を固定して構成されている。
液冷ジャケットPは、その下方側の中央に、熱拡散シート(図示せず)を介してCPU(図示せず)が取り付けられるようになっており、CPUが取り付けられた状態で、液冷ジャケットP内を冷却水が流通することにより、CPUが発生する熱を受熱すると共に、内部を流通する冷却水と熱交換する。これによって、液冷ジャケットPは、CPUから受け入れた熱を冷却水に伝達し、その結果として、CPUを効率的に冷却する。なお、熱拡散シートは、CPUの熱を、ジャケット本体10に効率的に伝達させるためのシートであり、例えば銅などの高熱伝導性を有する金属から形成されている。
ジャケット本体10は、一方側(本実施形態では上側)が開口した浅底の箱体であって、その内側に凹部11が形成されており、底壁13と、周壁14とを有している。本実施形態では、ジャケット本体10は、熱可塑性樹脂により成形されている。これにより、液冷ジャケットPは軽量化が達成されており、取り扱い容易となっている。
ジャケット本体10の凹部11の開口周縁部12aには、周壁14の上面から一段下がった位置に段差面15が形成されている。周壁14の上面から段差面15までの距離(深さ)は、後記する封止体30の蓋板部31の厚さ寸法と同等である。段差面15の上には、封止体30の蓋板部31の周縁が載せられる。段差面15の幅W1は、冷却水が流れる凹部11の容積を確保するため、なるべく小さく設定することが好ましいが、本実施形態では、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部G1の外径よりも大きく形成されている。
周壁14の互いに対向する一対の壁部14a,14aには、凹部11に冷却水を流通させるための貫通孔16,16がそれぞれ形成されている。貫通孔16,16は、本実施形態では、壁部14a,14aの対向方向(図3中、X軸方向)に延出しており、円形断面を有し、凹部11の深さ方向中間部に形成されている。なお、貫通孔16の形状および位置は、これに限られるものではなく、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。
図3および図4に示すように、封止体30は、ジャケット本体10の凹部11の開口部12(図3参照)と同じ形状(本実施形態では正方形)の平面形状を有する板状の蓋板部31と、蓋板部31の下面に設けられた複数のフィン32,32…とを備えて構成されている。
複数のフィン32,32…は、互いに平行で且つ蓋板部31に対して直交して配置されており、蓋板部31と一体に構成されている。これにより、蓋板部31とフィン32,32…との間において、熱が良好に伝達するようになっている。図3に示すように、フィン32,32…は、貫通孔16,16が形成された周壁14の壁部14a,14aと直交する方向(図3中、X軸方向)に延出して配置されている。フィン32は、凹部11の深さ寸法と同等の高さ(深さ)寸法(図3中、Z軸方向長さ)を有しており、その先端部が凹部11の底面に当接するようになっている。これによって、封止体30がジャケット本体10に取り付けられた状態で、封止体30の蓋板部31と、隣り合うフィン32,32と、凹部11の底面とで筒状の空間が区画され、その空間が、冷却水が流れる流路33(図5の(a)参照)として機能することとなる。また、フィン32,32…は、凹部11の一辺の長さ寸法よりも短い長さ寸法(図3中、X軸方向長さ)を有しており、その両端は、凹部11の周壁14の各壁部14a,14aの内壁面とそれぞれ所定の間隔を隔てるように構成されている。これによって、封止体30がジャケット本体10に取り付けられた状態で、フィン32,32…の両端外側の、凹部11の周壁14の壁部14aとの間の空間が、貫通孔16から、フィン32の延出方向と直交する方向(図3中、Y軸方向)へ広がる流路ヘッダ部34(図5の(a)参照)を構成することとなる。
封止体30は、アルミニウム合金から形成されている。封止体30は、アルミニウム合金から形成されブロックを切削加工することで形成されている。なお、封止体30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料から用途に応じて適宜選択すればよい。
次に、液冷ジャケットPの製造方法について図5を用いて具体的に説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、ジャケット本体10に封止体30を載置する載置工程と、突合部40の内側に沿って摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程とを含む。
載置工程では、図3及び図5の(a)に示すように、封止体30を、フィン32が下側になるようにして、ジャケット本体10の凹部11に挿入し、封止体30の蓋板部31を、段差面15上に載置する。ここで、ジャケット本体10の凹部11の開口周縁部12aと、封止体30の周縁部30aとが突き合わされ、突合部40が構成される。
摩擦攪拌工程では、この突合部40の内側に沿って摩擦攪拌用回転ツールGを相対移動させる。即ち、摩擦攪拌用回転ツールGの下面(端面)を封止体30に対向させ、所定の押込み量で押圧した後、ジャケット本体10の段差面15(図3参照)と、封止体30の蓋板部31とが重なり合う重ね代に沿って移動させる。このとき、ジャケット本体10が移動しないように、ジャケット本体10の周壁14の周面に、ジャケット本体10を四方向から囲む治具(図示せず)を予め当てておくのが好ましい。
摩擦攪拌工程では、図5の(a)及び図6に示すように、摩擦攪拌用回転ツールGの挿入位置(始端54a)を、突合部40の内側に設定する。そして、摩擦攪拌用回転ツールGの回転中心Qを、段差面15の幅方向の中心に重ねた状態で、摩擦攪拌用回転ツールGを移動させつつ蓋板部31を摩擦攪拌する。
その後、摩擦攪拌用回転ツールGの回転および移動を継続し、図5の(b)に示すように、摩擦攪拌用回転ツールGを開口部12の周りを一周させて塑性化領域Wを形成する。このとき、摩擦攪拌用回転ツールGにおける始端54a(図5の(a)参照)と終端54b(図5の(b)参照)とがオーバーラップしており、塑性化領域Wの一部が重複するように構成されている。
以上のように、摩擦攪拌用回転ツールGを突合部40(図5の(a)参照)の内側に沿って一周させて摩擦攪拌を行い、ジャケット本体10に封止体30を固定することで、液冷ジャケットPが形成される。
本実施形態に係る液冷ジャケットPの製造方法によれば、アルミニウム合金製の封止体30に対して摩擦攪拌することにより、その摩擦熱でジャケット本体10に係る樹脂が溶融し、再度硬化する際に封止体30と溶着し強固に接合される。つまり、摩擦攪拌用回転ツールGを押圧して相対的に移動させるだけで、ジャケット本体10と封止体30とを接合できるため、容易に液冷ジャケットPを製造することができる。また、摩擦攪拌用回転ツールGを封止体30の周囲に沿って一周させることで接合強度を高めるとともに、接合の作業性を高めることができる。また、塑性化領域Wが段差面15に接触しない程度の押込み量であっても接合することができる。
なお、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部G1の外径を、封止体30の蓋板部31の厚みの2〜5倍に設定することが好ましい。また、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量(蓋板部31の上面からショルダー部G1の下面までの押込み長さ)を、封止体30の蓋板部31の厚みの5%〜20%に設定することが好ましい。ショルダー部G1の外径又は摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量をこのように設定することで、接合強度を高めることができる。根拠については後記する。
また、摩擦攪拌工程を行う前に、封止体30の蓋板部31のうち、少なくともジャケット本体10の段差面15と接触する面に前記したエッチング処理又はアルマイト処理を施してもよい。アルミニウム合金製である封止体30の表面を凸凹に形成することで、当該凹部分に溶融した樹脂が入り込むため、接触面積が増大し、より強固に接合することができる。
なお、本実施形態では、ジャケット本体10に段差面15を備え、段差面15に封止体30を載置する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ジャケット本体10の周壁14の上面に封止体30の蓋板部31を載置し、周壁14と蓋板部31の重ね代に沿って、封止体30の上方から摩擦攪拌用回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌工程を行ってもよい。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第一実施形態及び第二実施形態では、摩擦攪拌用回転ツールGを用いて、摩擦攪拌工程を行って樹脂部材2と金属部材3とを接合したが、第三実施形態では、回転ツールFを用いて、摩擦工程を行う点で第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
本実施形態にかかる接合方法では、樹脂部材2と金属部材3とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、重ね合わせた部材に対して摩擦接合を行う摩擦工程とを含む。重ね合わせ行程については、第一実施形態と同等であるため説明は省略する。
摩擦工程では、図8に示すように、回転ツールF(以下、摩擦接合用回転ツールFともいう)を用いて樹脂部材2及び金属部材3(アルミニウム合金部材3)に対して摩擦接合を行う。
摩擦接合用回転ツールFは、回転軸F1と、回転軸F1の先端に設けられたツール本体F2とを有する。回転軸F1とツール本体F2は、同軸で形成されている。回転軸F1の基端側は、図示しない駆動装置に連結されている。ツール本体F2は、駆動装置の駆動が回転軸F1を介して伝達されて軸周りに高速回転する。ツール本体F2は、円板状を呈し、工具鋼等アルミニウム合金よりも硬質の金属材料からなる。
摩擦接合用回転ツールFの形状、大きさ等は、接合する部材に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では、例えば、ツール本体F2の直径が100mm、周面F3の幅が4mmのものを採用した。また、摩擦接合用回転ツールFの押込み量、回転数、接合速度(送り速度)は、接合する部材に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態では、例えば、押込み量を0.2mm、回転数を3000rpm、接合速度を500〜1500mm/minに設定した。
摩擦工程では、樹脂部材2及びアルミニウム合金部材3を移動不能に拘束した後、摩擦接合用回転ツールFを回転させつつ、ツール本体F2の周面F3をアルミニウム合金部材3の上面に所定の深さで押し込み(押圧し)、樹脂部材2とアルミニウム合金部材3の重ね代に沿って移動させる。摩擦接合によれば、摩擦接合用回転ツールFとアルミニウム合金部材3との摩擦熱によって、樹脂部材2の表面が溶融し、再度硬化する際にアルミニウム合金部材3と溶着し強固に接合される。
第三実施形態にかかる接合方法によっても、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、摩擦工程では、第一実施形態に比べて小さい押圧力で接合することができるため、接合する部材が薄い場合に適している。
なお、第三実施形態では、アルミニウム合金部材3のうち少なくとも樹脂部材2と接触する面に、エッチング処理又はアルマイト(陽極酸化)処理を施して、当該接触面を凸凹に形成した後に、前記した摩擦工程を行ってもよい。また、第三実施形態では、板状の樹脂部材2とアルミニウム合金部材3とを接合する場合を例にして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第二実施形態に記載したように、液冷ジャケットを製造する際に、摩擦攪拌工程に替えて、摩擦工程を行ってもよい。
摩擦攪拌用回転ツールGを用いた実施例1〜実施例3と、摩擦接合用回転ツールFを用いた実施例4を行った。
図9は、実施例1〜実施例3を説明するための斜視図である。実施例1〜実施例3では、図9に示すように、板状の樹脂部材2と、板状のアルミニウム合金部材3とを重ね合わせた後、当該重ね代に対してアルミニウム合金部材3の上方から摩擦攪拌用回転ツールGをスポット的に押圧し、摩擦熱により接合された複合部材1の破壊強度を測定した。破壊強度は、図9で示す複合部材1を公知の引張試験機に設置し、樹脂部材2の外側端部及びアルミニウム合金部材3の外側端部をそれぞれが離間する方向に引張り、破壊して測定した。
実施例1〜実施例3における樹脂部材2は、PET製であって、長さ100mm、幅30mm、厚さ3mmで形成されている。一方、アルミニウム合金部材3は、長さ100mm、幅30mm、厚さ3mm又は5mmで形成されている。樹脂部材2とアルミニウム合金部材3の重ね代は、30mmである。
実施例1では、摩擦攪拌用回転ツールGの最適な押込み量を導くために、試験1−a〜試験1−fの六種類の条件下で、所定の押込み量で接合した場合における破壊強度(引張強度)を測定した。各試験の条件を、表1に示す。
Figure 2014158055
試験1−a〜試験1−fにおいて、所定の押込み量における破壊強度の結果を表2に示す。なお、表2、表4及び表6における判定欄は、「×」が接合せず、「△」が接合しているが引張強度が弱い、「○」が十分な引張強度であることを示す。
Figure 2014158055
表2に示すように、試験1−a及び試験1−bの結果をみると、押込み量が0.2mm以上であると破壊強度が3000N以上あるが、押込み量が0.05mm以下であると、押込み量が浅すぎて樹脂部材2の表層部が溶融しないため接合しない。また、押込み量が0.1mmであるとアルミニウム合金部材3の板厚が5mmの場合は接合せず、板厚が3mmであると接合はするが破壊強度が小さいことがわかった。押込み量が0.2mmである場合、アルミニウム合金部材3の板厚に対する割合は、板厚が3mmの場合は6.7%あり、板厚が5mmの場合は4%となる。
また、試験1−c及び試験1−d、試験1−e及び試験1−fをみると、試験1−a及び試験1−bと略同様の結果になったことから、アルミニウム合金部材3の種類によっては、破壊強度には影響がないことがわかった。
以上より、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量を、アルミニウム合金部材3の板厚の5%よりも小さく設定したとしても、樹脂部材2とアルミニウム合金部材3とを接合することは可能であるが、十分な引張強度を得るためには、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量を、アルミニウム合金部材3の板厚の5%以上に設定することが望ましい。
一方、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量を大きく設定すると、摩擦攪拌により形成される塑性化領域が樹脂部材2と接触し、メタルと樹脂が混合される可能性がある。また、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量を大きく設定すると、摩擦攪拌装置に過負荷が作用する。したがって、これらを考慮すると、摩擦攪拌用回転ツールGの押込み量をアルミニウム合金部材3の板厚の20%以下に設定することが望ましい。
実施例2では、摩擦攪拌用回転ツールGの最適なショルダー部G1(図2参照)の外径を導くために、試験2−a〜試験2−bの二種類の条件下で、所定のショルダー部G1の外径を備えた摩擦攪拌用回転ツールGで接合した場合における破壊強度(引張強度)を測定した。各試験の条件を表3に示す。
Figure 2014158055
試験2−a、試験2−bにおいて、所定のショルダー部の外径における破壊強度の結果を表4に示す。
Figure 2014158055
表4に示すように、試験2−aにおいては、ショルダー部の外径がφ10.0mmよりも大きいと破壊強度が3000N以上あるが、φ7.5mm以下であると破壊強度が著しく低下した。
一方試験2−bにおいては、ショルダー部の外径がφ7.5mm以上であると破壊強度が3000N以上あるが、φ5.0mm以下であると破壊強度が著しく低下した。
以上より、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部G1の外径をアルミニウム合金部材3の板厚の2倍よりも小さく設定したとしても、樹脂部材2とアルミニウム合金部材3とを接合するこうとは可能であるが、十分な引張強度を得るためには、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部G1の外径をアルミニウム合金部材3の板厚の2倍以上にすることが望ましい。なお、ショルダー部G1の外径をアルミニウム合金部材3の板厚の5倍より大きくしても強度には変化がないため、摩擦攪拌装置への負荷を考慮すると、ショルダー部G1の外径は、アルミニウム合金部材3の板厚の5倍以下に設定することが望ましい。
実施例3では、アルミニウム合金部材3の表面を凸凹に形成した場合における破壊強度との関係について試験を行った。試験3−a〜試験3−cの三種類の条件下で、アルミニウム合金部材3の表面に対して所定の処理を行った後に接合を行った場合における破壊強度(引張強度)を測定した。各試験の条件を表5に示す。
Figure 2014158055
試験3−a〜試験3−cにおいて、アルミニウム合金部材3の各表面処理における破壊強度の結果を表6に示す。
表6中の、アルミニウム合金部材3に施す表面処理のうち「処理なし」は、アルミニウム合金部材3に表面処理を施していない。
また、「エッチングA」では、以下に示すエッチング前処理及びエッチング本処理を行う。エッチング前処理では、まず、アルミニウム合金部材3を30wt%硝酸溶液に常温で5分間浸漬した後に、イオン交換水で十分に水洗し、次に、5wt%水酸化ナトリウム溶液に50℃で1分間浸漬した後に水洗し、さらに、30wt%硝酸溶液に常温で3分間浸漬した後に水洗する。
エッチング本処理では、エッチング前処理を行ったアルミニウム合金部材3を25wt%塩酸溶液中に54g/Lの塩化アルミニウム六水和物を添加して調製したエッチング液(塩素イオン濃度:48g/L)中に66℃で4分間浸漬した後に水洗するエッチング処理を施し、さらに、30wt%硝酸溶液に常温で3分間浸漬した後に水洗し、120℃の熱風で5分間乾燥させた。
また、「エッチングB」では、前記したエッチング前処理を行った後に、以下に示すエッチング本処理を行う。即ち、このエッチング本処理では、エッチング前処理を行った後のアルミニウム合金部材3を50wt%リン酸溶液に66℃で4分間浸漬して水洗し、その後に120℃の熱風で5分間乾燥させた。
また、「アルマイト封孔無し」では、以下に示すアルマイト前処理、アルマイト本処理を行う。アルマイト前処理では、まず、アルミニウム合金部材3を30wt%硝酸溶液に常温で5分間浸漬した後に、イオン交換水で十分に水洗し、次に、5wt%水酸化ナトリウム溶液に50℃で1分間浸漬した後に水洗し、さらに、30wt%硝酸溶液に常温で3分間浸漬した後に水洗する。
アルマイト本処理では、アルマイト前処理を行った後のアルミニウム合金部材3を硫酸濃度160g/Lの溶液中で液温18℃、皮膜厚さが10μmになるよう陽極酸化した後、水洗し、120℃の熱風で5分間乾燥させた。
また、「アルマイト封孔有り」では、前記したアルマイト前処理を行なった後に、前記したアルマイト本処理を行う。さらに、その後沸騰水中で10分間煮沸させる。これにより、「アルマイト封孔有り」では、封孔処理が行われて細孔が狭められている。
また、「ワイヤーブラシ」では、公知のワイヤーブラシを用いてアルミニウム合金部材3の表面を粗く切削して凸凹に処理した。
Figure 2014158055
表6に示すように、試験3−a及び試験3−bの結果を見ると、アルミニウム合金部材3の表面が凸凹になるように表面処理を施した方が、引張強度が高いことが分かった。また、アルミニウム合金部材3に表面処理を施さない場合であっても、十分な引張強度が得られることがわかった。
また、アルミニウム合金部材3の板厚を薄くしつつ、摩擦攪拌用回転ツールGのショルダー部の外径も小さくした試験3−cの結果を見ると、「エッチングA」、「エッチングB」及び「アルマイト封孔無し」の表面処理を施した場合に高い引張強度が得られることが分かった。
実施例4では、第三実施形態(図8参照)で説明した接合方法において、接合された部材の破壊強度を測定した。破壊強度は、接合された部材を引張試験機に設置し、樹脂部材2の外側端部及びアルミニウム合金部材3の外側端部をそれぞれ離間する方向に引張り、破壊して測定した。
実施例4における樹脂部材2は、PET製であって、厚さは5mmになっている。アルミニウム合金部材3は、1100合金であって、厚さ1mm又は2mmになっている。樹脂部材2とアルミニウム合金部材3との重ね代は30mmである。
摩擦接合用回転ツールFは、ツール本体F2の直径が100mm、幅4mmのツールAと、ツール本体F2の直径が105mm、幅10mmのツールBの二種類を採用した。ツールAについては、回転数を3000rpmに設定し、ツールBについては、回転数を2857rpmに設定した。ツールA及びツールBともに、周速度を942000(mm/min)に設定した。
実施例4では、各部材の厚さ及び回転ツールの組み合わせを変えて3種類(試験4〜試験6)の前提条件を設定し、押込み量及び接合速度(送り速度)をパラメータとして破壊試験を行った。
試験4の結果を表7に示す。
Figure 2014158055
試験5の結果を表8に示す。
Figure 2014158055
表7及び表8より、ツールA及びツールBとも押込み量が0.2mmでは接合強度が低く、押込み量が0.4mmでは接合強度が高かった。接合速度が500mm/minでは、樹脂部材2から破壊した。接合速度が1500mm/minまでは十分な接合強度を有するが、2000mm/minでは接合強度が低かった。
一方、アルミニウム合金部材3の板厚の影響を見るために、アルミニウム合金部材3の厚さを1mmとした試験6の結果を表9に示す。
Figure 2014158055
表9に示すように、アルミニウム合金部材3の板厚を1mmとしても、板厚を2mmとした場合(表5参照)と略同等の結果が得られた。
1 複合部材
2 樹脂部材
3 金属部材(アルミニウム合金部材)
10 ジャケット本体(樹脂部材)
11 凹部
12 開口部
12a 開口周縁部
14 周壁
15 段差面
30 封止体(アルミニウム合金部材)
30a 周縁部
31 蓋板部
32 フィン
F 回転ツール(摩擦接合用回転ツール)
G 回転ツール(摩擦攪拌用回転ツール)
P 液冷ジャケット

Claims (2)

  1. 熱発生体が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体が流れるとともに一部が開口した凹部を有する熱可塑性樹脂製のジャケット本体に、前記凹部の開口部を封止する金属製の封止体が接合されている液冷ジャケットであって、
    前記封止体は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、
    前記封止体は、前記ジャケット本体との接触面にエッチング処理又は陽極酸化処理によって凸凹が形成されており、凹部分に熱可塑性樹脂が入り込んでいることを特徴とする液冷ジャケット。
  2. 前記封止体は、蓋板部と、前記蓋板部に形成されるとともに前記凹部に向けて延設された複数のフィンと、を備え、
    前記凹部の底面と複数の前記フィンとで前記凹部内に筒状の空間が区画されていることを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケット。
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