JP2014156991A - ボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法 - Google Patents

ボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ボイラの負荷あるいはボイラ圧力やドレンの状態等における広い範囲の変動に対しても、ボイラへの供給水の適正かつ効率的な供給水量制御処理を行い、エネルギー効率の高いボイラの供給水量制御を行うこと。
【解決手段】 ボイラ10への供給水量を調整する流量調整機構1と、流量調整機構1の1次側の給水圧力検出器2と、流量調整機構1の制御量を出力する変換部3と、を備え、ボイラ10の圧力信号,ボイラ水の水位信号および1次側の給水圧力信号を指標とし、水位信号と予め設定された制御水位SV1との偏差から演算され、作成された制御量に対し、ボイラ10の圧力と給水圧力の差圧に基づき補正用のレシオおよびバイアスの設定を行なって補正制御量を求め、得られた該補正制御量に基づきボイラの供給水量を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法に関し、特に、高圧のドレンを回収し、ボイラ供給水として供給する給水機構を備えたボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法に関するものである。
一般に、各種ボイラの安定運転には、ボイラの圧力やボイラ水の水位等を確保することが必要であり、ボイラに供給される供給水の流量(以下「供給水量」ということがある)の制御が不可欠である。と同時に、こうした給水制御装置においては、使用される供給水や加熱・冷却に用いる熱源を効率的に利用すること、あるいはこうしたボイラへの給水に用いる給水ポンプや操作弁等の特性を最大限利用して、優れた制御機能を有するコンパクトな構成が要求される。
例えば、図9に示すようなボイラにおける給水制御装置が挙げられる(例えば特許文献1参照)。ボイラの圧力に関係なく安定した給水量制御を行うことを課題とし、圧力発信器114からのボイラ圧力により給水ポンプ116の回転数を変化させて圧力による給水量の差を無くし、さらに、水位発信器112からのドラム水位レベルにより給水量を制御して、ボイラの圧力に関係なく安定した給水量制御を行う。ここで、110は蒸気ドラム、118は水位調節計,120はインバータ,122は水ドラム,124はバーナ,126は送風機を示す。
特開2003−240206号公報
しかし、上記のようなボイラの供給制御装置では、以下に挙げるような問題点や課題が生じることがあった。
(i)例えば、ボイラの温熱を利用して発生させた蒸気の全量あるいは一部は、ドレンとして負荷設備から回収され、ボイラ水として再利用される場合がある。このとき、回収された回収水の量は、負荷設備の稼動状態によって大きく変動することがある。また、ボイラの圧力や水位も大きく変動するとともに、その変動が連動しない場合も多い。特に短時間での変動が大きい場合には、供給水量の制御操作が十分機能しない場合がある。
(ii)特に、近年、エネルギーの有効利用の観点から、負荷設備から回収される回収水の圧力を生かし、高圧条件でボイラ水として利用する場合が多くなっている。このとき、従前のように、ボイラの圧力により給水ポンプを制御して供給水量を調整する方法では、給水ポンプの1次側(導入側)の圧力が変動した場合、適正な制御範囲から外れることによって供給水量の過不足が生じてボイラ水位の不安定化を招くことになる。
(iii)さらに、上記(ii)の場合、ボイラへの供給水量と負荷設備に対する蒸気供給量のバランスが崩れることにより、高圧のドレンを回収するシステムにおいては、ドレン回収率が低下し、システムの効率低下を招くことになる。
本発明の目的は、ボイラの負荷あるいはボイラの圧力やドレンの状態等における広い範囲の変動に対しても、ボイラへの供給水の適正かつ効率的な供給水量制御処理を行い、エネルギー効率の高いボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法を提供することにある。特に、高圧のドレンを再利用する場合の高圧条件下での圧力変動等に対しても、安定的な供給水量制御処理を可能とし、効率的な熱回収およびエネルギーの効率的な利用が可能で、燃料消費量の低減を可能とするボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明に係るボイラの供給水量制御システムは、ボイラへの供給水量を調整する流量調整機構と、供給水が導入される該流量調整機構の1次側の給水圧力を検出する1次側の給水圧力検出器と、該流量調整機構の制御量を出力する変換部と、を備え、
予め流量調整機構の給水機能として、ボイラの圧力が所定の条件において、供給水量/制御量が設定されるとともに、前記ボイラの圧力信号,ボイラ水の水位信号および前記1次側の給水圧力信号を指標とし、前記水位信号と予め設定された制御水位との偏差から演算され、作成された制御量に対し、前記ボイラの圧力と前記給水圧力の差圧に基づき補正用のレシオおよびバイアスの設定を行なって補正制御量を求め、得られた該補正制御量に基づきボイラの供給水量を制御することを特徴とする。
また、本発明に係るボイラの供給水量制御方法は、上記ボイラの供給水量制御システムのいずれかを用い、次の工程を有し、ボイラへ供給する供給水量をインバータ制御することを特徴とする。
(1)予めボイラの圧力から所定の供給水量に調整するための供給水量/制御量に係る実測情報を得る工程
(2)前記ボイラの圧力,ボイラ水の水位および前記流量調整機構の1次側の給水圧力に係る実測情報を得る工程
(3)前記水位の実測情報と予め設定された制御水位とを比較し、現在の実測水位に対する制御量を設定する工程
(4)前記ボイラの圧力と前記給水圧力の差圧を演算し、前記制御量に対して該差圧に基づく補正用のレシオおよびバイアスの設定を行ない、補正演算によって補正制御量を設定する工程
(5)前記補正制御量に基づき、前記流量調整機構を制動し、ボイラへの供給水量を制御する工程
ボイラの安定運転には、ボイラへの供給水量を、ボイラの負荷変動等様々な変動要因に対応した制御・操作を行う必要があり、上記のように、蒸気の負荷設備から回収されたドレン水、特に高圧条件のドレン水を再利用する場合には、給水ポンプの1次側での圧力(給水圧力)の変動の影響が大きな課題となっていた。本発明は、検証過程において、給水ポンプの供給水量/制御量に対する給水圧力(差圧)の影響が、単純な直線近似や2次関数近似ではなく、給水圧力(差圧)に対応した傾き(レシオ)およびシフト分(バイアス)の補正が必要であることを見出した。また、こうした補正を制御量の設定過程のどの段階で行うのが最適であるかを検証した。その結果、ボイラ水位等の実測情報から、ボイラへの供給水量の制御において、給水ポンプ等流量調整機構に対する制御量をボイラの圧力と1次側の給水圧力の差圧に基づき補正すること、具体的には、「差圧」という指標を用いて制御量に対する補正用のレシオおよびバイアスの設定を行うことによって、広い範囲の変動に対しても、ボイラへの供給水の適正かつ効率的な供給水量制御処理を行い、ボイラ水位の安定性が高く、ドレン水の回収率が高く、エネルギー効率の高いボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法を構成することを可能とした。また、流量調整に比例弁ではなくインバータを採用することで、省電力を図ることができ、エネルギー効率の高いボイラの供給水量制御システムおよび供給水量制御方法を構成することができる。さらに、高圧のドレンを回収するシステム等流量調整機構の1次側の圧力変動のある場合においても、ボイラ給水の安定制御を行うことで、高いドレン回収率を維持しシステム効率の向上を実現させるとともに、ボイラからの蒸気が供給される負荷設備の安定運転を図り、負荷設備を含む系全体の安定性を図ることができる。
本発明は、上記ボイラの供給水量制御システムであって、前記流量調整機構において、前記変換部によるインバータ制御によって前記供給水量が流量調整され、前記流量調整機構の最小制御流量が、前記補正制御量の最小値として設定されることを特徴とする。
また、本発明は、上記ボイラの供給水量制御方法であって、前記工程(1)に係る実測情報を得て、前記流量調整機構の前記ボイラへの供給水量の上限値および下限値を設定するとともに、流量調整機構の最小制御流量を前記補正制御量の最小値として設定する工程を有することを特徴とする。
一般に給水ポンプ等流量調整機構において、供給水量が少ない状態あるいは停止状態にすると、内部の動力源からの温熱によって供給水の温度上昇が生じることから、流量調整機構の稼動状態においては、所定流量(最小制御流量,ミニマムフロー)が流れることが好ましい。本発明は、ボイラへの供給水量の設定に当り、流量調整機構のこうした最小制御流量を含めた流量域を設定するとともに、上記補正制御量における補正用のレシオおよびバイアスの設定を利用して流量調整機構の最小制御流量および最大制御流量の設定を行うことによって、安定した供給水量の制御を図った。このとき、例えば給水ポンプの電動機の回転数制御等を流量調整機構のインバータ制御によって、差圧条件によらず精度よく供給水量/制御量を確保するとともに、過小流量状態の継続による給水ポンプの過熱・損傷を防止し、過大流量状態の継続による給水系機器の損傷を防止することができる供給水量制御システムおよび供給水量制御方法を構成することができる。
本発明は、上記ボイラの供給水量制御システムであって、前記流量調整機構の1次側と2次側を接続する分岐流路と、該分岐流路に設けられた第2流量調整機構を備え、該第2流量調整機構によって、前記流量調整機構と該分岐流路の間を循環する循環水の流量が調整され、前記ボイラへの供給水量が制御されることを特徴とする。
また、本発明は、上記ボイラの供給水量制御方法であって、前記流量調整機構の1次側と2次側を接続する分岐流路に設けられた第2流量調整機構によって、前記流量調整機構と該分岐流路の間を循環する循環水の流量を調整し、前記流量調整機構の最小制御流量を確保しつつ、前記ボイラへの供給水量を制御する工程を有することを特徴とする。
こうした構成によって、流量調整機構の最小制御流量の確保とボイラ水位の安定した制御の両立が可能となる。また、ボイラの蒸発量が最小の場合、つまり供給水量が最小制御流量以下の場合にのみ、分岐流路に設けられた第2流量調整機構による流量調整を行うことにより、給水ポンプの負担を軽減するとともに、省電力化を図ることが可能となる。
本発明に係るボイラの供給水量制御システムの基本構成例を示す全体構成図 流量調整機構の給水機能を例示する給水圧力/供給水量/制御量の特性図 基本構成例における補正制御量の設定プロセスを例示する概略図 基本構成例におけるレシオ補正およびバイアス補正を例示する概略図 本発明に係るボイラの供給水量制御システムの第2構成例を示す全体構成図 基本構成例におけるレシオ補正およびバイアス補正を例示する補正制御量の設定プロセス 本発明に係るボイラの供給水量制御システムの第3構成例を示す全体構成図 第3構成例におけるレシオ補正およびバイアス補正を例示する補正制御量の設定プロセス 従来技術に係るボイラ供給水の脱気装置を例示する全体構成図
本発明に係るボイラの供給水量制御システム(以下「本システム」という)は、ボイラへの供給水量の流量調整機構と、1次側の給水圧力検出器と、制御量を出力する変換部とを備え、予め供給水量/制御量が設定されるとともに、水位信号と予め設定された制御水位との偏差から演算され、作成された制御量に対し、ボイラの圧力と給水圧力の差圧に基づき補正用のレシオよびバイアスの設定を行なって補正制御量を求め、得られた該補正制御量に基づきボイラの供給水量を制御することを特徴とする。流量調整機構の1次側の圧力変動の広い範囲に対しても、ボイラ給水の安定制御を行い、高いドレン回収率を維持しシステム効率の向上を実現させることができる。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<本システムの基本構成例>
本システムの1つの実施態様として、その基本構成の概略を図1に示す(第1構成例)。ボイラ10への供給水量を調整する流量調整機構1,供給水が導入される流量調整機構1の1次側の給水圧力を検出する給水圧力検出器2,給水ポンプ1の制御量を出力する変換部(インバータ)3,および供給水量を調整するための制御量を演算・出力する演算・制御部4を備える。ボイラ10には、ボイラ本体11,ボイラの圧力を測定するボイラ圧力検出器12,およびボイラ水位を測定するための水柱管13とボイラ水位検出器14が備えられる。
〔流量調整機構について〕
流量調整機構1としては、例えば給水ポンプ1が該当する。給水ポンプ1の電動機の回転数をインバータ制御することによって、安定な供給水量/制御量を確保することができる。具体的には、インバータ3によって、給水ポンプ1の制御量(例えば回転周波数)がインバータ制御される。また、後述するように、給水ポンプ1の1次側と2次側を接続する分岐流路を設けて循環系を形成し、該分岐流路に第2流量調整機構(例えば制御弁)を設けて循環水の流量が調整可能な構成を用いることができる。
本システムでは、予め給水ポンプ1の給水機能として、所定の圧力条件において、「供給水量/制御量に係る特性」が設定される。具体的には、図2に例示するように、ボイラの圧力と給水ポンプ1の1次圧の差圧を0MPa(常圧)から1MPaまで増加させたときの、供給水量0〜7300L/hが得られる給水ポンプ1のインバータ制御量を、周波数を指標として表わした実測値を求め、給水ポンプ1についての供給水量/制御量に係る特性が設定される。
〔ボイラの構成〕
ボイラ10においては、燃焼熱の変換による高温の蒸気の発生に伴って、ボイラ水位が低下する。本システムでは、ボイラ水位の低下によるボイラ10の過熱を防ぐために、給水ポンプ1の給水機能を制御し、蒸発量に見合った所定の流量に調整された供給水がボイラ10に供給され、ボイラ水位を維持する構成を示す。ボイラ10は、ボイラ圧力検出器12によって、ボイラ本体11の内部圧力が測定されるとともに、ボイラ本体11に水柱管13が付設され、該水柱管13に設けられたボイラ水位検出器14によって、ボイラ水位が測定される。ボイラ圧力検出器12およびボイラ水位検出器14からの出力は、給水圧力検出器2からの出力とともに演算・制御部4に導入され、補正制御量が演算される。演算された補正制御量は、インバータ3を介して給水ポンプ1に出力され、ボイラ10への供給水量が調整される。
供給水は、給水圧力検出器2を介して供給ポンプ1に供給され、インバータ3を介して供給ポンプ1によって流量調整され、ボイラ本体11に供給される。新たな供給水には、軟水処理された市水あるいは地下水等が使用される。また、ボイラ10から負荷設備(図示せず)に供給され回収されたドレン水も供給水として使用することができる。このときのドレン水は、高圧・高温条件で回収される場合もあり、そのエネルギーを利用することによって、エネルギー効率の高い給水システムを構成することができる。ボイラ10において、低下するボイラ缶水の補充がされたボイラ水位は、ボイラ水位検出器14によって測定される。
〔演算・制御器〕
演算・制御器4には、実測情報として、ボイラ圧力検出器12からのボイラ圧力信号,給水圧力検出器2からの給水圧力信号、ボイラ水位検出器14からのボイラ水位信号が入力される。入力されたこれらの実測情報は、予め設定された制御水位SV1と実測水位の偏差から演算(例えばPID演算)された制御信号を出力し、この制御信号に圧力条件から得られる給水ポンプ1についての「供給水量/制御量に係る特性」を用いて、所定の演算(補正)処理がされて、給水ポンプ1に対する制御信号が作成される。
具体的には、図3に例示するように、ボイラ水位検出器14で実測されたボイラ水位信号PV1,ボイラ圧力検出器12で実測されたボイラ圧力信号PV2および給水圧力検出器2で実測された給水圧力信号PV3が作成される。予め制御水位SV1が設定されるとともに、ボイラ水位信号PV1は、制御水位SV1との偏差からPID演算され、第1制御信号MV1が作成される。ボイラ圧力信号PV2と給水圧力信号PV3は、減算処理され、差圧信号PV4が作成される。差圧信号PV4は、給水ポンプ1についての供給水量/制御量に係る特性を基に演算され、レシオ補正値PVrとバイアス補正値PVbが決定される。第1制御信号MV1は、まずレシオ補正値PVrによって補正演算(乗算)処理されて第2制御信号MV2に変換され、さらにバイアス補正値PVbによって補正演算(加算)処理されて第3制御信号MV3に変換される。変換された第3制御信号MV3は、インバータ3に送信され、給水ポンプ1が制動されて所望の供給水量が供給される。
〔レシオ補正とバイアス補正について〕
ここでいう「レシオ補正」および「バイアス補正」とは、ボイラ圧力と流量調整機構1の1次側の給水圧力の差圧が変動した場合でも、所望の供給水量を得てボイラ水位の制御性を向上させるために、変動に対応した流量調整機構1に対する制御量を補正することをいう。例えば、図2に例示するような流量調整機構1(給水ポンプ)の流量特性が得られる場合、全差圧条件で必要な供給水量0〜7300L/hを得るために、給水ポンプの動作させるべき周波数範囲は17.1〜60.0Hzとなる。ここで、給水ポンプに出力される制御出力4〜20mAに対し、周波数17.1〜60.0Hzが割り当てられる。必要な供給水量を0〜7300L/hとしたときに、制御出力の補正を行わない場合は、例えば差圧がΔP=0MPa時に必要な供給水量を得るためには、17.1〜38.8Hzの周波数範囲しか必要でない。しかし、実際には60.0Hzまで周波数は制御されるため、不要な周波数帯(38.8〜60.0Hz)を多く含むことによって、水位の制御性が低下し、ボイラ水位の不安定を引き起こすことになる。このような水位の制御性を改善するために、図4(A)のように、第1制御信号MV1の制御出力4〜20mAに対し、差圧条件ごとに決定される「レシオ補正」および「バイアス補正」を行い、いかなる差圧条件でも供給水量が0〜7300L/hとなるように、第3制御信号MV3の制御信号を作成することで、ボイラ水位の安定を図ることができる。
以上のように、「レシオ補正」とは、第1制御信号MV1に対して傾きを変更するものであり、「バイアス補正」とは、「レシオ補正」した制御信号の1次関数にシフト分を加えるものであり、具体的には、下式1となる。
第3制御信号MV3=第1制御信号MV1×レシオ補正値+バイアス補正値・・(式1)
各差圧条件に対するレシオ補正値およびバイアス補正値の具体的な数値を、図4(B)に例示する。
〔最小流量の設定について〕
本システムにおいては、ボイラ10への給水機能として重要な役割を担う流量調整機構1について最小制御流量が設定されることが好ましい。いわゆるミニマムフローを設定することによって、過小流量状態の継続による流量調整機構1の過熱・損傷を防ぐことができる。また、流量調整機構1における供給水量/制御量特性は、一般に小流量域での変化率が大きく、所定流量(最小制御流量)を超えた範囲において変化率が小さい流量域を有することがあり、変化率が小さい流量域を用いることによって、安定した供給水量の制御ができる。具体的には、図2に例示した流量調整機構1の特性図に基づき、図5に例示するように、流量調整機構1の流量制御範囲の下限値として、最小制御流量に相当する流量が設定される。つまり、最小制御流量は、流量調整機構1の特性だけではなく、流量調整機構1の必要条件である最小流量から設定される。
<第1構成例におけるボイラの供給水量制御方法>
第1構成例に係る本システムを用いたボイラの供給水量制御方法は、以下のような制御プロセスによって構成される。
(1)予めボイラの圧力から所定の供給水量に調整するための供給水量/制御量に係る実測情報を得る工程
(2)ボイラの圧力,ボイラ水の水位および流量調整機構の1次側の給水圧力に係る実測情報を得る工程
(3)水位の実測情報と予め設定された制御水位とを比較し、現在の実測水位に対する制御量を設定する工程
(4)ボイラの圧力と給水圧力の差圧を演算し、制御量に対して該差圧に基づく補正用のレシオおよびバイアスの設定を行ない、補正演算によって補正制御量を設定する工程
(5)補正制御量に基づき、流量調整機構を制動し、ボイラへの供給水量を制御する工程
(1)予めボイラの圧力から所定の供給水量に調整するための供給水量/制御量に係る実測情報を得る工程
予め使用条件に合ったボイラの圧力(あるいは流量調整機構1の1次側とボイラの圧力の差圧)に対応して、流量調整機構(給水ポンプ1)における供給水量/制御量に係る実測情報を得る。具体的には、図2に例示するように、差圧/供給水量/インバータ制御量を指標とした供給水量/制御量に係る特性が設定される。
(2)ボイラの圧力,ボイラ水の水位および流量調整機構の1次側の給水圧力に係る実測情報を得る工程
供給水の供給水量制御処理には、ボイラ10の圧力信号,ボイラ10のボイラ水の水位信号および給水ポンプ1の1次側の給水圧力信号が指標とされる。つまり、ボイラ水位検出器14で検出されたボイラ水位に係る実測情報(ボイラ水位信号),ボイラ圧力検出器12で検出されたボイラ圧力に係る実測情報(ボイラ圧力信号),および給水圧力検出器2で検出された給水ポンプ1の1次側の給水圧力に係る実測情報(給水圧力信号)が、演算・制御部4に入力される。それぞれ、図3に例示するように、ボイラ水位検出器14で実測されたボイラ水位信号PV1,ボイラ圧力検出器12で実測されたボイラ圧力信号PV2および給水圧力検出器2で実測された給水圧力信号PV3が作成される。
(3)水位の実測情報と予め設定された制御水位とを比較し、現在の実測水位に対する制御量を設定する工程
演算・制御器4において、入力されたボイラ水位の実測情報(ボイラ水位信号)から、現在の水位と予め設定された制御水位SV1との比較が行われ、PID演算される。現在の実測水位に対する制御信号を得た第1制御信号MV1は、以下の補正処理等が行われた後、給水ポンプ1が制動される。演算・制御器4は、この制御結果を制御後の実測のボイラ水位信号で確認し、再度比較・演算を行い、ボイラ水位信号PV1の修正を行い、このサイクルを続けることで、ボイラ水位を制御水位SV1に保つよう制御(フイードバック制御)が行われる。
(4)ボイラの圧力と給水圧力の差圧を演算し、制御量に対して該差圧に基づく補正用のレシオおよびバイアスの設定を行ない、補正演算によって補正制御量を設定する工程
予め設定された水位と実測情報の水位の比較・PID演算から得られた制御量(第1制御信号MV1)に対し、ボイラ10の圧力と1次側の給水圧力の差圧に基づき補正用のレシオよびバイアスの設定を行なって補正制御量を求め、得られた該補正制御量に基づきボイラ10への供給水量を制御する。補正制御量は、図3に例示する設定プロセスに基づき、レシオ補正およびバイアス補正されて設定される。
具体的には、ボイラ圧力検出器12で実測されたボイラ圧力信号PV2と給水圧力検出器2で実測された給水圧力信号PV3が減算処理され、差圧信号PV4が作成される。差圧信号PV4は、給水ポンプ1についての供給水量/制御量に係る特性を基に演算され、レシオ補正値PVrとバイアス補正値PVbが作成される。第1制御信号MV1は、上記式1に示す補正式に従い、まずレシオ補正値PVrによって補正演算(乗算)処理されて第2制御信号MV2に変換され、さらにバイアス補正値PVbによって補正演算(加算)処理されて第3制御信号MV3(補正制御量に相当する)に変換される。変換された第3制御信号MV3は、インバータ3に送信され、給水ポンプ1が制動されて所望の供給水量が供給される。
ここで、レシオ補正値PVrとバイアス補正値PVbは、上記給水ポンプ1についての供給水量/制御量に係る特性を基に、図4(A),(B)に例示するように作成される。所望の供給水量(例えば0〜7300L/h)を得るためには、図2に例示するように、ボイラ圧力と給水ポンプ1次側圧との差圧により、制動させるべき給水ポンプの周波数帯が大きく異なるため、差圧の条件によって上記のような制御信号の補正を行うことが必要となる。このとき、上記工程(1)に係る実測情報を得て、流量調整機構1のボイラ10への供給水量の上限値を設定することが好ましい。
このとき、流量調整機構1の最小制御流量を、上記補正制御量の最小値として設定することが好ましい。補正用のレシオおよびバイアスの設定を利用して、いかなる差圧条件であっても制御信号の下限および上限が流量調整機構1における最小制御流量(例えば1680L/h)や上限流量(例えば7300L/h)となるように、制御信号を設定することによって、過小流量状態の継続による給水ポンプの過熱による損傷を防止し、過大流量状態の継続による給水系機器の損傷を防止することができ、かつ差圧条件によらず精度よく供給水量を制御することができる。
(5)補正制御量に基づき、流量調整機構を制動し、ボイラへの供給水量を制御する工程
上記(4)において設定された補正制御量(第3制御信号MV3)は、インバータ3に送信され、給水ポンプ1が制動されて所望の供給水量が供給される。演算・制御器4は、この制御結果を制御後の実測のボイラ水位信号で確認し、再度上記(2)〜(4)の工程における比較・演算を行い、第3制御信号MV3の修正を行い、このサイクルを続けることで、ボイラ水位を目標水位に保つようフイードバック制御が行われる。
<本システムの第2構成例>
本システムの他の実施態様として、図6に示す構成例(第2構成例)のように、流量調整機構(給水ポンプ)1の1次側と2次側を接続する分岐流路Lsと、分岐流路Lsに設けられた第2流量調整機構5(例えばON−OFF弁や比例弁)を備え、また、ボイラ10への給水流路Loに、流量検出器61および該流量検出器61の検出信号に基づき第2流量調整機構5を制御する循環水制御部62を有する第2制御部6が備えられる。
流量検出器61で検出される供給水量が、最小制御流量以下であることを循環水制御部62が判断すれば、流量調整機構1を保護するために第2流量調整機構(ここではON−OFF弁として説明する)5が開かれ、ボイラ10へ給水されるとともに、分岐流路Lsにも循環水が供給・循環され、常時流量調整機構1に最小制御流量以上の供給水を供給することが可能となる。反対に、流量検出器61で検出される供給水量が、最小制御流量を超えることを循環水制御部62が判断すれば、ON−OFF弁が閉じられ、分岐流路Lsへの供給水が遮断される。
こうした構成によって、本システムとして、2段階の供給水の調整機能を有し、以下のような活用が可能となる。
(i)流量調整機構の最小制御流量の確保を行いながら、ボイラ水位の安定した制御が可能となる。
上記のような分岐流路Lsに流れる循環水の流量(以下「循環水量」という)の制御において、ON−OFF弁5が作動した場合は、分岐流路で最小制御流量が確保でき、ボイラ10への供給水量は減少するのであるが、ボイラ水位が制御水位SV1より低下し偏差が大きくなることで、インバータ3へ入力される制御信号MV3の出力が増加し、必要な供給水量は確保されるため、ボイラ水位は継続して安定した制御が可能となる。
(ii)流量調整機構の負担軽減が可能となる。
流量調整機構1の運転中に常時ON−OFF弁5を動作させるのでなく、第2制御部6により必要時のみON−OFF弁5を動作させることで、流量調整機構1の供給水量が最小制御流量以上のときの供給水は全てボイラ10へ供給されるので、流量調整機構1の負担と使用電力を軽減することができる。
<本システムの第3構成例>
本システムの他の実施態様として、第3構成例を図7に示す。第1構成例の構成に加えて、第2構成例における流量調整機構(給水ポンプ)1の循環系が設けられるとともに、多段のボイラ水位の設定ができる機能を有する。ボイラ水位検出器14で実測されたボイラ水位信号が演算・制御部4の第1制御部41と第2制御部42にそれぞれ入力され、第1制御部41では第1構成例と同様に制御水位SV1に対し比較・PID演算および制御信号の補正がされてインバータ3へ制御信号が入力される。ここで、第1制御部41の制御信号が最低出力(後述)になったときに第2制御部42が制御開始となり、第1制御部41と異なる制御水位SV2(SV2>SV1)に対し比較・PID演算を行い、制御信号を第2流量調整機構(ここでは比例弁5として説明する)へ入力し、分岐流路Lsの循環水量を連続的に調整する制御を行う。ここで、最低出力とは、例えば最小制御流量が設定されている場合には、当該最小制御流量に対応するインバータ3への制御量、最小制御流量が設定されず、その他の動作条件の設定がない場合には、制御量としてゼロ値、例えばボイラの条件によって変動するボイラ運転上に必要な供給水量等のような動作条件の設定がある場合には、当該必要供給水量に対応するインバータ3への制御量をいう。
流量調整機構1の最小制御流量がボイラ最低負荷の蒸発量以上で、かつボイラの蒸発量(≒供給水量)が最小制御流量を下回った場合、流量調整機構1は入力される制御信号が最低出力になるためボイラ10への供給水量の調整ができなくなり、ボイラ水位は制御水位SV1を超えて上昇する。ここで、第2制御部42が制御を開始し、比例弁5により循環水量を調整することで、ボイラへの供給水量を増減させボイラ水位が設定水位SV2を保持するようにさせる。次に、ボイラの蒸発量が最小制御流量を上回った場合、比例弁5を全閉にしてもボイラへの供給水量は不足するため、ボイラの水位は制御水位SV2から徐々に低下し、制御水位SV1に徐々に近づくと第1制御部41の制御信号MV3は最低出力以上となり、第2制御部42は制御が終了し、第1制御部41のみでボイラ水位が制御水位SV1になるように供給水量の制御を行う。また、上記のように、ボイラの蒸発量が最小制御流量以下の場合、即ちボイラが低負荷のときに制御水位をSV1からSV2に上昇させることで、ボイラ低負荷時の過熱による損傷を以前より増して防止することができ、安全面から見ても有効な制御手段となる。
補正制御量および循環水制御量は、具体的には、図8に例示する設定プロセスに基づき設定される。ボイラ水位検出器14で実測されたボイラ水位信号PV1,ボイラ圧力検出器12で実測されたボイラ圧力信号PV2および給水圧力検出器2で実測された給水圧力信号PV3が作成される。予め制御水位SV1が設定され、ボイラ水位信号PV1は、制御水位SV1との偏差からPID演算され、第1制御信号MV1が作成される。ボイラ圧力信号PV2と給水圧力信号PV3は、減算処理され、差圧信号PV4が作成される。差圧信号PV4は、給水ポンプ1についての供給水量/制御量に係る特性を基に演算され、レシオ補正値PVrとバイアス補正値PVbが決定される。第1制御信号MV1は、まずレシオ補正値PVrによって補正演算(乗算)処理されて第2制御信号MV2に変換され、さらにバイアス補正値PVbによって補正演算(加算)処理されて第3制御信号MV3に変換される。変換された第3制御信号MV3は、インバータ3に送信され、給水ポンプ1が制動されて所望の供給水量が供給される。このとき、制御信号の下限で流量調整機構1の供給水量が最小制御流量となるように、レシオおよびバイアス補正を行い、最小制御流量を確保することができる。
一方、上記第1制御部41の制御において制御信号が下限に達した場合(最低出力になった場合)、最低出力またはその他の動作指示出力が、第2制御部42内の制御切換部43に入力され、第2制御部42は制御開始となる。ボイラ水位検出器で実測されたボイラ水位信号PV1が演算・制御部の第2制御部42に入力され、予め設定されている制御水位SV2との偏差からPID演算されて第4制御信号MV4が作成される。作成された第4制御信号MV4は、比例弁5に送信され、ボイラ水位が制御水位SV2になるように、比例弁5によって分岐流路Lsの循環流量が連続的に調整される。ここで、最低出力とは、例えば最小制御流量が設定されている場合には、当該最小制御流量に対応するインバータ3への制御量、最小制御流量が設定されず、特別な条件設定がない場合には、制御量としてゼロ値、例えばボイラの条件によって変動するボイラ運転上に必要な供給水量等のような特別な条件設定がある場合には、当該必要供給水量に対応するインバータ3への制御量をいう。
以上の機能は、実測時において、以下のように作動する。
(i)ボイラ10の蒸発量(≒供給水量)が最小制御流量以上であれば、第1制御部41では、制御水位SV1になるようにインバータ3で給水ポンプの回転数(周波数)を調整し、供給水量の比例制御を行う。
(ii)ボイラ10の蒸発量が低下し、ボイラ10への供給水量が最小制御流量以下に低下すれば、インバータ3に出力される第3制御信号MV3は、最低出力になるが、給水ポンプ1は、最小制御流量を供給し続けるため、ボイラ水位は、制御水位SV1を超えて上昇し始める。
(iii)ここで、ボイラ水位が制御水位SV2に到達すると、第2制御部42に入力される第2設定水位信号によって、ボイラ水位が制御水位SV2になるように第4制御信号MV4が出力され、比例弁5を比例制御し、循環水を増減させることでボイラ10への供給水量を増減させ、ボイラ水位を制御水位SV2で安定させることができる。
(iv)このように、第1制御部41における制御出力のレシオ補正およびバイアス補正を伴う給水制御と第2制御部42における最小制御流量に対する循環水量制御を組合せることで、給水ポンプ1は常に規定される最小制御流量以上の給水量を供給できるとともに、無駄な給水量の供給をなくすことで消費電力の低減も可能となる。
1 流量調整機構(給水ポンプ)
2 給水圧力検出器
3 変換部(インバータ)
4 演算・制御部
10 ボイラ
11 ボイラ本体
12 ボイラ圧力検出器
13 水柱管
14 ボイラ水位検出器
Ls 分岐流路
SV1 制御水位

Claims (6)

  1. ボイラへの供給水量を調整する流量調整機構と、供給水が導入される該流量調整機構の1次側の給水圧力を検出する1次側の給水圧力検出器と、該流量調整機構の制御量を出力する変換部と、を備え、
    予め流量調整機構の給水機能として、ボイラの圧力が所定の条件において、供給水量/制御量が設定されるとともに、前記ボイラの圧力信号,ボイラ水の水位信号および前記1次側の給水圧力信号を指標とし、前記水位信号と予め設定された制御水位との偏差から演算され、作成された制御量に対し、前記ボイラの圧力と前記給水圧力の差圧に基づき補正用のレシオおよびバイアスの設定を行なって補正制御量を求め、得られた該補正制御量に基づきボイラの供給水量を制御することを特徴とするボイラの供給水量制御システム。
  2. 前記流量調整機構において、前記変換部によるインバータ制御によって前記供給水量が流量調整され、前記流量調整機構の最小制御流量が、前記補正制御量の最小値として設定されることを特徴とする請求項1記載のボイラの供給水量制御システム。
  3. 前記流量調整機構の1次側と2次側を接続する分岐流路と、該分岐流路に設けられた第2流量調整機構を備え、該第2流量調整機構によって、前記流量調整機構と該分岐流路の間を循環する循環水の流量が調整され、前記ボイラへの供給水量が制御されることを特徴とする請求項1または2記載のボイラの供給水量制御システム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のボイラの供給水量制御システムを用い、次の工程を有し、ボイラへ供給する供給水量をインバータ制御することを特徴とするボイラの供給水量制御方法。
    (1)予めボイラの圧力から所定の供給水量に調整するための供給水量/制御量に係る実測情報を得る工程
    (2)前記ボイラの圧力,ボイラ水の水位および前記流量調整機構の1次側の給水圧力に係る実測情報を得る工程
    (3)前記水位の実測情報と予め設定された制御水位とを比較し、現在の実測水位に対する制御量を設定する工程
    (4)前記ボイラの圧力と前記給水圧力の差圧を演算し、前記制御量に対して該差圧に基づく補正用のレシオおよびバイアスの設定を行ない、補正演算によって補正制御量を設定する工程
    (5)前記補正制御量に基づき、前記流量調整機構を制動し、ボイラへの供給水量を制御する工程
  5. 前記工程(1)に係る実測情報を得て、前記流量調整機構の前記ボイラへの供給水量の上限値H1および下限値L1を設定するとともに、流量調整機構の最小制御流量M1を前記補正制御量の最小値として設定する工程を有することを特徴とする請求項4記載のボイラの供給水量制御方法。
  6. 前記流量調整機構の1次側と2次側を接続する分岐流路に設けられた第2流量調整機構によって、前記流量調整機構と該分岐流路の間を循環する循環水の流量を調整し、前記流量調整機構の最小制御流量を確保しつつ、前記ボイラへの供給水量を制御する工程を有することを特徴とする請求項4または5記載のボイラの供給水量制御方法。
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