JP2014154863A - 強誘電体膜の形成方法、強誘電体膜、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、及び画像形成装置 - Google Patents

強誘電体膜の形成方法、強誘電体膜、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な結晶の強誘電体膜を得る形成方法を提供する。
【解決手段】前駆体溶液を塗布する塗布工程と、乾燥温度まで10℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱して前駆体膜を乾燥する乾燥工程と、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度まで20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第一の加熱工程と、所定の熱分解温度まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第二の加熱工程と、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第一の加熱工程と、所定の熱分解温度まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第二の加熱工程と、所定の結晶化温度までまで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第三の加熱工程とを有する強誘電体膜の形成方法である。
【選択図】図4

Description

本発明は、強誘電体膜の形成方法、その形成方法により形成された強誘電体膜、強誘電体膜を備えた電気機械変換素子、電気機械変換素子を備えたインク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置に関する。
インクを吐出するノズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子で変形させることで圧力発生室内のインクを加圧してノズルからインクを吐出させる液滴吐出ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長収縮するものとたわみ力を利用した2種類の圧電アクチェーターが既に知られている。その中で、たわみ力を利用した圧電体層ではチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの強誘電体膜が用いられる。このような強誘電体膜はスパッタリング法、あるいはゾルゲル法やMOD法などのCSD法(Chemical Solution Deposition:化学溶液堆積法)によって下部電極が成膜されたシリコンウェハ上に形成される。
強誘電体膜形成方法のうち、CSD法では、強誘電体膜組成に合わせて合成された前駆体溶液の塗膜をスピンコート法等によって形成し、第一の加熱温度まで加熱して塗膜中に残された溶媒を蒸発、塗膜を乾燥させる。その、第一の加熱温度より高い第二の加熱温度まで乾燥膜を加熱して乾燥膜中の有機物成分を分解する。この前駆体溶液塗膜の形成、乾燥、熱分解のプロセスを所定回数繰り返した後に第二の加熱温度より高い第三の加熱温度まで有機物成分が熱分解された膜を加熱して結晶化を行い、強誘電体薄膜を形成する。さらに前駆体液塗膜の形成から結晶化までのプロセスを所定回数繰り返すことによって、所望の厚みの強誘電体膜を形成する。
前駆体液塗膜の乾燥、熱分解、結晶化を行う第一から第三の加熱温度の設定だけでなく、それぞれの設定温度までシリコンウェハ(上に成膜された膜)を昇温させる昇温速度は、形成される強誘電体膜、さらに強誘電体膜を加工して得られる圧電素子の特性や歩留まりに大きく影響することが既に知られており、これらに関して研究開発が広く行われている。
例えば、特許文献1において、PZT膜の結晶配向を所望する配向にするために、第二の加熱温度(以下“熱分解温度”と記載する)と熱分解温度まで昇温する昇温速度とを規定している。(111)面が膜厚方向に配向するPtコーティング層を形成した基板に有機金属化合物の前駆体をコーティングした後、昇温速度30〜500°C/s、加熱温度350〜500°C、保持時間1〜5分の条件で有機金属化合物の前駆体を熱分解し、(100)面が膜厚方向に配向するPZT系強誘電体薄膜を形成することが開示されている。
また、特許文献2において、緻密で高集積デバイスに適用可能な強誘電体特性、リーク電流特性、膜疲労特性等を有する強誘電体膜を形成するために、熱分解温度を400℃以上600℃以下として加熱する第一の熱処理工程と、その後、昇温速度20℃/秒以上で結晶化温度まで昇温してから一定温度で3分以内の時間保持する第二の熱処理工程を複数回繰り返してから上部電極を形成して、さらに昇温速度20℃/秒以上で結晶化温度よりさらに高い温度(850℃)まで昇温して再度加熱する熱処理プロセスが開示されている。
また、特許文献3においては、乾燥工程は、誘電体前駆体溶液に含まれる溶媒の沸点よりも高温で、かつ誘電体前駆体層の発熱反応が最大となる温度よりも低温で乾燥処理を行っている。焼成工程は、低速昇温することで(001)配向とし、高速昇温することで(111)配向とすることが開示されている。
また、特許文献4においては、結晶配向を制御するために、乾燥工程を、誘電体前駆体膜を主溶媒である溶剤の沸点よりも低い温度に加熱して一定時間保持することで乾燥させる第1の乾燥工程と、誘電体前駆体膜を再加熱して一定時間保持することでさらに乾燥させる第2の乾燥工程とを有する誘電体膜の製造方法が記載されている。
また、特許文献5においては、形成される強誘電体膜中にクラックが発生することを回避するため、600℃の高温で一度に結晶化させる工程であって、昇温速度を2.0℃/分以下という比較的遅い昇温速度で加熱処理を行う方法が開示されている。
また、特許文献6においては、乾燥工程、脱脂工程(熱分解工程)および焼成工程を有する誘電体膜の製造方法において、400℃から700℃まで上昇する際の昇温レートを15℃/sec以下とすることが開示されている。これにより、結晶状態を制御し、安定した特性が得られることが記載されている。
また、特許文献7においては、乾燥工程を、前駆体液の主溶媒である溶剤の沸点よりも低い温度で乾燥させる第1の乾燥工程と、主溶媒の沸点より高い乾燥温度で乾燥させる第2の乾燥工程の2段階で行うことに加え、さらに脱脂工程(熱分解工程)の温度を350〜450℃にすると共に、昇温速度を15℃/sec以上とし、焼成工程では、昇温速度を100℃/sec〜150℃/secとする製造方法が開示されている。これにより、比較的容易に結晶状態を制御し、常に安定した特性が得られる強誘電体膜を形成することができることが記載されている。
また、特許文献8においては、ある組成のPLZT強誘電体膜の成長工程(結晶化工程)において、パイロクロア相の核生成を抑制するため、特にパイロクロア相の核が生成される温度範囲350〜450℃を高速加熱すること、具体的には、昇温速度を10〜500℃/秒とする強誘電体薄膜素子の作製方法が開示されている。
また、特許文献9において、誘電体薄膜形成用組成物を耐熱性基板に塗布し乾燥する工程を繰返し行った後、未焼成膜の焼成を、60〜6000℃/分の急速昇温加熱による第一次焼成と、0.5〜30℃/分の低速昇温加熱による第二次焼成とをこの順番に行う誘電体薄膜の形成方法が開示されている。緻密で表面にひび割れの無い誘電体膜を形成することができることが記載されている。
CSD法における熱処理(乾燥、熱分解、結晶化)方法、その中でも熱分解温度あるいは結晶化温度までシリコンウェハ(上に成膜された膜)を昇温させる昇温速度の設定については、前述のように、数十℃/sec程度以上の速い速度で昇温させると、良好な特性を有する強誘電体膜を形成することができることがわかっている。特に前記強誘電体膜として代表的な膜であるPZT膜を成膜する場合、300〜400℃前後の領域にて遅い速度で加熱および昇温させると、膜中にパイロクロア相と呼ばれる常誘電性の結晶が出現し、強誘電体膜としての特性が極端に低下することが知られている。
しかし、特に数十℃/sec程度以上の速い速度で加熱及び昇温させて強誘電体膜を形成させると、その特性が良好になる一方で、高速で加熱及び昇温させたが故に、加熱前に残留していた前駆体液の溶媒が突沸するという問題があった。また、有機物が急速に燃焼してガス化した痕跡が空隙となって多数、膜中に残留し、これが欠陥となって形成した強誘電体膜をさらに加工して得られる圧電素子等のデバイスの歩留まりを低下させる問題があった。
一方、低速の昇温速度にて加熱処理を行う条件にてPZT膜(強誘電体膜)を形成すると、強誘電体膜中にパイロクロア相が発生し、強誘電体膜としての特性が劣化するという問題があった。
前述の乾燥工程を二段階に分けるというプロセスでは、乾燥工程を二段階に分けたが故に、強誘電体膜の製造装置に、乾燥の為の装置を二重に配置することが必要となり、装置コストが上昇すると共に、成膜プロセス時間が長くなり、スループットが低下するという問題が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前駆体膜の溶媒の突沸や有機物の急速な燃焼によって膜中に空隙が発生することを防止して、良好な特性の強誘電体膜を得ることが可能な強誘電体膜の形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、強誘電体膜の形成方法であって、
(1)強誘電体膜の原料である前駆体溶液を塗布して前駆体膜を成膜する塗布工程と、
(2)所定の乾燥温度(T)まで、10℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱して前記前駆体膜を乾燥する乾燥工程と、
(3)強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第一の加熱工程と、
(4)前記熱分解第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T12)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第二の加熱工程と、
(5)前記(1)乃至(4)の工程を少なくとも1回繰り返し、所望する膜厚の非晶質の強誘電体膜を形成する第一の積層工程と、
(6)強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第一の加熱工程と、
(7)前記結晶化第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T22)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第二の加熱工程と、
(8)前記結晶化第二の加熱工程に続いて、所定の結晶化温度まで(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第三の加熱工程と、
(9)前記(1)乃至(8)の工程を少なくとも1回繰り返し、所望する膜厚の結晶質の強誘電体膜を形成する第二の積層工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、前駆体膜中の有機溶剤の突沸や急速な燃焼ガスの発生による強誘電体膜の欠陥の発生を回避することができ、さらには、パイロクロア相の発生を防止することができるので、良好な特性の強誘電体膜を得ることが可能である。
強誘電体膜を形成する自動成膜装置の概略上面図である。 自動成膜装置におけるホットプレートの概略断面図である。 昇温工程の加熱プロファイルを示すグラフである。 強誘電体膜の形成工程を示すフローチャートである。 実施例の強誘電体膜の表面のSEM画像写真である。 実施例の強誘電体膜の断面のSEM画像写真である。 実施例の強誘電体膜のXRD評価結果を示すグラフである。 比較例の強誘電体膜の表面のSEM画像写真である。 比較例の強誘電体膜の断面のSEM画像写真である。 比較例の誘電体膜のXRD評価結果を示すグラフである。 圧電素子を備えた液滴吐出ヘッドの概略断面図である。 複数の圧電素子を備えた液滴吐出ヘッドの概略断面図である。 インクジェットプリンタの斜視図である。 インクジェットプリンタの断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の強誘電体膜の形成方法の一実施形態について説明する。図1は強誘電体膜を形成する自動成膜装置の概略上面図であり、図2は、自動成膜装置における加熱装置の概略断面図である。図3は、昇温工程の加熱プロファイルを示すグラフであり、リフトピンの高さHとウェハ温度Tの関係を示すグラフである。図4は、強誘電体膜の形成工程を示すフローチャートである。
本発明の強誘電体膜は自動成膜装置を用いて形成する。本発明に用いる自動成膜装置10は、図1に示すように、下部電極(例えば、白金族下部電極)が成膜されたウェハ18を1枚ずつ流動させる枚葉式装置であって、ウェハ18を収納する収納部材11、ウェハを装置内の各装置へ搬送する搬送装置12、成膜装置内におけるウェハの受け渡し位置ならびに自動成膜装置10を構成する各装置内でのウェハの位置決めおよび芯だしを行うアライナー13、強誘電体膜の前駆体溶液をウェハ上に塗布するスピナー塗布装置14、塗布された前駆体膜の乾燥を行うホットプレート15、乾燥膜の熱分解工程並びに結晶化工程の熱処理を行うRTA(Rapid Thermal Annealing:高速熱処理)装置16、およびRTA装置16での熱処理後のウェハ冷却を行う冷却ステージ17で構成される。
強誘電体膜は、図4に示すフローチャートに従って形成する。まず、塗布工程(工程(1))と、乾燥工程(工程(2))と、熱分解工程(工程(3)および工程(4))と、さらにこれら一連の工程をX回(X≧1)繰り返す工程(工程(5))とを経て、所望する膜厚の非晶質の強誘電体膜を形成する。そしてさらに、塗布工程(工程(1))から結晶化工程(工程(6)、(7)および(8))までをY回(Y≧1)繰り返す工程(工程(9))によって所望する膜厚の結晶質の強誘電体膜を形成する。
また、強誘電体膜は、図4に示すフローチャートの各工程を担当する自動成膜装置10内の各装置間を流動させて形成する。塗布工程は上記スピナー塗布装置14において行い、乾燥工程は上記ホットプレート15において行い、熱分解工程および結晶化工程は上記RTA装置16において行い、冷却工程は上記冷却ステージ17で行う。なお、本実施形態では、熱分解工程と結晶化工程とを共通のRTA装置1台で行っているが、熱分解工程と結晶化工程とをそれぞれ別にした2台のRTA装置で行う構成としても良い。あるいは熱分解工程をホットプレートで行い、さらに結晶化工程をRTA装置で行う構成でも良い。
以下、図4のフローチャートに沿って、各工程を説明する。
<(1)塗布工程>
収納部材11に収納されたウェハ18は、搬送装置12により、アライナー13に投入され、ウェハの位置決め及び芯だしが成された後、スピナー塗布装置14に投入される。スピナー塗布装置14により、ウェハ18表面を洗浄後、下部電極上に強誘電体膜の原料である前駆体溶液であるゾルゲル液が塗布される。
ウェハとして、下部電極(例えば、白金族下部電極等)が成膜されたウェハ18(例えば、シリコンウェハ等)を用いることができる。
強誘電体膜としては、複合酸化物から構成される材料が挙げられる。
複合酸化物としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、化学式ABO(A=Pb、Ba、Srから選択される元素、B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbから選択される元素を主成分とする)で記述される材料が挙げられる。その具体的な記述例として、例えば、(Pb1−x,Ba)(Zr1−y,Ti)O、(Pb1−x,Sr)(Zr1−y,Ti)Oなどが挙げられる。これらは、一般式ABOにおけるAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示すことがわかっている。
PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
すなわち、前記前駆体溶液は、主成分が化学式ABOで記述される前記複合酸化物を形成することが可能な前駆体を共通溶媒に溶解させたものである。
例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)は、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合の場合であり、化学式ではPb(Zr0.53,Ti0.47)Oと表され、一般にPZT(53/47)と示される。
基板上に設けられた電極上に塗布するPZT前駆体溶液の合成は、例えば、出発材料として酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いることができる。ここで、酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水する。化学量論組成に対し鉛量を10モル%過剰にすることが好ましく、これにより熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐことができる。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成することができる。
金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加してもよい。
<(2)乾燥工程>
スピナー塗布装置14によって前駆体溶液を塗布されたウェハ18は、搬送装置12によってホットプレート15に投入され、塗布された前駆体膜を加熱して乾燥処理を行う。搬送装置12によってウェハ18がホットプレート15に投入される際の受け渡し状態及び昇温方法について、図2及び図3を参照して説明する。
図2に示すように、ホットプレート15の温度は予め所定の乾燥温度(T)に保持されている。このホットプレート15にはリフトピン19が設けられている。リフトピン19は搬送装置12からウェハ18を受けた際には、ホットプレート表面より高さHだけ突出した状態にある。図3に示すように、ウェハ18は、ホットプレートから高さH分離れているので、ウェハ温度は乾燥温度Tより低い温度(室温)であるが、リフトピン19が下降するに従って、ウェハ温度は上昇し、ウェハ18がホットプレート15上に載せ置かれたとき、ウェハ温度が所定の乾燥温度Tとなる。このリフトピン19の下降速度を制御することにより、ウェハの乾燥工程における昇温速度を制御している。
搬送装置12によって保持されたウェハ18は、所定の乾燥温度(T)に熱せられているホットプレート15から、高さHだけ突出した状態にあるリフトピン19に受け渡される。続いてウェハ18を受け取ったリフトピン19は、高さHだけ突き出た受け渡し位置から下降し、ウェハ18はホットプレート15上に載せ置かれる。そしてウェハ18は乾燥温度(T)でホットプレート15上に所定時間保持されて加熱され、塗膜の乾燥が行われる。
乾燥温度(T)とは、前駆体溶液の主溶媒の沸点により決まるが、その沸点以上であることが望ましい。
乾燥工程における昇温速度は、前駆体膜の溶媒が急激な蒸発あるいは突沸が生じない程度に遅い速度の10℃/秒以下とする。ウェハ温度の昇温速度は、単位時間あたりのウェハ温度変化、すなわち〔ウェハ温度の変化量(ΔT)〕/〔変化に要した時間(Δt)〕で規定される。
乾燥工程をホットプレートで行う場合、図3に示したリフトピン19の突き出し高さによるウェハ18の保持位置とウェハ温度の関係を利用し、昇温速度はリフトピン19の下降速度を制御することによって調整および制御される。
乾燥工程においては、10℃/秒以下の昇温速度で昇温して加熱するので、前駆体溶液の溶剤の突沸を防ぐことができる。
<熱分解工程>
熱分解工程では、乾燥された前駆体膜中の有機物成分を熱分解して非晶質の強誘電体膜を形成する。乾燥工程を終えたウェハ18は、図1に示すように、搬送装置12によってRTA装置16に投入され、乾燥された前駆体膜の加熱および熱分解処理を行う。前述のRTA装置16は、高出力のハロゲンランプで被加熱物を照射することでごく短時間で高い温度まで加熱する能力を有すると共に、その昇温速度ならびに昇温後の保持温度と時間、またこれらのパラメーターを多段階に組み合わせた任意の加熱プロファイルを設定し、設定したプロファイルに従った被加熱物の加熱制御が可能な装置である。
熱分解工程は、熱分解第一の加熱工程、および熱分解第二の加熱工程を含むものである。すなわち、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第一の加熱工程と、該熱分解第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T12)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第二の加熱工程とを含むものである。この熱分解工程は、前述のRTA装置16の能力を活用して、多段階の昇温制御を行うことが可能である。
<(3)熱分解第一の加熱工程>
熱分解工程における熱分解第一の加熱工程は、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度温度(T11)までの低温領域で、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する工程である。これにより、乾燥させた前駆体膜中に残留した溶媒の突沸や有機物成分の急速な燃焼及び分解によるガスの発生を回避することが可能である。
強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)とは、強誘電体膜中に常誘電性のパイロクロア相が発生する温度より低い温度であることが望ましい。パイロクロア相は、上記強誘電性を有する材料と同じABOで表される複合酸化物であるが、常誘電性の結晶であり、AサイトとBサイトを形成する原子の種類によって発生する温度が異なる。しかし、パイロクロア相が現れる条件として、概ね300〜400℃前後の領域にて遅い速度で加熱および昇温させるとパイロクロア相が出現することがわかっている。このパイロクロア相が強誘電体相の中に発生すると、強誘電体膜としての特性が極端に低下する。したがって、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)は、強誘電体材料に依存するが、概ね300℃以下であることが望ましい。
この熱分解第一の加熱工程の昇温速度は、前駆体膜中の有機物成分の急激な分解及び燃焼ガスの発生が生じない程度に遅い速度、20℃/秒以下の昇温速度あることが好ましく、より好ましくは、10℃/秒以下である。このような昇温速度にすることにより、乾燥された前駆体膜中に残留した溶媒の突沸や有機物成分の急速な燃焼及び分解によるガスの発生を回避することができる。
<(4)熱分解第二の加熱工程>
熱分解第二の加熱工程は、上記熱分解第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T12)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する工程である。
所定の熱分解温度(T12)は、前駆体膜を構成する有機成分が燃焼されて熱分解される温度により決定される。概ね400℃〜500℃の範囲である。
また、この熱分解第二の加熱工程の昇温速度は、設定温度まで常誘電体相のパイロクロア相が発生しない程度に速い昇温速度の50℃/秒以上である。より好ましくは50℃/秒〜75℃/秒の範囲である。これにより、パイロクロア相の発生を防止することができ、良好な特性の強誘電体膜を得ることが可能である。
なお、熱分解工程をRTA装置で行う場合についても、昇温速度は、単位時間あたりのウェハ温度の変化、すなわち〔ウェハ温度の変化量(ΔT)〕/〔変化に要した時間(Δt)〕により規定される。RTA装置は、高出力のランプを照射することで対象物を加熱・昇温する装置で、ランプ出力を制御することにより、対象物の昇温速度を自在に制御しながら目的温度まで加熱することが可能であり、また100℃/秒を超える高速昇温を行う能力を有している。
このようなRTA装置を用いて熱分解を行う場合、上記のようなRTA装置の有する昇温速度制御性を活用し、熱分解工程における2段階の昇温制御を行う。
一方、熱分解工程に前述の乾燥工程のようにホットプレート15とリフトピン19を用いた加熱処理を行う場合は、図3に示したリフトピン19の突き出し高さによるウェハ18の保持位置とウェハ温度の関係を利用し、ホットプレート15を熱分解温度(T12)に設定し、リフトピンの下降速度を温度T11を境に2段階で制御することによって、2段階の昇温制御を行うことが可能である。この場合の昇温速度は、上記乾燥工程においてホットプレートで行う場合の昇温速度と同様に規定される。
<冷却工程>
続いてウェハ18は、搬送装置12により冷却ステージ17に移動される。ウェハ温度は冷却ステージ17上に一定時間留め置かれることにより室温まで冷却される。
<(5)第一の積層工程>
続いて、図4に示すように、前述の塗布工程〜冷却工程を所定回数(X回)繰り返すことにより、所望の膜厚の非晶質の酸化物膜(アモルファス膜)を形成する。
<結晶化工程>
結晶化工程では、上記熱分解工程を終えた非晶質の酸化物膜(アモルファス膜)が形成されたウェハをRTA装置16でさらに高温で加熱して、結晶質の強誘電体膜を形成する。
結晶化工程は、以下の結晶化第一の加熱工程、結晶化第二の加熱工程、および結晶化第三の加熱工程を含むものである。すなわち、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第一の加熱工程と、該結晶化第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T22)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第二の加熱工程と、該結晶化第二の加熱工程に続いて、所定の結晶化温度まで(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第三の加熱工程とを含むものである。この結晶化工程においても、RTA装置16の能力を活用し、昇温速度と、加熱温度を多段階で制御することができる。
<(6)結晶化第一の加熱工程>
結晶化第一の加熱工程は、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する工程である。これにより、乾燥させた前駆体膜中に残留した溶媒の突沸や有機物成分の急速な燃焼及び分解によるガスの発生を回避することが可能である。
上記強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)とは、強誘電体膜中に常誘電性のパイロクロア相が発生する温度より低い温度であることが望ましい。パイロクロア相は、上記強誘電性を有する材料と同じABOで表される複合酸化物であるが、常誘電性の結晶であり、AサイトとBサイトを形成する原子の種類によって発生する温度が異なる。しかし、パイロクロア相が現れる条件として、概ね300〜400℃前後の領域にて遅い速度で加熱および昇温させると出現することがわかっている。このパイロクロア相が強誘電体相の中に発生すると、強誘電体膜としての特性が極端に低下する。したがって、強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)は、強誘電体材料に依存するが、概ね300℃以下であることが望ましい。
この結晶化第一の加熱工程の昇温速度は、非晶質酸化物膜(アモルファス膜)中に残留していた有機物成分の急激な分解及び燃焼ガスの発生が生じない程度に遅い速度、20℃/秒以下の昇温速度あることが好ましく、より好ましくは10℃/秒〜15℃/秒の範囲である。このような昇温速度にすることにより、非晶質酸化物膜(アモルファス膜)中に残留していた溶媒の突沸や有機物成分の急速な燃焼及び分解によるガスの発生を回避することができる。
<(7)結晶化第二の加熱工程>
結晶化第二の加熱工程は、上記結晶化第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T22)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する工程である。
所定の熱分解温度(T22)は、前駆体膜を構成する有機成分が燃焼されて熱分解される温度により決定される。概ね400℃〜500℃の範囲である。
この結晶化第二の加熱工程の昇温速度は、設定温度まで常誘電体相のパイロクロア相が発生しない程度に速い昇温速度の50℃/秒以上である。より好ましくは50℃/秒〜75℃/秒の範囲である。これにより、パイロクロア相の発生を防止することができ、良好な特性の強誘電体膜を得ることが可能である。
<(8)結晶化第三の加熱工程>
結晶化第三の加熱工程は、上記結晶化第二の加熱工程に続いて、所定の結晶化温度まで(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する工程である。
結晶化第二の加熱工程に続いて、さらに結晶化温度(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度にて昇温しながら加熱する。ウェハ上に成膜された非晶質の強誘電体膜を高温加熱して結晶化を行い、強誘電体薄膜を形成させる。
結晶化温度は、所望の結晶配向が得られる温度に設定され、概ね650℃〜750℃の範囲である。
結晶化第三の加熱工程における昇温速度は、上記結晶化第二の加熱工程と同様、設定温度まで常誘電体相のパイロクロア相が発生しない程度に速い昇温速度の50℃/秒以上である。より好ましくは70℃/秒〜150℃/秒の範囲である。これにより、パイロクロア相の発生を防止することができ、良好な特性の強誘電体膜を得ることが可能である。
上記結晶化第一の加熱工程、結晶化第二の加熱工程、および結晶化第三の加熱工程は、結晶化工程を構成する。この結晶化工程においても、RTA装置16の能力を活用し、昇温速度と、加熱温度を多段階で制御することができる。
なお、結晶化工程をRTA装置で行う場合、昇温速度は、単位時間あたりのウェハ温度の変化、すなわち〔ウェハ温度の変化量(ΔT)〕/〔変化に要した時間(Δt)〕により規定される。
本実施形態では、所定の熱分解温度(T22)までの結晶化第二の加熱工程と、その後の結晶化温度(T)までの結晶化第三の加熱工程における昇温速度は、50℃/秒以上であれば同じ昇温速度としてもよい。すなわち強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)から結晶化温度(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度で一定の速度としてもよい。あるいは結晶化第二の加熱工程と結晶化第三の加熱工程は50℃/秒以上の昇温速度であれば、異なる昇温速度で昇温しながら加熱することとしてもよい。
<(9)第二の積層工程>
次に、図4に示すように、前述の塗布工程〜結晶化工程を所定回数(Y回)繰り返すことによって、所望の膜厚を持った結晶質の強誘電体膜を形成する。
パイロクロア相は、上記のようにABOで表される複合酸化物のAサイトとBサイトを形成する種類によって、発生する温度が異なるため、前記強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)(T21)、および熱分解第二の加熱工程および結晶化第二の加熱工程における昇温速度は、強誘電体層の材料により適宜決定される。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態である電気機械変換素子の一例である圧電素子について図11を参照して説明する。本実施形態の圧電素子の強誘電体膜は、上記第1の実施形態により形成されたものを備える。第1の実施形態と同様の構成要素については同符号を付し説明を省略する。図11に本発明の圧電素子を備えた液滴吐出ヘッドの一例の構造の概略断面図を示す。
本実施形態の圧電素子27は、圧力室30の一部を構成する振動板22上に密着層23を介して、下部電極24、強誘電体膜25、および上部電極26が順次積層されてなるものである。なお、圧力室30は、振動板22とシリコン基板21の一部とノズル孔29が設けられたノズル板28とにより構成される。
本実施形態の圧電素子は以下の方法により形成される。
図11に示すように、基板21となるシリコンウェハに、熱酸化によりシリコン酸化膜からなる振動板22を形成し(例えば、膜厚1μm)、その上に、密着層23としてチタン膜(例えば、膜厚50nm)をスパッタ成膜する。引き続き密着層23上に白金膜(例えば、膜厚200nm)からなる下部電極24をスパッタ成膜する。
次に、PZT強誘電体膜25を形成する。上記下部電極24までが形成されたウェハを強誘電体膜の原料となる前駆体溶液を下部電極24上に塗布する。強誘電体膜25は上記第1の実施形態による本発明の強誘電体膜の形成方法により形成される。
次に、強誘電体膜25上に、上部電極16をスパッタ成膜した後、リソグラフィ技術によりパターニングを行い、圧電素子27を得る。
以下、前述した強誘電体膜以外の各構成層について説明する。
(基板)
基板21としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常600μm〜800μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、本構成においては、主に(111)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。
また、図11に示すような圧力室を作製する場合、例えば、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工することができる。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。
(振動板)
シリコン基板21上に配置する振動板22は、厚さが数ミクロンでシリコン酸化膜や、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、およびこれら各膜を積層した膜でもよい。また、熱膨張差を考慮した酸化アルミニウム膜、ジルコニア膜などのセラミック膜でもよい。これら材料は絶縁体である。
シリコン系絶縁膜は熱酸化膜、CVD堆積膜を用い、金属酸化膜はスパッタリング法で成膜することができる。
振動板22は、図11に示すように、強誘電体膜25によって発生した力を受けて変形変位して、圧力室30内のインクを吐出させる。そのため、下地としては所定の強度を有したものであることが好ましい。例えば、圧力室基板21を構成するために用いられるシリコン基板を熱酸化して形成した膜(SiO)などが用いられる。
特に、強誘電体膜25の材料としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が使用される場合には、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10−6〜10×10−6(1/K)程度の線膨張係数を有する材料が好ましい。
(密着層)
本発明における下部電極24として、後述のように白金族電極が好ましく用いられるが、電極に白金を用いる場合、下地(振動板)、特にSiOとの密着性が悪いため、密着層を設ける必要がある。
密着層23としては、チタン、タンタル等の金属材料や、酸化チタン、酸化タンタル、窒化チタン、窒化タンタルやこれら積層膜が有効であるが、導電性酸化物の場合には、振動板が同じ酸化物(シリコン酸化物)であるため、これら密着層を配置しなくても十分な膜密着力が得られる。白金族電極を用いる場合には密着層に、例えば、チタン(Ti)膜を設けている。
ここで、密着層の膜厚としては、20nm〜70nmが好ましい。この範囲より膜厚が薄い場合には、密着性に懸念があり、この範囲より膜厚が厚い場合には、密着層上に形成する下部電極24に影響が出てくる。
(下部電極)
下部電極24は、強誘電体膜に信号入力する際の共通電極として電気的接続をするので、その下にある振動板22は絶縁体か、もしくは導体であれば絶縁処理を施して用いることになる。
下部電極24としては、高い耐熱性と低い反応性を有する白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の単金属からなる白金族電極や、白金−ロジウムなどの白金を主成分とした他の白金族元素との合金材料からなる電極を用いることができる。本発明では導電性酸化物膜の上に堆積させた形態でもよい。
なお、強誘電体膜にPZTを用いた場合、PZTに含有される鉛(Pb)に対して、白金電極では十分なバリア性を有するとはいえない場合があるので、必要に応じて上記他の白金族からなる電極を用いることができる。また、白金電極表面に、鉛(Pb)に対してバリア性を有する導電性材料膜(例えば、導電性酸化物)を設けてもよい。このような方法により、下部電極に白金を用い、強誘電体膜にPZTを用いた場合でも金属電極の特性が劣化することは回避される。振動板(例えば、シリコン基板上に形成されたSiO膜)上に密着層23を形成しているため、下部電極24に白金を使用する場合においても、振動板22との密着性を良好に維持することができる。
下部電極24の電極の作製方法としては、一般的なスパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が適用できる。下部電極24の膜厚としては、100nm〜300nm程度が好ましい。
(上部電極)
上部電極26としては、前記下部電極24と同様の材料(白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の単金属からなる白金族電極や、白金−ロジウムなどの合金膜からなる電極)を用いることができる。
また、前述のように強誘電体膜として、鉛を含む複合酸化物(PZT)を使用する場合、鉛と上部電極(金属)との反応、もしくは上部電極への拡散が生じて圧電特性を劣化させる場合があるので、必要に応じて鉛(Pb)に対してバリア性を有する導電性材料(例えば、導電性酸化物)を用いることもできる。
このようにして得られた圧電素子は、強誘電体膜が良好な結晶であるので、圧電特性に優れている。また、高い歩留まりで製造することが可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施の形態である液滴吐出ヘッドについて説明する。図11に、本発明の液滴吐出ヘッドの一例の構造を示す模式図を示し、図12に、本発明の液滴吐出ヘッドが複数個配置された液滴吐出ヘッド20の断面図を示す。
本発明の液滴吐出ヘッド20は、液滴を吐出する液滴吐出ノズル孔29と、液滴吐出ノズル孔が連通する加圧室30と、加圧室内部に収容された液体を加圧する圧力発生手段とからなり、圧力発生手段は、前記加圧室に設けられた振動板22と、振動板22上に設けられた本発明の圧電素子27とからなるものであり、圧電素子を駆動させて記振動板22を変形変位させることにより、加圧室内部に収容された液体を加圧して液体を加圧室30外部に吐出する。
加圧室30は、シリコン基板21の一部を裏面からリソグラフィ法により除去し、ノズル孔29を有するノズル板28を接合して製造される。その後保護基板(図示せず)で圧電素子27を覆うように接合して液滴吐出ヘッド20を製造する。これによれば圧電素子を簡便な製造工程(バルクセラミックスと同等の性能を持つ)で形成することができる。この液滴吐出ヘッドには、加圧室30へ液体を供給する液体供給手段(図示せず)、流路(図示せず)および流体抵抗(図示せず)が設けられている。
図12に複数の液滴吐出ノズル孔29を備えた液滴吐出ヘッド40の概略断面図を示す。液滴吐出ヘッド40は、上記第3の実施形態による液滴吐出ヘッドを複数個並列に配置されてなるものである。このような複数の液滴吐出ノズルを備えた液滴吐出ヘッドはインクジェット等に用いることができる。
本発明の強誘電体膜を備えた圧電素子を用いて液滴吐出ヘッドを構成すれば、セラミック焼結体と同等の駆動力により液滴吐出特性を良好に保持でき、連続吐出しても安定した液滴吐出特性を維持することができる。また、この液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置、例えばインクジェット記録装置とすれば、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性によって画像品質が向上する。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態である画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置について図13及び図14を参照しながら説明する。図13に、液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置の斜視図を示し、図14にインクジェット記録装置の機構部の側面図を示す。
本発明のインクジェット記録装置80は、上記第3の実施形態による液滴吐出ヘッドを備えたものである。図13及び図14に示すように、インクジェット記録装置は、記録装置本体(81)の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ(93)、キャリッジに搭載した本発明を実施した液滴吐出ヘッド(94)、液滴吐出ヘッド(94)へインクを供給するインクカートリッジ(95)等で構成される印字機構部等を収納し、装置本体(81)の下方部には前方側から多数枚の用紙等の記録媒体(83)を積載可能な給紙カセット(84)(或いは給紙トレイでもよい。)を抜き差し自在に装着することができ、また、記録媒体(83)を手差しで給紙するための手差しトレイ(85)を開倒することができ、給紙カセット(84)或いは手差しトレイ(85)から給送される記録媒体(83)を取り込み、印字機構部によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ(86)に排紙する。
印字機構部は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド(91)と従ガイドロッド(92)とでキャリッジ(93)を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ(93)にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッド(94)を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ(93)には液滴吐出ヘッド(94)に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ(95)を交換可能に装着している。
インクカートリッジ(95)は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド(94)へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色の液滴吐出ヘッド(94)を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ(93)は後方側(記録媒体搬送方向下流側)を主ガイドロッド(91)に摺動自在に嵌装し、前方側(記録媒体搬送方向上流側)を従ガイドロッド(92)に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ(93)を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ(97)で回転駆動される駆動プーリ(98)と従動プーリ(99)との間にタイミングベルト(100)を張装し、このタイミングベルト(100)をキャリッジ(93)に固定しており、主走査モーター(97)の正逆回転によりキャリッジ(93)が往復駆動される。
一方、給紙カセット(84)にセットした記録媒体(83)を液滴吐出ヘッド(94)の下方側に搬送するために、給紙カセット(84)から記録媒体(83)を分離給装する給紙ローラ(101)及びフリクションパッド(102)と、記録媒体(83)を案内するガイド部材(103)と、給紙された記録媒体(83)を反転させて搬送する搬送ローラ(104)と、この搬送ローラ(104)の周面に押し付けられる搬送コロ(105)及び搬送ローラ(104)からの記録媒体(83)の送り出し角度を規定する先端コロ(106)とを設けている。搬送ローラ(104)は副走査モータ(107)によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ(93)の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ(104)から送り出された記録媒体(83)を液滴吐出ヘッド(94)の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材(109)を設けている。この印写受け部材(109)の用紙搬送方向下流側には、記録媒体(83)を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ(111)、拍車(112)を設け、さらに記録媒体(83)を排紙トレイ(86)に送り出す排紙ローラ(113)及び拍車(114)と、排紙経路を形成するガイド部材(115)とを配設している。
記録時には、キャリッジ(93)を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド(94)を駆動することにより、停止している記録媒体(83)にインクを吐出して1行分を記録し、記録媒体(83)を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、記録媒体(83)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録媒体(83)を排紙する。
また、キャリッジ(93)の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド(94)の吐出不良を回復するための回復装置(117)を配置している。回復装置(117)はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ(93)は印字待機中にはこの回復装置(117)側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド(94)をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド(94)の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置においては本発明の圧電素子が駆動されることにより液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
すなわち、本発明の圧電素子を備えた液滴吐出ヘッド、及び該液滴吐出ヘッドを具備する液滴吐出装置は、吐出安定性と耐久性に優れているため、オフィス、パーソナルで使用するプリンタ、MFP等のインクジェット式記録装置に応用できるほか、三次元造型技術などへの応用も可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
以下、本発明の強誘電体膜の形成方法について一実施例を説明する。本実施例の強誘電体膜の形成方法には上記実施形態において記載した自動成膜装置を用いる。上記実施形態と同様の構成要素については同符号を付して説明を省略する。
<(1)塗布工程>
シリコンウェハ18は下部電極として白金膜(膜厚250nm)、SrRuO膜(膜厚50nm)を成膜したものを用いる。強誘電体前駆体溶液として、2−メトキシエタノール(沸点:125℃)を主溶媒とし、Pb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合されたPZT前駆体溶液を準備した。このシリコンウェハと前駆体溶液を用いて、自動成膜装置において図4に示すフローチャートのごとく強誘電体膜の形成を実施した。
収納部材11に収納されたウェハは、搬送装置12により、まず始めにアライナー13によってウェハの位置決め及び芯だしが成された後、スピンコート装置14に投入され、強誘電体前駆体液の塗膜をウェハ上に形成した。
<(2)乾燥工程>
次に、ウェハ18は、搬送装置12により、ホットプレート15に投入される。ホットプレート15は、主溶媒の沸点より高い乾燥温度(T)である140℃に加熱されている。ウェハ18は、搬送装置12から高さ30mm(H)だけ突出した状態にあるリフトピン19に受け渡される。続いてリフトピン19が受け渡し位置(高さ30mm)から1分間かけて下降し、ウェハをホットプレート15上に載せ置くことにより、主溶媒の沸点より高い乾燥温度(T)である140℃までウェハの昇温速度を2℃/秒にてウェハ温度が上昇する。その後、ウェハはホットプレート15上に1分間載置され、前駆体膜の乾燥を行った。
<熱分解工程>
熱分解工程は、以下の熱分解第一の加熱工程および熱分解第二の加熱工程を有するものである。
<(3)熱分解第一の加熱工程>
次にウェハは、搬送装置12によってRTA装置16に投入され、強誘電体膜特性に影響を与えない温度(T11)250℃まで、昇温速度15℃/秒にて、ウェハ温度を上昇させた。
<(4)熱分解第二の加熱工程>
熱分解第一の加熱工程に続いて、昇温速度60℃/秒にて熱分解温度(T12)550℃までウェハ温度を上昇させた。この温度を5分間保持し、強誘電体前駆体の乾燥膜中の有機物成分を分解させ、一層目のアモルファス(非晶質)膜を得た。
<冷却工程>
続いてウェハは、搬送装置12により冷却ステージ17に移動し、冷却ステージ17上に2分間以上留め置かれることによりウェハ温度を室温まで冷却した。
<(5)第一の積層工程>
そして、前述の塗布工程〜冷却工程までのプロセスを3度繰り返して3層積層したアモルファス(非晶質)膜を得た。
<結晶化工程>
結晶化工程は、以下の結晶化第一の加熱工程、結晶化第二の加熱工程および結晶化第三の加熱工程を有するものである。
<(6)結晶化第一の加熱工程>
ウェハ18は、ふたたび搬送装置12によってRTA装置16に投入され、強誘電体膜特性に影響を与えない温度(T21)250℃まで昇温速度15℃/秒にて、ウェハ温度を上昇させた。
<(7)結晶化第二の加熱工程>
結晶化第一の加熱工程に続いて、昇温速度60℃/秒にて熱分解温度(T22)550℃までウェハ温度を上昇させた。そして、この温度を1分間保持した。
<(8)結晶化第三の加熱工程>
その後、結晶化第二の加熱工程に続いて、結晶化温度(T)750℃まで昇温速度80℃/秒にてウェハ温度を上昇させて、この温度を6分間保持して3層積層したアモルファスの強誘電体膜を結晶化した。厚さ200nmの強誘電体結晶膜を得た。
<(9)第二の積層工程>
そしてさらに、図4に示す塗布工程から結晶化工程までのプロセスを10回繰り返すことで厚さ約2μmの結晶質の強誘電体結晶膜を得た。
このようにして得られた強誘電体膜は、乾燥工程では、乾燥温度140℃まで2℃/秒の低速で昇温を行い、250℃までの低温領域では15℃/秒の遅い速度にて昇温加熱する熱処理がなされているため、前駆体溶液中の溶媒の突沸あるいは有機物成分の急速な燃焼及び分解によるガスの発生を回避している。そして、550℃までの高温領域において60℃/秒の速い速度にて昇温加熱する熱処理がなされており、さらには、結晶化温度750℃まで80℃/秒の早い速度にて昇温加熱する熱処理がなされているため、パイロクロア相が発生することなく、良質な結晶が得られ、強誘電性や焦電性あるいは圧電性といった特性が良好になる。
上記のように形成された強誘電体膜についてSEM観察とX線回析(XRD:X−Ray Diffraction)法による評価を行った。図5に本実施例の強誘電体膜の表面SEM画像写真を示し、図6に本実施例の強誘電体膜の断面SEM画像写真を示す。図7に本実施例の強誘電体膜のX線回析の評価結果のグラフを示す。
図5に示すように、強誘電体膜の表面は高い均一性が得られている。また、図6に示すように、強誘電体膜の断面は、欠陥となる空隙が発生しておらず緻密な結晶が得られている。また、図7に示すように、ZRDの評価結果のグラフにおいて、パイロクロア相のピークは見られず、PZT(111)のシャープなピークが得られている。
このような強誘電体膜を備えた圧電素子等のデバイス特性は、良好となると同時に、その製造歩留まりを高く保つことができる。
なお、上記実施例に記載した乾燥温度(T)、乾燥工程における昇温速度、熱分解工程における昇温速度、温度(T11)、熱分解温度(T12)、結晶化工程における昇温速度、温度(T21)、熱分解温度(T22)、および結晶化温度(T)は、あくまで実施例の一例を示すものであり、必ずこれらの値に制限されるものではない。
(比較例)
以下に比較例としての、強誘電体膜の形成方法について説明する。
本比較例の強誘電体膜は、乾燥工程は、140℃で1分維持して前駆体膜を乾燥させ、熱分解工程は、550℃で5分維持して熱分解を行い、結晶化工程は、750℃で6分維持して結晶化を行ったことは、上記実施例と同様のプロセスによって形成した。
しかし、乾燥工程における昇温速度は30℃/秒と、上記実施例と比較して速く、一方、熱分解工程並びに結晶化工程における昇温速度は15℃/秒と、上記実施例と比較して遅い昇温制御を行った。
本比較例の強誘電体膜を形成した後、SEM観察とX線回析による評価を行った。図8に、本比較例の強誘電体膜の表面のSEM画像写真を示す。図9に、強誘電体膜の断面のSEM画像写真を示す。図10に、本比較例の強誘電体膜のXRD評価結果のグラフを示す。
図8に示すように、強誘電体膜の表面には空隙による隆起部が見られ、均一性が良好ではない。また、図9に示すように、強誘電体膜中に空隙が見られる。また、図10に示すように、2θ=30°付近にパイロクロア相のピークが見られる。
10 自動成膜装置
11 収納部材
12 搬送装置
13 アライナー
14 スピナー塗布装置
15 ホットプレート
16 RTA装置
17 冷却ステージ
18 ウェハ
19 リフトピン
20 液体吐出ヘッド
21 基板
22 振動板
23 密着層
24 下部電極
25 強誘電体層
26 上部電極
27 圧電素子
28 ノズル板
29 ノズル孔
30 圧力室
特許第2995290号公報 特開平10−270646号公報 特開2001−172099号公報 特許第5013035号公報 特開2006−228447号公報 特開2006−019592号公報 特許第5019020号公報 特開平11−199393号公報 特開2011−134553号公報

Claims (8)

  1. 強誘電体膜の形成方法であって、
    (1)強誘電体膜の原料である前駆体溶液を塗布して前駆体膜を成膜する塗布工程と、
    (2)所定の乾燥温度(T)まで、10℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱して前記前駆体膜を乾燥する乾燥工程と、
    (3)強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第一の加熱工程と、
    (4)前記熱分解第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T12)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する熱分解第二の加熱工程と、
    (5)前記(1)乃至(4)の工程を少なくとも1回繰り返し、所望する膜厚の非晶質の強誘電体膜を形成する第一の積層工程と、
    (6)強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T21)まで、20℃/秒以下の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第一の加熱工程と、
    (7)前記結晶化第一の加熱工程に続いて、所定の熱分解温度(T22)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第二の加熱工程と、
    (8)前記結晶化第二の加熱工程に続いて、所定の結晶化温度まで(T)まで、50℃/秒以上の昇温速度で昇温しながら加熱する結晶化第三の加熱工程と、
    (9)前記(1)乃至(8)の工程を少なくとも1回繰り返し、所望する膜厚の結晶質の強誘電体膜を形成する第二の積層工程と、
    を含むことを特徴とする強誘電体膜の形成方法。
  2. 前記強誘電体膜の強誘電体膜特性に影響を与えない所定の温度(T11)および(T21)は、300℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体膜の形成方法。
  3. 前記強誘電体膜は、一般式ABOで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物からなり、AはPb、Ba、またはSrを主成分とし、BはTi、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、またはNbを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の強誘電体膜の形成方法。
  4. 前記強誘電体膜は、Pb(Zr,Ti)Oからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の強誘電体膜の形成方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の強誘電体膜の形成方法により形成された強誘電体膜。
  6. 請求項5に記載の強誘電体膜を備えた電気機械変換素子。
  7. 請求項6に記載の電気機械変換素子を備えた液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項7に記載の液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置。
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