JP2014152290A - 繊維樹脂複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロース繊維と樹脂との複合材料において、加熱プロセスを経た場合でも、着色が少ない繊維樹脂複合材料を提供する。
【解決手段】セルロース繊維、樹脂、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料。該環状エーテル構造を有する化合物は、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。繊維樹脂複合材料に、環状エーテル構造を有する化合物、或いは、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物を含有させることにより、加熱による着色を抑制することができる。
【選択図】なし

Description

本発明はセルロース繊維と樹脂とを含む繊維樹脂複合材料及びその製造方法に関し、具体的には、強化された樹脂材料や電子材料の基板として使用される繊維樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
本発明はまた、この繊維樹脂複合材料の製造に好適に用いられるセルロース繊維分散体及び繊維樹脂複合材料形成用分散体に関する。
近年、セルロースの微細繊維を用いた繊維樹脂複合材料について盛んに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、樹脂と複合化することにより、低線熱膨張係数と高弾性率、高強度を発現することが知られている。また、微細化することにより、樹脂と複合化して複合材料とした際に高透明性を示す材料として注目されている。
このような高透明性、低線熱膨張係数を有するセルロース繊維の複合材料の用途例として、フラットパネルディスプレイや有機LED照明、太陽光発電パネル等に代表される電気・電子デバイス用透明基板材料等が挙げられるが、これらのデバイス作製工程においては加熱処理を必要とする場合がある。特に、将来的に光学基板材料として必要とされている耐熱温度は250℃と言われており、これらの用途では、加熱処理によって着色が生じる材料は好ましくない。
しかし、セルロースは200℃以上の高温に曝すと徐々に熱分解することが知られている。この問題に対して、特許文献1には、セルロースを適量のホウ酸で処理することで、セルロース表面の水酸基とホウ酸がエステル結合を形成し、還元性末端が固定されることで300℃程度までの加熱に対する解重合を抑制できることが開示されている。しかし、ホウ酸エステルは水分で容易に分解してしまうため、熱分解抑制の効果は少なく、また、ホウ酸が多いと酸として働くためにセルロースの着色を促進してしまうなどの問題があった。
また、セルロースを高温で溶媒とともに加熱処理することで、セルロースの加熱着色を抑制する方法も知られている。例えば、特許文献2では、炭素数1〜20のアセタール構造を有さないアルコールの存在下でセルロースを加熱し、セルロースの還元性末端とアルコールを反応させることで、高温での着色を抑制できることが開示されている。しかし、この方法は、170℃以上の高温で処理する必要があり、製造コストの面からは不利である。さらに、樹脂と複合化させた場合についての記載はなく、複合化後の耐熱着色抑制効果については不明である。
また、特許文献3では微細化したセルロース繊維を溶媒共存下で加熱処理することで、加熱による着色を抑制する方法が開示されているが、この方法では、200℃での加熱着色は抑制されるが、250℃に加熱した場合のセルロースの熱分解による着色を抑制するには不十分であった。
特開2008−163053号公報 特開2010−159364号公報 特開2011−144363号公報
本発明は、セルロース繊維と樹脂との複合材料において、加熱プロセスを経た場合でも、着色が少ない繊維樹脂複合材料を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、繊維樹脂複合材料に、環状エーテル構造を有する化合物、或いは、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物を含有させることにより、上記課題を解決できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、セルロース繊維、樹脂、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする繊維樹脂複合材料、に存する。
本発明はまた、
セルロース繊維、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とするセルロース繊維分散体、
樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする繊維樹脂複合材料形成用分散体、
セルロース不織布と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料形成用分散体に、セルロース不織布を含浸させるか、或いは、セルロース不織布に、該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布する工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合材料の製造方法、
並びに
セルロース繊維及び樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有するセルロース繊維分散体を硬化させる工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合材料の製造方法、
に存する。
本発明によれば、セルロース繊維と樹脂との複合材料において、加熱プロセスを経た場合でも、着色が少ない繊維樹脂複合材料を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
[繊維樹脂複合材料]
本発明の繊維樹脂複合材料は、
(1) セルロース繊維、
(2) 樹脂、
並びに、
(3) 環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物
を含有することを特徴とする。
以下において、「環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物」を「本発明の特定化合物」と称し、「環状エーテル構造を有する化合物」を「環状エーテル化合物」と称し、「(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物」を「(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物」と称す場合がある。
尚、本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、「メタクリロイル基」および/または「アクリロイル基」のことを指す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」についても同様である。
本発明の繊維樹脂複合材料では、本発明の特定化合物を含むことにより、200℃以上の高温に加熱した際に複合材料内のセルロースが熱分解して着色することを抑制することができる。この着色抑制効果の作用機構の詳細は明らかではないが、本発明の特定化合物は、繊維樹脂複合材料の硬化時には反応せずに、高温下においてセルロースの水酸基と反応するような官能基等を持つ化合物であることによるものと考えられる。
{本発明の特定化合物}
まず、本発明の特徴である、環状エーテル化合物及び(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物からなる群から選ばれる本発明の特定化合物について説明する。なお、本発明の特定化合物としては、環状エーテル化合物の1種又は2種以上を用いてもよく、(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の1種又は2種以上を用いてもよい。また、環状エーテル化合物の1種又は2種以上と(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の1種又は2種以上を併用してもよい。
本発明の特定化合物は、通常分子量が100000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは1000以下であり、通常44以上、好ましくは88以上である。本発明の特定化合物の分子量がこの範囲であることにより、本発明の特定化合物は繊維樹脂複合材料へ配合しやすく、揮発しにくく、環境安全面に問題がないため好ましい。
<環状エーテル化合物>
環状エーテル化合物とは、分子内に環状エーテル構造を有する化合物であり、該環状エーテル構造は、分子の主鎖や環に連結する基として存在してもよいし、主鎖や環の一部を構成するものであってもよい。
環状エーテル化合物に含まれる環状エーテル構造としては、通常3員環〜6員環のエーテル構造が挙げられるが、好ましくは3員環〜5員環、さらに好ましくは3員環または4員環のエーテル構造である。3員環の環状エーテル構造としてはオキシラン環が、4員環の環状エーテル構造としてはオキセタン環が挙げられる。
環状エーテル化合物は、分子内に環状エーテル構造が1以上あればよいが、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
環状エーテル化合物は、さらに分子内に(メタ)アクリロイル基を有することが、成形後の加熱工程や減圧工程において分子の析出や揮発が抑制されるため、加熱時の着色をより一層抑えることができる点で好ましい。
環状エーテル化合物が有する(メタ)アクリロイル基は1以上あればよいが、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。
環状エーテル化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、環状エーテル化合物中の環状エーテル構造と(メタ)アクリロイル基との比は、1:1〜1:5であることが好ましく、特に1:1〜1:2であることが好ましい。
環状エーテル化合物は、加熱工程におけるセルロースの熱分解を、オキシラン環やオキセタン環などの環状エーテル構造が抑制する作用により、繊維樹脂複合材料において、加熱時の着色を低減するものと予測される。
環状エーテル化合物として具体的には、オキシラン環またはオキセタン環を有する化合物が好ましい。
オキシラン環を有する化合物としては、グリシジル基を有する化合物と、環の一部をオキシラン環が構成している化合物(オキシラン環が縮合環として基本骨格の環に付加した形態の化合物)が挙げられる。
グリシジル基を有する化合物としては、例えばメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を用いることもできる。
環の一部をオキシラン環が構成している化合物としては、シクロヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
分子内にさらに(メタ)アクリロイル基を有する環状エーテル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。
例えば市販されているオキセタン環を有する化合物としては、アロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OPXT−211、OXT−212、OXT−610、OXT−213(東亜合成株式会社製)、ETERNACOOL OXETANE EHO、OXBP、OXMA、OXTP(宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
<(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物>
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基及び水酸基をそれぞれ1以上有していればよい。(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、(メタ)アクリロイル基は1以上あればよいが、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。また、(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、水酸基は1以上あればよいが、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物中の(メタ)アクリロイル基と水酸基の比は、1:5〜5:1であることが好ましく、具体的には、{(メタ)アクリロイル基の数}/(水酸基の数)で1/5以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、5以下が好ましく、2以下がより好ましい。
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、加熱工程におけるセルロースの熱分解を(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の水酸基が抑制する作用により、繊維樹脂複合材料において、加熱時の着色を低減するものと予測される。
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸1-ヒドロキシ-2-(アクリロイルオキシ)エチル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノアクリラート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスアクリル酸[ヘキサメチレンビスオキシビス(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]、ビスアクリル酸2,2,6-トリス(アクリロイルオキシメチル)-6-(ヒドロキシメチル)-4-オキサヘプタン-1,7-ジイル、ビスアクリル酸2-(アクリロイルオキシメチル)-2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル、ビスアクリル酸3,3,7-トリス(アクリロイルオキシメチル)-7-(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキサオクタン-1,8-ジイル、1,3-ビス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-5-(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-3,5-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが挙げられる。
{セルロース繊維}
次に、本発明の繊維樹脂複合材料に含まれるセルロース繊維(以下、「本発明のセルロース繊維」と称す場合がある。)について説明する。
本発明のセルロース繊維は、後述のセルロース含有物、セルロース含有物を精製したセルロース繊維原料、セルロース繊維原料を解繊した微細セルロース繊維のいずれでもよいが、好ましくは、セルロース繊維原料を解繊処理した微細セルロース繊維である。
<セルロース繊維の数平均繊維径>
本発明のセルロース繊維は特段限定されるものではないが、数平均繊維径が2〜400nmのセルロース繊維であることが好ましい。
この範囲のセルロース繊維は、通常は、以下に詳述するセルロース繊維原料を解繊処理することにより得られるものであり、その数平均繊維径は200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、80nm以下であることが特に好ましく、50nm以下であることがとりわけ好ましく、さらには30nm以下であることが最も好ましい。セルロース繊維の数平均繊維径は、小さい程好ましいが、低線熱膨張係数、高弾性率を発現するためには、セルロースの結晶性を維持することが重要であり、通常2nm以上、好ましくは4nm以上である。
尚、セルロース繊維の繊維径は、以下に詳述する微細セルロース繊維分散液中の分散媒を乾燥除去して得られるセルロース不織布を、走査型電子顕微鏡(以下SEM)、透過型電子顕微鏡(以下TEM)、原子間力顕微鏡(以下AFM)等で観察することにより計測して求めることができる。具体的には、通常、SEM、TEM、AFM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の繊維径を測定し、測定値を平均した値を数平均繊維径とする。
<セルロース繊維の製造方法>
以下、本発明のセルロース繊維の製造方法について、具体的に説明する。尚、本発明のセルロース繊維の製造方法については、以下の方法に限定されるものではない。
本発明のセルロース繊維を製造するには、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものをセルロース繊維原料として用いることが好ましい。
(セルロース含有物)
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などの植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース繊維が好ましい。
バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。
さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。木質を本発明のセルロース繊維原料として使用する場合は、木材チップや木粉などの状態に破砕して用いることが好ましい。
(セルロース繊維原料)
セルロース繊維原料は上記セルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。
例えば、上記のセルロース含有物をベンゼン−エタノールや炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリで脱ヘミセルロース処理をすることにより得られる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども精製方法として利用される。また、適宜、更に漂白処理等を行ってもよい。
精製処理には、分散媒として一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、セルロース繊維原料は、一般的な化学パルプの製造方法、例えばクラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプ、硝酸パルプの製造方法によって得られるものであってもよい。
すなわち、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどを用いてもよい。
また、セルロース繊維原料としては砕木パルプ、例えば、SGW(Stone Groundwood)、あるいは亜硫酸ソーダなどで軽度に化学処理した後、砕木化するCGP(Chemical Groundwood Pulp)等も使用可能であり、針葉樹、広葉樹の砕木パルプが好ましく使用される。
尚、セルロース含有物を木材チップや木粉などの状態に破砕してもよく、この破砕は、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース含有物を精製して得られるセルロース繊維原料の精製度合いは特に定めはないが、油脂、リグニンが少なく、セルロース成分の含有率が高い方がセルロース繊維原料の着色が少なく好ましい。セルロース繊維原料のセルロース成分の含有率は好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
また、セルロース繊維原料のセルロース成分は結晶性のα−セルロース成分と非結晶性のヘミセルロース成分に分類できる。結晶性のα−セルロース含有率が多い方が、繊維樹脂複合材料とした際に低線熱膨張係数、高弾性率、高強度の効果が得られやすいため好ましい。セルロース繊維原料のα−セルロース含有率は好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上である。
セルロース繊維原料の繊維径は特に制限されるものではないが、通常、数平均繊維径としては1μmから1mmである。なお、一般的な精製を経たセルロース繊維原料の数平均繊維径は通常50μm程度である。
(セルロース繊維原料の解繊処理)
セルロース繊維原料の解繊処理は通常セルロース繊維原料の分散液(セルロース繊維原料分散液)中で行う。このセルロース繊維原料分散液は、セルロース繊維原料としての固形分濃度が0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、また10重量%以下、特に6重量%以下のセルロース繊維原料分散液であることが好ましい。この解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整することが好ましい。
なお、分散媒としては、有機溶媒、水、有機溶媒と水との混合液を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール−モノ−t−ブチルエーテル等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、その他水溶性の有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒は、有機溶媒と水との混合液又は水であることが好ましく、特に水であることが好ましい。
セルロース繊維原料の解繊処理の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維原料分散液に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロース繊維原料を解繊する方法、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、セルロース繊維原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転式ホモジナイザー法)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、「マスコマイザーX」のような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。特に、高速回転式ホモジナイザーや高圧ホモジナイザー処理は、解繊の効率が向上する。なお、上記のような処理の後に、超音波処理を組み合わせた微細化処理を行ってもよい。
解繊処理後には、遠心分離を行って、解繊不良のセルロース繊維を分離、除去してもよい。遠心分離を行うことで、より均一で細かいセルロース繊維の上澄み液が得られる。遠心分離の条件については、適用した解繊処理及び要求される微細化の程度によるので特に限定されるものではないが、例えば3000G以上、好ましくは10000G以上の遠心力をかけることが好ましい。また、処理時間としては、例えば1分以上、好ましくは5分以上遠心力をかけることが好ましい。遠心力が小さすぎたり、処理時間が短すぎたりすると、解繊不良のセルロース繊維の分離・除去が不十分になり、好ましくない。
また、遠心分離を行う際、遠心力をかけるセルロース繊維を含む分散液の粘度が高いと、分離効率が落ちるため好ましくない。この分散液の粘度としては、25℃において測定されるずり速度10s−1における粘度が500mPa・s以下、特に100mPa・s以下であることが好ましい。
このような解繊処理、更には必要に応じて遠心分離を施すことにより、微細なセルロース繊維を含有する微細セルロース繊維分散液を得ることができる。
なお、後述の如く、上記の解繊処理は、セルロース繊維原料と本発明の特定化合物とを含む分散液に対して行ってもよく、これにより、セルロース繊維と本発明の特定化合物とを含む本発明のセルロース繊維分散体を製造することができる。
また、上記の解繊処理は、セルロース繊維原料と後述の樹脂及び/又は樹脂前駆体とを含む分散液に対して行ってもよく、セルロース繊維原料と樹脂及び/又は樹脂前駆体と本発明の特定化合物とを含む分散液に対して行ってもよい。
(化学修飾処理・酸化処理)
本発明のセルロース繊維は、化学修飾によって誘導化されたもの(化学修飾されたセルロース繊維)や酸化処理によりカルボキシ基が導入されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾された(他の置換基が導入された)ものである。
これらの処理は、前述した精製処理の前に行っても、後に行ってもよく、後述のセルロース不織布に対して行ってもよい。また、前述の解繊処理によってセルロース繊維を解繊した後に行ってもよく、解繊処理後に行ってもよい。
これら化学修飾処理・酸化処理によってセルロースの水酸基に導入される基は特に制限されず、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基、リン酸基、カルボキシ基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素原子が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されたものであっても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。
化学修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
化学修飾剤の種類としては、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルよるなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
酸としては、例えば酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2-ブタン酸、無水ペンタン酸等が挙げられる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタン等が挙げられる。
これらの中では特に無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
本発明において、セルロース繊維の化学修飾率は、セルロースの全水酸基に対して、好ましくは3mol%以上、さらに好ましくは8mol%以上である。また、化学修飾率はセルロースの全水酸基に対して65mol%以下、より好ましくは50mol%以下、さらに好ましくは40mol%以下である。
この化学修飾率が高い方が、得られる繊維樹脂複合材料における加熱による着色の抑制効果に優れる傾向があり、また、化学修飾率が高い方が、セルロース繊維の親水性が低くなって、吸水率を低減する効果があるが、化学修飾率が高すぎると、セルロース構造が破壊され、結晶性が低下するため、得られる繊維樹脂複合材料の線膨張率が大きくなってしまうという問題があり好ましくない。特に、セルロース繊維原料として木質を用いる場合、化学修飾率が低くても高くても加熱による着色の問題があるので、化学修飾を適宜調整することが好ましい。
なお、ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
乾燥させたセルロース繊維又は乾燥させた後述のセルロース不織布0.05gを精秤し、これにエタノール1.5ml、蒸留水0.5mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で30分静置した後、0.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加する。これを60〜70℃の湯浴中で3時間静置した後、超音波洗浄器にて30分間超音波振とうする。これを、フェノールフタレインを指示薬として0.2M塩酸標準溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.2M塩酸水溶液の量Z(ml)、及びブランクサンプル(=乾燥セルロースなしのサンプル)の滴定に要した0.2N塩酸水溶液の量Z(ml)から、下記式によって化学修飾により導入された置換基の量Q(mol)が求められる。
Q(mol)=(Z−Z)×0.2/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは化学修飾により導入された置換基の分子量である。
Figure 2014152290
これを解いていくと、以下の通りである。
Figure 2014152290
<セルロース不織布>
本発明の繊維樹脂複合材料において、セルロース繊維は繊維樹脂複合材料中にセルロース不織布として含有されていてもよい。
セルロース不織布は、セルロース繊維の不織布であって、セルロース繊維の分散液を濾過等して製造されるが、解繊前のセルロース繊維を用いるよりも、解繊により細かくされたセルロース繊維を用いて製造したものの方が、これを用いて高透明性、低線熱膨張係数、高弾性率の繊維樹脂複合材料が得られるため好ましい。すなわち、セルロース不織布は、解繊処理で得られた微細セルロース繊維分散液を濾過することにより、或いは適当な基材に塗布することによりシート状物として製造されることが好ましい。
セルロース不織布を、微細セルロース繊維分散液を濾過することによって製造する場合、濾過に供される分散液の微細セルロース繊維濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。分散液中の微細セルロース繊維の濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、分散液中の微細セルロース繊維の濃度は通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以下、特に好ましくは1.2重量%以下、最も好ましくは1.0重量%以下である。分散液中の微細セルロース繊維の濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。
微細セルロース繊維分散液を濾過する場合、濾過時の濾布としては、微細セルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。より具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
また、天然繊維であるセルロースからなる紙基材を濾過材として用いることができる。紙基材は幅広や長尺物のものを簡単に製造できる上に、原料であるパルプの種類やパルプの叩解度を変えることなどで、紙の通水量を制御できるため好ましい。また、紙基材には耐水化剤や疎水化剤などで容易に基材に耐水性を付与することも可能である。
上記濾過によって得られたセルロース不織布は、その後、乾燥を行うが、場合によっては乾燥を行わずに次の工程に進んでも構わない。例えば、加熱処理した微細セルロース繊維分散液を濾過した場合、乾燥工程を経ずそのまま次工程に供することもできる。
しかし、空隙率、膜厚の制御、不織布の構造をより強固にする意味でも、乾燥を行った方が好ましい。この乾燥は、送風乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよく、また、加圧乾燥、凍結乾燥であってもよい。また、加熱乾燥しても構わない。
加熱乾燥を行う場合、加熱温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロース不織布が着色したり、セルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。加圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性があり、加圧力が高すぎるとセルロース不織布がつぶれたりセルロースが分解したりする可能性がある。
また、セルロース不織布を、微細セルロース繊維分散液を適当な基材に塗布することによりシート状物として製造してもよい。この場合、通常、上記分散液を所定の基板上に塗布して、分散媒を特定量まで蒸発させて除去する。塗布の方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、スリットコート法などが挙げられる。特に、均一な膜厚の薄膜が得られる点で、スピンコート法が好ましい。
なお、基板としては、特に限定されず、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
本発明で用いるセルロース不織布は、通常、セルロース繊維のみからなるものであるが、必要に応じて、他の配合剤や繊維を含んでいてもよい。
尚、セルロース不織布に含まれるセルロース繊維の好ましい繊維径は、前記した本発明のセルロース繊維の数平均繊維径と同じである。
また、セルロース不織布の空隙率が小さいと樹脂が含浸されにくくなるため、ある程度の空隙率があることが好ましい。この場合の空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは20体積%以上である。ただし、空隙率が過度に大きいとセルロース繊維複合材料としたときに線熱膨張係数が大きくなるので好ましくないことから、セルロース不織布の空隙率は60体積%以下であることが好ましい。
ここでいうセルロース不織布の空隙率は簡易的に下記式により求めることができる。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aはセルロース不織布の面積(cm)、tは厚み(cm)、Bはセルロース不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cmと仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(PEACOK製のPDN−20)を用いて、セルロース不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
セルロース不織布の厚みには特に限定はないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常1000μm以下、好ましくは250μm以下である。セルロース不織布の厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上であることが好ましく、生産性、均一性、樹脂の含浸性の点から上記上限以下であることが好ましい。
{繊維樹脂複合材料の製造方法}
以下に本発明の繊維樹脂複合材料の製造方法について説明するが、本発明の繊維樹脂複合材料の製造方法は何ら以下の方法に限定されるものではない。
<繊維樹脂複合材料の製造方法1>
本発明の第一の繊維樹脂複合材料の製造方法は、上述のセルロース不織布を、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに本発明の特定化合物を含有する本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体に含浸させるか、或いは、セルロース不織布に該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布することにより、セルロース不織布と樹脂と本発明の特定化合物とを含む本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法である。
(繊維樹脂複合材料形成用分散体)
以下、樹脂及び/又は樹脂前駆体と本発明の特定化合物とを含有する本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体について説明する。
この繊維樹脂複合材料形成用分散体に含有される樹脂及び/又は樹脂前駆体として好適なものは、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂等から選ばれる少なくとも1種の樹脂(高分子材料)またはその前駆体である。
なお、本発明において樹脂(高分子材料)の前駆体とは、いわゆるモノマー、オリゴマーである。
また、本発明における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明において用いる樹脂(前駆体の場合にはその重合した樹脂)は、非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子であるものが、透明性に優れた高耐久性の繊維樹脂複合材料を得る上で好ましく、このうち非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは110℃以上、特に120℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。用いた樹脂のTgが低いと、製造された繊維樹脂複合材料が例えば熱水等に触れた際に変形する恐れがあり、実用上問題が生じる。
また、低吸水性の繊維樹脂複合材料を得るためには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基などの親水性の官能基が少ない材料を選定することが好ましい。
なお、Tgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC(示差走査熱量測定)法による測定で求められる。結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができ、また、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
以下に、本発明で用いることができる樹脂及びその前駆体の具体例について説明する。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
<光硬化性樹脂>
光硬化性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂の具体例としては、特開2009−299043号公報に記載のものが挙げられる。
尚、繊維樹脂複合材料形成用分散体には、必要に応じて、適宜、重合開始剤、硬化剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等を配合してもよい。
<樹脂及び/又は樹脂前駆体と本発明の特定化合物の含有量>
繊維樹脂複合材料形成用分散体におけるその樹脂及び/または樹脂前駆体の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。樹脂及び/又は樹脂前駆体の含有量が上記下限を下回ると得られる複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがあり、上記上限を上回ると相対的に本発明の特定化合物の含有量が少なくなって加熱着色抑制の効果が得にくい等の恐れがある。
また、繊維樹脂複合材料形成用分散体中の本発明の特定化合物の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。本発明の特定化合物の含有量が上記下限を下回ると加熱着色抑制の効果が得にくい等の恐れがあり、上記上限を上回ると、相対的に樹脂及び/又は樹脂前駆体の含有量が少なくなって得られる繊維樹脂複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがある。
繊維樹脂複合材料形成用分散体に含有される樹脂及び/または樹脂前駆体と本発明の特定化合物との含有比率は、硬化性、加熱着色抑制効果のバランスが良いことから、重量比で、樹脂及び/または樹脂前駆体1に対して、本発明の特定化合物が0.01倍以上であることが好ましく、0.02倍以上であることがより好ましく、1倍以下であることが好ましく、0.7倍以下であることがより好ましい。
(分散媒)
本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体は、通常、分散媒として、水及び/または有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種または2種以上が挙げられる。
繊維樹脂複合材料形成用分散体の分散媒の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。分散媒の含有量が上記下限を下回ると分散体の流動性が損なわれ、作業性が悪くなる恐れがあり、上記上限を上回ると脱溶剤工程で高コストになる恐れがある。
(含浸・塗布方法)
前述のセルロース不織布を上記繊維樹脂複合材料形成用分散体に含浸させる、或いは前述のセルロース不織布に上記繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布して、本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法としては、以下の様な方法が挙げられる。
(a) セルロース不織布に、液状の熱可塑性樹脂前駆体を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体を含浸させて重合させる方法
(b) セルロース不織布に、熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース不織布に、繊維樹脂複合材料形成用分散体の溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上と本発明の特定化合物を溶質として含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法
(d) セルロース不織布に、熱可塑性樹脂を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) セルロース不織布の片面もしくは両面に、熱可塑性樹脂前駆体や熱硬化性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を含む液状の繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布して重合硬化させる方法
(f) セルロース不織布の片面もしくは両面に、繊維樹脂複合材料形成用分散体溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上と本発明の特定化合物を溶質として含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させる方法
上記のように含浸または塗布し、必要に応じて硬化させた後は、所望により更に乾燥等の後処理を行ってもよい。
尚、本発明の繊維樹脂複合材料は、1枚のセルロース不織布を含むものであっても、複数枚のセルロース不織布を含むものであってもよく、複数枚のセルロース不織布を含む繊維樹脂複合材料を製造するには、上記の方法で1枚のセルロース不織布を含む繊維樹脂複合材料を製造した後、得られた繊維樹脂複合材料の複数枚を積層して一体化させてもよい。
<繊維樹脂複合材料の製造方法2>
本発明の第二の繊維樹脂複合材料の製造方法は、セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維分散体を硬化させることにより、セルロース繊維と樹脂と本発明の特定化合物とを含む本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法である。
(セルロース繊維分散体)
以下、セルロース繊維と本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維含有分散体について説明する。このようにセルロース繊維分散体は、セルロース繊維と本発明の特定化合物とを含有するものであるが、好ましくは樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有する。
このセルロース繊維分散体は、セルロース繊維及び本発明の特定化合物を混合して製造すればよい。
例えば、セルロース繊維と本発明の特定化合物とを含有する本発明のセルロース繊維分散体を調製した後に、樹脂及び/又は樹脂前駆体とを混合して製造してもよいし、これらを一度に混合して製造してもよく、セルロース繊維と、本発明の特定化合物と、樹脂及び/又は樹脂前駆体の混合順序には特に制限はない。
なお、セルロース繊維分散体に含まれる樹脂及び/又は樹脂前駆体としては、本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体に含まれる樹脂及び/又は樹脂前駆体として前述したものを用いることができる。
また、セルロース繊維分散体も、繊維樹脂複合材料形成用分散体と同様、必要に応じて、適宜、重合開始剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等を含有してもよい。
セルロース繊維と本発明の特定化合物を含有するセルロース繊維分散体の製造方法としては、セルロース繊維の分散液、好ましくは前述の解繊処理で得られた微細セルロース繊維分散液に本発明の特定化合物を添加する方法が挙げられる。
また、前述のセルロース繊維原料分散液に、本発明の特定化合物を添加し、本発明の特定化合物を含んだまま、前述の解繊処理を行い、本発明の特定化合物を含有する微細セルロース繊維分散液を得、これをセルロース繊維と本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維分散体としてもよい。
その他、前述のセルロース繊維原料分散液に、樹脂及び/又は樹脂前駆体を添加し、解繊処理を行ってもよいし、本発明の特定化合物と樹脂及び/又は樹脂前駆体の両方を添加して、解繊処理を行ってもよい。
(セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、本発明の特定化合物の含有量)
セルロース繊維分散体中のセルロース繊維の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。セルロース繊維分散体中のセルロース繊維の含有量が上記下限を下回ると得られる繊維樹脂複合材料の線熱膨張係数が高くなったり、弾性率や強度が下がる恐れがあり、上記上限を上回るとセルロース繊維分散体の粘度が上がり、取扱いにくくなる恐れがある。
セルロース繊維分散体中の本発明の特定化合物の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。セルロース繊維分散体中の本発明の特定化合物の含有量が上記下限を下回ると加熱着色の抑制効果が小さくなる恐れがあり、上記上限を上回ると得られる繊維樹脂複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがある。
セルロース繊維分散体は、樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有していてもよく、その含有量は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。セルロース繊維分散体中の樹脂及び/又は樹脂前駆体の含有量が上記下限を下回ると得られる繊維樹脂複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがあり、上記上限を上回ると相対的に本発明の特定化合物の含有量が少なくなって加熱着色の抑制効果が小さくなる恐れがある。
セルロース繊維分散体が樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有する場合、セルロース繊維分散体に含有される樹脂及び/または樹脂前駆体と本発明の特定化合物との含有比率は、硬化性、加熱着色抑制効果のバランスが良いことから、重量比で、樹脂及び/または樹脂前駆体1に対して、本発明の特定化合物が0.01倍以上であることが好ましく、0.02倍以上であることがより好ましく、1倍以下であることが好ましく、0.7倍以下であることがより好ましい。
(分散媒)
本発明のセルロース繊維分散体は、通常、分散媒として、水及び/または有機溶媒を含有する。分散媒としての有機溶媒としては、前述の本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体が分散媒として含有する有機溶媒として、例示したものが挙げられる。
セルロース繊維分散体中の分散媒の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、通常99.5重量%以下、好ましくは99.0重量%以下、より好ましくは98.5重量%以下である。セルロース繊維分散体中の分散媒の含有量が上記下限を下回るとセルロース繊維が凝集する恐れがあり、上記上限を上回ると脱溶媒工程が高コストになる恐れがある。
<硬化>
いずれの繊維樹脂複合材料の製造方法においても、繊維樹脂複合材料を製造するために硬化処理を行う。
硬化処理としては、樹脂にあわせ、例えば、加熱処理および/または露光処理を施し、溶媒を除去する処理が行われる。樹脂前駆体を使用した場合は、該工程を経て該前駆体が硬化されて樹脂となる。
加熱および/または露光処理を施す際、前記製造方法2の場合には、樹脂及び/または樹脂前駆体を含むセルロース繊維分散体を、ガラス基板、プラスチック基板などの基板上へ塗布して塗膜状としてもよく、また、型内に流し込んでもよい。該塗布や、型内に流し込んだ後、必要に応じて、乾燥処理を施して、溶媒を除去してもよい。
加熱による硬化処理を行う場合の加熱条件は特に限定されず、樹脂前駆体が使用される場合は、該前駆体が硬化する温度以上であればよい。なかでも、溶媒を揮発させて除去できる点から、加熱温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。なお、セルロース繊維の分解を抑制する点から、加熱温度は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。加熱時間は、生産性などの点から、60〜180分が好ましい。
加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。具体的には60〜100℃で30〜60分間の一次加熱と、130〜160℃で30〜60分間の二次加熱と、二次加熱温度よりも40〜60℃高い150〜200℃で30〜60分間の三次加熱との三段処理で行なうことが、溶媒を完全に除去し、得られる繊維樹脂複合材料の表面形状の不良を少なくし、完全硬化させるという点で好ましい。なお、加熱処理は少なくとも二段以上の加熱を行うことが好ましい。
露光による硬化処理を行う場合の露光処理には、赤外線、可視光線、紫外線などの光、電子線などの放射線等が使用されるが、好ましくは光である。より好ましくは波長が200〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
光の照射量は、使用される樹脂前駆体や、光重合開始剤などによって適宜最適な量が選択されるが、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm2以上200J/cm2以下の範囲、更に好ましくは1J/cm2以上20J/cm2以下の範囲で照射するのが好ましい。また、複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射することが好ましい。
使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
{繊維樹脂複合材料}
以上のようにして、セルロース繊維、樹脂、並びに、本発明の特定化合物を含有する本発明の繊維樹脂複合材料を得ることができる。前述の如く、セルロース繊維は繊維樹脂複合材料中に不織布として存在しても、分散した状態で存在してもよい。
<セルロース繊維含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は特に制限されないが、複合材料全量に対して、2.5重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、99重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。
繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が少な過ぎると線熱膨張係数低減の効果が不十分となり、更には、強度や弾性率も下がる傾向がある。繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が多過ぎると、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、硬化したときの表面の平坦性が低下するおそれがある。
<樹脂含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料中の樹脂の含有量は特に制限されないが、成形性の点から、1重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。繊維樹脂複合材料中の樹脂の含有量が多過ぎると相対的にセルロース繊維の含有量が少なくなって、線熱膨張係数低減等の効果が不十分となる傾向がある。繊維樹脂複合材料中の樹脂が少な過ぎると、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、硬化したときの表面の平坦性が低下する恐れがある。
<本発明の特定化合物の含有量>
本発明の繊維樹脂複合材料の本発明の特定化合物の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。本発明の特定化合物の含有量が上記下限を下回ると加熱着色抑制の効果が得にくい等の恐れがあり、上記上限を上回ると繊維樹脂複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがある。
本発明の繊維樹脂複合材料に含有される樹脂及び/または樹脂前駆体と本発明の特定化合物との含有比率は、硬化性、加熱着色抑制効果のバランスが良いことから、重量比で、樹脂及び/または樹脂前駆体1に対して、本発明の特定化合物が0.01倍以上であることが好ましく、0.02倍以上であることがより好ましく、1倍以下であることが好ましく、0.7倍以下であることがより好ましい。
本発明の繊維樹脂複合材料は、セルロース繊維と樹脂と本発明の特定化合物の他の配合剤が含まれていてもよい。例えば、前述の繊維樹脂複合材料形成用分散体に配合してもよいとして例示したものが挙げられる。
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は、例えば、複合化前のセルロース繊維の重量と複合化後の繊維樹脂複合材料の重量より求めることができる。また、樹脂及び本発明の特定化合物が可溶な溶媒に繊維樹脂複合材料を浸漬して樹脂及び本発明の特定化合物のみを取り除き、残ったセルロース繊維の重量から求めることもできる。繊維樹脂複合材料中の樹脂及び本発明の特定化合物の含有量については、繊維樹脂複合材料の製造に用いた樹脂及び/または樹脂前駆体と本発明の特定化合物の割合から計算により求めることができる。また、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂、本発明の特定化合物やセルロース繊維の官能基を定量して求めることもできる。
<形状・厚み>
本発明の繊維樹脂複合材料の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
本発明の繊維樹脂複合材料の形状が板状(シート状、フィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。繊維樹脂複合材料の厚みはより好ましくは30μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは50μm以上250μm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
<ガラス転移温度>
本発明の繊維樹脂複合材料は、セルロース繊維が樹脂中に均一に分散することによって、樹脂のTg(ガラス転移温度)を上昇させる効果を有すると考えられる。該効果によって、後述する用途に好適な高Tgを示す材料を得ることができる。特に、樹脂としてエポキシ樹脂を使用した場合は、その効果が顕著となる。なお、電気・電子材料用途においては、繊維樹脂複合材料のTgが3〜4℃上昇することは、大きなメリットとなる。
<YI値>
本発明の繊維樹脂複合材料は、本発明の特定化合物を含有することにより、セルロースの熱分解による着色を抑制することができる。
<用途>
本発明の繊維樹脂複合材料を樹脂などの基板とともに積層体として使用してもよい。また、該基板上に本発明のセルロース繊維分散体を塗布し、前記のとおり、加熱処理および/または露光処理等を施すことにより、積層体を製造してもよい。また、該積層体は保護フィルムを有していてもよい。
本発明の繊維樹脂複合材料またはその積層体は、様々な用途に使用することができ、その用途としては、例えば、接着剤、塗料、土木建築用建材、電気・電子部品の絶縁材料などが挙げられる。特に、その優れた耐熱性および低線膨張性、並びに、成形加工性から、多層電気積層板や、ビルドアップ法等の新方式プリント配線基板などの配線基板、および封止材用途に好適に使用することができる。また、有機EL素子や液晶表示素子等ディスプレイ用基板、フレキシブル積層板用途、レジスト材、シール材などにも使用することができる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[製造例1]
<セルロース不織布の製造>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製)を、ディスクリファイナー(熊谷理化工業社製)を用いて叩解した。叩解したパルプを2重量%濃度に水で希釈し、高速回転式ホモジナイザー(エムテクニック社製:CLM11S)を用いて、回転数6500rpmにて、2時間解繊処理を行い、微細セルロース繊維分散液を得た。
得られた微細セルロース繊維分散液を0.2重量%濃度に水で希釈したものと、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(乾燥状態の微細セルロース繊維(g)に対して24倍量)をそれぞれA4サイズ抄紙装置(王子製紙社製)に投入して抄紙し、120℃に加熱したシリンダードライヤーで乾燥させ、厚み70μm、坪量35g/mのA4サイズのセルロース不織布を得た。このセルロース不織布の空隙率は、計算により64体積%と算出された。
尚、解繊処理後のセルロース繊維の数平均繊維径は28nmであった。
<セルロース不織布の化学修飾>
上記のセルロース不織布を11枚重ねで丸めて筒状にして、20mLの無水酢酸を入れた容器中に、液と接触しないように設置して密閉した。この容器を145℃に加熱し、容器内の温度を140℃まで昇温させ、無水酢酸蒸気をセルロース不織布に60分間(処理時間)接触させ、反応を行った。反応後、140℃の熱風乾燥機で乾燥させ、残留ガスを除去することにより、アセチル化されたセルロース不織布を得た。このセルロース不織布の化学修飾率を、前述の化学修飾率の計測方法で求めたところ、11.7mol%であった。
[実施例1]
製造例1で得られたセルロース不織布を、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製;NKエステルA−DCP)89.8重量%、グリシジルメタクリレート(共栄社化学社製;ライトエステルG)10.0重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製;ルシリンTPO)0.2重量%との混合液(繊維樹脂複合材料形成用分散体)に含浸させ、減圧下、1時間静置した。
含浸後のセルロース不織布を2枚のガラス板に挟み、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、照射光量400mW/cmの下、ライン速度7m/minで照射した。この時の光量は0.12J/cmであった。セルロース不織布を挟んだガラス面を反転させて、裏面に上記と同様の条件で再度照射した。これを10回行った。次いで、照射光線量1900mW/cmの下を、ライン速度2m/minで照射した。この時の光量は2.7J/cmであった。この操作を上記と同様に、ガラス面を反転してさらに9回行った。全照射光量は28.2J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、200℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱して、厚さ95μmの板状の繊維樹脂複合材料を得た。
なお、紫外線の照度は、紫外線照度計(オーク製作所製;UV−M02)でアタッチメントUV−35を用いて、23℃で320〜390nmの範囲を測定した。
得られた繊維樹脂複合材料について、JIS規格K7105に準拠し、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて、黄色度(YI値)を測定したところ、8.27であった。また、得られた繊維樹脂複合材料について、JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製へイズメーターを用いてC光による全光線透過率を測定したところ、ヘーズは33.28%、全光線透過率は86.92%であった。
また、この繊維樹脂複合材料を、そのまま220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後、上記と同様にして黄色度(YI値)を測定したところ、13.03であった。さらに、250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱し、同様にして黄色度(YI値)を測定したところ、32.6であった。
なお、この繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は、用いたセルロース不織布と繊維樹脂複合材料形成用分散体の固形分量から37重量%と求められた。
[実施例2]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製;OXT−212)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.23であった。また、ヘーズは34.96%、全光線透過率は86.45%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は16.51、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は54.05であった。
[実施例3]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.84であった。また、ヘーズは32.78%、全光線透過率は85.74%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は12.19、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は57.6であった。
[実施例4]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製;YX8000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.16であった。また、ヘーズは32.29%、全光線透過率は87.91%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は18.04、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は45.39であった。
[実施例5]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、7.94であった。また、ヘーズは31.55%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は13.13、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は43.41であった。
[実施例6]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの含有量を79.8重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を20.0重量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.60であった。また、ヘーズは33.61%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は15.78、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は54.77であった。
[実施例7]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの含有量を49.9重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を49.9重量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.52であった。また、ヘーズは39.92%、全光線透過率は86.12%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は20.64、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は57.11であった。
[実施例8]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートをメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成社製;HEMA)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.61であった。また、ヘーズは30.75%、全光線透過率は87.71%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は11.08、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は48.98であった。
[比較例1]
セルロース不織布を含浸させる混合液にグリシジルメタクリレートを添加せず、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを99.8重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.2重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.33であった。また、ヘーズは30.89%、全光線透過率は88.00%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は10.59、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は69.37であった。
[比較例2]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートをトリシクロデシルメタクリレート(日立化成社製;FA513M)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.75であった。また、ヘーズは32.78%、全光線透過率は87.58%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は12.45、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は76.03であった。
[実施例9]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学製;NKエステルA−DOD−N)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.28であった。また、ヘーズは48.33%、全光線透過率は86.23%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は18.51、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は46.49であった。
[実施例10]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製;OXT−212)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.26であった。また、ヘーズは62.31%、全光線透過率は82.73%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は22.5、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は69.24であった。
[実施例11]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業社製)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、17.91であった。また、ヘーズは59.97%、全光線透過率は83.73%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は25.42、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は64.58であった。
[実施例12]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製;YX8000)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.94であった。また、ヘーズは50.91%、全光線透過率は85.00%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は20.23、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は56.48であった。
[実施例13]
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルに変更し、1、10−デカンジオールジアクリレートの含有量を49.9重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を49.9重量%に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.42であった。また、ヘーズは57.68%、全光線透過率は85.29%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は23.94、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は61.14であった。
[比較例3]
セルロース不織布を含浸させる混合液にグリシジルメタクリレートを添加せず、1,10−デカンジオールジアクリレートを99.8重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.2重量%の混合液とした以外は実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.33であった。また、ヘーズは36.68%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は17.7、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は78.87であった。
実施例1〜13及び比較例1〜3の結果を表1にまとめて示す。
表1より、本発明の特定化合物を含む本発明の繊維樹脂複合材料は、加熱プロセスを経た場合でも着色が少ないことが分かる。
Figure 2014152290

Claims (8)

  1. セルロース繊維、樹脂、並びに、
    環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物
    を含有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料。
  2. 該環状エーテル構造を有する化合物は、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、請求項1に記載の繊維樹脂複合材料。
  3. 該セルロース繊維の不織布(以下「セルロース不織布」と称す。)を含有する、請求項1または2に記載の繊維樹脂複合材料。
  4. セルロース繊維、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、セルロース繊維分散体。
  5. さらに、樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有する、請求項3に記載のセルロース繊維分散体。
  6. 樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料形成用分散体。
  7. セルロース不織布と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、
    樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料形成用分散体に、セルロース不織布を含浸させるか、或いは、セルロース不織布に、該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布する工程を有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料の製造方法。
  8. セルロース繊維及び樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、
    セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有するセルロース繊維分散体を硬化させる工程を有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料の製造方法。
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