JP2014152290A - 繊維樹脂複合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース繊維、樹脂、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料。該環状エーテル構造を有する化合物は、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。繊維樹脂複合材料に、環状エーテル構造を有する化合物、或いは、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物を含有させることにより、加熱による着色を抑制することができる。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、この繊維樹脂複合材料の製造に好適に用いられるセルロース繊維分散体及び繊維樹脂複合材料形成用分散体に関する。
本発明はまた、
セルロース繊維、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とするセルロース繊維分散体、
樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする繊維樹脂複合材料形成用分散体、
セルロース不織布と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料形成用分散体に、セルロース不織布を含浸させるか、或いは、セルロース不織布に、該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布する工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合材料の製造方法、
並びに
セルロース繊維及び樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有するセルロース繊維分散体を硬化させる工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合材料の製造方法、
に存する。
本発明の繊維樹脂複合材料は、
(1) セルロース繊維、
(2) 樹脂、
並びに、
(3) 環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物
を含有することを特徴とする。
尚、本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、「メタクリロイル基」および/または「アクリロイル基」のことを指す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」についても同様である。
まず、本発明の特徴である、環状エーテル化合物及び(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物からなる群から選ばれる本発明の特定化合物について説明する。なお、本発明の特定化合物としては、環状エーテル化合物の1種又は2種以上を用いてもよく、(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の1種又は2種以上を用いてもよい。また、環状エーテル化合物の1種又は2種以上と(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物の1種又は2種以上を併用してもよい。
環状エーテル化合物とは、分子内に環状エーテル構造を有する化合物であり、該環状エーテル構造は、分子の主鎖や環に連結する基として存在してもよいし、主鎖や環の一部を構成するものであってもよい。
例えば市販されているオキセタン環を有する化合物としては、アロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OPXT−211、OXT−212、OXT−610、OXT−213(東亜合成株式会社製)、ETERNACOOL OXETANE EHO、OXBP、OXMA、OXTP(宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基及び水酸基をそれぞれ1以上有していればよい。(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、(メタ)アクリロイル基は1以上あればよいが、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。また、(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物は、水酸基は1以上あればよいが、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
(メタ)アクリロイル/水酸基含有化合物中の(メタ)アクリロイル基と水酸基の比は、1:5〜5:1であることが好ましく、具体的には、{(メタ)アクリロイル基の数}/(水酸基の数)で1/5以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、5以下が好ましく、2以下がより好ましい。
次に、本発明の繊維樹脂複合材料に含まれるセルロース繊維(以下、「本発明のセルロース繊維」と称す場合がある。)について説明する。
本発明のセルロース繊維は特段限定されるものではないが、数平均繊維径が2〜400nmのセルロース繊維であることが好ましい。
以下、本発明のセルロース繊維の製造方法について、具体的に説明する。尚、本発明のセルロース繊維の製造方法については、以下の方法に限定されるものではない。
本発明のセルロース繊維を製造するには、下記に示すようなセルロース含有物から一般的な精製工程を経て不純物を除去したものをセルロース繊維原料として用いることが好ましい。
セルロース含有物としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の木質(木粉等)、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維などの植物由来原料、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等の天然セルロースが挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。特に、植物由来原料から得られるセルロース繊維が好ましい。
セルロース繊維原料は上記セルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。
例えば、上記のセルロース含有物をベンゼン−エタノールや炭酸ナトリウム水溶液で脱脂した後、亜塩素酸塩で脱リグニン処理を行い(ワイズ法)、アルカリで脱ヘミセルロース処理をすることにより得られる。また、ワイズ法の他に、過酢酸を用いる方法(pa法)、過酢酸過硫酸混合物を用いる方法(pxa法)なども精製方法として利用される。また、適宜、更に漂白処理等を行ってもよい。
すなわち、セルロース繊維原料としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、リンターパルプなどを用いてもよい。
セルロース繊維原料の解繊処理は通常セルロース繊維原料の分散液(セルロース繊維原料分散液)中で行う。このセルロース繊維原料分散液は、セルロース繊維原料としての固形分濃度が0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に0.3重量%以上、また10重量%以下、特に6重量%以下のセルロース繊維原料分散液であることが好ましい。この解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供するセルロース繊維原料分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整することが好ましい。
また、上記の解繊処理は、セルロース繊維原料と後述の樹脂及び/又は樹脂前駆体とを含む分散液に対して行ってもよく、セルロース繊維原料と樹脂及び/又は樹脂前駆体と本発明の特定化合物とを含む分散液に対して行ってもよい。
本発明のセルロース繊維は、化学修飾によって誘導化されたもの(化学修飾されたセルロース繊維)や酸化処理によりカルボキシ基が導入されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾された(他の置換基が導入された)ものである。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えばアセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクリロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライド、ナフトイルハライド等が挙げられる。
イソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート等が挙げられる。
アルコキシシランとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン等が挙げられる。
オキシラン(エポキシ)等の環状エーテルとしては、例えばエチルオキシラン、エチルオキセタン等が挙げられる。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
ここで、滴定に要した0.2M塩酸水溶液の量Z(ml)、及びブランクサンプル(=乾燥セルロースなしのサンプル)の滴定に要した0.2N塩酸水溶液の量Z0(ml)から、下記式によって化学修飾により導入された置換基の量Q(mol)が求められる。
Q(mol)=(Z0−Z)×0.2/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは化学修飾により導入された置換基の分子量である。
本発明の繊維樹脂複合材料において、セルロース繊維は繊維樹脂複合材料中にセルロース不織布として含有されていてもよい。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aはセルロース不織布の面積(cm2)、tは厚み(cm)、Bはセルロース不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(PEACOK製のPDN−20)を用いて、セルロース不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
以下に本発明の繊維樹脂複合材料の製造方法について説明するが、本発明の繊維樹脂複合材料の製造方法は何ら以下の方法に限定されるものではない。
本発明の第一の繊維樹脂複合材料の製造方法は、上述のセルロース不織布を、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに本発明の特定化合物を含有する本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体に含浸させるか、或いは、セルロース不織布に該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布することにより、セルロース不織布と樹脂と本発明の特定化合物とを含む本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法である。
以下、樹脂及び/又は樹脂前駆体と本発明の特定化合物とを含有する本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体について説明する。
また、本発明における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
また、低吸水性の繊維樹脂複合材料を得るためには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基などの親水性の官能基が少ない材料を選定することが好ましい。
熱可塑性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
熱硬化性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
光硬化性樹脂及びその前駆体としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等、及びその前駆体が挙げられる。
繊維樹脂複合材料形成用分散体におけるその樹脂及び/または樹脂前駆体の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。樹脂及び/又は樹脂前駆体の含有量が上記下限を下回ると得られる複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがあり、上記上限を上回ると相対的に本発明の特定化合物の含有量が少なくなって加熱着色抑制の効果が得にくい等の恐れがある。
本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体は、通常、分散媒として、水及び/または有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種または2種以上が挙げられる。
前述のセルロース不織布を上記繊維樹脂複合材料形成用分散体に含浸させる、或いは前述のセルロース不織布に上記繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布して、本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法としては、以下の様な方法が挙げられる。
(a) セルロース不織布に、液状の熱可塑性樹脂前駆体を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体を含浸させて重合させる方法
(b) セルロース不織布に、熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体を含浸させて重合硬化させる方法
(c) セルロース不織布に、繊維樹脂複合材料形成用分散体の溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上と本発明の特定化合物を溶質として含む溶液)を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させ、必要に応じて重合硬化させる方法
(d) セルロース不織布に、熱可塑性樹脂を含む繊維樹脂複合材料形成用分散体の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) セルロース不織布の片面もしくは両面に、熱可塑性樹脂前駆体や熱硬化性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を含む液状の繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布して重合硬化させる方法
(f) セルロース不織布の片面もしくは両面に、繊維樹脂複合材料形成用分散体溶液(熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂前駆体、熱硬化性樹脂前駆体、および光硬化性樹脂前駆体から選ばれる1以上と本発明の特定化合物を溶質として含む溶液)を塗布して、溶媒を除去後、必要に応じて重合硬化させる方法
本発明の第二の繊維樹脂複合材料の製造方法は、セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維分散体を硬化させることにより、セルロース繊維と樹脂と本発明の特定化合物とを含む本発明の繊維樹脂複合材料を製造する方法である。
以下、セルロース繊維と本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維含有分散体について説明する。このようにセルロース繊維分散体は、セルロース繊維と本発明の特定化合物とを含有するものであるが、好ましくは樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有する。
例えば、セルロース繊維と本発明の特定化合物とを含有する本発明のセルロース繊維分散体を調製した後に、樹脂及び/又は樹脂前駆体とを混合して製造してもよいし、これらを一度に混合して製造してもよく、セルロース繊維と、本発明の特定化合物と、樹脂及び/又は樹脂前駆体の混合順序には特に制限はない。
また、セルロース繊維分散体も、繊維樹脂複合材料形成用分散体と同様、必要に応じて、適宜、重合開始剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等を含有してもよい。
また、前述のセルロース繊維原料分散液に、本発明の特定化合物を添加し、本発明の特定化合物を含んだまま、前述の解繊処理を行い、本発明の特定化合物を含有する微細セルロース繊維分散液を得、これをセルロース繊維と本発明の特定化合物を含有する本発明のセルロース繊維分散体としてもよい。
その他、前述のセルロース繊維原料分散液に、樹脂及び/又は樹脂前駆体を添加し、解繊処理を行ってもよいし、本発明の特定化合物と樹脂及び/又は樹脂前駆体の両方を添加して、解繊処理を行ってもよい。
セルロース繊維分散体中のセルロース繊維の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。セルロース繊維分散体中のセルロース繊維の含有量が上記下限を下回ると得られる繊維樹脂複合材料の線熱膨張係数が高くなったり、弾性率や強度が下がる恐れがあり、上記上限を上回るとセルロース繊維分散体の粘度が上がり、取扱いにくくなる恐れがある。
本発明のセルロース繊維分散体は、通常、分散媒として、水及び/または有機溶媒を含有する。分散媒としての有機溶媒としては、前述の本発明の繊維樹脂複合材料形成用分散体が分散媒として含有する有機溶媒として、例示したものが挙げられる。
いずれの繊維樹脂複合材料の製造方法においても、繊維樹脂複合材料を製造するために硬化処理を行う。
硬化処理としては、樹脂にあわせ、例えば、加熱処理および/または露光処理を施し、溶媒を除去する処理が行われる。樹脂前駆体を使用した場合は、該工程を経て該前駆体が硬化されて樹脂となる。
以上のようにして、セルロース繊維、樹脂、並びに、本発明の特定化合物を含有する本発明の繊維樹脂複合材料を得ることができる。前述の如く、セルロース繊維は繊維樹脂複合材料中に不織布として存在しても、分散した状態で存在してもよい。
本発明の繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は特に制限されないが、複合材料全量に対して、2.5重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、99重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。
繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が少な過ぎると線熱膨張係数低減の効果が不十分となり、更には、強度や弾性率も下がる傾向がある。繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量が多過ぎると、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、硬化したときの表面の平坦性が低下するおそれがある。
本発明の繊維樹脂複合材料中の樹脂の含有量は特に制限されないが、成形性の点から、1重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。繊維樹脂複合材料中の樹脂の含有量が多過ぎると相対的にセルロース繊維の含有量が少なくなって、線熱膨張係数低減等の効果が不十分となる傾向がある。繊維樹脂複合材料中の樹脂が少な過ぎると、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分でなくなり、繊維樹脂複合材料の強度や透明性、硬化したときの表面の平坦性が低下する恐れがある。
本発明の繊維樹脂複合材料の本発明の特定化合物の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。本発明の特定化合物の含有量が上記下限を下回ると加熱着色抑制の効果が得にくい等の恐れがあり、上記上限を上回ると繊維樹脂複合材料の硬化度が低く割れやすくなる恐れがある。
本発明の繊維樹脂複合材料の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
本発明の繊維樹脂複合材料は、セルロース繊維が樹脂中に均一に分散することによって、樹脂のTg(ガラス転移温度)を上昇させる効果を有すると考えられる。該効果によって、後述する用途に好適な高Tgを示す材料を得ることができる。特に、樹脂としてエポキシ樹脂を使用した場合は、その効果が顕著となる。なお、電気・電子材料用途においては、繊維樹脂複合材料のTgが3〜4℃上昇することは、大きなメリットとなる。
本発明の繊維樹脂複合材料は、本発明の特定化合物を含有することにより、セルロースの熱分解による着色を抑制することができる。
本発明の繊維樹脂複合材料を樹脂などの基板とともに積層体として使用してもよい。また、該基板上に本発明のセルロース繊維分散体を塗布し、前記のとおり、加熱処理および/または露光処理等を施すことにより、積層体を製造してもよい。また、該積層体は保護フィルムを有していてもよい。
<セルロース不織布の製造>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製)を、ディスクリファイナー(熊谷理化工業社製)を用いて叩解した。叩解したパルプを2重量%濃度に水で希釈し、高速回転式ホモジナイザー(エムテクニック社製:CLM11S)を用いて、回転数6500rpmにて、2時間解繊処理を行い、微細セルロース繊維分散液を得た。
得られた微細セルロース繊維分散液を0.2重量%濃度に水で希釈したものと、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(乾燥状態の微細セルロース繊維(g)に対して24倍量)をそれぞれA4サイズ抄紙装置(王子製紙社製)に投入して抄紙し、120℃に加熱したシリンダードライヤーで乾燥させ、厚み70μm、坪量35g/m2のA4サイズのセルロース不織布を得た。このセルロース不織布の空隙率は、計算により64体積%と算出された。
尚、解繊処理後のセルロース繊維の数平均繊維径は28nmであった。
上記のセルロース不織布を11枚重ねで丸めて筒状にして、20mLの無水酢酸を入れた容器中に、液と接触しないように設置して密閉した。この容器を145℃に加熱し、容器内の温度を140℃まで昇温させ、無水酢酸蒸気をセルロース不織布に60分間(処理時間)接触させ、反応を行った。反応後、140℃の熱風乾燥機で乾燥させ、残留ガスを除去することにより、アセチル化されたセルロース不織布を得た。このセルロース不織布の化学修飾率を、前述の化学修飾率の計測方法で求めたところ、11.7mol%であった。
製造例1で得られたセルロース不織布を、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製;NKエステルA−DCP)89.8重量%、グリシジルメタクリレート(共栄社化学社製;ライトエステルG)10.0重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製;ルシリンTPO)0.2重量%との混合液(繊維樹脂複合材料形成用分散体)に含浸させ、減圧下、1時間静置した。
なお、紫外線の照度は、紫外線照度計(オーク製作所製;UV−M02)でアタッチメントUV−35を用いて、23℃で320〜390nmの範囲を測定した。
また、この繊維樹脂複合材料を、そのまま220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後、上記と同様にして黄色度(YI値)を測定したところ、13.03であった。さらに、250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱し、同様にして黄色度(YI値)を測定したところ、32.6であった。
なお、この繊維樹脂複合材料中のセルロース繊維の含有量は、用いたセルロース不織布と繊維樹脂複合材料形成用分散体の固形分量から37重量%と求められた。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製;OXT−212)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.23であった。また、ヘーズは34.96%、全光線透過率は86.45%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は16.51、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は54.05であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.84であった。また、ヘーズは32.78%、全光線透過率は85.74%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は12.19、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は57.6であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製;YX8000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.16であった。また、ヘーズは32.29%、全光線透過率は87.91%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は18.04、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は45.39であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、7.94であった。また、ヘーズは31.55%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は13.13、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は43.41であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの含有量を79.8重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を20.0重量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.60であった。また、ヘーズは33.61%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は15.78、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は54.77であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの含有量を49.9重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を49.9重量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.52であった。また、ヘーズは39.92%、全光線透過率は86.12%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は20.64、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は57.11であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートをメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成社製;HEMA)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.61であった。また、ヘーズは30.75%、全光線透過率は87.71%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は11.08、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は48.98であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液にグリシジルメタクリレートを添加せず、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを99.8重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.2重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.33であった。また、ヘーズは30.89%、全光線透過率は88.00%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は10.59、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は69.37であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートをトリシクロデシルメタクリレート(日立化成社製;FA513M)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、6.75であった。また、ヘーズは32.78%、全光線透過率は87.58%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は12.45、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は76.03であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学製;NKエステルA−DOD−N)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、10.28であった。また、ヘーズは48.33%、全光線透過率は86.23%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は18.51、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は46.49であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製;OXT−212)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.26であった。また、ヘーズは62.31%、全光線透過率は82.73%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は22.5、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は69.24であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業社製)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、17.91であった。また、ヘーズは59.97%、全光線透過率は83.73%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は25.42、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は64.58であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製;YX8000)に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.94であった。また、ヘーズは50.91%、全光線透過率は85.00%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は20.23、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は56.48であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液に含まれる、グリシジルメタクリレートを4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルに変更し、1、10−デカンジオールジアクリレートの含有量を49.9重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの含有量を49.9重量%に変更した以外は、実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、12.42であった。また、ヘーズは57.68%、全光線透過率は85.29%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は23.94、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は61.14であった。
セルロース不織布を含浸させる混合液にグリシジルメタクリレートを添加せず、1,10−デカンジオールジアクリレートを99.8重量%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを0.2重量%の混合液とした以外は実施例9と同様にして、繊維樹脂複合材料を得た。
この繊維樹脂複合材料について、実施例1と同様にして、黄色度(YI値)を測定したところ、8.33であった。また、ヘーズは36.68%、全光線透過率は87.06%であった。
また、220℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は17.7、さらに250℃の窒素ガス雰囲気下で2時間加熱した後の黄色度(YI値)は78.87であった。
表1より、本発明の特定化合物を含む本発明の繊維樹脂複合材料は、加熱プロセスを経た場合でも着色が少ないことが分かる。
Claims (8)
- セルロース繊維、樹脂、並びに、
環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物
を含有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料。 - 該環状エーテル構造を有する化合物は、さらに、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、請求項1に記載の繊維樹脂複合材料。
- 該セルロース繊維の不織布(以下「セルロース不織布」と称す。)を含有する、請求項1または2に記載の繊維樹脂複合材料。
- セルロース繊維、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、セルロース繊維分散体。
- さらに、樹脂及び/又は樹脂前駆体を含有する、請求項3に記載のセルロース繊維分散体。
- 樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料形成用分散体。
- セルロース不織布と樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、
樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有する繊維樹脂複合材料形成用分散体に、セルロース不織布を含浸させるか、或いは、セルロース不織布に、該繊維樹脂複合材料形成用分散体を塗布する工程を有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料の製造方法。 - セルロース繊維及び樹脂を含む繊維樹脂複合材料の製造方法であって、
セルロース繊維、樹脂及び/又は樹脂前駆体、並びに、環状エーテル構造を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とからなる群から選ばれる化合物を含有するセルロース繊維分散体を硬化させる工程を有することを特徴とする、繊維樹脂複合材料の製造方法。
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