JP2014151657A - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フロントウインド部材21を下方から支持し、該部材21が接合されると共に、車両前方に膨出する膨出部22Aと、膨出部から下方に延びる縦壁部22Bと、縦壁部の下端から車両前方に延びる下面部22Cとを有するカウルパネル22を備え、膨出部22Aと、カウルパネル22の後方かつ下方に配設された車体部材13と、をつなぐ少なくとも1つの補強体30を備え、補強体30が2以上の補強部31,32と、補強部間の重合部33とを備え、補強部31,32は、重合部33の少なくとも一部において振動減衰部材34を介して結合されたことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
上述のオープンカウル構造を採用した場合、ダッシュロアパネル上側のダッシュアッパパネルと、カウルパネルとで形成される開口部が揺動変形し、カウルパネルに接着等の手段にて接合されたフロントウインド部材(フロントウインドガラス)のパネル振動が増大し、こもり音(20〜300HZ帯域のフィーリングとしては耳を圧迫するような音)となって車室内の乗員に不快感を与えるので、乗心地に悪影響を与える問題点があった。
乗心地性能を向上させるためには、剛性を向上したり、板厚を大きくすること、または、補強部材を設けることが考えられるが、この場合には、乗心地性能は向上するが、重量が大となる難点があった。
そこで、従来より重量増加を招くことなく、乗心地性能の向上を図ることが要請されている。
この特許文献1によれば、補強部材(支持ブラケット)でカウルパネルの剛性を高めることにより、ある程度振動を低減することは可能であるが、支持ブラケットを設ける分、重量が大となるうえ、この特許文献1に開示された従来構造では、性能が未だ充分ではなかった。
しかも、補強体の板厚を増加することなく、2以上の補強部と、補強部間の重合部とを備え、該重合部の少なくとも一部に振動減衰部材を介設したので、この振動減衰部材により、効果的にフロントウインド部材のパネル振動を低減することができる。
また、カウルパネルとしては膨出部と縦壁部と下面部とを有する所謂S字カウルを用いるので、膨出部により、カウルパネルの後方スペースを広く確保することで、インテリアデザインの自由度を向上させつつ、膨出部の前方張り出し構造により、フロントウインド部材の支持剛性の確保ができ、衝突荷重の入力時には、その第1段階(変形初期)で膨出部が変形してエネルギを吸収し、その後の第2段階(変形後期)で縦壁部が後方かつ下方に倒れてエネルギを吸収し、これにより、歩行者保護性能を確保することができる。
図面は車両の前部車体構造を示し、図1は当該前部車体構造、車室内部から前方を見た状態で示す斜視図、図2は図1のA−A線矢視断面図である。
図1,図2において、左右のヒンジピラー1,1(但し、図面では車両右側のヒンジピラーのみを示す)間にはダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル2を接合固定し、このダッシュロアパネル2でエンジンルーム3とその後方の車室4とを前後方向に仕切っている。
また、上述のヒンジピラー1の上部には、前部が低く、後部が高くなるようにフロントピラー5を接合固定している。
さらに、上述のダッシュロアパネル2の下部後端部には、フロアパネル6を接合固定している。このフロアパネル6は後方に向けて略水平に延び、車室4の底面を構成するパネルであって、このフロアパネル6の車幅方向中央部には、車室4内に突出し、かつ車両の前後方向に延びるトンネル部7が一体または一体的に形成されている。
上述のトンネル部7の上部には、フロア剛性および車体剛性の向上を図る強度部材としてのトンネルメンバ8を取付けている。
さらに、左右のヒンジピラー1,1間には、その両端にブラケット12,12を介して車幅方向に延びるインパネメンバ13を横架している。このインパネメンバ13はその助手席側の外径に対して運転席側の外径が大となるように形成されており、このインパネメンバ13の運転席側には複数のブラケットを介してステアリングシャフト14を支持させており、該ステアリングシャフト14にはステアリングホイール15を取付けている。
図1において、16はダッシュロアパネル2の直後部において車幅方向中央に配設された空調ユニットであり、17はダッシュロアパネル2の直後部において助手席に配設されたブロアユニットである。
また、図1,図2に示すように、上述のダッシュロアパネル2の上部車室側には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ18を接合固定し、ダッシュロアパネル2とダッシュクロスメンバ18との間には、車幅方向に延びるダッシュクロス閉断面19を形成して、ダッシュパネル剛性の向上を図るように構成している。
このカウルパネル22は、フロントウインド部材21の傾斜下部における車幅方向の長さと略同等の車幅方向長さを有するもので、該カウルパネル22は、ウインドラバー20を介してフロントウインド部材21が接合されると共に、車両前方に円弧状に膨出する側面視略C字形状の膨出部22Aと、この膨出部22Aの下部に該膨出部22Aの下部のコーナアール部22Rを介して、該コーナアール部22Rから下方に延びる縦壁部22Bと、この縦壁部22Bの下端から車両前方に延びる下面部22Cとを有して、全体として側面視略S字形状に構成されている。
上述の膨出部22A、縦壁部22B、下面部22Cを有する所謂S字カウルを、カウルパネル22として採用することで、膨出部22Aにより、カウルパネル22の後方スペースを広く確保することができ、これによりインテリアデザインの自由度を向上させつつ、膨出部22Aの前方張り出し構造により、フロントウインド部材21の支持剛性の確保が図れ、衝突荷重の入力時には、その第1段階(変形初期)で膨出部22Aが変形してエネルギを吸収し、その後の第2段階(変形後期)で縦壁部22Bが後方かつ下方に倒れてエネルギを吸収し、これにより、歩行者保護性能を確保すべく構成している。
そして、上述のカウルパネル22と、カウルフロントパネル23と、カウルクロスメンバ25とにより、車幅方向に延びる所謂オープンカウル構造のカウルボックス26を形成している。
ここで、上述のダッシュロアパネル2の上端折曲片2aは、カウルパネル22の下面部22Cの下面に接合固定されている。
図1,図2に示すように、上述のカウルパネル22の膨出部22Aと、カウルパネル22の後方かつ下方に配設された車体部材としてのインパネメンバ13と、をつなぐ車幅方向において少なくとも1つの補強体30,30を設けている。
詳しくは、図2に示すように、補強体30は、カウルパネル22の膨出部22Aに結合されてインパネメンバ13方向に斜め後方下方に延びる第1補強部31と、インパネメンバ13の上面部に結合されて上述の膨出部22A方向に斜め前方上方に延びる第2補強部32と、を備え、第1補強部31の後部と第2補強部32の前部とを略上下方向にオーバラップさせて重合部33を形成し、第1補強部31と第2補強部32とが重合部33の少なくとも一部(この実施例では重合部33の全部)において振動減衰部材34を介して結合されたものである。
さらに、上述の2以上の補強部のうち車両最前部に位置する補強部つまり第1補強部31は、フロントウインド部材21の接合部の下方に結合されている。すなわち、上述の第1補強部31の前端部は、ウインドラバー20の充填部位と対応すべくカウルパネル22の膨出部22A下面に結合されたものであり、これにより、フロントウインド部材21の支持剛性をさらに高め、かつ振動減衰部材34で効果的にフロントウインド部材21のパネル振動を低減すべく構成している。
ここで、上述の振動減衰部材34としては、温度が20℃で、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が500MPa以下で、かつ、損失係数が0.2以上の粘弾性部材を用いる。
しかも、補強体30の板厚を増加することなく、2以上の補強部31,32と、補強部31,32間の重合部33とを備え、該重合部33の少なくとも一部に振動減衰部材34を介設したので、この振動減衰部材34により、効果的にフロントウインド部材21のパネル振動を低減することができる。
また、カウルパネル22としては膨出部22Aと縦壁部22Bと下面部22Cとを有する所謂S字カウルを用いるので、膨出部22Aにより、カウルパネル22の後方スペースを広く確保することで、インテリアデザインの自由度を向上させつつ、膨出部22Aの前方張り出し構造により、フロントウインド部材21の支持剛性の確保ができ、衝突荷重の入力時には、その第1段階(変形初期)で膨出部22Aが変形してエネルギを吸収し、その後の第2段階(変形後期)で縦壁部22Bが後方かつ下方に倒れてエネルギを吸収し、これにより、歩行者保護性能を確保することができる。
また、上記補強体30は、上記膨出部22Aに結合されて上記車体部材(インパネメンバ13)方向に延びる第1補強部31と、上記車体部材(インパネメンバ13)に結合されて上記膨出部22A方向に延びる第2補強部32と、を備え、上記第1補強部31と上記第2補強部32とは重合部33を有し、上記第1補強部31と上記第2補強部32とが上記重合部33の少なくとも一部において振動減衰部材34を介して結合されたものである(図2参照)。
さらに、上記補強体30は、少なくともカウルパネル22の車幅方向の左右両端部と中央部との間の部位に配設されたものである(図1参照)。
さらにまた、上記2以上の補強部31,32のうち車両最前部に位置する補強部(第1補強部31参照)が、フロントウインド部材21の接合部の下方に結合されたものである(図2参照)。
加えて、上記車体部材は、車幅方向に延びるように設置され、ステアリングシャフト14を支持するインパネメンバ13であることを特徴とする。
このステアリング振動低減効果を評価するために、図1,図2で示した実施例の構造と、図1,図2の構造から補強体30,30を取外した比較例の構造とを用意し、フロントサイドフレームの先端に上下方向の加振力を加え、この加振時のステアリングホイール15が車幅方向左右に振れるモード(ステアリングホイール左右応答)を評価した結果、比較例のものに対して実施例1の構造では、インパネメンバ13の前後動が抑制されるので、充分なステアリング振動の低減が認められた。
図2で示した実施例においては、補強体30が2つの補強部31,32と、補強部31,32間の1つの重合部33とを備えていたが、図3に示す実施例2においては、補強体40が3つの補強体41,42,43と、補強部41,42間、42,43間の2つの重合部44,45とを備え、各補強部41,42および各補強部42,43は、上述の重合部44,45において振動減衰部材46,46を介して結合されたものである。
上述の振動減衰部材46も実施例1のものと同様に、温度が20℃で、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が500MPa以下で、かつ、損失係数が0.2以上の粘弾性部材を用いる。
先の実施例1,2においては補強体30,40を構成する補強部31,41を、カウルパネル22と別部材にて構成したが、図4に示すこの実施例3においては、補強体30を構成する第1補強部31Aを、カウルパネル22と一体形成したものである。
すなわち、図4に示すように、補強部31A,32のうち車両最前部の補強部である第1補強部31Aは、カウルパネル22の膨出部22Aの後端部の少なくとも一部をインパネメンバ13方向へ屈曲して該膨出部22Aと一体形成したものである。
この場合、板取りを考慮して、第1補強部31Aの前後長を、第2補強部32の前後長に対して充分短く設定し、カウルパネル22の材料歩留りが悪化しないように構成している。
また、上記補強体30は、上記膨出部22Aの後端部の少なくとも一部を上記車体部材(インパネメンバ13参照)方向へ屈曲して形成された第1補強部31Aと、上記車体部材(インパネメンバ13参照)に結合されて上記膨出部22A方向に延びる第2補強部32と、を備え、上記第1補強部31Aと上記第2補強部32とは重合部33を有し、上記第1補強部31Aと上記第2補強部32とが上記重合部33の少なくとも一部において振動減衰部材34を介して結合されたものである。
前述の各実施例1〜3においては補強体30,40を、カウルパネル22の車幅方向の左右両端部と中央部との間の部位に合計2つ配設したが、図5に示すこの実施例では上述の補強体30を、カウルパネル22の車幅方向の略中央部に合計1つ配設している。つまり、カウルパネル22の車幅方向の略中央部は、図7に示すフロントウインド部材21の1次振動モードの振幅レベルが大きくなる所謂振動の腹Zの近傍に相当するものである。この1次振動モードにおいては、フロントウインド部材21の下部中央が大きく振動する。また、図7においては振動レベルの差異を、図示の便宜上、ハッチング密度の大小(疎密)にして示している。
さらに、この実施例4においても、振動減衰部材34としては、温度が20℃で、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が500MPa以下で、かつ、損失係数が0.2以上の粘弾性部材を用いている。
この構成によれば、カウルパネル22の車幅方向の略中央部は、1次振動モードの振幅レベルが大きくなる所謂振動の腹Z(図7参照)の近傍に相当するので、振動減衰部材34により効果的にフロントウインド部材21のパネル振動を低減することができる。
[解析評価]
図6は、比較例品のものと、図5で示した実施例4のものと、図1,図2で示した実施例1のものと、に対してフロントウインド部材21の振動レベルの低減効果を解析評価した特性図である。
比較例品のものは、実施例1,4の車体構造から補強体30を全て取外したもので、実施例4のものは、図5で示したように補強体30が車幅方向の略中央に位置するもので、実施例1のものは、図1,図2で示したように補強体30が車幅方向の左右両端部と中央部との間の部位に合計2つ配設されたものである。
上述の1次振動モードはフロントウインド部材21の振動の主要因(NVHの主要因)となり、2次振動モードはフロントウインド部材の振動の副要因となる。
図6から明らかなように、比較例のものは1次振動モードおよび2次振動モードの何れにおいても振動レベルが大きく効果がないことが判明した。
この発明のカウルパネルの後方かつ下方に配設された車体部材は、実施例のインパネメンバ13に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、振動減衰部材にはそのせん断方向に力が加わると、振動減衰効果が高くなるので、フロントウインド部材21に対して補強体の全体が可及的垂直な方向に配設されることが好ましい。このため第2補強部32の後部をインパネメンバ13の下面部に結合して、フロントウインド部材21と補強体との成す角度を可及的直角に近づける構造を採用してもよい。
14…ステアリングシャフト
21…フロントウインド部材
22…カウルパネル
22A…膨出部
22B…縦壁部
22C…下面部
30…補強体
31,31A…第1補強部(補強部)
32…第2補強部(補強部)
33…重合部
34…振動減衰部材
40…補強体
41〜43…補強部
44,45…重合部
46…振動減衰部材
Claims (8)
- フロントウインド部材を下方から支持し、該フロントウインド部材が接合されると共に、車両前方に膨出する膨出部と、該膨出部から下方に延びる縦壁部と、該縦壁部の下端から車両前方に延びる下面部とを有するカウルパネルを備えた車両の前部車体構造であって、
上記膨出部と、上記カウルパネルの後方かつ下方に配設された車体部材と、をつなぐ少なくとも1つの補強体を備え、
上記補強体が2以上の補強部と、補強部間の重合部とを備え、
上記補強部は、上記重合部の少なくとも一部において振動減衰部材を介して結合された
車両の前部車体構造。 - 上記補強体は、上記膨出部に結合されて上記車体部材方向に延びる第1補強部と、
上記車体部材に結合されて上記膨出部方向に延びる第2補強部と、を備え、
上記第1補強部と上記第2補強部とは重合部を有し、
上記第1補強部と上記第2補強部とが上記重合部の少なくとも一部において振動減衰部材を介して結合された
請求項1記載の車両の前部車体構造。 - フロントウインド部材を下方から支持し、該フロントウインド部材が接合されると共に、車両前方に膨出する膨出部と、該膨出部から下方に延びる縦壁部と、該縦壁部の下端から車両前方に延びる下面部とを有するカウルパネルを備えた車両の前部車体構造であって、
上記膨出部と、上記カウルパネルの後方かつ下方に配設された車体部材と、をつなぐ少なくとも1つの補強体を備え、
上記補強体が2以上の補強部と、補強部間の重合部とを備え、
上記補強部は、上記重合部の少なくとも一部において振動減衰部材を介して、結合され、
上記補強部のうち車両最前部の補強部は、上記膨出部の後端部の少なくとも一部を車体部材方向へ屈曲して形成された
車両の前部車体構造。 - 上記補強体は、上記膨出部の後端部の少なくとも一部を上記車体部材方向へ屈曲して形成された第1補強部と、
上記車体部材に結合されて上記膨出部方向に延びる第2補強部と、を備え、
上記第1補強部と上記第2補強部とは重合部を有し、
上記第1補強部と上記第2補強部とが上記重合部の少なくとも一部において振動減衰部材を介して結合された
請求項3記載の車両の前部車体構造。 - 上記補強体は、少なくともカウルパネルの車幅方向の左右両端部と中央部との間の部位に配設された
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の前部車体構造。 - 上記補強体は、少なくともカウルパネルの車幅方向の略中央部に配設された
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の前部車体構造。 - 上記2以上の補強部のうち車両最前部に位置する補強部が、フロントウインド部材の接合部の下方に結合された
請求項1,2,5,6の何れか1項に記載の車両の前部車体構造。 - 上記車体部材は、車幅方向に延びるように設置され、ステアリングシャフトを支持するインパネメンバである
請求項1〜7の何れか1項に記載の車両の前部車体構造。
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