JP2004268825A - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュパネル3の下端から後方に連続してフロアパネル4が設けられ、上記フロアパネル4に沿って前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム7を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロアフレーム7が前方のエンジンルーム1下方に延長されて一対のフロントアンダフレーム10を形成すると共に、上記ダッシュパネル3から前方にはフロントアンダフレーム10の上方に所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレーム16が配設されたことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダッシュパネルの下端から後方に連続して設けられたフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレームとを備えたような車両の前部車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の前部車体構造としては例えば次のような構造がある。
すなわち、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュロアパネルの下端から後方に連続してフロアパネルが設けられ、このフロアパネルに沿って車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレームを備えたものにおいて、上述のフロアフレームの前端にはキックアップ部を介して左右一対のフロントサイドフレームを設け、これら左右のフロントサイドフレームの後部下面にフロントサスペンションを支持するところのサブフレーム(サスペンションクロスメンバと同意)を取付けたものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−179181号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来構造においては次のような問題点があった。
つまり、フロアパネルは乗員の車両に対する乗降性の関係上、可及的低い位置に存在することが望ましく、一方、上述のフロントサイドフレームは車両衝突時の荷重を吸収するために所定の高さ位置に存在する必要があり、このため上述のキックアップ部の上下段差(キックアップの上下オフセット量)が大きくなる。
【0005】
このようにキックアップ部の上下段差が大きいと、衝突荷重の入力時に該キックアップ部が略Z字状に折れるので、これを防止するためにキックアップ部の補強構造が必要となり、この補強構造により重量が大となる問題点があった。
【0006】
また上述の従来構造においては右側一本、左側一本のフロントサイドフレームで衝突荷重を受ける構造であるから、フロントサイドフレームに充分な強度を確保する必要があり、このためフロントサイドフレームそれ自体の重量が大となる問題点があった。
【0007】
さらに片側一本のフロントサイドフレームで衝突荷重を受けているので、衝突耐力を確保するために、このフロントサイドフレームの車両前後方向の長さを短くすることが困難で、この結果、フロントオーバハングの短縮が困難となり、車両デザインの自由度が低下する問題点があった。
【0008】
そこで、この発明は、フロアフレームが前方のエンジンルーム下方に延長されて一対のフロントアンダフレームを形成すると共に、ダッシュパネルから前方にはフロントアンダフレームの上方所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレームを配設することで、上側のフロントアッパフレームと、下側のフロントアンダフレームとの片側2本のフレームで衝突荷重を受けて、この衝突荷重を車体後方に効率的に伝達することができ、フロントフレームの耐力向上を図りつつ、その断面を小型化にすることができ、衝突性能と軽量化との両立を図ることができるうえ、フロントオーバハングの短縮を図ることができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両の前部車体構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルの下端から後方に連続してフロアパネルが設けられ、上記フロアパネルに沿って前後方向に延びる左右一対のフロアフレームを備えた車両の前部車体構造であって、上記フロアフレームが前方のエンジンルーム下方に延長されて一対のフロントアンダフレームを形成すると共に、上記ダッシュパネルから前方にはフロントアンダフレームの上方に所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレームが配設されたものである。
【0010】
上記構成のフロアフレームのエンジンルーム下方への延長構造は、部品点数を考慮してフロアフレームを一体に前方へ延長してもよく、加工性を考慮してフロアフレームを別部材を一体的に前方へ延長してもよい。
【0011】
上記構成によれば、上側に位置するフロントアッパフレームと、下側に位置するフロントアンダフレームとの片側2本のフロントフレームで衝突荷重を受けて、この衝突荷重を車体後方に効率的に伝達することにより、フロントフレームの耐力向上を図りつつ、その断面を小型化にすることができて、衝突性能と軽量化との両立を図ることができる。
【0012】
つまり、片側一本の断面が大きいフロントサイドフレームを用いる従来構造と比較して、上側のフロントアッパフレームと、下側のフロントアンダフレームとの片側2本のフロントフレームを用いるので、総合的に衝突耐力の向上を図ることができると共に、一本のフロントサイドフレームの重量に対して、フロントアッパフレームとフロントアンダフレームとの重量の総和を小さくすることができる。
また衝突耐力が向上するので、フロントオーバハングの短縮を図ることができ、車両デザインの自由度が向上する。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記フロントアッパフレームの後部はダッシュパネルに沿って下方に延設され、その後端部が上記フロントアンダフレームの後部に接続されたものである。
上記構成によれば、フロントアッパフレームへの衝突荷重も上述のフロントアンダフレームおよびフロアフレームに伝達して逃がすことができるので、衝突耐力の向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記左右一対のフロントアンダフレームの前端部は車幅方向に延びるフロントクロスメンバで連結されたものである。
上記構成によれば、フロントクロスメンバで左右のフロントアンダフレームの前端部相互間を連結したので、オフセット衝突時の荷重を適切に吸収することができ、このオフセット衝突時のダッシュ後退量の低減と、フルラップ衝突時の傷害値の低減とを両立させることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記左右一対のフロントアンダフレームのダッシュパネル下部近傍がリヤクロスメンバで結合され、平面視で略井型状のフレームが形成されたものである。
【0016】
上記構成によれば、フロントアンダフレームをフロントクロスメンバとリヤクロスメンバとで結合して、略井型状のフレーム(いわゆるペリメータフレーム)を構成したので、オフセット衝突に対する耐力の向上と、フロントサスペンションの支持剛性の向上との両立を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記フロントアッパフレームとフロントアンダフレームとの双方にパワートレインがマウントされたものである。
上記構成によれば、パワートレインを構成するエンジンの振動を効率的に車体に吸収することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記パワートレインはペンディラム式のエンジンマウントで支持されたものである。
上記構成によれば、エンジン振動のフロントフレーム(フロントアッパフレームおよびフロントアンダフレーム)への伝達が小さくなるので、エンジン振動をより一層効率的に車体に吸収することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記フロントアッパフレームとフロントアンダフレームの先端にエネルギ吸収部材が配設されたものである。
上記構成のエネルギ吸収部材は、いわゆるクラッシュカンにより構成してもよい。
【0020】
上記構成によれば、エネルギ吸収部材にて衝撃吸収を行なうことができるのは勿論、エネルギ吸収部材の大きさの変更により車両デザインに対応した調整を行なうことができ、いわゆる派生車のアレンジが容易となる。
【0021】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、図1、図2、図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後に仕切るダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の下端から後方に連続して略水平に延びるフロアパネル4を設けている。
【0022】
上述のフロアパネル4の車幅方向中央部には車両の前後方向に延びるトンネル部5が形成されると共に、フロアパネル4の左右両側にはサイドシルインナとサイドシルアウタとから成り、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面をもったサイドシル6,6が設けられている。
【0023】
また上述のフロアパネル4の下部において該フロアパネル4に沿って車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム7,7を設けている。
図面では概略的に示したが上述のフロアフレーム7は逆ハット状の断面形状を有し、フロアパネル4下面との間に車両の前後方向に延びる閉断面を形成するものである。
【0024】
上述のフロアフレーム7,7の前方は、エンジンルーム1の下方においてパワートレイン8(エンジンとトランスミッション参照)と前輪とを接続するドライブシャフト9よりもさらに前方まで一体的に延長されて、左右一対の閉断面構造のフロントアンダフレーム10,10を形成している。
【0025】
これら左右一対のフロントアンダフレーム10,10の前端部相互間は車幅方向に延びるフロントクロスメンバ11で連結されると共に、左右一対のフロントアンダフレーム10,10のダッシュロアパネル3の下部近傍が車幅方向に延びるリヤクロスメンバ12で結合されて、図2、図3に示すように平面視で略井型状のペリメータフレーム13が形成されている。ここで、上述の前後の各クロスメンバ11,12は断面方形枠状に形成され、剛性確保と軽量化との両立を図る閉断面部材にて構成されている。
【0026】
このペリメータフレーム13は前輪を懸架するところのフロントサスペンションを支持するサスペンションクロスメンバ(いわゆるサブフレーム)を兼ねるものである。図2ではフロントサスペンションの一部を構成するロアアーム14を仮想線で示している。
また上述の左右一対のフロントアンダフレーム10,10の先端にはクラッシュカン等から成るエネルギ吸収部材15,15を配設している。
【0027】
一方、ダッシュロアパネル3の上下方向中間部前面には該ダッシュロアパネル3からエンジンルーム1内に向けて前方に延びる左右一対のフロントアッパフレーム16,16を配設している。
【0028】
このフロントアッパフレーム16はフロントアンダフレーム10の上方に所定間隔を隔てて平行に延びる閉断面構造のフレームで、左右一対のフロントアッパフレーム16,16間の車幅方向の離間距離は、左右一対のフロントアンダフレーム10,10間の車幅方向の離間距離よりも大きく設定されている。
【0029】
このフロントアッパフレーム16の後部にはキックアップ部16Kが一体または一体的に形成されており、このキックアップ部16Kはダッシュロアパネル3に沿って下方かつ車幅方向内方に延設され、その後端部はフロントアンダフレーム10の後部に接続されている。
【0030】
また上述の左右一対のフロントアッパフレーム16,16の先端にはクラッシュカン等から成るエネルギ吸収部材17,17を配設している。
この実施例では上述のフロントアンダフレーム10およびフロントアッパフレーム16はパワートレイン8の前方部まで延長されると共に、下側に位置するペリメータフレーム13の前端部左右両部は上下方向に延びるメンバ18,18を介して上側に位置する左右一対のフロントアッパフレーム16,16の先端部下面に接続されている。
【0031】
さらに上述のフロントアッパフレーム16におけるキックアップ部16Kの上端部相互間は車幅方向に延びるレインフォースメント19によって接続されており、このレインフォースメント19とダッシュロアパネル3との間には車幅方向に延びる閉断面20が形成されている。
【0032】
また図2に示すように左右一対のサイドシル6,6の前端部と、フロントアンダフレーム10の後端側およびフロアフレーム7の前端側との間を、トルクボックス21,21で接続して、車体のねじれを防止すべく構成している。
【0033】
図4は図2のA−A線矢視断面図、図5は図2のB−B線矢視断面、図6は図2のC−C線矢視断面であって、図3〜図6に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端からエンジンルーム1の上側部には左右一対で車両の前方に延びるフロントエプロンレイン22,22を設けている。但し、図面では図示の便宜上、車両右側のフロントエプロンレイン22を示す。
【0034】
このフロントエプロンレイン22はフロントエプロンレインアウタ23と、フロントエプロンレインインナ24とを接合して車両の前後方向に延びる閉断面25を有するものである。
上述のフロントエプロンレインインナ24の上側折曲げ部には、フロントフェンダ26の接合フランジ部26aが接合されている。
【0035】
また図3に示すようにエンジンルーム1の両側で、かつフロントエプロンレインインナ24のエンジンルーム1側の面には、前輪のサスペンションを支持する高剛性のサスタワー27(サスペンションタワー部)を設けている。
【0036】
このサスタワー27の下部には図2に示すようにホイールハウス28が一体的に接合されており、図4〜図6に示すように、このホイールハウス28の上端部28aはフロントエプロンレインインナ24に接合されると共に、ホイールハウス28の下端部28bは、フロントアッパアウタフレーム16aとフロントアッパインナフレーム16bとを接合して、車両の前後方向に延びる閉断面16cをもった前述のフロントアッパフレーム16における上側の接合フランジ部の外面に連結されている。
しかも、上述のサスタワー27の前後両部には図3〜図6に示すようにサスタワー前部ボックス29とサスタワー後部ボックス30とを設けている。
【0037】
上述のサスタワー前部ボックス29は、図1〜図5に示すように、前部壁29aと、上部壁29bと、車外側の折曲げ片29cと、リヤ側の折曲げ片29dとを一体または一体的に形成したもので、前部壁29aの下部をフロントアッパフレーム16のフロントアッパインナフレーム16b上部に接合し、折曲げ片29cをフロントエプロンレインインナ24の中間部に接合し、折曲げ片29dをサスタワー27に接合している。
【0038】
上述のサスタワー後部ボックス30は図1、図3、図6に示すように、上部壁30aと、内部壁30bと、前部壁30cと、車外側の折曲げ片30dと、フロント側の折曲げ片30eと、リヤ側の折曲げ片30fと、下部折曲げ片30gとを一体または一体的に形成したもので、図1に示すようにフロント側の折曲げ片30eをサスタワー27に接合し、リヤ側の折曲げ片30fをダッシュロアパネル3に接合すると共に、図6に示すように車外側の折曲げ片30dをフロントエプロンレインインナ24の中間部に接合し、下部折曲げ片30gをフロントアッパフレーム16のフロントアッパフレーム16上部に接合している。
【0039】
つまり、サスタワー27の前部および後部にはフロントエプロンレイン22およびフロントアッパフレーム16の双方に接続されたサスタワー前部ボックス29およびサスタワー後部ボックス30を設けると共に、サスタワー後部ボックス30を後方に延長してダッシュロアパネル3に接続したものである。なお、図4、図5、図6で示した構造については車両の左側においても略対称に構成されている。
【0040】
さらに、図3に示すように、上述のフロントエプロンレイン22の後端は、フロントガラスの側辺部を支持して後方に延びるフロントピラー31の前端部と接続されている。
【0041】
ところで、図3に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端部にはダッシュアッパパネル32を接合する一方、ダッシュロアパネル3およびダッシュアッパパネル32の左右両端部には、ヒンジピラーのヒンジピラーインナパネル33を接合している。
【0042】
このヒンジピラーインナパネル33は図示しないヒンジピラーアウタパネルと接合されて、上下方向に延びる閉断面をもったヒンジピラーを構成すると共に、このヒンジピラーでフロントドアを開閉可能に支持するものである。
【0043】
図2に示すように上述のパワートレイン8はフロントアッパフレーム16とフロントアンダフレーム10との双方にマウントされている。
図2、図3、図5に示すようにフロントアッパフレーム16に連結されたホイールハウス28の略水平部分にはボルト34、ナット35等の複数組の締結部材を用いてマウントブラケット36を固定し、このマウントブラケット36にエンジンマウント37を取付けている。
【0044】
図3、図5では一方のエンジンマウント37のみを示したが、このエンジンマウント37は図2に示すように各フロントアッパフレーム16,16の上方に左右一対設けられている。
【0045】
また図2、図3に示すように左右一対のフロントアンダフレーム10,10間を連結するリヤクロスメンバ12の車幅方向中間部には、内部にダンパ機構(図示せず)を備えたエンジンマウント用のロッド38を設け、これら各要素37,37,38からなるペンディラム(pendulum)式のエンジンマウントにより、パワートレイン8を3点支持している。
【0046】
このペンディラム式のエンジンマウントはパワートレイン8それ自体の振りを許容するもので、エンジン振動が可及的車体に伝達しにくい方式のエンジンマウントである。
【0047】
なお、図1において、39はドア開口部、40はボンネット、41はバンパレインフォースメント,42はフロントクロスメンバであり、また矢印INは車体内方を示し、矢印OUTは車体外方を示すものである。
【0048】
このように構成した車両の前部車体構造の作用を以下に説明する。
前面衝突のうち、車体前面の全体で衝撃を受けるフルラップ衝突時には、衝突荷重はサスタワー前部ボックス29、サスタワー27、サスタワー後部ボックス30、フロントエプロンレイン22を介してフロントピラー31に伝達されると共に、フロントアッパフレーム16、キックアップ部16Kを介してフロアフレーム7に伝達され、またフロントアンダフレーム10の後端部からフロアフレーム7の前端部に伝達される。
【0049】
つまり、各要素29,27,30,22を介してフロントピラー31に荷重伝達される1つの経路と、各要素16,16Kを介してフロアフレーム7に荷重伝達される他の1つの経路と、各要素10,10を介してフロアフレーム7に荷重伝達されるさらに他の1つの経路との合計3つの経路を介して入力荷重を逃がすことができる。
【0050】
図7はフルラップ衝突時におけるエネルギ吸収特性を示し、横軸にクラッシュストロークをとり、縦軸に減速Gをとって、フロントアンダフレーム10を含むペリメータフレーム13の特性aと、フロントアッパフレーム16の特性bと、これら両特性a,bの総合特性cと、従来の片側一本の断面が大きいフロントサイドフレームで荷重を受ける従来特性dとを示すものである。
【0051】
衝突耐力は特性c,dの曲線以下の面積で表わすことができ、この実施例の総合特性cと、従来特性dとの対比から明かなように、この実施例ではフロントアッパフレーム16とフロントアンダフレーム10とで荷重を分担しているので総合的な衝突耐力の向上を図ることができ、この分、フロントアッパフレーム16およびフロントアンダフレーム10の断面を小さくして、これら両者16,10の軽量化を図ることができると共に、衝突耐力の向上により、両フレーム16,10、特にフロントアッパフレーム16の前後方向の長さを、図2に仮想線βで示す従来の片側一本の断面が大きいフロントサイドフレームに対して短縮することができ、これにより、フロントオーバハングの短縮化を図ることができる。またキックアップ部16Kの補強構造も不要となる。
【0052】
前面衝突のうち、車体前面の片側で衝撃を受けるオフセット衝突時には、左右一対のフロントアンダフレーム10,10間を車幅方向に延びる前後のクロスメンバ11,12で接続しているので、ペリメータフレーム13によりオフセット衝突時の荷重を吸収することができる。
【0053】
図8はオフセット衝突時におけるエネルギ吸収特性を示し、横軸にクラッシュストロークをとり、縦軸に減速Gをとって、ペリメータフレーム13を備えたこの実施例の特性eと、従来の片側一本の断面が大きいフロントサイドフレームで荷重を受け、かつペリメータフレームを有さない従来特性fとを示すものである。
【0054】
この実施例の特性eはフロントアンダフレーム10,10間をクロスメンバ11,12で車幅方向に連結しているので、従来特性fに対して図示の便宜上ハッチングを施した分、衝突初期から衝突中期にかけての衝突耐力の向上を図ることができる。
【0055】
また上述のペリメータフレーム13の前端部左右を上下方向に延びるメンバ18,18によりフロントアッパフレーム16,16の先端部に接続したので、該ペリメータフレーム13の剛性(いわゆるサスクロスの剛性、特にその横剛性)が向上し、この結果、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、サスタワー27の前後にサスタワー前部ボックス29およびサスタワー後部ボックス30を設け、剛性が高いサスタワー27を利用して荷重を受けるので、大きい他車両との衝突時においても、自車両が該他車両の下方にもぐり込むのを防止することができる。
【0057】
このように図1〜図8で示した実施例の車両の前部車体構造は、エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュロアパネル3の下端から後方に連続してフロアパネル4が設けられ、上記フロアパネル4に沿って前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム7,7を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロアフレーム7が前方のエンジンルーム1下方に延長されて一対のフロントアンダフレーム10を形成すると共に、上記ダッシュロアパネル3から前方にはフロントアンダフレーム10の上方に所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレーム16,16が配設されたものである。
【0058】
この構成によれば、上側に位置するフロントアッパフレーム16と、下側に位置するフロントアンダフレーム10との片側2本のフロントフレームで衝突荷重を受けて、この衝突荷重を車体後方に効率的に伝達することにより、フロントフレームの耐力向上を図りつつ、その断面を小型化にすることができて、衝突性能と軽量化との両立を図ることができる。
【0059】
つまり、片側一本の断面が大きいフロントサイドフレームを用いる従来構造と比較して、上側のフロントアッパフレーム16と、下側のフロントアンダフレーム10との片側2本のフロントフレームを用いるので、図7に特性cで示すように、総合的に衝突耐力の向上を図ることができると共に、一本のフロントサイドフレームの重量に対して、フロントアッパフレーム16とフロントアンダフレーム10との重量の総和を小さくすることができる。
また衝突耐力が向上するので、フロントオーバハングの短縮を図ることができ、車両デザインの自由度が向上する。
【0060】
また、上記フロントアッパフレーム16の後部はダッシュロアパネル3に沿って下方に延設され、その後端部が上記フロントアンダフレーム10の後部に接続されたものである。
この構成によれば、フロントアッパフレーム16への衝突荷重も上述のフロントアンダフレーム10およびフロアフレーム7に伝達して逃がすことができるので、衝突耐力の向上を図ることができる。
【0061】
さらに、上記左右一対のフロントアンダフレーム10,10の前端部は車幅方向に延びるフロントクロスメンバ11で連結されたものである。
この構成によれば、フロントクロスメンバ11で左右のフロントアンダフレーム10,10の前端部相互間を連結したので、オフセット衝突時の荷重を適切に吸収することができ、このオフセット衝突時のダッシュ後退量の低減と、フルラップ衝突時の傷害値の低減とを両立させることができる。
【0062】
しかも、上記左右一対のフロントアンダフレーム10,10のダッシュロアパネル3の下部近傍がリヤクロスメンバ12で結合され、平面視で略井型状のフレーム(ペリメータフレーム13参照)が形成されたものである。
【0063】
この構成によれば、フロントアンダフレーム10,10をフロントクロスメンバ11とリヤクロスメンバ12とで結合して、略井型状のフレーム(いわゆるペリメータフレーム13)を構成したので、図8に特性eで示したように、オフセット衝突に対する耐力の向上と、フロントサスペンションの支持剛性の向上との両立を図ることができる。
【0064】
加えて、上記フロントアッパフレーム16とフロントアンダフレーム10との双方にパワートレイン8がマウントされたものである。
この構成によれば、パワートレイン8を構成するエンジンの振動を効率的に車体に吸収することができる。
【0065】
また、上記パワートレイン8はペンディラム式のエンジンマウントで支持されたものである。
この構成によれば、エンジン振動のフロントフレーム(フロントアッパフレーム16およびフロントアンダフレーム10参照)への伝達が小さくなるので、エンジン振動をより一層効率的に車体に吸収することができる。
【0066】
さらに、上記フロントアッパフレーム16とフロントアンダフレーム10の先端にクラッシュカン等のエネルギ吸収部材17,15が配設されたものである。
この構成によれば、エネルギ吸収部材17,15にて衝撃吸収を行なうことができるのは勿論、エネルギ吸収部材17,15の大きさの変更により車両デザインに対応した調整を行なうことができ、いわゆる派生車のアレンジが容易となる。つまり、エネルギ吸収部材17,15により車両の全長を調整することができる。
【0067】
図9は車両の前部車体構造の他の実施例を示し、図1の実施例ではフロアフレーム7のエンジンルーム1下方へ延長構造を、加工性を考慮してフロアフレーム7とは別部材のフロントアンダフレーム10を設け、このフロントアンダフレーム10をフロアフレーム7からエンジンルーム1の下方へ一体的に延長させたが、図9に示すこの実施例では上記延長構造を、部品点数を考慮して、フロアフレーム7を一体に前方へ延長させて、フロントアンダフレーム10を構成したものである。
【0068】
このように構成すると、部品点数の低減を図ることができる。なお、図9に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0069】
図10は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示し、図3の実施例ではフロントアンダフレーム10,10の先端部に対応して、ペリメータフレーム13の先端両側部にのみエネルギ吸収部材15,15を取付けたが、図10に示すこの実施例ではフロントアンダフレーム10,10を車幅方向に連結するフロントクロスメンバ11の先端にその車幅方向の全幅にわたってクラッシュカン等から成るエネルギ吸収部材15を配設したものである。
【0070】
このように構成しても、先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図10において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0071】
図11は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示し、この実施例ではサスタワー27の前後両部に位置するサスタワー前部ボックス29およびサスタワー後部ボックス30に、車両の前後方向に延び、かつ上方またはエンジンルーム1側へ膨出する少なくとも1つのビード43を一体形成したものである。
【0072】
このように構成すると、部品点数の増加および重量の増加を招くことなく、サスタワー前部ボックス29およびサスタワー後部ボックス30の強度向上を図ることができ、衝突荷重入力に対する耐力の向上を図ることができる。
【0073】
なお、図11に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図11において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0074】
図12、図13、図14は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示し、サスペンションクロスメンバを構成するフロントアンダフレーム10,10の前端を一体的に上方に湾曲させて、湾曲部10A,10Aを形成し、これら各湾曲部10A,10Aの上端をフロントアッパフレーム16の先端部下面に接続したものである。
また、この実施例においては図12で示すように、上述のフロントアンダフレーム10,10の下側前部に平面視でコの字形のブラケット44を介してクラッシュカン等から成るエネルギ吸収部材15を取付けている。
【0075】
このように構成すると、別部材のメンバ18(前図参照)を用いることなく、フロントアンダフレーム10の前端を上方に湾曲させて、その湾曲部10Aをフロントアッパフレーム16に接続することができるので、部品点数の低減を図ることができる。
【0076】
図12〜図14で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図12〜図14において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
平面視で略井型状のフレームは、ペリメータフレーム13に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0078】
【発明の効果】
この発明によれば、フロアフレームが前方のエンジンルーム下方に延長されて一対のフロントアンダフレームを形成すると共に、ダッシュパネルから前方にはフロントアンダフレームの上方所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレームを配設したので、上側のフロントアッパフレームと、下側のフロントアンダフレームとの片側2本のフレームで衝突荷重を受けて、この衝突荷重を車体後方に効率的に伝達することができ、フロントフレームの耐力向上を図りつつ、その断面を小型化にすることができ、衝突性能と軽量化との両立を図ることができるうえ、フロントオーバハングの短縮を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両の前部車体構造を示す側面図。
【図2】図1の要部の平面図。
【図3】前部車体構造を示す斜視図。
【図4】図2のA−A線矢視断面図。
【図5】図2のB−B線矢視断面図。
【図6】図2のC−C線矢視断面図。
【図7】フルラップ衝突時のエネルギ吸収特性を示す特性図。
【図8】オフセット衝突時のエネルギ吸収特性を示す特性図。
【図9】車両の前部車体構造の他の実施例を示す側面図。
【図10】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図11】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図12】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す側面図。
【図13】図12の要部の平面図。
【図14】図12の斜視図。
【符号の説明】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
4…フロアパネル
7…フロアフレーム
8…パワートレイン
10…フロントアンダフレーム
11…フロントクロスメンバ
12…リヤクロスメンバ
13…ペリメータフレーム(フレーム)
15,17…エネルギ吸収部材
16…フロントアッパフレーム
Claims (7)
- エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルの下端から後方に連続してフロアパネルが設けられ、
上記フロアパネルに沿って前後方向に延びる左右一対のフロアフレームを備えた車両の前部車体構造であって、
上記フロアフレームが前方のエンジンルーム下方に延長されて一対のフロントアンダフレームを形成すると共に、
上記ダッシュパネルから前方にはフロントアンダフレームの上方に所定間隔を隔てて平行に延びる左右一対のフロントアッパフレームが配設された
車両の前部車体構造。 - 上記フロントアッパフレームの後部はダッシュパネルに沿って下方に延設され、その後端部が上記フロントアンダフレームの後部に接続された
請求項1記載の車両の前部車体構造。 - 上記左右一対のフロントアンダフレームの前端部は車幅方向に延びるフロントクロスメンバで連結された
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。 - 上記左右一対のフロントアンダフレームのダッシュパネル下部近傍がリヤクロスメンバで結合され、
平面視で略井型状のフレームが形成された
請求項3記載の車両の前部車体構造。 - 上記フロントアッパフレームとフロントアンダフレームとの双方にパワートレインがマウントされた
請求項1〜4記載の何れか1に車両の前部車体構造。 - 上記パワートレインはペンディラム式のエンジンマウントで支持された
請求項5記載の車両の前部車体構造。 - 上記フロントアッパフレームとフロントアンダフレームの先端にエネルギ吸収部材が配設された
請求項1〜6の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
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