JP2014150175A - 半導体装置に好適なカーボンナノチューブ束群を用いた半導体装置の製造方法、及び半導体装置 - Google Patents

半導体装置に好適なカーボンナノチューブ束群を用いた半導体装置の製造方法、及び半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、トランジスタ等の半導体装置に分散液・金属微粒子を含まないカーボンナノチューブの束群を用いた、半導体装置の製造方法を提供すると共に、それを用いたリーク電流を抑制しつつ、0.1アンペアからアンペアレベルの電流を制御可能な半導体装置の1つである電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】電界効果トランジスタ1は、ソース電極3と、ドレイン電極4と、ゲート8と、ソース電極3とドレイン電極4との間に設けられた、分散液・金属微粒子・欠陥のないカーボンナノチューブの束群からなるチャネル7と、を具備しているので、チャネルのカーボンナノチューブの配向を変えるだけで、電流値に特化した構成や、スイッチング作用に特化した構成を非常に簡便に提供できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電界効果トランジスタ等の半導体装置に好適なカーボンナノチューブ束群を用いた半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
電気自動車の制御には高出力かつ低消費電力のトランジスタが必要とされる。とくに近年、0.1アンペアレベルの電流を制御することができるトランジスタに対するニーズが高い。また、バッテリーの有効利用という点からトランジスタがオフした状態で流れてしまう電流(リーク電流)を抑制したトランジスタに対するニーズも高い。
ここで、トランジスタで高出力、即ち、大電流を制御するためには、チャネルの長さを短くすることにより、チャネルの抵抗値を小さくすることが有効である。加えて、チャネルの断面積を大きくすることにより、チャネルに流れるキャリアの数を増やす事も有効である。また、電解液やイオン液体からなる液体電解質をゲートに採用した場合、液体電解質とチャネルの表面との接触面積が大きくなり、複数本のチャネルの表面に対して、瞬時かつ一括にゲート絶縁層として機能する電気二重層を生じさせることができ、スイッチング素子としての応答性が向上するので、ゲートとして液体電解質を採用することが有効である。
特許文献1には、互いに対向するソース電極とドレイン電極の間に複数の短い柱状の半導体を配置してチャネルの長さを短く、チャネルの断面積を大きく確保しつつ、その半導体の周囲にイオン液体を充填したゲートを備えたトランジスタが開示されている。
一方で、近年、半導体材料として広く利用されているシリコンに比べて、高い電子(正孔)移動度を有するカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と呼ぶ)を用いた電界効果トランジスタ(以下、「FET」と呼ぶ)の研究が行われている。
CNTは、原子1個分の厚みで炭素原子が6角形のハニカム構造を形成するグラフェンシートと呼ばれるシート状の物質が円筒状に巻かれた形状を有する。炭素原子の最外殻電子4個のうち、3個の電子は隣接する炭素原子との共有結合のために使われているが、未結合の4番目の電子は、グラフェンシートの平面の上下に垂直に伸びた軌道に存在する。この軌道はグラフェンシート全体にわたって広がっている。このシートの上下に広がる電子が、障害となるものに衝突することなくバリスティック伝導(無散乱で電子が走行する)に近い移動を行い得ることから、CNTは高い電子(正孔)移動度を有し、電気抵抗が小さいという性質を有する。実際、シリコンの電子移動度が約1.5×10cm/V・sであるのに比べて、CNTの電子移動度は約1.0×10cm/V・sであり、10倍程度大きい。
ところで、CNTの合成方法として広く知られているレーザーアブレーション法、アークプラズマ法、化学気相成長法(CVD法)等を用いて得られるCNTの長さは、数μm程度である。このCNTを特許文献1における柱状の半導体チャネルとして使用し、しかもソース電極とドレイン電極の間を連続する1本のCNTで接続しようとすると、ソース電極とドレイン電極との間の距離を数μm以下にする必要がある。しかしながら、ソース電極とドレイン電極との間の距離が短すぎると、トンネル効果によるリーク電流が増大し、FETの主たる目的である電流のスイッチング素子としての用途を果たさない。
ここで、上記のCNTをチャネルに用いた場合、ソース電極とドレイン電極間を連続する金属性CNTが接続すると、リーク電流が生じることになり、トランジスタとしてのON/OFF比が低下し、スイッチング素子としての性能が低下してしまう。
特許文献2及び特許文献3に記載された電界効果トランジスタは、ソース電極とドレイン電極との間の距離よりも短い複数の短尺CNTを分散させたチャネル構造を有することから、ソース電極とドレイン電極との間を連続する1本の金属性CNTが存在しない。このため、抵抗の小さい金属性CNTを流れるリーク電流を抑制することができるという利点がある。しかしながら、短い複数の短尺CNTを分散液により分散させてチャネルを形成するので、チャネルは、1)チャネルに電子(正孔)輸送の障害となる分散液が残留する、2)構造上CNT同士の接点が多いために接触抵抗が増大する、3)分散液中にCNTを高分散させるためにCNTの密度に制限がある上にランダムな方向に分散しているので電極との接触面積が小さい等のため、チャネルの抵抗及びチャネル−電極界面の抵抗が増大してしまうおそれがあった。即ち、これら1)〜3)の性質は、ソース電極とドレイン電極との間の電気抵抗を増大させる方向に作用するため、ソース電極とドレイン電極との間の電流はせいぜい120μA/mm(ドレイン電極とソース電極との間の電圧:VDS=5.0V、ゲート電極とソース電極との間の電圧:VGS=7.0V)程度であって、0.1アンペア〜数アンペアレベルの電流の制御が要求される電気自動車用パワーデバイスには用いることができない。
以下に、図17を参照しつつ、従来技術(例えば、特許文献2及び特許文献3)におけるCNTの製造方法を説明する。
図17は、従来技術のFETの製造方法を示す概略図である。
従来技術におけるFETの作成は、次のような手順により実行される。
ステップS101において、ゲート長さの設定をする。ゲート長さについては、格段の制限はなく、要件に対して自由に設計できる。これに応じてCNTの密度・長さを決定する。
ステップS102において、CNTを準備する。CNTの合成方法としては、一般的なレーザーアブレーション法、アークプラズマ法、化学気層成長法(CVD法)のいずれでもよいとされているが、いずれの方法においても得られるCNTの長さは数10μm程であり、半導体CNTと金属性CNTの比率もおよそ2:1である。
ステップS103において、CNTの密度・長さを決定する。CNTの密度及び長さの範囲は、ゲート長さ及び半導体性CNTと金属性CNTの比率をもとに計算を行い、一意的に規定される。
ステップS104において、CNTの分散液を作成する。CNTの長さを調整するにあたって、有機溶媒または水性溶媒中にCNT群を分散させて、CNT分散液を作成する。この分散液には、分散を促進させるための表面活性剤、断片化を促進させるための金属微粒子等を含む。
ステップS105において、CNTの断片化処理を行う。CNT分散液に超音波処理を施し、CNTを断片化する。
ステップS106において、CNTの分離を行う。フィルターによって必要以上の長さを持つCNTを分離する。また溶媒、表面活性剤、金属微粒子等も遠心分離等の処理によって分離する。
ステップS107において、CNTの分散液を作成する。この際のCNT濃度はステップS103で決定された濃度以下になるようにする。この分散液には、分散を促進させるための表面活性剤が含まれる。
ステップS108において、チャネル層を形成する。チャネル層を形成する方法としては、CNT分散液をスピンコート等の手法による基板上への塗布が挙げられ、ステップS103で決定された濃度になるまでこれを繰り返す。
上記のステップの中で、ステップS104〜ステップS108については、それぞれ以下のような課題を抱えている。
[ステップS104の課題]
CNT分散液には有機溶媒または水性溶媒からなる分散溶媒、それ以外にも分散を促進させるための表面活性剤、断片化を促進させるための金属微粒子が含まれる。これらをステップS106で完全に除去するのは容易でなく、これらは、ステップS108で形成するチャネル層に含まれてしまう。こうしたチャネルに残留した不純物はトランジスタとして作用する際に、キャリアの輸送に大きな障害となり、チャネルの導電特性の悪化、さらにはトランジスタとして制御できる電流値が大幅に低下してしまうおそれがある。
[ステップS105の課題]
断片化処理はCNTの側壁に不必要な欠陥を生じさせ、導電特性を悪化させる。また、ステップS103で規定された長さに対してマイクロオーダーの精度で長さを揃えるのは、技術的に容易でない。
[ステップS106の課題]
ステップS104で説明したように、分散溶媒、表面活性剤、金属微粒子を完全にCNTと分離することは容易でない。さらに、半導体装置作成の工数・時間・コストを大幅に増やしてしまう。また除去されたCNT、分散溶媒、表面活性剤、金属微粒子の処理も、実際に製造するにあたっての課題となり得る。
[ステップS107の課題]
このステップにおいても、CNTと分散溶媒及び界面活性剤を混合して分散液を作成することから、ステップS108におけるチャネル層の形成において、チャネルにこれら不純物が残留してしまうおそれがある。
[ステップS108の課題]
スピンコート等の手法による基板上への塗布によって、基板上にチャネル層を形成するのだが、ステップS103で決定した濃度にするためには、分散液の濃度に応じてこのステップを複数回繰り返す必要がある。しかし、分散液中のCNTを均一に分散させるためにも、分散液中のCNT濃度は必然的に薄いものとなる上に、均一に塗布を行いチャネル形成するという製法を採っているために、一度に塗布できる分散液の量にも制限がかかる。従って、トランジスタの設計に応じてこのステップを数10〜数100回繰り返す必要があり、半導体装置作成の工数・時間・コストを大幅に増やしてしまうおそれがある。
国際公開第2009/133891号 特許第4666270号公報 国際公開2011/090029号
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、トランジスタ等の半導体装置に分散液・金属微粒子・欠陥CNTを含まないCNTの束群を用いた、半導体装置の製造方法を提供すると共に、それを用いたリーク電流を抑制しつつ、0.1アンペアからアンペアレベルの電流を制御可能な半導体装置の1つである電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
(1)本発明は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲートと、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたチャネルと、を具備する半導体装置の製造方法であって、密度が1.0×10本/cm以上であるCNTの束群が、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の最短距離をなす直線に対して所定の方向に配向するように、前記チャネルとして基板上に配置される工程と、前記基板上に、前記ソース電極と、前記ドレイン電極と、前記ゲートと、が形成される工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法、を提供する。
(1)の発明によれば、この構成により、ソース電極3とドレイン電極4との間で輸送される電子(正孔)は、高密度に隣接しているCNT間を移動するので優れた導電性を有するチャネルを構成し、さらに、配向を変えることにより、電流値を制御する、ことができる。
(2)本発明は、前記CNTの束群は、下記の要件(a)乃至(c)を満たすよう製造される、ことを特徴とする。
(a)前記CNTの束群は、以下の式(1)を満たす
Lgate≦Lcnt (1)
前記の式(1)において、
Lgateは、前記ゲートの長さを示し、
Lcntは、前記CNTの束群を構成するCNTの平均長さを示す数字である。
(b)前記CNTの束群の密度が、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(c)前記CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であること。
(2)の発明によれば、長尺なCNTが、ソース電極とドレイン電極との間を架橋しているため、チャネルの電気抵抗値が小さく、更には電極とチャネルがその界面において良好な接触状態を実現しているため、チャネル−電極間の電気抵抗が小さく、アンペアレベルの大電流を制御すること、ができる。
(3)本発明は、前記CNTの束群は、下記の要件(d)乃至(f)を満たすよう製造される、ことを特徴とする。
(d)前記CNTの束群は、以下の式(2)を満たす
Wgate≦Lcnt (2)
前記の式(2)において、
Wgateは、前記ゲートの幅を示し、
Lcntは、前記カーボンナノチューブの束群を構成するCNTの平均長さを示す数字である。
(e)前記CNTの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(f)前記CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直交すること。
(3)の発明によれば、ソース電極とドレイン電極との間を金属性CNTが連続して接続してしまうことをできるだけ回避し、リーク電流が流れることを抑制する、ことができる。
(4)本発明は、前記ゲートは、液体電解質からなるように製造される、ことを特徴とする。
(4)の発明によれば、チャネルの表面に液体電解質が密着性よく含浸し、ゲート参照電極に電圧を印加した際に、液体電解質と個々のチャネルの表面に瞬時かつ一括にゲート絶縁層として機能する電気二重層が生じるため、低消費電力で0.1アンペアレベルの電流を制御する、ことができる。
(5)本発明は、前記CNTの束群を用意する工程において、先端放電型ラジカルCVD法によってCNTの束群を準備する工程を含む、ことを特徴とする。
(5)の発明によれば、ソース電極とドレイン電極とを連続して接続できる長さ以上のCNTを合成できるため、分散液を用いずに電界効果トランジスタのチャネルを製造する、ことができる。
(6)本発明は、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲートと、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたチャネルと、を具備する半導体装置であって、密度が1.0×10本/cm以上であるCNTの束群が前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の最短距離をなす直線に対して所定の方向に配向するように、前記チャネルとして基板上に配置され、前記基板上に、前記ソース電極と、前記ドレイン電極と、前記ゲートとが形成された、ことを特徴とする。
(6)の発明によれば、この構成により、ソース電極3とドレイン電極4との間で輸送される電子(正孔)は、高密度に隣接しているCNT間を移動するので優れた導電性を有するチャネルを構成し、さらに、配向を変えることにより、電流値を制御する、ことができる。
(7)本発明は、前記CNTの束群は、下記の要件(a)乃至(c)を満たす、ことを特徴とする。
(a)前記CNTの束群は、以下の式(1)を満たす
Lgate≦Lcnt (1)
前記の式(1)において、
Lgateは、前記ゲートの長さを示し、
Lcntは、前記CNTの束群を構成するCNTの平均長さを示す数字である。
(b)前記CNTの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(c)前記CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であること。
(7)の発明によれば、長尺なCNTが、ソース電極とドレイン電極との間を架橋しているため、チャネルの電気抵抗値が小さく、更には電極とチャネルがその界面において良好な接触状態を実現しているため、チャネル−電極間の電気抵抗が小さく、アンペアレベルの大電流を制御する、ことができる。
(8)本発明は、前記CNTの束群は、下記の要件(d)乃至(f)を満たす、ことを特徴とする。
(d)前記CNTの束群は、以下の式(2)を満たす
Wgate≦Lcnt (2)
前記の式(2)において、
Wgateは、前記ゲートの幅を示し、
Lcntは、前記CNTの束群を構成するCNTの平均長さを示す数字である。
(e)前記CNTの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(f)前記CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直交すること。
(8)の発明によれば、ソース電極とドレイン電極との間を金属性CNTが連続して接続してしまうことをできるだけ回避し、リーク電流が流れることを抑制する、ことができる。
(9)本発明は、前記ゲートは、液体電解質からなる、ことを特徴とする。
(9)の発明によれば、チャネルの表面に液体電解質が密着性よく含浸し、ゲート参照電極に電圧を印加した際に、液体電解質と個々のチャネルの表面に瞬時かつ一括にゲート絶縁層として機能する電気二重層が生じるため、低消費電力で0.1アンペアレベルの電流を制御する、ことができる。
(10)本発明は、前記CNTの束群は、先端放電型ラジカルCVD法によって合成させた、ことを特徴とする。
(10)の発明によれば、ソース電極とドレイン電極とを連続して接続できる長さ以上のCNTを合成できるため、分散液を用いずに電界効果トランジスタのチャネルを製造する、ことができる。
本発明によれば、プラズマCVD法によって得られるCNT構造体をチャネルに用いた電界効果トランジスタは、チャネルのCNTの配向を変えるだけで、電流値に特化した構成や、スイッチング作用に特化した構成を非常に簡便に提供できる。
金属性CNTと半導体性CNTとの構造上の違いを示す模式図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの構成を示す模式図である。 チャネルとして電子(正孔)輸送方向に平行に配置されたCNTの配向及び幾何的要件を説明する概念図である。 従来技術と本発明のチャネル構造の違いを説明する概念図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタに用いるCNTを合成するプラズマCVD装置の概略図である。 本発明に係る一実施形態としてプラズマCVD法を用いて合成したCNTのSEM像を示す図である。 本発明に係る一実施形態としてプラズマCVD法を用いて合成したCNTのTEM像を示す図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの製造手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタのチャネル層の製造手順を示すフローチャートである。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの製造方法を示す概略図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの性能評価を示す図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタに用いるCNTの束構造による電子(正孔)輸送経路を示す概念図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの構成を示す模式図である。 チャネルとして電子(正孔)輸送方向に直交する方向に配置されたCNTの配向及び幾何的要件を説明する概念図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタに用いるCNTの束構造による電子(正孔)輸送経路を示す概念図である。 本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの性能評価を示す図である。 従来技術に係る電界効果トランジスタのチャネル層の製造手順を示すフローチャートである。
[第一実施形態]
本発明の一実施形態に係る電界効果トランジスタ1(以下、必要に応じ「FET1」と呼ぶ)について図面を適宜参照しつつ説明する。
[構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る電界効果トランジスタ1の構成の模式図である。
本発明の一実施形態に係るFET1は、基板2、ソース電極3、ドレイン電極4、導電性樹脂5、絶縁性樹脂6、チャネル7、ゲート8、ゲート参照電極9、及び配線10から構成される。
基板2は、ガラスで構成されるが、例えば、ポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルムやプラスチックであってもよい。
基板2上の一部の領域には、直方体の形状からなるソース電極3及びドレイン電極4がそれぞれ互いに対面するように配置されている。ソース電極3及びドレイン電極4は、各々、チタン及びそのチタンの周囲を金が被覆したもので構成されている。
導電性樹脂5は、導電性エポキシ樹脂又は銀ペーストで構成され、ソース電極3及びドレイン電極4の周囲を覆うように配置されている。
絶縁性樹脂6は、絶縁性エポキシ樹脂で構成され、導電性樹脂5の外周を覆うように配置されている。
ここで、本発明のチャネル7を構成するCNTは、その長さが少なくともソース電極3とドレイン電極4との間の距離よりも長くなっており、CNTがソース電極3とドレイン電極4との間を連続して接続するようになっている。また、本発明のチャネル7を構成するCNTは、その単位面積当たりの本数が1.0×10〜1.0×1012本/cmという高密度で形成されている。
このように、ソース電極3及びドレイン電極4間の距離よりも長く、従来のCNTを用いたFETデバイスのチャネル数の比にならないほど高密度化されたCNTをチャネル7に用いることで、本発明のFET1では、従来例のような分散処理(短い複数の短尺CNTを分散液により分散させてチャネル7を形成する処理)を行わずに、FETとしての役割を付与することができる。
そして、本発明のFET1では、チャネル7内に電子(正孔)輸送の障害となる分散液が残留することもなく、また、チャネル7がゲート8に効率よく含浸されてチャネル7及びゲート8間の接触面積が大きくなるので、ゲート参照電極9に電圧を印加した際に、ゲート8とチャネル7の表面に容易に電気二重層が生じるため、更にはソース電極3及びドレイン電極4とチャネル7がその界面において良好な接触状態を実現しているため、チャネル及びチャネル−電極間の電気抵抗が小さく、アンペアレベルの大電流を制御することができる。
図3(a)は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタのチャネルに用いるCNTの模式図である。チャネル7は同一方向に配向した複数本のCNTからなるCNT束の集合体の延伸方向がソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に平行となるように配置されている。
ここで、図3(b)に示すように、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線の長さLgateを「ゲート長」と呼ぶ。また、基板2の平面に並行であって、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に直角な方向を「ゲート幅方向」と呼び、チャネル7のゲート幅方向の長さWgateを「ゲート幅」と呼ぶ。そして、チャネル7として用いられる複数のCNTの長さの平均(以下、「カーボンナノチューブの束群の平均長さ」と呼ぶ)、即ち、平均長さLcntを「チャネル長」と呼ぶ。さらに、基板2の平面に垂直な方向を「ゲート高さ方向」と呼び、チャネル7のゲート高さ方向の寸法を「ゲートの厚み」と呼ぶ。
なお、本実施形態においては、例えばゲート長Lgate及びゲート幅Wgateはいずれも1mmであり、ゲートの厚み(基板2の平面に垂直な方向の厚み)は300μmである。あるいは、ゲート長Lgateは、1インチ(2.54mm)程度であってもよい。なお、チャネル7の構成としては、チャネル7の表面にめっき処理を施して形成されたものであってもよい。
そして、本発明のチャネル7としては、そのCNTの配向がソース電極3とドレイン電極4との間の電子(正孔)の輸送方向に平行となるように形成されることが望ましいともいえる。すなわち、CNTの配向が、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に対して平行であることが望ましい。
CNTの配向がソース電極3とドレイン電極4との間の電子(正孔)の輸送方向に平行になるほど、ソース電極3及びドレイン電極4間に輸送される電子(正孔)が同じ1本の(あるいはその近傍の)金属性CNT上を移動しやすくなり、隣り合うCNT間の移動が少なくなる分だけチャネル7の抵抗が下がるからである。したがって、高出力のFET1を得るためには、CNTの配向がソース電極3とドレイン電極4との間の電子(正孔)の輸送方向に平行であることが望ましい。
ここで、1本のCNTは巨視的には十分に長尺ではあるが、厳密には「直線」ではない(例えば、後述する図6の部分拡大図として示すとおりである)ので、「CNTの配向」について定義しておく。つまり、CNTの配向とは、CNTの製造プロセスの観点からは、後述するプラズマCVD装置30を用いて先端放電型ラジカルCVD法によりCNTを合成する際の基板33の平面に対して垂直な方向を意味する。または、CNTが厳密に垂直に成長しない場合があることを考慮した観点からは、CNTの成長方向(長尺の方向)を意味する。
また、本発明のチャネル7の構造を別の視点から見ると、束構造を構成するCNTのうち、CNTがソース電極3とドレイン電極4との間を連続して接続するものを含むよう構成されることが望ましいともいえる。
ソース電極3とドレイン電極4の間が1本の連続したCNTで接続されていた方が、従来例のように、短いCNT同士を複数繋いだ場合よりも、各CNT間の接触抵抗がない分だけ、チャネル7の抵抗が小さくなるからである。つまり、高出力のFET1を得るという観点からは、CNTの束群は、ソース電極3とドレイン電極4との間を連続して接続するCNTを含むよう構成されていることも大切である。
再び、図2に戻って、本発明の第一実施形態に係る電界効果トランジスタ1の構成を説明する。ゲート8は食塩水であって、基板2、絶縁性樹脂6及びチャネル7に触れる様に液層内に満たされている。特に、チャネル7に対しては、本発明のチャネル7は従来例のような分散処理を行っていないため、ゲート8が、チャネル7の厚み方向(基板2の平面に垂直な方向)へ効率よく含浸している。なお、ゲート8は、食塩水に代えて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、又はこれらに塩化水素・水酸化ナトリウム等を加えたもの)、水酸化カリウム、シュウ酸塩、フタル酸塩、中性リン酸塩、ホウ酸塩の溶液等の電解液やイオン液体でもよい。
ゲート参照電極9は、銀の周囲を塩化銀で覆うように構成された銀−塩化銀電極であり、ゲート8の液体電解質の溶液内に浸漬されている。
なお、ゲート参照電極9に電圧が加えられると、CNTの外周を覆うように電気二重層によるゲート絶縁層13が形成されることになる。
次に、図4を参照しつつ、チャネル7の構造を説明する。
図4は、従来技術と本発明に係る一実施形態のチャネルに用いるチャネル構造について説明する概念図である。
図4(a)は、従来技術(例えば、特許文献2及び特許文献3)に記載されたチャネルの概念図である。図4(b)は、本発明の一実施形態(第一実施形態)としてのチャネルの概念図である。図4(c)は、本発明の一実施形態(後述する第二実施形態)としてのチャネルの概念図である。
図4(a)に示されるチャネルは、半導体性CNT11と、金属性CNT12と、それら以外にも断片化処理及び分散処理に由来する分散溶媒14、界面活性剤15、金属微粒子16等の不純物を含む。さらに、断片化処理では、CNTの側壁に亀裂等が生じやすいため、図4(a)に示されるチャネルは、欠陥のあるCNT17を含む。これら不純物や欠陥のあるCNTは、導電特性の低下及びスイッチング特性の低下の原因となる。さらに、従来技術のチャネルは、分散液中にCNTを高分散させるためCNTの密度に制限があるうえに、CNTがランダムな方向に分散しているので、電極との接触面積が小さくなり、大電流を制御することができない。
一方、図4(b)に示す、本発明の一実施形態(第一実施形態)としてのチャネル7は、半導体性CNT11と金属性CNT12のみから構成されるため、図4(a)のような、CNT以外の不純物を含まない。さらには断片化処理等も不要のため、欠陥のあるCNTの本数が減少する。これらの作用によって優れた導電特性を示す。このため、ゲート8として液体電解質を用いた場合には、ゲート8がチャネル7の厚み方向へ効率よく含浸し、チャネル7とゲート8の接触面積を大きくすることができる。更には、チャネル7が配向していることからソース電極及びドレイン電極とチャネル7がその界面において良好な接触状態を実現しているため、チャネル−電極間の電気抵抗が小さい。上述のように、本発明のFET1では、チャネル−ゲート間、チャネル−電極間の接触面積が大きいことに加え、チャネルに高い電子移動度を誇るCNTが、単位面積あたりの本数が1.0×10〜1.0×1012本/cmという高密度で形成されたものを用いるためにチャネル7の抵抗が小さいことから、アンペアレベルの大電流を制御することが可能である。
一方、図4(c)に示す、本発明の一実施形態(後述する第二実施形態)のチャネル7は、図4(b)と同様に半導体性CNT11と金属性CNT12のみから構成されるため、図4(a)のような、CNT以外の不純物や欠陥のあるCNTの本数が減少する。また図4(a)同様にチャネル7が配向していることからソース電極及びドレイン電極とチャネル7がその界面において良好な接触状態を実現しているため、チャネル−電極間の電気抵抗が小さい。これらの作用によって、優れた導電特性を示す。このため、ゲート8として液体電解質を用いた場合には、ゲート8がチャネル7の厚み方向へ効率よく含浸し、CNTとゲート8の接触面積を大きくすることができる。このため、本発明のFET1では、アンペアレベルの電流を制御することが可能である。
ここで、1本のCNTは巨視的には十分に直線ではあるが、厳密には曲がりや捻りが存在するため「直線」ではない(例えば、後述する図6の部分拡大図として示すとおりである)ので、「CNTの配向」について定義しておく。つまり、CNTの配向とは、CNTの製造プロセスの観点からは、後述するプラズマCVD装置30を用いて先端放電型ラジカルCVD法によりCNTを合成する際の基板33の平面に対して垂直な方向を意味する。または、CNTが厳密に垂直に成長しない場合があることを考慮した観点からは、CNTの成長方向(長尺の方向)を意味する。
本実施形態においては、後述するように、基板上に成長させた垂直方向に配向を有するCNTの束群を基板に移し替えて、固定することでトランジスタを作成するので、図3(a)に示す、チャネルが電子(正孔)移動方向に対して並行方向に配向したトランジスタを構成することができる。この様なチャネルを実現するためにチャネルに用いられるCNTの束群には、以下の要件(a)〜(c)が求められる。
(a)チャネルに用いられるCNTは、図3(b)に示す記号を用いた以下の式(1)を満たすものが望ましい。
Lgate≦Lcnt (1)
(b)チャネルに用いられるCNTの密度が、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(c)CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であること。
上記の要件(a)〜(c)について、以下、説明する。
要件(a)は、チャネルに用いられるCNTの平均長さLcntが、ゲート長Lgate以上であることを意味する。チャネルに用いられるCNTは巨視的には直線であるものの、チャネルを構成する個々のCNTには曲がりや捻りが存在するため、厳密には直線ではない。従って、必然的に本発明のCNTの平均長さLcntは、ゲート長Lgateよりも長くなる。よって、チャネル7部分の実効的なゲート長Lgateを確保するために、かかる要件を有することが望ましい。
また、要件(b)は、チャネル7に用いられるCNTの束群の本数密度が、1.0×10〜1.0×1012本/cmである。本発明のチャネル7に用いられるCNTの束群は、後述する先端放電型ラジカルCVD法によって合成される。この構成により、ソース電極3とドレイン電極4との間の電子(正孔)は、後述の送距離ショートカット経路、高伝導チャネルシフト経路、欠陥チャネル迂回経路などが形成されやすく、チャネル全体の電流の抵抗値を小さくするよう寄与するため、これらの効果によってドレイン−ソース間電流が飛躍的に増大するといえる。
さらに、要件(c)は、CNT束群の配向が、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であることである。本要件を満たすことにより、CNTの束群は、ソース電極とドレイン電極との間を連続して接続するようになるため、チャネルの電気抵抗値が小さくすることができ、本実施形態に係るFET1はアンペアレベルの大電流を制御することができる。
[製造方法]
次に、FET1の製造方法について図5〜図10を参照しつつ説明する。
図5は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタに用いるCNTを合成するプラズマCVD装置の概略図である。
本実施形態におけるチャネル7は、先端放電型ラジカルCVD法(以下、「プラズマCVD法」と呼ぶ)によって合成されるCNTから構成される。本実施形態におけるプラズマCVD法によるCNTの合成装置が、プラズマCVD装置30である。プラズマCVD装置30は、図5に示すように、チャンバー31と、基板加熱部32、基板33、基板ホルダ34、マイクロ波導波管35と、マイクロ波導波管35から伸びるアンテナ36と、から構成される。そして、チャンバー31は、内部に原料ガス37を導入するための入口である原料ガス導入部38と、外部に原料ガス37を排出するための原料ガス排出部39と、を備えている。
ここで、プラズマCVD装置30を用いたCNTの製造方法を説明する。
原料ガス37は、炭化水素ガスであり、メタンやアセチレン等が好適である。
まず、基板33上には鉄粒子等の触媒40が高密度に配置される。触媒40は、コバルトと鉄の合金、ニッケルと鉄の合金が用いられてもよい。次に、基板33から離れたアンテナ36の先端部41でプラズマを発生させ、プラズマがプラズマ発生領域42内の原料ガス37を分解することにより、基板33の上にCNTが合成される。
本プラズマCVD装置は、マイクロ波の定在波の腹がちょうどアンテナ36の先端部41に位置するよう設計されているため、60Wという低電力で放電可能である。また、基板33とアンテナ36の先端部41との距離dは、上下に可動な基板ホルダ34によって自由に調整することができるので、プラズマを触媒40から離れた場所で発生させることができる。このため、触媒40がプラズマによって損傷を受けにくく、触媒40の活性時間が伸びることになるので、数mmという長尺かつ垂直に配向し、かつ単位面積当たりの本数が1.0×10〜1.0×1012本/cmという高密度のCNTを合成することができる。
上述のプラズマCVD法におるCNTの合成を、690℃、20Torr、60Wの条件下で行うことにより、長尺なCNTを合成することができる。
図6は、本発明に係る一実施形態としてプラズマCVD法を用いて合成したCNTのSEM(Scanning Electron Microscopy)像を示す図である。なお、図6の右上の写真はこのSEM像の部分拡大図である。
基板に垂直な方向に成長した自立するCNT(フォレストと呼ばれる)が合成されているのがわかる。従来の方法では、CNTの長さはせいぜい数μmであったのに対し、プラズマCVD法によれば、図6に示すように、1mm程度の厚さに成長していることがわかる。そして、図6の右上のCNTの部分拡大図から、個々のCNTは、基板に垂直な方向に配向して伸びている。
図7は、本発明に係る一実施形態としてプラズマCVD法を用いて合成したCNTのTEM(Transmission Electron Microscopy)像を示す図である。図7から、複数のCNTが、束になった束構造を形成している。
上記のプラズマCVD法により合成した長尺のCNTの組成比率は、単層CNTが82%、2層CNTが18%を占める。そして、単層CNTの平均直径は2.2nm、2層CNTの平均直径は3.7nmであった。
次に、本発明の一実施形態に係るFET1の製造方法について図8、図9及び図10を参照しつつ説明する。
図8は、本発明の第一実施形態に係る電界効果トランジスタ1の製造方法の製造手順を示すフローチャートである。
図9は、本発明の一実施形態に係るFET1に用いるチャネル層の製造手順を示すフローチャートである。図10は、本発明の一実施形態に係るFET1の製造方法の概略図を示している。図10の(a)〜(d)はFET1を上方向から俯瞰した図であり、図10の(a’)〜(e’)はFET1の側面方向から見た図である。図10(a)〜(d)は、それぞれ図10(a’)〜(e’)に対応している。さらに、図8のステップS12は、図10(a)及び(a’)に、図8のステップS13は、図10(b)及び(b’)に、図8のステップS14は、図10(c)及び(c’)に、図8のステップS15及びS16は、図10(d)及び(d’)に、図8のステップS17は、図10(e’)に対応している。
本発明に係る電界効果トランジスタの製造方法については、詳細に後述するが、まず、従来技術との違いを、図9及び図17を参照しつつ、簡単に説明する。
図9に示した本発明の第一実施形態に係るFET1のチャネル層の製造方法は、図17に示した特許文献2の製造方法に比べて、CNTのチャネルに不純物を混入してしまうことがない、またはCNT側壁に欠陥を生じてしまうステップS104〜S107を必要としない。さらには、CNTからなるチャネルを基板上に成長させた垂直配向のCNTの束群をトランジスタ基板に移し替えればよいので、トランジスタ製造における工数・時間・コストを大幅に削減し、非常に簡便にトランジスタを製造する方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の第一実施形態に係るFET1の作成手順を、図8を参照しつつ、説明する。
本発明の第一実施形態に係るFET1の作成は、次のような手順により実行される。
図8に示すステップS11(図9のステップS01〜S08に相当する)において、プラズマCVD装置30により、ゲート長Lgateの3〜5倍程度の長さのCNTを合成する。
ステップS12において、ステップ11において合成したCNTをゲート長Lgateの2倍程度の長さになるようにCNTを基板33から剥がし取り、ガラスからなる基板2の上に絶縁性樹脂(図示しない)を用いて固定する。この固定されたCNTがチャネル7である(図10(a)及び(a’)参照)。
ステップS13において、チタンの周囲を金が被覆して構成されるソース電極3及びドレイン電極4を、ソース電極3とドレイン電極4との間の距離(すなわちゲート長)が1mmになるように蒸着する(図10(b)及び(b’)参照)。
ステップS14において、別のガラス基板2上に、ステップS13において作成したCNTのチャネル7と、ソース電極3及びドレイン電極4を移し替える(図10(c)及び(c’)参照)。
ステップS15において、ソース電極3及びドレイン電極4にそれぞれ配線10を導電性樹脂5(伝導性エポキシ樹脂、又は銀ペースト)で電気的に接合する(図10(d)及び(d’)参照)。
ステップS16において、絶縁性樹脂6(絶縁性エポキシ樹脂)によりソース電極3と、ドレイン電極4及び配線10を覆い、液体電解質からなるゲート8に直接暴露することを防止する(図10(d)及び(d’)参照)。
ステップS17において、絶縁性樹脂6による壁20を設け、液体電解質を貯留できる液槽とし、液体電解質からなるゲート8に、ゲート参照電極9を浸漬させる(図10(e’)参照)。
[動作]
次に、上述のように、プラズマCVD法により合成したCNTを用いて作成したFET1の動作について説明する。
ゲート参照電極9に、電圧がゼロの状態から電圧を印加すると、チャネル7の個々のCNTとゲート8の液体電解質との界面に電気二重層によるゲート絶縁層13が形成される。ゲート8は、液体電解質であるため、CNTとの密着性がよく、容易かつ均一に電界をチャネル7に作用させることができるため、高速にゲート絶縁層13を形成することができる。
そして、当該ゲート絶縁層13を介してCNTチャネル7に電界が作用するので、このときにソース電極3とドレイン電極4との間に電圧を印加しておくと、ソース電極3とドレイン電極4との間に電流が流れる。
図11は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの性能評価を示す図である。
ゲート参照電極9とソース電極3の間の電圧(以下、「ゲート参照電極−ソース電極間電圧」と呼ぶ)VGSを0V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vに設定し、ドレイン電極4とソース電極3の間の電圧(以下、「ドレイン−ソース電極間電圧」と呼ぶ)VDSを印加した際のドレイン電極4−ソース電極3間に流れる電流(以下、「ドレイン−ソース電極間電流」と呼ぶ)IDSが図11に示されている。
ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0Vの場合とゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0.5Vの場合とで、ドレイン−ソース電極間電流IDSに大差がない。これは、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.0V〜0.5Vの範囲では、チャネル7に十分に電気二重層が形成されていないためと考えられる。
その後、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが1.0V以上になると、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが大きくなるほどドレイン−ソース電極間電流IDSがよく流れることを図11は示している。つまり、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0.5V以上では、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vの順に大きくなるほど、ソース電極3とドレイン電極4の間の抵抗(VDS/IDS)は、3.1Ω、1.8Ω、1.2Ω、1.0Ωの順に小さくなり、本発明のFET1がトランジスタとして機能していることが分かる。
なお、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vの場合のFET1のオン抵抗値を、測定に用いたFET1の実際のゲート幅Wgate、厚み及びゲート長Lgateを考慮して体積抵抗率に換算すると、1.2×10−3Ω・cm、7.0×10−4Ω・cm、4.7×10−4Ω・cm、4.0×10−4Ω・cmとなる。
以上のように、本発明のFET1では、ドレイン−ソース電極間電圧VDS=2.0V、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=2.0Vにおいて、ドレイン−ソース電極間電流IDS=2.0A/mmの電流、すなわちアンペアレベルの大電流を制御することができる。
以上のように、プラズマCVD法によって合成されたCNTをチャネル7に用いた本発明のFET1は、以下の特徴を有する。
(1)単位面積当たりのCNTの本数が1.0×10〜1.0×1012本/cmという高密度であるので、FET1全体、ソース及びゲート単位面積あたりにおけるチャネル数が飛躍的に増大し、電流値及び電流密度の大幅な向上が可能となる。
(2)個々のCNTが数mmという長尺であるために、連続するCNTによってドレイン−ソース電極間を接続することが可能となる。このため、短いCNT同士を複数繋いだ場合よりも、その接触抵抗が無い分だけ、チャネル抵抗の大幅な軽減が可能となる。
(3)チャネル7は複数のCNTが束ねられた複数本の束(バンドル)構造を形成しており、個々の束において、電子(正孔)輸送経路の最適化が見込まれる。
(4)チャネル7に分散処理を行わず、かつ、ゲート8に液体電解質を用いることで、ゲート8がチャネル7の厚み方向へ効率よく含浸し、CNTとゲート8の接触面積を大きくすることができる。このため、チャネル7を構成する各CNTの表面に電気二重層が形成され、ドレイン−ソース電極間にアンペアレベルの大電流を制御することができ、かつこれを制御可能なFETを提供することができる。
図12は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタのCNTの束構造による電子(正孔)輸送経路の最適化を示す概念図である。
CNTの束構造の周囲に、電気二重層によるゲートが形成されることで以下の効果が表れる。
1.送距離ショートカット経路
本発明のCNTは、その単位面積当たりのCNTの本数が1.0×10〜1.0×1012本/cmという高密度を有している。このような高密度なCNTの束構造内には、半導体性CNT同士が接触する接点が多く存在する。電子(正孔)は、接点による分岐の度に、ソース電極からドレイン電極までの輸送距離が最も短くなる経路を選択することになるので、結果としてショートカット経路が形成される。
2.高伝導チャネルシフト経路
上記のような高密度なCNTの束構造内には、半導体性CNTと金属性CNTが接触する接点も多く存在することになる。チャネル7に形成された電気二重層によって半導体性CNTから輸送される電子(正孔)が、ある接点による分岐において、より伝導度の高い金属性チャネルにシフトする経路が形成される。
3.欠陥チャネル迂回経路
上記のような高密度なCNTの束構造を採用することで、本来ならば電子(正孔)の輸送が行えない、破断点等を持つ欠陥CNTが存在する場合であっても、CNT同士の接触する接点による分岐において、欠陥が無いCNTに迂回する経路が形成される。
本発明のFET1では、上述の送距離ショートカット経路、高伝導チャネルシフト経路、欠陥チャネル迂回経路は、チャネル全体の電流の抵抗値を小さくするよう寄与するため、これらの効果によってドレイン−ソース間電流が飛躍的に増大するといえる。
以上より、プラズマCVD法によって合成したCNTをチャネル7に用いることで、ドレイン−ソース電極間にアンペアレベルの大電流を制御することができ、これを制御可能なFETの作成が可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る電界効果トランジスタ1は、ソース電極3及びドレイン電極4と、ソース電極3とドレイン電極4との間に設けられた複数の長尺CNTからなるチャネル7と、液体電解質からなるゲート8を具備しており、CNTの束群は、ソース電極3とドレイン電極4を連続して接続しているCNTを含む。
たとえば、本発明の電界効果トランジスタ1のチャネル7は、ゲートとドレイン電極との間の電圧がゼロの場合、体積抵抗率が1.3×10−3Ω・cm以下である。また、本発明のチャネル7を構成するCNTの束群は、ソース電極とドレイン電極との間の最短距離をなす直線に対して平行に配向し、かつ、前記カーボンナノチューブの束群の平均長さ(Lcnt)がゲート長(Lgate)以上である。
そして、かかる構成を有しているため、電界効果トランジスタ1がオンした場合であっても、体積抵抗率が小さく、アンペアレベルの大電流を制御することができる。また、ゲートが液体電解質であるため、低い電圧であっても液体電解質とチャネル7の表面に容易に電気二重層が生じ、低消費電力でアンペアレベルの大電流を制御することができる。さらに、ゲートが液体電解質であるため、CNTからなるチャネル7の表面と、液体電解質との間の密着性がよく、高い電子(正孔)移動度がもたらされ、応答性の高いトランジスタを実現することができる。
要するに、本実施形態では、電界効果トランジスタが、液体電解質からなるゲート8と、ソース電極3とドレイン電極4を連続して接続しているCNTを含む長尺でかつ高密度なCNTの束群からなるチャネル7とを備えているため、高出力、低消費電力、高速応答が実現される。
なお、上述した本発明の一実施形態に係るFET1の製造手順におけるステップS15とステップS16との間で、ソース電極3とドレイン電極4との間に比較的大きな電圧を印加してCNTからなるチャネル7に比較的大きな電流を制御することで、金属性CNTを選択除去し、チャネル7における金属製CNTの比率を下げるイニシャライズ処理を行うことは、適宜、行うことができる。
[第二実施形態]
以下、本発明の第二実施形態に係る電界効果トランジスタ2(以下、必要に応じ「FET2」と呼ぶ)について図面を適宜参照しつつ説明する。
[構成]
本発明の第二実施形態に係るFET2は、第一実施形態に係るFET1と同じ要素、即ち、基板2、ソース電極3、ドレイン電極4、導電性樹脂5、絶縁性樹脂6、チャネル7、ゲート8、ゲート参照電極9、及び配線10から構成される。第一実施形態と同一符号は同一の構成であるものとし、説明は省略する。
図13は、第二実施形態に係る電界効果トランジスタ2の構成の模式図である。第二実施形態に係るFET2は、そのチャネル27に用いられるCNTの束群が、第一実施形態に係るFET1のチャネル7に用いられるCNTの束群の配向と異なる点で相違する。
ここで、第二実施形態に係るFET2のチャネルの配向について説明する。
図14(a)は、チャネルとして電子(正孔)輸送方向に直交する方向に配置されたCNTの配向及び幾何的要件を説明する概念図である。
図14(a)に示すように、第二実施形態に係るFET2のチャネル27に用いるCNTの束群は、CNTの延伸方向がソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に直交するような配向を有するCNTから形成されている。
ソース電極3とドレイン電極4との間を結ぶ直線の方向は、ほぼ電子(正孔)の輸送方向であるともいえるから、図14(a)のCNTは、電子(正孔)の輸送方向に直交するような配向をもって配置されているといえる。
また、第二実施形態に係るFET2のチャネル27に用いられるCNTの束群は、第一実施形態と同様に、プラズマCVD法により合成される長尺かつ高密度のCNTの束群である。このため、従来の分散液を用いたチャネル(前述した図4(a))よりも導電性が高い。しかも、図4(c)に示す第二実施形態に係るCNTは、図4(b)の第一実施形態に比して、金属性CNTにより形成される導電経路を少なくできるため、リーク電流を抑制することができる。
また、本実施形態のチャネル27の構造を別の視点から見ると、チャネル27に用いられるCNTは、以下の要件(a)〜(c)を満たすともいえる。
(a)チャネル27に用いられるCNTは、以下の式(1)を満たすものが望ましい。
Wgate≦Lcnt ・・・(1)
上記のCNTの束群を構成するCNTの平均長さLcnt、ゲート幅Wgateは、図14(b)に概念図としたとおりである。
(b)チャネル27に用いられるCNTの束群の本数密度が、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
(c)CNTの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直行すること。
上記の要件(a)〜(c)について、以下、説明する。
要件(a)は、チャネル27に用いられるCNTの束群を構成するCNTの平均長さLcntが、ゲート幅Wgateよりも長い長尺CNTであることを意味する。チャネルを構成する個々のCNTには曲がりや捻りが存在するため、厳密には直線では無い。従って、必然的に本発明のCNTの束群を構成するCNTの平均長さLcntがゲート幅Wgateよりも長くなる。よって、チャネル27部分の実効的なチャネル幅(ゲート幅)を確保するために、かかる要件を有することが望ましい。
また、要件(b)は、チャネル27に用いられるCNTの本数密度が、1.0×10〜1.0×1012本/cmである。本発明のチャネル27に用いられるCNTは、後述する先端放電型ラジカルCVD法によって合成される。この構成により、ソース電極3とドレイン電極4との間で輸送される電子(正孔)は、高密度に隣接しているCNT間を移動するので、ソース電極3とドレイン電極4との間を金属性CNTの経路が少なくなるため、リーク電流を抑止することができる。
さらに、要件(c)は、CNTの束群の配向に関する要件である。
CNTの束群の配向を、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直交させることにより、ソース電極3とドレイン電極4との間を金属性CNTが連続して接続してしまうことをできるだけ回避し、リーク電流が流れることを抑制するように構成することができる。
[製造方法]
次に、第二実施形態に係るFET2の製造方法は、第一実施形態に係るFET1の製造方法と同様であるが、配置されるチャネル27に用いるCNTの配向が異なる点で相違する。即ち、第二実施形態に係るFET2のチャネル27は、CNTの延伸方向がソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に直交するような配向を有するCNTの束群から形成される。
[動作]
次に、第二実施形態に係るFET2の動作について図15及び図16を参照しつつ説明する。
図15は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタのCNTの束構造による電子(正孔)輸送経路の形成を示す概念図である。
本発明に係る一実施形態としてのトランジスタにおいては、電子(正孔)は、隣接するCNTに移りながら、CNT側壁上を移動して、ソース電極3とドレイン電極4の間を移動する。チャネル27は、ゲート幅方向に配向しているので、ゲート長方向に配向している場合に比べ、ソース電極3とドレイン電極4との間の金属性CNT12のみによる経路が少ない。よって、ゲート参照電極9とソース電極3との間に電圧を印加していない場合、図15(a)に示すように、電気二重層は形成されず、リーク電流は抑制される。
一方、ゲート参照電極9とソース電極3との間に電圧を印加した場合、各々のCNTのチャネル27に対して一括かつ均一に液体電解質からなるゲート8との界面に電気二重層19が形成される。この電気二重層19を介してCNTチャネル27に電界が作用することで、ソース電極3とドレイン電極4との間に流れる電流の制御が可能になる。図15(b)に示すように、半導体性CNT11の表面周囲に電気二重層19が形成され、隣接するCNTに移りながらソース電極3とドレイン電極4との間に電子(正孔)が輸送される。これらの効果によって、スイッチング作用が実現され、高出力の制御ができる。
図16は、本発明に係る一実施形態としての電界効果トランジスタの性能評価を示す図である。
ゲート8とソース電極3の間の電圧(以下、「ゲート参照電極−ソース電極間電圧」と呼ぶ)VGSを0.0V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vに設定し、ドレイン電極4とソース電極3の間の電圧(以下、「ドレイン−ソース電極間電圧」と呼ぶ)VDSを印加した際のドレイン電極4とソース電極3との間に流れる電流(以下、「ドレイン−ソース電極間電流」と呼ぶ)IDSが図16に示されている。
ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0.0Vの場合とゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0.5Vの場合とで、ドレイン−ソース電極間電流IDSに大差がない。これは、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.0V〜0.5Vの範囲では、チャネル27に十分に電気二重層が形成されていないためと考えられる。
その後、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが1.0V以上になると、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが大きくなるほどドレイン−ソース電極間電流IDSがよく流れることが図16からわかる。つまり、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=0.5V以上では、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vの順に大きくなるほど、ソース電極3とドレイン電極4の間の抵抗(VDS/IDS)は、2.0×10Ω、1.0×10Ω、55.5Ω、21.1Ωの順に小さくなり、第二実施形態のFET2がトランジスタとして機能していることがわかる。
なお、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGSが0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vの場合のFET2のオン抵抗値を、測定に用いたFET2の実際のゲート幅Wgate、厚み、ゲート長Lgateを考慮して体積抵抗率に換算すると、7.8×10−2、4.0×10−2Ω・cm、2.2×10−2Ω・cm、8.0×10−3Ω・cmとなる。
以上のように、第二実施形態のFET2では、ドレイン−ソース電極間電圧VDS=2.0V、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=2.0Vにおいて、ドレイン−ソース電極間電流IDS=95mA/mmの電流、即ち0.1アンペアレベルの電流を制御することができる。
なお、第二実施形態では、ゲート参照電極9に電圧を印加していない場合、ソース電極3とドレイン電極4との間に電圧を印加しても、チャネル27に電流(いわゆるリーク電流)がほとんど流れない(ドレイン−ソース電極間電圧VDS=2.0V、ゲート参照電極−ソース電極間電圧VGS=2.0Vにおいて、ドレイン−ソース電極間電流IDS=10mA以下程度のリーク電流)。これは、本発明のFET1において、チャネル27のCNTがゲート幅方向の配向をもって配置されているためである。
以上のように、第二実施形態のFET2は、リーク電流を抑制しつつ、0.1アンペアレベルの電流を制御することができる。
以上説明したように、第二実施形態では、第一実施形態と同様に、電界効果トランジスタ2は、ソース電極3と、ドレイン電極4と、ゲート8と、ソース電極3とドレイン電極4との間に設けられた複数の長尺CNTからなるチャネル27と、を具備しており、チャネル27に用いられるCNTは、自立型のCNT(分散液を用いて加工されていないCNT)であるので、分散液を用いておらず、不純物がないため、導電特性がよく、分散液を用いたチャネル27よりもより大きな電流を制御することができる。さらに、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に直交するように配置されており、ソース電極3とドレイン電極4との間を金属性CNTが連続して接続していないため、リーク電流をより抑制できるという効果を有する。
要するに、第二実施形態では、自立型のCNT(分散液を用いて加工されていないCNT)が、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に直交するように配置されているため、0.1アンペアレベルの電流を制御することができるうえに、リーク電流の抑制も可能である電界効果トランジスタが実現される。
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る電界効果トランジスタについて説明する。
本発明の第三実施形態は、第一実施形態に係るFET1及び第二実施形態に係るFET2とは、チャネルとなるCNTの配向が更に異なっている。
すなわち、図示しないが、第三実施形態の電界効果トランジスタのチャネルは、そのCNTの束群の配向が、ソース電極3とドレイン電極4との最短距離となる直線に対して平行(第一実施形態)でも、直交(第二実施形態)でもなく、これらの中間の配向を有している。
このため、CNTの束群の中間の配向として、これを上記平行方向に近づければ、電界効果トランジスタでアンペアレベルの電流を制御することができるようになる一方で、その配向を上記直交方向に近づければ、0.1アンペアレベルの電流制御と低リーク電流を達成することができるようになる。
したがって、電界効果トランジスタに要求される仕様に応じて、チャネルとなるCNTの配向を適宜に選択すればよい。
なお、この場合の電界効果トランジスタの製法については、図9のステップS12において、CNTの束群の切り取りの形状や基板2上への固定の向きに関し、上記所望の配向が達成できるように適宜に調整を行えばよい。
以上により、第三実施形態に係る電界効果トランジスタにおいては、チャネルのCNTの配向を変えるだけで、電流値に特化した構成や、スイッチング作用に特化した構成を非常に簡便に提供することができる。
なお、上述した本発明の各実施形態の製造手順において、ステップS15とステップS16との間で、ソース電極3とドレイン電極4との間に比較的大きな電圧を印加してCNTからなるチャネル27に比較的大きな電流を流すことで、金属性CNTを選択除去し、チャネル27における金属性CNTの比率を下げるイニシャライズ処理を行うことは、適宜、行うことができる。
さらに、金属性CNTを選択的に除去し、半導体性CNTのみのCNTをチャネル27として用いることもできる。この場合、金属性CNTを全て焼ききる程の大きな電圧を印加するようなイニシャライズが必要となる。この半導体性CNTのみからなるCNTをチャネル27に用いることにより、リーク電流を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1・・・電界効果トランジスタ
2・・・基板
3・・・ソース電極
4・・・ドレイン電極
5・・・導電性樹脂
6・・・絶縁性樹脂
7・・・チャネル
8・・・ゲート
9・・・ゲート参照電極
10・・・配線
11・・・半導体性CNT
12・・・金属性CNT
13・・・ゲート絶縁層
14・・・分散溶媒
15・・・界面活性剤
16・・・金属微粒子
17・・・欠陥のあるCNT
18・・・電子(正孔)の移動方向
19・・・電気二重層
20・・・壁
30・・・プラズマCVD装置
31・・・チャンバー
32・・・基板加熱部
33・・・基板
34・・・基板ホルダ
35・・・マイクロ波導波管
36・・・アンテナ
37・・・原料ガス
38・・・原料ガス導入部
39・・・原料ガス排出部
40・・・触媒
41・・・先端部
42・・・プラズマ発生領域

Claims (10)

  1. ソース電極と、ドレイン電極と、ゲートと、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたチャネルと、を具備する半導体装置の製造方法であって、
    密度が1.0×10本/cm以上であるカーボンナノチューブの束群が、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の最短距離をなす直線に対して所定の方向に配向するように、前記チャネルとして基板上に配置される工程と、
    前記基板上に、前記ソース電極と、前記ドレイン電極と、前記ゲートと、が形成される工程と、
    からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 前記カーボンナノチューブの束群は、下記の要件(a)乃至(c)を満たすよう、製造される、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
    (a)前記カーボンナノチューブの束群は、以下の式(1)を満たす
    Lgate≦Lcnt (1)
    前記の式(1)において、
    Lgateは、前記ゲートの長さを示し、
    Lcntは、前記カーボンナノチューブの束群を構成するカーボンナノチューブの平均長さを示す数字である。
    (b)前記カーボンナノチューブの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
    (c)前記カーボンナノチューブの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であること。
  3. 前記カーボンナノチューブの束群は、下記の要件(d)乃至(f)を満たすよう製造される、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
    (d)前記カーボンナノチューブの束群は、以下の式(2)を満たす
    Wgate≦Lcnt (2)
    前記の式(2)において、
    Wgateは、前記ゲートの幅を示し、
    Lcntは、前記カーボンナノチューブの束群を構成するカーボンナノチューブ平均長さを示す数字である。
    (e)前記カーボンナノチューブの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
    (f)前記カーボンナノチューブの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直交すること。
  4. 前記ゲートは、液体電解質からなるように製造される、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
  5. 前記カーボンナノチューブの束群を用意する工程において、先端放電型ラジカルCVD法によってカーボンナノチューブの束群を準備する工程を含む、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
  6. ソース電極と、ドレイン電極と、ゲートと、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたチャネルと、を具備する半導体装置であって、
    密度が1.0×10本/cm以上であるカーボンナノチューブの束群が前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の最短距離をなす直線に対して所定の方向に配向するように、前記チャネルとして基板上に配置され、
    前記基板上に、前記ソース電極と、前記ドレイン電極と、前記ゲートと、が形成された、
    ことを特徴とする半導体装置。
  7. 前記カーボンナノチューブの束群は、下記の要件(a)乃至(c)を満たす、ことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
    (a)前記カーボンナノチューブの束群は、以下の式(1)を満たす
    Lgate≦Lcnt (1)
    前記の式(1)において、
    Lgateは、前記ゲートの長さを示し、
    Lcntは、前記カーボンナノチューブの束群を構成するカーボンナノチューブの平均長さを示す数字である。
    (b)前記カーボンナノチューブの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
    (c)前記カーボンナノチューブの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して平行であること。
  8. 前記カーボンナノチューブの束群は、下記の要件(d)乃至(f)を満たす、ことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
    (d)前記カーボンナノチューブの束群は、以下の式(2)を満たす
    Wgate≦Lcnt (2)
    前記の式(2)において、
    Wgateは、前記ゲートの幅を示し、
    Lcntは、前記カーボンナノチューブの束群を構成するカーボンナノチューブの平均長さを示す数字である。
    (e)前記カーボンナノチューブの束群の密度は、1.0×10〜1.0×1012本/cmであること。
    (f)前記カーボンナノチューブの束群の配向は、ソース電極3とドレイン電極4との間の最短距離をなす直線に対して直交すること。
  9. 前記ゲートは、液体電解質からなる、ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
  10. 前記カーボンナノチューブの束群は、先端放電型ラジカルCVD法によって合成させた、ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置。
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