JP2014148623A - 感圧接着剤組成物、感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び表示装置 - Google Patents

感圧接着剤組成物、感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び表示装置 Download PDF

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拓朗 熊本
Akiko Kitagawa
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Abstract

【課題】透明度が高く、適度な接着性および引張強度を両立させた感圧接着剤組成物及び感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該感圧接着剤組成物又は該感圧接着性シート状成形体を備えた表示装置とを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる感圧接着剤組成物及び感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、並びに、該感圧接着剤組成物又は該感圧接着性シート状成形体を備えた表示装置とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、感圧接着剤組成物、感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、該感圧接着剤組成物又は該感圧接着性シート状成形体を備えた表示装置に関する。
液晶表示装置、プラズマテレビ、及びプロジェクションスクリーン等の映像提供機器の映像表示部は、光源からの光(映像光)を観察者にとって適切で見易いものにする等の目的で、複数の部材を積層して構成されている。このような積層構造を有する映像表示部を構成する各部材を貼り合わせる接着剤には、適度な接着力に加えて高い透明度が求められる。
透明な接着剤を得るには、例えばアクリル樹脂などの透明な樹脂を用いることが考えられる。アクリル樹脂を用いた接着剤に関する技術として、例えば特許文献1には、(メタ)アクリレート系ポリマーと、金属水酸化物とを有する感圧接着性組成物であって、前記(メタ)アクリレート系ポリマーが、イオン架橋構造を有し、前記金属水酸化物が周期表第2族または第13族の金属の水酸化物であり、前記(メタ)アクリレート系ポリマー100重量部に対する前記金属水酸化物の配合割合が50〜200重量部である感圧接着性組成物が開示されている。
特開2002−322447号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように、有色のフィラーを添加した接着剤は、高い透明度を求められる用途には不向きである。また、従来技術では、高い透明度に加えて、適度な接着力および引張強度を両立させることが困難であった。
そこで、本発明は、適度な接着力および引張強度を両立させた感圧接着剤組成物及び感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該感圧接着剤組成物又は該感圧接着性シート状成形体を備えた表示装置とを提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる、感圧接着剤組成物(F)である。
本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応」とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体を得る重合反応を意味する。
本発明の第2の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、を含む混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる感圧接着性シート状成形体(G)である。
本発明の第3の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程、を含む、感圧接着剤組成物(F)の製造方法である。
本発明の第4の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物をシート状に成形した後、又は、該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程、を含む、感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法である。
本発明の第5の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる感圧接着剤組成物(F)又は上記本発明の第2の態様にかかる感圧接着性シート状成形体(G)を備えた表示装置である。
本発明によれば、適度な接着力および引張強度を両立させた感圧接着剤組成物及び感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該感圧接着剤組成物又は該感圧接着性シート状成形体を備えた表示装置とを提供することができる。
1.感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)
本発明の感圧接着剤組成物(F)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)(以下、単に「多官能エポキシ化合物(B)」という場合がある。)と、タッキファイヤー(C)と、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなるものである。さらに、上記混合組成物中において、多官能エポキシ化合物(B)による、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合体の架橋反応が行われてなるものが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合体の架橋反応」とは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)同士の架橋反応、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体同士の架橋反応、及び、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体との架橋反応のうち、一又は複数の架橋反応を意味する(以下、同じ。)。
また、本発明の感圧接着性シート状成形体(G)は、上記混合組成物をシート状に成形した後、又は上記混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなるものである。さらに、上記混合組成物中において、多官能エポキシ化合物(B)による、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合体の架橋反応が行われてなるものが好ましい。
このような感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を構成する物質について以下に説明する。
<(メタ)アクリル樹脂組成物(A)>
本発明に用いる(メタ)アクリル樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含んでいる。なお、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を得る際には、上述したように少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われる。当該重合反応を行うことによって(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体は(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の成分と混合及び/又は一部結合する。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量%として、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が50質量%以上80質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が55質量%以上75質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が25質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の含有比率を上記範囲とすることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を成形することが容易になる。(メタ)アクリル樹脂組成物(A)に含まれる成分について、以下により詳細に説明する。
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
本発明に用いることができる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、及び、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸n−プロピル(同−37℃)、アクリル酸n−ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸n−ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸n−ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸n−オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸n−オクチル(同−25℃)、メタクリル酸n−デシル(同−49℃)などを挙げることができる。中でも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下となるような量で重合に供する。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
次に、有機酸基を有する単量体単位(a2)について説明する。有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は特に限定されないが、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができる。また、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
単量体(a2m)としては、上に例示した有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、中でも、アクリル酸又はメタクリル酸を有する単量体が特に好ましい。これらの単量体は工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。なお、単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に供する。有機酸基を有する単量体(a2m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)を含有していてもよい。上記有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用することが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を有する単量体単位(a3)以外に、上述した単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン系単量体、非共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸n−プロピル(同25℃)、メタクリル酸n−ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレンと同義)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
非共役ジエン系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
単量体(a4m)は、それから導かれる単量体単位(a4)の量が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるような量で重合に供する。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述した、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)、有機酸基を有する単量体(a2m)、必要に応じて使用する、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、必要に応じて使用するこれらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)を共重合することによって特に好適に得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得る際の重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。ただしこれらの重合方法の中で溶液重合が好ましく、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。当該熱重合開始剤は特に限定されず、例えば過酸化物重合開始剤やアゾ化合物重合開始剤を用いることができる。
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、単量体100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましい。
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など)は、特に制限がない。
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は特に限定されない。例えば、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することによって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、標準ポリスチレン換算で10万以上100万以下の範囲にあることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、重量平均分子量(Mw)が異なる2種の(メタ)アクリル酸エステル重合体を混合して用いることが好ましい。この場合、重量平均分子量(Mw)が比較的大きな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を適量用いることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適切な引張強度を持たせやすくなる。一方、重量平均分子量(Mw)が比較的小さな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を適量用いることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適度な柔軟性を持たせやすくなる。すなわち、重量平均分子量(Mw)が異なる2種の(メタ)アクリル酸エステル重合体を混合して用いることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適度な引張強度と柔軟性とを両立させやすくなる。
この場合、重量平均分子量(Mw)が比較的大きな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は50万以上100万以下が好ましく、重量平均分子量(Mw)が比較的小さな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は10万以上50万未満が好ましい。また、両者の含有量比は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)全体を100質量%として、重量平均分子量(Mw)が比較的大きな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が15〜35質量%、重量平均分子量(Mw)が比較的小さな(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が65〜85質量%であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、重量平均分子量(Mw)が異なる3種以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体を混合して用いてもよい。
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α1))
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、及び、これらと共重合可能な有機酸基を有する単量体(a6m)の混合物としてもよい。
上記単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び所望により共重合させることができる有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)も含む混合物としてもよい。
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a3m)、及び単量体(a4m)として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。単量体(a7m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a7m)の比率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
<多官能エポキシ化合物(B)>
次に、多官能エポキシ化合物(B)について説明する。多官能エポキシ化合物(B)は、官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物である。多官能エポキシ化合物(B)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中の有機酸基と反応して架橋構造を形成し得る。また、同様に、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が有機酸基を有する単量体を含有している場合、該有機酸基と反応し得るため、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体に架橋構造を形成し得る。このような多官能エポキシ化合物(B)を用いて共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の引張強度を向上させやすくなる。
しかしながら、多官能エポキシ化合物(B)を多量に添加すると、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)が硬くなり、接着力が弱まる。本発明によれば、多官能エポキシ化合物(B)とタッキファイヤー(C)とを所定量ずつ併用することによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に感圧接着剤としての適正な接着力および引張強度を付与しやすくなる。
本発明に用いることができる多官能エポキシ化合物(B)は、25℃における粘度が600mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましく、400mPa・s以下であることがさらに好ましい。多官能エポキシ化合物(B)の粘度を上記範囲とすることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の前駆体である混合組成物中に多官能エポキシ化合物(B)が均一に分散されやすくなり、多官能エポキシ化合物(B)による上記架橋構造が均一に形成されやすくなると考えられる。なお、多官能エポキシ化合物(B)の粘度は、以下に説明するようにして測定したものを意味する。
(粘度測定方法)
B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行う。
(1)常温の環境で測定対象を300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)測定対象が入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の測定対象に沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、測定対象の液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表1に示すように、選択したロータNo.と回転数とから決まる。
Figure 2014148623
また、本発明に用いることができる多官能エポキシ化合物(B)は、官能基を2以上10000以下有しており、官能基の数は2以上1000以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。多官能エポキシ化合物(B)の官能基の数が上記範囲であることで、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適切な引張強度を備えさせやすくなる。
本発明に用いることができる多官能エポキシ化合物(B)の具体例としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、少量でも効果的に架橋構造を形成し得ることから、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。多官能エポキシ化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能エポキシ化合物(B)の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、0.2質量部以上13質量部以下であり、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。多官能エポキシ化合物(B)の使用量を上記範囲とすることによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に感圧接着剤としての適正な接着力および引張強度を付与しやすくなる。
<重合開始剤>
感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)を得る際、上述したように(メタ)アクリル樹脂組成物(A)に含まれる成分が重合する。当該重合反応を促進するため、重合開始剤を用いることが好ましい。当該重合開始剤としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられる。ただし、得られる感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に強い接着力を付与する等の観点からは、有機過酸化物熱重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができる。ただし、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないものが好ましい。また、有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
上記重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.15質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量を上記範囲とすることによって、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率を適正な範囲にし易くなり、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率が95質量%以上であれば、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。また、重合開始剤の使用量を上記範囲とすることによって、重合反応が過度に進行して感圧接着性シート状成形体(G)が平滑なシート状にならずに材料破壊を起こすという事態を防止し易くなる。
<タッキファイヤー(C)>
次に、タッキファイヤー(C)について説明する。感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適切な引張強度を備えさせるために、上記多官能エポキシ化合物(B)を添加して架橋構造を形成することが考えられる。しかしながら、このように架橋構造によって必要な強度を確保しようとすると、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の接着性が劣る虞があった。本発明によれば、上記多官能エポキシ化合物(B)とタッキファイヤー(C)とを所定量で併用することによって、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に適正な接着力および引張強度を付与しやすくなる。
タッキファイヤー(C)としては、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と相溶し、溶剤を含まない公知のタッキファイヤー(粘着付与剤)を特に限定することなく用いることができる。例えば、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー、石油樹脂系タッキファイヤーをタッキファイヤー(C)として用いることができる。
ロジン系タッキファイヤーとしては、例えば、松ヤニや松根油中のアビエチン酸を主成分とするロジン酸とグリセリンやペンタエリスリトールとのエステル、及び、これらの水添物、不均化物を挙げられる。より具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジン、ロジンエステル(ロジンジオール)などを挙げられる。
テルペン系タッキファイヤーとしては、松に含まれるテルペン油やオレンジの皮などに含まれる天然のテルペンを重合したものを挙げられる。より具体的には、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂などを挙げられる。
石油樹脂系タッキファイヤーとしては、石油を原料とした脂肪族、脂環族、芳香族系の樹脂を挙げられる。より具体的には、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、スチレン系石油樹脂などが挙げられる。
タッキファイヤー(C)としては、ロジン系タッキファイヤーが好ましく、ロジンエステルがより好ましい。
本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)に使用するタッキファイヤー(C)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、3質量部以上20質量部以下であり、4質量部以上18質量部以下であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。タッキファイヤー(C)の含有量が上記範囲の上限を超えると、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の透明度を低下させる虞がある。一方、タッキファイヤー(C)の含有量が上記範囲の下限未満であると、タッキファイヤー(C)を添加することによって感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の接着力を向上させる効果を十分に得られない虞がある。
<諸性能>
本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)は透明な(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を主成分としており、適度な接着力を有している。また、本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の透明度を過度に損なう種類及び量のフィラーを含んでいないため、高い透明度を有している。さらに、本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)は、多官能エポキシ化合物(B)およびタッキファイヤー(C)を所定量ずつ含むことによって、適正な接着力と引張強度とを有している。
<添加剤>
本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)には、これまでに説明した物質以外にも、上述した本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の諸性能を満足できる範囲で、公知の各種添加剤を添加することができる。公知の添加剤としては、ガラス繊維;外部架橋剤;アクリル系ポリマー粒子などの増粘剤;リン酸エステルなどの難燃剤;などの、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の透明度を過度に損なわない添加剤を挙げることができる。
<用途>
上記のように、本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)は高い透明度を有している。したがって、本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)は、表示装置の表示部を構成する部材の貼合に好適である。
2.製造方法
次に、感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法について説明する。
本発明の感圧接着剤組成物(F)は、これまでに説明した各物質を混合して混合組成物を作製した後、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行うことにより得ることができる。
すなわち、本発明の感圧接着剤組成物(F)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、多官能エポキシ化合物(B)と、タッキファイヤー(C)と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程を含んでいる。さらに、多官能エポキシ化合物(B)による、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合体の架橋反応を行う工程を含んでいることが好ましい。
なお、その他に使用できる物質や各物質の好ましい含有比率等は上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の感圧接着性シート状成形体(G)は、これまでに説明した各物質を混合して混合組成物を作製し、該混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行うことにより得ることができる。
すなわち、本発明の感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、多官能エポキシ化合物(B)と、タッキファイヤー(C)と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物をシート状に成形した後、又は、該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程を含んでいる。さらに、多官能エポキシ化合物(B)による、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合体の架橋反応を行う工程を含んでいることが好ましい。
なお、その他に使用できる物質や各物質の好ましい含有比率等は上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の感圧接着剤組成物(F)及び感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法において、上記重合反応を行う際には加熱することが好ましい。当該加熱には、例えば、熱風、電気ヒーター、赤外線などを用いることができる。このときの加熱温度は、重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合が進行する温度が好ましい。加熱温度の好ましい範囲は用いる重合開始剤の種類等により異なるが、例えば100℃以上200℃以下が好ましく、130℃以上180℃以下がより好ましい。
また、本発明の感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法において、上記混合組成物をシート状に成形する方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、離型処理したポリエステルフィルムなどの工程紙の上に上記混合組成物を塗布してシートを成形する方法、二枚の離型処理した工程紙間に上記混合組成物を挟んでロールの間を通して押圧することでシートを成形する方法、及び、押出機を用いて上記混合組成物を押出し、その際にダイスを通して厚さを制御することでシートを成形する方法などが挙げられる。
感圧接着性シート状成形体(G)の厚さは特に限定されないが、0.05mm以上5mm以下にすることができ、0.08mm以上4.5mm以下であることが好ましく、0.1mm以上4mm以下であることがより好ましい。感圧接着性シート状成形体(G)の厚さを上記範囲の上限以下とすることによって、感圧接着性シート状成形体(G)の透明度を高めやすくなる。また、感圧接着性シート状成形体(G)の厚さを上記範囲の下限以上とすることによって、取り扱いやすくなる。
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
<透明度>
後に説明するようにして感圧接着性シート状成形体を作製し、これを5枚重ねて名刺の上に乗せた。名刺の文字を読み取れた場合を「○」、読み取れなかった場合を「×」として、結果を表2に示した。
<せん断接着力>
後に説明するようにして2枚の離型PETフィルム(離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム。以下同じ。)で挟持された感圧接着性シート状成形体を作製し、これを20mm×25mmに切り出した試験片を用意した。
メチルエチルケトン(MEK)を含ませたキムワイプでアルミニウム板の一方の面を洗浄し、洗浄した面に試験片を貼り付けた。このとき、試験片は2枚の離型PETフィルムで挟持されているので、一方の離型PETフィルムを剥がしてアルミニウム板に貼合し、他方の離型PETフィルム上から圧着ローラーで押圧(1cm/秒の速さで1往復)した。
その後、他方の離型PETフィルムを剥がして空気を噛み込まないようにガラス板を貼り付け、23℃下で2時間放置した。その後、引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−500)にロードセル(1kN)・冶具をセットし、ガラス板の下部を挟んで引張試験機の下チャックで固定した。
次に、アルミニウム板に付されたワイヤーを引張試験機の上フックに掛け、引張速度50mm/分でガラス板及びアルミニウム板を上下に、試験片の長方形の長手方向にずらすように引っ張った。このときの試験力の最大値を読み取り、下記式からせん断接着力を算出した。その結果を表2に示した。
せん断接着力[N/cm]=最大試験力(N)/試験片の接着面の片面の面積(cm
<アルミニウム板引き剥がし力>
後に説明するようにして2枚の離型PETフィルムで挟持された感圧接着性シート状成形体を作製し、一方の離型PETフィルムを剥がした。次に、感圧接着性シート状成形体の離型PETフィルムを剥がした側の面にアルミニウムシートを貼り付けて積層体シートを作製した。この積層シートを10mm×100mmの大きさに切り出した試験片を用意した。
次に、当該試験片のうち感圧接着性シート状成形体に貼られているもう一方の離型PETフィルムを剥がし、離型PETフィルムを剥がした面にアルミニウム板を貼り付けて、積層シートの上から圧着ローラーで押圧(200g、1往復)して試験片とアルミニウム板とを接着させた。その後、引張試験機にて試験片とアルミニウム板とを、試験片の長方形の短手方向にて、試験片を180°折り曲げながら反対方向(ともに試験片とアルミニウム板との貼合面に平行な方向)に100mm/分の引張速度で引っ張り、アルミニウム板から試験片が剥がれるときの最大試験力[N]を測定し、それを試験片の長方形の短手方向の長さである1cm(=10mm)で除して、アルミニウム板引き剥がし力[N/cm]を求めた。その結果を表2に示した。
<感圧接着性シート状成形体の作製>
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.015部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)の重量平均分子量(Mw)は800,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は2.5であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−2)を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−2)の重量平均分子量(Mw)は270,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は3.1であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
次に、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)35部と、重合開始剤(1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度は150℃である。))0.2部と、多官能エポキシ化合物(B)(ナガセケムテックス株式会社製、DLC−402)3部と、タッキファイヤー(C)(荒川化学工業株式会社製、商品名「KE−359」、超淡色ロジンエステル)10部と、を電子天秤で計量し、これらを上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)15部、及び上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−2)50部と混合した。
混合には、恒温槽(ビスコメイト 150III、東機産業株式会社製)及びホバートミキサー(ACM−5LVT型、株式会社小平製作所製、容量:5L)を用いた。まず、ホバート容器の温調を23℃に設定し、真空(−0.1MPaG)にして、回転数目盛を3にして30分間攪拌した。その後、ホバート容器の温調を50℃に設定し、真空(−0.1MPaG)にして、回転数目盛を3にして30分間攪拌し、混合組成物を得た。
次に、上記混合組成物を、厚さ75μmの離型PETフィルム上に垂らし、当該混合組成物上にさらに、厚さ75μmの他の離型PETフィルムを被せた。混合組成物が離型PETフィルムに挟持されたこの積層体を、間隔を500μmに調整した2つのロールの間に通し、混合組成物をシート状に成形した。その後、当該積層体をオーブンに投入し、120℃で15分間加熱した。この加熱工程によって、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合反応させ、またほぼ同時に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−2)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造単位を含む重合体を架橋反応させ、感圧接着性シート状成形体(以下、単に「シート」と表記する。)(G1)を得た。なお、シート(G1)中の残存単量体量から(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
(実施例2〜7、及び比較例1〜4)
各物質の配合を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜7に係るシート(G2〜G7)、及び比較例1〜4に係るシート(GC1〜GC4)を作製した。
Figure 2014148623
表2に示したように、実施例にかかるシート(G1〜G7)はいずれも透明度が高く、せん断接着力およびアルミニウム板引き剥がし力が強かった。せん断接着力が高かったことから、実施例にかかるシートはある程度の引張強度を有しているといえる。すなわち、実施例にかかるシートは、適度な接着力および引張強度を両立できていた。
一方、タッキファイヤーを用いなかった比較例1にかかるシート(GC1)はアルミニウム板引き剥がし力が低かったことから、接着力が低くかったと考えられる。タッキファイヤーを本発明の規定量より多量に用いた比較例2にかかるシート(GC2)は透明度が低くなった。多官能エポキシ化合物の配合量が本発明の規定量より少量であった比較例3にかかるシート(GC3)はせん断接着力が低かったことから、引張強度が低かったと考えられる。多官能エポキシ化合物を本発明の規定量より多量に用いた比較例4にかかるシート(GC4)はアルミニウム板引き剥がし力が低かったことから、接着力が低くかったと考えられる。

Claims (5)

  1. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、
    タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む混合組成物中において、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる、感圧接着剤組成物(F)。
  2. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、
    タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる感圧接着性シート状成形体(G)。
  3. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、
    タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む混合組成物を作製する工程、並びに、
    前記混合組成物中において、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程、
    を含む、感圧接着剤組成物(F)の製造方法。
  4. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    官能基を2以上10000以下有する多官能エポキシ化合物(B)を0.2質量部以上13質量部以下と、
    タッキファイヤー(C)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む混合組成物を作製する工程、並びに、
    前記混合組成物をシート状に成形した後、又は、前記混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応を行う工程、
    を含む、感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法。
  5. 請求項1に記載の感圧接着剤組成物(F)又は請求項2に記載の感圧接着性シート状成形体(G)を備えた表示装置。
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