JP2014147900A - 多孔質膜の製造方法および製造装置 - Google Patents

多孔質膜の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させる工程を有する多孔質膜前駆体の製造において、多孔質膜の異形化や工程トラブルを防止する。
【解決手段】親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された中空糸膜前駆体(多孔質膜前駆体)30を加熱容器11に導入して走行させ、加熱する際に、加熱容器11内に設けられた駆動ロール14a,14eを有する走行手段により、中空糸膜前駆体30を加熱容器11内で走行させ、その際、駆動ロール14a,14eのうち、最も上流側に配置された駆動ロール14aよりもさらに上流側を走行する中空糸膜前駆体30に加わる張力を張力検出手段40で検出する。検出された検出結果に応じて、最も上流側に配置された駆動ロール14aの回転速度を制御手段50により制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、中空糸膜などの多孔質膜の製造方法および製造装置に関する。
食品工業分野、医療分野、電子工業分野等の分野における有用成分の濃縮、回収、不要成分の除去、造水等には、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、フッ素系樹脂等からなり、例えば湿式または乾湿式紡糸により製造された多孔質の中空糸膜が、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透濾過膜等に多用されている。
湿式または乾湿式紡糸により中空糸膜を製造する場合には、まず、疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーを含む製膜原液を調製する。ついで、この製膜原液を環状に吐出し、凝固液中で凝固させる製膜工程により、凝固物、すなわち中空糸膜前駆体を形成する。なお、製膜原液は空気と接触する空走部を経て、凝固液中へ導入されても(乾湿式紡糸法)、直接凝固液に導入されても(湿式紡糸法)よい。また、組紐または編紐などの多孔質基材(支持体)の外周に製膜原液を塗布したものを凝固液中で凝固させ、多孔質基材を備えた中空糸膜前駆体を形成してもよい。
ここで製膜工程後の中空糸膜前駆体の膜中には、通常、親水性ポリマーが溶液の状態で残存している。このように親水性ポリマーが膜中に残存していると、中空糸膜は高い透水性(膜通水能)を発揮することが困難である。
そこで、次亜塩素酸塩などの酸化剤を含む薬液に製膜工程後の中空糸膜前駆体を浸漬し、中空糸膜前駆体に薬液を保持させた後、薬液を保持した中空糸膜前駆体を加熱し、中空糸膜前駆体中に残存する親水性ポリマーを分解することが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。薬液を保持した中空糸膜前駆体を加熱する方法としては、ガイドロールを用いて中空糸膜前駆体を高温に保持された加熱容器の内部に導入し、走行させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2005−220202号公報 特開2012−229380号公報
しかしながら、高温に保持された加熱容器に導入して走行させる方法で中空糸膜前駆体を加熱すると、得られる中空糸膜が細形化、扁平化するなど異形化することがあった。異形化した中空糸膜は所望の性能が得られにくいため、製品から除外される。また、中空糸膜前駆体が弛み、ガイドロールから外れるなどの工程トラブルが生じることがあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させる工程を有する多孔質膜前駆体の製造において、多孔質膜の異形化や工程トラブルを防止できる、多孔質膜の製造方法および製造装置の提供を目的とする。
本発明は以下の構成を有する。
[1]親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させ、前記多孔質膜前駆体を加熱する加熱工程を有する多孔質膜の製造方法であって、
前記加熱工程では、前記加熱容器内に設けられた少なくとも1つの駆動ロールを有する走行手段により、前記多孔質膜前駆体を前記加熱容器内で走行させ、
前記駆動ロールのうち、最も上流側に配置された駆動ロールよりもさらに上流側を走行する前記多孔質膜前駆体に加わる張力を検出し、検出された検出結果に応じて、最も上流側に配置された前記駆動ロールの回転速度を制御する、多孔質膜の製造方法。
[2]親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された多孔質膜前駆体を加熱する加熱装置を有する多孔質膜の製造装置であって、
前記加熱装置は、
前記多孔質膜前駆体が導入されて走行する加熱容器と、
前記加熱容器内に設けられた少なくとも1つの駆動ロールを有し、前記多孔質膜前駆体を前記加熱容器内で走行させる走行手段と、
前記駆動ロールのうち、最も上流側に配置された駆動ロールよりもさらに上流側を走行する前記多孔質膜前駆体に加わる張力を検出する張力検出手段と、
該張力検出手段により検出された検出結果に応じて、最も上流側に配置された前記駆動ロールの回転速度を制御する制御手段と、
を有する、多孔質膜の製造装置。
[3]前記加熱装置は、
常圧の飽和水蒸気を前記加熱容器内に供給することにより、前記加熱容器内を加熱する水蒸気供給手段と、
前記飽和水蒸気を前記加熱容器から排出する水蒸気排出手段と、
をさらに有し、
前記水蒸気供給手段は、前記加熱容器の上部から前記飽和水蒸気を供給し、
前記水蒸気排出手段は、前記加熱容器の下部から前記飽和水蒸気を排出する、[2]に記載の多孔質膜の製造装置。
[4]前記加熱容器には、前記多孔質膜前駆体が導入される入口部と導出される出口部とが形成され、
前記入口部と出口部は、前記加熱容器の下部に形成されている、[3]に記載の多孔質膜の製造装置。
本発明の製造方法および製造装置によれば、多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させる工程を有する多孔質膜の製造において、多孔質膜の異形化や工程トラブルを防止できる。
第1実施形態例における加熱装置の一例を示す概略構成図である。 図1の加熱装置における水蒸気供給手段と、走行手段と、薬液槽との位置関係を説明する斜視図である。 図1の加熱装置における中空糸膜前駆体の走行経路を説明する斜視図である。 ガイドバーが取り付けられた走行ロールの一例を示す斜視図である。 第2実施形態例における加熱装置の他の一例と、該加熱装置の上流側に設けられた薬液処理装置等を示す概略構成図である。
本発明の多孔質膜の製造方法は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させ、多孔質膜前駆体を加熱する加熱工程を有する多孔質膜の製造方法である。
第1実施形態例では、加熱工程の一例として、加熱容器内に導入され走行する多孔質膜前駆体に対して、酸化剤を含む加熱した薬液を接触させることで、多孔質膜前駆体中に残存する親水性ポリマーを酸化剤により分解する工程を示して、本発明を詳細に説明する。また、多孔質膜の一例として中空糸膜を例示して、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書では、加熱工程後の洗浄工程が終了したものを中空糸膜(多孔質膜)と言い、洗浄工程が終了する前の段階のものを中空糸膜前駆体(多孔質膜前駆体)と言う。
<第1実施形態例>
第1実施形態例の製造方法および製造装置について、順次説明する。
[製膜工程]
製膜工程は、中空糸膜前駆体を形成する工程である。
製膜工程では、まず、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を調製する。ついで、この製膜原液を環状の吐出口が形成されたノズルから凝固液中に吐出し、凝固液中で凝固させる製膜工程により、中空糸膜前駆体を形成する。
製膜工程は、製膜原液が空気と接触する空走部を経て、凝固液中へ導入される乾湿式紡糸法でも、直接凝固液に導かれる湿式紡糸法のいずれにより行ってもよい。また、ここで製造する中空糸膜前駆体の構成には特に制限はなく、例えば多孔質基材を備えたものでも、多層構造であって、取扱時の擦れ等に対して耐久性のあるものでもよい。
なお、多孔質基材の例としては、特に限定されるものではないが、各種の繊維で製紐された中空状の編紐や組紐等が挙げられ、各種素材を単独または組み合わせて用いることができる。中空編紐や組紐に使用される繊維として、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられ、また繊維の形態は、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸のいずれであってもよい。
疎水性ポリマーは、凝固して中空糸膜前駆体を形成し得るものであればよく、そのようなものであれば特に制限なく使用できるが、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂の共重合体を使用してもよいし、これら樹脂や共重合体の一部に置換基を導入したものも使用できる。また、分子量などが異なる同種のポリマーをブレンドして用いても構わないし、2種以上の異なる種類の樹脂を混合して使用してもよい。これらのなかでフッ素系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデンやフッ化ビニリデン単体と他の単量体からなる共重合体は、次亜塩素酸などの酸化剤に対する耐久性が優れている。よって、例えば後述の加熱工程などで、酸化剤により処理されるような中空糸膜前駆体を製造する場合には、疎水性ポリマーとしてフッ素系樹脂を選択することが好適である。
親水性ポリマーは、製膜原液の粘度を中空糸膜の形成に好適な範囲に調整し、製膜状態の安定化を図るために添加されるものであって、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンなどが好ましく使用される。これらの中でも、中空糸膜の孔径の制御や中空糸膜の強度の点から、ポリビニルピロリドンやポリビニルピロリドンに他の単量体が共重合した共重合体が好ましい。
また、親水性ポリマーには、2種以上の樹脂を混合して使用することもできる。例えば親水性ポリマーとして、より高分子量のものを用いると、膜構造の良好な中空糸膜を形成しやすい傾向がある。一方、低分子量の親水性ポリマーは、後述の親水性ポリマー除去工程において中空糸膜前駆体からより除去されやすい点で好適である。よって、目的に応じて、分子量が異なる同種の親水性ポリマーを適宜ブレンドして用いてもよい。
上述した疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーをこれらが可溶な溶媒(良溶媒)に混合することにより、製膜原液を調製することができる。製膜原液には、必要に応じてその他の添加成分を加えてもよい。
溶媒の種類には特に制限はないが、乾湿式紡糸で凝固工程を行う場合には、空走部において製膜原液を吸湿させることによって中空糸膜の孔径を調整するため、水と均一に混合しやすい溶媒を選択することが好ましい。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシドなどが挙げられ、これらを1種以上使用できる。また、溶媒への疎水性ポリマーや親水性ポリマーの溶解性を損なわない範囲で、疎水性ポリマーや親水性ポリマーの貧溶媒を混合して使用してもよい。製膜原液の温度は、特に制限はないが通常は20〜40℃である。
製膜原液中における疎水性ポリマーの濃度は、薄すぎても濃すぎても製膜時の安定性が低下し、好適な中空糸膜構造が形成され難くなる傾向にあるため、下限は10質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。また、上限は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。
一方、親水性ポリマーの濃度の下限は、中空糸膜前駆体をより形成しやすいものとするために1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。親水性ポリマーの濃度の上限は、製膜原液の取扱性の点から20質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。
凝固液としては、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を単独または混合して用いることができるし、水と疎水性ポリマーの良溶剤との混合液でもよい。凝固液の温度は、特に制限はないが通常は60〜90℃である。
[加熱工程(分解工程)]
加熱工程では、製膜工程で形成された中空糸膜前駆体を加熱された加熱容器に導入して走行させることにより、中空糸膜前駆体を加熱する。
この例では、加熱容器内を走行する中空糸膜前駆体に、酸化剤を含む薬液を加熱容器内において接触させ、薬液を保持した中空糸膜前駆体を加熱容器で加熱する形態を示す。酸化剤の作用により、中空糸膜前駆体中に残存する親水性ポリマーが分解される。
第1実施形態例の加熱工程は、例えば図1の加熱装置10により行う。
図1の加熱装置10は、1つの加熱容器11と、高温の常圧の飽和水蒸気を加熱容器11内に供給することにより、加熱容器11内を加熱する加熱手段としての水蒸気供給手段12と、飽和水蒸気を加熱容器11から排出させる水蒸気排出手段21とを備えている。また、該加熱装置10は、中空糸膜前駆体30を加熱容器11内で走行させる走行手段として、加熱容器11内に設けられた導入ロール13および8本の走行ロール14a〜14hを備えている。また、該加熱装置10は、加熱容器11内を走行する中空糸膜前駆体30に対して薬液を接触させる薬液接触手段15を備えている。
この例の加熱容器11は、側壁部11aと、該側壁部11aの上端を閉塞する天部(屋根)11bと、底部11cとを有して形成された気密性を備えた容器であり、底部11cには、2箇所のドレイン18a,18bが設けられている。
加熱容器11には、中空糸膜前駆体30が加熱容器11に導入される入口部23が設けられている。入口部23は、この例では、加熱容器11の下部の側壁部11aに形成された開口部である。また、加熱容器11には、中空糸膜前駆体30が加熱容器11から導出される出口部が形成されている。この例では、上述の水蒸気排出手段21が出口部を兼ねており、出口部は、加熱容器11の下部の側壁部11aに形成された開口部である。
この例では、入口部23および出口部には、加熱容器11内を外気から遮断しつつ、中空糸膜前駆体30の導入と導出とを可能とした水封部16,17がそれぞれ設けられ、加熱容器11内は気密性を有している。
この例の各水封部16,17は、それぞれ、水封部16,17内の液体(水)を置換する図示略の液体置換手段を有し、これにより、水封部16,17内の液体を新しい液体で置換できるようになっている。置換は、加熱工程中、連続的に常時行われることが好適であるが、必要に応じて間欠的に行われてもよい。入口の水封部16に導入される中空糸膜前駆体30は、製膜工程に由来する親水性ポリマーを多く含んでいるため、入口の水封部16内の液体には、中空糸膜前駆体30の導入にともなって、次第に親水性ポリマーが濃縮されていく。その結果、加熱容器11内に導入される中空糸膜前駆体30には、水封部16を通過することによって、水封部16の液体中の親水性ポリマーが逆に付着することがある。よって、入口の水封部16には液体置換手段を設けて、水封部16内の液体を適宜交換し、該液体中の親水性ポリマーの濃度を抑制することが好ましい。一方、加熱工程を終えた中空糸膜前駆体30には、親水性ポリマーの分解物が付着している。そのため、出口の水封部17内の液体には、加熱工程を終えた中空糸膜前駆体30が通過することにより、次第に親水性ポリマーの分解物が濃縮されていく。その結果、加熱容器11内から導出される中空糸膜前駆体30には、水封部17を通過することによって、水封部17の液体中の親水性ポリマーの分解物が付着し、その後の洗浄工程に送られる中空糸膜前駆体30が汚染される可能性がある。よって、水封部17にも液体置換手段を設けて、水封部17内の液体を適宜交換し、該液体への親水性ポリマーの分解物の濃縮を抑制することが好ましい。
なお、液体置換手段により水封部16,17に導入される新しい液体とは、使用履歴のない新しい水が好ましいが、例えば、水封部16,17から抜き出された液体を新しい水で希釈したものなどであってもよい。また、水封部16,17には、液体を新しい水で希釈しつつ循環供給してもよい。
水蒸気供給手段(加熱手段)12は、加熱容器11外に設けられた図示略の水蒸気供給源と、加熱容器11内の上部に設けられ、水蒸気供給源からの高温の常圧の飽和水蒸気を加熱容器11内に導入する配管12aとを備えている。配管12aは、図2に示すように、下流側で3系統に分岐し、分岐した各分岐部12bの側面(配管周面)には、飽和水蒸気を下方に向けて噴き出す複数の噴出口12cが分岐部12bの長手方向に沿って1列に形成されている。
走行手段は、加熱容器11内における中空糸膜前駆体30の走行経路中、最も上流に配置された導入ロール13と、導入された中空糸膜前駆体30を下流側へと走行させる複数の走行ロール14a〜14hとから構成されている。この例の走行ロール14a〜14hは、上ロールおよび下ロールからなる合計4組の対ロールから構成されている。以下、上流側からn組目の対ロールを第n対ロールという場合がある。
また、走行ロール14a〜14hは、導入ロール13よりも軸方向の長さが大きく形成されている。これにより、詳しくは後述するが、導入ロール13により導入された中空糸膜前駆体30は、走行ロール14a〜14hの図中手前側から後方側、あるいは、後方側から手前側(すなわち、上流側から下流側。)に向けて複数回巻き付きながら、走行できるようになっている。
走行ロール14a〜14hは、図2に示すように、互いに平行に配置されている。そして、水蒸気供給手段12の各分岐部12bは、第1対ロールと第2対ロール間、第2対ロールと第3対ロール間、第3対ロールと第4対ロール間の各ロール間の上方において、各走行ロール14a〜14hと平行になるように配置されている。このように水蒸気供給手段12は、走行手段を構成する全ロール(導入ロール13および走行ロール14a〜14h)よりも上方に位置する加熱容器11の上部から、飽和水蒸気を下方へ供給するようになっている。
このように水蒸気供給手段12が、加熱容器11の上部、すなわち、走行手段よりも上方の位置から飽和水蒸気を供給し、かつ、上述のとおり、水蒸気排出手段21が、加熱容器11の下部、すなわち、水蒸気供給手段12よりも下方の位置から飽和水蒸気を排出する形態であると、飽和水蒸気の上から下への流れが形成される。その結果、飽和水蒸気を加熱容器の下部から供給し上部から排出する場合などと比較して、加熱容器11内の温度ムラを抑制し、加熱容器11内を均一に加熱することができ、エネルギーロスを抑制できる。
また、この際、中空糸膜前駆体30の入口部23と出口部とが、水蒸気排出手段21と同様に加熱容器11の下部に設けられていると、飽和水蒸気の上から下への流れが安定に形成されやすく、エネルギーロスを低減することができる。さらに、この例のように、中空糸膜前駆体30の出口部が水蒸気排出手段21を兼ねた形態であると、一層エネルギーロスを低減できる。
この例においては、これら走行ロール14a〜14hのうち、第1対ロールの下ロール14aと、第3対ロールの下ロール14eとの2つが、駆動機構として、加熱容器11外に設けられたACサーボモータ22a,22bをそれぞれ備えた駆動ロールである。該駆動ロール以外の走行ロールは、駆動機構を備えていないフリーロールである。なお、2つの駆動ロールのうち上流側のロール、すなわち、第1対ロールの下ロール14aのことを第1の駆動ロールという場合があり、2つの駆動ロールのうち下流側のロール、すなわち、第3対ロールの下ロール14eのことを第2の駆動ロールという場合がある。
このように走行ロール14a〜14hのうちの一部が駆動ロールであると、中空糸膜前駆体30の膜の潰れを抑制できる。
すなわち、全ての走行ロールが仮にフリーロールであると、フリーロールの回転抵抗が、フリーロールの数だけ中空糸膜前駆体に付与されて、中空糸膜前駆体の膜張力の増加につながる。一方、一部が駆動ロールであると、該駆動ロールにおいて、それよりも上流側のフリーロールの回転抵抗により中空糸膜前駆体に付与された膜張力を解消でき、それにより、膜張力に起因する中空糸膜前駆体の膜の潰れを抑制できる。
また、この例の加熱装置10は、第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eのうち、最も上流側に配置されている駆動ロール(第1の駆動ロール)14aよりも上流側を走行する中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出する張力検出手段40を有している。具体的に、この例では、図示のように、加熱容器11の上流側の外部において、加熱容器11に導入される前の中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出している。この例の張力検出手段40は、中空糸膜前駆体30に加わる張力に応じて鉛直方向に上下するダンサーロール41を備えて構成されている。該ダンサーロール41の位置を検出することにより、中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出できる。中空糸膜前駆体30に加わる張力が大きい場合には、ダンサーロール41の位置は高くなり、中空糸膜前駆体30に加わる張力が小さい場合には、ダンサーロール41の位置は低くなる。なお、ダンサーロール41は、その質量を変えることにより、中空糸膜前駆体30に加わる張力を設定する作用も有している。
そして、この例の加熱装置10は、張力検出手段40により検出された張力(検出結果)に応じて、第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eの回転速度を制御する制御手段50を備えている。制御手段50は、例えば、張力検出手段40により検出された張力が初期値(設定値)よりも高い場合には、これらの駆動ロール14a,14eの回転速度が小さくなるように駆動機構であるACサーボモータ22a,22bを制御する。一方、張力検出手段40により検出された張力が初期値よりも低い場合には、回転速度が大きくなるように制御する。
このように第1の駆動ロール14aよりも上流側を走行する中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出し、検出結果を第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eの回転速度の制御にフィードバックすることにより、加熱工程において中空糸膜前駆体30に加わる張力を適切に制御し、張力が大きい場合や小さい場合に生じる不都合を回避できる。
第1の駆動ロール14aよりも上流側を走行する中空糸膜前駆体30に加わる張力が大きいと、該中空糸膜前駆体30は、走行手段のうちの少なくとも導入ロール13、第1の駆動ロール14a、走行ロール14bに対して、強く押し付けられる。中空糸膜前駆体30は加熱された状態であるため、このように強く押し付けられると、細形化、扁平化するなど異形化しやすい。一方、第1の駆動ロール14aよりも上流側を走行する中空糸膜前駆体30に加わる張力が小さいと、該中空糸膜前駆体30は加熱容器11内で弛み、導入ロール13、第1の駆動ロール14a、走行ロール14bから外れるなどし、工程トラブルを引き起こしやすい。
また、前工程(製膜工程)で得られた中空糸膜前駆体30は、加熱容器11に導入される前は、常温程度の温度である。そのため、第1の駆動ロール14aよりも上流側においては、前工程から移送された中空糸膜前駆体30が、常圧の飽和水蒸気により加熱された加熱容器11内に導入されることにより、常温付近から100℃付近にまで急激に加熱される。その結果、第1の駆動ロール14aよりも上流側における加熱容器11内においては、中空糸膜前駆体30の膜が加熱収縮したり、中空糸膜前駆体30が多孔質基材を有する場合には該多孔質基材が伸びたりして、中空糸膜前駆体30の張力が特に不安定になりやすい。そのため、張力検出手段40により検出する張力は、第1の駆動ロール14aよりも上流側を走行する中空糸膜前駆体30の張力であることが有効であり、その検出結果を制御手段50にフィードバックすることが、中空糸膜前駆体30の異形化や工程トラブルを効果的に回避するうえで重要である。
なお、制御手段50は、少なくとも第1の駆動ロール14aの回転速度を制御することが必要であり、第2の駆動ロール14eの回転速度の制御は必要に応じて実施すればよい。上述のとおり、中空糸膜前駆体30は、加熱容器11に導入される際の急激な温度変化により、張力が不安定になりやすい。そのため、最も上流側に位置する第1の駆動ロール14aの回転速度をフィードバック制御することが重要であり、それよりも下流に位置し、比較的張力が安定した状態の中空糸膜前駆体30を走行させる駆動ロールについては、必ずしもフィードバック制御しなくてもよい。その場合には、第2の駆動ロール14eの駆動機構として、サーボモータの代わりにトルクモータ等を用い、該トルクモータを制御手段50とは別の制御手段で独立に制御してもよい。
薬液接触手段15は、この例では、酸化剤を含む薬液が投入された第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15bを備え、第1対ロールの下ロール14aの下方と、第3対ロールの下ロール14eの下方との2箇所(複数箇所)にそれぞれ設けられている。そして、下ロール14aの下部と、下ロール14eの下部とが、それぞれ第1薬液槽15aと第2薬液槽15bとに浸漬配置されている。これにより、中空糸膜前駆体30が各薬液槽15a,15b中を走行し、その結果、中空糸膜前駆体30に薬液が接触しピックアップされるようになっている。
薬液に使用する酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過硫酸塩等を用いることもできるが、酸化力が強く分解性能に優れること、取扱い性に優れること、安価なこと等の点より、特に次亜塩素酸塩が好ましい。次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが挙げられるが、特に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。薬液は、これらの酸化剤を水に溶解させることにより調製できる。
また、薬液として次亜塩素酸ナトリウムが溶解した水溶液を用いる場合、該水溶液の次亜塩素酸ナトリウム濃度は、親水性ポリマーの分解に必要な次亜塩素酸ナトリウム量を確保し、かつ、次亜塩素酸ナトリウム使用量を極力抑える観点から、2000〜120000mg/Lが好ましい。後述のように、薬液を中空糸膜前駆体へ複数回接触させる場合には、少なくとも1回目の接触に使用される薬剤は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が2000〜120000mg/Lであることが好ましい
なお、図2においては、配管12aやその分岐部12bと、導入ロール13および走行ロール14a〜14hと、薬液槽15a,15bとの位置関係を理解しやすくするために、これら以外の図示を略している。
各薬液槽15a,15bは、いわゆるカスケード式であって、下ロール14a、14eの軸方向に沿って、槽内が1つ以上の立板により図示略の複数のゾーンに分割され、図中手前側のゾーンからオーバーフローした薬液が、図中後方側のゾーンへと順次供給されるようになっている。詳しくは後述するが、この例では、図中手前側のゾーンが、走行する中空糸膜前駆体30の上流側に相当し、図中後方側のゾーンが、走行する中空糸膜前駆体30の下流側に相当する。また、第1薬液槽15aにおけるゾーンの数はkで、第2薬液槽15bにおけるゾーンの数はkとされている(k,kはいずれも2以上の整数。)。
また、各薬液槽15a,15bのうち、最も上流側のゾーンには、加熱容器11外に設けられた薬液供給源15c,15dから薬液がそれぞれ連続的に供給され、各薬液槽15a,15bのうち、最も下流側のゾーンからは、薬液がそれぞれ連続的に排出されるようになっている。
薬液槽15a,15bからの排出液は、加熱容器11の底部を流れ、飽和水蒸気の凝縮水とともにドレイン18a,18bから排出される。
なお、図中符号20は、加熱容器11の底部に立設された仕切板であり、この仕切板20が設けられていることにより、第1薬液槽15aからの薬液はドレイン18aから、第2薬液槽15bからの薬液はドレイン18bから、それぞれ独立に排出可能となっている。
次に、第1実施形態例の加熱工程を具体的に説明する。
第1の実施形態例の加熱工程では、まず、水蒸気供給手段12により加熱容器11内に高温の常圧の飽和水蒸気を連続的に供給し、加熱容器11内を飽和水蒸気で満たして加熱する。ここで加熱容器11内の温度は、理想的には、常圧の飽和水蒸気温度である約100℃であるが、それよりも低温であってもよい。一方、加熱容器11内に配置された各薬液槽15a,15bには、供給ポンプ19a,19bにより、薬液供給源15c,15dから薬液を供給する。ここで、加熱容器11外における、供給ポンプ19aと第1薬液槽15aの間、および、供給ポンプ19bと第2薬液槽15bの間には、図示略のヒータを設けて、薬液を加熱容器11外で加熱してから、各薬液槽15a,15bに供給するようにしてもよい。
ついで、各薬液槽15a,15b内の薬液が定常温度になってから、導入ロール13、水封部16を経て中空糸膜前駆体30を入口部23から加熱容器11内に導入する。中空糸膜前駆体30の加熱容器11内における走行速度は、例えば4〜50m/minが好ましい。
加熱容器11内に導入された中空糸膜前駆体30は、加熱容器11内を満たす飽和水蒸気により加熱される。そして、図3に示すように、第1対ロールにおいて、その上ロール14bおよび下ロール14aに、図3中手前側から図3中後方側へと複数回(k回)巻き付きつつ、第2対ロールの上ロール14dへと進行する。
ここで第1対ロールの下ロール14aには、図3では図示略の第1薬液槽が配置されているため、中空糸膜前駆体30が第1対ロールの下ロール14aを複数回(k回)通過する毎に、中空糸膜前駆体30には飽和水蒸気により加熱された薬液が付着し、浸透する。また、この例では、中空糸膜前駆体30が薬液に接触する回数と、第1薬液槽において図示略の立板で区切られたゾーンの数とは、いずれも同じkとされている。そのため、中空糸膜前駆体30は、第1対ロールの下ロール14aを1回目に通過する際には、第1薬液槽のゾーンのうち、最も上流側のゾーンの薬液に接触し、2回目に通過する際には、第1薬液槽のゾーンのうち、2番目に上流側のゾーンの薬液に接触する。このように中空糸膜前駆体30は、下ロール14aを通過する毎に、より下流側のゾーンの薬液に接触していく。図3において、実線の矢印は、中空糸膜前駆体30の走行経路を説明するもので、破線の矢印は、各ロールの回転方向を示すものである。
そして、上述のとおり、この例の第1薬液槽は、カスケード式であり、上流側のゾーンからオーバーフローした薬液は、下流側のゾーンへと順次供給されるようになっている。
より上流側のゾーンでは、親水性ポリマーがより多く残存している中空糸膜前駆体30が薬液に接触し、その際、中空糸膜前駆体30からは、親水性ポリマーの一部が該ゾーン内の薬液中に移行し、移行した親水性ポリマーの分解が該ゾーンの薬液中で進行する。その結果、該ゾーン中の薬液の酸化剤は、移行してきた親水性ポリマーの分解に消費され、その濃度は低下する。そして、カスケード式である第1薬液槽では、このように酸化剤の濃度が低下した薬液がそれもより下流側のゾーンに供給される。
このように第1薬液槽においては、中空糸膜前駆体30に薬液をk回接触させる際において、1回目の接触時からk回目の接触時にかけて、使用する薬液中の酸化剤の濃度が徐々に低下するようになっている。
下流側のゾーンの薬液と接触する中空糸膜前駆体30は、上流側において親水性ポリマーの一部がすでに分解されたものであるため、親水性ポリマーの残存量が低く、高濃度で酸化剤を含む薬液を使用する必要はない。
よって、このようにカスケード式の第1の薬液槽を採用し、1回目の接触時からk回目の接触時にかけて、使用する薬液中の酸化剤の濃度を低下させることによって、酸化剤を無駄なく使用でき、その使用量を削減できる。
なお、「1回目の接触時からk回目の接触時にかけて、使用する薬液中の酸化剤の濃度を低下させる」形態には、酸化剤濃度が下流側のゾーンにいくにつれて連続的に低下する形態とともに、段階的に低下する形態も含まれる。段階的に低下する形態とは、例えば、全ゾーンのうちの一部の複数のゾーンにわたっては、酸化剤の濃度が低下せずに一定である形態である。
また、第1薬液槽におけるゾーンの数は、この例では、中空糸膜前駆体30が第1薬液槽内の薬液に接触する回数と同じkとされ、1つのゾーンにおいて1回ずつ接触が行われる態様となっているが、第1薬液槽におけるゾーンの数をk未満として、1つのゾーンの薬液に中空糸膜前駆体30が複数回接触する態様であってもよい。
また、このように酸化剤の濃度を低下させる形態として、ここではカスケード式の薬液槽を例示して説明したが、酸化剤の濃度を低下させ得る限り、カスケード式の薬液槽を採用する形態に限定されない。
なお、このように薬液を中空糸膜前駆体へ複数回接触させる場合、使用される薬液は、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液が好ましく、少なくとも1回目の接触に使用される薬剤は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が2000〜120000mg/Lであることが好ましい。
また、導入ロール13により加熱容器11内に導入された中空糸膜前駆体30は、加熱容器11内を満たす飽和水蒸気により加熱された際に、上述したように、その表面には凝縮水が生成する。そこで、加熱容器11には、薬液が接触する前の中空糸膜前駆体30に対して蒸気などの流体(気体)を吹き付ける図示略の吹付け手段を設けて、流体(気体)により凝縮水を除去することが好ましい。凝縮水を除去するその他の方法としては、例えば、導入ロール13と上ロール14bとの間に図示略の除去用ロールを別途設けて、この除去用ロールの表面上を中空糸膜前駆体が通過する際の遠心力により凝縮水を除去できるようにしてもよい。あるいは、導入ロール13や上ロール14b上を中空糸膜前駆体30が通過する際の遠心力などにより、薬液の接触前に凝縮水が自ずと中空糸膜前駆体30から除去されるような場合には、敢えて吹付け手段や除去用ロールを設けなくてもよい。
加熱容器11、各ロール14a〜14h、第1および第2薬液槽15a,15b、ドレイン18a,18b、水蒸気供給手段12の素材は、耐酸化剤性と耐熱性を有したものであれば、特に限定されないが、例えば、チタン、ポリテトラフルオロエチレン、PEEK、セラミックなどを例示することができる。また、特殊な素材形態としては、ステンレスやアルミニウムなどの耐酸化材性の乏しい素材に、上記に例示した素材で、加熱容器11に対しては内面をライニングしたもの、ロール14a〜14hに対しては外面をコーティングしたもの、なども例示することができる。
なお、走行ロール14a〜14hは、表面が平滑でもよいが、平滑な場合には、中空糸膜前駆体30の走行する糸道がロールの表面上でずれて弛み、中空糸膜前駆体30が絡み合うおそれが生じる。そのため、これら走行ロール14a〜14hの表面には、中空糸膜前駆体の走行を規制する規制溝が形成されていることが好ましい。また、図4に示すように、走行ロール14aの表面近傍には、その軸方向に沿うガイドバー70,70を、例えば走行ロール14aを挟んで対向する位置に2本取り付け、それにより、中空糸膜前駆体30が弛んで走行ロール14aから外れて絡まらないようにしてよい。図中、符号71は走行ロール14aの軸、符号72は軸71が固定される固定部であって、この例では、該固定部72にガイドバー70,70が固定されている。
なお、図4では、ガイドバー70,70を走行ロール14aに取り付ける形態を例示したが、必要に応じて、走行ロール14a〜14hのうちの少なくとも1つに設けることができる。また、規制溝も、必要に応じて、走行ロール14a〜14hのうちの少なくとも1つに設けることができる。ガイドバーと規制溝は、1つの走行ロールに対して併用してもよい。
また、薬液槽15a,15b内が立板により複数のゾーンに区切られている場合、薬液槽15a,15bに対応して設置された走行ロール14a,14eの表面には、該表面と立板とが接触しないように、立板に対応する位置に溝を形成することが好ましい。また、走行ロール14a,14eそれぞれを、薬液槽15a,15bのゾーン毎に対応する独立したロールにより構成することがさらに好ましい。
ついで中空糸膜前駆体30は、図3に示すように、第2対ロールにおいて、上ロール14dおよび下ロール14cに複数回巻き付きつつ、第1対ロールの場合とは逆に図中後方側から図中手前側へと進行した後、第3対ロールの上ロール14fへと進行する。
第3対ロールでは、中空糸膜前駆体30は、第1対ロールの場合と同様に、上ロール14fおよび下ロール14eに図中手前側から図中後方側へ複数回(k回)巻き付き、進行する。
ここで第3対ロールの下ロール14eには、図3では図示略の第2薬液槽が配置されているため、中空糸膜前駆体30が第3対ロールの下ロール14eを通過する毎に、中空糸膜前駆体30には飽和水蒸気により加熱された薬液が接触し、中空糸膜前駆体30中に浸透する。そして、第2薬液槽も、中空糸膜前駆体30が下ロール14eに巻きついて第2薬液槽中の薬液に接触する回数と同じkのゾーンに図示略の立板で分割されているとともに、酸化剤の濃度が低下した薬液が、槽内の上流側のゾーンから下流側のゾーンに順次供給されるカスケード式である。そして、中空糸膜前駆体30は、第3対ロールの下ロール14eを1回目に通過する際には、第2薬液槽のゾーンのうち、最も上流側のゾーンの薬液に接触し、2回目に通過する際には、第2薬液槽のゾーンのうち、2番目に上流側のゾーンの薬液に接触する。このように第2薬液槽においても、中空糸膜前駆体30は、下ロール14eを通過する毎に、より下流側のゾーンの薬液に接触していく。
よって、第2薬液槽においても、中空糸膜前駆体30に薬液をk回接触させる際において、1回目の接触時からk回目の接触時にかけて、使用する薬液中の酸化剤の濃度は徐々に低下するようになっている。
なお、第2薬液槽が採り得る態様は、第1薬液槽と同様である。
また、第1薬液槽と第2薬液槽とのそれぞれにおいて、薬液中の酸化剤の濃度が上流側から下流側に向けて低下している場合、第1薬液槽におけるk回目の接触時の薬液よりも、第2薬液槽における1回目の接触時の薬液の方が、酸化剤の濃度が低くなるように設定されていてもよいし、設定されていなくてもよい。すなわち、薬液への全k(=k+k)回の接触において、1回目の接触時からk回目の接触時にかけて、使用する薬液中の酸化剤の濃度が必ずしも徐々に低下していなくてもよい。
ついで中空糸膜前駆体30は、図3に示すように、第3対ロールの上ロール14fから第4対ロールの下ロール14gへと進み、第4対ロールにおいて、その上ロール14hおよび下ロール14gに複数回巻き付きつつ、図中後方側から図中手前側へと進行した後、第4対ロールの下ロール14gを経て加熱容器11外へと導出される。
そして、このような加熱工程において、張力検出手段40により、加熱容器11の上流側の外部において、加熱容器11に導入される前の中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出し、その検出結果に応じて、制御手段50が第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eの回転速度を制御する。このように張力検出手段40による検出結果を少なくとも第1の駆動ロール14aの回転速度の制御にフィードバックすることにより、中空糸膜前駆体30に加わる張力を適切に制御し、中空糸膜前駆体30の異形化や工程トラブルを防止できる。
また、このような加熱工程において、加熱容器11内に導入された中空糸膜前駆体30は、まず飽和水蒸気により加熱される。その後、加熱した中空糸膜前駆体30には、第1薬液槽15aにおいて加熱された薬液が接触する。中空糸膜前駆体30に接触した薬液は中空糸膜前駆体30に直ちに浸透する。また、薬液が接触、浸透した中空糸膜前駆体30は、加熱容器11内を走行することにより飽和水蒸気で保温されるため、接触、浸透した薬液による親水性ポリマーの分解も、薬液の浸透とともにほぼ同時に開始、進行する。
第1対ロールにおいては、このような薬液の接触、浸透と、親水性ポリマーの分解とが複数回交互に繰り返される。第2対ロールでは、中空糸膜前駆体30が保温され、親水性ポリマーの分解が進行する。ついで、第3対ロールにおいては、第1対ロールの場合と同様に、薬液の接触、浸透と、親水性ポリマーの分解とが複数回交互に繰り返され、第4対ロールでは、中空糸膜前駆体30が保温され、親水性ポリマーの分解が進行する。
第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15bにおける中空糸膜前駆体30の滞在時間には、特に制限はないが、薬液が中空糸膜前駆体30に充分に接触し、第1対ロール上および第3対ロール上に位置する中空糸膜前駆体30が常に薬液を保持した状態となる滞在時間を設定する。
また、カスケード式である第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15b内での酸化剤の濃度勾配や流量は特に制限されず、中空糸膜前駆体30中の親水性ポリマーの残存状態や、酸化剤の使用効率の観点から適宜設定すればよい。
以上説明したように、このような加熱装置10を用いた加熱工程によれば、張力検出手段40と制御手段50との作用により、加熱容器11内に導入されて例えば常温付近から100℃付近まで中空糸膜前駆体30が急激に加熱された場合でも、中空糸膜前駆体30に加わる張力を適切に維持し、これにより、得られる中空糸膜の異形化や工程トラブルを回避できる。
なお、この例では、張力検出手段40としてダンサーロール41を備えた形態を例示したが、張力を検出できる手段であれば、この形態には限定されない。
また、加熱容器11内に走行手段として設けられる駆動ロールの数は、この例では2つとしたが、1つでも、3つ以上の複数個でもよい。1つの場合には、制御手段は、その1つの駆動ロールの回転速度を制御する。
また、この例では、加熱手段である水蒸気供給手段12が加熱容器11の上部に形成され、水蒸気排出手段21が水蒸気供給手段12よりも下方である加熱容器11の下部に形成され、飽和水蒸気が加熱容器11の下部から排出される形態である。そのため、加熱容器11内の温度ムラを抑制し、加熱容器11内を均一に加熱することができ、エネルギーロスを抑制できる。
また、この例では、中空糸膜前駆体30の入口部23と出口部とが、水蒸気排出手段21と同様に加熱容器11の下部に設けられ、さらに、中空糸膜前駆体30の出口部が水蒸気排出手段21を兼ねた形態であるため、一層エネルギーロスを低減できる。
また、この例では、積極的に加熱した薬液を中空糸膜前駆体30に接触、付着させるため、中空糸膜前駆体30への薬液の浸透と、薬液に含まれる酸化剤による親水性ポリマーの分解とをほぼ同時に進行させることができ、その結果、短時間で親水性ポリマーを分解できる。
また、この例の加熱装置10は、1つの加熱容器11内において、薬液の加熱と、加熱した薬液の中空糸膜前駆体30への接触と、中空糸膜前駆体30に含まれる親水性ポリマーの保温、分解とを行うことができ、加熱工程を行う設備をコンパクトにし、設備設置の省スペース化を実現できる。仮に、薬液の接触、中空糸膜前駆体の保温を1つの容器内ではなく、別々の容器でそれぞれ行う構成にすると、設備が大型化する。
また、この例では、1つの加熱容器11内で薬液を加熱するだけでなく、薬液の接触前の中空糸膜前駆体30を予め加熱し、かつ、薬液が接触した後の中空糸膜前駆体30を高温に保温することもできるため、中空糸膜前駆体30への薬液の浸透速度をより向上させ、かつ、中空糸膜前駆体30に残存する親水性ポリマーの分解速度をより高めることができる。仮に、薬液の接触、中空糸膜前駆体の保温をそれぞれ別々の容器で行うと、各容器間で中空糸膜前駆体が一旦冷却され、親水性ポリマーの分解速度が低くなるおそれがある。
さらに、この例では、加熱手段として、加熱容器11内に高温の常圧の飽和水蒸気を供給する水蒸気供給手段12を採用しているため、薬液、薬液接触前後の中空糸膜前駆体30、加熱容器11内の気相の各温度を容易に、飽和水蒸気温度に基く同一温度に維持でき、加熱効率に優れる。加熱手段としては、加熱容器11内を好ましくは60℃以上120℃以下に加熱できるものであれば、水蒸気供給手段12に限定されないが、加熱容器11内を常圧の飽和水蒸気で満たすことにより、中空糸膜前駆体30の乾燥を防止しながら加熱でき、効果的に親水性ポリマーを分解できる点等で、水蒸気供給手段12が好ましい。
また、この例では、薬液接触手段15として、第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15bを設置し、各薬液槽15a,15b中を中空糸膜前駆体30が複数回走行するようにして、薬液の中空糸膜前駆体30への接触と、薬液が接触した後の中空糸膜前駆体30の保温とがそれぞれ複数回、交互に繰り返されるようにしているため、中空糸膜前駆体30に接触して付着した薬液中の酸化剤が、親水性ポリマーの分解のためにすべて消費される前に、薬液を再度中空糸膜前駆体30に追加付着させることができ、分解が効率的に進行する。
なお、薬液接触手段としては、加熱容器11内を走行する中空糸膜前駆体30に薬液をスプレーするスプレー手段を採用し、加熱容器11内を走行する中空糸膜前駆体30に薬液を噴霧して付着させるようにしてもよい。スプレー手段としては、薬液供給源15c,15dと配管により接続され、薬液供給源15c,15dからの薬液を噴霧する噴霧部を備えたものを採用できる。
また、このように噴霧部を備えたスプレー手段などの薬液接触手段と薬液供給源15c,15dとを接続する配管のうち、加熱容器11内に導入されている部分の少なくとも一部に、薬液と加熱容器11内の気体との熱交換により薬液が加熱される図示略の熱交換部を設けてもよい。具体的には、例えばポリテトラフルオロエチレンなどからなる表面積(伝熱面積)の大きなコイルチューブ配管などで熱交換部を構成することが好適である。これにより、薬液供給源15c,15dからの薬液が中空糸膜前駆体30に噴霧される前に、表面積の大きなコイルチューブ配管内を流れることで効率的に加熱される。なお、熱交換部は、コイルチューブから構成されるコイルチューブ式の他、プレート式、多管式などでもよい。
なお、薬液接触手段としては、異なる形態の手段を併用して、加熱容器内のある箇所ではスプレー手段を採用し、他の箇所では薬液槽を採用した形態などであってもよい。
また、中空糸膜前駆体の走行経路の複数箇所にスプレー手段を設置することにより、薬液の中空糸膜前駆体への接触と、薬液が接触した後の中空糸膜前駆体の保温とがそれぞれ複数回、交互に繰り返されるようにすることもできる。
スプレー手段の設置箇所には特に制限はないが、上ロール14b上を通過する中空糸膜前駆体30に薬液が噴霧されるような位置への設置が好ましい。これにより、噴霧された薬液の大部分が中空糸膜前駆体30に接触し、薬液を無駄にすることなく効率的な接触を行える。
また、より効率的に薬液を中空糸膜前駆体30に接触させるために、薬液を中空糸膜前駆体30上に滴下する方法を採用することもできる。
また、薬液接触手段には、中空糸膜前駆体が通過する通過路と、中空糸膜前駆体の通過方向と交差する角度(例えば90度。)で設けられた薬液供給路とを備えたガイド型の薬液付与手段を用いることもできる。このガイド型の薬液付与手段の通過路に中空糸膜前駆体を通過させ、その際に薬液供給路から薬液を供給することにより、中空糸膜前駆体の周面側に薬液を効果的に付着させることができる。このような薬液付与手段としては、例えば、市販されているオイリングガイド(湯浅糸道工業(株)製)などを転用することもできる。
なお、加熱容器11の形状としては、図示例では、側壁部11aの上端を閉塞する天部(屋根)11bが平坦である形状を例示したが、天部は、頂部と頂部から下方に傾斜する傾斜部とを有する形状であることも好ましい。天部がこのような形状であると、天部に付着した水蒸気の凝縮水は、傾斜部を経て側壁部を流下するため、薬液槽内の薬液や中空糸膜前駆体に滴り落ちることが防止される。よって、凝縮水による薬液の希釈や膜への薬液浸透阻害を抑制できる。
[洗浄工程]
加熱工程後には、中空糸膜前駆体を洗浄液に浸漬して洗浄する洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程で使用する洗浄液としては、清澄で、親水性ポリマーの分解物が分散または溶解する液体であれば特に限定されるものではないが、洗浄効果が高いことから水が好ましい。使用する水としては、水道水、工業用水、河川水、井戸水等が挙げられ、これらにアルコール、無機塩類、酸化剤、界面活性剤等を混合して使用してもよい。また、洗浄液としては、疎水性ポリマーの良溶媒と水との混合液を用いることもできる。
洗浄温度は、親水性ポリマーの溶液の粘度を低く抑えて、拡散移動速度の低下を防ぐため、高い方が好適であり、50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。さらに、洗浄液を沸騰させながら洗浄を行うと、沸騰によるバブリングによって中空糸膜前駆体の外表面に付着した親水性ポリマーや汚れを掻き取ることもできるため、効率のよい洗浄が可能となる。このような洗浄工程により、中空糸膜が得られる。
[乾燥工程]
洗浄工程後には、中空糸膜を乾燥する乾燥工程を行う。乾燥工程の方法としては特に制限はなく、中空糸膜を熱風乾燥機などの乾燥装置に導入する方法で行えばよい。
[その他]
製膜工程と加熱工程との間には、製膜工程で得られた中空糸膜前駆体を洗浄液に浸漬して洗浄する予備洗浄工程を行ってもよい。洗浄液としては、洗浄工程で例示したもののなかから選択できる。
また、以上の説明においては、多孔質膜として中空糸膜を例示して、その製造方法および製造装置を説明したが、多孔質膜は中空糸膜に限定されず、例えば、平膜、管型膜なども例示することができる。
<第2実施形態例>
上述の第1実施形態例では、加熱工程として、製膜工程で得られた中空糸膜前駆体30を1つの加熱容器11内において、加熱するだけでなく、該中空糸膜前駆体30に酸化剤を含む薬液を接触させることにより、親水性ポリマーを分解する工程を採用した。しかしながら、加熱工程の前に薬液処理工程を別途設け、加熱工程に用いる加熱装置とは異なる装置(薬液処理装置)により、薬液処理工程を行ってもよい。
図5は、第2実施形態例の製造装置を示す概略構成図であり、該製造装置は、加熱装置10の上流側に、製膜工程で得られた中空糸膜前駆体30に薬液を浸漬する薬液処理装置60を有している。なお、図5において、図1と同じ要素については、図1と同じ符号を付している。
薬液処理装置60は、薬液が入れられた処理槽61と、中空糸膜前駆体30が薬液に複数回浸漬されるように中空糸膜前駆体30をガイドするガイド手段62と、ガイド手段62を支持する支持部材63と、処理槽61の内部に設けられた冷却器64と、薬液を処理槽61に供給する薬液供給管65と、処理槽61から薬液を排出する薬液排出管66とを備える。
この例の処理槽61においては、薬液が薬液供給管65から供給され、薬液排出管66から排出されて、中空糸膜前駆体30の移送方向の下流側から上流側に向かって移動するようになっている。
また、処理槽61は、耐食性を有する材質とされ、なかでも、チタンが好ましい。処理槽61がチタン製であれば、腐食防止効果が高く、錆の発生を抑制できるため、処理槽61の劣化を抑制でき、また、錆の接触による中空糸膜前駆体30の傷付きを防止できる。
ガイド手段62は、処理槽61の薬液の液面61aよりも下方に位置するように複数設けられた下部ガイドロール62aと、薬液の液面61aよりも上方に位置するように複数設けられた上部ガイドロール62bとを有する。
ガイド手段62では、下部ガイドロール62aと上部ガイドロール62bとに、中空糸膜前駆体30を交互に掛け回して移送方向を反転させることによって、中空糸膜前駆体30を鉛直方向に往復させながら移送させて、中空糸膜前駆体30の薬液への浸漬と中空糸膜前駆体の薬液からの引き上げとを繰り返すようになっている。これにより、中空糸膜前駆体を薬液に複数回浸漬できるようになっている。
このような薬液処理装置60により薬液が浸漬された中空糸膜前駆体30は、ついで、加熱装置10に移送される。該中空糸膜前駆体30は、加熱装置10の加熱容器11内で加熱され、中空糸膜前駆体30中に残存する親水性ポリマーは、薬液処理装置60で付与された薬液に含まれる酸化剤の作用により分解される。
そして、この際、加熱装置10においては、第1実施形態例の場合と同様に、張力検出手段40により、加熱容器11の上流側の外部において、加熱容器11に導入される前の中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出し、その検出結果に応じて、制御手段50が第1の駆動ロール14aと必要に応じて第2の駆動ロール14eの回転速度を制御する。このように張力検出手段40による検出結果を少なくとも第1の駆動ロール14aの回転速度の制御にフィードバックすることにより、中空糸膜前駆体30に加わる張力を適切に制御し、中空糸膜前駆体30の異形化や工程トラブルを防止できる。
また、図5に示す第2実施形態例でも、図1の場合と同様に、加熱手段である水蒸気供給手段12が加熱容器11の上部に形成され、飽和水蒸気が加熱容器11の上部から供給され、一方、水蒸気排出手段21が水蒸気供給手段12よりも下方である加熱容器11の下部に形成され、飽和水蒸気は加熱容器11の下部から排出される形態である。そのため、加熱容器11内の温度ムラを抑制し、加熱容器11内を均一に加熱することができ、エネルギーロスを抑制できる。また、中空糸膜前駆体30の入口部23と出口部とが、水蒸気排出手段21と同様に加熱容器11の下部に設けられ、さらに、中空糸膜前駆体30の出口部が水蒸気排出手段21を兼ねた形態であるため、エネルギーロスを一層低減できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<実施例>
[製膜工程]
ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー9000LD)、ポリビニルピロリドン(ISP社製、商品名K−90)、N,N−ジメチルアセトアミドを混合し、これら含有成分比が異なる製膜原液(1)および製膜原液(2)を調製した。
ついで、中心に中空部が形成され、その外側に、2種の液を順次塗布できるように環状の吐出口が二重に順次形成されたノズル(特開2005−42074号公報の図1参照。)を用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には多孔質基材としてポリエステル製マルチフィラメント単繊組紐(マルチフィラメント;420T/180F)を導入するとともに、その外周に製膜原液(2)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、80℃に保温した凝固液(N,N−ジメチルアセトアミド5質量部と水95質量部との混合液)中で凝固させた。このようにして、外表面近傍に分画層を1層有し、内部に向かって孔径が増大する傾斜構造の多孔質層が組紐にコーティングされた中空糸膜前駆体を得た。なお、塗布された製膜原液(1)および(2)のうち、中空糸膜の膜構造を形成する主原液は、外側に塗布された製膜原液(1)である。
さらに、この中空糸膜前駆体の外径よりも大きい内径の中空部が中心に形成され、その外側に、2種の液を順次塗布できるように環状の吐出口が二重に順次形成されたノズル(特開2005−42074号公報の図1参照。)を用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には上述のようにして得られた中空糸膜前駆体を導入するとともに、その外周にグリセリン(和光純薬工業製一級)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、先に使用したものと同じ80℃に保温された凝固液中で凝固させた。このようにしてさらに多孔質層がコーティングされた2層構造で組紐支持体を有する中空糸膜前駆体を得た。
ついで、該中空糸膜前駆体を100℃の水で5分間予備洗浄した。
このときの紡糸速度(中空糸膜前駆体の走行速度)は20m/minとした。
[加熱工程]
図1に示す加熱装置10を用いて加熱工程を行った。具体的には、図1に示す構成の加熱容器11に中空糸膜前駆体30を入口部23から連続的に導入し、走行させ、常圧の飽和水蒸気による加熱下で加熱工程(分解工程)を行った。駆動ロールは、第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eとの2つであり、駆動機構には、第1の駆動ロール14a、第2の駆動ロール14eそれぞれに、ACサーボモータ22a,22bを用いた。そして、加熱容器11の上流側において、ダンサーロール41を備えた張力検出手段40により、その部分の中空糸膜前駆体30に加わる張力を検出し、この検出結果に応じて、制御手段50によりACサーボモータ22a,22bを制御し、第1の駆動ロール14aと第2の駆動ロール14eの回転速度を調整した。なお、中空糸膜前駆体30に付与する張力の初期値(設定値)は、ダンサーロール41の質量を変えることにより、あらかじめ調整している。
また、図1に記載のとおり、水蒸気供給手段12は、加熱容器11の上部から飽和水蒸気を供給し、水蒸気排出手段21は、加熱容器11の下部から飽和水蒸気を排出するように装置を構成した。また、中空糸膜前駆体30が導入される入口部23と導出される出口部は、いずれも加熱容器11の下部に形成し、水蒸気排出手段21が出口部を兼ねるようにした。
第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15bそれぞれにおいて、中空糸膜前駆体30は次亜塩素酸ナトリウム(酸化剤)水溶液を10回ピックアップする条件とした。
第1薬液槽15aおよび第2薬液槽15bそれぞれに供給する次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、濃度:120000mg/L、供給量:50ml/minとし、各槽15a、15bに供給された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、直ちに100℃に加熱された。
[洗浄工程および乾燥工程]
特開2008−161755号公報の実施例4に記載された減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程により構成された洗浄工程により、中空糸膜前駆体30の中に残存している洗浄可能な親水性ポリマーを洗浄除去し、中空糸膜を得た。
ついで、中空糸膜を熱風乾燥機に導入して乾燥した。
得られた中空糸膜を長手方向と垂直に切断した切断面を電子顕微鏡で観察したところ、断面は扁平化しておらず円形であった。また、得られた中空糸膜の径も長手方向に均質であり、細径化は認められなかった。
また、加熱容器11内において、高さの異なる3カ所(上段部、中段部、下段部)に熱電対をそれぞれ設置し、加熱工程の気相温度を測定したところ、上段部は100℃、中段部は99.5℃、下段部は99.5℃に維持され、加熱容器11の上下方向において、温度ムラは認められなかった。
なお、加熱容器11の内部の底部から天部(屋根)までの高さは140cmであり、上段部は底部から100cmの高さの位置、中段部は底部から65cmの高さの位置、下段部は底部から25cmの高さの位置とした。
<比較例>
第1の駆動ロールおよび第2の駆動ロールの駆動機構を制御する制御手段として、張力検出手段の検出結果がフィードバックされないものを用いた以外は、実施例と同様にして中空糸膜を製造した。
得られた中空糸膜を長手方向と垂直に切断した切断面を電子顕微鏡で観察したところ、断面は扁平化していた。
10 加熱装置
11 加熱容器
12 水蒸気供給手段
14a 第1の駆動ロール
14e 第2の駆動ロール
21 水蒸気排出手段(出口部)
23 入口部
30 中空糸膜前駆体(多孔質膜前駆体)
40 張力検出手段
50 制御手段

Claims (4)

  1. 親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された多孔質膜前駆体を加熱容器に導入して走行させ、前記多孔質膜前駆体を加熱する加熱工程を有する多孔質膜の製造方法であって、
    前記加熱工程では、前記加熱容器内に設けられた少なくとも1つの駆動ロールを有する走行手段により、前記多孔質膜前駆体を前記加熱容器内で走行させ、
    前記駆動ロールのうち、最も上流側に配置された駆動ロールよりもさらに上流側を走行する前記多孔質膜前駆体に加わる張力を検出し、検出された検出結果に応じて、最も上流側に配置された前記駆動ロールの回転速度を制御する、多孔質膜の製造方法。
  2. 親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む製膜原液の凝固により形成された多孔質膜前駆体を加熱する加熱装置を有する多孔質膜の製造装置であって、
    前記加熱装置は、
    前記多孔質膜前駆体が導入されて走行する加熱容器と、
    前記加熱容器内に設けられた少なくとも1つの駆動ロールを有し、前記多孔質膜前駆体を前記加熱容器内で走行させる走行手段と、
    前記駆動ロールのうち、最も上流側に配置された駆動ロールよりもさらに上流側を走行する前記多孔質膜前駆体に加わる張力を検出する張力検出手段と、
    該張力検出手段により検出された検出結果に応じて、最も上流側に配置された前記駆動ロールの回転速度を制御する制御手段と、
    を有する、多孔質膜の製造装置。
  3. 前記加熱装置は、
    常圧の飽和水蒸気を前記加熱容器内に供給することにより、前記加熱容器内を加熱する水蒸気供給手段と、
    前記飽和水蒸気を前記加熱容器から排出する水蒸気排出手段と、
    をさらに有し、
    前記水蒸気供給手段は、前記加熱容器の上部から前記飽和水蒸気を供給し、
    前記水蒸気排出手段は、前記加熱容器の下部から前記飽和水蒸気を排出する、請求項2に記載の多孔質膜の製造装置。
  4. 前記加熱容器には、前記多孔質膜前駆体が導入される入口部と導出される出口部とが形成され、
    前記入口部と出口部は、前記加熱容器の下部に形成されている、請求項3に記載の多孔質膜の製造装置。
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