JP4951332B2 - 中空糸膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、濾過膜などに好適に使用される中空糸膜の製造方法に関する。
食品工業分野、医療分野、電子工業分野等の分野における有用成分の濃縮、回収、不要成分の除去、造水等には、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、フッ素系樹脂等からなり、例えば湿式または乾湿式紡糸により製造された多孔質の中空糸膜が、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透濾過膜等に多用されている。
湿式または乾湿式紡糸により中空糸膜を製造する場合には、まず、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を調製する。ここで親水性ポリマーは、製膜原液の粘度を中空糸膜の形成に好適な範囲に調整し、製膜状態の安定化を図るために添加されるものであって、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン等が使用されることが多い。ついで、この製膜原液を環状に吐出し、凝固液中で凝固させる凝固工程により、中空糸膜が得られる。なお、製膜原液は空気と接触する空走部を経て、凝固液中へ導入されても(乾湿式紡糸法)、直接凝固液に導入されても(湿式紡糸法)よい。
ところが、この時点で得られた中空糸膜中には、通常、その多孔質部に親水性ポリマーが溶液の状態で多量に残存している。このように親水性ポリマーが残存していると、中空糸膜に求められる重要な性能の1つである透水性能が不十分となる。そのため、凝固工程の後には、このように残存している親水性ポリマーを中空糸膜から除去する工程が高透水性の中空糸膜を得るうえで必要となる。
残存している親水性ポリマーを中空糸膜から除去する方法としては、中空糸膜を水浴中で洗浄する方法がある。ところが、この方法は、中空糸膜中の親水性ポリマーが水浴中に拡散移動することにより、中空糸膜から除去されるものであるため、一般に長時間を要する。よって、中空糸膜を連続的に製造するプロセスにおいて、このような洗浄方法を採用すると、十分な洗浄時間を確保するために洗浄用の水浴設備を極端に大きくする必要があり、製造コストの点で問題がある。また、酸化剤や加水分解剤を用いて、親水性ポリマーを中空糸膜から除去しようとする方法も一般的に知られている(例えば特許文献1参照。)が、この方法でも長時間を要する。
特許文献2には、凝固後の中空糸膜に酸化剤を保持させた後、気相中で加熱する方法が開示されている。この方法によれば、酸化剤の濃度や、気相中で加熱する際の温度を制御することによって、効果的に親水性ポリマーを除去できると考えられるが、この方法でも、気相中での加熱の後には、中空糸膜を洗浄して低分子化された親水性ポリマーを除去する洗浄工程が最終的に必要であり、この洗浄工程での親水性ポリマーの除去も、やはり中空糸膜に残存している親水性ポリマーの拡散移動によるものである。
拡散移動の速度は、中空糸膜に残存している親水性ポリマーの濃度と膜外表面の親水性ポリマーの濃度との濃度差に依存するため、残存している親水性ポリマーの濃度が高い洗浄初期には拡散移動速度も大きく、洗浄時間に充分見合う親水性ポリマーの除去効果を期待できる。ところが、中空糸膜に残存している親水性ポリマーの濃度が次第に低くなると、上述の濃度差が小さくなり、それに伴って、洗浄時間に長時間を要するようになる。
より高い透水性能を発現させる場合には、中空糸膜に残存している親水性ポリマーをできるだけ除去する必要があるため、このように拡散移動に依存した方法では、やはり洗浄に長時間を要することとなり、水浴設備の大型化やこれに伴う設備コストやランニングコストの増大が懸念される。
これに対して、特許文献3には、加圧域において洗浄液を中空糸膜の外周側から内周側、すなわち中空部側へと圧入し、非加圧域において中空部から中空糸膜の外周側へ洗浄液を排出させ、中空糸膜を洗浄する方法が開示されている。
特許第3196029号公報 特開2005−42074号公報 特開平9−57078号公報
特許文献3の方法によれば、中空糸膜に残存している親水性ポリマーを洗浄液で強制的に外部へ排出させることができると考えられ、親水性ポリマーの拡散移動に依存した洗浄方法に比べると、洗浄時間を短縮できるものと期待できる。
しかしながら、この方法では、残存している親水性ポリマーの分子量が比較的大きい場合などには、加圧域で圧入された洗浄液中に分散した親水性ポリマーが中空部側までは移動できたとしても、非加圧域では通液抵抗のために中空部側から外周側へとは充分に排出されず、その結果、中空部内に親水性ポリマーが取り残されてしまうことが懸念される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、設備を大型化しなくても、低コスト、短時間で中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを十分に除去できる方法の提供を課題とする。
本発明の中空糸膜の製造方法は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程と、前記中空糸膜中に残存する前記親水性ポリマーを除去する親水性ポリマー除去工程とを有する中空糸膜の製造方法において、前記親水性ポリマー除去工程は、洗浄液の入った洗浄槽に設置され、側面に接続口が形成された筒部材に、該筒部材の一端から前記中空糸膜を連続的に導入するとともに、前記接続口に接続し前記筒部材内に洗浄液を供給するための供給手段を作動させ、前記洗浄液を前記中空糸膜の外周側から内周側に供給する洗浄液供給工程と、前記洗浄槽内に、前記洗浄液供給工程の筒部材と直列に、側面に接続口が形成された筒部材を設置し、該筒部材に、該筒部材の一端から前記中空糸膜を連続的に導入するとともに、前記接続口に接続した減圧手段を作動させ、前記中空糸膜の外周側を減圧して、前記中空糸膜の内周側に供給された前記洗浄液を外周側へ通液させ、前記親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へ排出させる減圧工程を有することを特徴とする。
前記中空糸膜は、前記減圧工程の筒部材、前記洗浄液供給工程の筒部材に順次導入されることが好ましい。
または、前記減圧工程の筒部材が2つ設置され、これら筒部材の間に前記洗浄液供給工程の筒部材が設置され、前記中空糸膜は、1つ目の減圧工程の筒部材、前記洗浄液供給工程の筒部材、2つ目の減圧工程の筒部材に順次導入されることが好ましい。
記親水性ポリマー除去工程は、気相中で前記中空糸膜の外周側を減圧する後工程を最後段に備えていることが好ましい。
本発明によれば、設備を大型化しなくても、低コスト、短時間で中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを十分に除去することができる。
本発明の中空糸膜の製造方法は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程と、この凝固工程の後に、中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを除去する親水性ポリマー除去工程とを有する。また、親水性ポリマー除去工程の後には、通常、中空糸膜を乾燥する乾燥工程を有する。以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
[凝固工程]
本発明の中空糸膜の製造方法は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程を有する。
製造する中空糸膜の構成には特に制限はなく、多孔質基材を備えたものを製造することもできる。例えば多孔質基材として組紐を備えた中空糸膜を製造する場合には、例えば、中心に中空部が形成され、その外側に環状の吐出口が形成されたノズルを使用し、中空部には組紐を導入し、この組紐の外周には吐出口からの製膜原液を塗布した後、これを凝固液に導入することによって凝固工程を行えばよい。多孔質基材を備えた中空糸膜は、多孔質基材を具備しない中空糸膜に比べて高強度なものとなる。一方、多孔質基材を具備しない通常の中空糸膜の場合には、環状の吐出口が形成されたノズルから製膜原液を吐出すればよい。また、こうして形成された膜の外側に製膜原液を再度塗布することにより多層構造の膜を形成させ、取扱時の擦れ等に対して耐久性のある中空糸膜を製造してもよい。
また、凝固工程は、製膜原液が空気と接触する空走部を経て、凝固液中へ導入される乾湿式紡糸法でも、直接凝固液に導かれる湿式紡糸法のいずれにより行ってもよい。
疎水性ポリマーは、凝固工程により中空糸膜を形成し得るものであればよく、そのようなものであれば特に制限なく使用できるが、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂の共重合体を使用してもよいし、これら樹脂や共重合体の一部に置換基を導入したものも使用できる。また、分子量などが異なる同種のポリマーをブレンドして用いても構わないし、2種以上の異なる種類の樹脂を混合して使用してもよい。これらのなかでフッ素系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデンやフッ化ビニリデン単体と他の単量体からなる共重合体は、次亜塩素酸などの酸化剤に対する耐久性が優れている。よって、酸化剤により処理されるような中空糸膜を製造する場合には、疎水性ポリマーとしてフッ素系樹脂を選択することが好適である。
親水性ポリマーは、製膜原液の粘度を中空糸膜の形成に好適な範囲に調整し、製膜状態の安定化を図るために添加されるものであって、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンなどが好ましく使用される。これらの中でも、中空糸膜の孔径の制御や中空糸膜の強度の点から、ポリビニルピロリドンやポリビニルピロリドンに他の単量体が共重合した共重合体が好ましい。
また、親水性ポリマーには、2種以上の樹脂を混合して使用することもできる。例えば親水性ポリマーとして、より高分子量のものを用いると、膜構造の良好な中空糸膜を形成しやすい傾向がある。一方、低分子量の親水性ポリマーは、後述の親水性ポリマー除去工程において中空糸膜からより除去されやすい点で好適である。よって、目的に応じて、分子量が異なる同種の親水性ポリマーを適宜ブレンドして用いてもよい。
上述した疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーをこれらが可溶な溶媒(良溶媒)に混合することにより、製膜原液を調製することができる。製膜原液には、必要に応じてその他の添加成分を加えてもよい。
溶媒の種類には特に制限はないが、乾湿式紡糸で凝固工程を行う場合には、空走部において製膜原液を吸湿させることによって中空糸膜の孔径を調整するため、水と均一に混合しやすい溶媒を選択することが好ましい。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシドなどが挙げられ、これらを1種以上使用できる。また、溶媒への疎水性ポリマーや親水性ポリマーの溶解性を損なわない範囲で、疎水性ポリマーや親水性ポリマーの貧溶媒を混合して使用してもよい。
製膜原液中における疎水性ポリマーの濃度は、薄すぎても濃すぎても製膜時の安定性が低下し、好適な中空糸膜構造が形成されに難くなる傾向にあるため、下限は10質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。また、上限は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。
一方、親水性ポリマーの濃度の下限は、中空糸膜をより形成しやすいものとするために1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。親水性ポリマーの濃度の上限は、製膜原液の取扱性の点から20質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。
凝固液としては、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を単独または混合して用いることができる。
[親水性ポリマー除去工程]
上述の凝固工程により形成された中空糸膜は、一般的に孔径が大きく高透水性を潜在的には有しているが、中空糸膜中に親水性ポリマーが溶液状態で多量に残存しているために、このままでは充分な高透水性を発揮できない。よって、凝固工程の後には、中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを除去する親水性ポリマー除去工程を行う。
本発明においては、親水性ポリマー除去工程として、少なくとも後述の減圧工程を行うことが必要であるが、その前に予備工程として、以下に説明する(i)中空糸膜の洗浄工程と、(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程と、(iii)低分子量化された親水性ポリマーの洗浄工程とを順次実施してもよい。このような予備工程を実施するか否かは、主に、中空糸膜の構造によって適宜判断すればよい。例えば、中空糸膜が多層構造である場合や孔径が緻密である場合などは、(i)〜(iii)の予備工程を実施することが好ましく、必要に応じて、この予備工程を複数回繰り返して行うことが、後の減圧工程の効果をより高める上で好ましい。
(予備工程)
(i)中空糸膜の洗浄工程
凝固工程で得られた中空糸膜には、親水性ポリマーが高濃度の溶液の状態で、膜(多孔質部)中に残存している。このような高濃度の親水性ポリマーは、ある程度までは、中空糸膜を洗浄液に浸漬することで比較的容易に除去される。よって、まず始めに、中空糸膜を洗浄液に浸漬して洗浄する工程を予備工程として行うことが好ましい。
洗浄液としては、清澄で親水性ポリマーが分散または溶解する液体であれば特に限定されるものではないが、洗浄効果が高いことから水が好ましい。使用する水としては、水道水、工業用水、河川水、井戸水等が挙げられ、これらにアルコール、無機塩類、酸化剤、界面活性剤等を混合して使用してもよい。また、洗浄液としては、疎水性ポリマーの良溶媒と水との混合液を用いることもできる。このような混合物を使用すると、中空糸膜を構成している疎水性ポリマーを適度に膨潤状態にし、その結果、中空糸膜に残存する親水性ポリマーを溶出させやすくすることができる。このような混合液を使用する場合、混合液中における良溶媒の割合が高いほどその効果は大きくなるが、高すぎると中空糸膜が溶解してしまうため、混合液中の良溶媒の割合の上限は85質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。
中空糸膜を洗浄液に浸漬して洗浄する場合、親水性ポリマーは主に拡散移動により除去されるため、拡散移動の効果を高めるための処理をともに行ってもよい。例えば、バブリングやカスケード処理を行って濃度勾配を大きくしたり、洗浄液を強制的に流したりしてもよい。また、洗浄液の温度を高温にしたり、洗浄液として脱気水を使用したりしてもよい。また、これらの処理は単独でも効果があるが、併用して行うことがより好ましい。
例えば洗浄温度は、親水性ポリマーの溶液の粘度を低く抑えて、拡散移動速度の低下を防ぐため、高い方が好適であり、50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。さらに、洗浄液を沸騰させながら洗浄を行うと、沸騰によるバブリングによって中空糸膜の外表面を掻き取ることもできるため、効率のよい洗浄が可能となる。
(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程
上述の(i)中空糸膜の洗浄工程によって、中空糸膜に残存する親水性ポリマーは、比較的濃度の低い状態となっている。このような低濃度の場合に、より高い洗浄効果を得るためには、酸化剤を使用して親水性ポリマーを酸化分解し、低分子量化することが好ましい。
具体的には、まず、中空糸膜に酸化剤を含む薬液を保持させ、ついで、薬液を保持した中空糸膜を気相中で加熱する方法が好ましい。中空糸膜に酸化剤を含む薬液を保持させるためには、中空糸膜の膜(多孔質部)に酸化剤を浸透させる方法や、中空糸膜の表面に残存する親水性ポリマーに酸化剤を吸収、膨潤させることが考えられ、そのための具体的方法としては、ローラー表面に酸化剤をつけ、中空糸膜をローラーに巻きつけながら酸化剤と接触させる方法、中空糸膜の外径より少し大きな内径のリング孔に中空糸膜を通して、リング内表面に酸化剤を供給することで中空糸膜表面に酸化剤を直接塗布する方法等も挙げられるが、酸化剤を含む薬液に中空糸膜を浸漬させる方法が最も好適である。
酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過硫酸塩等を使用することもできるが、酸化力が強く分解性能に優れること、取扱い性に優れること、安価なこと等の点より、特に次亜塩素酸塩が好ましい。次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが挙げられるが、特に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
酸化剤を含む薬液に中空糸膜を浸漬すると、中空糸膜中に残存する親水性ポリマーの少なくとも一部が酸化分解を開始して薬液中に溶出し、酸化剤を消費する。よって、浸漬中には、薬液の酸化剤濃度を一定範囲に維持するために、薬液に酸化剤を適宜追加することが好ましい。ただし、このような浸漬時には、薬液を中空糸膜に単に浸漬させるだけにとどめ、できるだけ親水性ポリマーを酸化分解させず、実質的には、ついで行われる気相中での加熱により親水性ポリマーの酸化分解が行われるようにすることが、酸化剤の使用量を必要最小限に抑制する点で好適である。そのためには、薬液の温度は50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。50℃より高温であると、中空糸膜の浸漬中に酸化分解が促進され、薬液中に脱落した親水性ポリマーがさらに酸化分解し、酸化剤の浪費が進んでしまう。このような酸化剤の浪費は作業の手間やコストを増加させ、また、廃液処理の負荷も増加させる傾向にある。一方、過度に低温であると、酸化分解は抑制されるものの、常温で実施する場合と比較して、低温に温度制御するためのコストなどが増加する傾向にある。よって、その点からすると、薬液の温度は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
また、酸化剤として次亜塩素酸塩を用いる場合、次亜塩素酸塩の分解を極力抑えるために、酸化剤を含む薬液のpHを11以上とすることが好ましい。さらに、薬液中の酸化剤の濃度は、ピックアップ量を少量とし、酸化分解処理で極力無駄なく酸化剤を消費させることから適切な範囲とする必要があり、次亜塩素酸塩を使用する場合、有効塩素濃度の下限は2000mg/Lが好ましく、5000mg/L以上がより好ましい。上限は、120000mg/L以下が好ましく、100000mg/L以下がより好ましい。
中空糸膜に薬液を保持させたあとは、中空糸膜を気相中で加熱することにより、親水性ポリマーを酸化分解する。気相中での加熱によれば、中空糸膜中に保持された薬液が大きく希釈されたり、薬液が加熱媒体中へ脱落溶出したりすることがほとんどなく、薬液中の酸化剤が中空糸膜中に残存する親水性ポリマーの分解に効率よく使用されるため好ましい。
具体的な加熱方法としては、大気圧下で加熱流体を用いて中空糸膜を加熱することが好ましい。大気圧下で行うことによって、連続処理を行う場合であっても中空糸膜の出入口に特殊なシール装置を設けたり、耐圧構造の装置を使用したりする必要がないため、装置メリットが大きく、操作性も非常に優れる。
また、加熱流体としては相対湿度の高い流体を使用すること、すなわち湿熱条件で加熱を行うことが、次亜塩素酸塩などの酸化剤の乾燥を防ぎ、効率的な分解処理が可能となるため好ましい。その際、流体の相対湿度としては80%以上が好ましく、90%以上とすることがより好ましく、100%近傍とするのが最も好ましい。
加熱温度の下限は、連続処理を行う場合、処理時間を短くできることから50℃とするのが好ましく、80℃がより好ましい。温度の上限は、大気圧状態では100℃とするのが好ましい。
(iii)低分子量化された親水性ポリマーの洗浄工程
このように、(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程を実施した後には、上述した(i)中空糸膜の洗浄工程と同様の条件にて、再度、中空糸膜を洗浄液に浸漬して洗浄し、低分子量化された親水性ポリマーをある程度除去することが好ましい。
(減圧工程および洗浄液供給工程)
以上のようにして必要に応じて予備工程を行った後、減圧工程を行う。このような減圧工程によれば、予備工程を行ってもなお残存している親水性ポリマーであっても、効果的に除去することができる。
減圧工程は、中空糸膜の外周側を減圧して、中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へ排出させる工程であって、中空糸膜の外周側の圧力が内周側(中空部)よりも低くなるようにし、その際の圧力差により、親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へと移動させ、除去するものである。
減圧工程の具体的方法には特に制限はないが、例えば図1に示すような耐圧性の筒部材11を用いる方法が挙げられる。
この筒部材11は、減圧ポンプなどの減圧手段を接続するための接続口11aが側面に形成されているとともに、両端には、中空糸膜10が通過できる程度のクリアランスを有しつつ、筒部材11の内部を外部よりも減圧状態または加圧状態に保つことのできる、例えばラビリンスシールなどからなる図示略のシール機構が設けられている。このような筒部材11を大気中などの気相中に配置し、凝固工程と必要に応じて予備工程とを経た中空糸膜10を筒部材11内にその一端11bから連続的に導入するとともに減圧手段を作動させることにより、筒部材11内において、中空糸膜10の外周側が減圧され、中空糸膜10中に残存する親水性ポリマーが気相に同伴されて中空糸膜10の外周側へと吸引、除去される。
より好ましい方法としては、図2に示すように、洗浄液の入った洗浄槽12を用意し、この洗浄槽12中に中空糸膜10を浸漬し、洗浄液に浸漬されたこの中空糸膜10に対して、図1の場合と同様に減圧工程を行う方法が挙げられる。
このようして減圧工程を行った場合において、中空糸膜10の内周側と外周側との圧力差が大きいと、主に図3中矢印で示すような洗浄液の流れを生じさせることができ、その結果、筒部材11からは露出し、洗浄液中には浸漬された部分の中空糸膜10において、洗浄槽12中の洗浄液が膜(多孔質部)を通過し、中空糸膜10の内周側に導入される。導入された洗浄液は、その後、減圧手段の作動により、再び膜(多孔質部)を通過して、外周側に排出される。その結果、中空糸膜10中に残存する親水性ポリマーが洗浄液とともに接続口11aから除去される。
このように減圧工程により中空糸膜10の内周側から外周側へ洗浄液を通液させる方法によれば、中空糸膜10から引き離された親水性ポリマーは洗浄液に分散または溶解し、洗浄液とともに吸引、除去されるため、中空糸膜10に付着する懸念も軽減され、高い除去効果が得られる。
なお、洗浄液に浸漬された中空糸膜10に対して、このように減圧工程を行った際においては、減圧手段の作動圧力(ゲージ圧)や中空糸膜10の構造などにより、中空糸膜10の内周側と外周側との圧力差が大きくならない場合もある。その場合には、通液抵抗により、洗浄槽12中の洗浄液が外周側から膜(多孔質部)を通過して内周側までは通液できず、その結果、内周側には空気が充満したままで、洗浄液が内周側に導入されないこともある。しかしながら、その場合でも、洗浄槽12中の洗浄液は少なくとも中空糸膜10の膜(多孔質部)にはある程度吸収されるため、主に図4中矢印で示すような洗浄液の流れ、すなわち、中空糸膜10の外周側→膜(多孔質部(図中断面で示す。))10a→外周側という流れが生じ、吸収された洗浄液は減圧手段の作動により中空糸膜10の外周側へと排出される。その結果、この場合でも、中空糸膜10中に残存する親水性ポリマーは、洗浄液とともに中空糸膜10の外周側へと除去され、接続口11aから排出される。
さらに効果的な方法としては、このような減圧工程の後段に、中空糸膜10の外周側から内周側に洗浄液を強制的に供給する洗浄液供給工程を設ける方法が挙げられる。
具体的には、図5に示すように、2つの筒部材11,11を間隔をあけて洗浄槽12中に直列に設置し、前段側(図中左側)の筒部材11の接続口11aには減圧手段(図示略)を接続し、後段側(図中右側)の筒部材11の接続口11aには洗浄液を供給するための加圧供給ポンプなどの供給手段(図示略)を接続する。
そして、中空糸膜10をこれら筒部材11,11内に前段側から順次導入するとともに、減圧手段と供給手段とを作動させる。すると、主に図6中矢印で示すような洗浄液の流れが生じて、後段側の筒部材11内においては中空糸膜10の外周側から内周側に洗浄液が供給され(洗浄液供給工程)、前段側の筒部材11内においては中空糸膜10の内周側から外周側へ洗浄液を通液させることができる(減圧工程)。
このように減圧工程の後段に洗浄液供給工程を設けると、減圧工程において中空糸膜10の内周側から外周側へ通液する洗浄液量が図3の場合よりも増加し、その結果、親水性ポリマーの除去効果が大きくなる。
減圧工程および洗浄液供給工程の条件は、中空糸膜10の膜構造や、中空糸膜10中に残存している親水性ポリマー濃度などに応じて、適宜設定すればよいが、減圧工程で過度に減圧したり、洗浄液供給工程で供給圧力を過度に高めたりすると、各筒部材11,11を耐圧性にするための設備コストが増大するし、特に供給圧力が高い場合には、洗浄液供給工程が行われる後段側の筒部材11の両端のシール機構から大量に洗浄液が流出し、中空糸膜10が糸揺れするという懸念も生じる。また、中空糸膜10自体の耐圧性能を考慮する必要もある。これらの点から、減圧工程の圧力は、減圧手段のゲージ圧として好ましくは−0.05〜−0.1MPa、より好ましくは−0.08〜−0.1MPaであり、洗浄液供給工程の供給圧力は、供給手段のゲージ圧として好ましくは0を超えて0.4MPa以下、より好ましくは0を超えて0.3MPa以下である。また、このような範囲内では、減圧工程と洗浄液供給工程とのゲージ圧の圧力差が大きいほど、より高い親水性ポリマー除去効果が得られる傾向にある。
減圧工程および洗浄液供給工程での中空糸膜10の各滞在時間(筒部材11,11に滞在する時間)はそれぞれ2〜10秒間であれば、効率的に、充分な親水性ポリマー除去効果を得ることができる。
洗浄槽12中の洗浄液としては、上記(i)中空糸膜の洗浄工程において例示したものの中から選択して使用でき、洗浄効果が高いことから水を使用することが好ましい。また、洗浄液供給工程では、洗浄液を加圧蒸気の形態として中空糸膜の外周側に供給してもよい。加圧蒸気は供給後には圧力低下して、高温の洗浄液として中空糸膜10に圧入されるため、より効果的に親水性ポリマーを洗浄液中に捕らえ、除去することができる。
なお、図5では、中空糸膜10を洗浄液の入った洗浄槽12中に浸漬した状態で、減圧工程と洗浄液供給工程とを順次行う方法を例示したが、必ずしも洗浄槽12に浸漬する必要はなく、大気中などの気相中に2つの筒部材を直列に配置して、前段側の筒部材の接続口には減圧手段を接続し、後段側の筒部材の接続口には洗浄液を供給する供給手段を接続する形態としてもよい。
ただし、図5のように洗浄槽12内で実施すれば、2つの筒部材11,11の間において露出した中空糸膜10が洗浄液中に浸漬した状態となるため、この部分でも、弱いながらも親水性ポリマーを洗浄する効果が得られるようになる。また、気相中に筒部材を配置して実施した場合には、2つの筒部材の間において露出した中空糸膜から洗浄液が外部に漏れ出て、これを拭き取るなどの作業が必要となる場合があるのに対して、図5のように洗浄槽12内で実施すれば、洗浄液が漏れ出たとしても特に問題はない。
さらに、筒部材11,11の両端のシール機構は、上述したように、中空糸膜10が通過できる程度のクリアランスを有するものであるため、筒部材11,11を気相中に配置して実施するよりも、図5のように気相よりも粘度の高い液相中に浸漬して実施する方が、減圧工程および洗浄工程それぞれにおいて、より短時間で筒部材11,11内を目的とする圧力(ゲージ圧)にまで到達させることができるし、その分、シール機構のクリアランスを大きく設定したり、シール機構の設置長さ(筒部材の長さ方向)を短く設定したりもできる。
また、図5では、洗浄液供給工程を減圧工程の後段に設けた場合を例示したが、減圧工程が後段であってもよい。
ただし、減圧工程が後段であると、洗浄液供給工程では、未だ減圧工程を経ておらず親水性ポリマーが多く残存する中空糸膜に対して洗浄液を供給することとなる。その結果、親水性ポリマーを多く含んだ洗浄液が減圧工程中の中空糸膜に供給され、供給された洗浄液中の親水性ポリマーが中空糸膜に再付着してしまう可能性が生じる。よって、洗浄液供給工程を減圧工程の後段に設ける方が好ましい。
さらに好ましい形態としては、図7に示すように、洗浄液供給工程の後段に、再度、減圧工程を設けて、ここでも中空糸膜10の内周側から外周側へ洗浄液を通液させるようにした形態が挙げられる。このような方法によれば、減圧工程が繰り返し設けられているために、中空糸膜10に残存する親水性ポリマーのうち、中空糸膜10の多孔質部の壁面に付着しているものなど、特に除去され難いものに対しても高い除去効果を発揮することができる。この場合にも、各減圧工程の圧力は、減圧手段のゲージ圧として好ましくは−0.05〜−0.1MPa、より好ましくは−0.08〜−0.1MPaであり、洗浄液供給工程の供給圧力は、供給手段のゲージ圧として好ましくは0を超えて0.4MPa以下、より好ましくは0を超えて0.3MPa以下である。
なお、図7においては、前段側から減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程の3工程を実施する場合を例示しているが、より高い親水性ポリマーの除去効果が要求される場合には、さらに後段側において、洗浄液供給工程および減圧工程を適宜繰り返してもよい。
(後工程)
上述したように、洗浄液を使用し、これを中空糸膜の内周側から外周側へ通液させる減圧工程を少なくとも行った際には、親水性ポリマー除去工程中の最後段において、例えば図1のようにして、大気中などの気相中で中空糸膜の外周側を減圧する後工程を行うことが好ましい。このような後工程を行うことによって、中空糸膜に残存している主に水分を除去でき、その後の乾燥工程の負荷を低減することができる。このような後工程では、中空糸膜中の親水性ポリマーはすでに除去されていて、ほぼ水分のみが残存した状態になっているため、効果的な水分除去が行える。
[乾燥工程]
乾燥工程の方法としては特に制限はなく、中空糸膜を熱風乾燥機などの乾燥装置に導入する方法で行えばよい。
以上説明したような方法によれば、親水性ポリマー除去工程として、中空糸膜の外周側を減圧して、親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へ排出させる減圧工程を少なくとも備えているため、親水性ポリマーの拡散移動に依存した従来の方法のように水浴設備を大型化しなくても、低コスト、短時間で中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを十分に除去できる。
なお、中空糸膜に残存している親水性ポリマーの量は、赤外分光光度計により中空糸膜の吸光度スペクトルを得て、この吸収スペクトルにおける疎水性ポリマーの吸収強度と親水性ポリマーの吸収強度とを比較することにより把握できる。例えば、疎水性ポリマーとしてポリフッ化ビニリデン、親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドンを使用して中空糸膜を製造した場合には、ポリビニルピロリドンのカルボニル基伸縮振動(1700cm−1)による吸収強度と、ポリフッ化ビニリデンのC−F伸縮振動(1400cm−1)による吸収強度を求める。そして、ポリフッ化ビニリデンのC−F伸縮振動による吸収強度を100%とした際に、ポリビニルピロリドンのカルボニル基伸縮振動の吸収強度が何%に相当するかをこれら吸収強度の比から求め、この値(%)を残存している親水性ポリマーの量とする。
また、中空糸膜が例えば組紐のような多孔質基材を備えたものである場合には、中空糸膜を溶剤(例えばN,N−ジメチルアセトアミドなど)に加えて溶解させ、不溶成分である多孔質基材を取り除いた後、溶液をガラス板上などで蒸発乾固させてフィルム(例えば厚さ20μm程度)にし、このフィルムについて上述のようにして吸光度スペクトルを測定すればよい。
以下、実施例を基に本発明を詳しく説明する。
比較例1
(凝固工程)
表1に示す質量比となるように、ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名カイナー301F)、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名カイナー9000LD)、ポリビニルピロリドン(ISP社製、商品名K−90)、N,N−ジメチルアセトアミドをそれぞれ混合して、製膜原液(1)および製膜原液(2)を調製した。
ついで、中心に中空部が形成され、その外側に、2種の液を順次塗布できるように環状の吐出口が二重に順次形成されたノズル(特開2005−42074号公報の図1参照。)を用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には多孔質基材としてポリエステル製マルチフィラメント単繊組紐(マルチフィラメント;830T/96F、16打ち)を導入するとともに、その外周に製膜原液(2)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、80℃に保温した凝固液(N,N−ジメチルアセトアミド5質量部と水95質量部との混合液)中で凝固させた。このようにして、外表面近傍に分画層を1層有し、内部に向かって孔径が増大する傾斜構造の多孔質層が組紐にコーティングされた中空糸膜を得た。なお、塗布された製膜原液(1)および(2)のうち、中空糸膜の膜構造を形成する主原液は、外側に塗布された製膜原液(1)である。
さらに、この中空糸膜の外径よりも大きい内径の中空部が中心に形成され、その外側に、2種の液を順次塗布できるように環状の吐出口が二重に順次形成されたノズル(特開2005−42074号公報の図1参照。)を用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には上述のようにして得られた中空糸膜を導入するとともに、その外周にグリセリン(和光純薬工業製 一級)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、先に使用したものと同じ80℃に保温された凝固液中で凝固させた。このようにしてさらに多孔質層がコーティングされた2層構造で組紐支持体を有する中空糸膜を得た。
このときの紡糸速度(中空糸膜の走行速度)は7.3m/minとした。
Figure 0004951332
(親水性ポリマー除去工程)
こうして得られた中空糸膜について、次のようにして、親水性ポリマー除去工程を実施した。
(1)予備工程
予備工程として、以下の(i)〜(iii)の工程を2回繰り返して行った。
(i)中空糸膜の洗浄工程
100℃の沸騰水が入れられた洗浄槽中に、中空糸膜を滞在時間5分間の条件で浸漬し、洗浄を行った。
(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程
次に、温度30℃、濃度60000mg/Lの次亜塩素酸塩の水溶液が入れられた水槽中に、中空糸膜を滞在時間1分間の条件で浸漬した。その後、温度85℃、相対湿度100%の湿熱中、滞在時間3分の条件で加熱し、親水性ポリマーを低分子量化した。
(iii)低分子量化された親水性ポリマーの洗浄工程
次に、この中空糸膜を(i)と同じ条件で再度洗浄した。
(2)減圧工程−減圧工程
図7に示すように、洗浄液として温度74℃の水が入れられた洗浄槽12を用意し、その中に、3つの筒部材11,11,11を間隔をあけて直列に配置した。そして、これらの筒部材11,11,11に前段側から中空糸膜10を順次導入するとともに、3つのうち最前段の筒部材11の接続口11aと3つのうち最後段の筒部材11の接続口11aには減圧手段を接続し、それぞれ減圧手段のゲージ圧が前段側の減圧工程(表2中、減圧工程(I)と記載。)で−0.06MPa、後段側の減圧工程(表2中、減圧工程(II)と記載。)−0.05MPaとなるように減圧した。また、中空糸膜10が各筒部材11,11,11中に滞在する時間(滞在時間)はいずれも約3秒間とした。
一方、3つのうち中央の筒部材11の接続口11aには供給手段を接続し、洗浄液を別途供給できる構成としたが、本比較例1では供給手段を作動させなかった。なお、供給手段が接続されたこの筒部材11内には、両端のシール機構のクリアランスから浸入してきた洗浄液が満たされていた。
(乾燥工程)
親水性ポリマー除去工程後に、95℃×3分間の条件の乾燥工程に中空糸膜を通過させた。
このような凝固工程、親水性ポリマー除去工程、乾燥工程により製造された2層構造で組紐支持体を有する中空糸膜は、外径2.8mm、内径1.0mmであった。
また、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの量(残存量)を以下のようにして求めたところ、表2に示すように1.62質量%であった。
(残存しているポリビニルピロリドンの量の測定)
所定長さに中空糸膜を切り出し、これをN,N−ジメチルアセトアミドに加え、膜を溶解させた。ついで、不溶成分である多孔質基材を取り除いた後の溶液をガラス板上で蒸発乾固させて、厚さ20μm程度のフィルムを得た。ついで、このフィルムをサンプルとして、赤外分光光度計により吸光度スペクトルを測定した。
そして、ポリフッ化ビニリデンのC−F伸縮振動による吸収強度を100%とした際に、ポリビニルピロリドンのカルボニル基伸縮振動の吸収強度が何%に相当するかをこれら吸収強度の比から求め、この値(%)を残存しているポリビニルピロリドンの残存量とした。
実施例1
比較例1の親水性ポリマー除去工程の(2)減圧工程−減圧工程の代わりに、(2)減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程を実施した以外は、比較例1と同様にして中空糸膜を製造した。
具体的には、図7において、最前段の筒部材11の接続口11aと最後段の筒部材11の接続口11aには減圧手段を接続し、それぞれ減圧手段のゲージ圧が表2に示す−0.06MPa、−0.05MPaとなるように減圧した。また、3つのうち中央の筒部材11の接続口11aに接続された供給手段からは、ゲージ圧が0.05MPaとなるように74℃の水を洗浄液として供給した。各筒部材11,11,11における中空糸膜10の滞在時間はいずれも約3秒間とした。
中空糸膜中のポリビニルピロリドンの残存量を表2に示す。また、得られた中空糸膜の外径および内径は比較例1と同じであった。
実施例2
各減圧手段と洗浄液供給手段のゲージ圧が表2に示す値となるように、(2)減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程を実施した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を製造した。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの残存量を表2に示す。また、得られた中空糸膜の外径および内径は比較例1と同じであった。
実施例3
各減圧手段と洗浄液供給手段のゲージ圧が表2に示す値となるように、(2)減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程を実施した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を製造した。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの残存量を表2に示す。また、得られた中空糸膜の外径および内径は比較例1と同じであった。
また、この実施例3では、乾燥工程前後の中空糸膜1mあたりについて質量測定を実施した。その結果、乾燥工程前後で2.6g/mの質量差があり、乾燥工程により2.6g/mの水分が除去されたことがわかった。
実施例4
親水性ポリマー除去工程として、実施例3と同様にして(1)予備工程と(2)減圧工程−洗浄液供給工程−減圧工程とを実施した後、親水性ポリマー除去工程中の最後段において、大気中で中空糸膜の外周側を減圧する後工程を行ってから、乾燥工程を行った。それ以外は、実施例3と同様にして中空糸膜を製造した。なお、後工程は図1のような装置工程にて行い、減圧手段のゲージ圧が−0.06MPaとなるようにし、滞在時間は5秒間とした。
このような後工程中にトラップを設け、後工程で中空糸膜から除去された水分量を測定したところ、単位時間あたりで7g/min、中空糸膜長さあたりに換算すると0.96g/mであった。この結果と、実施例3の乾燥工程で除去された水分量が2.6g/mであったこととをあわせて考えると、本実施例4における後工程によれば、乾燥工程で除去される水分のうち36.9質量%(=0.96/2.6×100)が除去され、乾燥工程の負荷を軽減していることが示された。
比較例2
親水性ポリマー除去工程として(1)予備工程のみを行い、減圧工程や洗浄液供給工程を一切行わなかった以外は、比較例1と同様にして中空糸膜を製造した。中空糸膜中のポリビニルピロリドンの残存量を表2に示す。また、得られた中空糸膜の外径および内径は比較例1と同じであった。
Figure 0004951332
表2に示すように、比較例1や、親水性ポリマー除去工程として(1)予備工程のみを行った比較例2に比べて各実施例では、製造された中空糸膜中のポリビニルピロリドン残存量が低く、高い親水性ポリマー除去効果が得られていた。また、その際、減圧工程と洗浄液供給工程とのゲージ圧の圧力差が大きいほど、より高い親水性ポリマー除去効果が得られる傾向にあった。
減圧工程の一例を示す概略構成図である。 減圧工程の他の一例を示す概略構成図である。 図2の減圧工程における洗浄液の流れの一例を示す説明図である。 図2の減圧工程における洗浄液の流れの他の一例を示す説明図である。 減圧工程の後段に洗浄液供給工程を設けた一例を示す概略構成図である。 図5の減圧工程および洗浄液供給工程における洗浄液の流れを示す説明図である。 減圧工程の後段に洗浄液供給工程を設け、さらに減圧工程を設けた一例を示す概略構成図である。
符号の説明
10 中空糸膜

Claims (4)

  1. 疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程と、前記中空糸膜中に残存する前記親水性ポリマーを除去する親水性ポリマー除去工程とを有する中空糸膜の製造方法において、
    前記親水性ポリマー除去工程は、洗浄液の入った洗浄槽に設置され、側面に接続口が形成された筒部材に、該筒部材の一端から前記中空糸膜を連続的に導入するとともに、前記接続口に接続し前記筒部材内に洗浄液を供給するための供給手段を作動させ、前記洗浄液を前記中空糸膜の外周側から内周側に供給する洗浄液供給工程と、
    前記洗浄槽内に、前記洗浄液供給工程の筒部材と直列に、側面に接続口が形成された筒部材を設置し、該筒部材に、該筒部材の一端から前記中空糸膜を連続的に導入するとともに、前記接続口に接続した減圧手段を作動させ、前記中空糸膜の外周側を減圧して、前記中空糸膜の内周側に供給された前記洗浄液を外周側へ通液させ、前記親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へ排出させる減圧工程を有することを特徴とする中空糸膜の製造方法。
  2. 前記中空糸膜は、前記減圧工程の筒部材、前記洗浄液供給工程の筒部材に順次導入されることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
  3. 前記減圧工程の筒部材が2つ設置され、これら筒部材の間に前記洗浄液供給工程の筒部材が設置され、
    前記中空糸膜は、1つ目の減圧工程の筒部材、前記洗浄液供給工程の筒部材、2つ目の減圧工程の筒部材に順次導入されることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
  4. 前記親水性ポリマー除去工程は、気相中で前記中空糸膜の外周側を減圧する後工程を最後段に備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の中空糸膜の製造方法。
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