JP6436185B2 - 中空糸膜の製造方法 - Google Patents
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Description
このような方法で製造された中空糸膜の多孔質部には、通常、親水性ポリマーが溶液の状態で残存している。そのため、この親水性ポリマーを洗浄等で除去した後、中空糸膜を乾燥する。
<1>疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程と、
前記凝固工程で形成された中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを洗浄によって除去する親水性ポリマー除去工程と、
前記親水性ポリマー除去工程の後、連続的に走行する中空糸膜を圧力が低下した液体中に浸漬して通過させ、中空糸膜が保持している水分を低減する膜保持水分減少工程と、
前記膜保持水分減少工程の後で中空糸膜を乾燥する乾燥工程とを有する中空糸膜の製造方法。
<2>前記膜保持水分減少工程の圧力範囲が−0.06MPa〜−0.1MPaである、<1>に記載の中空糸膜の製造方法。
<3>前記乾燥工程の直前に前記膜保持水分減少工程を有する、<1>又は<2>に記載の中空糸膜の製造方法。
<4>前記膜保持水分減少工程の液体の温度が30℃〜50℃である、<1>〜<3>のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
本実施形態例の中空糸膜の製造方法では、まず、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を調製する。ついで、通常、この製膜原液を環状の吐出口を有するノズルから凝固液中に吐出し、凝固液中で前記製膜原液を凝固させることにより、中空糸膜を形成する。
凝固工程は、製膜原液が空気と接触する空走部を経て、凝固液中へ導入される乾湿式紡糸法でも、直接凝固液に導かれる湿式紡糸法のいずれの方法で行ってもよい。また、ここで製造する中空糸膜の構成は、本発明の効果を有する限り特に制限はなく、例えば多孔質基材を備えた構成であってもよく、多層構造であってもよく、取扱時の擦れ等に対して耐久性を有する構成であってもよい。
尚、多孔質基材の例としては、本発明の効果を有する限り特に限定されるものではないが、各種の繊維で製紐された中空状の編紐や組紐等が挙げられる。これらは、各種素材を単独で、または組み合わせて用いることができる。中空編紐や組紐に使用される繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維等が挙げられる。また繊維の形態は、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸のいずれであっても良い。
疎水性ポリマーは、凝固工程により中空糸膜を形成し得るものであれば、本発明の効果を有する限り特に制限なく使用できるが、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートなどが好ましく用いられる。また、これらの樹脂の共重合体を使用してもよいし、これら樹脂や共重合体の一部に置換基を導入した樹脂等も使用できる。また、分子量などが異なる同種のポリマーをブレンドして用いても構わないし、2種以上の異なる種類の樹脂を混合して使用してもよい。このうち、フッ素系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデン単体とその他の単量体からなる共重合体は、次亜塩素酸などの酸化剤に対する耐久性が優れているため好ましい。よって、例えば後述の親水性ポリマー除去工程などで、次亜塩素酸などの酸化剤により処理を行う場合は、疎水性ポリマーとしてフッ素系樹脂を選択することが好適である。
親水性ポリマーは、製膜原液の粘度を中空糸膜の形成に好適な範囲に調整し、製膜状態の安定化を図るために添加されるものであって、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンなどが好ましく使用される。これらの中でも、中空糸膜の孔径の制御や中空糸膜の強度の点から、ポリビニルピロリドンや、ポリビニルピロリドンにその他の単量体を共重合させた共重合体が好ましい。
また、親水性ポリマーには、2種以上の樹脂を混合して使用することもできる。例えば親水性ポリマーとして、より高分子量、すなわち、質量平均分子量が50万〜60万の樹脂を用いると、膜構造の良好な中空糸膜を形成しやすい傾向がある。一方、低分子量、すなわち、質量平均分子量が20万〜30万の親水性ポリマーであれば、後述の親水性ポリマー除去工程において中空糸膜から除去されやすいため好適に用いることができる。よって、目的に応じて、分子量(質量平均分子量)が異なる同種の親水性ポリマーを適宜ブレンドして用いてもよい。
溶媒の種類としては、本発明の効果を有する限り特に制限はないが、乾湿式紡糸で凝固工程を行う場合には、空走部において製膜原液を吸湿させることによって中空糸膜の孔径を調整するため、水と均一に混合しやすい溶媒を選択することが好ましい。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシドなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記溶媒には、疎水性ポリマーや親水性ポリマーの溶解性を損なわない範囲で、疎水性ポリマーや親水性ポリマーの貧溶媒を混合して使用してもよい。
製膜原液の温度は、10〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。製膜原液の温度が高くなるほど、同一組成の製膜原液が相分離を始めるのに必要な貧溶媒成分の含有率は上昇する傾向にある。そのため、同じ組成、かつ同じ温度の凝固液に製膜原液を浸漬した場合には、製膜原液の相分離速度が低下し、形成される相分離構造は粗雑化し、得られる中空糸膜の膜透水能が高くなる。
ところで、製膜原液を高温で長時間保持すると、前記製膜原液の種類、又は組成によっては、製膜原液のゲル化や変質が発生するといった問題がある。また、製膜原液中のポリマー成分として高分子量のものを用いたり、製膜原液中の前記ポリマー成分の濃度が高い場合は、製膜原液の温度を下げすぎると製膜原液の粘度が高くなり、安定して製膜を行うことが困難になる場合がある。したがって、これらの観点から、製膜原液の温度は、10〜100℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。
一方、親水性ポリマーの濃度の下限は、中空糸膜をより形成しやすいものとするために製膜原液の総質量に対して、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。親水性ポリマーの濃度の上限は、製膜原液の取扱性の点から、製膜原液の総質量に対して、20質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。すなわち、製膜原液中における親水性ポリマーの濃度は、製膜原液の総質量に対して、1〜20質量%が好ましく、5〜12質量%がより好ましい。
凝固液の温度が低いほど、凝固液に浸漬された製膜原液の相分離速度が上昇し、形成される相分離構造が緻密化する傾向にある。一方で、相分離構造が形成された後の中空状多孔質膜中の良溶媒と、凝固液中の貧溶媒との相互拡散速度が遅くなり、中空状多孔質膜が機械的強度を発現するために要する凝固の時間が長くなるといった問題がある。逆に凝固液の温度が高い場合、凝固液に浸漬された製膜原液の相分離速度が低下し、形成される相分離構造は粗雑化して、中空状多孔質膜の膜透水能は高くなり、相分離構造が形成された後の中空状多孔質膜中に残存する良溶媒と、凝固液中の貧溶媒との相互拡散速度は速くなるため、中空状多孔質膜が機械的強度を発現するために要する凝固の時間は短くなる。 ただ、凝固液の温度が高くなるほど凝固液の温度を一定に保つための加熱手段、断熱手段を強化する必要がある。また、凝固液中の良溶媒、および貧溶媒が凝固液面から蒸発しやすくなり、低温部での結露が発生し易くなる。また凝固液温度が凝固液の沸点以上の場合、凝固液の沸騰によって凝固液面が遥動し、安定した製膜が困難となる。
このような観点から、凝固液の温度としては、好ましくは40〜90℃、更に好ましくは50〜80℃である。
本実施形態例の中空糸膜の製造方法では、親水性ポリマー除去工程を有することが好ましい。
上述の凝固工程により形成された中空糸膜は、一般的に孔径が大きく高透水性を潜在的には有しているが、中空糸膜の多孔質部中に親水性ポリマーが溶液状態で多量に残存していると、充分な高透水性を発揮できない。よって、凝固工程の後には、中空糸膜の多孔質部中に残存する親水性ポリマーを除去する、親水性ポリマー除去工程を行うことが好ましい。
(i)中空糸膜の洗浄工程は、凝固工程で得られた中空糸膜を洗浄液に浸漬して洗浄する工程である。中空糸膜の洗浄工程で使用する洗浄液としては、清澄で親水性ポリマーが分散または溶解する液体であれば、本発明の効果を有する限り特に限定されるものではないが、洗浄効果が高いことから水が好ましい。使用する水としては、水道水、工業用水、河川水、井戸水等が挙げられ、これらにアルコール、無機塩類、酸化剤、界面活性剤等を混合して使用してもよい。また、洗浄液としては、疎水性ポリマーの良溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等と水との混合液を用いることもできる。
洗浄温度は、親水性ポリマーの溶液の粘度を低く抑えて、拡散移動速度の低下を防ぐため、高い方が好適であり、50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。さらに、洗浄液を沸騰させながら洗浄を行うと、沸騰によるバブリングによって中空糸膜の外表面を掻き取ることもできるため、効率のよい洗浄が可能となる。
(i)中空糸膜の洗浄工程によって、中空糸膜に残存する親水性ポリマーをある程度まで除去することができるが、まだ、一定の濃度で中空糸膜の多孔質部中に前記親水性ポリマーが残存している。このような場合に、より高い洗浄効果を得るためには、(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程を行うことが好ましい。
具体的には、中空糸膜を、酸化剤を含む薬液中に浸漬して中空糸膜に薬液を保持させ、ついで、薬液を保持した中空糸膜を気相中、例えば、飽和水蒸気、飽和空気等の雰囲気下で、加熱する方法が挙げられる。酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過硫酸塩等を使用することもできる。このうち、酸化力が強く、親水性ポリマーの分解性能に優れること、取扱い性が容易であること、安価なこと等の観点から、特に次亜塩素酸塩を用いることが好ましい。次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが挙げられるが、特に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
加熱温度の下限は、連続処理を行う場合、処理時間を短くできることから50℃とするのが好ましく、80℃がより好ましい。温度の上限は、大気圧状態では100℃とするのが好ましい。すなわち、本実施形態においては、50℃/80%RH〜100℃/100%RHの湿熱条件で中空糸膜を加熱することが好ましく、80℃/90%RH〜100℃/100%RHの湿熱条件であることがより好ましい。
このように、(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程を実施した後には、上述した(i)中空糸膜の洗浄工程と同様の条件にて、再度、中空糸膜を洗浄液に浸漬して洗浄し、低分子量化された親水性ポリマーをある程度除去する(iii)低分子量化された親水性ポリマーの洗浄工程を行うことが好ましい。
以上のようにして必要に応じて親水性ポリマー除去工程を行った後、乾燥工程を行う前に、液相減圧工程を行うことが好ましい。液相減圧工程を行うことにより、親水性ポリマー除去工程を行ってもなお中空糸膜中に残存している親水性ポリマーを、効果的に除去することができる。
液相減圧工程は、圧力を低下させた液体中に中空糸膜を浸漬させる工程である。圧力を低下させた液体中に中空糸膜を浸漬させることにより、中空糸膜の外周側を減圧して、中空糸膜の多孔質部中に残存する親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へ排出させることができる。すなわち、液相減圧工程とは、中空糸膜の外周側の圧力が内周側(中空部)よりも低くなるようにし、その際の圧力差により、親水性ポリマーを中空糸膜の外周側へと移動させ、除去する工程である。
液相で減圧することは、気相で減圧する場合よりも、例えばポンプで吸引する容量が小さくて済むため、ポンプ所要動力が小さくて済むというメリットがある。また、前段の親水性ポリマー除去効果をより確実にすることと併せて、中空糸膜が保持している水分(以下、「膜保持水分」と言うこともある)を低減することができるというメリットもある。
このような流路部材11を液体中に配置し、凝固工程と、必要に応じて親水性ポリマー除去工程とを経た中空糸膜10を、流路部材11内にその開口部12aから連続的に導入するとともに、中空糸膜走行流路12内の液体の圧力を低下させることにより、流路部材11内において、中空糸膜10の外周側が減圧され、中空糸膜10の多孔質部中に残存する親水性ポリマーが液体中に同伴されて中空糸膜10の外周側へと吸引、除去される。
上述のような液相減圧工程を行った場合において、中空糸膜10の内周側と外周側との圧力差が大きいと、中空糸膜10の、液体中に浸漬され、かつ流路部材11の外部に存在している部分において、洗浄槽20中の液体が膜を通過し、中空糸膜10の内周側に導入される。導入された液体は、その後、減圧手段の作動により、再び膜を通過して、外周側に排出される。その結果、中空糸膜10の多孔質部中に残存する親水性ポリマーが液体とともに接続口13aから除去される。
このような液相減圧工程により、中空糸膜10の内周側から外周側へ液体を通液させる方法によれば、中空糸膜10から引き離された親水性ポリマーは液体中に分散または溶解し、液体とともに吸引、除去されるため、中空糸膜10に再度付着する懸念も軽減され、高い除去効果が得られる。
また、本実施形態においては、親水性ポリマー洗浄のために、後述する洗浄液供給工程で、中空糸膜10の中空部に高圧の洗浄水が供給されるため、中空糸膜10の中空部に圧入された洗浄水が、中空部を伝播して、後の乾燥工程に移動することを防止する観点から、液相減圧工程の圧力は、−0.08〜−0.1MPaが好ましい。
また、液相減圧工程での中空糸膜10の滞在時間(流路部材11内に滞在する時間)は、2〜10秒間が好ましい。中空糸膜10の滞在時間が、2〜10秒間であれば、効率的に、十分な親水性ポリマー除去効果を得ることができる。
なお、洗浄槽20中の液体としては、上述の(i)中空糸膜の洗浄工程で例示した洗浄液を用いることが好ましい。
洗浄槽20中の液体の温度は、本発明の効果を有する限り特に制限はないが30〜80℃とすることが好ましい。液体の温度が80℃よりも高いと、後述する乾燥工程での中空糸膜の加熱エネルギーを幾分削減できる。しかしながら、液体の飽和蒸気圧が高くなるため、高い減圧度が確保できなくなり、乾燥工程前での膜保持水分の低減効果が小さくなる懸念がある。逆に、液体の温度が30℃未満であれば、高い減圧度が確保でき、乾燥工程前での膜保持水分の低減効果を確保しやすくなるが、温度が高いときよりも乾燥工程での中空糸膜の加熱エネルギーを必要とする懸念が生じる。
さらに親水性ポリマーを除去する効果を高めるためには、上述の液相減圧工程の後段に、中空糸膜10の外周側から内周側に洗浄液を強制的に供給する洗浄液供給工程を組み合わせることが好ましい。
具体的には、先に説明した流路部材11を2本用意し、これらの間隔をあけて洗浄槽20中に直列に設置し、前段側の流路部材11の接続口13aには減圧手段を接続し、後段側の流路部材11の接続口13aには洗浄液を供給するための加圧供給ポンプなどの供給手段を接続する。
そして、中空糸膜10をこれら2本の流路部材11内に前段側から順次導入するとともに、液相減圧手段と洗浄液供給手段とを作動させる。すると、後段側の流路部材11内においては中空糸膜10の外周側から内周側に洗浄液が供給され(洗浄液供給工程)、前段側の流路部材11内においては中空糸膜10の内周側から外周側へ洗浄液を通液させることができる(液相減圧工程)。
このように液相減圧工程の後段に洗浄液供給工程を設けると、液相減圧工程において中空糸膜10の内周側から外周側へ通液する洗浄液量が増加し、その結果、親水性ポリマーの除去効果が大きくなる。
洗浄液供給工程での中空糸膜10の滞在時間(流路部材11内に滞在する時間)は、2〜10秒間であることが好ましい。中空糸膜10の滞在時間が、2〜10秒間であれば、効率的に、十分な親水性ポリマー除去効果を得ることができる。
ついで、このように液相減圧工程が実施された中空糸膜10を乾燥する(乾燥工程)。
乾燥工程に用いられる乾燥装置は、中空糸膜10にダメージを与えるものでなければ、本発明の効果を有する限り特に限定されるものではないが、熱風循環式の乾燥装置を用いることが好ましい。熱風の風速は、速い方が乾燥時間を短くできるが、一方で中空糸膜が装置内でばたつき、装置出入り部で擦れる危険性が高くなる。従って、装置スパン長、中空糸膜の張力等により適宜決定する。
乾燥温度は、処理時間を短くするため、60℃以上とすることが好ましい。一方、乾燥温度の上限は、疎水性ポリマーの熱変形温度であることが好ましい。具体的には、疎水性ポリマーとしてフッ素系樹脂を用いる場合は、乾燥温度は、60〜130℃であることが好ましく、80〜100℃であることがより好ましい。
本実施形態においては、前記乾燥工程の最終段で、加圧工程を行うことが好ましい。
乾燥工程の最終段では、中空糸膜10が保持している水分が低下しているため、加圧工程を行うことで、中空糸膜10の中空部へ加圧気体を容易に導入することが可能となる。ここで、中空糸膜10の中空部に導入する加圧気体としては、加圧空気であることが好ましい。中空部に加圧空気を導入することにより、熱風による乾燥効果に加えて、加圧空気による水分除去効果を付与することができるため、中空糸膜10の乾燥効果を促進することができる。
本発明のように湿式あるいは乾湿式紡糸により中空糸膜10を製造する場合、中空糸膜10の膜構造は、内周側から外周側にかけて徐々に多孔質部の孔径が小さくなる非対称構造を有する。このような膜構造では、中空糸膜10の多孔質部に水分が充満保持されている状態で内周側から圧力を付与すると、中空糸膜内周側の、多孔質部の孔径が大きい部分では、低い圧力でも多孔質部の水分を外周側に押し出すことができる。さらに高い圧力を内周側から付与すると、より中空糸膜外周側に近い部分まで多孔質部の水分を押し出すことができる。最終的に、中空糸膜の水に対するバブルポイント以上に達すると、内周側からの圧力付与により、中空糸膜が保持している水分をほぼ完全に押し出すことができる。
流路部材30には、上述の液相減圧工程において用いる流路部材11と同様に、中空糸膜を通過させる中空糸膜走行流路(図示略)、および中空糸膜走行流路から分岐して一壁面に通じるように形成された分岐流路(図示略)が、内部を貫通するように形成され、かつ、中空糸膜走行流路の両端に開口部30a、30bが設けられている。ここで、分岐流路(図示略)には、加圧気体を流路部材30内に供給するための供給口31が形成されている。
このような流路部材30内に、中空糸膜をその一端30aから連続的に導入して通過させるとともに、供給口31に図示略の加圧気体供給手段を接続して作動させ、加圧気体を流路部材30内に供給する。
すると、流路部材30内における中空糸膜10は膜保持水分量が低下しているため、図中矢印Aで示すように、加圧気体は容易に中空糸膜10の中空部に供給される。
こうして中空糸膜10の内周側、すなわち中空部に導入された加圧気体は、ついで、図中矢印Bで示すように、流路部材30内を通過する中空糸膜10の中空部を流れ、流路部材30の開口部30a、30bに到達する。すると、流路部材30外では、中空糸膜10の外周側の圧力は、内周側よりも低いため、このような圧力差により、図中矢印Cで示すように、加圧気体は中空糸膜10の膜を透過して、中空糸膜10の内周側から外周側に排出される。
そして、中空糸膜10に含まれる水分は、このような加圧気体に同伴され、中空糸膜10の内周側から外周側に排出される。さらに、中空部に供給された加圧気体が、乾燥工程の上流側に伝播して、圧力による水分除去効果が加えられる。
[実施例1]
(凝固工程)
表1に示す質量比となるように、ポリフッ化ビニリデンA(アトフィナジャパン製、商品名:カイナー301F)、ポリフッ化ビニリデンB(アトフィナジャパン製、商品名:カイナー9000LD)、ポリビニルピロリドン(ISP社製、商品名:K−90)を用い、N,N−ジメチルアセトアミドをそれぞれ混合し、脱泡して製膜原液(1)および製膜原液(2)を調製した。ここで、ポリフッ化ビニリデンA、ポリフッ化ビニリデンBは疎水性ポリマーであり、ポリビニルピロリドンは親水性ポリマーである。
ついで、中心に中空部が形成され、その外側に、2種類の製膜原液を塗布・積層できるように環状の吐出口が三重に順次形成されたノズルを用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には補強支持体としてポリエステル製マルチフィラメント単繊編紐(マルチフィラメント;420T/180F)を導入するとともに、その外周に製膜原液(2)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、75℃に保温した凝固液(N,N−ジメチルアセトアミド8質量部と水92質量部との混合液)中で凝固させた。なお、塗布された製膜原液(1)および(2)のうち、中空糸膜の膜構造を形成する主原液は、外側に塗布された製膜原液(1)である。
さらに、この中空糸膜の外径よりも大きい内径の中空部が中心に形成され、その外側に、2種の液を順次塗布できるように環状の吐出口が二重に順次形成されたノズル(特開2005−42074号公報の図1参照。)を用意し、これを30℃に保温した状態で、中空部には上述のようにして得られた中空糸膜を導入するとともに、その外周にグリセリン(和光純薬工業製 一級)、製膜原液(1)を内側から順次塗布し、先に使用したものと同じ80℃に保温された凝固液中で凝固させた。このようにしてさらに多孔質部がコーティングされた2層構造で編紐支持体を有する中空糸膜を得た。
また、このときの紡糸速度(中空糸膜の走行速度)は15m/分とした。
こうして得られた中空糸膜について、以下の(i)〜(iii)の工程を2回繰り返して、親水性ポリマーの除去工程を実施した。
(i)中空糸膜の洗浄工程
100℃の沸騰水が入れられた洗浄槽中に、中空糸膜を滞在時間5分間の条件で浸漬し、洗浄を行った。
(ii)酸化剤を使用した親水性ポリマーの低分子量化工程
次に、温度30℃、濃度60000mg/Lの次亜塩素酸塩の水溶液が入れられた水槽中に、中空糸膜を滞在時間1分間の条件で浸漬した。その後、85℃/100%RHの湿熱条件で、滞在時間3分間の条件で加熱し、親水性ポリマーを低分子量化した。
(iii)低分子量化された親水性ポリマーの洗浄工程
次に、この中空糸膜を(i)と同じ条件で再度洗浄した。
図4に示すように、温度50℃の水が入れられた洗浄槽20を用意し、その中に、図1に示した流路部材11を配置した。そして、これらの流路部材11に、上記工程で得られた中空糸膜10を導入するとともに、流路部材11の接続口13aに減圧手段を接続し、減圧手段のゲージ圧が−0.06MPaとなるように減圧した。液相減圧工程での中空糸膜10の滞在時間は約3秒間とした。
熱風循環式の乾燥機40を用いて、中空糸膜10を乾燥した。熱風風速は約4m/s、熱風温度は90℃とした。乾燥工程での中空糸膜10の滞在時間は3分間とした。
このような乾燥工程後の中空糸膜10の水分率を測定した結果、水分率は0.5%であった。本実施例では、合格水分率を1%としており、合格水分率をクリアする結果が得られた。また、乾燥工程前の中空糸膜1について、水分率を測定した結果、82%であった。
なお、ここでの水分率は以下の方法に沿って測定した値である。
<水分率の測定>
赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「型式:FD−720」)を用いて、中空糸膜の水分率を測定した。
なお、前記水分計で出力される水分率の定義は、{(水分を含んだ状態の中空糸膜の質量−中空糸膜の乾燥質量)/中空糸膜の乾燥質量}×100である。
このようにして最終的に得られた編紐支持体を有する中空糸膜10は、外径2.8mmであった。
なお、中空糸膜の外径は、以下の方法に沿って測定した値である。
<中空糸膜外径の測定>
外径測定器(KEYENCE社製、型式LS−3030)を用いて測定した。具体的には、この外径測定器を2台用意し、測定される径が中空糸膜10の軸線を中心として互いに90°ずれるように、これら測定器をそれぞれ取り付け、2方向の外径を測定した。
実施例1と同様の操作にて、凝固工程・親水性ポリマー除去工程を実施した後、図5に示すように、液相減圧工程と乾燥工程を行った。乾燥工程は実施例1と同様に熱風循環式の乾燥機40を用いて、中空糸膜10の滞在時間を2.5分間として、その後に加圧工程を行った以外は、全て実施例1と同じ条件とした。
加圧工程では、図3に示す乾燥用流路部材(ステンレス製、内径:4mm、長さ:約780mm)30を用意し、加圧工程を行った。供給する気体としては加圧空気を使用し、供給圧力が0.2MPaとなるように調整した。加圧空気の温度は30℃とした。
このような乾燥工程後の中空糸膜10について、水分率を測定した結果、水分率は0.8%であった。実施例1よりも乾燥機の滞在時間を短くしたが、実施例1と同様、低い水分率が得られた。
このようにして最終的に得られた編紐支持体を有する中空糸膜10は、外径2.8mmであった。なお、水分率測定と外径測定は実施例1と同様の方法で実施した。
実施例1,2における乾燥工程前の液相減圧工程の効果を把握するために、実施例1の条件で液相減圧工程を実施しなかった以外、実施例1と同様の操作にして、凝固工程から乾燥工程を行って、中空糸膜10を得た。
得られた中空糸膜10について水分率を測定した結果、水分率は21%であり、合格水分率である1%を達成することはできなかった。また、乾燥工程前の中空糸膜10について、水分率を測定した結果、113%であった。実施例1の乾燥工程前の中空糸膜10の水分率82%よりも高い水分率であった。
このようにして最終的に得られた編紐支持体を有する中空糸膜10は、外径2.8mmであった。なお、水分率測定と外径測定は実施例1と同様の方法で実施した。
11 液相減圧用流路部材
12 中空糸膜走行流路
12a、12b 開口部
13 分岐流路
13a 接続口
20 洗浄槽
30 加圧乾燥用流路部材
30a、30b 開口部
31 供給口
40 熱風循環式乾燥装置
Claims (4)
- 疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む製膜原液を凝固液中で凝固させ、中空糸膜を形成する凝固工程と、
前記凝固工程で形成された中空糸膜中に残存する親水性ポリマーを洗浄によって除去する親水性ポリマー除去工程と、
前記親水性ポリマー除去工程の後、連続的に走行する中空糸膜を圧力が低下した液体中に浸漬して通過させ、中空糸膜が保持している水分を低減する膜保持水分減少工程と、
前記膜保持水分減少工程の後で中空糸膜を乾燥する乾燥工程とを有する中空糸膜の製造方法。 - 前記膜保持水分減少工程の圧力範囲が−0.06MPa〜−0.1MPaである、請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記乾燥工程の直前に前記膜保持水分減少工程を有する、請求項1又は2に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記膜保持水分減少工程の液体の温度が30℃〜50℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中空糸膜の製造方法。
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